レイモンド・チャンドラーが生み出した私立探偵フィリップ・マーロウは粋な男の代表。中年の貧乏探偵だが、「男」を貫き通す。女にはモテモテだが、自分を見失うことはない。
このマーロウのシリーズ最高傑作と言われるのが「長いお別れ(Long Goodby)」。
この小説で有名になったのがギムレット。このカクテルを追った。
長いお別れに出てくるギムレットのレシピはジンと「ローズ」のライム・ジュースの割合が半々である。標準的なレシピはドライジン45ml、ライムジュース 15ml。つまり3:1。小説のギムレットとは随分異なる。
日本橋高島屋向かい「風月堂」地下の「風長閑(かぜのどか)」に行った。馴染みのバーテンダーにこのカクテルを作って欲しいと頼んだが「ローズ」のライムジュースがなく断念。
チャーチルのドライマティーニ(10月4日掲載)を出してくれたあの新宿パークハイアットに行ったがやはりできない。
名古屋の最高級ホテル、大阪のショットバーなどなど、行く先々でギムレットを頼んだが、やはり「ローズ」のライムジュースがないため小説のカクテルは再現不能。結局、マーロウが飲んだギムレットには出会えなかった。
多くの店は「うちはフレッシュな生ライム・ジュースしか使わない!」と胸を張るが、長いお別れのギムレットのレシピを知るバーテンダーすら見つからない。
博多で入ったショットバーの若いバーテンダーが意外にも知っていた。「ローズ」とはこのライムジュースを作っていた会社であること、そのジュースがかなり甘い人工ジュースであることなどが判った。
「ローズ社のライム・ジュースは甘くて、まずいですよ」と断言する。
ギムレットとは、ねじ錐、木工錐のことで鋭いものを意味する。やはり男のカクテル。
かつては今より甘めのカクテルだったようだが、それでも小説のギムレットのレシピでは甘すぎる。
登場人物の性格模写をこの普通と違うギムレットで表現しようとした作者チャンドラーの意図がようやく分かってきた。このギムレットを追いかけたことで物語が一段と味わい深いものになった。
銀座TAKAでギムレットを作ってもらった。ボンベイジンを3分の2、コーディアルライムジュースを3分の1。コーディアル・ライムジュースは甘みを加えたカクテル用ライムジュースでサントリーが出しているもの。ローズ社のジュースの代用だ。これに生ライムのスライスを半分入れてシェイクしたものがTAKAのギムレット。これを作った高崎オーナーは78歳のベテランバーテンダー。オリジナルに、そして小説の味に近いギムレットだろう。
一口飲んだ。やはり甘い。銀髪にはちょっとつらい。これより甘い小説のギムレット。
ハードボイルド探偵のマーロウがどんな気持ちでこのカクテルを飲んだか分かるような気がした。
チャンドラーのファンにご参考:TANPOPO FREEWAY 「ギムレットは早すぎる」
http://www.asahi-net.or.jp/~jh9h-sgur/zansu/column/gimlet.htm
Salon de TAKA
中央区銀座6-5-15 銀座能楽堂ビル4F
03-3572-0023
(ショットバーではありません。念のため。)
投稿者 銀髪 : 2005年10月26日 07:51
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