お土産は佃煮
エレベーターを降りて、勘定場に向かう。本日の牛の識別番号を書いたボードが置いてあった。同じ牛の肉であっても部位によって肉質は変わる。店によっては部位や、サシの入り方などで値段を変えるが、和田金はほぼ均一料金。当たり外れがあるに違いない。
我々が食べたすき焼肉はきれいな霜降りではなかった。霜降り肉は他の部屋に行ったのか、或いは内臓肉などと同様に転売されたのかもしれない。もっとも、すき焼はしゃぶしゃぶと異なり、脂が鍋に残るので極端な霜降り肉は向かない。我々が食べたすき焼きに対する満足感は変わらない。
クレジットカードを差し出すと、「カードは使えません、現金でお願いします」と言われた。隣でも外国人が困惑した顔をしている。こんなこともあろうかと、銀髪の財布は太らせておいたので助かった。
食べた部屋で勘定をさせない魂胆は見え見えである。店の企みに気付きながらも、酔いと太った財布が理性を失わせた。自分だけ美味しい肉を食べた後ろめたさも手伝い、お土産を買うことにした。
東京まで生肉を持って行くわけにはいかないので、定番の佃煮しか選択肢はない。熟考の末、見栄えを重視して2,300円の箱入りを買った。料理の代金と合わせて支払いを済ませたら、財布は一気にやせ細り、見るからに貧弱になってしまった。
翌日、家に帰り「和田金の佃煮だよ」と自慢気に手渡したが誰も感動してくれない。そもそも和田金が何のことか分からないのだ。和田金の名声について説明したが、それでも嬉しそうな顔をしない。佃煮自体が我が家で人気がないことは分かっていた。和田金の名前で好き嫌いを治してあげようと思ったが無駄だった。
かくして、自分で買ってきたお土産を自分で消費することになった。霜降りでないことは明らかで、肉が崩れることなく原型をとどめている。箸で割ることができないので、噛み付いた。
「美味い!」さすが和田金の牛肉の佃煮である。滅茶苦茶美味しい。
悔しさではなく本当に美味かった。絶対そう思う。そう思わないとやってられない。わざわざ買ってきた自分がむなしくなってしまう。こんな美味しいものを食べないなんて、あーっ 切ない。
投稿者 銀髪 : 2008年08月30日 07:36
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