ミシュラン一つ星の実力は?
竹葉亭の鰻は京橋店でよくご馳走になった。オーストラリアから一時帰国する度に今は亡きKさんに連れて行ってもらった。仕事上の恩義より、食い物に対する感謝の念の方が永続するのだから我ながら情けない。
本店に来たのは初めてで、建物を見ただけで雰囲気のある佇まいに身をただす。江戸末期の創業、離れの茶室と座敷は大正13年に建てられたという老舗の鰻屋。最近ではミシュラン一つ星の店として広く知られるようになった。
じゅん菜と海老の前菜、真子かれい・鯛・鮪3種(赤身、中トロ、大トロ)の入ったお造り。もちろんハズレはない。椀物の甘鯛もなかなかいいが、この日もっとも感激したのはお椀そのもの。飲み終わった後に蓋をしても隙間ができてきっちりと収まらない。今日のお客様が、湯気で蓋が取れなくならない工夫だと推理する。タイミングよく挨拶に来た品の良い女将に解を求めた。
実は器が薄いので熱い汁を注ぐとたわみ、蓋との間に空間が生じるとのこと。冷めればきちんとはまる形態記憶お椀だ。現在、このような器を作る職人はいなくなり、割れたら代わりはない。塗りなおしながら大切に使っているそうだ。たわむほど薄く削っただけに、今まで持ったことのない軽いお椀だった。
14,000円のコース料理の中で唯一の選択制が上の2品。銀髪が酢の物を選んだら、お客様は野菜煮を指定した。「写真を撮るには違う方がいいでしょう?」とニヤリとする。よく分かっていらっしゃる。ご協力に感謝、感謝。
肝吸いがつくと思ったらみそ椀で意表を突かれた。
お客様が最高級はダイヤモンド、次がクラウンとメロンの解説を始める。仲居さんに尋ねるとこのメロンはクラウン。さすがミシュラン一つ星、高級品を使っている。
果物、甘味のことを知らない銀髪にとって、彼が居てくれたお陰で勉強になった。90㎝を超える腹回りの代償に立派な知識を会得している。
人によっては偉そうに聞こえる電話の応対、一歩間違えばぞんざいに見える仲居さんたちの誇り高い接客。老舗の佇まいと風格。厳選された素材と品のいい料理、胃にもたれない鰻。そして類まれなお椀。
何をどう判定するか、気持ちは乱れた。
ミシュランに選ばれた店が一流なのは否定しないが、選ばれなかった店が劣るというわけではない。知る人ぞ知る、無数の地上の星たちに敬意を表したい。
竹葉亭 本店
東京都中央区銀座8-14-7
03-3542-0789
投稿者 銀髪 : 2008年06月11日 07:46
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