日本料理を代表するものは寿司と天婦羅。寿司、天婦羅と言えば江戸前。江戸前の天婦羅の代表格は穴子か。他は? 天婦羅の王様、海老は天草。悩んでいる場合ではありません。
そう、鯊(はぜ)なんです。
はぜは日本中で釣れる。子供の頃、釣りといったらはぜ釣りだった。餌はゴカイだったろうか、カレー団子だったろうか。入れ食いである。浮きはいらない。何にでも食いつき簡単にいくらでも釣れる下らない小魚との意味で、だぼはぜと言われる。
釣った記憶はあってもどうやって食べたか記憶がない。もちろん味も覚えていない。
先輩に連れられて天婦羅屋に行った。店の名は「だぼ鯊」。カウンターには客がくれたはぜの置物がある。だぼ鯊の名は冗談でも照れ隠しでもなく大将が惚れ込んだ魚のようだ。
ところが行ったのが春先だったため、はぜにありつけなかった。
それから度々通い、海老、あなご、稚鮎、ふきのとう、などなど季節のネタを堪能したがはぜはない。待つこと半年、9月に入りはぜを求めて再びだぼ鯊に行った。
席に着くや否や「はぜは入った?」と聞くと、うれしそうな大将の声。「ありますよ!」
使うのはその年に生まれたものだけ。しかも生きたはぜ。春に生まれ、秋に食べごろに成長する。冬になり卵を持つと身が細り味が落ちる。2年目以降はもう使えない。そう話す大将の顔はいつになく輝いている。
順番を無視して、すぐにはぜを揚げてもらう。身、腹、頭、骨と4ヶ所別々に揚げられたはぜがすぐに目の前に。
さっきまで生きていただけに尾びれがピンと広がり、身はふっくら、ほっくりとしている。
味はキスやメゴチに似るが、大将が惚れ込んだだけはある。
大将の顔が誇らしげ。「どうだ!美味いだろう!」と言いたそうな顔つきで胸をはる。
いつもより若々しく見える。
続いて海老、松茸、野菜、掻き揚げなどと続く。酒が進む。
最後に「もう一度はぜ!」と頼む。本当に品がいい魚だ。
今日のはぜは松島産。もうじき江戸前のはぜが出てくる。
1匹が1,200円。9月~12月までの限定商品。試す価値はある。
だぼ鯊を屋号にしているが、「だぼはぜなんて言わせない!」との大将の本音が聞こえるようだ。
だぼ鯊
東京都中央区日本橋3-3-14
03-3271-7533
投稿者 銀髪 : 2005年10月25日 08:59
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