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2007年05月31日
[ボナペティ](吉祥寺)
充分に召し上がれ

吉祥寺には洒落たレストランが多い。東急デパートの周辺に飲食店が密集しているが、ちょっと離れた場所にもいい店がある。ボナペティは無農薬野菜など素材にこだわり、体にやさしい料理を提供してくれるレベルの高いレストランだ。
いきなり褒め言葉から始まったが、実は1階のイタリアンが満席で入れなかったため仕方なく行った店だった。下調べも何もしていない。予想通り値段が高いフレンチはイタリアンより人気がないようで予約なしでも入れた。フレンチというだけで敷居が高いのかもしれないが、格の違いは前菜を食べただけですぐに証明された。
前菜、ごぼうのスープ

2種のテリーヌもサーモンも非常にいい。ごぼうのスープなど飲んだことがなく初体験。細かく刻みスープで煮込んだ後に裏ごししてと手間暇かかった料理に聞こえるが、店主は「そんなに大変じゃありませんよ」と涼しい顔だ。
メイン2種

2人で違う料理を頼んだ。地鶏と鮮魚のソテー。香ばしくしっかり焼けてきれいな出来上がりだ。
クレープ、チーズの盛り合わせ

小豆の餡をクレープで包み塩漬けの桜の葉を巻いた桜餅風のクレープ。
甘いものが駄目な客にもきっちり対応してくれる。数種類のチーズの中から4種類を選べる。ワインを飲み干すのに嬉しいデザートだ。
グラスワインもしっかりしたものを出す。安酒をハウスワインと称して供するようないい加減な店とは異なる。ソムリエバッチが光る店主の真骨頂だろう。
値段も非常にリーズナブルで満足度は高い。高めの料理(それでも5,250円から)ならワインの持込み料も無料。ちょっと嬉しいレストランではないだろうか。
因みに、ボナペティとは「充分に召し上がれ」という意味だそうだ。充分に食べても目の玉が飛び出ることはない。
ボナペティ
東京都武蔵野市吉祥寺南町2-8-8 M288ビル 3F
0422-76-1363
http://homepage2.nifty.com/bon-appetit/
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2007年05月30日
[さんだ](赤坂)
内臓肉が好きな人は行くべし

欧米に比べて豊かな海産物に恵まれた日本には動物を食い尽くす知恵が欠けている。もつ鍋などもあるが、焼肉以外で内臓肉を食べる機会は殆どない。従って、さんだの料理も創作料理が多い。新鮮な牛の様々な部位をどのように使うのか、ワクワクして出かけた。
赤坂見附の駅から一ツ木通りを少し歩くと右側に黒い塀が見えた。お目当てのさんだはすぐに見つかった。6時前なので一番乗り、カウンターの中の板さんを独占した。板さんはなんとミャンマー人のTunさんで、日本滞在5年、日本語も流暢に操る好青年だった。
アキレス腱、ハツモト、つくね

アキレス腱はふぐの皮のようだ。ハツモトは大動脈のことで、コリコリとした食感がいい。喉の軟骨入りのタンのつくねはかつおと昆布のスープで煮込んである。
ハチノス、レバー、子袋

ハマグリの器は女性自身と子袋の子宝盛り。以前は男性自身と3点盛りにしていたそうだが、男性に評判が悪くて2点盛りになってしまったとか。Tunさんではなく女将が楽しそうに解説してくれた。
刺身三種ハラミ、ハツ、レバー

新鮮な肉は美しい。素材に対するこだわりはよく分かる。
牛すじ、ほほ肉、みの

ヤーン(2~3胃袋の継ぎ目)、すい臓、鍋

タン、ギアラ、シビレ

鍋でタンのしゃぶしゃぶなどを作ってくれた後に、ラーメンを食べる。デザートは胡麻のアイスクリーム。
あれこれ味を説明するのは難しい。興味のある人は行くべし。6,500円のコースのみなので、注文に悩むことはない。Tunさんの人柄にも惹かれた。独身の彼に合う人はいないかな?
さんだ
東京都港区赤坂3-19-3
03-5570-1129
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2007年05月29日
[ガムザコル](新宿)
韓国料理屋でリーズナブルな晩御飯

新宿歌舞伎町から靖国通りを渡ると、住所は大久保。韓国料理屋がひしめいている。歌舞伎町の韓国料理屋は焼肉中心の店が殆どだが、大久保側は家庭料理や郷土料理の店が多い。
靖国通りに面したガムザコルに入った。かなり前に来たことがあり、ドンキホーテが目印で迷うことはない。
客の半分以上は韓国人に見える。耳を澄ませてみると確かに外国語のようだ。どのテーブルにも赤いスープの鍋がかかっている。1番人気はカムジャタン(じゃがいも鍋)、2番人気はダットリタン(鳥鍋)と聞けば、韓国焼肉屋と違うことは分かってもらえるだろう。
3番人気の釜ふたキムチ三段バラを頼んだ。

韓国の焼肉といえば牛ではなく豚のバラ肉。メタポリックに悩む日本人なら三段腹を連想する料理名は嫌うかもしれない。前回来た時に料理を頼みすぎた気がしたのでこれを2人前頼んで様子を見ることにした(上の写真は1人前)。思ったとおり小皿が並ぶのを見て自分を褒めた。多分これで充分だ。

サラダ菜に肉とキムチと薬味を乗せて食べる。生のニンニクを入れるのがいかにも韓国人らしい。テレビ番組のせいか、韓国料理は激辛と思っている人が多いが、辛くない料理もたくさんあるし、辛いのが苦手な韓国人も大勢いる。
薬味の青唐辛子があまり辛くないのでコチジャンを持ってきてもらった。
壁にはたくさんの写真が貼ってある。韓流スターには興味がないので誰がトップスターかさっぱり分からないが、一人の白人には見覚えがある。北朝鮮との6カ国協議に活躍中のヒル国務次官補である。芸能人が来たことには驚かないが、アメリカの政府高官には驚いた。
ガムザコルとはじゃがいもの店という意味だとは後で知った。一番人気がジャガイモ鍋というのは頷ける。
結局頼んだ料理は釜ふたキムチ豚三段バラ(1,300円×2)だけ。瓶ビール(600円×2)、にごり酒(400円×2)を加えて合計4,600円。
次回は豪華にじゃがいも鍋にしましょうか。中鍋を頼んだら、釜ふたキムチ豚三段バラを2人前より100円も高い。そう、たったの100円。
ガムザコル
東京都新宿区大久保1-12-6
03-3232-5557
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2007年05月28日
[なだ万](神戸)
新神戸駅前のホテル34階にあるなだ万神戸店に行った。

日本料理の老舗・なだ万には東京でも何度か行ったが、神戸のなだ万も3回目になる。神戸市内が一望できる日本有数の景色のいいレストランだ。20年以上も前に六甲山から見た夜景を思い出してしまう。若かったあのときの思いはどれだけ満たされただろうか。
予約なしで行ったので窓側の席に座ることはできなかった。それでも景色は悪くない。おばちゃん、お婆さんたちの頭越しではあるが…。
お昼限定の「匠御膳」(4,515円)を頼もうとしたが、スポンサー氏が「和牛ステーキコース」(8,925円)を食べろと奨めてくれる。昼には重過ぎるので抵抗したが、グルメ紀行的には面白いと閃いた。
玉子豆腐、お造り、

流石なだ万だけあって安心して食べることが出来る。お造りには鯛とタコが含まれているが、明石産に間違いないだろう。
サラダ、天ぷら

天ぷらには珍しくシャコが混ざっている。銀髪も知らなかったが、瀬戸内海沿岸でのシャコの漁獲量は全国2位の名物だそうだ。
匠御膳を頼んだ他の人が食べ終わっても、メインが出てこない。何度も謝りに来るので忘れたわけではなさそうだ。面白いと閃いたのはメインのステーキにあった。神戸牛と書いていないが、神戸のなだ万で和牛ステーキと書いてあれば勘違いする人もいるだろう。地元だから格安で食べられると喜ぶ人が居てもおかしくない。

実はオーダーするときに銀髪は店員に確認した。「宮崎牛でしょう?」との問いに「ええ、九州の方の肉だと思います。」と曖昧に答えた。以前、帝国ホテルのなだ万で食べたしゃぶしゃぶ肉が宮崎牛だったのを覚えていたのだ。お代わりしたぐらい美味し肉だったので、そのときは大変満足した。
しかし、なだ万ほどの店であれば、神戸牛でないことを明確にすべきだろう。鯛、タコ、シャコと地元産が出てきたら、和牛=神戸牛と思う方が自然だ。もしかしたら、鯛、タコ、シャコもよそ者かもしれないと疑ってしまう。地元産とは書いてなかったのだから。
ステーキが出てくるのが遅かったことについては、文句を言ったわけでもないのに料金を割り引くと申し出られた。なだ万のプライドだろう。なだ万の名を汚さないためには、もう少し配慮が欲しいと思う。
この記事を見て、なだ万でステーキを食べた人が怒らないことを祈る。
なだ万 クラウンプラザ神戸店
兵庫県神戸市中央区北野町1-1 クラウンプラザ神戸34F
078-252-3400
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2007年05月27日
[チョウシヤ](銀座)
元祖コロッケ?超有名らしいけど知らなかった。

日本橋方面から昭和通りを歩き博多ラーメンの「一風堂」に入った。元気のいい店員に新作ラーメンを奨められるも、断って定番の赤丸新味を頼んだがぬるいスープに失望した。欲求不満解消のため歌舞伎座寄りの1本裏道を散策することにした。歩き出してすぐに「元祖コロッケ」の文字が目に入った。
1927年(昭和2年)の創業というからコロッケを発明したわけではないだろうが、元祖とつけるには意味があるに違いない。歌舞伎座に近いこともあり、役者たちも創業以来変わらない味を愛しているとのこと。随分前に昔のコロッケを食べたいと書いたが、それっきり忘れていた。(→「コロッケ」)
買おうかどうか迷ったが、お腹に一風堂の麺とぬるかったスープが詰まっている。翌日出直すことにした。
開店から20分後の11時20分に店に着いたが、先客がいないので買う要領が分からない。ボーとしているとカツを揚げている人から声がかかった。
「コロッケパンをください」と言うと、「食パンですか、コッペパンですか?」と聞かれる。「コッペパン」と答えるとビニール袋に入ったコッペパンを取り出し、横から2つに切ってマスタードを塗った。コロッケも二つに切って挟みソースをかけた。実にシンプル。ついでにメンチカツも1個買った。

コロッケは松坂牛のミンチを使ったこだわりの味とのことだが、肉はその味や食感を楽しむほど入っていない。昔懐かしいコロッケそのものである。パンに挟んだためか揚げ物のサクサク感はなくなったが、コッペパンが熱気を吸い取ってコロッケとよく馴染んでいた。

メンチカツは単品で買ったのでサクサクして美味だった。コロッケパンの半分をメンチカツに入れ替えて食べた。銀髪にとってはこちらの方が懐かしさを飛び越えて美味い。
コロッケパンを作ってもらっている間に来た若い客が、迷わずメンチカツパンと頼んでいたのが思い出された。
トンカツやハムカツなど他の揚げ物もある。常連はダブルで挟んだり、マカロニサラダを加えたりと思い思いの味を作っている。銀座の裏通りに今もあるレトロの世界を見つけた。
チョウシヤ
東京都中央区銀座3-11-6
03-3541-2982
コロッケ130円、メンチカツ140円、コロッケパン220円
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2007年05月26日
喜ばれるお土産
旅行は楽しいが、悩ましいのがお土産だ。

贈る相手の嗜好がはっきりしていると選びやすい。銀髪は自他共に認める酒飲みだから、酒なら喜ぶのは間違いない。うんちくが多い奴だから何を買っていいか迷うだろうが、貧しい銀髪の手が出ないものなら問題ない。
マッカラン30年

イヤー、凄い人だ。免税店で3万円以上するものを買って来てくれる太っ腹で、遠慮をするのも形だけで受け取ってしまう浅ましさ。兄貴たちと飲もーっと。
しかし、誰もがこんな高額なものを買えるわけがない。
「手ぶらで帰る訳にもいかない」と思って土産を選ぶ場合はかなり辛い。地元特産の置物などは安くても、重くて嵩張ってしまい持って帰るのがシンドイ。
小さくて軽いアクセサリーなどは値が張るし好みもある。
昔、友人がまったく同じ柄の洋服を2枚買うので不思議に思って理由を尋ねたら、妻と愛人へのお土産だと言う。同じものを買っておけば、後々土産の話題になったとき話が食い違わないとのこと。驚き、あきれ、感心した次第。妻と愛人が同じ洋服や貴金属を身につけているのを想像するだけでゾーッとしてしまう銀髪だけれど、板挟みに苦労したことがある人なら理解できるかもしれない。
相手の好みを深く考えたら何も買えなくなってしまうのも事実。荷物にならず、貰っても困らないものはお茶の類だろう。海外駐在していたときは、お茶や海苔をよくもらった。
甘党や女子供が居る家庭にはお菓子の類がもっとも簡単だ。我が家へのお土産もお菓子が定番だったが、ダイエットを気にしだしたのか敬遠されるようになった。甘ければいいという訳ではなくなり、土産物屋を見て回る時間が長くなった。
個人的にはお土産のやりとりは好ましくないと思っている。クリスマスやバレンタインデーのプレゼントも同様だ。義理や礼儀ではなく、純粋に相手の喜ぶ顔を見たいと思ったときだけでいいと思うのだが、それに徹すると嫌な奴だと思われそうで辛い。
いろいろ書いている間に件の太っ腹氏がまた土産をくれた。
カミュ・エクストラ

ありがとうございまーす。何だかんだ言ってもいい酒には弱い。酒飲みの浅ましさ。自分が恥ずかしい。
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2007年05月25日
[サッカヴァン③](四谷)
久しぶりのサッカヴァン

ちえまるさんのコメントを読んでまたまた行きたくなった。新宿通りから路地に入るとサッカヴァンの階下にも雰囲気のある居酒屋、その前には信州郷土料理屋がある。新規開拓をしようかと迷ったが、やっぱりサッカヴァンに行くことにした。
店に入り店主に笑顔で迎えられると座る前からくつろいでしまった。相思相愛のなせるワザだ。自家製ハムをもう一度食べたかったが、まだ試してない料理は多い。カプレーゼ(フレッシュトマトとモッツァレッラ)以外の3品は初挑戦だ。
カプレーゼ、2種のアスパラサラダ

ホワイトアスパラが出始めた。昔は憧れの缶詰だったホワイトアスパラも、今では国産品の生が出回っている。グリーンアスパラと味比べをしながら旬を味わった。
自家製ソーセージ、オリジナル・ハンバーグ

サッカヴァンならではの料理を二品。「どちらもひき肉料理ですが…」と店主が心配したが、サッカヴァンでしか食べられないものを食べたい欲求は引っ込めない。黒胡椒風味とスペイン風チョリソーの2本のソーセージは、添加物や化学調味料は一切使っていない苦心作。
フォアグラとピスタチオ入りハンバーグはアヒルの肝臓を牛豚合挽き肉のハンバーグで包む。両品とも個性が強い料理なので、好き嫌いが分かれるかもしれない。
店名のサッカヴァンの意味を聞いた。サッカとは袋、ヴァンはワイン。瓶を使う前はワインはワイン袋に入れたとのこと。瓶詰めが一般的になって使命を終えたサッカヴァンは、今では酔っ払いを意味する言葉になったそうだ。気楽にワインを飲んで欲しいお店、それが葡萄酒サッカヴァンである。
そこで今日は、ボトルで頼まないでグラス・ワインで味比べをした。白ワインは5種、赤ワインは10種ものワインをグラスで飲める。量も50mlからとフレキシブルである。
1番安い100ccで700円のワインからスタートした。白2種類、赤2種類を飲んで最後は
1,900円のシャトー・レ・ゾルム・ドゥ・ベズ2003年。イヤー、参った。値段は正直だ。

次回は100ccではなく、50ccを10種類にしようかと思った。サッカヴァンならではの楽しみ方だ。
昔、昔、バッカスと渾名された銀髪も、めっきり酒量が落ちてきて、今はただのサッカヴァンだ。
葡萄酒サッカヴァン
東京都新宿区愛住町4-1
03-3358-7650
http://www.sacavin.jp/
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2007年05月24日
[たか岡](神田須田町)
頑張ってね、応援してますよ!

Kさんが仲良くしている酒屋さんに紹介されて行くことにした。日本橋から歩いて約30分、迷ってしまったので時間がかかったがお腹は万全の状態に仕上がった。たか岡は「かんだやぶそば」、あんこう鍋の「いせ源」、鳥すきやきの「ぼたん」など観光地化している老舗が威厳を振り撒く一角のショパンビル3階にある。
店の奥に小上がりがあるが、カウンター割烹の趣である。緊張気味の店主に名刺を渡して素性を明かす。すぐに奥に引っ込み戻ってきた店主から名刺を受け取ると、横で我々を席に導いた女性が「妻でございます」と頭を下げる。いい雰囲気だ。料理も間違いないだろう。
お通し、空豆

お通しはあじの南蛮漬け。空豆は注文を受けてから茹で始めた。歯ごたえが残るぐらいに程よく茹で上がった空豆には食べやすいように切れ目が入れてある。居酒屋とは明らかに違う。
刺身盛合わせ

メニューに奇をてらったものはなく、オーソドックスなものが多い。チャレンジャー銀髪としては的を絞れない。「自慢料理はどれですか? 何を食べたらいいですか?」とアドバイスを求めたら、「刺身です」と即座に返ってきた。鮪の赤身、かんぱち、ひらめ、しめさば、めばる。東京でめばるの刺身を出す店は珍しい。ピンクの身が美しく、ほんのり甘味があるいい魚だ。
いい刺身には日本酒の冷が合う。純米酒を頼むと奥さんが冷蔵庫から大事そうに一升瓶を取り出し、グラスに注いでくれた。日本酒はもっともデリケートな酒である。栓を開けたら出来るだけ早く消費しないといけないのはもちろんだが、栓を開けなくても味は変わる繊細な酒だ。美味しい肴に合わせるために、酒を最良の状態に保つ難しさを客は知らない。
たか岡の日本酒の品揃えに不満を言う客もいるようだが、日本酒好きが店内にあふれるようになるまで温かく見守ってあげたい。
鮪のハラス、土佐揚げ

食のチャレンジャーとしては変わったものも食べなければならない。豆腐に鰹節をまぶして揚げた土佐揚げはたこ焼きを連想させる味だ。
ふきと鰻の肝煮、ジャガイモ煮

山椒が効いて肝もよく出来ている。シンプルなジャガイモを食べると懐かしさが込み上げて落ち着いた。料理を終えて店主が話しに加わった。調理中の真剣な顔は柔和に崩れ、はにかみ気味の笑顔が優しい。24年間の雇われの身からオーナー料理人になったが、初めてカウンターの客の前に立ったときには体が固まったという。開店からまだ間もないので客と丁々発止ができるまで時間がかかりそうだが、それまで奥さんがしっかりサポートする。
店名は高梨店主から一文字、奥さんの旧姓から一文字とった。夫唱婦随の店ならではの味わいが出ている。店主が料理をしながら会話する余裕が出てくる頃には、周囲の老舗同様に繁盛店になるに違いない。
和彩房 たか岡
東京都千代田区神田須田町1-19-9 ショパンビル3F
03-5207-8428
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2007年05月23日
[あきば③](八重洲)
夏が来る前に

夏は寿司好き垂涎のスターであるシンコなどが出てくるが、基本的には寿司屋にとっては難しいシーズンだ。貝も産卵期に入り、しばらくは味が落ちる。そこで季節の変わり目に寿司屋で楽しもうということになり、総勢6人で繰り出した。
出かけたのはご近所のあきば。夫婦で営むカウンターだけの寿司屋だが、誰を連れて行っても喜ぶ。この店に来るようになった経緯は以前の記事を参考にしてもらおう。
お通し

真ん中のはしったか貝。主に太平洋側の浅瀬に生息しており、居酒屋でもよく見る貝だが名前を知る人は少ない。
関アジ、アオリイカ、タイ

ツブ貝、かつお、カンパチ

大型のかつおは脂が光っていて、これを食べたらかつおが嫌いな人はいなくなるだろう。
穴子

タレをサッと塗った焼き穴子。関東にはあまり入ってこない通も喜ぶ瀬戸内・明石産の穴子。
タコ、サザエ、タイとコハダ

タコは神奈川県佐島産。軽く茹でただけというが、砂糖を入れたのではないかと疑うほどに甘味がある。アフリカ産とはものが違う。
あきばの自慢は大きなツブ貝とサザエ。サザエは壷焼きにしてもらい、皆さんに食べてもらうことにした。遠慮したつもりだったが、大将がソッと刺身を銀髪だけに出してくれた。嬉しい心遣いだ。
鮪のづけ、トロ、あわび、はまぐり、穴子

鮪は今は和歌山沖を泳いでいるらしい。今度の穴子は江戸前。瀬戸内産は焼いて、江戸前は煮て出す。プロに言わせれば産地によって穴子は顔も味も違うそうだ。料理法が異なるのも頷ける。
最後に青森県十三湖産の大しじみの味噌汁を飲んでお開きにした。と、言いたいところだが、みんな帰りたがらない。ミル貝が欲しい、赤貝も、ウニもなどと頼み始めた。
次のお座敷が待っている銀髪はお金を部下に預けて引き上げた。お腹は一杯だが、お財布は空っぽになってしまった。
あきば
東京都中央区八重洲1-4-10
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2007年05月22日
[トラベルカフェ フィリピン](飯田橋)
初めてのフィリピン・レストラン

フィリピン料理を過去に食べたことは1度だけ、ホームパーティーでフィリピン女性が作った料理だった。飯田橋に昨年出来て評判がいいと聞いて行く事にした。
トラベルカフェは「それぞれ異なったテーマを持つカフェで旅行情報を提供する」というコンセプトのもとに、ニュージーランドやスペインなどをテーマにした複数の店を持つ。トラベルカフェ・フィリピンはフィリピン政府も協力しているというから期待できると思った。
銀座のメキシコ料理の店「スナッパー&グルーパー」よりずっときれいな店内だが、イメージは重なる。飲むのはもちろんフィリピン産のサンミゲール。香港などアジア各国のマーケットを支配するビールだ。
海老とアボガドのタルタルディップ、ルンピア

豚ばらのアドボ、トースト

メニューの写真を見ても料理にフィリピンらしさを感じ取れない。アドボとは煮込み料理のことで、フィリピンの代表的な料理だが、日本の角煮とあまり変わらない。癖のない食べやすい料理は安心感はあるが、驚きがなくてつまらない。フィリピン旅行を促進するために日本人好みにしているのかもしれない。銀髪のように変わったものを食べたがる日本人は少数派だから、正しい戦略かもしれない。
フィリピンは昔はスペイン、戦後はアメリカの支配下もしくは準支配下にあった。アジアの他の地域と同様に華僑も多く住む。多くの外国文化の影響を受けたが、豊富な果実に恵まれた他の熱帯地域の国と同様に食文化は発展しなかったのかもしれない。
暑い国の多くに見られるのがバナナの揚げ物だ。約30年前に南米のコロンビアで初めてバナナ料理を見て驚いたものだ。それまで果物を油で揚げる発想はなかった。トラベルカフェのメニューにもあったので頼んだ。
バナナ、サラダ

予想通りの味だが、懐かしさも甦った。フィリピン料理を懐かしがって来たら、フィリピン人やフィリピンに行ったことのある人はがっかりするだろう。日本人が外国で日本食を食べて首を傾げるのと同じだ。東京の店でフィリピン料理を評するのは失礼だ。
「やっぱりフィリピンに行かなければ本当の良さは分からない。」と思わせたのだから、フィリピン政府の思惑どおりかもしれな。
トラベルカフェ フィリピンTOKYO店
東京都千代田区飯田橋3-5-1 東京区政会館1F
03-3288-0091
http://www.travelcafe.co.jp
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2007年05月21日
[中村屋](新宿)
元祖インドカリーをどうしても食べたくなった。

中村屋のホームページを開く。「東京のカレー・ライス、うまいのないナ。油が悪くてウドン粉ばかり…」とインド独立運動の志士ラス・ビバリ・ボースが嘆いたところから、中村屋のインドカリーがボースの下で開発されたという。このボースは銀座のナイルレストランにも関わる日本カレー史の重要人物だ。「上野精養軒・日本橋のカレーとハヤシのお店」より美味いに違いないと期待したところから悲劇はスタートする。
「一杯で入れないかもしれませんよ」と相方に言われたが、2階のルパに行列もなく簡単に入れた。ウエイター頭に案内された2人用のテーブルは右側の衝立てにくっつけられており、左側の席とも近接している窮屈な席だ。席を替えてもらおうと一瞬思ったが、相方の言葉を思い出して遠慮した。午後8時を過ぎているが、これから客がどんどん入って満席になるのかもしれない。
ビール、カレーライス、ハヤシライスとサラダを頼んだ。ビールを飲むが、すぐになくなりそうなのでワインも頼んだ。冷蔵庫で出番を待っていたサラダがやってきた。目的の元祖インドカリーもサラダを食べ切る前にやってくる早業だ。相方が頼んだハヤシライス、ライス、薬味と並べられると勘定書を置く場所すら見当たらなくなった。口に運んだグラスをテーブルに戻すのにも慎重を期さないと何かに引っかかりそうだ。窮屈に虐げられた身を我慢してカレーを食べた。
食事の前の大原則「期待しないこと」を忘れていた。期待しないで食べた「日本橋のカレーとハヤシのお店」の方が美味く思える。骨付き鶏を一口食べたが、和食の店で食べる地鶏の方が遥かに美味い。それでも期待し過ぎたことを反省し、再挑戦の前にサラダで口直しをしようとフォークを取った。
インドカリー

左肩に衝撃を受けて驚いた。若いウエイターが左の席に料理を置こうとして銀髪にぶつかってしまったのだ。サラダを食べようとしていた銀髪の右ひじが衝立てに衝突した。右手に軽く挟んでいたフォークは指を離れ床で金属音を立てて弾んだ。
アルバイトに違いない若いウエイターを叱っても仕方がない。見渡すと左隣のカップルのように4人掛けの席を2人で使っているテーブルが山ほどある。それでもフロア全体の半分も埋まっていない。我々を狭い席に押し込んだウエイター頭を呼びつけて、声を荒げないように冷静を装い注意した。しかし彼の言い訳を聞いて更に血が頭に昇ることになる。
血を頭から胃袋に戻すのに5分以上かかった。元祖インドカリーの良さを感じようと努力するがちっとも美味しくない。ハヤシライスも味見したが喜びは湧いて来ない。
ハヤシライス

「期待しないこと」の大切さを再認識したが、美味しく食べるために必要なことをもう一つ学んだ。
「頭に血を昇らせないこと」
新宿 中村屋 ルパ
東京都新宿区新宿3-26-13
03-3352-6161
http://www.nakamuraya.co.jp
インドカリー 1,400円 ハヤシライス 1,700円 野菜サラダ400円
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2007年05月20日
豊橋四川飯店(豊橋)
陳建民の流れをくむ料理長が腕をふるう中華料理店。

豊橋で一番の中華料理店はここだろうということで予約を取った。5時半と早めのスタートだったが手前の狭い部屋に既に先客がいた。誰も居ない奥の広めの部屋に通されるかと思ったが、先客と一緒の狭い部屋に6人用テーブルがセットしてあるのが見えた。
不満気なパートナーをなだめて席についた。コース料理にしようかと一度は考えたが、ラーメンが食べたい、辛いのがいい、逆に辛いのは駄目だ、などなどみんな注文がうるさい。それぞれの好みを洩れなく採用して分け合うことにした。
くらげ、海老マヨネーズ、ホイコーロー

先客3人組にはウエイターが小皿に取り分けて出しているが、こちらの6人にはやってくれない。彼らは多分コース料理を食べているのだろう。仕方なくメンバーの1人が6等分しようとするが見ていられない。銀髪が最後まで給仕役をすることになった。
おこげのあんかけ、海老チリ、五目ラーメン

湯気も立ち昇らず、パチパチと弾ける音もしないおこげのあんかけは寂しいものがある。「ラーメンも順番を考えないでいいよ」と言ったので、途中に出てきた。それにしてもフカヒレまで順番を考えないで最後に出てくるとは思わなかった。パートナーが苛立って催促してようやく口にすることができた。
フカヒレスープ、鶏とカシューナッツ炒め、ピリ辛チャーハン

フカヒレスープに赤酢を求めたらウエイターがキョトンとしている。上役が出てきて置いてないと言われた。四川料理では使わないのかもしれない。鶏のカシューナッツ炒めとピリ辛チャーハンを追加注文した。
チャーハンは辛さに気合が入っていて良かった。大満足の銀髪だが他の人の助けは僅かで、オーダーした責任を取らされて満腹になった。口の中は火事になっている。
最後に杏仁豆腐を食べてお開きに。サービスには不満が残ったが料理の味はまずまずだった。他の連中はバーミヤンや餃子の王将と比べて絶賛していたが、料理長は喜ばないだろう。
クレジットカードを手にしたパートナーが勘定書を一瞥すると、クレジットカードを引っ込めてお札を2枚出した。それでも小3枚+コインのお釣りがあった。支払った後で再びバーミヤンと比較して喜んでいる。あれこれぶつぶつ言っていたのが嘘のようだった。
豊橋四川飯店
愛知県豊橋市駅前大通2-48 豊橋グランドホテル8F
0532-55-6221
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2007年05月19日
[甲羅本店](豊橋)
本店は意外なことに愛知県豊橋にある。

甲羅グループは蟹料理の甲羅本店だけでも全国に40店舗以上、他にも赤からなど10以上の異なる業態の料理屋を持ち、全国に100店舗以上の直営・フランチャイズ店を擁する大飲食店グループである。その本社が人口30万人の小都市・豊橋にあると知る人は少ないだろう。若き日の6年間を過ごした銀髪はもちろん知っているが、これほど全国展開しているとは最近まで気付かなかった。
久しぶりに豊橋甲羅本店に行った。地方都市らしく駐車場も広いし、店構えも立派である。季節はずれのせいか、生簀にはズワイガニが5匹しかいなかった。この中の一匹を料理してもらうことを決めて、部屋に向かった。
かに豆腐、かにシュウマイ、かに味噌

特上ずわいがに刺身、たらばちり造り

コロッケ、茶碗蒸し

どれも満足のいく料理だった。6人なのでそれぞれ2~3人前ずつ頼んだが、みんな行儀よく分け合って食べている。ご飯が欲しい人は酒飲みの銀髪に付き合ってはいられないとばかり、雑炊を食べ始めている。メインが食べられなくなると、人ごとながら心配しているところにその鍋がやってきた。
活ずわいがに鍋

生簀にいたズワイガニを目の前で調理する。10分間強火で、その後数分弱火にして出来上がり。ほんの少しレア気味で、完璧に仕上がった。こんな調理法は初めてだが、これが一番美味い。もちろん何もつけずに食べる。蟹の身は柔らかく、香りも豊かだ。一匹5,800円はお値打ちに思えた。冬であればもっと美味しいに違いない。
寿司盛合せ、かにセイロ

寿司に歓声が上がった。よほど気に入ったらしく、今も「美味しかったねー」と言われる。遠慮した銀髪の口には入らなかったのだけれど…
勘定を払って入り口の生簀を覗いたら3匹が消えていた。
甲羅本店
愛知県豊橋市東脇3-1-7
0532-31-0125
http://www.kora-honten.jp
因みに、料金と頼んだ数は以下の通り。酒代込みで合計27,428円でした。
活ずわいがに鍋5800 特上ずわいがに刺身1365×2 たらばちり造り1890×2
シュウマイ609×3 かに味噌525×2 かに豆腐472×3 かに雑炊840
コロッケ819×2 茶碗蒸し525×3 かにセイロ1365 寿司盛合せ1680
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2007年05月18日
[上野精養軒・日本橋カレーとハヤシのお店](日本橋)
元祖カレーライスはどこで食べる?

カツカレー、ポークカツレツと元祖を捜し歩けば最後はカレーになる。ところが、これを探すのがもっとも難しかった。
「元祖カレーライス」と謳っている店が見つからないのである。銀座のカレー屋で有名なのはナイルレストランだが、創業は1949年だから新しすぎる。新宿中村屋がカレーを売り出したのが1927年だが、それは「元祖インド式カリーライス」である。
カレーライスの歴史はハウス食品のHPに詳しくある。「日本人が初めてカレーを目にしたのは幕末の頃。1872年(明治5年)に出版された西洋料理の本に作り方が出ている。明治30年代には洋食屋のメニューの定番になる。」とのことだから、明治28年創業の煉瓦亭のメニューにもカレーライスが載っていたに違いない。中村屋のカレーより半世紀も前にカレーは既に誰もが知る料理だった。
煉瓦亭よりも古い洋食屋を探したら、まさに料理本が出た明治5年創業の店があった。上野精養軒である。創業の地は築地なので銀座のすぐそば。看板はハヤシライスでこちらは元祖を名乗っているがカレーにコメントはない。それでも中村屋より日本におけるカレーライスの元祖に近い存在と勝手に決めつけた。
上野まで行くのは面倒なので日本橋界隈の出店を探したら丁度いいのがあった。

日本橋三越前の上野精養軒日本橋店が入っているビルの裏の駐車場にある掘っ立て小屋。カレーライスとハヤシライスを出す店で、店名のまんま。
この店ではごはんをよそって、カレーをかけて客にだすだけ。日本橋店で料理したものを持ち込んでいるから、多分同じ味で550円は嬉しい。

このカレーはいい。大昔、インド人が洋食屋でカレーを食べて不味いと言ったのがよく分かる。近年の本格カレーに慣れた人は嫌がるかもしれないが、これこそ本物と思う人も多いに違いない。このカレーに野菜や豚肉がゴロゴロ入っていたら涙するオヤジもいるだろう。
カツなどのトッピングもあるが、この店では調理しないので熱々とはいかない。それでも、冷めたカツのカツカレーの方が昔食べた味に近いかもしれない。
カツカレーの旅は終わった。食の歴史探訪はとっても楽しかった。
上野精養軒・日本橋カレーとハヤシのお店
東京都中央区日本橋室町1-5-3
営業時間AM11:00~PM2:30
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2007年05月17日
[煉瓦亭](銀座)
元祖カツカレーを食べたら、元祖ポークカツも食べねばなるまい。

揚げ物を海外では何と言うのだろうか。英辞郎でカツと引くとcutlet、カツレツと引くとSchnitzelと出てくる。ちゃんとした外国語があるように元々揚げ物は海外で生まれたもの。なぜ煉瓦亭が元祖なのだろうか。
シュニッツェルで思い浮かぶのはウインナー・シュニッツェルだが使う肉は牛肉で、揚げるのではなく多目の油をひいたフライパンで焼く。海外でも日本のようにタップリの油で揚げる(deep fry)料理もあるが、牛、鶏、魚介類のみで不思議なことに豚を揚げたものに出会ったことがない。
明治時代に日本に伝わった洋食の揚げ物にはなかった豚肉を、煉瓦亭が初めて使ったわけだ。煉瓦亭の創業は明治28年(1895年)で、4年後に考案されたポークカツレツは千切りキャベツ、パセリを添えて日本中に広まる。ご飯をお皿に盛ったのもこの店が発祥。フォークの背にご飯を乗せて食べる妙なマナーもここで生まれたのだろうか。
11時13分に店に着いた。きっちり2分後に店が開き、2階に上がり席についた。おしぼりと水を持って来た店員にポークカツレツ(1,250円)とライス(200円)を注文したのが11時17分。11時30分には、銀髪の前に本日の煉瓦亭最初の料理が運ばれてきた。

何もつけずに一口食べたら意外なことに美味い。意外とは失礼かもしれないが、昔ながらの味を守り続ける老舗料理屋よりも、後発の店の方が美味しい例は山ほどある。
しかし、生パン粉をたっぷりつけ、甘めの豚カツソースをどっぷりかける流行りの豚カツと違い、煉瓦亭のポークカツレツは母が作ってくれた豚カツのようで気に入った。何もかけずに半分、残りは塩をつけたり、テーブルの上のウスターソースを少しだけかけて食べた。
煉瓦亭が生まれて110年以上、この店が日本中に広めた料理も多い。それにしても、煉瓦亭のある銀座ガス通りは中央通りを1本外れただけなのに、いい店が多く風情がある。らん月の裏口から、カツカレーのグリルスイス、煉瓦亭と続く道の並びにはキャバレーの「白いばら」がある。創業は昭和6年で昔からのファンも多い。
午後3時半、豚カツを食べて4時間足らずでお腹が空いたのには驚いた。新鮮な油に替えたばかりだったのだろうか。自分の体調が良かったのだろうか。もしかしたら、これが店の実力かもしれない。
午後4時過ぎ、記憶にないほど久しぶりにマクドナルドに入り、コーヒーと小フライドポテトを頼んだ。夕飯までの空腹感を紛らわして余りある重さだった。
煉瓦亭
東京都中央区銀座3-5-16
03-3561-7258
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2007年05月16日
[グリルスイス](銀座)
元祖カツカレー

豚カツは中学生のとき毎日お弁当に入れてもらっていたほど好きだった。カレーはもちろん大好物だった。ところが家で2つの大好きな食べ物を一緒にして食べた記憶がない。どちらも立派な独立した食事になり得るのだから、2つ一緒にするのはもったいないと母は思ったのかもしれない。
これを一緒にしたのが元読売巨人軍選手の故千葉茂氏で、1948年に彼がオーダーしたグリルスイスでカツカレーが誕生したという。日本的なとんかつは1890年に銀座の煉瓦亭が考案したとされ、日本にカレーライスが普及したのも明治期のようであるから、60年近くもの間だれもが我が家の食卓と同じ考えを持っていたのだろう。
そのグリルスイスに行った。カツカレーを食べに来たので悩むことはないと思ったのだが、メニューには2つある。復刻版の千葉さんのカツカレーを食べようと一度は決めたが、オーダーする際出てきた言葉は「カツカレー」だけ。すかさず店の人に「元祖カツカレーですね」と言われて素直に従った。

カレーが本格的なので、調子が狂った。銀髪にとっての元祖カツカレーは大学の学食で食べたハムカツ・カレーで、当然カレーは黄緑色の粉っぽい代物だった。カツカレーに合わせて作られたに違いないグリルスイスのカレーは、カツが必要のないほどしっかりしたものだった。
千葉さんのカツカレーをメニューで見る限り、腹が減って豚カツもカレーも両方食べたいが皿を分けるのが面倒なので、一皿に盛ってもらったように見える。まったく偶然の産物でまさか合わせたら人気メニューになると考えたわけではあるまい。人気料理として完成させたのがグリルスイスで、従って元祖カツカレーと命名したのだろう。
勝手に想像しないで勘定場に今も元気に座る庄子静子さんに聞けばいいのに遠慮した。故人の名誉のためにも千葉氏が発明したと言った方がいい。庄子さんは千葉氏を敬う優しく謙虚な女性に見える。
周りを見渡せば常連さんたちが思い思いのものを食べている。カツカレーを目当てに来る人以外は普通の定食屋の気分でいるようだ。店の人の応対もそれに倣う。昔懐かしい店と思えば、何度か足を運ぶうちに雰囲気に溶け込むようになるだろう。

グリルスイス
東京都中央区銀座3-5-16
03-3563-3206
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2007年05月15日
[しんじろう](新宿)
雑誌に惹かれて行ったけれど…

中高年層を狙ったグルメ雑誌が多数出版されている。雑誌の記事はまとめられて一冊の本になる。そんな本の中から新宿でイチオシの店「しんじろう」に行った。
区役所通りを歩き、職安通りに達するちょっと手前の道を右に折れるとすぐに見つかった。
雰囲気のある店構え、靴を脱いで掘りごたつ式のカウンター席に座った。目の前に立つ恰幅のいい板前さんに「しんじろうさんですか?」と声をかけた。「そうですが…」と怪訝そうに睨まれた。「雑誌で見て来たんですが…」といっても笑顔は返ってこなかった。
お通し2種

ほうれん草としめじのおひたし、しじみの澄まし汁とスタートは期待が持てる。メニューも季節のもの、食べたことのない創作料理と豊富で嬉しくなる。
城下かれいと桜えびの刺身

悪くない。雑誌が奨めるのも頷ける。
ぎんぽうの天ぷら、鰆の塩焼き

どちらも春らしい素材だ。鰆を切っているところをカウンター越しに覗くと、かなり大型のようで脂の乗りも良かった。
生うに、牛アキレス腱

創作料理を謳っている店なので、お奨めの一品を求めたら出てきたのが牛アキレス腱だった。長時間煮込んで作る手間暇かかった料理で、プルンプルンして大変美味であった。
トリュフ入ロールキャベツキャビアのせ、ふかひれ茶碗蒸し、ハヤシライス、牛すじカレーなど、和食のジャンルを飛び越えた自慢料理が数々ある面白い店である。
ところが、しんじろうさんが話しに乗ってこない。常連客と話すときの笑顔は可愛いのだが、こちらに笑顔を振りまいてくれない。食事を終えた頃には姿が消えていた。
機嫌が悪かったのだろうか、何か約束があって急いでいたのだろうか、我々に落ち度があったのだろうか。謎は残ったまま勘定を払って店を出た。
もしかしたら、しんじろうさんは滅茶苦茶人見知りする人かもしれない。
和食・創作会席料理 「しんじろう」
東京都新宿区歌舞伎町2-18-6 日光ビル1F
03-5272-8282
http://www014.upp.so-net.ne.jp/shinjiro/index.html
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2007年05月14日
[富麗華](麻布)
2007年05月13日
泡盛 大琉球国
お土産に泡盛をもらった。
約30年前、満員電車に乗ったら前に立つ人に度々振り返っては睨みつけられた。相手は男なので痴漢に間違われたのではない。足を踏んでいるわけでもないので、自分が何をしたのか理解できないまま電車を降りたところで思い出した。前日、次兄からもらった泡盛1升をあけたことを。10年物古酒の豊かな香りは、一晩胃の中でもまれて吐息になると悪臭に変わった。
そのとき古酒と書いてクースーと読むことを知った。3年以上熟成したものが古酒を名乗ることができる。銀座の美女たちにゴールデンウイークの沖縄土産としていただいたのが大琉球国である。

箱の口上書きを読んだ。まだシャムと称していたタイから伝えられた蒸留酒を基に、沖縄で発見された黒麹菌を使って造られたものが泡盛とのこと。泡盛は約600年の歴史を持つ日本最古の蒸留酒だそうだ。驚いたのは今もタイ米を使っていることだ
焼酎は鹿児島産が中心の芋焼酎全盛期にある。一昔前は癖のない大分産の麦焼酎が人気があった。宮崎の蕎麦焼酎はそば屋の定番の地位を維持している。球磨(くま)焼酎に代表された熊本の米焼酎は芋焼酎ブームを良しとしない通好みの焼酎だ。
米焼酎と泡盛との違い知らなかったので、長年沖縄で生産された米焼酎を泡盛と呼んでいると思っていた。大琉球国をもらって調べてみたら、違いは明確だった。
一つは前述の通り原料米で、米焼酎はジャポニカ種の日本の米を、泡盛はインディカ酒のタイ米を使っている。
もう一つは麹菌で、米焼酎は白麹を、泡盛は沖縄黒麹を使っている。
泡盛は瓶つめした後も熟成するので、新酒を家庭で古酒に育てることもできるという。以前、甕に入った立派な焼酎をいただいた。「最低3年は寝かせてくださいね」と言われたが、我慢の限界は半年だった。味見と称して度々飲んでいるうちに、空っぽになってしまった。
昔、梅酒を造ったときに、味見をすると言っては母に怒られていた父を思い出す。酒飲みは意地汚いというべきか、血は争えないというべきか。
こっそり飲んでは母に見つかり、バツが悪そうにしていた亡き父の姿が懐かしい。
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2007年05月12日
ビールのラベル
ビールは飲む以外の楽しみがある
昔は酒瓶が重要な小遣いの源だった。我が家に来るお歳暮といえば酒が殆どで、元日に我が家で開かれる大新年会で送った本人がしっかり自分の分を飲んで帰って行った。一升瓶が10円、ビール瓶は5円で酒屋が引き取ってくれたので、兄弟3人で運んだ。1番働く次兄は、お金の分配方法で年功序列を唱える長男と平等を主張する3男(銀髪)にいつも泣かされた。
瓶ビールの栓は裏のコルク片を剥ぎ取って、バッチにして胸に着けた。空き缶の蓋は慎重に切り抜いて手裏剣にした。スチール缶のビールは昭和33年に売り出され、小遣い稼ぎを邪魔するようになるが、手で潰すことが得意な力自慢には喜ばれた。昭和46年以降、ビールはアルミ缶に変わっていく。お陰で持ち運びや処分が楽になったが、それ以外の面白さはなくなった。
ビールの王様はキリンラガービールだった。三船敏郎が「男は黙ってサッポロビール」と言っても、誰が頑張っても、キリンの牙城は長く崩れなかった。キリンのラベルに書かれた隠し文字は父に教わった。知らない人はいないと思っていたが、我が社の60余歳の社員が知らなかったのには驚いた。トップがアサヒドライに変わったせいかもしれない。

「キ」は角の根元、「リ」はタテガミの中央、「ン」は尾の付近に見つけることができる。文字を探すのに近視用の眼鏡を外さなければならない。久しぶりに探し当てた満足感よりも、年齢を重ねた悲哀に浸った。
ラベルの遊びはキリンだけかと思っていたら、エビスビールにもあると教えられて驚いた。
銀髪も有名な話を最近まで知らなかった。恵比寿様は左脇に鯛を抱え、右肩にビクを背負っている。このビクの中に鯛が入っているラベルが数百本に1本あるという。

エビスビールを店で飲むたびにチェックするが、未だにお目にかかったことがない。ラッキーエビスと呼ばれるようだが、なかなか見つけることができない。しかしビールのラベルを見る楽しみを数十年ぶりに思い出させてくれた。知らないことがもっとたくさんあるかもしれない。
缶のエビスビールにはこのラベルはない。酒屋で瓶ビール1ケースを買おうか迷ったが断念した。マンションに担ぎ上げる元気はない。やっぱりアルミ缶は有難い。歳を重ねた悲哀を目だけでなくあちこちに感じてしまう今日この頃である。
おことわり:エビスビールのラベルはhttp://www1.accsnet.ne.jp/~yamanaka/sake/yebisu.htmの写真を使わせていただきました。
投稿者 銀髪