おばんざいとは京都弁で日常の食事、家庭料理のこと。今日はA氏がご馳走してくれると言うので、待ち合わせの店に一人で向かった。
FAXで送られてきた地図を見ると、よく行く銀座の一画。ビルの名前も聞いたことがあるような気がする。着いたところはいつものビル、いつもの店の一つ上。嫌な予感がする。
店に入るとカウンターの左隅に同伴と思われるカップルがいる。銀座クラブの女性と同伴向けのロケーションと店の雰囲気。
左隅の女性には見覚えがない。カウンターの他の客3組は男同士、左奥のテーブル席はサラリーマングループ。もう一組でカウンターは埋まりそうなのでちょっと安心する。A氏は少し遅れるとのことなので一人で飲み始める。
カウンターの上には大鉢に入ったおばんざいが並ぶ。「年が明けて大分経ってしまいましたが‥」と女将さんが付け出しを出してくれた。
ビールを飲んでいたら扉が開く音がした。振り返って見たら着物を着た若い女性が二人。目が合う前に慌てて体の向きをカウンターに戻し、ビールを飲みながら携帯電話のメールチェックをするふりをした。着物を着ているので下の階の女性かどうか思い出せない。きっと違う。違って欲しいと期待したが、甘すぎた。
「○○さーん。こんばんはー。後でお店に来てくれますよね?」との声が降ってきた。何で名前まで覚えているのだろう。よく見れば確かに見覚えがある。名前を呼ばれたら白ばっくれるわけにもいかない。
数分後に二人の連れ(同伴)の男たちが入ってきたので話しが途切れたが、逃げることが不可能な雰囲気になってしまった。
銀座には意外と家庭料理を食べさせてくれる店が多い。故郷を離れて一人暮らしの銀座の美女たちもおばんざいを好むようだ。
A氏がやってきて酒宴が始まった。たらこは薄味の煮付け。おから。こんにゃくと明太子しらたき。卵いり肉豆腐。こんにゃくがピリ辛で一番いい。A氏が絶賛するようにどれも美味しい店だがどうも横の女性たちが気になって落ち着かない。A氏に事情を説明すると偶然に驚く。
A氏がお勘定をしている間も行くべきか、逃げるべきか、行くべきか、逃げるべきか、考えがまとまらない。エレベーター側の出口ではなく、階段側にあるもう一つの扉から店を出た。
女将がお見送りしてくれた。「行ってらっしゃいませ」と言われて苦笑する。
階段を下りるとコリャまた偶然にもいつもの店のママが入り口に立っていて、こちらに気付き微笑んだ。
横を向いたら、すまなそうな顔をしたA氏と目が合った。
くいもんや すだち
東京都中央区銀座8-5-15
SVAX銀座ビル3F
03-5568-7191
投稿者 銀髪 : 2006年01月31日 06:29
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