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2006年04月30日
アブサン
銀髪のホームバーである日本橋の「風長閑」に行った。ホームバーと言えるほどの常連ではないけれど、ご近所なので許して欲しい。
カウンターに座ってギネスの黒ビールを頼んだ。これ一杯で帰るつもりなのだが、カウンターには一人で来ている客が銀髪を入れて3人。お相手するのはチーフ・バーテンダーの石井さんただ一人。ママはテーブル席の客に挨拶に行っている。
こんな時の解決策はただ一つ。隣の客と親しくなることだ。石井さんも一度に二人を相手に出来る。右隣の客は遠いのですぐ左の客をターゲットにする。さて話のきっかけを捜すことにして、しばし様子を伺った。
左の客の前にあるボトルを見た。「PERNOD」の文字が見えたが何のことか分からない。その下を見ると「ABSINTHE」と書いてある。ピンと来た。アブサンだ!
アブサンはアルコール度数が高いので有名な酒だが、その名前を知ったのは水島新司の野球漫画「あぶさん」を読んでからだ。主人公の影浦安武は代打専門の酒豪で、酒しぶきをバットのグリップに吹き付けてホームランをかっ飛ばす。ビッグコミックオリジナルに1973年から30年以上も連載されているから恐れ入る。
ちょうど銀髪が酒を飲み始める頃の連載開始だから、アブサンという酒の印象は強かった。当然、飲んで面白がったに違いないのだが、飲んだ記憶が明確ではない。「これがあのアブサンだ!」と言われて飲んだ記憶があるが、本物のアブサンだったか定かではない。
「アブサンですか?」と左の客に自然と声をかけることができた。ついでに銀髪グルメ紀行の名詞を渡したら、「ママに聞いて見てますよ」と嬉しい言葉。名刺交換したMさんの飲んでいるアブサンを石井さんにちょっと注いでもらった。
アブサンはニガヨモギ、アニス、ウイキョウなどが主成分で、もともとは医薬品として生み出されたものだけに独特な香りと味を持っている。幻覚などの向精神作用があるとして発売禁止されたこともあるが、成分の規制などで解禁されて一般に流通している。
カウンターに置いてある「ぺルノー」がアブサンの代表格。アルコール度数68%なので、ストレートで飲むとほんのり甘い。水を加えると白濁する。
Mさんがお代わりをすると言うので、石井さんはグラスにアブサンを注ぎ、砂糖を加えて穴あきスプーンに角砂糖を乗せてアブサンを垂らして火を点けた。

アブサンは漫画の「あぶさん」だけでなく、詩人ヴェルヌールや画家のロートレック、ゴッホ、作家のヘミングウェイなどアル中連中に愛された酒らしい。アブサンはちょっとだけにして今日は帰ることにした。
Mさんとの橋渡し役をやってくれたので、「アブサンご苦労さん」である。
近いうちにMさんと一杯やることを約して、握手をして店を出た。
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2006年04月29日
岡山ラーメン 人情ラーメン
岡山に来て初めて知ったが、岡山の人はラーメン好きのようだ。タクシーの運転手さんに聞くと、岡山ではラーメン店が増え続けていると言う。
「わたなべ」では隣で寿司をパクついている部下を横目に、腹八分目で抑えた。岡山ラーメンを食べようと思ったのだ。短い滞在期間で色んな味を知るには多少胃に負担がかかるのは止むを得ないが、ホテルに戻って2時間ぐらいお腹が空くのを待った。
インターネットで3店をピックアップしてタクシーに乗った。「やまと」と伝えると多分やってないと言う。まだ9時前なのに嘘だろうと思ったが、やまとの近くの「天神そば」に向かうことにした。行ってみたらここもやってない。ちょっと離れた「商人」に行くように運転手さんに頼んだ。
頼んだ後に嫌な思い出が甦った。数年前和歌山に出張したとき、テレビチャンピオンか何かで日本一のラーメン店となった井出商店に行こうとタクシーに乗った。並ぶのを覚悟したが誰もいない。喜んで料金を払って店の前に立って定休日の札を見つけ愕然とした。
「商人」に向かう前に念のため電話してみた。若い女性が出た。ホッとしたのも束の間、「もう今日は閉店しました」と言われてしまった。ピックアップした3店すべてが今日の営業を終えていた。何という街だ。東京ならまだ宵の口。こんな早い時間に店じまいするラーメン屋など殆どない。
仕方なく、運転手さんの知っている店に行くことにした。なんのことはない、ホテルから歩いて行けるところだ。その「冨士屋」に着いたら、中にまだ客がいるみたいだが、暖簾は片付けられて店先の灯りも消えている。
間違いなく開いていると運転手さんは言ったが、春にしては冷たい雨が降り出したのを見て店じまいしたのかもしれない。申し訳ないと思ったのかそこでメーターを切って、新興のラーメン屋が並ぶ一画に連れて行ってくれた。彼も食べたことがない店とのことで味の保証はない。
入った店は文福堂で「ばかしぼりラーメン」を食べた。

鶏を馬鹿のようにしぼった(煮込んだ)濃いスープだから「ばかしぼり」。とろけるような鶏のチャーシューはなかなかいいが、ラーメンの総合点は可もなく不可もなくかな。
食べ終わって店を出ようとすると、雨足は強まっている。店員のおばさん(女主人?)がビニール傘を奥から探し出して来て持っていけと言う。他所者なので帰しに来られないからと一度は断ったが、骨が2本折れていてどうせ捨てる傘だからと説得されてありがたくもらうことにした。
こんな心遣いをしてくれる人の店なら、将来きっと名店になる違いないと思った。そうなって欲しいものだ。
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2006年04月28日
[わたなべ](岡山) 瀬戸内のさかな三昧
約5年振りに岡山に来た。瀬戸内の魚を堪能した。
地元銀行の常務との会談が終わって部屋を出るときに「岡山での夕食を楽しみに来ました。どこかいい寿司屋さんを紹介してください。」と軽口を叩いたところ、「おう、それならわたなべがいい。ちょっと座って待ってなさい。」と言われた。椅子に戻って待っていると部長が地図を持って来てくれた。本当に親切でありがたい。
シドニーに居たとき、東京からの出張者は必ず海の幸を食べたいと言った。そこでいつも寿司屋に連れて行った。「なんだ、オーストラリアにまで来て寿司屋か? お前らは貧乏だから役員が来たときは高級な寿司を食べられると思っているんだろう!」と罵られたが、そんなことはない。世界で一番魚の扱い方を知っているのが日本人、しかも寿司職人なら間違いないというのが寿司屋を選ぶ理由。フライやバター焼きを食べて喜ぶ日本人は少ない。
日本でなら寿司屋でなくともOKだろうが、評判の寿司屋なら外れることはあるまい。「わたなべ」には数日前に巨人の原監督も来たらしい。移転する前から巨人の選手たちのひいきの店。小さな入り口を入ると長いカウンターの席があり、奥に座敷が二つある。
地元の魚をつまみで食べることにした。
べいか、あいなめ、さわら

べいかは煮ると縮んで米のような形になるため米いかと書くそうだ。卵を抱えていてトロットして美味い。ピンクの色をしているさわらは、地元の人にとってはなくてはならない魚で、トロより人気があるらしい。
しゃこ、ひらめ

子持ちのしゃこはマレーシアの巨大しゃこと比べたら本当に可愛い。おこぜは広島が有名だが岡山でも1年中食べられるそうだ。
おこぜ薄造り、あなごの白焼き

おおぞう

見たことのないえびの名は「おおぞう」。刺身もいいが、焼いた頭はみそが甘くて美味だった。
小鯛とままかり

小鯛とままかりは酢でしめてあるが、あまり酸っぱくなくて銀髪好み。塩の量を少なめにしているとのことで、塩を多くすると酸っぱく感じるそうだ。一つ勉強になった。
最後に刺身にしたおこぜのあらを味噌汁にしてくれた。
大将の渡辺さんは、この時期は産卵期にあたり美味しい魚を出すのが難しいと言う。今日、銀髪が美味しいと思ったあいなめやさわらなども一番美味しい時期は11月。客と大将の満足度は次元が違うようだ。
店を移して約10年、その前の店でも約10年。岡山では有名な店らしいが、大将を横で支える女将ともども偉ぶったところがない気持ちのいい店だった。写真を撮るためにあれこれ注文をつけたが、嫌な顔ひとつせず応えてくれた。女将の笑顔も嬉しかった。
その後、岡山で乗ったタクシーの運転手さんたちに「わたなべ」に行ったと言ったら、誰もが羨ましがった。
わたなべ
岡山県岡山市幸町5-20
086-231-9290
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2006年04月27日
[味太助](日本橋) 仙台牛たん焼
今日こそ牛タンの話。仙台牛タン元祖を謳う「味太助 日本橋分店」に行った。
仙台牛タン焼は初代(故)佐野敬四郎氏が昭和23年に作り出したもので、戦後生まれである。通常の焼肉屋のタンはスライスして焼くだけだが、仙台牛タンはスライスしてから味付けをして、しばらく熟成させてから焼くそうで、若干製法が違う。
初代の頃は牛タンを仕入れるのに大変苦労したそうだが、牛肉の輸入自由化で外国産タンが安価に手に入るようになったので、仙台で牛タン焼きの店が急増したのだろう。しかし、米国産牛のBSE問題で苦境に陥っている店もあるようだ。
味太助のホームページを開いたら分店一覧に日本橋分店がない。しかも「杜の都太助」(日本橋分店など)が「味太助」「味太助分店」の名称や「佐野敬四郎」の写真を無断使用していると非難している。
杜の都太助のホームページには「仙台へお出かけの際は〈味太助本店〉をどうぞ」と味太助のホームページにリンクを張ってあるので、本家が一方的に怒っているようだ。
名古屋の味噌煮込みうどんの「山本屋本店」と「山本屋総本家」が「紛らわしい名前を使っている」とお互いを非難してあっているが、太助の方は味太助が本家であることは間違いないようだ。それでも杜の都太助が名前も起源も同じと言うにはそれなりの理由があるのだろう。初代が許し、2代目が認めていないのかもしれない。身内の喧嘩は難しく、他人が口を挟むとろくなことはない。
何はともあれ日本橋分店で牛たん焼とろろ定食を食べた。

とろろ汁、麦めし、テールスープ、小鉢がついて1,470円だった。とろろをかけて麦めしを食べるのは久し振りだったので美味かった。テールスープも美味しかった。肝心の牛たんはもともとの肉質なのか、焼き過ぎたのかちょっと固かったかな?忙しい昼時は料理人も大変だと思う。
仙台に行ったとき奨められた店は「利休」。平成2年の創業だから、太助に比べれば新しい店だが既に仙台市内に14店舗を抱える。出てきた牛タン焼は形も厚さもバラバラで粗野な感じだったが、結構いけた。厚い肉は噛み切るのにてこずるかと思ったがそうでもなく、成る程東京で食べる牛タン焼専門店とは違うものだと感心した。
東京で牛タン焼き専門店と言えば「新宿ねぎし」だろうが、他に美味しい店があるのだろうか。焼肉屋のタン塩とはちょっと違う仙台風牛タンもたまにはいいもんだ。
味太助 日本橋分店
東京都中央区日本橋2-7-25
03-3516-2228
http://www.tokyo-tasuke.jp
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2006年04月26日
タンカレー
昨日に続いてカレー、牛タンのカレーの話と勘違いしてもらっては困る。銀髪の大好きなジンの話です。
銀座○丁目のバーに連れて行ってもらった。残念ながら、常連が入れなくなると困るので取材は拒否されてしまった。従って店名は出せない。
目の前にボトルが雑然と並んでいる。見たことのない瓶があちらにもこちらにもある。カウンターの上にはカクテル用の果物が数種類並んでいる。右端に烏骨鶏の卵がある。甘いもの・果物嫌いの銀髪には選択肢が限られる。しかも珍しいものが好きとなると、当然のことながら烏骨鶏の卵に飛びついてしまう。
たまご酒のイメージを思い浮かべたが、ジンフィズに卵を加えたカクテルをロイヤル・フィズと呼びたまご酒とは別物。
普通の卵ではなく、烏骨鶏の卵を使うのでスペシャル・ロイヤル・ジンフィズとこの店では呼んでいる。
あまりにも飲みやすいためアルコール不足と思い、ジンを足してくれるように頼んだが、充分に入っていると断られた。ジンが好きだと訴えたが「まあ、待っていなさい」と制された。
ドライマティーニ、ギムレットなど銀髪が好きなカクテルはジンベース。究極のドライ・マティーニ(→「究極のドライマティーニ」)なんかジンストレートに等しい。ストレートで飲むのなら独特の香りと甘味があるタンカレーがいい。我が家にも常時置いてある。
ジンのことは忘れて、カクテルの後に日本では珍しい37年物のハイランドウイスキーに飛びついた。ウイスキーの講釈をたれながら、聞きながらそれを飲んでいると、中年二人連れが入ってきて隣に座った。
常連さんらしくすぐに前回来たときの感動を話し始めた。バーテンダーはすかさずその感動の酒を持ってきた。これがタンカレーのNo.10だった。そこでまたジンのことを思い出した。
「待ってなさい」と制されて、焦らされて、忘れていたところに、タンカレー好きの客が来るなんて出来すぎた話のようだ。ドラマだったら陳腐過ぎて笑ってしまうところだ。
「こっちにも出してよ」と言ったら、バーテンダーは銀髪のウイスキーグラスが空になったのを確かめてから、一般的なタンカレー(下の写真左)を2本持ってきた。
1本が我が家のものと同じ日本で市販されているもの。もう1本はロンドンで市販されているもの。裏のラベルが英語と日本語の違いはあるが、見た目はまったく同じものだ。
まず日本のものを飲んだ。それからロンドンのもの。ロンドンのものの方がまろやかで明らかに美味い。
これはタンカレーに限らず殆どの洋酒に共通のことらしく、免税店や日本向けに造られている酒は品質が落ちると言う。そう言われればオーストラリアで売られている洋酒は全てアルコール度数38度とオーストラリア仕様になっていた。日本仕様もあるということか。
味の違いが分かったところでタンカレーNo.10(下の写真右)が出された。これもロンドンで市販されているものだった。No.10も2000年頃から日本で市販されるようになったが、やはりロンドンで売られているものとは味が違うと言う。

どのようなルートで仕入れているのか分からないが、昔は現地で買うしかなかっただろう。
お客様に満足してもらうためにいい酒を求めて走り回る。自らの舌で本物の味を探求する。
まったく脱帽のショットバーだった。
でも名前は教えられない。
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2006年04月25日
[紅花](日本橋) & [順子](銀座)
紅花で日本橋名物(?)のココット・カレーを食べた。
紅花と言えば有名なロッキー青木氏の店だ。単身アメリカに渡り、シカゴで開いた紅花は鉄板焼きの店で、包丁を刀さながらに振り回したり、肉や卵を投げたりのパフォーマンスで評判になった。今では全世界に100以上の店を有しているそうだ。
パフォーマンス鉄板焼きは真似をする店が多く、オーストラリアでも中国人がやっていた。卵や肉が目標どおりに飛んで来ないで、随分服を汚す人が居たようだ。日本人なら絶対行かないような店だが、欧米人は鷹揚で面白がる。
せっかく紅花を取り上げるのにカレーでは申し訳ないが、ココット・カレーは紅花自慢の一品だから許してもらえるだろう。カレー(と言ってもあちらの食事はみんなカレー味だが)は各国、地方で微妙に異なる。北インド、南インド、パキスタン、スリランカとそれぞれ特徴がある。スリランカのカレーは汁っぽく、辛い。
紅花の支店でカレーを2種類頼んで、二人で分け合った。一つはチキンのカレーでこれが代表的なココット・カレー。もう一品はシーフードのカレーである。
鶏のココットカレー(左)とシーフードカレー

スリランカのカレーはココナツミルクが入っているので、口に入れた瞬間は甘く感じるが、だんだんたっぷり入ったチリ(唐辛子)が効いてくる。写真左のカレーの赤色は辛さの証明。
紅花に何人も連れてきたが、この辛さに耐えられない人も多い。汗をダラダラ流す人もいるが、銀髪にとってはもっと辛くてもいいぐらい。味音痴と言われても文句は言えないかもしれない。辛いカレーが好きな人は挑戦してもらいたい。
紅花グループでなくても、スリランカ・カレーを食べることが出来る店がある。銀座6丁目のクラブ順子である。マスコミにもよく登場している田村順子さんが経営する銀座でもっとも有名なクラブの一つだが、割烹も併設している。
階段を下りると右が「クラブ順子」、正面が「割烹たむら」だ。割烹でもクラブの女性が接客してくれる。クラブは敷居(値段?)が高いと言って、割烹で食事をして帰る人もいるらしい。
下の写真が先日利用したときのコース料理。最後にカレーを食べた。



写真のとおり、とろみがない典型的なスリランカ・カレーだ。カレーの色を見たら分かると思うが、紅花に比べると辛さは控えめだ。もちろんクラブの中にも運んでくれる。
このカレーがあるときにはお腹一杯でも食べたくなってしまう。ちょっとスープだけ味見のつもりが、ご飯を加えてもらい、スープを足してもらい、挙句の果てにお代わりまでしてしまう。
食後に膨れたお腹を見ていつも後悔する。
病み付きになってしまう美味さだが、カレーを目的に銀座の高級クラブへ行く人はいないだろうなー。
紅花
http://benihana.jp/
割烹たむら 03-3571-2239
クラブ順子 03-3571-7014、9054
東京都中央区銀座6-3-5
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2006年04月24日
[うえむら](浦安) 郊外の店で食べる特級品
茂原でゴルフをした帰りに浦安で一杯やることになった。地元に住むYが案内してくれた。
車だったので正確な地理はわからないが、浦安駅から7~8分程南に歩いた住宅街に入ったところにある。いい店を探すのがうまいYだから間違いはないと思ったが、ちょっと不安がよぎるような店構えだ。
中に入るとすぐカウンターで右奥に座敷のテーブル席が2つある。Yは巨人戦の中継を見たいため、カウンター席に居た先客に席を詰めてもらい、我々4人もカウンターに陣取った。
テレビが置いてある店となると、料理に対する期待も湧き上がって来ない。
ところがどっこい出てきた料理が一級品だから驚く。とにかく素材がいい。毛がには小振りながら甘味があって、かに酢をつける必要がない。ちゃんと身をほぐしてくれて食べやすいのが何より嬉しい。今年は不漁で卸値が上がっているホタルイカもぷくっとして美味い。

アジの干物は自家製でカツオとイカの刺身も悪くない。

ぶどうえびと白魚の刺身が出てきた。量がないのでぶどうえびは1匹ずつ。あまり聞いたことのないえびだが、なかなか美味い。

小柱のかきあげの煮びたしとあさり汁が続く。

このあさりは身がふっくらとして柔らかく滅法美味い。ひっくり返して貝殻を見ると白くて間違いなく千葉産の特級品だ。「千葉産ですね?」と聞いたら「三番瀬です」と来た。奥さんが主人は元漁師だったとフォローする。
三番瀬は船橋沖の東京湾最大の干潟のことで、さすが元漁師だけに言うことが違う。
ようやく謎が解けた。素材の目利きが、仕入れ先が、プロ中のプロだ。店は見かけによらないものだと痛感した。酒も美味く、4人で芋焼酎一升を空けてしまった。これにほうれん草のおひたし、そら豆、おしんこと生ビールを数本頼んで1人頭約7千円だった。
第一印象に反していい物をそれなりの値段で食べることができたが、さらに驚いたのは帰ってから「ぶどうえび」を調べたときだ。ぶどうのような色をしていることからぶどうえびと呼ばれるが、北海道知床で1日に数キロの水揚げしかない幻のえびだそうだ。ネット通販でもこんな小さなえびが最低1匹400円もする。
朴訥そうな「うえむら」のご夫妻。もっと勿体つけて出してもいい料理ばかりなのに、そんな素振りも見せないので驚いてしまうじゃありませんか!
季節料理 うえむら
千葉県浦安市猫実3-22-17
047-351-3488
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2006年04月23日
ついに200回
2006年04月22日
カルヴァドス
ブランデーにもいろいろある。コニャックだけがブランデーではない。
ブランデーとは「果実を原料として発酵(醸造)した後に蒸留したお酒のこと」だそうだ。一般的なのはブドウを原料としたものだが、リンゴやミカン、ナシなどを原料としたものもブランデーである。
ブドウを原料としたもので有名なのがヘネシーやカミュなどのコニャック、シャボーなどのアルマニャックなど。生産したフランスの地名で分類される。
昔は関税が高かったせいか、命名の妙かナポレオンが最高級のブランデーと思っていたものだ。大学生のときに銀髪の安アパートには何種類もの酒が置いてあり、ブランデーもあったがVOと最低クラスのものだった。それからVSO、VSOP、ナポレオン、XOと上がっていく。
ナポレオンは等級とは別ものの気がするが、サイドボードの中で大事に飾られていた家も多かった。最近あまり目にしなくなったように思う。熟成年数が長いほど高級になるが、各社共通の基準はないようでコニャックのVSOPがアルマニャックのXOより高いものもあるのでややこしい。XOの上に勝手にクラスを作っている銘柄もありますます混乱するが、まあVSOP以上はいい酒に違いない。
これに対してフランス北部ノルマンディー地方のカルヴァドスのリンゴ・ブランデー「カルヴァドス」はコニャックには遠く及ばない。熟成年数が短いものは強い刺激臭がして辛いが、熟成年数が長くなれば意外といいもんだ。値段もコニャックに比べるとはるかに安い。
用賀でたまたま入った店「Bar Masters」で連れがカルヴァドスを頼んだ。銀髪も嫌いではないが彼の頼んだものは刺激臭が強すぎた。もっといいのはないかとバーテンダーに聞いたら何と100年ものがあると言う。値段は1杯3,000円で100年もする割には安く感じて頼んでしまった。
左から2番目が100年もの

こんな郊外店でカルヴァドスをこんなに置いているなんて不思議だ。高級住宅地が周辺にあるので、外国で生活をしたことがある人たちが来るのだろうか。
カルヴァドスがあるならグラッパ(ブドウから作るイタリア産ブランデー)もあるだろうと思ったが、頼むのはやめにした。今日はもう随分飲み過ぎている。
Bar Masters
東京都世田谷区用賀4-1-8
生田ビル2F
03-3707-1711
http://www.sunset-group.net
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2006年04月21日
[葵](用賀) 京うどん?
関西風のうどんとは言うが、京都のうどんなんて聞いたことがない。銀髪を惹きつけるに充分なネーミングだ。
用賀は我が家に近く時々タクシーを拾うために降りる駅だが、ここで食事をしたことはない。たまたま仕事で用賀に来たので、この近辺で食事をすることにした。蕎麦屋で酒は当たり前だが、うどん屋は食事だけのイメージが強い。ネットで調べたら、幸い葵はおつまみも豊富のようだ。
扉を開けるとカウンターだけの狭い店なのに驚いたが、壁のメニューの充分な品揃えに満足した。店主は人懐っこい笑みを浮かべながら、京うどんの意味をいきなり明かしてくれた。
思ったとおり京うどんというものはない。店主が京都での修行経験を活かして、京風のだしでうどんを食べてもらうことを考えたそうだ。うどん自体は讃岐うどんである。店主が毎日ねって、こねて、踏んで作る本格手打ちうどんである。早朝からのうどんの仕込みのため店じまいは比較的早い。
京都にこだわって、ゆかりの品を中心に注文した。どれも400円~500円と懐に優しい料金設定に満足した。牛肉の甘煮と九条ネギ添え(400円)、京の引き上げ生ゆば(刺身)(500円)、京にしんの棒焚き(450円)。

特に山うに豆腐(味噌漬けの豆腐)は始めて食べたが、チーズのようなコクがあり珍味。味が濃いのできゅうりと食べると絶妙なハーモニーだった。
山うに豆腐

京都料理以外でも、面白い料理を揃えている。ふぐの子の粕漬け、イイダコの塩辛、とろかつおのお造り。

ふぐの子の粕漬けを食べているところで隣の席から声がかかった。常連さんらしいが、珍しいふぐに目を奪われたらしい。ふぐを一切れ進呈して、一期一会、大いに話が盛り上がった。名刺交換したIさんの向こうには品の良い奥様がいる。
Iさんは引退して悠々自適だそうだが、まだまだ元気一杯で日本経済に充分貢献できる。口も行動力も達者のようなので、自宅で孫と遊んでいるのはもったいない。「家にいると嫌がられているのでしょ」などとこちらが言いたい放題言うものだから、奥さんも向こう側で微笑みながらチャチャを入れる。お陰で抱腹絶倒の食事ができた。
最後にうどんを食べた。Iさんご夫妻はきんぴらうどんを推奨して去っていったが、大将ののお勧めに従ってシンプルな葵うどんを頼んだ。他の連中はカレーうどんと冷やしなめこおろしうどん。

葵うどんは手打ちのうどん自体を味わう品だ。こしのある讃岐うどんと京風だしが、たらふく飲んだ後にもやさしく美味しい。
Iさんご夫妻のように、おつまみをちょっと頼んで軽く酒を飲んで、うどんを食べて帰る。そんな団塊世代が増えてくるのかもしれない。
東京都世田谷区用賀4-12-2 大山ハイツ
03-3700-8520
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2006年04月20日
[土佐家](新橋) あなたの焼肉年齢は?
新橋で評判の焼肉屋さんに連れて行ってもらった。今日のスポンサーは8歳上の兄である。
グルナビにもヤフーグルメにも載っていない知る人ぞ知る店のようだが、個人のブログでは誰もが美味い焼肉屋と書いてある。新橋駅前の機関車から歩いてすぐの2階に店はある。新橋は銀座の隣町ながら狭い路地がたくさんあり、小さな飲食店がひしめきあっている実に面白い町だ。
まだ時間が早いせいか比較的空いている。席に着くとエプロンと上着を入れる袋を渡された。臭いが服につかないようにするための配慮で気が利いている。
兄は店員を呼び、量と肉質にちょっと迷った末に11,000円の上級セットを頼んだ。


最近肉を食べるときに、昔の映画か何かの中年男性と若い女の台詞をよく思い出す。
男「なんで借金までしてブランド物の服を買おうとするんだい?」
女「だって、お金が溜まるまで待っていたら、歳とって服が似合わなくなるじゃないの!」
若いときは食べ放題の焼肉屋によく行った。牛肉の輸入自由化は平成3年のことだから、食べ放題でもそれなりの料金はした。普通の焼肉屋に行くのは上司と一緒のときだけで、霜降りの焼肉なんてあり得ない。それなりに金ができて、霜降りの高級焼肉も食べられる余裕ができた頃には、脂が乗りすぎていて食べる気がしないのである。
先日、A5等の牛肉を友人が送ってくれた。サシがきれいに入った見事な牛肉だが、フライパンで焼くステーキは脂が切れずちょっと辛かった。焼肉にしたら溶けた脂が網の下に落ちて美味しく食べることができたが、それでも50歳を超えたらあまり多くは食べられない。
焼肉チェーン店で食べる肉は薄くてすぐに焼けるが、土佐家の肉はタンもロースも分厚く切ってあり食べ応えがあった。脂の乗りも銀髪にはちょうどいい。仲良く半分ずつ同じペースで食べていたが、途中から兄は食べなくなった。量なのか、脂の乗りなのか、はたまた前日呑み過ぎたせいなのか、兄の焼肉年齢は銀髪よりかなり上のようだ。
最後に食べたミノが意外と美味かった。銀髪の焼肉年齢も上がっているので、最近は脂が乗っているロースやカルビよりも、もつ類の方が美味しく感じる。残念ながら頼んだセットの量が多かったので、他のもつ類の追加はやめた。きっと美味いに違いないと思いながら、歳を気にしてセーブした。
若けりゃもっと食べるけど、若けりゃ金がなくて食べられない。若いときに借金までして最高級の肉を食べる勇気はないもんなー
土佐家
東京都港区新橋2-9-5 中銀ビル2階
03-3502-8929
http://tosaya8929.hp.infoseek.co.jp/frame.htm
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2006年04月19日
[梅美津](新橋) 上品な店できれいな食べ方
長崎出身の女将が切り盛りしている品のいい店に行った。
新橋・烏森神社の路地の前で車を止めると、連れは銀髪を伴って神社に向かう。鳥居の前で「申し訳ないので」と言いながら頭をチョコンと下げて境内に入っていく。こんなところに?と思っていると、すぐに神社左の路地に抜けていく。確かに通り抜けをしたら申し訳ない。
路地には銀髪好みの店が並んでいるが、左側の小路の奥に目指す梅美津があった。カウンター席に座りちょっと長崎訛がある女将と挨拶を交わした。長崎県の出身者や駐在経験があるような人が常連さんらしいが、銀座のクラブの「同伴」にも使えそうな雰囲気のある店だ。
料理は上品なお袋の味と言ったところか。どれも奇をてらわずやさしい味付けになっている。
それにしても感心したのは連れの食べ方の見事さだった。えびの唐揚を頭も残さずきれいに食べたのはまだ分かる。小あじの干物は女将が自分で干したものらしいが、横を見ると一匹丸ごときれいになくなっている。「頭まで食べたんですか?」と聞くと「当然です」と言われてしまった。負けじと銀髪も残そうと思っていた頭を食べたが、成る程苦もなく食べられて美味い。



聞けば鯛のかぶと煮も目玉や口元、頭などのゼラチン質のような類が好きだとのこと。銀髪と好みが一緒なので、どちらが食べるか喧嘩になりそうだ。
台湾に行ったとき、魚の蒸し物の頭と尻尾が主賓の銀髪にではなく、ホストの方に持っていかれたときは悲しかった。それをホストが口にしないのを見て今度は腹が立ったものだ。
長崎出身の女将らしく、食事は長崎皿うどん。これも手頃な量で品がいい。食べ終わって横を見ると連れの皿には揚げた麺のかけらも残っていない。なんともきれいな食べ方をする人だ。料理人も嬉しいだろう。それに比べて我が皿には麺のかけらがたくさん残っていて恥ずかしい。きれいに食べ尽くそうかと思ったときには片付けられてしまった。
最後は葛きりを食べた。甘い黒蜜は別になっているのでちょっとだけつけて、そうめんを食べるかのように口に入れた。冷たく喉ごしがよく、これなら銀髪でも食べることができる。
さて、お腹が膨れたところでショットバーにでも行きますか。この人になら、どっかいいところに連れて行ってもらえそうで期待が持てる。
梅美津
東京都港区新橋2-9-17
03-3597-8250
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2006年04月18日
[味王](池袋) 台湾人が薦める台湾料理屋
池袋にも和食や洋食の名店があるはずだが、どうしてもエスニックのイメージが強い。
台湾料理を食べようと思い立ったのは、池袋に住む台湾出身の友人の顔を思い浮かべたからだ。ネットで数店を選び出してコピーして持って行った。それを友人に見せたらいずれの店にも首を傾けた。せっかく下調べをしてきた銀髪を気遣ってか、遠慮がちに自分の知っている店に行こうと言われた。台湾人がいいと言うのだから是非もない。
駅から10分ほど歩くと目の先に小さな中華料理屋が見えた。一見したところラーメン・餃子を食べさせるどこにでもある中華定食屋のようだ。日本人同士だったら、ここで本格的な台湾料理が食べられるとは思わず、違う店を探すに違いない。
台湾料理と言うと日本では小皿料理しか思い浮かばないが、台湾には本土に負けない立派な料理がある。数年前台湾に出張したとき、現地のテレビ局の重役やベンチャー企業の社長たちにご馳走になった。台湾料理の美味しさに感動した。大金持ちがたくさんいる台湾に高級料理がないわけがない。
しかし、ここは日本の池袋。美味しい高級台湾料理店を見つけることは難しく、家庭料理・小皿料理を食べる方がいい。しかも日本人が経営する立派な台湾料理屋より、台湾人だけの小さな店の方がいい。
店はまだ掃除中だったが、我々に促されて開店となった。メニューを見ている間に次々に客が入ってくる。我々の隣には台湾人の中年夫婦。店の選択が間違ってなかったことが分かり嬉しくなる。
立派な写真のメニューがあるが、味王は中野など都内に数店舗あるので各店共通メニューといったところか。殆どが500円か530円。580円のいかは量も多い。銀髪は大好物のしじみの醤油漬けを頼んで、あとは友人にお任せにした。店の選択同様、台湾人に任せておいたほうが間違いはない。
しじみの醤油漬け、いかのねぎ油かけ、自家製腸詰

小貝柱とアスパラの炒め物、千切り干し豆腐と香菜の和え物、にんにくの芽と砂肝の炒め物も友人が選んだ。下の写真真ん中の千切り干し豆腐と香菜の和え物は友人の好物だと言うが、銀髪も大好きだ。香菜が嫌いな人は食べられない料理だが‥

その日のお勧めや、池袋店独自の料理は壁に貼ってある。達筆な中国語の料理名に日本語の説明が添えられているが、日本人は写真メニューに頼ってしまいがちだ。銀髪は蛙の文字を見つけて迷わず頼むことにした。これだけは別格に高いがそれでも千円台。蛙を見て大学生のとき初めて食べた店、渋谷の「麗卿」を思い出した。当時は汚い店だったなー。
蛙

いい加減腹一杯なのに、どうしても食べろと言われて台湾風ハンバーガーを頼んだ。高菜と角煮、ピーナツの粉、香菜が入っている。高菜と言えば熊本県阿蘇の名産と思っていたが、そのルーツは中国原産の辛子菜らしい。台湾料理によく使う素材だが、日本人にも馴染みの野菜なので食べやすい。

友人が店員と中国語でやり取りしている様は、チンプンカンプンだが聞いていて心地よい。隣の席からも中国語が聞こえてくる。何だか台湾にいるような錯覚をしてしまった。
料理に生ビール2杯、瓶ビール1本、台湾紹興酒1本を加えて8,000円。お腹も財布も満足、満足。
味王 池袋店
東京都豊島区池袋2-57-10-101
03-3980-5070
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2006年04月17日
[竹邑庵太郎敦盛(ちくゆうあんたろうあつもり)] おばんざい&京そば
生まれてこの方、色んなそば屋に行ったがこんな型破りの店は珍しい。
そば屋と言えば、誰もが描くイメージがある。大きく型を外すところは滅多にないがこの店は違った。本店は京都にあると言うが、京都のイメージからはさらに大きく外れる。店内を見渡すと中華料理屋のイメージの方が勝る。店に流れる音楽はテレサ・テンが歌う演歌の名曲集だ。自分の持っている京都のイメージが間違っているのだろうか。
メニューも多彩だ。そば屋は蕎麦に入れる材料が多種のため酒の肴も多種できるのは判るが、この店の場合は蕎麦とまったく関係のない料理、おばんざいのオンパレードである。フカヒレだってあるのだから驚く。みんなが頼んだのは非常にオーソドックスな日本料理だった。


値段も良心的なので、居酒屋気分で来るサラリーマン客が多そうだ。若い連中だって安心して入って来られる。事実飲んでいる間に若い女の子二人連れが入ってきた。
だんだん店の雰囲気に慣れてもう驚くものは何もないと思っていたら、最後に本当に驚かされたのはやっぱりそば屋だったこと。蕎麦にはかなりのこだわりがある。まずネギがたくさん入った器が出てきた。ネギの横に山芋とその上にわさび、ネギの下には卵の黄身が入っている。
たっぷりの九条ねぎはまず酒の肴に(右)

これを混ぜてそばつゆを少しかけて酒の肴にする。酒は伏見の大吟醸。有名な銘柄ではないが大吟醸が不味かろうはずがない。
ネギは京都の九条ねぎで、ネギを食べてもらう料理と言う。ネギの味を楽しんだらそばつゆを足して蕎麦にとりかかる。そば殻ごと挽いたため色が濃い蕎麦(暖簾には黒いそばと書いてある)は、味はもちろんだが健康にもいいそうだ。一人前を5皿に分けて出してくれるので、食べ切れなければ分け合ってもいい。これを「追っかけ皿そば」と呼ぶ。足りなければ食べられるだけ追加できる。
店の名物「あつもりそば」はせいろで蒸した暖かい蕎麦だ。次回はこれを食べねばなるまい。
今日の連れと女将は昔からの知り合いらしく、丁々発止とことばをぶつけ合っている。女将は京都でクラブを経営していたそうだが、さすがに中年おやじの扱い方を知っていて負けていない。
銀髪の亡父は大学時代を京都で過ごしたため、母と喧嘩したときは決まって「俺は京女を嫁にもらうつもりだった」とぼやいていたが、ここの女将を見たら舞妓さんなどに代表される京都女性のイメージが崩れてしまった。天国の父に「九州女で良かったよ!」と言ってあげたいと思った。
まあ、行けば楽しく美味しい食事ができることは間違いない。
竹邑庵太郎敦盛
東京都港区新橋3-16-5(村上ビル1階)
03-5473-8803
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2006年04月16日
[エデンの東] 冷蔵野菜
レタスを食べていて「エデンの東」を思い出した。グルメ紀行を書き始めてから、意外な方向に思考が飛んでいく。
ノーベル賞作家ジョン・スタインベックの名作と言うよりも、エリア・カザン監督の映画を思い浮かべる人が多いだろう。エリア・カザン?と言う人には、ジェームズ・ディーンのデビュー作と言ったほうがいいかもしれない。それでも分からない人の方が多くなってしまっただろうが…
ジェームズ・ディーンは「エデンの東」「理由なき反抗」「ジャイアンツ」の3作に出演しただけで、交通事故で逝ってしまった。銀髪がこれらの映画を見たときにはとっくの昔に亡くなっていた。大学生の銀髪にとって「理由なき犯行」はナタリー・ウッドの、「ジャイアンツ」はエリザベス・テーラーの美しさに目を奪われてしまったが、「エデンの東」はまさにジェームズ・ディーンの映画だった。
ジェームズ・ディーン演ずるキャルの父は氷を積んだ列車でレタスを運ぼうとする。ところが列車は事故で立ち往生する破目に陥り、氷が溶け出してしまったためレタスは駄目になり破産寸前まで追い込まれる。この窮地を助けて、キャルは父の愛を得ようとするのだが…
「エデンの東」の舞台設定は1917年頃だが、この映画ができたのは1955年で銀髪が生まれた年。アメリカでは大型冷蔵庫が普及していただろうが、日本ではまだ氷の冷蔵庫を使っていた時代だから、日本人の方が映画に感情移入できたかもしれない。
今はクール便が街中を無数に走り回る日本の方がアメリカより進んでいるのだろう。肉も魚介類も野菜も、産地を明示しなければどこからきているか分からない。
夏に不思議な光景を見たことがある。朝、スーパーの店先に並べられたキャベツが汗をかいているのだ。エデンの東ではないが、もしかしたら冷蔵庫に入っていたキャベツではないかと疑ってしまった。
取れたての野菜を買ってくると、野菜はまだ生きていることが分かる。ジャガイモは芽が出てくるから分かりやすいが、白菜もキャベツも新鮮なものは中が成長して膨らんでくる。
映画「オールウェイズ(三丁目の夕日)」の頃、お母さんたちは毎日夕方になると連れ立って買い物に行った。近所の夜のおかずはどこも一緒だったに違いない。食べる当日に、消費できるだけ買って帰るのだから、冷凍・冷蔵庫がない時代の方が新鮮なものを食べていた。
買い忘れがあったら子供が小銭を握り締めて店に走った。
今の子供たちは小銭を握り締めて買い物に行くことがあるのだろうか。「○○ちゃーん、塾の帰りに××を買ってきてね」と携帯電話にメールが入るのかもしれない。
今の子供たちは暗くなって泥だらけになって帰って来ることはあるのだろうか。ビニールがついている今のビール瓶の蓋では保安官のバッジは作れない。棒を持ってチャンバラごっこなどしようもんなら大目玉だろう。そもそも都会には棒なんか落ちていない。安全なビニール製の刀を買ってもらう。
世の中便利になった。世の中豊かになった。後戻りはできないけれど、貧しかった三丁目の夕日の頃の方が幸せだったかもしれない。
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2006年04月15日
[魚真](下北沢) できたて、揚げたての味
下北沢の魚真は若い人たちの行列が出来る店だ。次から次にカップルが店に入ってくる。
我々のグループ9人は15人程度が座れる大テーブルに押し込まれた。空いている数席に若いカップルが座るが、カウンター席が空くとすぐにそちらに移る。何組ものカップルが来ては移るを繰り返す。
若い人たちで混む店は安くて美味しいということだろうが、オーダーは仲間に任せて出て来たものを食べることにした。エビスビールを飲んではつまむ。
何品目かに出てきた厚揚げが琴線に触れた。感動の厚揚げの思い出が蘇ってきた。
厚揚げを食べて感動した場所は、日本ではない。なんとオーストラリアのシドニーだった。
日本に居たときの厚揚げの食べ方は、既に冷めてしまった厚揚げを少し焦げるぐらいに焼いて食べるというものだった。安くてそれなりのボリュームがある厚揚げは、学生や銀髪のような安サラリーマンにとってはいい酒の肴だった。
シドニーに赴任してからは、滅多に厚揚げにお目にかからなくなった。日本食料品店に行くと冷凍厚揚げがあったが、お世辞にも美味しくない厚揚げを高い金を払って買う気はしなかった。もう20年以上も前の話である。
当時でも日本食は人気で、郊外にはオーストラリア人の客で賑わう日本料理屋があった。地元の人間が行く店は安い店で、日本料理屋というよりは居酒屋に近い。ここで絶品の厚揚げに出会った。
こんな安い店なのに、どこでこんな美味しい厚揚げを仕入れたのか聞いてみたら、答えは簡単。自分の店で揚げたとのこと。厚揚げは豆腐を揚げたものだから、油で揚げれば出来上がり。何でこんな簡単なことに気付かなかったのか恥ずかしくなった。でもどんな豆腐を使うのだろうか?またまた質問したら、地元の中華スーパーで売っている普通の豆腐と教えてくれた。
日本食料品店にも日本人向けに作られた豆腐があった。紙パックに入った日本からの輸入品だ。水分の多い日本の豆腐は厚揚げには合わない。これより安価な地元の中国人が作る豆腐の方がうまくできると分かった。年配者に聞くと日本の豆腐も昔は歯応えがあって美味しかったと言う。まさにそんな豆腐なのだろうか。麻婆豆腐にしてもあまり崩れない。
なんだかゴツゴツとして不細工な豆腐を買ってきて、水切りしてから揚げてみたらこれがあの日本料理屋で食べたものと同じだった。揚げたての厚揚げに醤油をちょっとつけて食べると美味いの何のって。鰹節やネギなどの薬味も必要ないほど。感激してしまった。
日本に帰っても自分で厚揚げを作ろうと誓ったのだが、帰国してから10年以上も経つのに未だに作ったことはない。町の豆腐屋やスーパーで簡単に手に入るからだ。ズボラしているようではグルメではない。
魚真で出てきた揚げたての厚揚げに昔を思い出してちょっと感激した。

この店の刺身や寿司を誉めるべきだろうが、厚揚げが気に入った。こんなところでシドニーでの感動を思い出すなんて、面白いものだ。
魚真 下北沢店
東京都世田谷区北沢2-1-1 つばさマンション1F
03-34195584
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2006年04月14日
[一の谷](外神田) 鯛のつみれちゃんこ
「ちゃんことはお相撲さんの食事全般のこと」と言われても、やはり自宅では食べることができない鍋をちゃんこと呼びたい。
外神田と言われてもすぐに場所をイメージできる人は少ないだろう。銀座線末広町駅、JR御茶ノ水駅、JR秋葉原駅を結ぶ三角形の中、神田明神下を東南に下ったところに一の谷はある。中に入ると農家の母屋のような雰囲気のある立派な店だ。
メニューは豊富であるが、鍋が控えている以上それほど頼む必要もあるまいと思った。それでもまずビール、次に刺身が定番なのが日本人。みんなの意向に反対する理由もない。

実はメニューを見て迷った品がある。「くさや」だ。食事を楽しむためにはイベントが必要だが、くさやでは刺激が強すぎるような気がした。しかしこの店の雰囲気をもってすれば、くさやを食べるのが自然な感じがして、我慢しきれずにオーダーした。焼いてくれるのかと思ったがさすがにそこまで期待するのは無理だった。客が来る前に窓を開け放して事前に焼いていたものが出てきた。

恐る恐る臭いを嗅ぐ者が多い中で、若手がいきなりパックンした。「ワー、臭い!」と叫ぶ声を聞いて大いに笑った。初めてのくさやを一気に食べる勇気は食通になる素質大である。もう一人の若手は前に食べて吐いたことがあるから絶対食べないと意気地がない。もっとも過去も、そして今回も一切口にしないベテランよりはましかもしれない。
冷えたくさやだったのでトライした連中もそれほど嫌そうではかったが、わずかな量が食べきれずに残った。くさやを好きと言う男と銀髪がそれを引き受けたが、しばらく放置している間に室温になれたくさやが異臭を放ち始めた。みんなが悲鳴を上げるので早々に全部腹の中に納めたが、各人くさやを触った箸から立ち上る臭気にすら耐えられなくなり、箸を取り替えた。みんなの反応を見て大いに楽しんだ後に、さあ鍋の登場だ。

この鍋の最大の特徴は鯛のつみれだ。ちゃんことは「自宅で食べたことがない鍋」の条件を満たしている。高価な蒲鉾はたいのすり身を使っているので、その感触を思い浮かべたがまったく別物。ふわふわとした食感が悪くない。つなぎは卵だけか、他に山芋などを加えているのかワイワイみんなで議論をしたが、店員に企業秘密を聞くのは遠慮した。
鯛はいいだしが出る反面、魚臭くなるリスクもあるが、一の谷のつみれ鍋はあっさり上品な味に仕上がっている。鯛や野菜のエキスが充分にスープに染み出したら、最後は当然雑炊になる。
日本人に生まれた幸せを感じる瞬間である。
ちゃんこ料理 「一の谷」
東京都中央区外神田2-13-4
03-3252-8500
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2006年04月13日
[じじあんどばば](八重洲) 昼だけでなく夜も行こうよ!
ランチ時は女性客で一杯になる店だが、ランチだけにしておくのはもったいない。夜の方が楽しい。
夜の方が楽しいと言っておきながらランチに行ったことがないので無責任な話だが、夜も実は今回が2回目。最初に行ったときは頼んだ料理が出てこないで友人が文句を言って帰った思い出がある。銀髪にとって「じじあんどばば」の印象は悪くなかったので、再度行くことにした。
「じじあんどばば」は東京駅八重洲北口から2~3分のところにある。大通り(外堀通り)に面しているが、目立たない古いビルの地下にあるため通り過ぎてしまいそうな店だ。
店内もそれほど広いわけではないが、ファミリーでやるにはちょうどいいサイズだ。
「じじあんどばば」は若い夫婦(創業当時)が共にじじとばばになるまでやろうと作った店だが、カウンターのお二人はまだまだじじ&ばばには見えない。フロアを任されているのが息子さんで、柔和な笑顔が人の良さを表している。
洋風料理の店と思い込んでいたが、メニューを見ると牛刺しや煮込みがある。ワインだけでなく焼酎も置いてある。なんだか統一性のないように感じる。この違和感を解消させるキーワードが「ファミリービジネス」だ。じじは米沢牛が有名な米沢(山形県)の出身。ばばはワインが有名な甲州(山梨県)の出身。共に実家の関係先からの特別なルートで店の料理を安く・美味しく客に提供している。
お勧めに従って、牛すじの煮込み、ポテトサラダ、ソーセージの盛り合わせ、牛肉とにんにくの炒め物、コロッケを頼んだ。
米沢牛の煮込みとパイ皮入りのポテトサラダ

料理が出始めてから「しまった!」と思った。早い時間のため客は2組しか入っていない。このような場合はキッチンが暇なのでオーダーしたものが次々と出てくる店が多い。息子の駒沢君を呼ぼうと思ったが、料理の出し方まで指図することはないと思いとどまった。出てきたらそれで仕方がない。
ソーセージ盛り合わせ、牛肉の炒め物

ところが心配は杞憂に終わった。ちゃんと料理を食べ終わりそうになったところで次が出て来た。前回来たときは食べきれない量を構わず頼んでしまった。テーブルに料理が残ったままだったので、店主は次を作るのを遠慮したのかもしれない。事実、今回ピザも頼もうとしたが、多すぎるので止めたほうがいいと言われた。
コロッケ(左)とその断面(右)

コロッケはこの店の評判の一品だが、中身は牛肉入りのシチューのようなコロッケで美味。ポテトコロッケやクリームコロッケとも違う独特のものだ。
二人で飲んだ酒は生ビール2杯、自家製ワインを一本、海外でも引っ張りだこという貴重な白百合酒造のワインをグラスで2杯、最後に名酒の呼び声高い焼酎「佐藤」を2杯。
焼酎の肴に漬物をサービスしてくれた。なかなか気が利いているじゃないか。

二人分、1万円強を払って店を出た。ランチだけではこの店の本当の良さは分からないだろう。
女性だけに占領させておくにはもったいない店だ。
じじあんどばば
中央区八重洲1-4-21 共同ビルB1
03-3274-1797
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2006年04月12日
だるま、サントリー・オールド
スーパーでサントリー・オールドを見つけた。1,120円の値札を見て驚いた。
30年前、通称「だるま」と呼ばれたオールドは高級ウイスキーの代表格で、なかなか口に出来るウイスキーではなかった。大学生にとっては高嶺(高値?)の花で憧れの酒だった。大学に入って最初の飲み会は新宿の「ジェスパ」で、入れたボトルは多分ホワイトだったと思う。見栄を張って角瓶だったかもしれないが、確かなことはオールドではなかったことだ。
ホワイトの瓶を指輪で叩きながらアドリブで歌うサミー・デイビス・ジュニアのCMは秀逸だった。この大スターを起用して宣伝したのだから、もっとも大衆に売れた酒がホワイトだったのだろう。オールドの宣伝は「♪ロンロン リロン シュビダバ アレーヨー オレーヨー♪」と聞こえるスキャットで、何ともムードがある高級感漂うものだった。
サミー・デイビス・ジュニアのCMの印象が強くてホワイトは比較的遅く発売されたと思っていたが、実は日本初の本格ウイスキーとして「サントリーウイスキー白札」の名前で1929年に発売されている。1937年に角瓶、1940年にオールドが登場している。トリスは1946年、レッドは更に新しく1964年発売で、白札がホワイトと名称変更になったのもこの年。
大学生の頃、オールドは2,200円で、リザーブが3,000円だった。30年前にオールドを飲むとすごくリッチな気持ちがしたものだ。まして、1万円もするジョニ黒なんか、飲むことができる日がいつ来るか想像できなかった。
約15年前オーストラリアにいたときのことだが、女房が果実酒を作りたいので一番安い酒を買って来てくれと言う。日本のように梅酒を作るためのホワイトリカーなどないので、焼酎を買おうと思ったが何と宝焼酎がスコッチ・ウイスキーより高い。
オーストラリアはアルコール度が40度で税率が変わるため、スコッチを含めどこのウイスキーも38度に薄めていた。宝焼酎は40度を超えたまま輸入されていたので、スコッチより税金が高く、販売価格は日本の数倍になっていた。
日本に居たときウイスキーで作った梅酒を飲ませてもらって旨かったのを思い出して、一番安いウイスキーを買って帰った。それがサントリー・オールドだった。日本で2,000円以上していたのに、オーストラリアでは1,500円程度だった。いかに日本での酒税が高かったかわかる。
結局、買ってきたオールドは銀髪がそのまま飲んでしまい、女房が果実酒を作ることはなかった。学生時代のトラウマか、高級ウイスキーのイメージが頭から離れず、果実酒にしてしまうことが許せなかったのだ。

その酒が今や日本のスーパーでも1,120円で売られている(定価は1,510円)。かつてのオールドの地位は「山崎」や「響」に奪われた。
いい時代になったと喜ぶべきなのか、2,200円も出さなければ飲めなかったあの頃を呪うべきなのだろうか。
スーパーで買おうか、買うまいか、ハムレットをしてみたが、結局買わずに店を出た。
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2006年04月11日
[ボンファム](赤坂) しっかりしたフランス料理
銀座線溜池山王駅より約3分。路地を歩くと風に揺られているフランス国旗が見える。
子供地球基金の鳥居さんをこだわりインタビュー出演のお礼を兼ねてディナーにお招きした。フランス滞在経験6年のKがアレンジした店がボンファムだった。ソースの中野と呼ばれているというシェフはKの住むマンションのお仲間。
開店してから24年というから東京のフランス料理屋としては老舗の部類に入るのだろう。落ち着きのある洒落た雰囲気の女性好みの店内。店主の南さんがサービスをしてくれた。南さんは若いときフィンランド、ハンガリー、フランスなどを渡り歩いて語学も堪能。開店当初は日本人よりフランス人の客の方が多かったとのことで、本格的なフランス料理を出す店と期待は高まった。
料理が出る前にKが白と赤のワインを一本ずつ頼んだ。赤はデキャンタに移され、白を飲んでいる間に飲み頃になる。Kも店側も作法どおり立派なもんだ。
下の写真が4人の前菜。グルメ紀行の取材に協力してくれたのか、いつものことなのかは分からないが全員が違うものを頼んだ。
鳥居さんはメニューには載っていない今日のお勧めの白アスパラガスを頼んだ(4月末頃まで)。
左上からエスカルゴのラタトゥイユ仕立て(3,000円)、スッポンのポトフー仕立て(3,400円)
白アスパラガスの茹でたてレモン風味のムースリーヌ(?円)、フォアグラの温製(3,500円)


メインも4人が別々のものを頼んだ。8種類を全部つまみたいところだが、向かいの席までフォークを伸ばすと行儀悪い奴だと思われそうなので、両脇の人のだけ味見をさせてもらった。従って6品の味を確かめたことになる。
左上から仔羊のロースト ディジョン風(3,800円)、スズキの厚切りローストに黒米の赤ワインソース(3,600円)
和牛タルタルステーキと小さなサラダ(3,800円)、フランス産青首鴨のロースト サンチュベールソース(4,500円)


前菜とメインのお値段はわずかしか変わらない。ボリュームも同じようなものだ。前菜はシェフの遊び心や旬の素材を使った日替わり品を配す店が多いが、ボンファムでは老舗のスタイルを貫いているように見える。これらをKは「しっかりした料理」と評したが、その台詞に南さんも満足気に微笑んだ。
銀髪はフランスには1回行っただけで、そのときも本格的なフランス料理は食べ損ねた。本場のレストランがどんなものか知らないため評価のしようがないが、フランス通のKとお客様はとても喜んでいたので、こんな感じの料理が多いのだろうか。
3人が立派なデザートを食べている間、銀髪はカルバトス(りんごを原料としたブランデー)を飲んだ。
鳥居さん、秘書の永田さんとの会話は楽しかった。長居しすぎたせいか、Kの友人のシェフは出かけてしまって顔を合わせる機会がなくて残念だった。
ビストロ 「ボンファム」
東京都港区赤坂1-3-13
03-3582-0200
http://www.bonnefemme.net
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2006年04月10日
[玄](溝の口) 郊外のこだわりの店
「ビットストリート」という駅別の口コミ情報サイトがある。溝の口を検索すると「溝の口でもトップクラスの美味しい店」のコメントを見つけた。
いつも銀座・日本橋界隈で食べるので溝の口までわざわざ行くことはない。田園都市線、南武線が交差する大きな駅とのイメージはあるものの、乗り換えに使う程度で降りたことすらなかった。郊外の店は多くの住民を周辺に抱えながら、商売となると難しさがあるようだ。
溝の口駅南口バスターミナル前のビル地下1階に玄はあった。ドアを開けると正面にカウンター席、左手にテーブル席がある。棚を見上げると酒飲みなら誰もが知っているいろんな銘酒の瓶が並んでいる。主人が焼酎、酒にこだわりを持っていると聞いたが、なるほど本当らしい。
付出しも丁寧な仕事をしていて好感が持てる。友人が天豆を頼んだ。

天豆は剥かないで殻のまま焼いている。三軒茶屋の居酒屋で初めてこの料理法を見たときには感激した。早速家でやってみたが焼きすぎて失敗した。肝心の豆がかさかさになってしまったのだ。次にやったときは大成功。茹でるよりもはるかに美味しいと思うのでみなさんもトライして欲しい。
あさり酒蒸、筍、天城産わさび漬け

天豆以外の料理はお任せにした。仕入先は秘密(後で教えてくれたが)と言うあさりは、国内産で量も多い。近くで取れた筍は山椒の香りが効いている。先日行った「銀座小はれ日より」の店主の教えどおり、柔らかいところはすべて皮までしゃぶった。わさび漬けは尖った味がないやや甘口。
岩手産地鶏のたたきと平目の薄造り

みんなで意見を出し合ったが、地鶏の上に乗っている粒が分からない。店主に聞くと鶏の皮をカリカリに焼いたものとのことで、実に香ばしい。温泉たまごをかき混ぜ、柚子胡椒をつけて食べる。肉の刺身は食べられないと言う友人も思わず手を出して「美味い!」。店主の勝ちである。
これまで出てきた料理のこだわり具合を思い、平目は何もつけないで食べてみた。青森産の平目は小振りのものと言うが、甘味があって意外に奥行きが深い味だ。刺身は醤油がないと食べられないと思う人が多いが、そのまま塩をちょっとつけても美味しいものだ。醤油にどっぷりつける食べ方は遠慮したい。

最後に自慢のつくねとラーメンの鍋を食べた。これも情報サイトで絶賛していた品だ。ガスコンロを覆う木の箱は特注だそうで、こんなところにもこだわりが見られる。
食事と同様に酒も名前・産地・特徴などを主人の奥さんが説明しながら出してくれる。酒を変えるたびにきれいなガラスのお猪口も変えてくれる。随分いい酒をたくさん飲んだようだったが、一人6千円程度にしてくれた。多分「してくれた」んだと思う。
郊外の店は客足が読めないために、いつも豊富な仕入れをするわけにはいかない。今日はいきなり行ったため店主としては納得できる料理が出せなかったと残念がる。数日前に予約して予算と好みを言っておけば客も店主もより高い満足感を得られるだろう。
郊外で見つけた夫唱婦随のこだわりの店。笑顔がやさしい若くてハンサムな店主だから奥さんは近くで見張っていないと心配なのかもしれない。
食菜酒房 玄
川崎市高津区久本1-2-2 スキップスB1
044-888-6444
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2006年04月09日
お粥
初めて香港のグランドハイアットに泊まった。高級レストランも入っているのに、書ける話がお粥だけとは寂しいが、結構捨てたものではない。
このホテルの中華には2度連れてきてもらったことがある。支払ったことがないのでいくらしたのか分からないが、メニューを見たら遠慮してしまって食べたい料理を言えなかったことを覚えている。雰囲気もサービスもいい立派なレストランだった。
面白いことにせっかく泊まったのにホテル内のレストランに行くことはなかった。まったく行かなかったかと言えば嘘になる。朝食バイキングに3回行った。そして、3回ともお粥を食べた。香港に来るとお粥を食べることが楽しみの一つになっている。
国内出張でも朝のバイキングでお粥を食べることが多いが、これは前夜酒を飲みすぎる影響が大きい。梅干や昆布と共に食べるお粥は胃にやさしくていい。博多に行くと明太子が置いてあるのでお粥に混ぜて食べると、いつものお粥よりちょっと贅沢な気分になる。
同じ米を使った料理なのに日本のお粥と中華粥は別物である。日本のお粥は米を洗ってそのまま煮込む。米は水分を吸ってしまって糊のようになるため、箸で食べるのも苦にならない。事前に味をつけることもないので、自分の好みに味付けする。七草がゆのように具を入れることは稀で白粥に梅干が定番だろう。
中華粥は米を洗って水気を切ってしばらく置いてから煮る。米は乾燥して割れて小粒になり、水分も多いのでレンゲがないと食べ辛い。本格的な中華粥は鶏などでダシを取ったスープで炊く。香港で食べると粘り気のない米を使うせいか、サラッとしたお粥に仕上がっている。これに、中華揚げパン、ねぎ、皮付きピーナツ、ザーサイ、揚げワンタン、レタス、ピータンなど好みの具を入れて食べる。
昨年泊まった香港マンダリンホテルのお粥もトッピングの種類が豊富でよかったが、グランドハイアットのお粥は更に美味かった。一日目はホタテ、二日目は海老、三日目が白身魚と日替わりの具が入っていたため、毎日微妙に違う味を楽しめた。薄めの味付けだがピーナツの塩気で充分過ぎるくらいだ。惜しむらくはバイキングのため熱々ではない点だ。
香港のマンダリン(左)とグランド・ハイアット(右)のお粥

街の庶民が行く「麺・粥」と書いてある店で食べると超熱いお粥が出てくる。うっかり口に入れると火傷する。お勧めは白身魚の刺身とお粥のセット。こんな店で刺身を食べるとお腹を壊す確率が高いので、誰もそのまま食べることはない。超熱々のお粥の中に薄く切った刺身を突っ込んで数秒待つとしっかり火が通る。混ぜて薬味を入れて好みの味付けをして、これが何とも言えず美味いのである。
香港には度々行くのだけれど、何年もこのお粥を食べていない。一緒に行く連中がこんな庶民が通う格安の店を嫌うからである。次回は一人でも絶対行こう。
それにしても、大昔に行った店が懐かしい。身ぐるみはがされそうな怪しげな路地を数十メートル入ったところにあったが、今そこに一人で行く勇気はない。
帰国してから市販のレトルトパックのお粥を食べた。ねぎ、ピーナッツ、ピータンを入れて食べた。レタス、揚げパン(揚げた春巻きやワンタンの皮、揚げた春雨でも代用できる)、ザーサイなどがあればもっと良かったが、とっても香港気分になった。
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2006年04月08日
鳩の生菜包(サンチョイパオ) 鳩肉のレタス包み
香港で懐かしい食べ物を見つけた。しかも本場らしく使う肉は鳩だった。
香港のテレビ局が主催するパーティーに招かれての帰りで、夜10時を過ぎてホテルに戻ってもレストランは閉まっているので町に出た。街中でも高級レストランは既に閉店しており、止む無く最初に見つけた店に入った。
我が家の生菜包は豚挽き肉と筍が中心だったが、最近あまり食卓に上らなくなってしまったので、妙に懐かしく感じて即オーダーすることに決めた。本来の生菜包は鳩の肉を包む料理だとは知らなかった。
クイズ番組で「アグネス・チャンが日本に来たとき公園で発見した大好物は?」という問題の正解が鳩だったのに驚いた記憶がある。みんなが食べてしまうので香港には鳩がいないと言う。友人は鳩と聞いて気持ち悪いと言うが、食べず嫌いはもったいない。
ゲテモノ料理とは違い、平和の象徴を食べるのは不謹慎と思っているのかもしれない。鳩が平和の象徴になったのは「ノアの箱舟から放たれた鳩がオリーブの枝をくわえて戻ってきたことから、洪水が終わり水がひいて平和になったことがわかった」という旧約聖書の話に由来するそうだ。
たばこ「ピース」の鳩も確かに何か枝をくわえている。「オリーブをくわえていない鳩は平和のシンボルとは言えないので食べてもいい」なんて屁理屈を述べたくもなるが、美味しければ食べたらいい。中華料理での鳩は初めての経験だが、フランス料理店で鳩は何度も食べたことがある。ハトと言うと平和を思い浮かべるが、ピジョンと言えばよだれが出てくる。
世界に「鳩=平和」のイメージが広まったのは1949年パリ国際平和擁護会議でピカソのデザインによる鳩のポスターが作られてからだそうだが、フランス人はそんなことに構わず食べてしまうのだから日本人が鳩を食すのに抵抗感を持つ必要もあるまい。
鳩の生菜包(サンチョイパオ)