静岡おでんは食べ損なっちゃったけれど
30℃を超える日、汗を垂らしながら青葉おでん街に向かった。冷たいクーラーの冷気の下で飲むビールが頭の中でどんどん膨らんでいく。おでん街に着いて息を呑んだ。クーラーはなく、蝿や猫が大好きな店ばかりのように見える。「入るか?」と聞いたら「銀髪さんが入りたいなら…」と言われて止めにした。嫌がる相手に無理強いするのは本意でないので、近くのこぎれいな店・小沢に入った。
クーラーの風が心地よい。カウンターに座り、ビールが出てきたところで「静岡おでんを食べに来たけれど、おでん街に入る勇気が出なくてね」と言ったら女将の顔が曇った。「うちは東京おでんなんです。静岡おでんを食べたければ他に行かれていいですよ」と言われたが、暑さの中に戻る力は残っていなかった。
「私は料理人ですから」と胸を張る女将は会社員に嫁ぐために静岡に来て、11年前に店を持った。もともとは洋食が専門だが、女性一人でやれる料理としておでんを選んだとのこと。食材は全国から一流の品を揃える。おでん種も鱧やグチなど高級白身魚を使い、オリジナル商品を東京の練り物屋と共同開発するそうだ。
自慢のおでんが次々と出てくる。部下と分け合いながら、全品種食べようかと思ったが、果たせなかった。静岡おでんの話を持ち出したときに険しい顔をした女将だったが、既に満面に笑みを浮かべ饒舌になっている。素材、料理にこだわる料理人すべてに共通する姿だ。
かばんからMy一味(黄金一味)を取り出し、女将の許しを得てだし汁に入れた。澄んだ汁を赤で濁すことのない黄金一味がよく合う。黒七味を置いている店だ。思ったとおり味見をした女将も気に入った様子なので、黄金一味は進呈することにした。薬味のトレーにきれいに納まり、まるで以前から置いてあるように見える。常連さんたちも気に入ってくれればいいけれど。
お返しとばかり、わさび漬けをくれた。混ぜ物なしのわさび漬けも女将が選んだ本物だ。東京に戻り我が家にあったわさび漬けと比較したら、女将が言ったとおり明らかに違う。
静岡おでんは食べ損なったが、いい店、いい料理人に巡り合った。
「いい物ばかり使っていては儲からないと、税理士に怒られるんですよ」と笑う女将が、税理士の忠告に従う日は永遠に来ないだろう。
小沢
静岡県静岡市葵区常磐町2-2-1 ライブネット青葉ビル102号
054-255-4820
投稿者 銀髪 : 2007年07月10日 05:51
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