みんなで墓参り
我が家の墓は海老名にある。先祖代々の墓というわけではなく、母が父のために建てたものだ。晴れた日は富士山が見える高台にあり、30年近く父は一人そこで眠る。幼い孫の手を引いて軽快に坂道を上っていた母も、今は逆に手を引かれるようになった。
海外勤務をしていた期間以外は年に2回、殆ど欠かさずやって来る。通常は母、長兄と銀髪の家族で、少ないときは2人、母が欠けたときもあった。今回は新潟に単身赴任する次兄を除いて総勢10人が父の墓の前に顔を揃えた。
春分の日は台風のような天気だった。父が赤飯とビールの匂いを嗅ぐことが出来る半年に一度の大事な日はほんの一瞬で終わり、我々は線香の煙だけを残して立ち去った。「私のお墓の前で泣かないでください」と父が歌う時間など無論なかった。
予約しておいたオークラフロンティアホテル海老名のアルエットに飛び込んだときには3本の傘の骨が折れていた。息子とその家族合計10人の真ん中に座った母は嬉しそうだった。
スープとサラダが出てきた。
大荒れになるという天気予報を見ながら墓参りを決行した理由は、食事の途中で明らかになった。孫の一人の結婚内定が発表された。彼女はいつになく神妙な気持ちで父の墓に手を合わせたに違いない。
立派な料理を予約することも考えたが、軽めの1,575円のアルエットバリエーションプレートにした。8人が女性なので、食後に105円のプチケーキを何個も食べた方が楽しいだろうと思ったからだ。長兄と銀髪は彼女らの笑顔を見ながらコーヒーを飲めば充分である。
父は最初の孫だけしか抱くことができなかった。女ばかり4人の孫に囲まれたら、父はどんな顔をしただろうか。外国で生まれ育った父だから、大袈裟な仕種をして彼女たちに抱きついたことだろう。そのうちの一人が結婚すると聞いたら…
想像を膨らましていたら、確かに歌のように千の風になって我々を見詰めてくれているような気がした。まさか子や孫に囲まれた嬉しそうな母に嫉妬して、この日吹き荒れて傘を壊した訳ではないだろうけれど…
いや、あの親父ならあり得る
アルエット
神奈川県海老名市中央2-9-50
046-235-9828
http://www.okura-ebina.co.jp/rest2.html
投稿者 銀髪 : 2008年03月22日 05:05
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