初めて知った本場のカレー
南インド料理で有名なアジャンタは約40年前に九段下に開業した。ちょうど同じ時期に銀髪は父の転勤で福岡から東京に引っ越した。長兄が東京の大学に進学したことを機に、父は東京への人事異動を渋々承諾した。
その夜のレストランをアジャンタにした理由を、Kさんは食事をしながら聞いてくれた。目の前にはタンドーリの盛り合わせが出てきた。
父が東京行きを渋ったのは、東京勤務の先に海外駐在が待っているのを知っていたからだ。銀髪がまだ小中学生の年齢であるため、単身赴任は避けられなかった。
アジャンタに行ったのは長兄の案内だったと思う。開店してからそれほど経っていない頃で、父がいたかどうかは覚えていない。九段下にあった頃のアジャンタはおよそカレー屋らしくない平屋の立派なレストランだった。
今、目の前にあるチキン、えび、魚のタンドーリをそのとき食べたかどうか覚えていない。羊や鶏のシシカバブは食べなかったはずだ。ナンも覚えていない。黄色いご飯が印象に残っているので、ナンは頼まなかったかもしれない。
今では誰でも知っているサフランで黄色に染められたご飯は、田舎育ちの銀髪にとって驚きだった。しかし、もっと衝撃的だったのが魚のカレーだった。白身の魚が入ったカレーを食べるのは初めてだったが、衝撃を受けたのはとろみのついてないシャビシャビのカレーだったところだ。ハウスバーモントカレーが好みだった銀髪には、定番のお袋のカレー以外のものがあるとは想像できなかったのだ。
Kさんにわがままを言って、懐かしのカレーを頼んだ。出てきた魚のカレーを見て、あんなに感動したことが嘘のように思えた。大学時代、地方出身の友人も何度か連れて行ったが、みんな一様に感動してくれた。しかし、今では地方都市でもインド料理屋はあちこちに存在する。
九段下からアジャンタがなくなったと聞いたときは悲しかった。麹町に移転したのは約25年前のことだ。豊富なメニューやインドらしい店の雰囲気を今は麹町で楽しむことが出来る。
インド料理屋は増えても、子供たちが知るカレーは今でもお母さんが作るカレーだろう。本場のカレーを初めて食べて驚くのは、あのときの銀髪と同じかもしれない。
やがて食べるたびに本場のカレーもいいと思うようになるだろう。
お袋のカレーの地位は永久に不動だろうけれど…
アジャンタ
東京都千代田区麹町3-11
03-3264-6955
投稿者 銀髪 : 2007年02月02日 06:05
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