リーズナブルに炭火焼
目指す店の前に立つと連れが顔をしかめた。前に来て印象が悪かったらしい。いつもなら構わず入るのだが、あまりの渋面に怯んでしまった。幸い相手が折れてくれた。板さんが変わったかもしれないし、何よりも同行者が銀髪である。いつも書いているように「誰と食べるか」がもっとも重要な要素である。
魚櫓魚櫓は以前行って気に入った穴子家吉五郎の姉妹店。穴子が目当てなのにメニューに載っていない。板さんに聞くと、常連さんに頼まれれば出すことがあると言う。「常連でなければダメなの?」と食い下がると快く受けてくれた。
枝豆を頼んだら目の前で茹で始めた。いいじゃないか。連れが顔をしかめた理由が分からない。探りを入れるためいつも以上に熱心に板さんに話しかけた。幸いカウンターに他の客は居ない。穴子談義に花が咲く。「松島産?」「佐賀産です」「広島産は使わないの?」「現地で消費されて東京には余り入ってこないんですよ」「俺は何度も食べたよ」「羨ましいですねー」。板さんを羨ましがらせてどうすんだい。
「今日の穴子は小さくて…」と板さんは残念がる。「確かに脂の乗りはイマイチだね」と、もう常連気分だ。「いい店じゃないか?」と連れを見ると、素直に頷いた。
いかにはつぶしたわたのソースが添えられている。なすも上手に焼かれ、きれいに衣を脱いだ。
日本酒もいい品揃えだ。席の後ろに酒用の大型冷蔵庫がある。無名酒会が選んだというリストの中から島根の死神(無名酒会会長杉浦さんオリジナル)、群馬の風まかせ(純米)、福島の会津娘(純米本生薄濁り)、茨城の夢かなふ(純米吟醸酒)と飲んでいった。高くても900円と良心的な値段である。
焼き鳥もチェックしよう。レバーはミディアムといい焼き加減で美味しい。最後の秋刀魚もこんがりと焼かれて出てきた。
帰るときにはカウンターは一杯になった。他の予約も入っているようだ。店を出る間際に「2階もあります」と言われて興味を示したら、案内してくれた。10人以上が入れるテーブル席に加えて、大きな丸テーブルが据えられた個室もある。
名店、高級店ではなくてもカウンターで板さんと話すのは楽しい。料理人だって気合を入れて美味しいものを作ろうとする。料理は口でなく心で食べるもの。そう言えば「愛情がたっぷり込められているから、美味しいわよ」なんて台詞、最後に聞いたのはいつだったろう。ウーン、思い出せない。
魚櫓魚櫓
東京都中央区日本橋室町1-12-14
03-3272-1212
投稿者 銀髪 : 2008年09月22日 07:47
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