スパゲッティの茹で方はアルデンテなんて言い出したのはいつごろだろうか
子供の頃は我が家でスパゲッティといえばナポリタンのことだった。やがてミートソースが出てきて、一躍スパゲッティは豪華な食事に進化した。スパゲッティは1960年代後半になって家庭でも良く食べられるようになったというから銀髪の記憶と合致する。ナポリタンとミートソースが双璧の時代がしばらく続いた。ときどき両雄に割って入ったのは余ったカレーを翌日使ったインディアンスパゲッティぐらいだった。
社会人になって最初の赴任地・豊橋に初めての本格的なスパゲッティ屋が出来たのが1982年だったと思う。女子社員を数名連れて行ったら、茹でたての麺に汁気タップリのソースがかかって出てきた。フライパンで炒めることをしない細く、固めの麺に大ブーイングだった。本物のスパゲッティを食べさようと得意満面・意気揚々としていた銀髪は顔色なかった。
イタメシブームはバブル経済下に始まったというから、アルデンテが広まったのも80年代に入ってから。銀髪が苦い思いをした時期と重なる。
先日、子供の頃に食べたあのナポリタンを探したが、意外と難しい。喫茶店でも昔ながらのものを出すような店は殆どなくなった。歴史のある洋食屋が集まる人形町界隈ならあるだろうと思って行ったら、日本橋小網町の桃乳舎で見つけた。
創業は明治時代、現在の店舗は昭和初期の建築というから由緒正しい洋食屋だ。実は4年位前までよく通った。ランチは480円と安く、他の料理は高くても600円以内。フライ物が主流でカレー、ハンバーグ、ハヤシライスなど洋食屋定番のメニューも並ぶ。冬季にはカキフライを頻繁に食べに行った。450円のスパゲッティは今まで食べる気がしなかったので初体験だ。スパゲッティは当然のことながらナポリタンしか置いていない。
汁気が殆どないケチャップ味の一皿は、概ね昔懐かしいスパゲッティの味を維持している。美味しいとは言い難いと思いながら食べていたら、後から入ってきた客が「スパゲッティ大盛」と注文するのを聞いて驚いた。中高年の男性たちには根強い人気があるらしい。確かに以前よく通ったときにも、スパゲッティを食べる人は多かった。
もう一度メニューを見ると、目玉焼きは「フライエッグ」と書いてある。「スパゲッティ」ではなく「スパゲティ」だ。女性店員も正しい発音をしていた。安い定食屋のイメージしかなかったが、今回行って見て、伝統を保持する誇りのようなものを感じた。
勘定は調理場が見渡せるカウンターで済ませる。カウンターの上には50円玉と10円玉が予想されるお釣りの額に合わせて整然と並んでいる。こちらがお金を出すと、カウンターの向こうにいる80歳を超えると思われるおばあちゃんが、指先で釣り銭をこちらに滑らせてくれる。
映画「三丁目の夕日」の世界は意外と近くに見つかるかもしれない。
桃乳舎
東京都中央区日本橋小網町13-13
03-3666-3645
投稿者 銀髪 : 2007年02月08日 05:40
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