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2006年11月30日

[祥遊膳](四谷)

今シーズン初めてのふぐは意外と楽しめた。

「水炊きはどうですか?」の質問に嫌そうな顔のTさん。「ふぐはどうですか?」に嬉しそうに頷くTさんの反応は予想どおり。Tさんの事務所は四谷に近いので、ふぐのある店も調べておいた。銀座、日本橋に戻れば馴染みの店もあるが、初めての四谷の店は冒険だった。本当は水炊きの店の方が高級なのに‥

四谷3丁目の交差点からすぐ、大きなオフィスビルの3階には一般のエレベーターフロアから上がった。店はなかなか立派な造りで、個室風の客席が並んでいる。和牛のしゃぶしゃぶなどメニューも豊富でふぐの専門店ではないのがちょっと不安だった。

中年3人組にはふぐコースは多すぎると思えたので、単品勝負にした。ふぐちり、雑炊を食べる目はなくなった。

お通し(松前漬け)、ふぐ皮刺し、ふぐ刺し

ふぐ刺しに皮は添えられるはずだが、Tさんは好物の皮をたくさん食べたいと言う。ふぐ刺しは大皿を遠慮しながら食べるのは辛いので、各人に小皿を頼んだ。「あらあら、可愛い刺身だね」と思わず呟いた。皮刺しを別に頼んだのは正解だった。

唐揚、白子

唐揚は身がしっかりついていて合格点。白子はまだ今の時期は小振りだが、文句なく美味い。Tさんは白子が食べられないのでふぐ刺しの中皿を追加した。小皿では不満だったようだ。

焼きふぐ

焼いて出てくるかと思ったら、自ら焼くスタイル。味付けもよく、なかなかの料理だった。専門店でない新しい感覚が楽しい。

ヒレ酒、おしんこ

ヒレ酒はイマイチだった。器が小さい上に酒が半分ぐらいしか入っていない。ヒレも貧弱で味も色も充分に出て来ない。このあたりはしっかり押さえておかないと、酒飲みのリピーターは望めない。
おしんこは結構立派で美味しかった。

祥遊膳11月1日に唐人凧四谷三丁目店から生まれ変わった。伝統の料理の良さを守りつつ、新しさや独創性をいかに打ち出して繁盛店に出来るか。まだまだ戦いは始まったばかりだ。


祥遊膳
東京都新宿区愛住町5 四谷セイフービル3階
03-3359-0625


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2006年11月29日

[矢場とん](名古屋)

名古屋名物「みそかつ」を食べに行った。

銀髪グルメ紀行を書き始めてから何度名古屋に来ただろう。それなのに名古屋の代表的な食べ物である味噌カツは避けてきた。

最初に味噌カツを食べたのは約30年前、東京三鷹の定食屋だった。面白半分に食べた味噌カツ定食は失敗だった。2回目に食べたのは10年ほど前、名古屋駅のレストランだった。三鷹のことはすっかり忘れて、名古屋名物を喰らおうと意気込んで食べたが、結局トンカツにかかった甘くてくどい味噌ダレを削り取って食べた。

名古屋コーチン、味噌煮込みうどん、ひつまぶし、きしめんなど名古屋名物のことは何度か書いてきたが、味噌カツは頭の中から意識的に消していた。最近になって東銀座に矢場とんの支店があると知って、急に本店に行こうと思ったのだから不思議なものだ。

12時前に店に着いた。店の外に数人並んでいるだけだったのでラッキーと思ったが、店内に導かれたら階段に長い列が続いていた。しかし、思ったよりも早く席に案内された。メニューを見るまでもなく、みそかつ丼を選択した。

みそかつ丼

午後の仕事はないため、ビールを頼んだ。グラスの豚の絵が可愛い。出てきたみそかつ丼のトンカツには薄く味噌ソースがかかっている。ドロッとしたソースをイメージしていたので拍子抜けした。食べてみるとトンカツソースより甘くない。ビールのつまみとしてもなかなかいいのでビールを追加注文した。

矢場とんのホームページによると、昭和20年代初頭、どて鍋のタレに誤って落とした串カツを食べたら美味しかったところから、みそかつに発展していったとのこと。矢場とんのみそかつ丼が他店のようにドロッと味噌を乗せるのではなく、かつをみそダレに浸す程度につけるのは元祖ならではのこだわりのようだ。

エビフライ

部下にはエビフライを食べさせた。一本20センチはあろうかという特大のエビフライ。タモリが名古屋名物と吹聴したのはこの店のエビフライを見たからか、逆にタモリの話から矢場とんのメニューに入れたのか、どちらが先か興味のあるところだ。

味噌煮込みうどんを食べたときと同様に、東海地方特有の豆味噌・八丁味噌は意外と甘くなく、みそかつも悪くないと知った。


矢場とん 矢場町本店
愛知県名古屋市中区大須3-6-18
052-252-8810
http://www.yabaton.com/

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2006年11月28日

[たん良]③ (赤坂)

冬のたん良がやってきた。

はもが美味しい夏のたん良、土瓶蒸が嬉しい秋のたん良もいいが、やはりたん良は冬がいい。11月になるとすっぽんの丸なべが食べられるようになる。大事な相手との食事なら、たん良に行けば必ず満足してもらえる。

付け出し(栗、白和え、にし)

栗の渋皮を思わず剥きそうななるが、これはそのまま食べる料理。甘い栗はどちらかと言えば苦手な食べ物だが、これなら問題ない。

鯛の兜焼き、お造り

焼くのに時間がかかる兜焼きは、予約のときに頼んでおいた。出自がちゃんとしている上等な鯛なら味は保証つきだ。目と口のゼラチン質が堪らなく美味いが、今日は譲って我慢した。
お造りはかつお、たい、ぐじ、赤貝。魚に合わせて醤油、ポン酢などの小皿が出される。今まで気にしていなかった付け合せも、相手が食通だと違った展開になる。山椒の花は高価なものらしく、残さず食べるべきものと知った。飾りと思ってこれまで食べなかった超ミニの胡瓜をかじってみると、しっかり胡瓜の味がして驚いた。

ぎんなん(岐阜の藤九郎)

箸休めに何気なく頼んだぎんなんも、「トークローです」と言われて出されたら興味が湧いてくる。岐阜産のぎんなんは粒が揃っていて光沢がある。収穫量が少ない高級品である。焼き鳥屋で串に刺されて出てくるものとは物が違う。

吉野煮、蕪蒸し

芳野煮とは吉野葛でとろみをつけた料理だが、紅葉の京都を連想させる美しい一品である。
蕪蒸しは銀髪一押しの料理だが、蕪は形をとどめていないため、吸い物に近い料理に思える。鯛、鰻、百合根が味にアクセントをつけている。茶碗蒸しのような容器を使うのが「たん熊」系の特徴。蕪蒸しの容器で京料理老舗のどの系統か分かるそうだ。

丸なべ

さてメインの丸なべ。これまで出た料理に満足気なゲストも、一口飲んで陶然とした。色んなところですっぽんを食べたことがあるそうだが、この丸なべを食べると他店の色が褪せる。

すっぽん雑炊

あの丸なべのスープで作る雑炊が不味いわけがない。器が可愛いいだけの料理でないことは言うまでもない。

大将と女将の応対もいつもながら心地良い。アー、いい店だ、満足、満足。「お前が満足してどうするんだ!」って? もちろん、ゲストの嬉しそうな顔を見ることができたのが一番の満足なんですよ。


たん良
東京都港区赤坂3-7-15
03-3586-1914

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2006年11月27日

[牛正]②(大阪)

「熊が入荷しました」とハガキをもらったので再訪した。

久し振りの「牛正」だ。
11月15日に猟が解禁された。野生動物の料理は冬季限定ということになる。グルメ紀行向けに前回紹介出来なかった料理を食べようと思ったが、矢張り熊鍋を外すわけにはいかない。

板さんはいつものように馬刺しを勧める。それを聞いた今日のゲストKさんは、当然のことながら馬刺しを食べたがった。
馬刺しはレバー、タン、心臓、白子など殆どの部位が揃っていたが、ロース、赤身、コウネの入った盛り合わせだけでKさんには我慢してもらった。代わりに馬焼きを頼んだ。
熊本の「菅乃屋」、銀座の「こじま屋」で、いい肉を軽く焼いて食べると生以上に美味いことを学んだ。

馬刺し、馬焼き

猪の玉刺し

猪も野生で、矢張り狩猟が解禁された今しか食べられないものだ。猪の玉刺し=睾丸の刺身はごま油などで味付けされて、なかなかの美味だ。

熊肉

いよいよメインの熊鍋。出てきた肉を見て前回にも増して驚いた。以前食べたときは、それなりに赤身があったが、今日の肉は真っ白に近い。

肉は鍋に入れるとスーッと縮んだ。牛や豚のような脂っぽさはなく、コラーゲンたっぷりといったところか。味噌仕立てでなくても、熊は癖のない良い肉だ。だしがスープに染み出して、野菜や豆腐なども美味。

最後に、うどんを1玉食べて、追加を頼んだらラーメンを奨められた。個性の強いラーメンの方が熊鍋には合うように思った。

冬眠の前に、どんぐりなど山の幸タップリの栄養を貯めた肉を食べる贅沢。食物連鎖の頂点に立つ人間ならではの特権だが、食べ物から頂いた命に感謝しなければならないと思った。


牛正
大阪市中央区日本橋1-3-7
06-6213-5503

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2006年11月26日

[本家 大たこ](大阪)

大阪名物と言えばたこ焼きかな?

大阪に来ると何を食べるかいつも迷う。食い倒れの町と言われるが、大阪ならではの料理どころか食材すら思いつかない。ホルモン焼き、てっちりなど大阪が美味いと言われるものも多いが、名物と言えるものかどうか分からない。結局のところ「たこ焼き」「お好み焼」「きつねうどん」などの粉物に行き着くことになる。

大学生の頃に、大阪の友人が奢ってくれたのがたこ焼き。最初に大阪城で食べたが、美味いと思わなかった。不満気な銀髪を見て、連れて行かれたのが難波の繁華街。店名は忘れたが行列が出来ていて、それなりに美味かった記憶がある。

スナックに向かって久し振りに道頓堀をブラブラ歩いた。向うに人だかりが見える。どこかで聞いたことがあるような「本家 大たこ」の看板。有名店なら食べてみたいと思ったが、並ぶほどの意欲は湧かない。通り過ぎようと思ったが、人並みがばらけているので念のために店の人に声をかけたらすぐに買えた。よく見たら並んでいると思ったのは、既に買って立ち食いしている人達だった。

お土産にしようと思って10個(500円)を買ったら、申し訳ないぐらい立派な紙袋に入れてくれた。

スナックに行って袋を見せたら「長時間並んだんでしょう?」と感謝された。ラッキーだったのかなと嬉しくなった。味見のために1個口に放り込んで噛んだら、大きなたこのぶつ切りが歯に当たった。人気の理由が分かった気がした。

当然のことながらたこ焼きは大阪だけで売られているわけではない。スーパーマーケットにある出店の定番はたこ焼き、アメリカンドッグ、今川焼きなど。昔、母がおやつによく買ってきてくれたのがたこ焼きで、スーパーの入り口の名もないたこ焼き屋も結構美味かった。

いつの頃からか、たこ焼きにもマヨネーズが添えられるようになった。お好み焼の影響か。チーズを入れたり変わり種のお好み焼も増えた。かつお節を乗せるのは嫌いだったがいつの間にか慣れた。

豊橋の駅ビル地下にあるたこ焼き屋は、銀だこが出来るずっと前からカリッとしたたこ焼きを売っていた。醤油で味付けしてから焼いているため何もつける必要がない。甘い中濃ソースが苦手な銀髪にとっては、驚き、嬉しいたこ焼きだった。銀髪が一番好きなたこ焼きはこれだ。

京たこや築地銀だこなどのチェーン店が全国展開している。築地で銀だこなど見たことがないので、不思議な屋号だ。博多でたこ焼屋を見つけて入った。店主は大阪人かと思ったら韓国人だった。たこ焼きは大阪名物と言いながら、他所で人気のたこ焼き屋に「大阪」の文字はない。大阪って本当に不思議だ。

大阪でたこ焼は家庭料理というから、もしかしたら一番美味しいたこ焼は、各家庭にあるのかもしれない。


本家 大たこ
大阪府大阪市中央区道頓堀1-5-10
06-6211-5223

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2006年11月25日

お弁当

「弁当の良さは冷めているところにある」と言ったら笑われるだろうか。

冷めたご飯が美味いと感じるのはコンビニのおにぎりである。口に入れたらご飯が崩れる手造りのおにぎりもいいが、コンビ二のおにぎりは本当に良く出来ているといつも感心する。精巧なおにぎり器も立派だが、ご飯の種類や炊き加減など開発に携わった人たちには本当に頭が下がる。

冷めても美味しい仕出し弁当

東京駅にはごはんとおかずが別々に出てくるお弁当がある。ご飯は保温器に入って出番を待つので、温かいものが食べられる。ところがタイミングが狂うと、結局食事時には冷めてしまって何にもならない。そう思うと食事の時間が気になって、気になって、結局かなり早い昼食になってしまう。違う弁当にすべきだったと後悔するのである。

崎陽軒のシウマイ弁当も冷めたイメージしかない。シウマイはもともと冷めても美味しいように開発された。小振りなのもお弁当に入れるためである。ごはんも冷えたものでなければ感じが出ない。
横浜駅で買うシウマイ弁当の蓋は木を薄く削った経木(きょうぎ)を使っている。経木は大和時代から使われたもので、通気性や殺菌性に優れていることから近年復活の兆しがあるらしい。経木や竹の皮を使った弁当など、冷めても美味しく食べる工夫は日本の伝統文化と言ってもいい代物だ。

竹の皮で包んだ弁当

博多でうどん屋に入ると、ご飯類は「いなり」か「かしわめし」である。かしわめしも熱いのは考えられない。子供の頃、何か行事があると必ずかしわめしのおにぎりだった。かしわとは鶏肉のことだが、思い出の味は冷めてないと猛抗議である。

炊き立てのご飯の方が美味しいことに異論はない。しかし、粘り気のある日本の米は、冷めても美味しい。オーストラリアに居たとき、豪州米は寿司に向くと教えられた。粘り気が少ないため、口に入れると米がほぐれるからと言われた。しかし、日本の米の方が美味いに決まっている。冷めても美味しい米が寿司に不可欠だ。熱いとネタが死んでしまう。

お弁当を保温室に入れておいたり、電子レンジで温めるのは、お弁当の良さをなくしてしまうような気がして仕方がない。

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2006年11月24日

[夜ばなし](銀座)

思わぬところでクエを食べることができた。

10人で飲みに行くことになった。どこにしようか迷っていたら、仲間の一人が既に予約をしたと言う。ちょっと不安になったが、店名を聞いて調べてみると意外なことに彼の嫌いな和食のコース料理。友人に使ってくれと頼まれた店が「夜ばなし」だったらしい。

ホームページを見ると三和ホールディングという会社が経営する店で、系列店も含めて従業員が500名もいる飲食店グループと分かった。和食ということで一安心したが、チェーン店と知って再び不安になった。

大小個室もある大型の店の内装はこぎれいで、デートにも使えそうだ。素材にもこだわっているようだが、料金は控えめである。この日は焼酎一杯100円セールをしていたので、大酒飲みが多い我々にはますますリーズナブルな店に思えた。

料理は予約の際に頼んであったので、何が出てくるか分からない。順番にいくらおろし、お造り(鮪、カレイ、いか)、鳥の唐揚、鯛と青菜のおひたし、キスの一夜干しが出てきた。

メニューを見ると一品料理にも面白そうなものもあるが、素直に出てくるものを食べた。コースの鍋がクエのしゃぶしゃぶだと聞いて驚いた。

高級魚のクエがこの値段のコースに出てくるとは思わなかった。少し小型のクエのようで博多で食べたほど脂の乗りは良くなかったが、今日のメンバーの殆どは初体験なので、それなりに価値があった。クエ特有のしっかりした歯ごたえの上品な白身を堪能できたはずだ。

夜ばなしに行った週の土曜日にNHKを見ていたら、偶然にもクエ漁の話をしていた。クエは水深50メートル以上の海底に生息する。回遊しない所謂根付きの魚なので、偶然に網にかかる意外は手に入らなかったため幻の魚と言われた。ところが、生態が解明されるにつれて捕獲法も普及してきた。
深海魚のクエは釣り上げられると、胃袋が膨らみ目や内臓が飛び出し死んでしまう。そこで釣り上げたクエのお尻からストロー状のものを入れてたり、胃袋に針を刺したりして空気抜きをする。口から出そうな胃袋を押し戻して蘇生させる様をテレビで生々しく紹介していた。

捕獲法が発達し、活魚のまま出荷される。そのため、幻の魚ではなくなりつつあり、多くの店でクエが出せるようになった。しかし、乱獲されて個体数が減少傾向にあるのが心配だ。成長前に捕獲するため、20キロを超す大型のものが捕れなくなってきたそうで、再び幻の魚に逆戻りするかもしれない。

岩場に集まる小魚を食べに来たさば、あじ、あおりいかや、ときには伊勢海老なども食べるクエ。長崎県大瀬戸のクエ(九州での呼び名は「あら」)が一番のようで、クエを食べるならやはり博多か。先日行った「大塚」の板さんがNHKに出ていた。冬の博多に行く機会が待ち遠しい。

最後に土鍋によるじゃこ山椒と炊き込みご飯を食べてお開きとなった。

とりあえず、今日はクエを食べたので良しとしよう。


夜ばなし
東京都中央区銀座6-7-16 岩月ビルB1
03-5568-4874

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2006年11月23日

[いもや](神保町)

思い出の「いもや」は何処に

今、当社ではちょっとしたウォーキング・ブームである。肥満・高血圧で悩む数人が選んだ運動がウォーキングだった。財布にも肉体にも負担がかからないのがウォーキング。短距離のタクシーや電車を我慢すれば、ジムに行く必要もないのだからこんなにいいことはない。

今の季節ならほんのり汗をかく程度で、シャツやスラックスを汗で濡らすこともない。週末に数十キロを自転車で走る銀髪と言えども平日は運動とは無縁だから、ウォーキングをやる気になった。ただ目的もなく歩くのは辛いので、遠くの店でランチを取ることにした。

御茶ノ水・駿河台下のいもやは格好のターゲットだ。食べた後は電車かタクシーで帰ることにして、日本橋から早足で歩く、歩く。12時前に到着しなければ並ばなければならないと思ったら、歩幅は広く、足の回転も速い。約25分で「とんかついもや」に着いた。店は一杯ですぐには座れないが、カウンター席後方の長椅子で待つ権利は確保できた。自分の番が来る頃には汗も引くはずだ。

待つ間に店内を観察した。料理人は豚肉に小麦粉をつけて、溶き卵のパットに放り込む。これを竹串で刺して取り出し、両手でパン粉をつける。手を汚すことなく下ごしらえをした肉を、油の中に落とす。昼のとんかつメニューは700円の一品のみだから、流れ作業でどんどん揚げていく。客の注文を聞く必要もないので、並んでいる人数だけ確認すれば足りる。

その間におばさんはご飯をよそい、しじみの味噌汁を注ぐ。ご飯は大き目の茶碗に大盛りなので、自分の番が来たら「ご飯は軽めに」と言おうと決めたが、結局それは叶わなかった。待つこと10分程でカウンター席に座ったら、間髪入れずにとんかつ、ごはん、味噌汁、お茶が目の前に出てきた。

仕方なくご飯は残そうと思ったが、貧乏性で気弱な銀髪は残せず全部たいらげた。予定外に摂取したカロリーを消費するために、復路も歩くことにした。そのついでに思い出の「いもや」を探した。いもやはとんかつ屋の他に、天ぷら、天丼など専門店が複数ある。銀髪の思い出の店は、淡路町寄りにあった肉詰めピーマンなどの揚げ物屋である。
しかし、記憶の場所は昔と大きく変わっていた。もちろんいもやは遥か昔に消えたそうだ。

無念さを押し殺して歩いていたら、見覚えのある顔がこちらに向かってくる。昔の職場の後輩で、もう何年も会ったことがない奴だ。こちらに全く気付かない彼の前に立ちはだかると、期待通り驚いてくれる。まったく愉快である。今度、飲みに行く約束をして別れた。

ドラマだったら出来過ぎと笑ってしまう偶然だが、「事実は小説より奇なり」である。「歩いていもやに行かなかったら」「ご飯が大盛りでなかったら」などなど、たった一つの要因でも欠けていたら彼に会うことはなかっただろう。

もしかしたら神様が本当にいるのかもしれないと感謝しつつも、どうせなら美女に会う偶然にしてくれたら良かったのにと、ちょっと怨めしく思った。


いもや
東京都千代田区神田神保町1-4
03-3293-0509

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2006年11月22日

[漁火]②(富山)

冬の味覚の王様、蟹の季節がやってきた。

ズワイガニ漁が解禁された。地元のNさんに案内されて行ったのは、昨年もお世話になった「漁火」だった。庶民的な店で、味も料金にも安心感がある。今日は3人なので奥の部屋を勧められたが、カウンター席を選んだ。前に来たときはL字形カウンターの正面に座ったが、今日は横に陣取った。大将の手元も見える一等地だ。

まずお通しでビールを飲んだ。日本橋「魚道場」も富山料理だが、お通しはやはりこのバイ貝が出てくる。

居酒屋に来たら当然ながら前菜にあたる料理は刺身である。地元の魚を中心にお願いしたが、皿に盛られたのは白えび、ブリ、いか、カレイ、ツブ貝、マグロ(トロと赤身)、甘海老だった。

白えびはネットリしている。ブリはまだ脂の乗りがよくない。昨年、雪が降る頃に食べたブリが忘れられない。甘海老は青い卵が添えられている。

刺身で飲んでいる間に蟹が茹で上がったようだ。Nさんに勧められるままにメス(コウバコ蟹)を頼んである。大将は熱々の蟹を素手で捌いているが、熱さのためじっと蟹を触っていることができない。悪戦苦闘しながらも、腹や足の身を取り出している。腹の身はある程度取り出した後で、まな板に叩きつけて落ちた身を集めている。足の身はすりこぎのようなもので押し出している。

きれいに皿に盛られてコウバコ蟹が出てきた。


身の美味さはオスのズワイガニには負けるが、メスは卵が美味しい。腹の中の内子(写真左)と腹から出た外子(右)、異なる二種類の味を楽しめた。

カレイ、白子

連れの二人はカレイの塩焼きを頼んだが、銀髪は鱈の白子刺しを選んだ。

白子はもちろん何度食べたか分からないぐらいだが、火を通さずに食べたことは少ない。癖があるかと思われるが、茹でたものよりむしろあっさりしているくらいだった。肉も魚も温めれば匂いが出て、味が濃厚になる。軽く湯通しした方が身が締まって食感は良くなるかもしれない。

最後にあんこう鍋を食べた。漁火は鍋も一人前から作ってくれる。

鍋が最後と思ったら、他の二人は梅茶漬けを追加した。最後はご飯で締めなければ気が済まない人が多いが、銀髪は極力食べないようにしている。

これから魚介類はもっともっと美味くなる。価格が高騰する12月初旬が蟹も他の魚も食べ時ということだった。今度行く日が待ち遠しい。


漁火
富山市宝町ビブレ10 1F
076-442-8581


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2006年11月21日

[金城楼](金沢)

さすがと思わせる金沢の料亭。

金沢には何度も来ているが料亭には縁がなかった。酒が入って値が張る夜ではなく、昼間に試してみようと思って金城楼を予約した。繁華街からはなれた兼六園のすぐ近くに金城楼はあった。

店に着くと入り口の掃除をし、打ち水をしている女性に迎えられた。玄関に鎮座する立派な屏風に圧倒されながら靴を脱いで、先ほどの女性に導かれて屋敷の廊下を踏みしめながら進んだ。2階に上がる階段のところを境に、歴史ある建物に移る。食事をする30畳はあろうかという部屋にはテーブルが2つだけしかないが、客は我々だけなので好きな方を選ぶ自由を与えられた。

窓の外、庭には枝を広く這わせる樹齢数百年の槙(まき)の樹と、秀吉の朝鮮征伐時に得たとされる富士山の形をした不二石が見える。木枠の窓ガラスは凸凹で波を打っていて、サッシ窓に慣れてしまった中年3人に過ぎ去った遠い昔を思い起こさせた。

前菜はぎんなん豆腐、柿とクラゲの和え物、チーズのサーモン巻き、くわいチップ

くわいチップがカリッとして香ばしい。

蓮根餅のお吸い物

金沢の郷土料理の一つらしいが、地元のお客様もこの椀に感心しきりだった。

刺身(ブリ、甘えび)

冬の北陸の代表は寒ブリ。脂の乗りはまだまだだが、北陸で食べるブリは格別だ。

鴨の治部煮

伝統ある料亭だけに器も素晴らしい。器を撮って満足してしまって、治部煮を食べてしまった後に料理を撮り忘れたことに気付いた。メインの治部煮の写真がないと様にならないので、もう一品作ってもらった。今度の器も美しいが、慎重に料理も撮った。

伝統の味は銀髪にはかなり甘い。東京下町の味もかなり濃く感じるが、冷暖房が効いてエネルギーの消費量が少なくなった現代人の好みは薄味になったのかもしれない。

ブリの照り焼き、ふろふき大根

蟹ご飯

炊いた釜のまま出てきた蟹ご飯を何杯もおかわりしたかったが、お腹が一杯になってしまったのが残念だった。

大きな料亭の大部屋に、昼の客は我々3人だけ。仲居さんがつきっきりでサービスしてくれて、調理場の料理人も我々が独占した。一人5千円の料理代金では申し訳ない気持ちになった。

我々が見えなくなるまでお見送りをしてくれる仲居さんを背に、すっかり長居してしまい遅刻してしまったアポ先に急いだ。
グルメ紀行が仕事じゃないんだぞ!


金城楼
石川県金沢橋場町2-23
076-221-8188

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2006年11月20日

[三和楼](横浜中華街)

上海料理は蟹だけではないよ。

上海にはこれまで4回行ったが、上海料理と意識して食べたのは昨年蘇州に行った時のことだ。年配の方であれば蘇州夜曲を思い出すだろうが、東洋のベニスと呼ばれる運河の街は、世界遺産の有名な庭園もあり美しい。一通り観光をした後で、浙江・上海料理の店に入った。

上海は今では世界有数の都市になったが、15年ぐらい前までは農業都市と言ってもいいぐらいだった。蘇州は今でも地方都市の域を出ていない。街でも比較的大きな中華料理店に入ったが、上海のような華やかさはない。料理はすべてあっさりした味付けだった。

今日のメインはもちろん上海蟹。蒸しあがるまで20分ほどかかると言われたが、三和楼のホームページから上海郷土料理を書いていったので、待つ間に食べる料理のオーダーはスムーズにできた。

上海式海折皮(クラゲ)、蝦子海参(ナマコ)

上海式クラゲの冷菜は大連産の肉厚のクラゲで歯ごたえがある。エビの卵入りナマコ煮込みのナマコは柔らかく超美味。日本から中国に輸出される三大高級食材はフカヒレ、アワビ、そしてナマコの干物。久し振りにナマコを食べたが、すっかり忘れていた味だった。

龍井蝦仁(エビ)、炒排骨年糯(骨付き豚肉)

 
西湖名産の龍井(ロンジン)茶と芝エビの香り炒め、排骨と上海もちの炒めは共に上海料理らしい薄味で、特にエビの料理は蘇州で食べた料理を思い出させてくれた。

上海蟹

メインの上海蟹が蒸しあがった。上海から蘇州に向かう途中で見えた大きな湖が「陽澄湖」で、いわゆる最高級のブランド上海蟹が養殖されている。三和楼もここから仕入れる。雌雄2匹ずつ頼んで4人で分けることにした。オスの白子のネットリ感はまだ出ていないが、初めて上海蟹を食べた3人は、他の蟹とはまったく違う味に満足したようだった。

蟹肉入りフカヒレスープ、上海焼きそば

フカヒレスープは一皿を4人で分けたので、お得感があった。上海焼きそばもやはり薄味だった。

上海蟹は遅くとも12月中旬頃に、日本の料理屋から姿を消す。しかし三和楼では旧正月に食べたいとの要望が強く、今年2月に上海に行って味を確かた。その結果、客に出しても問題ないと判断したので、この店では来年2月まで食べることが出来るそうだ。

「上海料理」の看板を掲げていても、広東料理や北京料理がメインの店が少なくない。元気なおばさん二人が切り盛りする三和楼の1階席で、本格上海料理の講釈を聞きながら食べるのは楽しかった。


三和楼
神奈川県横浜市中区山下町190
045-681-2321
http://sanwarou.com/top.htm

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2006年11月19日

[山東](横浜中華街)

久し振りに横浜中華街に行った。

いつもはどこに行こうかと迷うが、今日は最初から決めていた。随園別館の記事にグロリアさんがコメントで勧めてくれた「山東」。ネットの口コミ情報を見ても、絶賛されている店だった。

中華街のメインストリートから横道に入ると、人だかりができていたので顔が曇った。なおも進むと懸念したとおり、人だかりの前に山東の入り口があった。失望して踵を返そうとしたら、外の丸椅子に座って待っていた客が声をかけてきた。「僕たちの次だから、すぐに入れますよ」と言うではないか。彼らを除く大勢の人達は、店を撮影しにきたスタッフたちで待ち客ではないらしい。親切な彼の言うとおり、5分も待たずに席に案内された。

頼んだのはまずビール。そしてお目当ての水餃子と小龍包。出てきたビールは大瓶だった。店は小さいものの、意外に多くの客でぎっしり詰まっている。パッと見た感じ、銀髪が最年長である。女性だけのグループも多く、客が賑やかで活気のある店に仕上げている。
客めしをするにはちょっと辛いかもしれない。

それほど待つこともなく水餃子が現れた。ちょっと変わった包み方で、コロンとしている。何もつけないで一口食べてみたら、成る程美味い。今度はココナツ入りというタレをつけて食べたら本当に美味い。そんなにお腹が空いていないにもかかわらず、どんどん食べてしまう。これは美味い。グロリアさんに謝謝!

次は小龍包に挑戦。随園で口の中を火傷したにもかかわらず、挑戦する魂は死んでいない。一滴もスープを逃したくないので、とにかく一口で放り込まなければ気が済まない。しばし小龍包とにらめっこをした後、意を決して口に入れた。小龍包を噛むタイミングをはかる。不用意に噛み砕くと熱々のスープに襲われてしまう。慎重に少しだけ噛んだら、僅かにしみ出したスープで右奥歯から3本目辺りの歯茎が悲鳴を上げた。しばらく口を動かすのを停止した。部下が妙な顔をして銀髪を覗き込んでいる。いやいや妙な顔をしているのは彼ではなく銀髪の方だろう。

頃合いを見計らって、もう一度噛んだ。今度は口内のどこからも抗議はやって来ない。そこでおもむろにしっかり噛んだら、スープの全てが口の中に広がった。ウマーイ!
危険が去ったことを部下に告げるが、彼は一口で食べる勇気は持ち合わせてないようだ。半分かじってスープが皿に流れ落ちるのを意に介していないようだ。銀髪の特攻精神は無視されたに等しい。
苦笑しながら銀髪は2個目を、今度は安心して口に放り込んだ、。至福のとき。

今日の被害は歯茎を一箇所。随園での経験が活きた。

ビール大瓶2本、水餃子、小龍包を食べて、2,100円を払って店を出た。今度は本当に行列が出来ていた。


山東
神奈川県中区山下町189
045-651-7623

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2006年11月18日

[味の時計台](千歳空港)

千歳空港で昼食を取ることになった。

千歳空港3階にある食堂街に行った。多くの店は海鮮丼を売り物にしているが、どうもピンと来ない。迷っていると部下がラーメン屋が集まっているフードコートがあると言う。そこまで歩いてどこに入るか思案していると、再び部下の声。「時計台が美味しいですよ」

味の時計台は全国に500店以上を擁するどさん子やどさん娘よりは遥かに少ないものの、道内に53店舗、道外に36店舗もある。飲んだ後にフラフラと入ってしまう新橋の店も味の時計台である。新橋でも食べることができるラーメンなので、部下の進言を無視しようと思ったが、フードコートに入って行くと元気のいい女性の声が奥の方から聞こえてくる。声の先を見ると味の時計台の女性たちで美人揃いである。即座に部下の言に従うことにした。何と思いやりのある上司だろうか。部下の意見は聞いて上げなければやる気をなくす。

部下はキムチラーメンを選んだ。銀髪も辛いラーメンにしようと一度は決めたが、定番の味噌ラーメンで味を確認する道を選んびなおした。バターだけをトッピングに追加した。
隣に座っていた二人の外人パイロットが器用に箸を使っているのを感心して見ているうちにラーメンが出来上がった。

美女がラーメンをテーブルに置いて、「味噌バターラーメンにはにんにくと唐辛子が合います」とテーブルの薬味を指しながらにこやかに説明してくれる。新橋店では聞いたことのない台詞だ。唐辛子の瓶をラーメンにふり掛けると黒い胡麻も一緒に出てきた。

黒い胡麻を見て一気に40年近く前にワープした。自宅近くにできたどさん娘ラーメンに長兄が連れて行ってくれたのは中学生のときだった。卵を落としたインスタントラーメンぐらいしか食べたことがなかったのだから、本格的なラーメンの、しかも味噌味は衝撃的で美味かった。そのラーメンの味を引き立てていたのが黒胡麻だった。

開店以来繁盛していたその店も、数年後には主人の顔を見る日が少なくなり、やがて子供を背負った奥さんが毎日調理場に立つようになった。主人がギャンブル狂いになったとか、女を作って家を出たとか、体を壊して亡くなったとか噂されたが、奥さんの作るラーメンが評判を呼ぶことはなかった。映画「タンポポ」のように救世主が現れることもなく、彼女の背中で寝てにいた子が客席の後ろを走り回るようになった頃に潰れた。

久し振りの黒胡麻が入った味の時計台の味噌ラーメンは美味かった。後で調べてみると、千歳空港店はフランチャイズ(FC)店で、新橋店のような直営店ではなかった。美女に背が高いコック帽を被せて客を呼び込む派手さのわりに、接客態度もよく味もしっかりしていた。火傷しそうな熱々のスープを飲んだことを思い出しながら、FC店は直営店より劣るという先入観を考え直した。

やる気のあるオーナーに率いられれば、客は満足し、店も繁盛する。このモチベーションを維持できれば、あの思い出の店のようにはならないだろうと思った。


味の時計台
千歳空港内、北海道ラーメン道場

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2006年11月17日

[すし善](札幌)

札幌の冬の味覚を求めて

札幌駅に着いて真っ直ぐに向かったのは駅に隣接する日航ホテルだった。今晩行く店をグルナビで下調べをしたが、グルナビは明らかに掲載店のPR化しており客観的な情報を得るサイトではない。店側の発信源であるため、実際行ってみて感激することもあるが、失望することも多い。大事な接客であれば、一流ホテルのコンシェルジェに相談するのが一番だ。

コンシェルジェの美女が真っ先に奨めてくれたのがすし善だった。すし善は現在のすすきの店を開いてから35年の歴史を誇る。10数年前に円山店を作り、そこに本店を移した。円山の本店は月曜定休のため、発祥の地であるすすき野店に行くことにした。

大通りに面した店は伝統を感じる。10人程度が座れるカウンターが2箇所と個室がある落ち着いた雰囲気の店だ。我々のお相手をしてくれたのはすすき野店の花板・山田さん。銀髪と丁々発止を見事にやってくれる。がりを薄切りにする包丁捌きは実に見事で、見ているだけで楽しい。

氷の入ったネタケースを眺めて、きょうの注文は「地物北海道尽くし」と頼んだ。後は山田さんのお奨めに従うことにした。

ぼたん海老は北海道ならではの活きで新鮮そのもの。富山の難波で食べたときも思ったが、新鮮なぼたん海老は独特のネットリした食感はない。
毛かにはほぐしてあるので食べやすい。

やりいかは山わさびでいただいた。山わさびはアイヌわさびとも呼ばれ、西洋わさびによく似ている。普通のわさびは北海道では生産されないので、地元産の山わさびが使われる。

白子ときんきは軽く炙って出てきた。脂の乗ったきんきが特にいい。

本日の目玉は戸井産の本マグロ。戸井は青森県大間の対岸にあるため、漁場は一緒である。
地元で捕れたまぐろでも、出荷されるのは築地。1本200万以上もするまぐろを尻尾の切り口だけで判断し、競り落とせる業者は北海道にはいない。すし善が仕入れるのは築地の「石宮」で、漫画「おいしんぼ」でも度々登場している。東京の高級店の多くはここから仕入れをしている。

今日のマグロは240キロで、250万円近くするもの。そのいいところをすし善は仕入れた。大トロに近い中トロはさすがに素晴らしかった。

最後にウニといくらの握りを頼んだら、いずれも海苔で軍艦巻きにすることなく皿で出された。最近は軍艦巻きをしない店も増えてきた。素材本来の味を楽しむためだ。酔っ払っても美味さは分かる。

山田さんと遣り合いながらの楽しい食事はあっという間に2時間を超えた。最終便で東京に戻る銀髪は、お客様を部下に任せて席を立った。


すし善
北海道札幌市中央区南7条西4丁目
011-531-0069
http://www.sushizen.co.jp/

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2006年11月16日

[随園別館](新宿)

餃子は北京料理屋で。

中華料理の中で広東料理が一番だと言われる。これは香港の隆盛と無縁ではないだろう。新鮮な海鮮が手に入る香港で広東料理が進化して、中国料理の代表になった。しかし、北京料理がかつて主流だったことを皆忘れてしまったようだ。

北京など華北料理の特徴は粉物にある。北京ダックも鴨の皮を包む春餅があって初めて、鴨の味が引き立つ。餃子や饅頭の類も華北ならではのものだ。
日本でラーメンや焼餃子が国民食の一つになったのも、満州からの帰還兵のおかげだ。

友人から餃子の美味しい店と教えられて行ったのが随園別館である。入り口には「北京料理」と書いてあるので、ますます期待が高くなる。7時頃に店に入ったが、1階は一杯だった。2階に通されたが、4人掛けのはテーブルはすべて予約が入っているため、我々は大きな丸テーブルで相席を強いられた。

メニューにはフカヒレ姿煮を始めとする高級料理から、ラーメンまで多種の料理が並んでいる。店の人にお奨めを聞いたら北京ダック、小龍包、水餃子の3品。奥のテーブルに運ばれて行く北京ダックの皿を見たら、二人で食べるにはあまりの量に怖気づいた。小龍包、水餃子と青菜、干し豆腐を頼むことにした。焼餃子がないのも本場の料理を標榜するだけにこだわりに見える。

小龍包、水餃子

メニューの値段を見て充分食べられると判断したのだが、一個当たりの大きさに驚いた。小龍包は口の中が一杯になる大きさで、口に放り込んだら熱くて吐き出しそうになった。しっかり火傷した。これだけ大きくてスープ一杯だと食べ応えがある。

水餃子はこの店の看板料理。厚めの皮に肉団子がゴロンと入っているが、肉汁もタップリと収まっている。大きめの水餃子10個で700円はかなりお得感があるが、二人にはいかにも多い。

空芯菜、干し豆腐

小龍包、水餃子が出る前に空芯菜と干し豆腐が来ていたので、最後は苦労しながら食べた。合席した女性二人も我々以上の料理を前にして苦戦していた。とにかくこの店の一皿は破格に大きいのだ。しかも見るからに高そうなものを注文している。

同じ丸テーブルでラーメンだけ食べて出て行った若い男がいた。この店はそんな食べ方でも問題はない。

大人数でできるだけ安い料理を頼むのが、この店の一番の楽しみ方だ。大勢で来たらもっと満足できるに違いない。


随園別館
東京都新宿区新宿2-7-4
03-3351-3511

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2006年11月15日

[赤垣](人形町)

昔行った店は今もいい店だろうか。

久し振りに赤垣へ行った。数年前は人形町近くに仕事場があったのでよく行った店だ。但し、入れたのは3回に1回くらいだったろうか。いつも予約なしだったので、7時頃に行って席があるかどうかは運任せだった。

今日は6時前に着いた。テーブル席に一組いるだけだが、二人なのでカウンター席に通された。こちらも異存はない。中年の男同士が向かい合って食べるのは辛い。

この店に来て必ず食べたのは本鮪トロぶつ(800円)だった。確か、しめ鯖(700円)も美味かったはずだ。これに食べた記憶がないあずきはた(700円)を加えて刺身三点盛を造ってもらった。

しめ鯖は思ったとおりの味だった。鮪は一口食べて後回しにすることに決めた。まだ完全には解けていなかった。あずきはたのことを女性店員に聞いたが、要領を得なかった。主人に聞きに行こうとしてくれたが、遠慮した。小豆の模様があることくらいしか分からなかったが、高級魚らしい。白身の上品な味だった。食べた後、残った頭を料理してくれるかと期待したがかなわなかった。
しばらくしたら、鮪は解けて美味しくなった。

穴子

肉じゃが、ぎんなんを食べた後、穴子の白焼きを頼んだ。白焼きでもっとも美味しかったのは広島の「水軍の宴」で食べたもの。寿司屋では煮てしまうので美味しい白焼きを食べるのは難しい。なかなか美味しい白焼きは食べられないが、残念ながら赤垣でも同様だった。

牛すじ

刺身が出てくるまでに食べた牛すじ煮込み300円は値打ち物だった。量もそこそこあり、味も文句なかった。

赤垣は刺身が看板だが、居酒屋なので焼き物、煮物など豊富なメニューがある。あれこれ前に食べたものを思い出してもっと食べたかったが、白菜の漬物を食べながら焼酎のボトルを空にするのに励むことにした。

昔ほどの感動はなかったが、相変わらずリーズナブルな料理の数々だ。店を出るときになっても、意外なことに満席には程遠かった。待ちの商売は難しいものだ。


赤垣
東京都中央区日本橋人形町2-13-10 
03-3664-9574

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2006年11月14日

[ゴールデン・ドロップ](神田)

男二人でワインを飲みに行くなんてことがあっていいのかな?

どっか安い店に行こう。今日は絶対安い店に行くぞ。何故なら相手はもっとも気の置けない奴だ。居酒屋に行くつもりで誘ったら何とほんの数日前が誕生日だったと言うではないか。天は我を見放した。

「があどした」では可哀想なので、ネットでワイン好きの彼が喜ぶような安い店を探した。そこで見つけたのがゴールデン・ドロップだった。グラスワインが月曜日半額というのが気に入った。誕生日直後に誘ったのを悔やんだのも束の間、いい日に誘ったとほくそえんだ。馬鹿な銀髪だ。

店は思ったよりうんと洒落ていた。明らかにカップルで来るべき店に思えたが、中年男4人組が奥のテーブルを占拠していた。我々はカウンターに座ると、目の前の冷蔵庫の中にあるワインボトルや、吊るされているたくさんのワイングラスを眺めた。

まずビール。そしてワインに移った。料理のメニューを見たがそれほど興味をそそられるものはない。通常レストランに行けば主役は料理、ワインがその料理の引き立て役になる。この店では主客が逆転する。料理もワインに合いそうなものを頼むのが常道だ。

パルマ産プロシュートと秋ナスのコンポート添え、セミドライトマトとフレッシュチーズ

田舎風のパテ、地鶏の薄切り スパイシーな胡椒の香りを頼んだ。

ドライトマトや田舎風のパテはなかなか良かったが、料理を目当てに来る店でないとの思いは変わらない。とにかくワインの店である。イタリアンフェアをやっていたので銀髪はイタリアワインを2種類飲んだ。本日の主役の彼はフランスワインにこだわる。
半額のワインを飲んで安く済ませるつもりが、彼は段々いいワインに移っていく。金を払う自分だっていいワインを飲みたい。ワインメニューは産地でなく葡萄の品種で分けられているので選びやすい。最初は粗品でもらうような背が低く厚いワイングラスで飲んでいたのが、大きく薄いワイングラスに注がれる。

重い赤ワインにはチーズの盛り合わせが一番だが、これが一番高い料理だった。半額ならいいワインを飲もうという魂胆だったのだが敵もさるもの、高いワインは半額セールの対象外だったのに気付いたのは勘定書きを見てから。グラスが替わったところで気付くべきだった。

ワインを5杯ずつ飲んで、当初予算の倍以上の料金を払った。思惑に反して痩せてしまった財布を寂しげに眺めていると、今日の主役がにこやかに声をかけてきた。「銀髪さん、もう一軒行きましょう」

「一杯だけだぞ!」と言ったものの、決して一杯では終わらない次の店を目指して、ヨタヨタとゴールデン・ドロップを後にした。

ゴールデン・ドロップ
東京都中央区日本橋本石町4-5-5 蔵ビル1F
03-3231-1036
http://www.g-drop.com

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2006年11月13日

[四万十](四谷)

知る人ぞ知る土佐料理の店に行った。

客に連れられて荒木町に行った。5~6年前に迷い込んで来たことがある。荒木町は新宿通りや外苑東通りからちょっと入ったところにある。昔、花街があった所で、坂と狭い路地に昔ながらの街並みが残る。昭和にワープしたような気分になる。

「柳新道通り」の入り口でタクシーを降りた。それより先に車は入れない。
外国人にもうけるのか、「四万十」に着くまでに何人も見かけた。暗い灯かりに照らされる料理屋やバーに混ざってイタリア料理屋などもあり、彼らはその中に消えていった。
我々は、古い町並みに溶け込んでいる四万十のドアを開けた。

左側にカウンター、奥に座敷がある小さな店だ。ご主人と奥さんとだろうか、女性と二人で店を切り盛りしている。料理を担当するご主人が四万十川の出身だ。開店から17年と、店にも年季が入っている。

女性のお奨めに従ってオーダーしたが、鰹のたたきは遠慮した。もともとたたきはあまり好きではなく、先日行った土佐料理の「祢保希」でもあまり美味しいとは思えなかったからだ。ところが、ご主人がカウンター越しから再びたたきを奨める。渋々頼むことにした。他はどろめ、青海苔とゴリの唐揚、ズガニを頼んだ。

付け出し(くらげ、ほたて、栗)、どろめ

すべて、地元から取り寄せているとのことで、栗も四万十から。秋の味覚だ。どろめは鰯の稚魚・生しらすで柚子と醤油をかけて食べるように言われたが、そのままで食べた方が味が濃くて遥かに美味い。

鰹のたたき

これには驚いた。こちらが嫌がるのを無理矢理奨めるだけある。これまで食べた鰹のたたきの中で一番美味い。「祢保希より美味い!」と言ったら比較にされたくもないのだろうか、ご主人は不機嫌そうである。まずいことを言ったなと思っていると、「土佐ねぎを使わないとこの味は出ない。タレも柚子やかぼすを混ぜ合わせて作っている。だから美味いんだ。」とボツボツと話す。何だ、嬉しくて自慢しているじゃないかとちょっと安心した。

青のりとごりの唐揚

青のりを揚げたのは初めて食べたが、香ばしくてなかなかいい。ごりは期待通りの味で酒によく合った。

ズガニ

ズガニはいわゆるモズク蟹のことで、まさに四万十川秋の味覚だ。上海蟹もモズク蟹の一種だが、ズガニなど日本の在来種保護のために今年から料理店以外では輸入禁止になった。

柳カレイ、あら汁

柳カレイの一夜干しと味噌汁を飲んでお開きにした。酒は純米「四万十」と栗焼酎「ダンダン」と土佐尽くしだった。

勘定をしてもらったら全部(2人)で1万円強。地元の知人から直送してもらっているので、安くできるとのこと。土佐に行かずとも、荒木町で四万十の四季を味わえる。


活魚季節料理 四万十
東京都新宿区荒木町8番地
03-3357-1467


料理とビール1本、純米酒2合、栗焼酎一杯を飲んで10,500円でした。

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2006年11月12日

さばの缶詰

C級グルメ?

ちょっと飲み足りない。酒の肴を求めて台所に向かった。冷蔵庫を開け、しばし思案したがいいアイデアが浮かばない。冷蔵庫から離れ、台所を見回したらさばの水煮が目に入った。
肴が決まったので次は酒だ。やはり日本酒がいいだろうと思ったところで、台所の片隅にほこりを被った一升瓶を見つけた。

古くなってしまった酒であれば、酢になっているかもしれないと思ってラベルを見ると、何と森伊蔵である。大事に飲もうと思って手の届くところから遠ざけたまま忘れてしまったようだ。森伊蔵がさば缶に手引きをさせたようで、世にも不思議な物語である。

昔食べた缶詰ではないが…

かくして森伊蔵を飲むことになった。肴がさばの缶詰とは完璧なシチュエーションである。大学生の頃、安アパートに集まって飲むときの肴は缶詰類とかわき物が多かった。安売りで買った秋刀魚の蒲焼は常備品で、ご飯のおかずにもなった。玉子焼きで巻けば立派な料理である。

酒は日本酒か安いウイスキー。焼酎もたまには飲んだが、さつま白波だったと思う。高級焼酎などというものは存在しなかった。他の焼酎と飲み比べれば差は歴然だろうが、この日森伊蔵だけを飲んでいるとそんなに有難がる酒とも思えなかった。それが却ってさばの水煮にマッチしている感じがした。

久し振りに食べたさばは美味かった。クイクイ焼酎が進む。しばらく飲んだ後、瓶の底に僅かに残るだけに見えたので全部飲み干すことにした。ところが一升瓶の底の量は意外と多く、小さめのコップにたっぷり2杯分残っていた。

さば缶は半分だけ食べて残そうと思っていたが、意外に多い焼酎に合わせて食べ切ることにした。目先を変えるためにマヨネーズをかけると、学生時代の思い出が再びあふれ出した。美食三昧をやっていてもたまにはこんな酒もいいもんだ。

さば、さんまの缶詰、魚肉ソーセージが定番で、鮭の缶詰やコーンビーフなどがあれば高級な食事である。蟹の缶詰が加われば超高級になったのだろうが、学生時代にそんなときがあった記憶はない。

空になった一升瓶が若い頃の思い出で満たされた気分でいたら、いつの間にか眠ってしまい、夜中に寒さに震えて目が覚めた。翌日、風邪を引いたのか喉が痛かった。

長い間、台所の隅で忘れられていた森伊蔵の祟りかもしれない。

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2006年11月11日

白えびの天ぷらカレー(富山空港)

富山空港でご当地料理(?)を食べた。

旅の最後に何を食べるか。頭を痛める場面だ。富山空港は小さな飛行場で、飲食店は1階に1店、2階に3店あるだけ。土産物屋でます寿司を買って食べようとも思ったが、待合室で食べる気がしないので止めにした。

氷見うどんを食べるか、ぶりの刺身定食を食べるか、白えび天丼を食べるか、はたまた他の料理にするか、迷って4つの店をグルグル回った。白海老のかき揚そばにしようと決心して店に入ろうとしたところで違う皿に目が止まった。それが白えび天ぷらのカレーだった。名物の白えびの天ぷらをカレーの上に乗っけただけの代物だが、話のタネには良さそうだと思い、すぐに心変わりをした。

カレーにはとんかつなどのカツ類が合う。海老かつなども美味いが、白海老では小さすぎてカツはできないので天ぷらしか選択肢はないのだろう。刺身で食べるとネットリとして甘味のある白えびだが、天ぷらにするとパリッとして香ばしい。

味は話のタネの域を出ない。カレーが魚介類でだしをとっていたら、多少の感動はあるだろうが、肉類のカレーのようなので、白えびと調和しているとは言い難い。ありがたいことにテーブルに一味唐辛子が置いてあったので、たっぷり入れて激辛カレーに仕立て上げた。

昔、この類のミスマッチ食品で驚いたのがコロッケそばだった。そばやうどんには天ぷらが定番だが、コロッケのような揚げ物がそばに合うとは思えなかった。未だに違和感があるが、特別不味いわけでもない。天ぷらカレーはコロッケそばと正反対のもので、逆転の発想かもしれない。

不味くて食えなかったわけではないが、やっぱりそばにしておけば良かったと思った。

こんなものを食べる物好きはいないだろうなと思っていたら、後ろに座ったグループの一人が天ぷらカレーをオーダーしている声が聞こえた。
世の中には不思議なことが多い。意外と人気商品だったりして‥

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2006年11月10日

[キャンドル](名古屋国際ホテル)

名古屋のホテル御三家を勝手に言わせてもらうと、名古屋観光ホテル、名古屋国際ホテル、名古屋キャッスルホテルではないだろうか。若いときに中部地区に住んでいたため、この3つはすべて結婚式で行った。

マリオット、ヒルトンなどの外国高級ホテルの進出で最高級のポジションは微妙になったが、今でもトップクラスのホテルであることは異論のないところだ。自分のイメージの中では国際ホテルが1番古いと思っていたが、ホテル開業自体は観光ホテルが1936年でもっとも古く、国際ホテルが1964年、キャッスルが1969年と続く。但し、観光ホテルは建て直しているようなので、国際ホテルがもっとも古い建築物なのは間違いないだろう。

名古屋でど