サワラを食べるつもりだったのだけど
JR新橋駅前の岡山ラーメン「後楽」で「おいでんせえ岡山」という小冊子をもらった。そこに載っていたのが美苑寿司で、紹介記事中の「サワラの刺身」の文字に惹かれた。鰆は文字どおり春が旬の魚で、岡山ではこれがないと始まらない。
新宿御苑前、新宿寄りの階段を下りたところに店はある。地下の小さな店かと思ったら中は意外と広い。予約を入れていたカウンター席に陣取り、まずビールを頼む。カウンター内の店主・山本さんの悲壮感漂う忙しさに声をかけるタイミングが見つからない。
お通しも出てこないので店主を煩わせないような料理を頼むことにした。
山本さんの忙しさの原因を探した。山本さんはお土産の岡山ばらずしを作っている。さわら、藻貝、ままかりなどを乗せたばらずしは岡山名物の代表格である。ところがテーブルや座敷、カウンターの客はお土産を待っている風情ではなく、他の料理を待ってイライラしている。
まだまだ忙しい山本さんを気遣って揚げ物を頼んだら、たたみいわし以外は全部山本さん1人で作るとのことで止めにした。料理助手に見えた若手は、ようやく出来上がった数個のばら寿司を籠に入れて店を出て行った。お土産ではなく出前だった。
結局一番早く出来るのは刺し身だった。お奨めのかつおをメインに、しまあじ、さよりの刺身が盛られてきた。岡山以外の魚介類が今日のおすすめとして白板に書かれているが、肝心のサワラはどこにもない。
聞けばサワラは殆ど酢でしめられてばら寿司に使われるそうだ。今日は所期の目的を達成することはできないことを悟った。電話で鰆の刺身ができるかどうか確認して来た方がよさそうだ。
「いつもはこんなに忙しくないんですけどね」と済まなさそうに話す山本さんは、実に気のいい料理人で怒りが湧き上がって来ない。出前料理が終わったものの、店内の客の注文を次々にこなさなければならないようなので、お開きにすることにした。
お土産や出前でも人気の岡山ばらずしを食べるのが一番だということは分かったが、これから頼んでも間が持てない。
「また今度、空いてるときに来ますよ」と話しかけた。暇な店を喜ぶ経営者はいないと思っていたが、「ええ、そうしてください」と言われたら苦笑するしかなかった。
料理は堪能できなかったが、好人物の店主を見ていると、普通なら「二度と来るもんか!」と言うところだが、「次回は絶対ばらずしを」と思ってしまう。
なんとも不思議な気分に陥ってしまった。
美苑寿司
東京都新宿区新宿2-1-13 フーバー新宿御苑ビルB1
03-3352-2840
投稿者 銀髪 : 2007年04月24日 06:02
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