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2008年04月04日

[並木藪蕎麦](浅草)

鴨ヌキ抜き


毎週土曜の楽しみは日本経済新聞夕刊の「グラスの縁から」である。東理夫氏の洒脱な文章による酒にまつわるエッセイを読むと、居ても立ってもいられなくなる時がある。最近では3月8日の「鴨ヌキ」の話が良かった。山口瞳氏の本を読んだ東氏が並木藪蕎麦に行った話である。

鴨ヌキとは鴨なんばんのソバ抜きのことだそうで、これを肴に菊正宗を飲む。何度も読むとよだれが出てくる。
夕方6時、店にはまだ空席があった。ラッキー! ところが壁のお品書きを見ても、鴨ヌキがない。右から左、左から右と何度も目を動かすがやはりない。テーブルにはメニューなど置いていない。
店のおばちゃんに「鴨ヌキはないの?」と恐る恐る聞くと、3月迄しかないと言う。アンラッキー! 鴨ヌキの予定が鴨ヌキ抜きになってしまう。テーブルに突っ伏した銀髪に、「天ヌキならありますよ」とおばちゃんがやさしく声をかけてくれた。

そば味噌、板わさ

「ビールとそば味噌」と頼んだら、「お酒は飲まないんですか?」とおばちゃんが聞く。「後で頼みます」と言うと、「お酒にそば味噌がついてくるから一緒に注文した方が得ですよ」と親切だ。

天ヌキ

芝海老のかき揚げがどっぷりとつゆに浸かって出てきた。天ぷらはサクサクじゃなければ邪道のような気もするが、これがなかなかいい。海老もいいが、つゆをタップリ吸った衣もいい酒の肴になる。お酒をもう1本。

わさび芋、焼海苔

聞いた事がない芋と思ったら、単にわさびと山芋。箸ですべて持ち上がるほど粘り気のある山芋を海苔で巻いて食べた。

天ざる

一度はざるそばだけを頼んだが、他の席を見て考え直した。天ざるの天ぷらはつゆに浸かっていない。天ぷらのえびは「くまえび」と教えてくれた。大きいから熊かと思ったが、隈海老と書く。車海老に次ぐ高級品らしい。腹に子を持ったように厚く抱かせた衣が面白く、美味しい。お酒をもう1本。

玉子とじ、海苔かけ

ご推察のとおり並木の藪でもざるそばには海苔が乗っていない。海苔かけは海苔が乗ったかけそばではなく、海苔が乗ったざるそば。頭がこんがらがる。
相方が玉子とじと海苔かけを一人で食べた。銀髪の隈海老も半分食べて、玉子とじの汁もきれいに飲み切ったのには驚いた。周りの客が2~4回転しても居座る我々でも、これだけの食べっぷりを見れば店の人も喜んでくれるだろう。

家に帰って「グラスの縁から」を読み直した。どこにも鴨ヌキが11月~3月の限定メニューと書いていない。残り1ヶ月もないのに、自慢話を新聞に載せるなんてけしからん。食い物の恨みは恐ろしいよ!


並木藪蕎麦
東京都台東区雷門2-11-9
03-3841-1340

投稿者 銀髪 : 2008年04月04日 07:58

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