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2006年10月31日

[サッカヴァン]②[四谷]

再び今年見つけたお気に入りの店へ。

再びサッカヴァンに行った。前と同じように杉本オーナーが迎えてくれたが、顔は無表情だ。覚えていないのかな?と思ったら、「今日も前のお席と同じでよろしいですか?」と来た。「銀髪グルメ紀行に書いたんですよ」と言ったら「ハイ、見させていただきました」。
ここで初めて笑顔が出た。本当にクールな美男子だ。

前回と違う料理、前菜にあたるものを2種、メインとして2種を選んだ。ワインはスペイン産のAlejandro Fernandez。杉本氏イチオシのいい赤ワインらしい。

前菜2種

1品目はたっぷりキャベツアンチョビ風味のアーリオ・オーリオ。アーリオはにんにく、オーリオはオリーブオイルとのこと。塩味軽めのアンチョビとガーリックオイルがキャベツにかかっている。

2品目は天然きのこのオリーブオイル焼き。香茸、生源寺茸(坊主茸)、栗茸をシンプルに焼いてもらった。オーナーの田舎・長野から取り寄せた天然の茸を楽しむためにメニューにないものを頼んだ。料理が出てきてすぐは茸の匂いに圧倒されたが、慣れてくるとかぐわしく思えてくる。「みじん切りのベーコンが隠し味として実にいいですね」と言ったら、ベーコンではなくハモンセラーノだと返された。美味いはずだ。

自家製ハム、骨付きラム

サッカヴァンのお奨め料理素材に自家製のハム、ベーコン、ソーセージがあるが、その中からハムを選んだ。これがとんでもなく美味い。10日間、塩と香味野菜に漬け込み、炭火で香りをつけたそうで、確かにハムなのだがこれはハムではない。これがハムなら今まで食べて来たロースハムは何だったのだろうと思った。価値ある700円だ。

骨付仔羊のロースト・バジリコソース添えも本当に美味しいのだが、ロースハムが秀逸過ぎた。それでも1,400円はお値打ちの料金だ。

2回この店に来て、段々店が意図しているものが分かってきた。いい材料を探して取り寄せる。加工できるものであれば、自らベストの状態に加工する。料理はシンプルに素材の味を引き出す。高級店のような華麗な料理とは異なるが、シンプルにリーズナブルな価格で秀逸な料理を提供してくれる。

もちろんプロだからこそ出せる料理ではあるが、我が家での晩餐のように落ち着く。もっとも、我が家の晩餐中にはいつもテレビが耳目を一身に集めており、肝心の料理は脇役に追いやられてしまっている。従って、「我が家の晩餐のように」との表現は正しくないのかもしれない。「我が家の理想の晩餐のように」とした方が適切だろう。

あれこれ感心して食べている間に、サッカヴァンの意味をまたも聞きそこなった。今度、自家製ベーコンとソーセージを食べに行ったときに聞くとしましょうか。


葡萄酒サッカヴァン
東京都新宿区愛住町4-1 湯本ビル2F
03-3358-7650
http://www.sacavin.jp

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2006年10月30日

[馬太郎](五反田)

馬太郎と言ってもお寿司屋さんです。

大学生のとき酔っ払って金がなくなると五反田に行った。友人のお母さんがやっていたスナックがあり、そこでタダ酒を飲むのが目的だった。そのお母さんに「バッカス」という有難いあだ名をいただいたわけだが、その頃から有名で行きたいと思っていた店が馬太郎だった。

Yさんの会社が五反田だったので、約30年も前の記憶が蘇った。「そうだ、馬太郎に行こう!」 予約を入れようと電話したら、カウンターは予約できないと言われた。6時に待ち合わせをして行ったらガラガラで、Yさんがカウンターにいるだけだった。お店の人が6時なら問題なく座れると言ったとおりだった。

付け出しは岩海苔。あん肝は今シーズン既に何度か食べたが、鱈の白子は初めて。ホカホカで出てきた。もっと寒くなって河豚の最盛期になるまで白子の主役は鱈である。

馬太郎はカウンター寿司屋としては大きな店だ。満席になると板さんは大忙しになるだろうが、客がまばらなお陰で二人の板さんが話しに付き合ってくれた。
お奨めはさんまの刺身にわたを味噌で溶いたソースをつけて食べる一品。他のお奨めの刺身はかつお、さば、あじ。比較的大衆的な店なので、青魚が多いのも頷ける。

馬太郎は戦後すぐに居酒屋として五反田に生まれた。その頃の店の売り物が馬肉だったことから店名を馬太郎としたそうだ。寿司屋に変わって既に40年位経つらしいく、今は2代目が店を仕切っている。それなら馬刺しを食べないわけには行かない。

残念ながら信州産の馬刺しは熊本の「菅乃屋」や銀座の「こじま屋」などで特上馬刺しを食べてしまうとちょっと辛い。気前よく厚切りの刺身を出してくれたが、もう少し薄切りにしたらいい勝負を出来たかも知れない。いずれにしても馬肉の他の部位はないので馬肉専門店並みにはいかない。創業魂を味わうと言った方がいいだろう。

最後に握りを頼んだ。これもお奨めに従ったら馬肉と青魚のいわし、こはだ。それと江戸前の穴子だった。

熱燗を飲みだした頃から気になっていたのがお猪口。

オーストラリアから帰国して感動した純米の「あさ開」の文字が書かれている。思い出話を始めたら後ろにいた女将が話しに入ってきた。「あさ開」がまだ東京であまり知られていなかった頃、いち早く馬太郎がこの酒を採用した。「あさ開」にとっては恩人とも言える店で、大量のお猪口を店に進呈したそうだ。お猪口の文字は手書きなので、一個一個が微妙に異なる。

女将は銀髪を気に入ってくれたのかお猪口を我々にプレゼントしてくれた。ところが、後ろの棚の荷物を取る間に、酔っ払い二人組はお猪口の存在をすっかり忘れてしまった。

カウンターに残して来てしまったお猪口。折角プレゼントしてくれた女将に申し訳ないやら、手に出来なくて悔しいやら、まったく酔っ払いは困ったもんだ。


すし屋の馬太郎
東京都品川区東五反田1-15-4
03-3449-0462


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2006年10月29日

うま味調味料

漬物にうま味調味料

両国の蕎麦屋「業平屋」に行った。この店は蕎麦だけでなく女将さんが作る惣菜が美味い。蕎麦は大将、惣菜は女将と役割分担ができている。この店の冬の人気者は白菜の漬物である。白菜の漬物を見ると、いよいよ冬が迫ってきたように感じる。

白菜が出てきた途端にあちこちから箸が伸びて、写真を撮る間もなく半分ほどがなくなった。

銀髪も自分の皿に盛って食べ始めたのだがちょっと漬かり方が浅い。そこで醤油をかけようとしてふと思い出した。「昔、白菜の漬物には必ず味の素をパラパラと振りかけ、醤油をかけて食べたもんだよね」と話したら、中年男性全員が「今でも家ではそうして食べる」と言ったのには驚いた。業平屋のテーブルに味の素は置いてないのが皆残念そうである。

ネットで調べたら「日本うま味調味料協会」なるものがあることを知った。「池田菊苗博士が、こんぶのおいしさのもとがグルタミン酸であることを発見してから、まもなく100年が経とうとしています」とある。この協会の名称は「日本グルタミン酸協会」「化学調味料工業協会」と替わり、1985年に現在の名称になっている。食品添加物に対する批判が強まったことが名称変更の理由のようだ。

30年ほど前、オープンキッチンの中華料理店で料理人の動きを楽しく見ていたとき、玉じゃくしで大量の白い粉をすくうのを見て目を剥いた。「あんなに塩を入れるのですか?」と聞いたら、それが味の素だった。その頃、グルタミン酸ナトリウムが「中華料理症候群」と呼ばれる頭痛、発熱、吐き気の原因として槍玉に上げられていた。
「日本うま味調味料協会」は、外部機関の様々な検証によって中華料理症候群は根拠のない中傷と結論付けた。

ところが2000年頃からのラーメンブームで、化学調味料を使っていないことを示す「無化調」を掲げる店が人気になったことから、若い人たちに再び悪役としてのイメージが浸透した。化学調味料たっぷりのインスタント・ラーメンを、彼らが半ば主食にしているのは何とも皮肉である。インスタント・ラーメンも粗悪食品と何度も槍玉に挙がってはいるけれど。

自分の舌に絶対の自信を持っている友人がいた。彼は一口食べれば化学調味料を使ったか否かが分かると威張っていた。ある中華料理屋で、彼は一口食べて「この店の料理は食えない!」と怒った。銀髪はそんな舌の持ち合わせはない。店員を呼んで尋ねたら、今度は店員が怒った。化学調味料は入っていなかったのだ。

うま味調味料協会が悪い印象の「化学」を「うま味」に替えて、悪評を払拭しようと努力しても、「入っている」と言えば悪口になってしまう。営業妨害になる惧れもあるので、公で口にする場合は、店の人に事実を確認するべきだろう。

もっとも、どんなに安全性を証明しても、体に合わない人が居ても不思議ではない。一種のアレルギーは存在するだろう。化学的に合成していない蕎麦や甲殻類にアレルギー反応を起こす人もいる。

合成の調味料や添加物が入っていない食品を探すことが困難になってしまった今、容認するか毛嫌いするか、難しい選択になってしまったのは確かだ。

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2006年10月28日

[串TEN](日本橋室町)

安くてそこそこ美味しい店を見つけた。

東京は高層ビルが多く、洗練された街とのイメージが強いが、至る所に低層木造建築物に囲まれた路地がある。中央通りを挟んで日本橋三越と反対側の一画にもそんな路地があり、たくさんの小さな飲食店がひしめく。高級店もあるが、殆どはサラリーマンの懐に優しい店のようだ。

串TENは串揚げ1本150円の店だ。グルメ紀行の取材で疲弊した我が財布にはオアシスに見えた。立ち飲み屋といってもいいような店だが、背が高い椅子が置いてある。背もたれは無いに等しいものなので、ゆったりと座ることはできないが、無いよりましだ。

揚げ物に行く前にたこわさび、牛すじ煮込み、手羽先唐揚を頼んだ。

たこわさびは何の変哲も無いものだが、牛すじ煮込み(480円)は量もあり立派。手羽先は山椒、七味、ブラックカレー、オリエンタルカレー、マジックスパイスの5種類の味が選べる。銀髪は山椒を食べたが、結構オツな味で良かった。もっと山椒を効かせてもいいくらいだ。

ここまでは悪くない。さて本番の串揚げに行くことにした。ふぐ、角煮、チーズ巻き、ウズラ、しいたけ、ぎんなん、つみれ、ごぼう入りつくね、キスのしそ巻き、たちうおなどを食べた。

150円だからふぐはもちろんトラフグではない。干物にされることが多いシロサバフグだ。毒が無いので家庭でも調理できる。安くてもフグ独特の食感と甘味がある。
角煮は紛れも無く柔らかく煮込まれた角煮。わざわざフライにすることもないだろうけれど、意外といける。他の串揚げも悪くない。

店員二人を誉めまくって食べている間は良かったが、調子に乗ってアドバイスを始めてしまった。串揚げは美味いのにテーブルの上に薬味は殆どない。辛子だけでなく、塩や醤油などに気をかければ「こだわり」の店に見える。「柚子胡椒を置いたら面白いよ」などと余計なことを言うものだから、店員は気分を害したようだ。

不思議に思って「創作串揚げは二人で考えているの?」と聞いたら、「本社の商品開発部門が考えます」との返事。串TENは居酒屋チェーン「てんのてん」のグループ店。店員の二人はマニュアル通りにやるだけで、客の意見を聞いても煩わしいだけのようだ。

「てんのてん」のグループ店だから一定の水準を維持しているが、アルバイト店員に高い意識を持たせるのは難しいだろう。

店の空気が淀んでしまったので困惑していたら、4人連れの若いサラリーマンたちが入ってきた。女性もいるので一気に店の空気が変わった。潮時である。

「もったいないなー もっといい店になるのに‥」と呟きながら、2軒目を目指した。

串TEN 日本橋三越前店
東京都中央区日本橋室町1-12-12 水島ビル1階
03-3272-1115

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2006年10月27日

[葡萄屋](吉祥寺)

ステーキの焼き方はプロにはかなわない。

「吉祥寺に来てください」と言われて戸惑った。美味しい料理屋は銀座・日本橋にも多い。わざわざ吉祥寺でもあるまいと思ったが逆らえない。「葡萄屋で」と言われてどっかのチェーン店ではないかと不安になった。

吉祥寺駅から歩いて数分、東急百貨店の横に葡萄屋はあった。店構えからするとチェーン店らしくない。吉祥寺では結構有名な老舗レストランで、もちろんチェーン店ではなかった。ビルには炭焼きステーキハウスの「葡萄屋」の他にしゃぶしゃぶ、焼肉、喫茶、バーなどの飲食店が入っており、全て同じ経営である。現代画家の巨匠の絵が飾られるなど、立派な雰囲気の店だった。

メニューを見ると、伝統的な料理が並ぶ。奇をてらった料理は見当たらない。先方はコーンポタージュスープ、パルマ産生ハムとパルミジャーノチーズ、サーロインステーキ200グラム、デザートと大食だ。銀髪はエスカルゴの殻焼きブルゴーニュ風とヒレステーキ200グラムだけを頼んだ。

生ハムとエスカルゴ

先日「イタリー亭」でがっかりしたので、エスカルゴは料理法を何度も確認した。ブルゴーニュ風とはガーリックバターにハーブを混ぜて、オーブンで焼き上げる期待通りのものだ。たっぷりのスープが溢れ出しているので、フランスパンを浸して食べた。先方の生ハムも少しいただいて、赤ワインを飲む。至福のときである。
ワインリストにはリーズナブルなワインが並んでいるのが嬉しい。

サーロインステーキとヒレステーキ

今日の肉は宮崎牛で、焼き方はレアにしてもらった。炭火焼き網でベテラン調理人が焼いてくれる。八重洲「島」に匹敵するような見事な焼き方だ。切ってみると確かにレアなのだが、血がまったく流れてこない。身は赤いのに火が中までちゃんと通っている証拠だ。

レアのステーキの断面

食べ終えてから他の客の肉を焼いている調理人の所まで行って話を聞いた。
均等に火が行き渡るように肉を網のどこに置くかがポイント。場所を変えながら均等に火が通る様に丁寧に焼いていく。脂がきれいに肉に入り込んでいるいい和牛でなければ上手に焼くことは難しいらしい。
我が家のフライパンで焼いたレアのステーキは、切るとピンク色の肉汁が皿を覆ってしまう。ステーキ炭焼き20年以上のプロの技は本当に素晴らしいと思った。

銀座に比べれば料理に華やかさが欠けるけれど、リーズナブルな値段で立派なステーキが食べられる。
都心でなくともいいレストランがあることを痛感した。


葡萄屋
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-8-1
0422-22-0555
http://www.budo-ya.jp

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2006年10月26日

[なだ万](帝国ホテル)  しゃぶしゃぶ

「味6:サービス4」かな?

帝国ホテルでお客様と待ち合わせをした。彼が何を食べたいか事前のチェックは出来ていない。銀座方面に歩けば星の数ほど飲食店はあるが、待ち合わせの時間が5時なので早く開く店でなければならない。いろいろ考えた末にホテル内で食べることにした。帝国ホテルには有名店が多数出店している。

銀髪的には寿司屋と言って欲しかった。お客様と顔を合わせて「何を食べましょうか?」と尋ねたら、しばし考えている。寿司か天ぷらか懐石か思案していると思ったら、出てきた言葉は「いつも和食なので肉にしよう!」だった。でも慌てない。帝国ホテルは和洋中何でもOKだ。迷わず「なだ万」にした。すき焼きやしゃぶしゃぶがあるはずだ。

「なだ万」はあちこちにあるが最近入ったのは「なだ万ニューオータニ店」。帝国ホテルは随分前に来たような気がするが、記憶は曖昧である。まだ5時を少し回ったばかりなので個室を望まなければ予約なしでもすぐに入れる。先客は一組だけで、ちょっと寂しい。

しゃぶしゃぶのコースを頼んだ。

前菜、刺身、サラダ

我々の担当をしてくれたのは尾花さん。今春入社したばかりと言うが、なかなかしっかりしていて感じがいい。料理の説明も的確である。「なだ万の料理は全部試食したの?」と聞いたら、「ハイ!」と明るく答える。「いいえ」と答える店が多くなってしまったが、流石になだ万だ。当たり前のことをしっかりやっている。アルバイトでなく正社員だから出来るのかもしれない。アルバイトに試食させたら食い逃げする輩が殺到するだろう。

メインのしゃぶしゃぶ


宮崎牛だというが、きれいな霜降りの肉だ。3人とも一人前をペロリと食べてお代わりの追加オーダーをした。肉は自分でしゃぶしゃぶするが、野菜などは尾花さんが取り分けてくれる。ボトルで頼んだ焼酎も彼女が我々の好みに合わせて作ってくれる。

1時間もすると他の席も大方埋まってきた。同伴と思われるカップルも数組あるが、隣のテーブルの女性二人が美女度上位を独占しているとお客様が言う。世の若い男どもは何をしているのだろう。もったいない、もったいないと彼女たちに聞こえそうな声でぼやくが、彼女らにとっては大きなお世話かもしれない。

野郎3人の色気のないテーブルでも、サービスする尾花さんがいるからお客様は満足気だ。ニューオータニ店の方が外の景色、内装など帝国ホテル店を凌駕しているが、サービスはこちらの方が上。尾花さんのお陰だ。

デザートはアイスクリーム、シャーベットの中から選ぶ。3人が選んだのは胡麻、抹茶のアイスクリーム、柚子のシャーベット。ちょっとずつ味見したが、中年3人が小さなスプーンを伸ばしあっているのはゾッとする光景かもしれない。

空いていたからか、いつもそうなのかは分からないが、接客態度には充分満足した。
「店の満足度は味6で、接客サービスが4の割合ですね」と言ったら、みんな大きく頷いた。


なだ万 帝国ホテル店
東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル内B1
03-3503-7981
http://www.nadaman.co.jp/

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2006年10月25日

[兄夫食堂] (赤坂)

今度は典型的な現代の韓国家庭料理を食べに行った。

毎朝、ヤクルトおばさん(お姉ちゃん?)がやって来る。大の韓国びいきの彼女に美味しい韓国料理屋を聞いたら、新橋「梁(ヤン)の家」がいいと言う。2日後の飲み会は4人だったので韓国料理は絶好に思えた。電話を入れたら韓国語で通じない。日本語の分かる店員に代わってホッとしたら、返事は予約で満席。已む無く赤坂の兄夫食堂に行くことにした。
兄夫食堂もテレビで再三紹介されており、いつか行こうと思っていた店だった。それに今日のスポンサーは長兄である。店の名前にマッチしているではないか。

千代田線赤坂駅からすぐに店はあり、ビル一棟が全部兄夫食堂になっている。他のビルにも系列店があり、随分と儲かって拡張していったのだろう。入り口には韓国の有名人が多数訪れたようで、色紙がたくさん貼ってあった。韓流ファンなら大喜びだろうが、我々4人誰一人としてファンではなく色紙の名前を見てもチンプンカンプンだ。

あれこれ選ぶのも面倒くさいので、2,800円のコースを食べて、足りなければ追加することにした。注文は4人前からなのでちょうどいい。

付け出しを食べている間にチジミが出てきた。つなぎの溶き小麦粉が少ないので海鮮自体の味が楽しめる。揚げたようにカリッとしたチジミもいいが、これも悪くない。

厚焼き卵はとにかくでかい。どうやって焼いているのだろうか。チャプチェにもちょっと驚いた。自分の知るチャプチェより随分と汁気が多い。その割に味が濃く、意外といける。

ポサムは蒸した豚バラ肉や他の具を白菜に巻いて食べる。兄が大好きで、これが入っていたので2,800円コース料理を頼むのに納得したのも頷ける。

メインは鍋料理で数種類から選べるが、お店の人の推薦に従ってコップチャン鍋を食べることにした。

韓国もつ鍋と言ったところで、テッポウやハチノスなどの内臓が入っている。
唐辛子やコチジャンの辛さが銀髪にはちょうどいいが、他の3人は「美味い、辛い」を繰り返している。
これだけ食べるとさすがにお腹が一杯になってきて追加オーダーをする気がなくなった。厚焼き卵と鍋が少し残ったぐらいだ。

コースにはアイスクリームが付くが、4人なので4種類頼んで食べ比べをした。追加でかぼちゃのアイスクリームを頼んだが、味見したみんながかぼちゃは入ってないと言う。そんなはずはないと店員に尋ねたところ、明確な答えは返ってこなかった。「かぼちゃに入ったかぼちゃもどきのアイスクリーム」と結論付けた。

兄夫食堂は各階で雰囲気が違う。1階に入るとまるで韓国にいる雰囲気だ。銀髪はソウルに何度も行ったが、韓国庶民が行く店が一番好きだ。アメ横みたいなところで食べた時は楽しかった。

兄夫食堂はそんな思い出をちょっと呼び起こしてくれる店だった。


兄夫食堂
東京都港区赤坂2-13-17 シントミ赤坂第2ビル1F
03-5575-3884
http://www.hyungboo.com/2006/main/

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2006年10月24日

[御廚](日本橋) 

日本橋高島屋の裏通りにある韓国宮中料理の店に行った。

「御廚(おじゅ)とは李朝王宮における厨房を意味する御厨(みくり)のことです。」
HPのこの記述を読むと店主のこだわりを感じる。しかし、店側の意思がいかに崇高であろうと、客に伝わらなければ仕方がない。店名も説明も、もっと分かりやすくした方がいいように思える。

「化学調味料、合成保存料、着色料等の人工的な素材は一切使用しない」こだわりは評価できる。入り口のドアには禁煙マーク。4つの個室がある2階、大広間の3階まで全館禁煙なのも嬉しい。店内も清潔でいかにも女性好み。実際、1階のカウンター席は銀髪を除いてすべて女性だった。

同行のHさんはクジョルパンセット(2,500円)を頼んだ。韓国のり、チャンジャ、ナムル、鱈三種の和え物、玉子焼き、えびとくらげの和え物、キムチ、白身魚の卵巻き、中央に焼肉。9つに仕切った器(クジョルパン=九折板)に美しく盛られて出てくる。

銀髪はコリコムタン(牛テール煮込みスープ)セット(2,000円)を食べた。スープは朝鮮人参やナツメが入った薬膳風。コラーゲンたっぷりのスープはお肌にいい。男がお肌をきれいにしてどこが悪い!てなもんだ。

料理が出てくるまで夜のメニューを見せてもらった。宮中料理と謳っているだけあって、どれも品のいい感じだ。韓国料理と言えば焼肉とキムチ以外の料理しか思いつかない人には珍しい料理の数々だ。
韓国料理といえば唐辛子とにんにくが決め手だが、宮中料理は別物。刺激は強くなさそうだ。

メニューには宮中料理がどれかわかるように印がついている。現代の香辛料ギンギンの韓国料理と比べてみると面白い。にんにくの原産地は中央アジア、アフガニスタン近辺だとの説が有力。唐辛子はもちろん南米が原産地。外来種が現代韓国料理の味を決定付けているのが面白い。

韓流ドラマの影響で、韓国旅行をした女性たちは多い。韓国で食べたものを懐かしがってくる人も多い。料理人を題材としたドラマが放映されていることも、お店にとっては追い風だろう。

宮中も現代も韓国料理に興味はない。興味があるのはコリアン・クラブだけ、という人もいるが、それじゃ体も財布も壊れてしまいますよ。
何しろ、コリアン・クラブときたら…   イヤイヤこの話は銀髪グルメ紀行にはそぐわないのでやめておこう。

たまには品のいい宮中・薬膳料理もいいかもしれない。

李朝宮中料理 御廚
東京都中央区日本橋2-6-6
03-3244-0010
http//www.oju.jp

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2006年10月23日

[近江湖東](新宿)  鉄板焼き

以前紹介した近江湖東の新しい店でご馳走になった。

近江湖東はホストクラブ「愛」の前にあると言われた。ホストクラブなど縁がないが、歌舞伎町裏に派手な看板を見たことがあるのを思い出した。多分あそこだと思った場所は別のホストクラブだったが、すぐ先に「愛」を見つけた。見当違いではなかったようだ。

新宿の近江湖東は赤坂店に比べるとこじんまりとしているが、なかなかきれいなお店だ。左に鉄板のカウンター席、右にテーブル席がある。カウンターに腰掛けて直ぐにオーナーがやってきた。オーナーに料理はお任せすることにして今日は食べるのみ。楽チンだ。

付け出し、すずきの刺身、豚角煮

鉄板焼き屋のメニューにはオーナー、料理人ともに頭を悩ませているようだ。メインには近江牛がある。定評のある和牛が控えている訳だが、そこにいくまでどのようなアプローチをするか。腕の見せ所でもある。

ほうれん草、イカの丸焼き

にんにく、バターの香りが本当に美味しいほうれん草だった。これを食べて何度か家でもやったら大好評だった。イカもわたが効いている。

鉄板焼きはステーキのイメージが強いが、魚介類、野菜、なんでも焼ける。ただ焼くだけでは飽きられる。他との差別化もできない。最近ではクレープなどのデザートさえ鉄板で作る店もある。鉄板焼きでもアイデアが要求され、遊び心が料理人には大事かもしれない。

赤こんにゃく、牛刺し、ステーキ

赤こんにゃくは初めて食べた。近江名物だそうで、派手好みの信長がこんにゃくを赤く染めさせたとの説もあるそうだ。赤いだけで普通のこんにゃくと味が違うように思えるから不思議だ。こんにゃくのステーキは珍しくないが、黒い鉄板には赤の方が映える。

牛刺し、ステーキは見ての通り。説明の必要はないだろう。

美味しい赤ワインを2本も開けて、腹も一杯なのだが「ガーリックライス食べますか?」と聞かれたらノーとは言えない。また、体重を落とすのに苦労するなー、と思いながらもパクついた。

さあ、元気がついたのでもう一軒だ!

近江湖東 新宿店
東京都新宿区歌舞伎町2-28-16 ウィザードセブンビル1F
03-3205-1146

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2006年10月22日

「風と共に去りぬ」のカクテル

映画に因んだカクテルをショットバー「風長閑」で飲み続けた。

銀髪がもっとも好きな映画が「GONE WITH THE WIND(風と共に去りぬ)」だ。今でも繰り返し上映されているので若い世代でも見た人は多いだろう。主演のクラーク・ゲーブルは原作者のマーガレット・ミッチェルが主人公レッドバトラーのモデルにしたと言われるだけに、ダンディで男臭いはまり役だ。アトランタの炎上シーンを見に来て偶然にも大役を射止めたイギリス女優ヴィヴィアン・リーは、美しく情熱的なスカーレット・オハラを見事に演じきった。

我儘で自己中心的ながらも、愛らしく魅惑的なスカーレットはバーテンダーにとっては格好の新カクテル開発の対象だったはずだ。サザンカンフォート(アメリカン・ピーチ・リキュール)、クランベリージュース、ライムジュースをシェイクして作るカクテル「スカーレット・オハラ」 は以前紹介した。これは確立されたレシピのようだが、主演者の名を冠したカクテルもある。

ヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブル

勝木さんのレシピ帳によるとカクテル「ヴィヴィアン・リー」はクレームドぺシェ(桃のリキュール)、ミント、りんごジュースをシェイクしてクラッシュアイスに注ぐ。風と共に去りぬの舞台となったジョージア州がピーチ・ステートと呼ばれるほど桃はシンボル視されていることから、桃のリキュールが使われているようだ。

カクテル「クラーク・ゲーブル」はバーボン、サザンカンフォート、アプリコットジュースをシェイクしてクラッシュアイスに注ぐ。バーボンはクラーク・ゲーブルのイメージから外れていないが、サザンカンフォートは甘過ぎる。

「ヴィヴィアン・リー」「クラーク・ゲーブル」両方ともクラッシュアイスに注ぐのは、南北戦争の破壊のイメージを表しているのではないかと石井さんが推測する。甘いカクテルなのでうんと冷やして飲みやすくしたのかもしれないと銀髪が重ねる。

映画の中で記憶に残っている酒を飲む場面は、未亡人になった喪服姿のスカーレットがブランデーをあおっている場面だ。レッド・バトラーが突然訪ねて来たので、スカーレットが酒臭い息をごまかすため慌てて香水でうがいをする。しかし、スカーレットは、レッドにキスをされて飲酒を簡単に見破られる。

この場面をイメージして、石井さんにブランデーベースのカクテルを発明してはどうかとけしかけた。男が飲めるような甘味を抑えたカクテルを作って欲しいと頼んだ。

風長閑のヴィヴィアン・リー

風長閑版のカクテル「スカーレット/ヴィヴィアン・リー」は、ブランデー、ダークラム、クランベリージュース、グリナデンをシェイクしたもの。クランベリーの赤色が、南部の赤い土地、スカーレットが拳を振り上げる夕焼けのシーン、スカーレットの情熱を表す。ヴィヴィアン・リーがイギリス人であることからスコッチを混ぜるべきかもしれないが、ブランデーとスコッチでは喧嘩しそうなのでダークラムを加えたそうだ。ラムはイギリスの植民地から広まった酒だ。

石井さんはこれが完成品と思ってないかもしれないが、男でも飲めるしっかりしたカクテルになった。

スカーレット/ヴィヴィアン・リーはカクテルになっても、男に愛された方が嬉しいに違いない。


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2006年10月21日

カクテル「アンタッチャブル」

映画に因んだカクテルを飲もう!

一軒目でしっかり飲んで、いつものように日本橋「風長閑」になだれ込んだ。どれだけ飲んできてもここに来たらギネスビールを飲むところから始めるのだが、今日は気分が高揚しているのでちょっと遊ぶことにした。バーテンダーの石井さんが「アイラにしますか?」と言いながら瓶に手を伸ばすのを制して、「今日はカクテルにしよう」と言った。

何にするか悩んでいたら風長閑の女性スタッフ・勝木さんが手帳を持ってきた。それにはたくさんの映画や俳優の名のカクテル・レシピが載っていた。一番に目に入ったのがアンタッチャブルだった。

アンタッチャブルと聞いて思い描くものは世代によって異なるだろう。若い人なら「エンタの神様」で人気が出たお笑いコンビだろうか。彼らはその芸名を映画からヒントを得たそうだが、アンタッチャブルと聞いてケビンコスナー、ショーンコネリーなどが出演した映画を思い出すのはまだまだ若い世代だ。

銀髪より上の世代であれば、テレビシリーズこそが「アンタッチャブル」である。禁酒法時代のアメリカで、エリオットネス(ロバート・スタック)率いる財務局捜査官たちとアルカポネとの対決を、毎週ワクワクして見たものだった。ギャングたちは捜査官たちをアンタッチャブル(触れざる者、買収されざる者)と呼んで恐れた。

♪ターララッターラッター タラララ ラッター ラッター タッター♪ に節をつけられる人も多いだろう。銀髪が歌ったら、風長閑のママに下手糞だと笑われた。

カクテル「アンタッチャブル」はラム、カンパリ、レモンジュース、ソーダで作る軽いカクテルだった。カンパリの赤は血の色を表現しているのだろうか。

血の色であればジンとトマトジュースが主体のブラッディ・マリーがある。ジンを多めに入れて、塩コショウ、タバスコを加えた辛口のブラッディマリーが好きだ。JALのラウンジで出発を待つ間に自分で作ってよく飲むが、同行者にトマトジュースと偽って一口含ませると誰もが嫌な顔をする。それを見るのが堪らなく愉快だ。

カクテル「アンタッチャブル」は銀髪には軽すぎて顔をしかめてしまう代物だった。映画であれ、テレビシリーズであれ、アンタッチャブルはもっとハードボイルドのイメージが強い。テレビシリーズを興奮して見ていたおじさんたちにオーダーさせるには、ちょっと違うレシピが必要だと思う。

もっとも、このレシピの考案者はこんなシーンを思い描いて、女性のためのカクテルとして作ったのかもしれない。

カウンターで男が一人で飲んでいるところに美女が現れる。待ち合わせの様子ではない。
少し離れた席から男が声をかける。
男「一杯ご馳走しましょう。何にしますか?」
女「アンタッチャブルをいただくわ」
カクテルが出て、近寄ろうとする男を一瞥して女が言った。
「こんなカクテルの一杯では私はアンタッチャブルよ」


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2006年10月20日

[イタリー亭](銀座)

日本のイタリア家庭料理の店に行った。

「今日は中華にしましょうか?」と聞いたら「デブになるから中華は嫌だ」と言う。昼休みに日本橋界隈を歩き回った。蕎麦とか、野菜中心の鍋料理の店で宴会ができる店を探したのだ。いくつか目星をつけて帰ったら部下に告げられた。「イタリー亭がいいそうです」と。耳を疑った。中華よりデブになる料理だ。

イタリアでの家庭料理がどんなものか知らない。イタリー亭は日本の家庭でお母さんが作るイタリア料理が中心の店だ。従って、日本のイタリア家庭料理の店。つまり、スパゲッティ、グラタン、ピザが中心のお袋の味と思ってもらえばいい。

女性であればイタリアンと言えば洒落たフレンチ風のものを思うだろうが、野郎どもにとってイタリアンとはまさにイタリー亭そのものだ。オーストラリアに居たとき、日本からの出張者を本格イタリアンに連れて行ったらスパゲッティがないとご機嫌斜めになった。シェフに頼んでメニューにないスパゲッティを作ってもらって助かったことがある。男は意外と保守的なのだ。

この店は前にも何度か来た事がある。一番好きなのはイカ墨煮。

市販のイカ墨を使っていると思ったが、店で墨を取り出して作っているとのこと。そのとき大変な作業だと感心した。この店でもっとも気に入っているイカ墨煮の他に、アンティパスト、エスカルゴを銀髪が頼んで、それ以外の注文は他の連中に任せた。

サラダがいきなり出てきて頼んでないと騒いだが、これがアンティパストサラダだった。ほの暗い店内で老眼の欠点が出た。サラダの文字を見落としていた。
「チキンです」と言われて皿を見たら黒い物体。烏骨鶏かと目を見張ったが、店員の間違い。エスカルゴだった。殻に入ったエスカルゴを予想していたので分からなかったが、味も期待したにんにくバター味ではなかった。食べてから以前この店で同じ勘違いをしたことを思い出した。

マカロニグラタン、ナスのグラタン、ピザ、チキン、スパゲッティが2種類。部下がウマイ、ウマイを連発する。日本のイタリア家庭料理を好む男は多い。まだ他に客がいないため、すべての料理が出されるのに30分もかからなかった。出来た料理からどんどん持ってくるように頼んだのはこちらだったが…


ピザは一切れだけ食べた。グラタンも一口だけ。若鳥のガーリックオイル焼きはみんなに切り分けてあげて、銀髪は骨についた僅かな肉をついばんだ。これだけの高カロリー料理を腹に収めたら、体重を落とすのに苦労するだろう。スパゲッティも一口のつもりだったが、店の人が親切にも取り分けてくれたので逃げることができなかった。それでもみんなが腹をさすって苦しんでいるのに、銀髪は涼しい顔が出来た。

勘定を済ませて店を出ようとしたら、階段の上には恋人同士が我々が上りきるのを待っていた。若い二人には適当な店だろう。おじさん軍団が去った後の店は、ゆったりと流れる時間の雰囲気に姿を変えたに違いない。


イタリー亭
東京都中央区銀座1-6-8
03-3564-2371

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2006年10月19日

[祢保希](赤坂)

土佐料理を食べた。

日本全国回っているが、高知県に行く機会がない。接待となれば相手の意向が一番だが、ここは我がままを言わせてもらって土佐料理を食べることにした。祢保希の赤坂店はなかなか立派な店構えだ。名前を告げると2階の個室に通された。

掘りごたつ式の個室ではあるが、隣の席との壁は薄い。隣は外人客を接待しているらしいが、聞き覚えのある訛の英語がビンビン聞こえてくる。そう、オーストラリア人だ。陽気なオーストラリア人が一人でしゃべっており、日本人の声は殆ど聞こえない。「グッダイ マイト(Good Day Mate)!」と言って闖入したい気持ちをなんとか抑えた。

仲居さんが皿鉢(さわち)料理や鍋を薦めようとするが、単品を頼むことにした。

外せないのは鰹のたたき。四万十川のうなぎを使ったうざく、ごりの唐揚はすぐに決まった。

戻り鰹は脂が乗って美味い。しかし、テレビの料理番組において、豪快に藁で焼くシーンが目に焼きついているためか、期待を満たしてはくれなかった。ごりの唐揚はいい。これは期待してなかっただけに嬉しい。

珍味三種はさえずり(鯨の舌)、どろめ(かたくち鰯の稚魚)、酒盗(鰹の胃袋の塩辛)。
この中ではどろめが美味い。

コースターが面白いと言ったら、土佐の偉人5種類があるとのことで、もらって帰ってきた。

さて、次はかつおのコロッケ、と言ったところで相手が渋り始めた。これ以上、見慣れないものを食べたくないようだ。もう限界なのかもしれない。

鰹はらんぼ、青さのりの天ぷら、四万十川の川海老、ちゃんばら貝、めしいか、うつぼ、鯨各種部位、まだまだ試食したいものがたくさんあったが我慢した。
かつおのコロッケ、さつま揚げ、天ぷらを頼んだ。コロッケ以外は特別変わったものではない。

祢保希は赤坂だけでなく銀座、丸の内、渋谷、新宿などにもある。新メニューとして長須鯨すき焼きなどもある。すべて調査捕鯨の鯨と断っている。鯨は調査捕鯨以外に混獲で誤って網にかかったものも売られているが、混獲と称して実際は狙って獲っているものも多いらしい。祢保希の鯨は合法的に獲られたものということだろう。

土佐には司牡丹や酔鯨などいい酒もある。やっぱり現地で飲み食いしたいものだ。高知担当の部下の尻を叩かなくっちゃ。

土佐料理 祢保希 赤坂店
〒107-0052 東京都港区赤坂3-11-17
03-3585-9640
http://www.kazuoh.com/

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2006年10月18日

[メルヴェイユ](日本橋)

近くにいい店がまだまだある。

いいフランス料理屋があると聞いて首を傾げた。寿司屋「あきば」が目と鼻の先にありながら知らなかったのだから、フランス料理屋で知らないところがあっても不思議ではないと思い、ついていった。日本橋高島屋の近く、吉野寿司の裏手にメルヴェイユはあった。

オープンして2年が過ぎたばかりの店は、既に予約を取るのが難しい店になったらしい。この日も老境に達したグループ客とカップルが数組、女性同士のテーブルもあり満席になっていた。まずシャンパンで乾杯、明るく元気な糸澤支配人の説明で料理選びが始まった。

今日はご招待なので料理選びにちょっと躊躇したが、豊富なアイデア料理と糸澤さんの説明にすぐに引き込まれた。オードブル、魚料理、肉料理の順で進むコースを予定していたようだが、オードブルを2品と肉料理にしてもらった。メイン料理はステーキなどのオーソドックスなものが多く料理のイメージを描き易いが、オードブルは思わぬ逸品に出くわすこともある。オーストラリアに居たときにはよくオードブルだけを選んだものだった。結局オードブルが4品、肉料理が2品、我々の食卓に登場することになった。

アミューズ(突き出し)はフランス語の難しい名前がついているが簡単に言うと、左からカボチャのスープ、クリームチーズ入りのパイ、フォアグラのソテー。パンは自家製の黒オリーブ入りのパン。しっかりと味があってバターを塗る必要が無い。

最初のオードブルはウニ、カニ、ホタテ、ツブ貝、シマエビなどたくさんの魚介類を使った二品。左のジュレ(ゼリー)添えは焼きなすをベースにして、モロヘイヤと赤ピーマンのソースで囲んでいる。右は旬のカリフラワーをスープ仕立てにして、その中に料理が浮かんでいるように見える。崩すのを惜しみながら混ぜ合わせて食べた。

次のオードブルはえぞ鹿テリーヌとシーザーズサラダ。狩猟シーズン幕開けと共に、ジビエ(野生の動物)料理が食べられる。メルヴェイユ風と名付けられたサラダは、半熟卵を敷いて、野菜、ホタテ、タラバガニ、パルメチザンチーズ、パルマハムを乗せている。それに加えてから揚げにしたリードヴォー(仔牛の胸腺肉)をクルトン(揚げパン)の代わりに使っているが、これが素晴らしくいい香りを出している。

肉料理は牛、豚、鶏、鴨、羊、兎と種類が豊富だが、これまで美味しいものに出会ったことがない兎と糸澤さんお奨めのイベリコ豚を頼んだ。
オーストラリアでよく食べた兎は野生の兎だった。餌の質が不安定で、筋肉質の野生の兎は正直美味くなかった。今日の肉は飼育した兎だったこともあり、食べやすかった。豚足を詰めるなど工夫もしてある。
イベリコ豚はイメージ通り。バスク産唐辛子(万願寺唐辛子)の肉詰めが添えられていたが、肉詰めピーマンといった感じで良かった。

どの料理もかなりの仕事がなされており、料理人の気力・体力の強さを感じたが、松本シェフが31歳の若さと聞いて納得した。今回は素材同士のハーモニーを楽しむ料理を中心に食べたが、次に行くときは一つの素材とシェフとの真剣勝負が見える料理を食べようと思った。

オードブルに合わせて白ワインを飲んだ。肉に合わせたのはソーヴィニオン種主体のふくよかな赤ワイン。このワインにはチーズも欲しいと思ったら、チーズの品揃えも豊富で、立派なブルーチーズやウォッシュタイプのチーズもある。迷ったあげく、少しずつ切ってもらった。

最後のデザートはいつものようにスキップしようとしたが、銀髪用に特別に用意されたものと言われては逃げられない。食べてみて驚いた。まったく甘くない。シャーベットはロゼのシャンパンで出来ており、珍しくも完食してしまった。他の人にはただ苦いだけのシャーベットかもしれない。

完璧にアレンジされた祝宴にただただ感謝するばかり。またまた一本取られたなと思いながらも、思わず顔がほころんだ。


オーグー ドゥ ジュール メルヴェイユ
東京都中央区日本橋3-8-13
03-6202-1991
http://www.augoutdujour-group/me/index.html

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2006年10月17日

[イル ジラソーレ](新宿)

BYOって知っていますか?

BYOとはBring Your Own の略。オーストラリアではLicensed、Licensed & BYO、BYO、酒無しの4種類のレストランがある。Licensedの店では、お酒が置いてあり持込はできない。BYOだけの店は、飲みたければ自分で持込しなければならない。

新宿御苑前の「イル ジラソーレ」に行った。新宿には気楽に行けるイタリアンやフレンチが多いことに最近気付いた。銀座・日本橋界隈で食べるのに比べればはるかに割安だ。しかも「イル ジラソーレ」はオーストラリア式に言えばLicensed & BYOという嬉しいお店だ。

ところが、BYOが出来ると知ったのは帰ってお店のHPを開いてから。この日はお店のワインリストから選んだ。それでも非常にリーズナブル。料理を安くして、酒はとんでもない値段を取る店もあるから本当に良心的だ。

フルーツトマトとモッツァレラのカプレーゼ(800円)
生ハムとルッコラのグリーンサラダ(950円)

モッツァレラは先日行った「葡萄酒サッカヴァン」の方が美味かったが、値段が違うので納得。あちらは水牛のモッツァレラでこちらは普通のもの。

生タコとハマグリの辛い煮込みジェノバ風味(1100円)
フォアグラのソティ パルミジャーノリゾットのミルフェ(1400円)

洋食の場合、カタカナ言葉が何のことかさっぱり分からないのが難点だ。ジェノバ風味とはバジル、にんにく、松の実、エキストラバージンオイルで作ったソースで和えたものだそうだ。パルミジャーノはチーズの名前と分かったが、ミルフェはミルフィーユのこと、つまり重ね合わせて出てくるものと想像した。間違いではなかったようだ。

辛い煮込みといっても、イタリアンやフレンチでは辛い料理に出会ったことはない。思ったとおり、銀髪にはちっとも辛くない。タイや韓国料理に比べれば辛さはないと言ってもいいくらいだ。
フォアグラは値段に見合ったサイズで、味も分相応と言った感じだが、リゾットが意外に美味かった。

味やサービスに高級店並の物を求めたら酷だ。この値段で、この料理、しかもBYOもできる。充分ではないか。築地場内市場の「山はら」はお酒の持ち込みが可ということで驚いたが、イタリアンでもそんな店があるとは知らなかった。しかも持ち込み料がタダというのはオーストラリアより客にやさしい。

今度はちょっといいワインを安売り店で仕入れて、繰り出すとしましょうかね。

イル ジラール
東京都新宿区新宿1-12-5
03-5366-3822
http://www.ilgirasole.jp

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2006年10月16日

[いけ増](日本橋)

旬のものを手頃な価格でいただきたい。

いけ増は高島屋の右斜め前、JTBが入っているビルの地下にある。風月堂のビルを囲むような変形の土地なので、入り口は中央通ではなく横道に入ったところだ。創業57年とのことだが、ビルを建て替えてリニューアルして3年ぐらいになる。

勤め先の近くにある店なのに、最近あまり行かなくなってしまった。余りにも近いこと、何度も行っていること、席だけの予約は受けてくれないこと、などが理由だ。それでも飲みに出る時間が出遅れてしまったときは、自然と足が向く。

秋になって魚が美味しくなってきた。出来るだけ旬のものを食べようと、壁に貼られたメニューから数品を選んだ。

こはだ

高額で取引されていた新子はすっかり大きなこはだになって、安価で食べられるようになった。いけ増のような居酒屋でもメニューに載る時期だ。

かつお

戻り鰹は初鰹に比べると脂が乗って美味いと言われる。銀髪はたたきよりそのままの刺身の方が好きだ。薬味は生姜もいいが、にんにくも捨てがたい。

ぎんなん

熱々のぎんなんが出てきた。これも秋の味覚。

さんま

秋刀魚は文字通り秋を代表する魚だ。テーブルに置かれた途端に同僚に醤油をぶちまかれてしまった。銀髪であればこんなに大量に醤油をかけることはないが、大根おろしではなくさんまに直接かけるのは似ている。大根おろしにかけると大根の汁が染み出して、薄い醤油の海にさんまが浮かぶようになってしまうからだ。
上手に食べるならば、醤油をかける前に身を開いて中骨を取り除く。開いた身に醤油をかけて、その上に大根おろしを乗っける。そうすると、酒の肴としてみんなでつまむことができる。

しかし、さんまの塩焼きには白いご飯が一番だと思う。夜にはご飯を食べない銀髪だが、唯一さんまだけはご飯が欲しくなる。まあ、食べることはないけどね。


いけ増
東京都中央区日本橋2-2-6
03-3271-5685

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2006年10月15日

築地場内市場 2006年秋

魚が美味しくなってきたので久し振りの築地に行った。

先週、例年通り静かに一つ歳を取った。我が家では銀髪のための祝宴は催されないのが常だ。代わりに週末に自分が食べたいものを買ってきて、料理も自分でする。いつもの週末と同じだが、ちょっと贅沢をしてみる。築地に行った理由はそんなところにもある。

6時前に家を出て、6時半には築地場内市場を歩いていた。この時間にはマグロの解体があちこちで行われている。ビデオカメラを持った外人観光客が何組もいる。

時間がたっぷりあるので、市場内の全ての店を覗いた。最大の目的は本マグロをゲットすることだった。今年は青森県大間産のマグロがいつもより早く出回っている。しかし、手頃な大きさのものを売っている店は一軒だけだった。プロ向けの早い時間帯には、一般客向けに小分けしている店は少ない。

トロと赤身の柵(4,900円)は北海道産。北海道産と言っても、漁場は大間産と一緒だ。大間の対岸にある戸井港に水揚げされたので北海道産。ブランド力の差で、大間産より若干安い。札幌の「おたる政寿司」で教えてもらったことが役に立った。大間産はトロと赤身が混ざったぶつ切りのパック(1,400円)を買った。

もう一つの目玉は伊勢海老。2,500円のものを一匹買おうとしたが、店のご主人に3匹で3,800円のものを勧められた。あがる(死ぬ)直前のもので元気がないが味は変わらないと言うのでそちらにした。
マグロと同様に伊勢海老もこれから正月に向かって値が上がり始める。今が食べ時とのことだった。

イカは旬の新イカを買うことにした。柔らかな身は江戸前の刺身、天ぷらには欠かせない素材だ。墨イカの子供だから当然大きな墨袋を抱えている。ランチは定番のイカ墨のスパゲッティーだ。

殻つきの牡蠣がアチコチで売られていたが、20個入りか30個入りばかり。買おうかどうか随分迷ったが、ばら売りしている店にぶつかった。1個180円の釧路産を5個買った。

木更津産のあさりは新イカと同様にキロ1,000円。スーパーでは買えない立派なものだ。

最後に出口に近い八百屋でわざび(800円)を買った。いい刺身にチューブのわさびではかわいそうだ。横に松茸があったが、写真だけにしておいた。それほどの予算はない。

出来た料理は下の写真のとおり。伊勢海老は刺身と湯引きの2種類を作り、頭はオーブンで焼いた。


「切るだけの刺身のどこが料理だ」とからかわれたことがあるが、料理は買出しから皿洗いまで。すべてを終えて、翌日の仕込をした。伊勢海老の殻でダシを取って、余った材料を入れてカレーを作る。

伊勢海老ビスク風カレーもなかなかいいもんだ。


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2006年10月14日

[酒菜工房 斗](下北沢)

リーズナブルな居酒屋でお勉強。

中学時代の仲間との飲み会はいつも下北沢だ。地元のSがいつも場所を探してくれる。居酒屋にあまり期待してはいないが、必ず興味のある食べ物が出てくる。どの店も必死の競争なのだろう。居酒屋の料理は家でも作れそうなものなので、実用的でもある。

総勢8人なのでたくさんの料理を頼んだ。料理が出て来るたびに皿の向きを調整して、銀髪がシャッターを押すのをみんな待ってくれる。グルメ紀行にいつも協力してくれて本当に有難い。友人が頼んだ料理の中にいくつか面白いものがあった。

炙りしめ鯖

九州で生で食べる鯖は癖がなくて美味いが、しめ鯖となると好き嫌いが出てくる。高級寿司屋で食べるとしめ鯖の美味さに驚くことがあるが、スーパーのしめ鯖を嫌いになるのは無理もないと思う。そんな鯖でも料理用バーナーでさっと焦がせば青魚特有の癖がなくなることが分かった。

野菜のせいろ蒸

冷めた食材もせいろに入れて出せば趣が異なる。電磁調理器の上で蒸し続ければ、ずっと暖かい野菜が食べられる。たくさん野菜を食べたい人にはいいアイデアだ。ドレッシングや薬味を数種類用意すれば立派な食事になる。

出色だったのは「紅しずく」と名付けられた鍋。

鰹だしが効いた汁に、トマトが丸ごと一個入って出てきた。トマトには切れ目が入っている。煮えてきたところでトマトを割りほぐす。
これに鶏肉や野菜などを加えて鍋らしくなるが、鰹だしとトマトの酸味とが中和して和洋折衷の料理っぽくなる。
これから寒くなると鍋料理が多くなるが、レパートリーに加えたくなる一品だ。具は好きなものを入れればいい。演出効果もあるので、気の置けない仲間を呼んでのパーティーには受けるかもしれない。

どれも高価な食材ではなく、しかも簡単にできそうな料理だ。高級店の真似の出来ない料理も楽しいが、たまには居酒屋のアイデア料理を盗みに行くのもいいものだ。

酒菜工房 斗
東京都世田谷区北沢2-15-10
03-5432-0917

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2006年10月13日

[ヴァンピックル](丸の内)

いつも行くのは「ヴァンピックル銀座店」だが、初めて丸の内店に行った。

場所は東京フォーラムと道を挟んで北側の新東京ビル地下一階にある。銀座店は酒屋がある鉛筆ビルの2階だが、丸の内店は大きなビルの中。銀座店の煤けた店内と丸の内の明るく広い店内とは随分と雰囲気が違う。豚が丸ごとデンと正面に吊るされているのは一緒だが、それがなければ同じ系列とは思えない接待にも使える店が丸の内店だ。

カウンターに座って、まずビールと言ってしまう。銀座店で分かっていたが、ベルギー産のビールは高くて不味いというのが実感。いつもシャンパンを奨められるが、シャンパンをあまり好まない銀髪に、何だか意地悪しているような気がしてしまう。ビールは1杯で止めて、すぐに赤ワインに移った。

お通しのキッシュ、地鶏のパテ、野菜のグレッグ・ピックル

ヴァンピックルの売り物は串焼きとポトフ。この店が初めての人にはおまかせ串セットが定番だ。

豚バラ肉、鳥レバー、アスパラベーコン巻き

穴子、カシラ、フォアグラ

バラ肉の塩はかなり効いているが、脂が乗った材料には必要な味付けなのだろう。料理屋は塩や砂糖の使い方がかなり大胆だといつも思う。素材とのコミュニケーションが料理の味を左右する。

何の変哲もないと思っていたもう一つのお通し、きゅうりが存在感を持ち始める。口の中に残った脂っぽさを消してくれる。乾燥イチジクはワインに合う。

吉田豚レバーのテリーヌ、ポトフ(豚の尻尾とかぶ)
ものすごくダシのきいた雑炊

銀座店で食べたことのない料理ということで、テリーヌとポトフを食べた。尻尾は骨があるのが意外だったが、考えてみたら牛だって骨はある。採点すると話題性で尻尾、味でかぶに軍配が上がる。

ヴァンピックルの特徴は料理の名称だろう。銀座店の記事でも書いたが遊び心満載だ。実際に食べてみると雑炊のだしは「ものすごい」とは言い難い。実際はほど良い味なのだが、ネーミングのせいで逆に意外感がある。

さあ、満腹になった。帰るにはまだ早い、かな?


ヴァンピックル 丸の内店
東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビルB1F
03-6212-1011

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2006年10月12日

[三ます](四谷)

どのぐらい経ってるの?と聞いたら100年と言われて驚いた。

四谷4丁目の交差点にある店構えがしっかりした寿司屋に入った。伝統を感じさせる雰囲気だったので尋ねたわけだが、思った以上の老舗だった。明治43年(1910年)の創業だそうだ。入って右にL字型のカウンター、左にテーブル席がある。カウンターの左端に先客が2人いるだけで、今日は空いている。座る場所はいくらでも選べるのに右端に陣取った。真ん中が好きな銀髪だが、客に合わせた。みんななぜか端っこが好きだ。

やまいも、まぐろ、赤貝、かれい

付け出しはやまいも。一見したところ素材がわからなかったが、なかなか面白い。マグロはバチで、バチはバチ以上は期待できない。白身の魚を見てカレイですね、と言ったら「お客さん、詳しいですね、怖いなー」と主人に返された。

先客は常連らしく、主人の顔はこっち耳は常連客に向いているようだ。我々が魚の英語名で盛り上がっていたら、やっと主人が話に割って入ってきた。やけに詳しくて驚くと「ソフィアを出てますから」と来た。上智を出て何で寿司屋かと思うが、もちろん老舗の跡取り息子。ラグビーばかりやってたと言うが、近くの商社ご用達になったのも主人の英語力のなせる業。その商社の外人客は必ず寄るそうで、三ますの名は海外でも有名と自慢する。

「これを食べなければただじゃ置かないというものを出してくれ」と言ったらこはだ穴子が出てきた。寿司屋の仕事が光る二品だ。

主人が学校の先輩・細川元首相夫妻の話を持ち出したので、「こだわり」サイトに細川夫人のインタビューが載っていると言ったら、ますます話は盛り上がって来た。細川夫人の親友が常連らしく、若いときは細川さんより美人だったと主人が言うと、それを聞いて向こうの客を相手にしていた板さんが、意味深に笑う。

いか、しゃこ、いくら、うに、たまご、炙りトロ

軽口もほどほどにして握りに移った。今が旬の新いか、老舗寿司屋にないわけがない。ウニは北海道産と言うので積丹かと聞いたら、大将は店の奥に行ってしまった。何事かと思ったら老眼鏡をかけて戻ってきた。ウニの箱の文字を読んで「登別です」と答えた。

仕入れはベテランの従業員に任せているのだろうか。老舗寿司屋の坊ちゃんの顔がちらつく。
ぼちぼちお開きにしようと思ったら最後に炙ったトロが出てきた。向こうの板さんが奨める自慢の一品だ。バチのトロだがいいお味だった。

勘定を頼むと、アラ汁が出てきた。これでお開き。向うの常連客はハンディ5のゴルフ名人で、55歳でゴルフを始めた主人の先生。主人は100前後の腕前で、一番ゴルフが楽しい時期。道理で耳が向うを向いていた訳だ。

「ハンディ5なんてムカつきますよね」と、先客にこちらから声をかけて勘定が来るまでしばし談笑。それが良かったのか常連客並みに、店の人と先客に笑顔で見送られた。

東京都心の一等地なのに、なぜか田舎の寿司屋を思わせる店だった。


三ます
東京都新宿区四谷4丁目28
03-3341-1519

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2006年10月11日

[おぐ羅]②(銀座)

「前回」おでんをあまり食べなかったのでまた行った。

今日は食通のOさんと一緒に出かけた。店に入って通されたのはカウンターの左端だった。大将はちょっと席を外していたが、若い衆と目が合うとお互いに顔がほころんだ。

今日の目的はおでんだが、おぐ羅はおでん以外の料理にもこだわりがあるので、数品お奨めを食べることにした。

お通し、三陸の牡蠣、絹かつぎ

いよいよ牡蠣の季節が到来した。三陸の牡蠣は小振りだが味が濃い。一つの殻に牡蠣が二つ入って出てきた。身を食べて殻を脇によけたところでOさんと目があった。「ハイハイ、飲みますよ」と言ったらニッコリ。殻には牡蠣と海水の旨みのある汁が残っていた。
絹かつぎを食べたら、Oさんが今度は塩を小皿に集め始めた。皿をさげる前に塩を取っておきたいようだ。この塩が気に入ったらしい。熱燗のアテにする。

クチコ、落鮎の煮浸し(和歌山の天然鮎)、鯛の塩辛

ナマコの卵巣を合わせて干したクチコは高級品だ。ちょっと高いけどOさんが食べたそうだったので頼んだ。鮎は随分と大きなものが出てきて驚いた。稚鮎と聞き間違えたが実は落ち鮎。卵を一杯抱えている和歌山産の天然鮎は、今の時期しか食べられないもの。
横を見るとOさんは自分の鮎の頭を箸でつまんでこちらを見ている。「ハイハイ、頭から食べるんですね」と言ったものの、大将に念を押すと「全部食べられます」とのこと。柔らかくなるまで煮込んであり、いいお味だ。卵がとっても美味い。

袋物、ロールキャベツ、ごぼう、わかめ、ぜんまい

しらたきの袋、ロールキャベツ、など全て自家製。前回食べなかったものでお奨めを聞いたら、ごぼうが出てきた。ごぼう巻きだと勘違いしたが、別物。ごぼうの中に何か詰まっている。「鳥」と銀髪、「豚肉」とOさん、予想は二人ともハズレで合鴨だった。ごぼうを煮て、穴を開けて、合鴨つみれを中に入れて、蒸しあげる。実に手が込んでいる。

大将はおでんの皿を出すときに、我々の前にある小皿の塩に気付いた。「美味しい塩なので捨てるのはもったいないから」とOさんが言うと、「福建省の塩ですから」と満足気に微笑んだ。

Oさんが「ちくわぶ大好き」と言う。銀髪が関心なさそうにしていると、講釈が始まる。「ちくわぶは3層に巻かれている。しっかり煮込んでダシが染み込むと、3つに割れる。中に白いのが残るようじゃダメ。おぐ羅と言えども割れていない。残念だ。」と言いながらちくわぶを箸で切ろうとしたら、ハラリと三つに割れた。出来すぎたドラマのようなシーンだった。もちろんOさんは大喜び。感激していた。

ちくわぶ、すじ、ねぎま、鯵のつみれ、大根

右隣にいた客が帰り仕度をして立ち上がるとほぼ同時に、大将が紙袋をカウンター上にドンと置いて目をそらした。右隣の客のためかと一瞬思ったが、どう見てもOさんの目の前。紙袋を開くと10センチ位の高さの透明の瓶に福建省の塩が入っていてビックリ。Oさんに大サービスだが、大将のちょっと照れた仕種が面白かった。

出汁を飲んで、茶飯を食べてお開きにしようとしたら、明太子和えを食べていってくれと言う。明太子をワインとバターで伸ばした創作料理。名店と呼ばれ、新しい店を展開しても、まだ衰えぬ創作意欲、料理人魂。

ブロッコリーの明太子和え、茶飯、やかん

Oさんが店に入るなり注目した錫のやかんを撮ろうとしたら、大将はまだ使ってない新しいやかんを出してくれた。飛騨高山の職人が打ち出した逸品だが、大将がお金を貯めながら時間をかけて在庫を買い取った後、職人は引退してしまったとのこと。高級品なので大将と言えども一度には買えなかった。職人は大将以外には売らずに待った。いい話じゃないか。
熱燗だって、そんじょそこらのやかんは使わない思い入れ、こだわりがある。

しかし、今日はOさんにやられっ放しだった。次回は負けないぞ! まぁ、負けてもいいか!


おぐ羅
中央区銀座6-3-6 本田ビル地下1階
03-3574-8156

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2006年10月10日

[湘南HANABI食堂](江ノ島)  しらす丼

「体育の日」はちゃんと運動をしましたか?

3連休の中日に自転車に乗ることを決めていたが、生憎の強風で体育の日に延期した。翌日の仕事のことを考えると長距離は難しいと思った。距離の目標は置かず、取り敢えず家を出た。目指すは江ノ島方面。

昨年8月に一度行っているので道は間違えないと思っていた。世田谷を出て途中まで順調だったが町田付近で道に迷った。地図を見ながらやっと境川に着いた。河川敷のサイクリングコースは迷うことはないが退屈である。体力よりも気力が続くか心配になる。

しばらく走っているとコスモスが咲いていた。

最初は所々だったが、相鉄線境川鉄橋の北にある渡戸橋までの約2キロもの間、コスモスを楽しめた。これだけあると秋桜と書くのがわかるような気がする。山口百恵の「秋桜」を口ずさみながら走る。

コスモスが見られなくなったら、ススキが目立ち始めた。

数日前が中秋節だったことを思い出した。日本のお月見はススキに団子だった。中国語圏では今も月餅を食べたり送ったりして中秋節を盛大にお祝いするが、日本ではどうだろうか。最近お月見をした記憶がない。

ススキを見て走りながら吉田卓郎の「旅の宿」を口ずさんだ。♪浴衣の君はススキのかんざし 熱燗徳利の首 摘んで もう一杯いかがなんて 妙に色っぽいね♪ うろ覚えの歌詞を何度も繰り返した。月見同様、最近縁がないシーンだ。

コスモスとススキが退屈なサイクリングコースを救った。体力も、気力も切れずに、思ったより早く江ノ島に着いてしまったので、茅ヶ崎まで足を伸ばした。茅ヶ崎まで行けるとは思いもしなかった。望外の成果だった。

「烏帽子岩」を遠くに見て、サザンの「チャコの海岸物語」を歌いながら江ノ島に戻ったのはまだ10時前だった。開いている店は「湘南HANABI食堂」ぐらいしかないようだ。江ノ島に来たら「しらす丼」を食べないで帰るわけにはいかない。

「HANABI」のしらす丼

出てきた「しらす丼」を見て拍子抜けした。生しらすを食べたかったが、出てきたのは釜揚げしらすだった。店のオバちゃんに生卵を混ぜたら美味しいと言われ従った。味は予想通り。空きっ腹には美味かったが、特筆すべきものはなにもない。

前金制で、「セルフサービス」の紙が貼られていたが、客が少ないせいかちゃんとサービスしてくれた。オバちゃんたちがとても愛想良く、親切なので気分が良かった。昼時になると客が殺到して、オバちゃんたちを誉める人はいなくなるかもしれない。観光地とはそんなもんだ。

「秋桜」も「旅の宿」も「チャコの海岸物語」も歌い飽きたので、復路はちょっと辛かった。演歌を歌いながら走ったが、往路より随分と余計に時間がかかった。


HANABI
神奈川県藤沢市片瀬海岸2-17-17
0466-50-1388

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2006年10月09日

男と女

男はつらいよ! 女は偉いよ!

「男と女」と聞いて「ダバダバダ、ダバダバダ」と口ずさむ人は銀髪より年配の人だろう。クロード・ルルーシュ監督の映画「男と女」の内容はすっかり忘れてしまったが、主題歌のダバダバダ、ダバダバダのフレーズは記憶から消えることはない。アヌーク・エメが美しく、ジャン・ルイ・トランティニアンも格好よかった。銀髪はいつの間にか彼らの歳をはるかに超えてしまった。

銀髪より若い世代であれば河島英五の「酒と泪と男と女」だろうか。銀髪には「酒と肴と男と女」と言う方が相応しい。さてこの肴だが、男は意外と保守的である。男同士となると圧倒的に和食になる。寿司屋、天ぷら屋はみんな大好きだがなかなか高くて行けない、となると、殆どが焼き鳥屋とか居酒屋になる。
ところが、こんなオヤジ大好きの料理屋にも女性同士のグループが目立つようになった。
女性の社会進出はオヤジの分野にも浸透してきた。

「イタリアンだったらオレだって」と言うオヤジに何を食べるかと聞いたら、ピザやスパゲッティぐらいしか思い浮かばないようだ。
「カレーを食べに行きましょう」と誘うと喜ぶが、インド料理屋の前に着いて怪訝そうな顔をする。食べたかったのはお袋のカレーなどで、本場の本格カレーは望まない。

タイ料理、ベトナム料理屋に男同士で行こうものならひどく落ち着かない。恋人同士が数組いるだけで、女性だけのグループが圧倒的に多い。

先日、オーストラリアに行ったのでお土産を買ってきた。

ワニ、エミュー、カンガルーのビーフジャーキー

これを我が社の男たちは喜んでくれなかった。別にゲテモノ料理と言うわけではないと思うのだが、銀髪が異常なのか考え込んでしまった。

昔は男の方が女性より遥かに大胆だったと思う。男は攻撃的・積極的で女が保守的・受け身だったが、いつの間にか逆転したように感じる。特に若い女性は大胆かつ積極的である。

「次に生まれるときは男と女、どっちがいい?」と聞くと、圧倒的に女は「再び女」と答えるに違いない。
銀髪なら男と答える。但し、「背が高くて、ハンサムで、頭が良くて、お金があって、毎日いい酒と肴にありついて、美女が横にいる」ような男であればと条件をつける。
まるでフーテンの寅さんの理想の嫁さんのように、ないものねだりも甚だしいとは分かっているけれど‥

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2006年10月08日

酒は百薬の長

「酒者天之美禄 百薬之長」

この言葉は約2千年ほど前の漢書「食貨志」中の一文で「酒は天から賜った貴重な俸禄であり、あらゆる薬の長である」という意味とのこと。銀髪も酒を飲む言い訳に散々使った言葉だが、由来を調べたことはなかった。

「うすけぼー」によるとウイスキーは命の水と言うのだから、世界共通の認識のようだと言いたいところだが、今も昔も酒飲みの言い訳に使われただけかもしれない。
ウイスキーの製造法をアイルランドから持ち帰ったのがイギリスの修道僧だというのも面白い。日本の僧が「般若湯」などと言って隠れて飲んでいたように、古今東西聖職者と言えども酒が好きなようだ。イスラム教が禁酒を戒律にしてしまうほど、酒を断つことは難しい。

現実に酒の中には当初は薬目的に製造されて、嗜好品に変わっていったものも多い。日本橋「風長閑」 の石井さんに教わった薬草系の酒がシャルトルーズ。ショットバーでお気に入りを呑むのもいいけれど、バーテンダーのお奨めに従って遊ぶのも楽しいものだ。

シャルトルーズと風長閑自家製レーズンバター

シャルトルーズ・リキュールはフランスのシャルトルーズ修道院が1737年に製造した。修道院が経営難から逃れるために一般に販売して広まった。聖職にあるものが「狂い水」を売って稼ごうというのだから分別も何もない。飲んでみると確かに薬草臭く感じられるが、匂いより甘すぎて銀髪には向かない酒のようだ。ママが飲むのを一口もらって止めにした。

以前書いた「アブサン」 も元々はフランスの医師ピエール・オーディナーレがスイスで薬として発明したもので、ベルノー社が商品化した。水を加えると白濁するのが面白い。これも石井さんに以前作ってもらったが、甘すぎるのでもっぱら常連客のMさんが飲むのを横目で見ているだけだ。

銀髪が好きなカクテル、「ドライマティーニ」「ギムレット」に使われるジンも、元々は解熱・利尿用薬用酒として1660年にオランダのライデン大学医学部教授フランシスクス・シルヴィウスが作ったものが起源となっているそうだ。
イギリスに渡って進化した「タンカレー」などはストレートで飲みたい酒だ。

ブランデーもウイスキーもストレートで飲むのが好きだが、アイラウイスキーを初めて飲むと「ウエッ、薬臭い」と言う人が多い。

どの酒も百薬の長、薬なのだと言い訳はするものの、薬を飲んでいると思ったことは一度もない。薬臭いかもしれないが、やっぱり薬ではないから美味しい。

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2006年10月07日

[ウスケボー](日本橋)

夜のうすけぼーも面白い。

ランチによく行くが、夜は久し振りである。洋風居酒屋の店なのだろうが和洋中なんでもござれだ。うすけぼーとはケルト語で命の水という意味とのこと。ウスケがウイスキーの語源だそうで、修道僧が製造技術を広めたらしい。命の水とは嬉しいじゃないか。

大勢で予約していたためか、予約をしてくれた人が常連だったためか、メニューにない料理を用意してくれていた。料理が出てきてサッとカメラを構える銀髪を無視して、シャッターを押す瞬間に手が伸びてくる。気を取り直して再度シャッターを押す。デジカメは何枚でも取り直しがきくから楽でいい。

ポテトフライ、しめさんま、かぼちゃ冬瓜のあんかけ、石川いも(さといも)、すずきのマリネ、コマイまでが事前に用意してくれていたメニュー。
さんまはしめさばに比べると身が薄いせいか、酢が効きすぎていると思ったが、発想は面白い。かぼちゃ冬瓜とは初めて聞いたが甘みがあって上出来の料理。石川いもは箸で割ろうとするが、固ゆでのためうまくいかず、突き刺してかぶりつく。歯応えも楽しめてこれが正しい食べ方のように思える、

これだけあれば銀髪にとっては充分だが、嫌いなものが大半だと言う人が何人もいるから驚く。
これから無政府状態に陥る。あれやこれやと一遍に追加注文する。うすけぼー本来の何でもござれの料理が間を置かずに次々と運ばれてくる。

焼きそば、ポテトサラダ、ほうれん草炒め、皿うどん、チンジャオロースー、エビチリ、サイコロステーキ、ソーセージの盛り合わせ。運ばれてきても置く場所がないから、慌てて皿の料理を腹に詰め込んでスペースを作る。好き嫌いが多い人は嫌いなものには絶対手をつけない。いきおい嫌いなものがない銀髪たちが清掃係になってしまう。

その繰り返しをやっていると、胃が悲鳴を上げ始める。好き嫌いをしない人の中で、年長者が戦線離脱を始めた。時間があればまだ詰め込めると思うが、お開きの時間が確実に迫ってきている。飲み会のはずが食い会になってしまった以上、既に満腹になって手持ち無沙汰の人も出てきたためだ。

店の人はじっくり時間をかけて料理を味わってくれる客がいいのだろうか。さっさと食べて、席を開けてくれる客がいいのだろうか。気になったが聞くのは止めにした。


うすけぼー 日本橋店
東京都中央区日本橋2-1-1
03-3271-9144

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2006年10月06日

[潮夢来]②(新橋)  上海蟹

上海蟹のシーズン到来。

グルメ達にとって今年最大のショッキングなニュースは活上海蟹が、外来生物規正法で一般客への販売を禁止されたことだろう。これまでは築地や上野、ときにはスーパーでさえ売られていたものが、日本の在来種に影響があるとのことで、飲食店関係者しか買えなくなってしまった。

料理法は生きたままの状態から約15分蒸すだけだから、自宅で簡単に食べられたものが、料理屋でしか食べられなくなった。嘆いていても始まらない。どの店で食べるか決めなければならない。

随分と悩んだが最終的に選んだのは、新橋汐留、日テレタワーの1階にある「潮夢来」だった。以前、潮夢来に行ったときはフカヒレ姿煮、北京ダックを2大メインにしたが、今回はフカヒレ姿煮、上海蟹をメインにした。

食べた時期や自らの体調などの違いもあり、同列には論じられないかもしれないが、一番美味しかったのは神田神保町の「新世界采館」。それまで食べていた上海蟹のイメージを一変させてくれた。一番品が良かったのが東麻布の「富麗華」だった。今日は接待なので富麗華にしようと思ったが、担当のFは上海蟹は食べたことがないのに嫌いだと言う。蟹ミソが嫌いなので、上海蟹は不味いと決め付けている。

そこで単品で上海蟹を食べることができる富麗華と同じ中国飯店グループの潮夢来にした。富麗華の良さは蟹を食べやすいようにきれいに捌いてくれることにある。潮夢来は富麗華に比べて雰囲気は落ちるが、味は同等で値段は安い。サービスは落ちるかと思ったが、期待通り蟹は捌いて出してくれた。全ての料理を個々に取り分けてくれるので、奪い合い、譲り合いがなくていい。

出始めの今はメスの卵が美味く、オスはもう少し寒くなった方がミソが濃厚になってくる。店の人にもメスを奨められたが味比べのためオス、メス2匹ずつ頼んだ。

左がオス、右が卵(鮮やかな橙色)を抱いたメス

身も取り出してくれる

上海蟹は嫌いだと言っていたFに無理矢理食べさせた。一口食べたFはグルメレポーターの石塚ばりに目を剥いた。美味いを連発して喜ぶ姿を見ていると、こちらも嬉しくなってくる。Fは自分の客がいることなどすっかり忘れて食に没頭している。

黒酢を主体にしたタレがかかっていて食べやすいが、銀髪的には何もつけないでそのまま食べたかった。蟹はお腹を冷やすと言われるので食べるときには黒酢、生姜茶、紹興酒の3点セットは欠かせない。でも今度行ったらタレは別に持ってきてもらおう。

つなぎでアスパラに似た中国野菜「芥蘭菜」の炒め物、焼き餃子、小龍包を食べた。Fはスープがたっぷり入った焼き餃子に感激して、再び石塚レポーターになっている。
これをみて他の二人もニコニコしている。


あっさり味の野菜炒飯と、麻婆豆腐は銀髪定番の締めくくり。山椒が効いた本格四川風麻婆豆腐はお気に入りの一品だ。サービスで出してくれた杏仁豆腐は意外と甘味が少なく本物の味だとEさんに言われて口にした。成る程、杏の香り高く品の良い甘さだった。
  
料理屋のチョイス、料理の内容・品数・量が完璧だったとみんなに散々おだてられて、銀髪は登る木を探した。


潮夢来
東京都港区東新橋1-6-1 日本テレビタワー1F
03-5568-1818
http://www.chuugokuhanten.com

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2006年10月05日

[八ツ花](日本橋)

日本橋にも路地裏がある。

日本橋高島屋近くの路地裏を入ったところに八ツ花はある。開店してから40年、かつての名店稲ぎくで大将は修行したそうで、「だぼ鯊」の大将の兄弟子になる。2階の個室は初めて入ったが、ここを任されているのが2代目。彼はだぼ鯊の大将に魚の扱い方を教わったと言う。ドラマで見るような職人の世界。3人が修行した稲ぎくは拡張し過ぎて潰れた。

大将が仕切る1階のカウンター席もいいが、5人がゆったりと座れる個室もなかなかの雰囲気だ。新いかのゲソから天ぷらコースが始まる。秋の寿司屋、天麩羅屋は新いかがなければ始まらない。あっという間に生ビールを飲み干して日本酒に移る頃刺身が出てきた。

大間の本マグロだ。今年は例年より一月ほど早く大間産の本マグロが市場に出始めたそうだ。脂の乗りはまだ良くないが、いいマグロは赤身が美味い。

天麩羅は定番の天草産えびからスタートした。三つ葉はほろ苦いところがいい。再びえびが出て、蓮に続く。今日の目玉、マツタケ(右端)が出てきた。国産のマツタケだ。マグロと反対に国産のマツタケは例年より遅く、有名店でも中国産を使っていたが、ようやく国産にありついた。衣に香りが閉じ込められる天麩羅がマツタケには最高の料理法に思える。

銀杏に続いて、お目当ての新いか(左から2番目)。小さいのに身は厚く、柔らか。寿司もいいが天麩羅も最高だ。小なす、サツマイモ、穴子で取り敢えず終了。穴子は羽田沖。
今日の魚は殆ど江戸前とのことで、野菜を含めて食材の産地をよどみなく説明してくれる。揚げ油のごま油の比率は約4割。最近の傾向からすると若干多めだが、香りが高くて重くない。銀髪が2代目を差し置いて材料や油の講釈をたれる。

アー、ちょっと喋りすぎだなーと思いながらも、いい料理が目の前にあると制御不能の状態に陥っている。もっと2代目に話しを聞こうと思うが、逆にどんな店に普段行っているかを質問される始末。またこれが調子に乗って話すから、後でみんなの白い目が気になる。

最後に小さなかき揚げをご飯に合わせる。天丼、天茶などそれぞれの好みでご飯を食べる。銀髪はそのままかき揚げを肴にしてまだ呑んでいる。
シジミの味噌汁が出てきて驚いた。あさり並みの大きなシジミが入っている。普通は身を殻から引き離すのに苦労するが、この茨城産のシジミならその心配もなく食べ応えがある。

デザートのメロンを食べてお開きになった。1階席なら天麩羅の追加も頼めるが、個室はそれが出来ないのが辛いところ。それでも腹一杯なので文句はない。
いい天麩羅は胃にもたれず食後感もいいが、酒が進み過ぎるのが難点か。

呑まなきゃいいだろうって? そんな殺生な!


八ツ花
東京都中央区日本橋2-6-11
3271-9354

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2006年10月03日

[胡豆昆](名古屋)

からだに良い食事

名古屋に行って何を食べようかと思案していたら、知人が既に決めていた。店の名前は「こずこん」と読む。胡麻、豆、昆布を使った料理で体にやさしく、栄養価に富んだ食事を出す店とのことだった。

料理は月替わりで、コース料理のみ。6,000円、8,000円、10,000円のコースのうち、知人が前もって頼んでくれていたのは8,000円コース。材料が一部違うだけで、どのコースもお腹を充分満たしてくれる。

お品書きが用意されており、これを見ながら料理を楽しむ。これまでも散々書いてきたが、コース料理を出す店は、お品書きを用意すべきだと思う。個別に用意できないなら、メニューに説明書き加えてもいい。老舗でも仲居さんが説明できないことが多いし、外国人に給仕を任せている店ならそのくらいの配慮があっていい。もっとも胡豆昆の人は料理の説明もちゃんと出来た。

付出し(胡麻豆腐)、椎茸の豆乳スープ


ホタテ昆布締めオリーブオイル・スダチ和え
マグロづけ豆腐ソース、サーモン

白花豆(オタフク豆)・茄子・トマトのサラダ
豚ロースジンジャークリームソース

丹波黒豆のつや煮、数の子、鳴門巻、おさしみクラゲなど7点盛り
魚の海老真薯むし

ひと口冷やし細めんが間に入り、生のり呉汁、胡豆昆ふりかけご飯のお食事が出て、最後は冷やし白玉ぜんざいとなる。

ご主人の加藤敏彦氏は料理研究家としてテレビの料理番組、講演会、料理学校などで活躍している。著書も多数。

数々の料理の中での驚きは椎茸の豆乳スープ。これほど濃厚な椎茸の香りを味わったことはない。香り松茸と言われるが、素材が持つ香り以上のものを品良く取り出していた。
もう一つは7点盛の中の「アサリの一夜干し」。自家製だそうだが、酒の肴には最高の逸品だった。

店と料理に興味のある方は店のホームページをご覧いただきたい。名古屋らしさを味わう店ではないけれど、名古屋に来なければ出会えない創作料理があることを知った。


胡豆昆
愛知県名古屋市中区丸の内2-1-19
052-232-1088
http://www.gozukon.com

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2006年10月02日

[うま久](新宿)

居酒屋も悪くない。

グルメ紀行を書き始めたときは高級店に絞っていたが、最近は二人で1万円以内の気軽な店に行くことも多い。居酒屋だって悪くない。

うま久の本店は西新宿にあり、美食酒彩と称している。系列店には小皿料理ばんしゃく家、こだわりビール・グリルISAOなどがあるが、この日選んだのは銘酒と肴と謳っているうま久御苑店。

通された席は3つ並んだテーブルの真ん中。両隣は女性だけのグループで煙草をふかしている者もいる。きれいな女性に囲まれるのは嬉しいが、××の女性が吐き出す煙には耐えられない。禁煙二人組みは反対側の壁際のテーブルに変えてもらった。

メニューを見ると、刺身、煮物、焼き物、揚げ物、ドイツソーセージ盛り合わせ、グラタン、なんでもござれだ。中国人の店員にお奨めを聞いても通じない。これは勝手に判断せざるを得ない。壁に貼られたたくさんの黄色の紙の間にピンクの紙が2枚だけ。これがお奨めと勝手に判断して頼んだ。肉詰め野菜の揚げ物5種と魚貝の揚げ物5種。

壁には夥しい数の品書きが並んでいるが、料理ではなく酒と焼酎。銀髪の後ろの冷蔵庫には4種類の十四代をはじめ多数の一升瓶が保管されている。店長に聞くと都内でも5本の指に入る品揃えと胸を張る。真偽の程はともかく、銀髪も感心する数があるのは間違いない。

まず、純米酒の美味しさを教えてくれた懐かしの「あさ開」、次に「四ッ谷大木戸」。地酒と思ったら、近くの居酒屋が集まって京都キンシ正宗に造ってもらった酒。面白がって呑むアホが多そうだ。銀髪もその一人。3杯目は大吟醸をと思って壁を見回すと、「秀峰大吟醸澱酒」が目に入った。地鶏の焼き鳥と軟骨入りつくねを肴に酒が進む。

「澱(おり)酒」とも「うすにごり」とも言われる酒は、大吟醸酒を造るときに樽の下方に溜まった澱ごと瓶詰めされたものだ。店主は澱酒はにごり酒と違うと言うが、多分同じ。
しかし大吟醸だけに、旨さは格別だ。

最後の腹ごしらえは和風ピザにした。

「お好み焼じゃないの?」と茶化したが、ベースはピザ生地。鶏の軟骨とひき肉を味噌で煮込んだものをトッピングにしている。これが和風ということで、チーズをかぶせてオーブンで焼き上げる。最後に海苔を乗っけて出来上がり。何とも微妙な味のピザだった。

酒飲みの皆さん、行ってください。

銘酒と肴 うま久御苑店
東京都新宿区新宿1-16-16
03-5269-4840


先週、コメントを受け付けない状態が続きましたが、本日回復しました。ご迷惑をおかけしました。

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2006年10月01日

花茶

中国茶にも色んなものがありまして‥‥

中国茶と言えば、普段飲むのはウーロン茶ぐらいだ。居酒屋でも下戸用に必ず置いてあるし、焼酎を割るのに使われるなど大活躍である。

中国茶は発酵度の低い順から緑茶(リュイチャ)、白茶(パイチャ)、黄茶(ファンチャ)、青茶(チンチャ)、紅茶(ホンチャ)、黒茶(ヘイチャ)に分類され、とてつもない数の茶がある。ウーロン茶はいわゆる青茶の一種だが、茶色の印象が強いので茶茶の方が分かり易い、と軽口を言ったら愛好家に怒られるだろうか。

西洋で好まれる紅茶はインドのアッサム種と中国種を交配させて、主にインド、スリランカで栽培されるようになった。歴史でならった東インド会社が開発、世界に広めた。
中国茶の種類はこの他に花茶を加えて合計6種+1種である。

俄か知識をひけらかすと、中国茶の愛好家にいい加減にしろと言われそうなのでこのぐらいにしよう。紅茶にしても、中国茶にしても詳しいのは女性だ。銀髪にしてもまったくの無知で、食事の相手が聞いたこともないお茶の名前を指定するのを聞いて、目を丸くするだけである。
「ヌワラエリア」

花茶でもっともよく口にするのがジャスミン茶だろう。上海出身の友人からお茶が送られてきた。
開いてみたら梅干大の粒が入っている。銀髪は何が何やらさっぱり分からないのだが、我が家の女どもはちゃんと知っている。

ガラスの器に入れてお湯を入れたら文字通り花開いた。灰色の玉の中から美しい花が出てきて驚いた。

上と横からの画像

別の2種

花茶の玉が徐々に開いてくる様子は見ていて楽しい。上から横から見ながらワクワクしてくる。開いた花を見たら、どうやって花を中に収めて丸めたのだろうかますます興味が湧いてくる。
こんな茶があることを知っている女性は多いだろうが、男性はどうだろう。知らなかったのは銀髪だけだったのだろうか。

花が完全に開いてから、お茶を飲んだ。視覚ほどには味覚に訴えるものではなかったが、それでも充分楽しめた。花を愛でない無粋な男でも、これは面白い。

お茶がなくなって、器の底に萎んでしまった花が可愛そうだった。

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