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2009年02月28日

[祥雲](神戸三宮)

中国本物の餃子


「後で餃子を食べるためにお腹一杯にしない方がいいですよ」と部下が言う。銀髪グルメ紀行のことを考えてくれる優しい部下の言は尊重しなければならない。神戸らしい味噌ダレで食べる餃子を予想していたので、中国人経営の店に連れて行かれて戸惑った。

小さな店はそれなりに混んでいた。「繁昌しているね」と主人に問いかけると「今日はたまたまですよ」と中国人らしい訛りのある日本語が返ってきた。「テレビで紹介されたときは行列ができたけれど、今はそれほどでもない」と淡々と話す。

銀髪の問いを受けながら、手は休みなく動いている。キャベツ、しいたけ、にら、にんにく、ピリ辛の5種類の餃子が次々に出来ていく。取り敢えず、キャベツとしいたけの餃子を頼んだ。

「日本にどのぐらい居るの?」「20年」、「この店は出来てどのぐらい経つの?」「10年」。簡潔な答が返ってくるだけで話は盛り上がらない。「どうして餃子屋さんをやろうと思ったの?」と聞いたところで主人の手が止まり、顔が上がった。「日本には本当の餃子がなかったから」と話しだした。

「中国の餃子と日本の餃子の違い、分かりますか?」今度はこちらが質問される番だ。すぐに降参して答を待った。「日本の餃子は味がない。だから醤油と酢をつけて食べる。これおかしい。」と言われて成る程と思う。確かに中国では餃子もシュウマイもしっかり味がついており、タレを使うことはない。

今度はにんにくとピリ辛を頼んだ。味噌ダレも用意してあるが、もちろん何もつけないで食べる。ビールをお代わりする。「なるほどね」と一人呟く。

「日本に来て苦労したでしょう?」と聞くと、「ぜんぜん」と笑う。そんなはずはないと突っ込もうとしたが止めにした。苦労は当たり前と言われそうだ。

「美味しかったよ。頑張ってね」と言うと嬉しそうに笑った。本当に頑張ってね・


祥雲
兵庫県神戸市中央区加納町4-8-19 北上ホテル1F
078-393-0396

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2009年02月27日

[モーリヤ](神戸)

老舗のステーキ屋さんで神戸牛を


「肉屋が経営しているので安く神戸牛が食べられるんですよ」と神戸に住んだことがある部下が言う。神戸には何度も来ているのに一度も高質な神戸牛を食べたことがないのが不満だったが、今日こそ120年の歴史を持つモーリヤで食べられると意気込んだ。

メニューを開くとお得な厳選牛のコース料理が目に入った。さらにページをめくると神戸牛のコースが別にある。神戸の老舗ステーキ屋の肉はすべて神戸牛と思いがちだが厳選牛は神戸牛の基準は満たしていない。味は同等と言うので悩んだ末に、やっぱり極上神戸牛のコースを食べることにした。

オードブル(鴨)

座ったのはいつものようにカウンター。目の前で焼いてくれるのは山村店長兼総料理長。お母さんが実家で但馬牛を育てていると言うだけに、神戸牛についての造詣は深い。
もちろん歴史のある店のことも教えてくれる。モーリヤは肉屋が前身だが、今は肉屋を経営していない。部下が勘違いした元町の森谷肉店は血縁関係はあっても別経営とのことだった。

味比べをするためにリブロインとフィレを頼んだ。さすがに美しい。フィレだってしっかりサシが入っている。リブロインの方が大きいが、脂身を切り取られると寂しくなる。

さっとミディアムレアに焼いてもらった。最初は赤穂の塩だけで食べるように奨められた。思ったほど脂がしつこくなくて驚いた。これが神戸牛の特徴らしい。

部下のフィレを一口もらった。肉の味がしっかりする。別の部位も食べたくなった。サシが少ない赤身も噛めば噛むほどに美味しいに違いない。

リブロインの脂はカリカリに焼いて焼き野菜の上に乗せてくれた。和牛の美味さは脂にあると言っていい。切り取られてどうなるかと気が気ではなかったが、しっかり銀髪の腹に納まる事になった。メデタシメデタシである。

美味しい神戸牛を食べて満足満足。これからは神戸牛の極上品にこだわらなくてもよくなった。次に来たら厳選牛と食べ比べしてみよう。神戸牛の赤身のステーキも魅力的だ。いやー、食べなければならないものがたくさんできてしまった。


モーリヤ
兵庫県神戸市中央区下山手通2-1-17
078-391-4603
http://www.mouriya.co.jp

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2009年02月26日

[みの家](新宿御苑前)

桜鍋は東京名物?


「すき焼きを食べに行こう!」銀髪に任せると何を食べさせられるか分からないと慎重な相手を安心させた。新宿通りから一本新宿御苑寄りの路地にみの家はある。下調べをして来なければ見つけられないし、見つけても入るには勇気がいる。静かな佇まいの前に立ち、すき焼きの名店と言われたらそれなりに期待は膨らんだようだ。

店に入り座敷に上がる。外も古いが中も古い。美しいとは言い難い。先客がつついている鍋を見ると、あんこう鍋の「伊勢源」、鳥すきやきの「ぼたん」、どぜうなべの「駒形どぜう」などの老舗江戸料理屋を思い出す。勘の鈍い人でも普通のすき焼き屋でないことに気付く。桜の花模様のメニューを見て観念したのを見て笑ってしまった。してやったりである。

たてがみ、桜肉の刺身

刺身の種類は少ない。メニューの筆頭は桜鍋、次が桜肉のロース鍋で馬刺しはあくまで鍋の脇役でしかない。生卵は好き嫌いがあるので有料。明朗会計である。

赤身とロースを1人前ずつ頼んで味比べをした。牛肉のすき焼き同様に割り下を使うものの、味噌が乗っているのがちょっと違う。これが江戸風である。

中心の脂身以外は殆ど赤身。煮たら固くなるかと思ったら、柔らかくて食べやすい。

肉以外は麩とねぎとしらたきでシンプルだ。小さな鍋の中身はすぐになくなった。馬肉と聞いて怯んだ相手も喜んで食べた証拠である。肉だけ追加して最後はうどんにした。

馬肉は熊本のイメージが強くなってしまったが、みの家のものは青森産。東北の馬食文化の方が熊本より歴史があるようだ。もっともさくら鍋は東京名物である。新宿店もなかなか風情があるが、やはり森下の本店に行かなければおさまらない。文明開化の時代にワープできるかもしれない。


みの家 新宿店
東京都新宿区新宿2-1-14
03-3354-4518

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2009年02月25日

[リゴレット](吉祥寺)

スパニッシュイタリアン?


東急百貨店の狭い裏通りにこんな大きな店があるとは思わなかった。ドアを開けると正面にカウンター席に囲まれたキッチン、右手には子供連れでも違和感のないボックス席が見える。階段を上がると洋書が並ぶ本棚やワインセラーが大人の雰囲気を醸し出す。

メニューを開いて首を傾げる。ピザやスパゲッティを除くとメインに相当するような料理が殆どない。何度もページをめくって元に戻った。300円と500円のタパス小皿料理が並ぶ。スペイン風小皿料理でワインを飲んで、イタリア料理の定番で締める。これがスパニッシュイタリアンということか。

自家製ハム、小ヤリイカとほうれん草のイカ墨煮

「自家製ハムとソーセージ、どっちがお奨め?」と女性店員に意見を求めたにもかかわらず、彼女の推奨を無視してソーセージを頼んだ。ところが出てきたのはハム。「いいよ、いいよ」とハムを受け容れた。

庄内豚100%のソーセージ、青のりのゼッポリーノ

自動的にキャンセルされたと思ったソーセージがやってきて狐につままれた感じ。何も言わずに笑って受け取った。ハムと味比べしたら最初に思ったとおりソーセージの方が美味かった。それでもここまでの4品はどれも及第点。ピザの生地に青のりを混ぜて揚げたゼッポリーノは特に面白かった。

白いんげん豆とイベリコ豚の煮込み、アジのマリネ

店の雰囲気造りに一役買っているワインのボトルたちも、2,500円で供される。20種類以上のタパスと多数のワインでリーズナブルな宴が出来るご機嫌な店だ。ランチタイム~朝4時までの営業時間も若者たちを引きつけるのだろう。

ぺペロンチーノ

〆はもちろんシンプルなぺペロンチーノ。ちょっと多めのオリーブオイルが銀髪の好みだ。知らずに入ったが、口コミ情報でもリゴレットは評判がいい。グローバルダイニングを育てた幹部が独立して開業、銀座、六本木など多店舗展開している。ちょっと高級感のある割りにリーズナブルな価格設定。不況を味方につけて成長して欲しい店である。


リゴレット
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-25吉祥寺第二マーブルビル1・2F
0422-28-7676
http://www.huge.co.jp

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2009年02月24日

[大寿司]3(錦糸町)

久々の錦糸町


最初に大寿司に来たのは8年ぐらい前だったと思う。錦糸町駅からすぐなのに、線路沿いの道は少しわびしい。遠くからでも赤い立て看板は目に付く。店に入るとすぐにカウンター。右の壁には北の湖親方の写真。いつもと変わらない風景だ。

Mさんの憧れだった厚切りのマグロを乗せたゲタが目の前に置かれた。タイラガイ、ヒラメ、ボタン海老、ウニ、イカなど、相変わらず豪快な盛り付けである。右上のニシンは北海道では食べたことがあるが、多分東京では初めてだ。

海が荒れて国内産生マグロのいいものがないと大将は残念そうだ。輸入物でも立派なマグロにMさんも満足している。あらかた食べ終えるとツブガイ、サヨリ、アカガイが追加された。

「何か焼きものはありますか?」と聞くと大将は悩む。どれも刺身や寿司のネタばかりだ。「海老でも焼きますか?」と生簀を指差すので慌てて制した。「それはもったいない!」
関サバ、ほうぼう、いかを従えて車海老が登場した。さらに豪華なあわびのお造りも加わる。

以前、酒は一種類しかなかったが、時勢を反映して冷酒の種類も少し増えた。八海山などの銘柄酒も置いてある。
しばらくは我々4人で大将を独占できると思っていたが、早い時間なのに次々と客が入ってくる。席を詰めてカップルを迎えたところで満席になって驚いた。

大将と女将さんの二人でやっていた店は、女将さんが入院して休んでいた間に息子が加わった。今は女将さんも復帰して三人体制になったので、満員の客にも対応できる。壁の写真の北の湖親方ほどではないにしても、しばらく来ない間に店も変化していた。

「刺身でお腹一杯になった。いやーよかった!」とMさんは満足気だ。巻物と穴子を食べてお開きにした。

「銀髪さんのブログで来る人もいて助かります」と女将さんが勘定場で頭を下げてくれる。頑張ってね、大将、女将さん、そして二代目!


大寿司
東京都墨田区錦糸4-5-8
03-3625-2591

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2009年02月23日

[はなもんや](新宿)

和風個室の焼肉屋さん


「全席和モダン掘り炬燵個室の焼肉屋」というのに興味を持った。接待用の畳部屋を持つ高級焼肉料理屋は他にも知っているが、すべて和室の焼肉屋は初めてである。

JR新宿駅新南口、ユニクロの目の前、それほど大きくないビルの6階でエレベーターを降りると日本料理屋と錯覚する。靴を脱いで個室に入り、テーブルを見てようやく焼肉屋と納得する。
コースは滅多に頼まないけれど、参考のために5,400円のぐるなびクーポン限定コースを食べることにした。グラスワインもコースに含まれている。

煮込み、キムチ盛合せ、おぼろ豆腐、もも赤身刺し

店員も店の雰囲気に染まるのだろうか、みんな物腰が柔らかく品がいい。店名の「はなもんや」は京都弁かと思ったら、人間の指紋にあたる牛の鼻紋のことだというから笑わせる。

近江牛盛合せ

赤身とバラ肉の3種(バラ、上バラ、ゲタバラ)が1人一枚ずつ名札つきで出てきた。なかなか美味しい。醤油ダレ、味噌ダレもあるが、3種類の塩で食べるのが一番いい。

ホルモン盛合せ(ミノ、マル腸、ハツ)

すべて近江牛というわけではないけれど、ホルモンもなかなかの肉質だ。ぐるなびコースはこれで終わり。まだお腹も脳も満足はしていないが麺やごはんを食べる気にもならない。肉を追加することにした。

さがり、ざぶとん

肋骨に近い部位のサガリ、鞍下に近い最上級肩ロースのざぶとんを食べた。腹一杯にするにはいくらかかるか分からないのでこのぐらいでお開きに。安売りに釣られてきて、結局高いものを買うのに似ている。ぐるなびコースにごはんをつけてないのはなかなかの戦略家だ。安くあげるなら食事付きのはなもんやコース(5,800円)の方がいいだろう。

三角、くり、うわみすじ、みすじ、とうがらし、いちぼ、しんしん、とも三角。希少部位を全部食べたくなる。次回は戦略を練り直して来よう。いい店だった。

はなもんや
東京都新宿区新宿4-1-9 新宿ユースビルPAX6F
03-6457-7211

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2009年02月22日

病院食

病院食は不味い?

約20年ぶりに入院した。もっとも病気で入院したわけではなく、健康診断の延長として一泊二日の人間ドックを受けるためだ。50年以上も使った身体がどうなっているか隅々までチェックすることにした。前門から後門からカメラを飲み、食べ物が通る道を全部見せてもらった。X線や超音波で調べた脳、肺、腹部などの状態は後日分かる。

朝飯を抜いて、尿や血液を採って、ようやく最初の食事にありついた。

旅館の宴会食みたいに各自に鍋がついていた。鮭、蟹、ホタテの入った鍋に火を点けて、熱々になったところで食べる。期待していなかったけれど、なかなかのもんだ。

午後は大腸検査である。前日に下剤を飲み、昼食後に2度浣腸をして臨んだ。腸を膨らませるため空気を送り込みながらカメラが動き回る。空気が居残っているせいか5時10分の夕食時間になってもお腹が空かない。

昼食より上を期待しただけに気持ちは沈んだ。しかし客観的に評すれば、揚げカレイのあんかけ、里芋と肉の煮込みなど悪くない。温かければもっと美味しいはずだ。

翌日はまたしても朝食抜き。胃カメラを飲む日だ。終って出て来る人の表情を見ると怖気づく。喉を通過するときは辛かったが、思ったほどではなかった。胃の細胞を取ったため昼食は12時15分まで延期された。

タンドーリチキン、ラビオリのトマトスープなど3食の中で一番カロリーが高い。残す人もいたが、銀髪は完食した。

3食を総合すると不味いと断言することは出来ない。確かにごはんはイマイチだが、安い定食屋も似た様なものだ。

オーストラリアで妻が入院した時を思い出す。毎夜翌日のメニューを渡される。朝昼晩の3食の他に10時、3時のティータイム、8時のサパーと全部で6回分を選ぶ。出産後なので、食事制限はない。付き添いで泊まる人も、同じようにメニューから選ぶことができる。

オーストラリアだから、どんなに選択肢があっても料理自体は大したことはない。日本の方がはるかに多彩で美味しい。ところが満足感はオーストラリアの方が上。料理は味だけではないという好例だろう。レストランだっていくら料理が良くても店員の応対が悪ければ楽しくないし美味しくない。

民間病院は進化しているに違いないが、銀髪が入った公的な病院はまだまだ。老若男女、最大の欲望は食欲である。美味しく見せる工夫が満足感を高めるのは病院でも同じだ。


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2009年02月21日

[蒙古タンメン中本](御徒町)

口は耐えたが、お腹がね


ラーメンマニアのブログを読むといつも感心する。美味しいラーメンを求めて毎日のように食べるバイタリティー、スープや麺の出来具合を的確に批評する知識に感嘆してしまう。銀髪はといえば、最大のポイントはスープが熱いこと。次が薬味が多いこと。自前の唐辛子まで持ち込んで味をこねくりまわすのだから、マニアにとっては言語道断の所業だろう。

唐辛子、豆板醤、にんにくを入れて食べることを楽しみに御徒町近くのえぞ菊に行った。あれっ?場所を間違えたかなと思って行ったり来たり。看板が見つからない。記憶を信じてもう一度向かった場所に立ち止まり呆然とした。

仕方なく、近所の店に入ることにした。どっかで見たことがあるような気がする。そうだそうだ、ARAPROさんのブログだ。11時をちょっと回ったばかりなのに満席なのには驚いた。食券販売機の前に立ってもARAPROさんが食べたものを思い出せない。辛さを頼りにつけ麺の8倍辛い冷やし五目蒙古タンメン食券を買った。

つけだれはたっぷりの具と一緒にドンブリで出てきた。まず野菜を食べた。辛いけれど食べられないほどではない。麺をスープにどっぷりつけて食べると結構辛い。半分ほどつけて食べると麺の味が引き立てられる気がする。つけ麺が人気の理由が分かるような気がした。

家に戻ってARAPROさんのブログを見たら北極ラーメンを食べなければいけないらしい。日を替えて行くと、11時を過ぎたばかりなのに3組並んでいる。たいしたもんだ。北極ラーメンの食券を店員に渡して席が空くのを待った。

9倍辛いラーメンは、スープの温度と辛さとどちらも熱かった。真っ赤なスープがネクタイやシャツに飛ばないように慎重に食べた。隣で食べている2人のうち銀髪と同じ愚か者の方がヒイヒイ言っている。このスープを全部飲むつわものがいるというから恐れ入る。
表面の唐辛子を除けながら、いつもと同じぐらいスープを残して店を出た。

唇や舌に残った辛さは10分ほどで消えた。約6時間後、お腹が痛くなり唐辛子を体の外に出した。出口がポカポカ温かくて閉口したが、これも約10分で消滅した。

蒙古タンメン中本 御徒町店
東京都台東区上野5丁目20-3
03-5688-1233
http://www.moukotanmen-nakamoto.com/

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2009年02月20日

[大瓶猩々](神戸)

瀬戸内の幸を神戸で


「洋品店の主人がわざわざ店まで連れて行ってくれたんですよ」と部下が言う。ホテルに戻りインターネットで行き先を探そうかと思っていたが、手間が省けた上にこれほど確実な情報はない。

「あそこですよ」と指差す先の袖看板に書かれた店名は難しくて読めない。「タイヘイショウジョウと読むんですよ」と教えてくれたが意味は分からない。

カウンターに座るなり立派なお通しが出てきた。コース料理の前菜と言った方がいいかもしれない。刺身は他の地域のものも混ざるが、地物を単品でオーダーすることにした。神戸牛、中華料理、洋食などが名物だが、近くには明石があり瀬戸内海の幸に恵まれている。

渡り蟹、穴子白焼き

今はメスが旬の渡り蟹。タップリ卵が入っている。関東なら江戸前の穴子、関西なら瀬戸内・明石海峡の穴子が有名だ。

一息ついたところで店名の由来を尋ねた。名刺の裏には次のように書かれている。「猩々は形がサルで顔が人に似た中国の架空の動物で酒を好みます。大瓶猩々は観世流能楽の曲名で、猩々が酒に浮かれて舞を舞い、親孝行な若者を祝福し無尽蔵な酒壷(大瓶)を与えるという物語です。」

若布、イイダコ

店の壁には能面が掛けられている。主人も舞うそうで、いい趣味を持っている。髪が黒々としているので若く見えるが既に還暦とのこと。

ガシラの煮つけ

ガシラとはカサゴのこと。よく似た鎧メバルもガシラと呼ばれるそうだ。醜い魚だが、味はいい。地物の方がリーズナブルで美味しい。手頃な値段で飲み食いできる店である。

創業から20年以上というが、難しい店名でよくやってこれたと感心する。地元の人たちに支えられてきたのだろう。ほぼ満員の客たちに倣ってひれ酒を飲んだ。もう少し日本酒の品揃えがあれば嬉しいのだが、常連さんが求めないのであればそれも仕方ない。ぶらっと入ってきた我々よそ者も歓迎してくれた。それだけで充分である。

大瓶猩々(たいへいしょうじょう)
兵庫県神戸市中央区北長狭通2-5-1 タイシンサンセットビル7階
078-322-2215

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2009年02月19日

[コパンコパン](有楽町)

ガード下のモダンコリアンダイニング


「すごく人気の店なんで予約が取れないかもしれませんよ」と幹事が言うけれど、心配することはない。我々の月例飲み会は5時半にスタートして7時には終る。混み合う前に一稼ぎできるから嫌がる店はない。

ガード下と言っても東京フォーラムから新橋駅まで大型店がいくつもある。コパンコパンも思っていたより大きな店だった。これだけの大型店なのに予約が取り辛く、行列が出来るというから人気の程が窺える。



1人がガツガツ食べると追随する者が出る。うっかりしていると食べ損なうので他の連中も猛然と食べる。競い合うように食べた子供の頃を思い出してしまう。
美味しいものはすぐになくなってしまうが、「俺、これ嫌い!」と先頭打者がそっぽを向けば、他の連中も慌てて食べることはしない。チャプチェやニンニクの茎はゆっくり食べることが出来た。


「この店は出て来るのが早くていいなー」とご満悦だ。広い店内にまだ数組しか客はいない。複数の料理人が一気に作り出せばテーブルには隙間がないほど料理が並ぶ。

「飲み放題をつけましょうか?」と言う幹事の提案は即座に拒否された。飲み放題の時間制限は150分だが、このグループでの飲み会は通常60分内外で終る。今回は意外と長く居た。いつもすぐに飽きて店を出たがる人が、追加オーダーをしたためだ。珍しくこの店が気に入ったようだ。


追加でやってきた料理をみんなが喜んで食べると、頼んだ人が「どうだっ!美味しいだろう」と自慢する。確かに料理全般に外れがない。行列ができるのも理解できる。「大鍋を頼むより、小さい鍋を何種類も頼んだ方がいいですよ」と言う幹事の言うとおりだった。珍しく褒められてホッと胸をなでおろした幹事だった。コパンコパンは牛たん「ねぎし」が経営しているようだ。焼肉が特に美味しかったのも頷ける。

予定通り勘定をしたのは7時前。店を出るときに行列はまだ出来ていなかった。

コパンコパン
東京都千代田区丸の内3-6-1
03-3217-3777
http://www.copaincopine.jp

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2009年02月18日

[amber garretアンバー・ギャレット](渋谷)

大人の店でビールの飲み比べ


レストランの印をつけた地図を片手に渋谷の街を歩く。既に30店のうち13店に行った。今日はワインでも飲みたい気分なので片仮名の店名を選んだ。でも何の店だったか思い出せない。

行きつ戻りつして袖看板で探すのを諦めた。ビルの名前を見つけてエレベーターに乗り込む。7階で降りてもレストランとは思えない不思議な空間である。和食が並んだメニューを見て印をつけた理由を思い出した。隠れ家的な大人の店という触れ込みだった。

ごま豆腐、外国産ビール、イベリコ豚肩ロースのたたき

カウンターの上にはたくさんの洋酒が並ぶ。「まずビール」のつもりでイギリスの黒ビールとドイツビールを飲む。ドイツビールが美味くてビールの飲み比べをすることにした。初めて食べたイベリコ豚の生肉がおいしい。口に入れると脂身が溶ける。

大根と豚肉の甘辛煮、コレナイ豚のしょうが焼き

和食の店らしくお奨めは甘辛煮。「コレナイってどこのこと?」イベリコ豚の連想から地名と思ったコレナイとはコレステロールが少ないの意味で千葉産の豚肉のこと。これには笑った。お陰で説明してくれたマネジャーの福地さんと話すきっかけが出来た。

ビール2種、銀杏のバター焼き

ベルギー産のマルールは何とアルコール度が10%もある。スペイン産のクルーズカンポは日本のビールのようにすっきり飲みやすい。
色んなビールがあるのに驚かされる。福地さんはビールが好きなのでついついビールの品揃えが良くなると笑う。デザートビールなるものも数種類あり、リンデマンス・ペシェリーゼ・ランビック(ピーチ)を飲んでみたら甘い甘い。しかめっ面をしたらみんなに笑われた。

余程ひどい顔をしていたのか福地さんがカールスバーグの生ビールをサービスしてくれた。久し振りにビールをたくさん飲んだ。ビールが苦手という女性が多いけれど、アンバーに来れば好きなビールが見つかるかもしれない。

でも、やっぱりビールはほどほどにした方がいい。腹が膨らんで料亭仕込みの美味しい料理を食べられなくなってしまう。


新和食ダイニング amber garretアンバー・ギャレット
東京都渋谷区宇田川町17-1 渋谷ブラザービル7F
03-3770-8987
http://www.amber-g.jp/

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2009年02月17日

[ユック](新橋)

えぞ料理を老舗料理屋で


長兄と飲むことになった。「新橋あたりでいい店ないかな?」の問いに「ユックでどうだい?」と返ってきて戸惑った。先入観とは恐ろしいものだ。ユックの看板をあちこちで見たような気がする。チェーン店がいい店なのだろうか?

待ち合わせに遅れそうだ。急ぎ足で駅を抜けるとニュー新橋ビル1階ガラス戸の向こうに白髪頭が見える。不安そうに携帯を持ち上げたところで目が合った。
銀髪が2つ揃ってエスカレーターに向かう。4階の店に入って先入観の修正を迫られた。客層はほぼ我々と一致する。カウンターの向こうで料理人が忙しく働く。和装の女将がやってきて完全に考えを改めた。

お通し、かき

えぞ料理を謳うだけあってお通しの上にさりげなく鮭とばが乗る。店名のユック(鹿)は親会社である北海道定山渓温泉の旅館「鹿の湯」から来ている。アイヌ語に馴染みのない者にとってはいつもユッケと読んでしまう。

貝盛合せ

「貝三種盛りにウニも入れてよ」5分もすれば、久し振りに来たという兄もすっかり常連さんに戻る。チェーン店らしい写真満載のメニューだが、客の我がままも聞き入れてくれる普通の割烹料理屋だ。

金目鯛の煮付け

母の濃い味付けに似た水分が少ない煮物に兄弟大いに喜ぶ。弟が頭を求めると、兄は尻尾を選ぶ。腹身は仲良く2等分。昔は食べやすい尻尾の方が末っ子に与えられ、それを喜んだものだったが、母と過ごした年月が一番ではなくなって久しい。

かじか鍋

「かじか鍋は出来る?作って持ってきてよ!」と兄。「ここで煮ていいよ」と遠慮する弟。「大丈夫ですよ!」と快諾する板さん。女将が来て二人の顔を覗き込む。「似てる?似てない?俺の方がいい男だろう?もう一人は新潟にいるんだよ!」兄は饒舌だ。

今度は3兄弟で飲みに行こう。

えぞ料理 ユック
東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル4F
03-3567-3388
http://www.yukku.net/

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2009年02月16日

[路地](新宿三丁目)

デートにも使えるきれいな焼きとん屋さん


「数年振りに海外勤務から戻ったら、焼きとん屋が多いのにびっくりした」と友人が言う。彼の職場の近く、新橋には昔から美味しい焼きとん屋がたくさんある。しかし、確かに新しく出来た店もあり、新橋以外でも焼きとん屋が増えている。

学生のとき、武蔵小山の焼きとん屋によく行った。焼きとんを肴に安い焼酎のホッピー割りを飲むのが好きだった。汚いイメージが強い焼きとん屋も、随分変わって来た。オヤジたちの聖域に女性が進出してきたせいかもしれない。

新宿伊勢丹裏の路地を歩いていたら、ちょっと洒落た感じの店を見つけた。まさに今風の焼きとん屋さんで、店に入ると男女比はほぼ半々。デートにも使えるような店だ。席につくと二日酔い防止のための青汁とお通しが出てきた。

さしみ湯葉、生野菜盛り

湯葉の盛り方や野菜の化粧を見れば、店の雰囲気も想像してもらえるだろう。焼き場の男性店員のユニフォーム姿も決まっている。料理を運ぶ女性も物腰が柔らかい。

てっぽう、たん、大とろバラ焼き、こぶくろ、かしら、ればー、がつ、しろ、つくねと続けた。大とろバラ焼き以外は1本ずつ頼めるのが嬉しい。1本200円~300円はちょっと高めだが、店の雰囲気も合わせて考えれば安いものである。しかもブランド豚・岩手産の白金豚と聞けば納得する。こぶくろが特にきれいだ。

勘定をして出口に向かおうとしたところで地下へ続く階段が目に入った。店員に尋ねると、地下だけではなく2階も3階もあると言う。大部屋や個室、カップルにぴったりの席もあるようだ。女性も安心して入れる店と言いたいところだが、新橋の焼きとん屋で豪快にジョッキをあおる女性たちを思い出した。元気な女性たちは怖いものなしだ。

銀髪がメンバーだったオーストラリアのゴルフ場では、土曜日は女人禁制だった。プレー終了後、ビールを飲みながらオーストラリア人がつぶやいた。「土曜日ぐらいは男だけでくつろぎたい」


路地
東京都新宿区新宿3-17-17
03-3352-0080
http://www.roji.info/

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2009年02月15日

[悟空](宇都宮)

宇都宮駅の餃子屋さん


宇都宮駅2階の餃子屋で、唯一入ったことがなかった悟空に直行した。既に1時を回っているのでガラガラだった。老夫婦がゆっくりと定食を食べている。急かされることもなく平和である。

4人掛けのテーブルに1人座ってメニューを吟味した。餃子とごはんにスープのセットがランチとしては相応しい。でも色んな種類の餃子を食べたい。5種類の餃子が乗った焼きセット(1,700円)は多すぎると思ったら、ハーフセットなるものを見つけた。ジャンボ餃子、野菜餃子、フカヒレ餃子、シソ餃子、キムチ餃子の5種類のセットで1人で食べるにはちょうどいい。

オーダーしたところでおじさんが1人、女性2人連れ、親子3人とたて続けて入ってきた。客がいない他の店に比べて、老夫婦と銀髪がいる悟空が一番賑わっているように見えたのかもしれない。

意外と料理が出て来るのに時間がかかる。中国人の店員がやってきて醤油の瓶を取替え、箸を追加していく。客が見えているのかいないのか、決められた作業を時間通り淡々とこなしている。

おじさんの定食が先に来た。女性2人連れにラーメンが運ばれるのを見て、ビールの中瓶を注文した。一杯目がなくなる頃、待ちに待った餃子がやってきた。女性2人連れにも餃子が運ばれる。ラーメン餃子セットだったようだ。

やっぱり餃子にビールはいい。お腹が空いていたことを考慮しても、思ったより美味しく食べられた。普通サイズの12個とジャンボサイズの2個、合計14個にビールを均等に配しながら食べ終えた。

店を出て向かいの餃子屋が替わっているのに気がついた。夢餃子がなくなっている。新興店が有名店に囲まれて営業するのは大変だろう。駅ビルの家賃も重くのしかかるに違いない。悟空の餃子が他に劣るわけではないが、有名店を押しのけるには料理以外の工夫も必要かもしれない。

どのように生き残っていけるか、楽しみではある。

悟空
栃木県宇都宮市川向町1-23 JR宇都宮駅ビルパセオ 2F
028-627-8500

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2009年02月14日

[中国茶房8]②(恵比寿)

安くて美味しい宴会


中学時代の同期生でちょっと遅めの新年会をやることになった。いつもは地元の下北沢に集まるが、今回は銀髪グルメ紀行を愛読してくれている幹事役が中国茶房を選んだため、恵比寿駅に集合した。
3年ぶりの再訪である

待ち合わせの時間を僅かに過ぎたところで、12人が揃った。上出来である。「土曜だから空いてるよな」「予約したんだろう?」「したけど、言葉が通じたかどうか、ちょっと不安なんだ」 話しながらゆっくりと坂道をのぼり、店に着いたのは予約した6時半。ガラガラだと思ったら、何人も待っているので驚いた。

幹事が名前を告げる。中国人の女性店員が予約シートを見て顔を曇らせる。「8時半じゃないですか?」「違うよ、何度も6時半と言ったよ。間違えないでね、18時半だよって」中国人の男性店員がやってきて確認する。一度6時半と書かれたものが8時半に訂正されていた。


我々はついていた。何とか調整して席を作ってくれた。追い出す格好になってしまったカップルには申し訳なかった。忙しく動き回る店員をつかまえて、早く出てきそうな料理を頼む。12人居るから3皿ずつ。

3個105円の手作りの水餃子は全部で30種類ある。値段を見て気が大きくなりメニューの上から8番目まで人数分を頼む。出てきて初めて8×12=96個がどれだけ大量か気付いた。通常は一皿ずつ出て来るので味比べが出来て楽しいが、大皿に盛られたらどれがどれだか区別がつかない。半分近くが余ったので、頼んだ奴が持って帰ることになった。袋代が105円。

このあと北京ダック。大人数なので2羽を頼んだ。みんなに充分行き渡り、余ったぐらいだった。皮を剥いだ残りで炒め物やスープを作ってくれる。(→「中国茶房8」

ビールをピッチャーで4杯、紹興酒8年物を2本、ウーロン茶などを飲み、一人当たりの会費は2,500円~3,000円。安かろう不味かろうというわけでもない。24時間営業だからできる薄利多売なのだろう。

みんなが喜んでくれるので、ついつい自慢してしまう。店から何かもらっているわけでもないのに。いつもながらおばかな銀髪だった。

中国茶房8
恵比寿店 http://www.8-duck.jp
六本木本店 http://www.cceight.com

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2009年02月13日

[游月]②(長野)

長野はやっぱりそば


前に来てから既に2年が過ぎていた。前回はタクシーで乗りつけて、カウンターに座った。他に客はなく、身体が暖まるまでしばらくかかった。今回は雪が残る路地裏の道を、恐るおそるゆっくりと歩いてきた。裏の階段を上がると暖かい座敷が我々を迎えてくれた。

カウンターでの一品料理と、座敷でのコース料理では店の印象が全く違う。料理は淀みなく運ばれてくるが、出番を今か今かと待っていただけに、晴れやかに登場してきたかのように見える。料理人も腕のふるいがいがあるだろう。

地元の人は游月のような料亭や割烹の類が少なくなったと嘆く。官僚の接待が殆どなくなったことが影響しているようだ。それでもどっこい生きている店は、何か秘訣があるに違いない。

海がない長野でも流通の発達で海の幸が楽しめる。東京からの出張者は魚も自分と同じ経路でやってきたと思いがちだが、長野は太平洋よりも日本海に近い。寒ブリが出てきても何の不思議はない。

米を炊く土鍋が普及したお陰で、最後に炊き込みご飯を出す割烹が増えた。それでも流されないのがさすがに長野だ。そばが出て来るとご馳走していただいた地元の名士たちも満足気だ。

一度外に出て、1階の扉を開けた。記憶よりも明るい店内でちょっと驚いた。寒い時候は記憶までも変質させてしまったようだ。それとも年齢による衰えがかなり進行しているのだろうか。いやいや注ぎつ注がれつ熱燗を飲みすぎたせいだ。団塊の世代を超えた方々は酒も強いし話も巧みだ。

女将の明るい印象は変わらない。何よりもこの気取らない笑顔がお客様を失わない秘訣なのだろう。座敷もいいが、次に来るときはやはりカウンターに座ろう。女将の話も立派なご馳走である。


味楽処 游月
長野県長野市新田町1110-5
026-232-0078

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2009年02月12日

[龍の子](神宮前)

麻婆豆腐だけではない美味しい四川料理


「行列ができる店」「夜は必ず予約を」というネットの記事を無視して飛び込みで行った。近くに評判のいいレストランがひしめく地域なので、週末でなければどこかに入れる。それでも階段を下りる時には空席があることを祈った。

不安が顔に出ていたのだろう。「空いてますか?」と声をかけると、店員がわずかに笑った気がした。先客は一組だけで、予約も他に入っていないようだ。メニューを開きお奨めを尋ねるとたどたどしい日本語で答えてくれた。

四種冷菜盛り合せ

最後に決めた冷菜は当然のことながら前菜として出てきた。あんこう、バンバンジー、豚足、海老が別々の皿で出て来るとは思わなかった。値段(3,200円)に相応しい量と味は良心的に感じた。

マーボ豆腐

オーナーシェフが日本における四川料理の祖、陳建民氏の弟子と聞けばマーボ豆腐は外せない。いの一番に決定したが、店が空いているのを考慮して最後に追加オーダーすべきだった。前菜を食べ始めてすぐに出てきたので困った。山椒がしっかり効いて、四川料理の特徴である痺れるような辛さがありとても美味しい。でも3分の1ほど食べたところでごはんが欲しくなった。

龍の子特製辣味四川風ワンタン

「龍の子特製」に惹かれて頼んだワンタンもやってきて、すべての料理がテーブルに出揃った。冷菜は紹興酒のつまみに残すことにして、温かいマーボ豆腐とワンタンを先に片付けることにした。このワンタンが頗る美味しい。スープが2層になっていて、初めて出会う味である。辣味という割にはマイルドな辛さで食べやすい。

アンニン豆腐

この店のメニューは何故かマーボ、アンニンなどと漢字表記を避けて片仮名になっている。オーナーが顔を出してくれれば質問したいところだった。中国人の店員とやりとりするのは辛い。

前菜の残りで紹興酒を飲みながら、向かいのテーブルに一人座る若い女性のことを想像した。誰かを待っているのかと思ったが、生ビールを飲み、料理を食べ始めた。我々が勘定をして店を出るまでお相手は本だった。

龍の子は思ったより気軽に食事ができる店だった。グループや恋人同士はもちろん、女性一人の客でも憶する事はない。


龍の子
東京都渋谷区神宮前1-8-5
03-3402-9419

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2009年02月11日

[業平屋]④(両国)

頑張れ大将、女将さん


「今日は仲間内だから純米しばりだからね」と大将に念を押した。「分かりました!」といい返事。冷蔵庫から一升瓶をガラス器に入れ持って来た。一口飲んで大将を呼んだ。「なんだいこれは?大吟醸じゃないの?」と問い詰めると「ハイ、でも純米です」と、とぼける。安い純米酒を頼んだのに、ちゃっかり純米大吟醸酒と解釈する。折れるのはいつもこっちだ。

村上の鮭

村上の鮭はここで教わった。昨年、村上に行って更に勉強したので、今では銀髪の知識が上だろう。目ざとく白い皮がついた身を取り皿に確保する。腹側の身は脂が乗ってとてつもなく美味い。部下の濃い皮の身を少しだけもらい味比べ。ご満悦のところに大将がやってくる。「次はどうしましょうか?これはいかがでしょう?」またも大吟醸だ。「もう勝手にしてくれ!」と苦笑い。

本ししゃも

本物のししゃもの美味しさを初めて知ったのも業平屋だ。スーパーで買ってきたししゃももどきに慣れていたので驚いた。今食べてもやはり美味しい。あらためて感動していると、「黒吟はどうでしょう?」と来た。純米しばりのつもりがいつものように業平屋で一番高い日本酒に行き着いた。これで一人一万円コースは間違いなくなった。

そばを食べる連中を残して一足先にタクシーに乗り込んだ。運転手さんが「あそこはそばだけの客には鼻にもかけないんで評判悪いんですよ」と言う。飲酒ご法度のドライバーは使う金もしれている。「大きなビルを建てて、お金持ちだから庶民のことがわからないじゃないんですか」と続けるので、「そんなことはないですよ」と、弁護してあげた。

苦しくても胸を張るのが下町っ子だから誤解されることもあるだろう。大将も女将さんも苦労人である。みなさん、応援してあげてね。

業平屋
東京都 墨田区亀沢2-8-7
03-3622-7978

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2009年02月10日

[ビキニ タパ](渋谷)

雨に濡れずにスペイン居酒屋へ


渋谷マークシティの4階、井の頭線アベニュー口の前に昨年8月、スペイン居酒屋が誕生した。新しい店も前と同様に喫茶店の類と思い無視していたが、傘をさして店を探すのが面倒なので入ることにした。

新聞に挟むチラシのようなものを渡されたが、それがメニューだった。「お奨めは?」と聞いたら、「どんなものがよろしいですか?」と聞き返された。写真つきのメニューに頼ることにした。

生ハム盛合せ、季節野菜のブランチャ温かいヴィネグレットソースで

メニューの下に細かい字が書いてあり、料理の説明かと思ったら外国語だった。ブランチャとは網焼きかなんかのことだろう。ヴィネグレットソースは多分オリーブオイルとお酢を混ぜたもの。

イベリコ豚のバラ肉、豚のモルノー(つくね)

「ピンチョス(片手でつまめるおつまみ)の伝道師」と呼ばれる、日本におけるスペイン料理の第一人者ビニェス師が監修したと胸を張るだけあって、ピンチョスはもちろん小皿(タパ)の料理も悪くない。

白魚のフリット、ラビアのカネロン

グラスワインは白が3種、赤が4種、シェリー酒やスパークリングワインなどリーズナブルで飲みやすい。料理の種類はおつまみ以外にもたくさんあるので、グループで長居しても飽きないだろう。

前にあった喫茶店よりもずっと人が入って儲かっているに違いない。昼からぶっ通しで飲むことも出来る。老若男女誰もが楽しめる店である。ただし、日本酒や焼酎があったかどうかは未確認なのであしからず。


ビキニ タパ
渋谷マークシティ4階
03-5784-5500

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2009年02月09日

[がいがい](麻布十番)

きねつきもちの肉巻が一番


「エッ!ここ?」焼き鳥屋と聞いてきたので入り口を見て驚いた。派手なディスプレイがないので行き過ぎてしまいそうだ。中に入ると焼き場がステージのようにカウンターに囲まれている。直前に予約したのでカウンター席は売り切れで、我々は小さな個室に通された。男同士で入る部屋ではないが止むを得ない。オーダーを受けた後、扉を閉めようとする店員を制した。密室で野郎二人は辛い。

お通し、地鶏の白子ポン酢

日本三大地鶏(名古屋コーチン、比内地鶏、薩摩若しゃも)や甲州赤毛鶏などの鶏肉はもちろん牛肉、豚肉、野菜とこだわりの品揃え。素材の美味さを堪能しようではないか。

比内地鶏刺身6点盛り、コーチン刺身

比内地鶏刺身は手前から肝、心臓、白肝、上段もも肉ルイベ、ささみ、すなずり、コーチン刺身は肝、ささみ。肝の食べ比べは面白かった。個別に食べると分からないが、交互に食べると違いは明らか。

ぼんぽち、ひざ軟骨(甲州赤毛鳥)、せせり(比内地鶏)、出し巻き

刺身で食べられる肉だからレアでも良さそうだが、脂を落として外をカリッと焼くのがこの店の特徴。固くならない程度にしっかり焼くのも熟練の技だ。

へしこ、地鶏もも肉柚子こしょう煮

地鶏料理が中心の店になぜがへしこがある。酒のメニューには黒龍。思ったとおりオーナーが福井出身だった。

きねつきもちの肉巻、トマト巻

ボチボチお開きにしようと思ったところで、カウンターにと声がかかった。やはり特等席はカウンターだ。しかも焼き場に近いので店長と話が出来る。本日一番気に入ったきねつきもちの肉巻きの作り方も教わった。これは銀髪のレパートリーになる。

ラストオーダーが4時と遅いので急かされない。楽しく話していたら12時近くになっていた。一つの店にこれほど長く居たのは久し振りだ。「混んできたら2時間で出てもらいます」という店が多い昨今、ちょっと高めの料金も仕方ない。2次会に行かなくて済むなら安いものだ。

美女と一緒であれば、もっと楽しかったに違いない。それだけが残念だ。


がいがい
東京都港区麻布十番1-3-1 APORIAビル1F 
03-3586-3335
http://www.gaigai.jp

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2009年02月08日

[飛鳥](新山口)

新山口駅でのランチ

新山口駅で新幹線を降りて昼食をとることにした。駅を出て見回しても全国展開するチェーン店が目につくぐらいで他に飲食店らしきものは殆どない。思案していると部下が駅裏に回りましょうかと言う。新幹線が開通するまでは、駅の反対側が繁華街だったはずだ。

跨線橋を歩いて駅裏に到達すると、スーパーのビニール袋が寒風にあおられ、カサカサと転がり舞っていた。まるで西部劇の根無し草のようだ。スーツに鞄より、テンガロンハットに拳銃の方が似合いそうだ。レストランらしきものも殆どない。ようやくバス停の横道に寿司屋を見つけた。

店の外には客寄せのメニューらしきものはない。高くても仕方がないと思って入ったら、カウンターの端に若いカップルが座っているので安心した。メニューを見ると1,000円以下のランチもある。せっかくだから寿司がつくセットを注文した。

値段の割に立派だ。主人が寿司を作り出したが、まずはカップルの方に行くようだ。「繁華街はどこにあるんですか?」と店の女性に尋ねる。バス停の向こう側にあるが、昼間は閉まっているとのこと。新幹線が開通して、どんどん寂しくなると言う。

おばさんたちのグループが入ってきた。躊躇なく店の奥に進み、個室に納まった。地元の常連さんだろう。旅行者なら高級なイメージがある寿司屋で、しかも値段表も出てないような店に入る気はしないだろう。
「値段表を出した方がいいですよ」とアドバイスしようかと思ったが、黙々と寿司を作っている主人を見て、余計なことを言うのは止めにした。

料金に見合った寿司と小さな茶碗蒸しを食べて店を出た。若い部下には物足りなかったかもしれないが、銀髪にはちょうどいい。

店に入る時には気付かなかったが、バス停は秋吉台・秋芳洞への基地のようだ。暖かくなると観光客で賑わうようになるのだろう。根無し草のイメージを頭から追い出すことにした。季節が変われば全てが変わる。飛鳥の店先にメニューが出ているかもしれない。

寿司和食 飛鳥
山口県山口市小郡下郷明治西1235-8
083-972-4138

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2009年02月07日

[山水](亀戸)

初めて食べた釜揚げそば


BAR BRANCHE に入る前、小腹が空いていたので近くの蕎麦屋に入った。そばだけさっと食べて行けばドライマティーニを飲むことが出来たかもしれないが、昼間ならともかく夜に蕎麦屋に入って酒を飲まないわけには行かない。我ながら律儀な性格である。そばがきは時間がかかるということなのでそば味噌を頼んだ。

コリコリとした食感がなかなかいい。他の料理にも期待が持てたが、そばを食べることにした。ソバは長野をはじめ国内産のソバを厳選して使っているそうだ。石臼でひいたそば粉を手打ちにする本格的なそばである。メニューの中から珍しい釜揚げそばを頼んだ。

釜揚げそば

そばは冷水で洗わなければならないと信じていたが、うどんのように釜揚げにしても悪くない。子供の頃は温かいそばでなければ嫌だったが、近年はそば湯を飲みたくてわざわざせいろを頼むようになった。釜揚げそばなら茹でてそのまま食べられるので手間が省けていい。貴重な発見だった。家でもやってみよう。

豚せいろ、ぶっかけ

鴨せいろを頼もうとして珍しい豚せいろに宗旨替えした人、焼味噌、卵、青ねぎ、大根、海苔、天かすをまぜまぜした人は選択ミスをしたように思えた。まあ、本人の勝手だけど。

この記事を書きながら、JALの機内誌で学んだことを思い出した。氏原暉男氏の著書「ソバを知り、ソバを生かす」によると片仮名のソバは植物あるいは実の段階、ひらがなのそばは粉や麺などに加工されたもの、漢字の蕎麦は固有名詞などと使い分けするそうだ。屋号に使うとしたら蕎麦ということになる。なかなか奥が深い。

「二八ですか?」と店の女性に聞いたら「十割です」と憮然とされた。店の紹介記事を読むと、実際には多少のつなぎが入っているようだ。限定粗引きそばは十割なのかもしれない。今度はゆっくりと日本酒でも飲みに来ようと思った。

手打ち蕎麦 山水
東京都江東区亀戸6-24-8
03-3684-0543
http://www5.plala.or.jp/sobasansui/index.html

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2009年02月06日

[BAR BRANCHE バー ブランシュ] (亀戸)

こんなところに素敵なショットバー


ドアを開けて店主と目が合い、笑顔を交わす。コートを脱ぎ、椅子に座るやいなや「ドライマティーニ!」と告げる。「すみません、もう今日出ちゃいました。30分早ければよかたったんですが…」とショックな言葉。店の奥に座るカップルの前に確かにマティーニらしきグラスが置いてある。「次にできるのは3時頃です」と言われたら今日は諦めるしかない。

BAR BRANCHEには2週間前に連れて来られた。初めてのバーでいつもするように、マティーニを頼んだら断られて驚いた。マティーニに使うジンを冷蔵庫から既に一度出してしまったからだと言う。ジンがマティーニに相応しい温度になるまでは作れないというこだわりであった。他にすぐ思いつくカクテルはギムレットしかない。

今回もマティーニは飲めなかった。代わりに飲んだのはやはりギムレット。しかし、銀髪グルメ紀行を読んでくれたとのことで、今回は銀髪向けの特製ギムレット(上の写真右側)を作ってくれた。

老舗のバーのように見える落ち着いた雰囲気の店を一人で切り盛りする店主は30歳と若い。彼が独立するまでに買い溜めてきた酒の中には彼の年齢を上回るものがたくさんある。

ボロボロの箱に入った年代物のヘイグ。どこをどう流れてきたのだろうか。飲み比べのために出てきた比較的新しいボトルだってPinchのラベルが貼ってあるから最近のものではない。ボトルの中でウイスキーも熟成するようで、確かに味は違う。

今回、出してくれたのはグレンモ-レンジとラフロイグ。グレンモーレンジは瓶詰めした年が書いてあるので年代ものだとすぐに分かる。ラフロイグは10年ものとしか分からないが、裏のラベルで違いを見分けることができる。

まだジョニ黒が1万円以上もして呑兵衛たちの憧れだったとき、我が家には父が海外から買ってきたり貰ったりした洋酒がたくさんあった。我々息子たちは、「早く飲まなければ腐る」と父を急き立てて、ボトルを開けさせたものだ。今も残っていたら、ネットオークションで高く売れたかもしれない。

最初に来たときは土曜で静かだったが、この日はそれなりに混んでいた。電話も何度か鳴り、とうとう断るようになってしまった。電話番号を公開していないので、相手は常連さんに違いない。長居をしては申し訳ないので帰ろうとすると、「ゆっくりしてください。果物を切りますから」と余裕の笑み。気遣いも立派でなかなか格好いい。

それにしても店主は仕事が楽しくて仕方がないように見える。ボトルの酒も、おつまみも、果物たちも嬉しいだろう。もちろん、客だって。

BAR BRANCHE バーブランシェ
東京都江東区亀戸6-15-5 庄司ビル1F

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2009年02月05日

[山はら]④(築地)

立派な、立派なあんこう鍋


昨年末、山はらに行き損ねた人の希望で再訪することになった。山はらのメニューは2種類。大きな刺し盛が共通で、蟹と焼き魚(または煮魚)+寿司かあんこう鍋を選ぶ。今回はあんこう鍋を予約した。

いつものように初めての人は市場内に足を踏み入れると緊張しているのが分かる。2度目の人は銀髪が自慢気に話すのに同調する。もう立派な常連さんだ。
店に入るとたくさんのスリッパが並んでいた。「いつもこうなんですよ」と銀髪が笑う。階段を見上げると仲居さんと目が合った。「アラッ!」嬉しそうにしてくれる。

本マグロ、ヒラマサ、メジマグロ、キンメ、いか、タイ、ホタテ。6人前となると刺し身自体のの量が多く、主人もさすがに「立派なのは大根のつまだけです」とは言わなかった。人数に合わせて上手に盛るもんだと感心した。

あんこう鍋を食べるのは一昨年の12月以来。「鍋におさまらないぐらい大きな鯛がだしなんですよ」とみんなに予告したのに、前回より小さな鯛で拍子抜けした。それでも鍋のだしには立派過ぎる鯛ではある。鍋の具の方は前回より大量でびっくりした。みんなも圧倒されている。仲居さんが「鍋奉行はどなたがやっていただけますか?」と聞く。銀髪がサッと手を上げた。

仲居さんを呼ぶ声が聞こえる。この日は全部で5組が入っており、入り口に並んでいたスリッパは飾りではなかった。忙しいのは仲居さんだけではない。主人も料理にてんてこまいなのか、楽しい話を聞かせてくれる時間もないようだ。もちろん鍋奉行も忙しい。

立派なあんこうの肝に感心しきり。12月初めに来た前回より大きくて美味しい。今が旬である。身は厚く、フランス料理のようにソテーにしても美味そうだ。皮や胃も入り、これがあんこうの七つ道具かと満足する。

最後は雑炊。銀髪が卵を溶き入れるとみんなが感心してくれる。家では何もしないのだろうか。関白が奉行をやったって恥ではないのに。

出口に主人、奥さん、仲居さんが揃った。一仕事終えてホッとしている様子が窺える。いつもながら、楽しい山はらだった。


山はら
東京都中央区築地5-2-1
03-3541-8747

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2009年02月04日

[晃月](下北沢)

若者の街にある大人の割烹


小中学校の時、最寄り駅として親しんだ下北沢も、いつの間にか若者の街に変貌した。中学時代の友人たちと若者達で賑わう居酒屋で呑むのは楽しい。何よりもリーズナブルな価格設定が嬉しい。しかし、下北沢におじさんたちだけで楽しめる店がないわけではない。

南口を出て新宿方面に歩きオオゼキにぶつかって右折、すぐに晃月を見つけた。階段を下りて店に入り、我々は入り口に一番近いカウンターに座った。奥には煙草をくゆらせる中年3人組が居るが、我々の席に煙は届いてこない。

希望通りの落ち着いた店。2種類のお通しでビールを飲みながら悩みに悩む。

とにかく料理の種類がべらぼうに多い。固定メニューだけでも多いのに、手書きで紙一杯に本日の料理が並べてある。読むだけでも時間がかかる。取り敢えず刺身の盛合せを頼んで、じっくり考えることにした。

赤なまこ、霧島豚

飲み物のメニューも立派。大人の店らしく、日本酒の品揃えもいい。珍味を頼んでしまったら日本酒も進んでしまう。
自家製のチャーシューなど豚肉は霧島豚、鶏肉は徳島の阿波地鶏など産地にもこだわりを見せる。塩は男鹿半島から取り寄せているそうだ。

そぼろ大根半熟卵乗せ、自家製さつま揚げ

「毎日これだけのメニューを書くとは、凄いですねー」と褒めると、「全部書き換えるわけではないので…」と謙遜する。

マダラの醤油焼き、ゲソ焼き、菜の花のおひたし

「刺身で使ったいかのげそです」と嬉しいサービス。「オーナーですか?」と料理人に聞けば、オーナーはショットバーを経営していて自分は店長だと言う。手書きのメニューやアイデア満載の料理などオーナーじゃなければ出来ない仕事と思ったのは間違いだったのか。

ところが交換した名刺を見たら、店長の名にしっかり晃の文字が入っていた。そうじゃなければこんな店にはならない。しっかり納得した。


和みや 晃月
東京都世田谷区北沢2-9-2 辻ビルB1
03-5465-1176

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2009年02月03日

[升屋](日本橋)

鉄板焼き居酒屋


「鍋を食べたい」と言う友人を美味しい店に連れて行こうと日本橋界隈を歩いた。ところが目指した店が見つからない。散々引き回した挙句、諦めて入った店には鍋がなかった。
奥の席に座りビールをオーダーしたがなかなか来ない。後から入ってきた客に先にビールが出されるのを見て店を出ようかと思った。友人に申し訳なくてイライラする。

お通し、牛すじ煮込み豆腐

2種類の料理を食べて少しホッとした。アルバイトの数が揃ったのか、サービスもスムーズになってきた。イライラの元凶は自分にあると反省する余裕も出てきた。ゆったりとしている友人との差は歴然としていた。

一口鉄板焼餃子、べた焼き

お奨めの料理は緑の線で囲んであるから分かりやすい。チェーン店らしいアイデアである。鉄板を使った熱々の料理が売り物のようで、値段の割に上等に見える。
新手の女性店員は料理を持って来ては、空いた器を片付ける。所作もきれいな彼女を見て、店の印象が一変した。

手作りもっちり豆腐、とりもも山椒焼き

7年ほど前に癌で胃を全部摘出した友人の話に聞き入った。以前勤めていた会社の同期だが、2人で飲むのは初めてなので話題は多岐に渡った。
ビールの後に頼んだ冷酒を飲みきり、友人が飲む熱燗の2合徳利を手伝った。主に聞き役に回っている銀髪のペースは速い。「もう2合行くか?」と聞いたら手のひらがこちらを向いた。彼のノルマである山椒焼きも一切れ残ったままなので、料理の追加も止めた。

隣席にカップルが来て店は満席になった。仕切りの布が下ろされて、各テーブルの客は半個室の空間を楽しんでいる。似たような居酒屋チェーン店の中では悪くない店だった。

升屋日本橋店は直営店ではなく、フランチャイジーである。加盟店のサービスにはバラつきがあり、失望させられることが多いが、この店のオーナーは頑張っていると言えるだろう。アルバイトといえども、店員一人で店の印象が変わるのだから商売は難しい。わが身の反省も含めて、本当に難しいものだ。

升屋 日本橋店
東京都中央区日本橋3-7-10 タンペイ日本橋ビル1F
03-5299-2050

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2009年02月02日

[湖南菜館](新宿歌舞伎町)

毛沢東が愛した湖南料理


湖南料理の名店として知られる湖南菜館は、以前から気になっていた店だった。「歌舞伎町案内人」の著者李子牧(リーシャム)氏がプロデュースする店としても有名。店があるビルに近づくとかわいい中国娘に店のパンフレットを渡された。これを受け取りビルに入ろうとすると、彼女が驚いて追いかけてきた。銀髪が彼女の店を目指して来たとは思わなかったのだろう。

店内は明るく、洋風のレストランのようで、中華料理屋らしくない。中国人二人(一人は李子牧氏?)が新聞を広げて打ち合わせをしており、他に客はいない。客引きに成功した形の先ほどの中国娘が、コートを脱いだウエイトレス姿で我々の前に現れた。なかなかの美形だ。

お奨めを聞いたら、あれこれと教えてくれる。先ほど渡されたパンフレットを開き「全部これに載っているね」と言うと、恥ずかしそうに微笑んだ。本来なら細々と前菜を頼むところだが、写真の料理をオーダーした。彼女のお奨めなら量が多くたって構わない。

水煮魚(季節の鮮魚の湖南風ピリ辛仕立て)

中国八大料理の中では四川料理と湖南料理が辛口である。湖南料理は痺れるような辛さの四川料理とは異なり、酸味がある優しい辛さが特徴。水煮魚はこくもあってとても美味しかった。

蒜茸文蛤(蒸しハマグリ)

にんにくと唐辛子がぺペロンチーノを思わせる。ハマグリの下に敷かれた春雨がスープを吸って美味しい。スープも残すにはもったいないので大半を飲んでしまった。

毛家紅焼肉

カラオケルームもあるモダンな店内と壁に貼られた毛沢東の大きな写真がアンバランスで可笑しい。湖南省は広東省の北に位置し、昔は楚があったところ。毛沢東や劉少奇などの大政治家の出身地でもある。その毛沢東が愛した料理が毛家紅焼肉で、皮付きの豚角煮に近い。箸で切れるほど柔らかくコラーゲンタップリの逸品。もっとも中国料理独特の香辛料が日本人には評価を分けさせるかもしれない。

中国娘が心配してくれた通り、3品で腹が膨れてしまった。追加注文をするかどうか迷ったが、答を出すのは難しくなかった。また来ればいい。他にも気になる料理がたくさんある。

一つだけ心配事がある。今度行った時も、あのかわいい中国娘は働いているだろうか。それだけがきがかりで仕方がない。


湖南菜館
東京都新宿区歌舞伎町1-23-13 4F
03-3207-8288

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2009年02月01日

島崎酒造

洞窟見学が楽しい


島崎酒造に到着。みんなが最初に欲したのは酒ではなくトイレだった。バスの中や餃子館で、ビールを飲んだせいだ。
部屋で短い説明を聞いた後、工場内を見学。大吟醸酒の仕込みを邪魔しないように歩く。機械化されている他の酒と異なり、大吟醸酒はストップウォッチ片手に洗米から秒単位の手作業である。

再びバスに乗り込み、ウトウトし始めたところで洞窟に到着した。Kさんが閉所恐怖症だと怯える。

中に入ると杞憂だったことが分かる。第二次世界大戦末期に戦車製造の地下工場として掘られた洞窟は奥行き100m、延べ600mの坑道で、約720坪、一升瓶20万本を貯蔵加能なほどの広さである。
洞窟の天井にコウモリが二匹ぶら下がっていた。

入り口近くにはオーナーズボトルコーナーがある。買った日本酒を長期間預かってもらうシステム。日が差さない平均気温10℃の洞窟では日本酒は劣化しないそうだ。子供が生まれた時に預けて、成人した日に家族で飲むつもりの人が多い。還暦や米寿などの祝い酒にしてもいい。

洞窟見学を終えて工場に戻った。吟醸酒、純米酒、甘口・辛口・超辛口の醸造酒の5種類を利き酒した。何と2人が全問正解。日頃偉そうな銀髪は参加賞の携帯ストラップしか貰えなかった。

利き酒会の後は試飲会。洞窟で長期間熟成された酒も飲むことが出来た。20年物もある。しかし、やっぱり純米大吟醸が美味い。利き酒の時に顔をしかめていたKさんも、吟醸酒以上の酒になると笑顔になる。

利き酒、試飲と飲み続けると財布の紐もゆるくなる。しかし自分で飲む酒は買わないことにした。美味しい酒は危険である。代わりに家族へのお土産に果実酒を買った。


島崎酒造
栃木県那須烏山市中央1-11-18
0287-83-1221
http://www.azumarikishi.co.jp

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