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2009年09月30日

[舞浜](新橋)

魚だけじゃなかった


舞浜と言えば多くの人はディズニーランドを思い浮かべるだろう。グルメ紀行を始める前は銀髪も他のイメージは持ち合わせていなかった。埋め立てや汚染などで千葉県の豊饒の干潟・魚介類の宝庫は縮小していく。今は遊園地で楽しむ人が圧倒的に多く、漁場の縮小を嘆く人は殆どいないだろう。

6時過ぎ、店はまだ空いていた。昔は割烹だったというのが成る程と思わせる店内だが、カウンター席の間隔が狭いのが大衆店に衣替えした証のように見える。調理場の職人たちや料理を運ぶ女性たちも大衆店の雰囲気である。

お通しに大根おろしが出てきたのにちょっと驚いた。海鮮料理の店には珍しいお通しだ。オーダーはもちろん刺身から。少量ずつ盛合せにしてくれるように頼んで、お通しに取り掛かろうとしたら、刺身を待つ間にすぐに出て来るものをどうかと勧められた。大きな谷中しょうがに驚いているところに刺身が出て来た。客が少ないので待つ時間は短かった。

豪快な盛合せは漁師料理のようだ。さすがに舞浜で魚屋をやっているだけのことはある。厚く切って美味いのは新鮮だから。これでリーズナブルなら店が混み合うはずだ。いつの間にかカウンターも一杯になり、予約していない客が入り口でUターンする。

あらためてメニューを見て気がついた。舞浜のウリは新鮮な魚介類と鶏料理。お通しが大根おろしだったわけだ。同行したNさんは鰈を頼んで充分と言う。銀髪が黒豚入りもやし炒めとトマトを頼んだ。焼き鳥も追加したかったが止めにした。勘定して外に出ると、店の前に出したテーブルで飲み食いしている客が居た。予約なしで入れた我々は本当にラッキーだった。

Nさんは約30年前は銀髪より痩せていたのに、今は20余キロを足して90kgを超す。2軒目で合流したKさんと久し振りに再会し、お互いのメタボを非難し合うのを見て銀髪は苦笑するばかり。共に煙草を止めて巨大化した。

美味しい料理を前にしても太る恐怖と折り合いをつけるのは大変だろう。せめていい料理屋に来たときには腹が苦しくなるほど飲み食いしたいものだ。


舞浜
東京都港区新橋3-10-6
03-3432-8540

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2009年09月29日

[你好(ニーハオ)、歓迎、金春(コンパル)](蒲田)

蒲田の羽餃子ご三家


銀髪に食事を誘われたら多少は期待するだろう。「どこに行くんですか?」と聞かれて「蒲田」と答えると怪訝そうな顔をする。「何を食べるんですか?」の問いに「餃子!」と返すと嬉しいような、悲しいような、困った顔をする。食べ比べをするとは言わなかった。

京急蒲田で降りた。6時前、週末には行列が出来るというニーハオ本館は半分ほどの入りである。ビールと焼餃子、水餃子を頼む。手作りの皮は焼餃子と水餃子では違うらしい。「もう一軒行きますから」と他の料理を頼まない理由を告げた。ここまで来たらもう逃げられない。

你好(ニーハオ)

金春は以前行ったことがあるのでJR蒲田駅近くの歓迎に向かった。外から店内を覗くとテーブルはほぼ埋まっている。店に入ると奥に空席があった。頼むのはニーハオと同じ焼餃子と水餃子。焼き方は大雑把で、下に隠れた餃子に羽はない。具はニーハオよりジューシーで噛むと汁がこぼれ落ちる。「どっちが美味い?」と聞くと「皮はニーハオ、中身は歓迎ですね」と来た。焼き方も加えるとニーハオに軍配が上がる。

歓迎

「どうします?何か違う料理を頼みますか?」と聞いたら、「どうせなら金春に行きたい」と嬉しいことを言ってくれる。再び京急蒲田駅に向かった。店に入ると1階は団体客で一杯。2階もほぼ満席で大きな丸テーブルに相席することになった。

金春

焼餃子と、水餃子がないので小龍包を頼んでから随分待たされた。料理が出てきたのは我々より15分位後に入って来た客と同時。オーダーがまとまらないと焼かないのだろうか。不思議な包み方で不揃いな小龍包は幸か不幸か火傷するほどスープを含んでいなかった。皮、具、サービス、どれも他の二店に見劣りした。

興味深かったのは前に座ったお婆さん、お母さん、小学生らしき姉と弟の4人家族。弟が炒飯を、他の3人はまったく同じ冷やし中華を食べている。あれこれ頼んで分け合えば楽しいと思うのだが、そんなことは考えもしないようだ。世の中には様々な幸せの風景があるものである。

3店共にちょっと大きめな町の中華食堂みたいなもので餃子専門店ではない。中国人は醤油、酢などをつけて食べないので具は濃い目の味付け。ちょっと違和感を感じる人は多いだろう。10年ほど前、小学生の娘と成城学園前周辺で5軒餃子の食べ歩きをした。娘はいっぱしの評論家気取り。結論は「お父さんの皮から作った餃子が一番!」だった。蒲田に娘を連れてきたら何と言うだろう。答えは容易に想像できるけど…


你好(ニーハオ)
東京都大田区蒲田4-24-14
03-3735-6799

歓迎
東京都大田区蒲田5-13-26 大田区生活センター1F
03-3730-7811

金春
東京都大田区蒲田4-5-6 プロスペリアルビル1・2F
03-3737-5841

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2009年09月28日

[大江戸](日本橋)

食った!食った!


創業は江戸寛政年間1800年という老舗うなぎ屋。接待にも使える立派な個室があるそうだが入ったことはない。何度か使おうかと迷ったが、うなぎ以外の料理が混ざる会席料理はどうも気乗りしなかった。

11時から通しでやっているので仕事を早めに切り上げ、予約もせずに出かけた。銀座方面から昭和通りを歩いて行くと左手に柳が見える。左の入り口が料亭、我々は右の入り口のドアを開けた。こちらには約10年前、昼に来たことがある。

枝豆、うざく、うまき

取りあえずのビールには枝豆。大瓶のビールも枝豆もよく冷えていた。料理を運ぶのはアルバイト風の若い女性。老舗につきもののベテランは料亭の方で忙しいのかもしれない。

きも焼、肝山椒煮

売り切れご免のきも焼。一人前で7~8匹分の肝を使うというから早く行かないとありつけない。「ちょっとお待ちください。聞いてきます」と店員が調理場を往復するのも儀式ではあるまい。ついでに山椒煮も頼んで精をつけることにした。何のために?

白焼き

日本酒もなかなかの品揃えである。銀髪より年長のYさんは酔ってくると食べなくなってしまう。白焼は底にお湯を張った容器で出されるから、ゆっくりとつまみ代わりに出来るのが嬉しい。

蒲焼

「俺はもういらないぞ!」とYさんが言うのでご飯は薄く敷いて貰った。一杯になった腹と酒浸しになった脳では味を云々する状態ではなくなっている。それでもうな重と一緒に持って来てくれた箸には感心した。これまでの先が細い割り箸と異なり、ごはんを食べやすい先が角張った割り箸。さすがに細かいところに気が利いている。

腹ごなしと酔い覚ましを兼ねて歌いに行くことにした。たっぷり精をつけたので発散するにはうってつけだ。


大江戸
東京都中央区日本橋本町4-7-10
03-3241-2828

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2009年09月27日

[粋な一生](秋葉原)

ちょっと気に入ったかな


食べる時間より長い待つ時間を快適に過ごすため、メニューに工夫がしてある。店主のこだわりを読んでいる間に料理が出来上がる仕掛けだ。ちょうど<売切れ必至の人気メニュー>の秘密を読んでいるところに味噌ラーメンがやってきた。

繊細な盛り付け、根を取ってシャキシャキしたもやし、自慢のスープ。「おぅ!なかなか美味しいじゃん」山のようにあるラーメンブログを見るにつけ、ラーメン屋の評価だけは書くまいと思っている銀髪でも、「これは好みだ」ぐらいは言いたくなった。

メニューでは味噌ラーメンより前に出て来るのが<当店のおすすめ>の塩ラーメン。こちらは食べ方まで主人が丁寧に説明している。①まずスープは3口まで②チャーシューは温まって柔らかくなるまで待つ③終盤にスープを3口以上飲んで美味しくなったことを知る④御飯にスープをかけて御茶漬け風にする⑤調味料を加えて味の変化を試す⑥自分なりの美味しさの感じ方を見つける。まあ、こんなあんばいだ。

忠実にアドバイスを守った。いつもは早食い競争のようになるラーメンも、メニューを読み返しながら食べると時間がかかった。この店が好きになったのは⑥のコメントの解説。「誰がなんと言おうと自分の好きな食べ方が一番」なんてこだわりの店主がなかなか言えるものではない。遠慮なくMy唐辛子をポケットから取り出して振りかけた。オーッ!美味い!

御茶漬けのためにチャーシューを少し残しておいた。熱でフニャフニャになってごはんに混ざりやすい。塩ラーメンのスープがごはんによく合うねー。味噌のスープだったら昔を思い出して切なくなるだろう。40年以上前、我が家の愛犬は味噌汁ごはんが出て来ると下駄で蓋をして抗議したもんだ。

若くても、独学でも、接客の心得が未熟でも人気店になれるのがラーメン屋。そうは言っても、一生懸命さが感じられて好感が持てるお店である。


ラーメン食堂 粋な一生
東京都台東区1-27-2 竹善ビル1F
03-3837-8117

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2009年09月26日

[大正軒](有楽町)

スローライフ


「飲みねぇ 飲みねぇ すしを食いねぇ 江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」カウンターで待っていると、広沢虎造の浪曲「石松三十石舟道中」の名調子が聞こえてくる。普通は客のために音楽が流れているものだが、まさか浪曲ファンの客がいるとは思えない。

「清水一家で強いのは誰だか知ってるかい?」「大政、小政、大瀬半五郎、…」次兄が二代目広沢虎造を真似てだみ声で唸っていたのを思い出す。懐かしさに浸っていたらビーフカツが出来上がった。通常より50円引きの950円、本日のサービスランチだ。

巣鴨(住所は文京区千石4丁目)にある肉屋「ミートショップ大正軒」が経営しているとはいえ、1,000円で上等の和牛カツというわけにはいかない。ソースがたっぷりかかってきたのは予想外だったが、それなりに美味しく食べた。

「虎造ですね、ラジオですか?」食べ終わった食器を店主に差し出しながら聞くと、照れ臭そうに「テープです」と答えた。勘定場に行き1,000円札を渡してもお釣りが来ない。「950円ですよね」と遠慮がちに言うと「あー、そうだった、いつも1,000円なので忘れてた」と屈託なく笑う女性店員。アットホームな店である。

「今日はビーフカツがお得ですよ」と奨められた結果とはいえ、やはりメニューのトップにあるロースカツを食べなければ片手落ちだ。もしかしたらうまい具合に浪曲のクライマックスが聞けるかもしれないと思い再訪した。

残念ながら浪曲ではなく、懐かしいと言うには銀髪でも若すぎる昭和の曲が流れていた。それでも名曲は聴きやすく、オーソドックスなとんかつを食べる邪魔にはならない。今回は銀髪式に半分にトンカツソース、半分に醤油をかけて食べた。

なんだかホンワカする洋食屋である。


キッチン大正軒
東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館地下1階
03-3201-0147

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2009年09月25日

[座屋]③(銀座)

常連とまでは言えないけれど


銀髪グルメ紀行を始めて丸4年、3ヶ月連続で訪れた店は記憶がない。1回目で友達になり、2回目にはマブダチ、3回会ったら大親友とほざく友人をいつも笑っている銀髪だが、座屋に関しては銀髪も友人と五十歩百歩。既に常連客気分である。

5時半「やあ、こんばんは!」と軽やかに店に入って行った。店主の岡添さんはじめスタッフみんなが笑顔で迎えてくれる。てぐすね引いて待っていたようだ。今月の料理の出来はどうか、さあ、勝負勝負!

清水鯖、松茸とキスの椀

「オッ!純米吟醸だね」座屋は高知の全18蔵の日本酒を揃えており、いつも料理に合わせて何を飲むか岡添さんに任せている。料理との相乗効果で酒が進む。「もうないよー」と言うと、次の料理を考えて「〇〇出してー」とスタッフに命じる。なかなか格好いい。

御造り

「今度は純米酒?」これも当たった。鰹を藁で炙る(燻す)ショーが始まる。「赤いセロファンをヒラヒラさせて焼く真似をするだけだよ」と連れに言うと、岡添さん、吉澤さん、共に話を合わせてくれる。笑いも重要な調味料だ。鯛に似た魚はウメイロとのこと。高知から直送する座屋だからこそ味わえる素材だ。

八寸

「あれっ?これは純米ではないね」吟醸酒でも醸造用アルコールが入っていると読んだ。三連続正解で銀髪の鼻が得意気にヒクヒク動く。献立表の岩牡蠣がなく、代わりにチャンバラ貝(写真の左下)が出された。先っちょが刀のようだ。2匹がぶつかり合うとチャンバラをしているように見えるらしい。これも初めて食べた。牡蠣がなくて得した気分だ。

まながつお西京焼き

まながつおは南日本から東シナ海の大陸棚の砂泥底に生息しており、全長60センチにもなる。鰹と漁獲期が重なるのでかつおの名がついたらしいが、まったくの別種。西京焼きにぴったりの魚だ。

伊勢海老

伊勢海老の身はどこに行った?心配ご無用。頭の下にちゃんとあった。クルリと身を取り出して口に入れるとレアの食感。刺身を同時に食べるようなイメージで面白い。

朝引き鶏のたたき、漬物と干物、デザート(無花果盛り)

「これは清酒?本醸造?」「いえ、純米吟醸です」遂に外れた。酔っ払ったせいにしてしまおう。写真はないが、もちろん土鍋ごはんもいつもどおり美味しかった。うまくいけば来月にはヒノヒカリの新米が入って来るそうだ。米だって生鮮食品である。薫り高い土鍋御飯を目当てに来月も来なければならない。

「大きなアカザエビが入りますよ!」10月の献立は既に出来上がっているようだ。自信満々の岡添さんを見ているだけで嬉しくなった。座屋での勝負はいつも負ける方が楽しい。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090

座屋の7月、8月
7月→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/07/post_1296.html 
8月→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/08/post_1335.html

長月のお献立
[先付]土佐清水鯖、白桃酢擂り流し、蛇籠蓮根
[御椀]松茸と鱚の天吸 
[御造里]鰹、ひらあじ(?)、ウメイロ
[八寸]鮪とマンゴー和え、チャンバラ貝、もち豚ロースとカマンベール、鰹と胡桃の旨辛煮、車海老握り寿司、新銀杏
[炭焼]真魚鰹西京焼き、酢取り茗荷
[煮物]伊勢海老共餡掛け、茸・菊花・三つ葉
[強肴]朝引き鶏のタタキ、梅大根・白菜サラダ
[土鍋御飯]ヒノヒカリと土佐ジローの卵掛け御飯
[御数]高知漬物、干物
[甘味]無花果

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2009年09月24日

[麓屋](新宿西口)

なんでもあり。新感覚の蕎麦屋さん


京王プラザホテル正面のドアを入ったところで年配のホテルマンに声をかけた。「麓屋へはどうやって行くのですか?」彼はすぐさまベルボーイを呼んで、我々を案内するように指図した。さすが一流ホテル。エスカレーターを降り、一度ホテルを出て、店の中まで連れて行ってくれた。日本でもチップをあげるべきだったかもしれない。

テーブル上に銀髪の名を記したネームプレートが置かれていた。蕎麦屋とは思えないような雰囲気、アレンジ、なかなか洒落ている。若い店員がプロフェッショナルに見えないのがご愛嬌か。面白そうな料理を注文しようとすると「それは量が少ないからやめた方がいいですよ」とアドバイスしてくれる。

本日の燻製盛合せ、海の幸 にぎやかサラダ

燻製に合わせてワインを飲むことにした。グラスにたっぷり注いでくれるのが嬉しい。追加オーダーを店員に告げているところにサラダがやってきた。若い店員がしきりに奨めてくれた理由がよく分かった。追加オーダーをキャンセルしようとしたが、そのまま通すことにした。よく見ると野菜が海の幸を持ち上げている。

フランス産チーズと蕎麦粉パンのメルバ添え、豚のスペアリブ麓屋風

白ワインの次に純米酒を頼んだ。料理が和洋折中なので飲み物もルールを無視した。スペアリブが出てきて最後にチーズのつもりだったが意表を突かれた。幸いスペアリブもほぼ同時にやってきたのでチーズは横に置いた。ペースを乱されたため写真を撮り忘れ、スペアリブを動かしてしまった。もっときれいに盛り付けられていたのでご容赦を。柔らかくてなかなか美味しかった。

チーズの説明はしてくれなかった。銀髪も説明を求めることはしないで、赤ワインをオーダーした。ビール→白ワイン→日本酒→赤ワインと進んだのでちょっと酔った。最後にそばを食べる気持ちは萎えていた。

ホームページには「固定概念にとらわれず、和・洋・中の素材と技法を大胆に組みあわせ、麓屋流とでもいうべき新感覚の料理をお出ししてまいります。」とある。料理だけでなく酒の品揃えや高級そうでカジュアルなサービスまでも新感覚。一流ホテル直営のレストランと異なり、ちょっと抜けているのが気分を楽にさせてくれる。そこまで意図していないかもしれないが、なかなか面白い店だった。


麓屋
東京都新宿区西新宿2-2-1 京王プラザ1F
03-3344-2885
http://www.fumotoya.com/

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2009年09月23日

[舟ぜん](江の島)

とびっちょじゃなくても、ここでいいじゃん!


ゴールデンウイークにとびっちょ(→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/05/post_1233.html)で長時間並んだ。美味しいけれど他店で食べるものと大きな差異はないと思った。それを証明するために次に行く店は舟ぜんと決めた。あれから4ヶ月半、その日が来た。

誰が名付けたのかシルバーウイーク。愛車(自転車)マドンナ号で8時過ぎに世田谷の家を出た。相模原近辺で境川に入り、サイクリングロードを下った。舟ぜんには11時20分に到着。準備中の札に躊躇したが既に店内には客がチラホラ。店員の承諾を得てカウンターに座ったら、それから数分で満席になった。ラッキー!

生しらす定食を食べると決めた。すると後から来た客がメニューも見ずになめろう定食を頼んだ。今度は注文を取ってきた店員が「湘南定食!」と料理人に告げる。目の前には棒状のごはん。見ていると色んな魚を乗せる。メニューを開いてみると一文字鮨のようだ。カウンターは楽しいが、心を乱される。でも、初心貫徹、目的はしらす丼!店員を呼んだ。

絶句した。ごはんの上に乗っているのは生しらすではなく釜揚げしらす。生しらす定食を頼んだはずだと疑問に思ったところで味噌汁の上にある小さな器に気がついた。もう一度メニューを開いた。

確かに頼んだのは生しらす定食で丼ではない。しかもちゃんと釜揚げしらす丼と書いてある。すぐに自ら二色丼を作ることを決断した。小さな器に入った生しらすは思った以上にうまくごはんの半分を覆った。残りの半分に移した釜揚げしらすとうまく調和している。二色丼と言うよりは水墨画丼の方が相応しいかもしれないけれど…。

かき揚げも、小鉢も満足した。生ビールを頼む客にちょっと嫉妬したけれど、自転車だって飲酒運転はできない。江の島のとびっちょは以前行ったときと同じように人だかりが出来ていた。2時間以上の待ち時間は疑いない。腹ごなしに茅ヶ崎の友人宅までゆっくり走った。約30年前に銀髪をバッカスと呼んだ友人のお母さんと玄関先で5分間立ち話をして帰路についた。学生時代の思い出が帰りの自転車一人旅を潤した。

舟ぜんの前を通ったら、2時間前と同様に10人足らずが待っているだけ。食べることが目的ならばこちらの方が断然いい。夜にゆっくり訪れたいものだが自転車で片道3時間は遠すぎる。電車で来ればいい?それでも1時間半はかかるかもしれない。車で?残念ながらゴールデンウイークやシルバーウイークに車で観光地に行く勇気は持ち合わせていない。


舟ぜん
神奈川県藤沢市片瀬海岸1-3-4
0466-27-0048
http://www.cityfujisawa.ne.jp/~shouten/shop/kt22/kt22.html

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2009年09月22日

叙々苑 游玄亭のライスバーガー

怪我の功名


「何が食べたい?」とホテルで開かれるセミナーに向かうタクシーの中でKさんが言う。聞かれた2人は考える振りをする。
「Kさんが嫌いなもの」と銀髪が答えると、みんなが苦笑する。運転手も笑った気がした。

「このホテルの中のレストランでいいんじゃないですか」セミナー終了後、案内板を見ながらリーズナブルに食べられるいくつかの店を提案したが受け付けてもらえない。
「中華料理のAはどうだ? 焼鳥屋のBはどうだ? イタリアンのCはどうだ?」タクシーの中の質問から後退して、彼のレパートリーの中から選ばされることになった。
「中華料理が一番ましね」Sさんが渋々答える。運転手に告げられた行き先は並木通りの入り口。Sさんの意見は聞こえなかったかのように、Kさんは話を変える。

叙々苑の游玄亭に来るのは何ヶ月ぶりだろう。Kさんも久し振りと言ったが、彼の場合は3日も開ければ久し振りとなる。銀髪も何度も来ているので、グルメ紀行に書くことはないと諦め気分でいたら、テーブルに面白いものを見つけた。

毎日更新する銀髪グルメ紀行。殆どのメニューを食べ尽くした店に行くと書くことがなくて1日分埋めるのに苦労する。ライスバーガーを見つけたときは嬉しかった。お土産にしてもらい、家に持って帰った。

ライスバーガーは珍しい食べ物ではなくなった。外米では難しいが、粘り気の強い日本の米ならサンドイッチのパン代わりになる。ライスバーガーが米消費を大幅に増せるわけではない。それでも米の使い道はアイデア次第で多様だと教えてくれた効果はある。

ケーキやパン用の米粉を減反による休耕地で生産するところも増えているようだ。ビーフン料理屋もマスコミで話題になるようになってきた。高級店の游玄亭で売っているお土産が、2個700円というのも面白い。多分グループ店のどこでも買えるのだろう。値段も味も妥当な水準だった。

冷ご飯の有効利用をあらためて教えてもらっただけでも游玄亭に行った価値はあったかもしれない。そう思わないとやってられない。

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2009年09月21日

築地で買った伊勢海老、鮑、牡蠣、いか

男はつらいよ


昨日、いわし鯨の尾肉を買ってしまった話を書いた。まさに衝動買いで、本来の目的は別にあった。我がパートナー殿がこの世に出てきて51回目の記念日。25回目からは両親から銀髪に引継がれた。そのうちの殆どは銀髪の手料理で祝ってきた。

1985年にオーストラリアに赴任してから、料理の主役は伊勢海老が定番になった。オーストラリアでは2キロ以上もあるロブスターを活き造りにした。添えるのはシドニーロックオイスター。日本に帰国してからでも1キロ以上のものを買っていたが、今年は300gと小さい。子供たちが揃わなかったためだ。

お祝いの日の銀髪の手料理はいたって簡単。千葉県産伊勢海老とまだ出始めの柔らかなスミイカを刺身にする。北海道の厚岸産と昆布森産、岩手の赤崎産の3種の牡蠣の殻を外す。あわびはホットプレートでバター焼き。300gのあわびは高級店で食べれば1万円するだろうが、築地なら2,500円。伊勢海老も同じぐらい。牡蠣は1個150円前後。1万円足らずで豪華な食事になった。

料理をテーブルに並べているときに娘の一人が帰ってきた。これまで最初の1回しかない2人だけの寂しい宴は免れた。いやいや25年前は2人でも寂しいことはなかったはずだ。誰もが経験する人生の何番目かの階段に上ったのかもしれない。いや、もしかしたら下りに入ったのかも。

「明日はカレーだね!」と娘が言う。下の娘も夜遅く戻って来るなり言った。「明日はカレーだね!」お祝いで伊勢海老を食べた翌日は、殻でだしを取ってカレーを作るのが決まり。この日は貧弱な伊勢海老だったが、それでも彼女たちはお父さんのロブスターカレーを期待してくれていた。

味はともかく、自転車で築地まで買出しに行き、料理をしてあげたことは評価してくれたに違いない。単なる自己満足かもしれないとは思うけれど。
バッグ自体の重みや、鯨、いか、貝、氷、そして雨のお陰で60㎏の負荷がかかっていたことが、家に帰って分かった。感謝を強要するつもりはないけれど、せめて「バッカじゃないの!」とは言って欲しくはなかった。男はつらいよ。

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2009年09月20日

鯨の尾の身

めちゃくちゃ美味い尾の身


久し振りに築地に行った。世田谷成城学園駅近くの自宅から自転車に乗って50分で築地に到着、7時過ぎに築地場内に入った。店仕舞いするまでには時間がたっぷりある。場内を端から端まで回った。築地に来たら必ず立ち寄るのが鯨専門店。運が良ければ近海で獲れた生肉が手に入る。

残念ながら生肉はなかった。南氷洋の調査捕鯨による冷凍ものばかり。しかし、中央にポツンと置かれた塊肉に目を奪われて動くことが出来なくなった。サシが入った肉と「イワシ鯨 尾肉」の文字が交互に目に飛び込んで来る。

「これ、いくらですか?」と聞いたら「27,500円!」と言う。「一個?」と問いただすと「なに言ってんだい。築地はキロだよキロ売り!」と鼻で笑われた。そんなことは百も承知だ。右の小さい肉が1キロぐらいかと思ったのだ。量ってもらったら銀髪の思ったとおり。しかし1キロはとても買えない。

諦めて去ろうとしたら「好きなだけ切ってあげるよ」と引き止める。「このぐらい?」包丁があてられた場所は肉のほぼ真ん中。冗談じゃない、13,000円も払えない。4分の1ぐらいのところを示されて頷いた。包丁を一気に入れてくれたはいいけれど、下に行くほど厚くなった。250gのつもりが300gを超えており、8,000円も払うことになった。切ってもらった後では断れない。

調査捕鯨で一番獲れるのはミンククジラで体長は約8メートル、重さは13~14トン。一番口にすることが多い鯨だ。イワシクジラは約15メートル、25トンと大きい。脂の乗りもミンククジラより良くなる。黒ずんでいるのがミンククジラ、赤身のきれいなのがイワシクジラとの説明だった。赤身と比較したら尾の身の美しさが際立つ。

さすがに尾の身は好評だった。驚いたことに牛肉やマグロではサシの入ったものを敬遠するパートナー殿がパクパク食べる。触ると脂がスーと手につくほどの肉にもかかわらずだ。子供の頃は尾の身でもよく食卓に上ったものだったが、商業捕鯨が禁止になってから鯨肉は高級になってしまった。80歳を超えた母は、それでも昔の方が美味しかったと言う。イワシクジラよりもっと大型の生の鯨肉であれば、その美味しさは容易に想像できる。

300gの一部は母におすそ分けした。残りを3人で食べるには量が少なすぎた。「もういいの?」と聞いたらアッと言う間に箸が伸びてきた。銀髪に福はなかった。

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2009年09月19日

[Lounge H]

本当に隠れ家的なレストラン


日本橋から早足で歩いた。住所は銀座だが、昭和通りを越えるのでイメージ的には東銀座だ。まだ6時半なのにオフィスビルの1階には人影もない。

「オーイ!何してんだよー」ビルのフロア案内板を見て途方に暮れている友人に声をかけた。既に赤ら顔をしている。高級レストランがある分かりやすいビルなので、同窓会の案内状もろくに見ないで来たらしい。「オー、助かったよ!」と銀髪と気付いて声を上げる。案内板には確かにレストランの名前はない。

酔っ払いと一緒にエレベーターを13階で降りた。広々とした店内に客は数えるほどしかいない。夜景がきれいな店にもかかわらず、「会費4,000円程度」は何かの間違いではないかと思っていたが、そのからくりがほぼ分かった。

ビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウーロン茶。飲み放題では酒のレベルの文句は言えない。どうせ近況報告が終わり、昔話になれば酒の味など分からなくなる。酒の肴は既に充分になっているのに、幹事はまだ料理を追加すると言う。料理はコースではなく、彼が適当にオーダーしているようだ。

腹一杯飲み食いして一人4,000円でもお釣りが来た。帰りは幹事に誘導されて裏口からビルを出た。数年前までブリジストン本社の地下で飲み食いしたことを思い出した。社員限定の食堂も多いが、決まりごとさえ守れば社外の人でも利用できるところが少なくない。この日のラウンジも基本的にはビルのテナント向けの施設だが、一般にも開放しているようだ。

「夜景がきれいな格安の店」として紹介しようと思ったが、幹事から銀髪グルメ紀行に住所や電話番号は載せないでくれと言われた。文章の中からどこにあるか読み取ってもらうしかない。わかるかな?

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2009年09月18日

[がんこ](上野)

酒はほどほどに


「安い店で申し訳ないですが…」と連れて行かれたのが上野のがんこ。昭和38年に大阪十三で創業し、現在は様々な業態を展開する大飲食店グループになっている。上野本店は平成3年に開店した東京進出1号店のようだ。

下駄箱に靴を入れて廊下を歩く。思ったより大きな店だ。個室は座敷かと思ったが、テーブル席になっていた。年配者でも椅子席の方が居心地がいい。「安い店」というのは謙遜で、立派な料理が我々を待っていた。

さすがに商売が難しい大阪で成功した店だ。見栄えのする料理でも、リーズナブルな価格設定になっているに違いない。客を待たせないサービスも見事である。酒もどんどん運び込まれてくる。アルバイトに見える若い女性店員も実にきびきびしている。銀座ライオンよりも教育が行き届いている。

10人のメンバーの内、50代は銀髪と部下の2人だけ。他は60歳以上で70代も複数いる。喋って飲んで、日本の経済成長を引っ張ってきた人たちは本当に元気だ。最近の若者たちと比べると宴会慣れしていて、飲み上手、注ぎ上手でもある。

豆乳鍋が始まる頃には年配者たちの食べる勢いはさすがに落ちてきた。それでも飲む方は衰えない。注ぎ方は勢いを増している。左から右から、前方から、さらには後ろから徳利が差し出されるので銀髪は箸を取る間がない。もっとも、大型の居酒屋で出される熱燗はあまり酔わない。常時温められているのでアルコールが飛んでしまっているのかもしれない。

寿司が出てきたところでホッとした。お開きの時間は目の前に迫っている。ようやく日本酒からも開放されそうだ。重鎮が熱燗派で助かった。

半数が残り、2次会に誘われ浅草に向かった。スナックでも行くのかと思っていたが甘かった。タクシーを降りた先には見覚えがある大きなちょうちんが下がっている。居酒屋の「あらまさ」である。「いやー、ここはいい酒があるんですよ」と講釈をたれる馬鹿な銀髪。これを聞いて一度は頼んだ熱燗を冷酒に変更されてしまった。自分の軽率さを呪ったが後の祭り。今度はアルコールをしっかり感じながら飲んだ。ぼちぼち翌日のことを心配しなければならない。

がんこ 上野本店
東京都台東区上野4-9-6 ナガフジビル6F
03-5688-8845

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2009年09月17日

[ビアホールライオン 銀座七丁目店](銀座)

さすが110年の王


「肉はダメだぞ!」と命じたら部下が選んだ店は銀座ライオンの総本山七丁目店。メタボ軍団の部下たちに相応しい店とも思えないが、先日行ったばっかりの渋谷店と比べるのもいいだろうと思い承諾した。

さすがに歴史のあるビヤホールは重厚で風格がある。天井の高い立派な大ホールに粗末な椅子やテーブルが意外と合っているから面白い。サッポロ生ビール黒ラベル、エビス樽生、琥珀エビス、エビス・ザ・ブラック、白穂乃香、エーデルピルスなど各人好きなビールを頼む。


「肉以外にも料理はいろいろありますから」と言った我が社のメタボ頭が頼んだのは目を疑うものばかり。看板料理のローストビーフが一番ましに見えたが、売れ行きはよくなかった。


他のメタボたちも負けていない。一斉に頼むからテーブルに乗り切らないぐらいに料理がやってくる。テーブルのスペースを空けるには出ている料理を腹にぶち込むしかない。メタボへ真っしぐらだ。

ビールに飽きてワインや酒を飲む者も出てきた。僅かながら選択肢があるので飲み放題よりましだろう。そもそもメタボ軍団の飲み会は1時間超で終るので、2時間の飲み放題は無駄だ。

にしんのマリネを喜んで食べるのは最年長の健康優良社員のみ。健康診断の評価を見るまでもなく、食べるものと健康度は比例する。不健康な連中は、好きなものを食べて飲んで、煙草も吸って病に倒れても思い残すことはないだろう。もっとも、健康に気をつけても無病でぽっくり死ねるわけでもないから難しい。自由に飲み食いできなくなる前に楽しみたいと思うのも一理ある。

勘定をしたら渋谷の飲み放題コースと値段はほぼ一緒。満足度は比べるのもばかばかしいほど明らか。満足してくれたのはいいけれど、メタボたちが「明日から減量するぞ!」と言うのがチャンチャラ可笑しかった。


銀座ライオン 銀座七丁目店
東京都中央区銀座7-9-20
03-3571-2590
http://r.gnavi.co.jp/g131800/

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2009年09月16日

[串揚げ宇吉](下北沢)

低料金で食って、飲んで

「なるほど…」客単価が2,500円と聞いていたが、メニューを見て納得した。串揚げは殆どが100~120円。揚げ物で、ボリュームがあればそうたくさんは食べられない。串揚げ屋定番のキャベツとソースが各人の前に並んだ。

ストップするまで揚げる方式ではなく、自分で食べたい物を選ぶ。3種6本を頼んだら、きれいに皿に盛られて出てきた。揚げ立てを食べるために、次から1本ずつオーダーすることにした。

何とか売り上げに貢献してあげたくて蟹キス巻を頼んだ。「もっと高いものを作ればいいのに」と銀座の高級串揚げ屋の「六覺燈」や渋谷の洋風串揚げ屋の「GDF」の話をしてあげる。アドバイスに熱心な銀髪に対して料理人はただ感心しているだけ。下北沢の客層に合わせて、あくまで安さを前面に出す戦略らしい。

野菜で一番高いアスパラの肉巻を頼んだ。立派なアスパラにもかかわらず、これで150円。店が維持できるか心配になってしまう。「専門店ならではの変わった串揚げだったらアイデア料の20円~50円を上乗せできるよ!」と知恵をつけようとするが、良心的な店主を説き伏せるのは難しい。

テーブル席には炒め物や焼き魚を頼んだグループが盛り上がっている。そんな客のためには串揚げ以外のメニューも必要なようだ。それにしたって500円を超える料理は殆どない。ファミリーですべてまかなうならいいが、他人を使っての商売は大変だろう。年中無休、日~木・祝日は17時~24時まで、金・土・祝前日は朝5時までの営業。料理屋の経営は思ったよりも厳しい。

まだオープンして間もない。日々の営業も大事だが、若い店員たちは繁昌店の研究をしっかりやったらいい。1年もすれば見違えるような店になるだろう。「下北沢に行ったら宇吉に行かなきゃ!」と言われるように頑張って欲しいものだ。

串揚げ宇吉
東京都世田谷区北沢2-33-10 DSビル101
03-6407-3055

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2009年09月15日

[京野菜 美登里](銀座)

ゆったりと京料理


銀座金春通りには銀座九兵衛をはじめ有名店が並ぶ。周辺には高級クラブも多く、もっとも銀座らしいところだ。そんな金春通りをきょろきょろしながら歩いていたら、危ないところ通り過ぎてしまうところだった。

階段を下りるとグッと落ち着いた京都の町家に入ったような気分になる。カウンターの正面に見える茶箪笥が店の雰囲気を支配しているかのようだ。対称的にバックに流れるオペラの曲が調和していて面白い。一番乗りだったので、カウンターの左端の席を選んだ。

目の前を店主が過ぎて行った。彼の持ち場は右側の焼き場近辺らしい。しまったと思ったが後の祭り。たくさんの小皿はどこに行くかと見ていたら、盆に並んで銀髪の前に来た。これを見たら日本酒を頼まずにはいられない。

琵琶湖産の稚鮎、まぐろ尽くしと進んでいくと酒を飲むピッチが上がっていく。酒のメニューには酒米の名称も書いてある。全29種、初めて聞くような酒米、銀髪を挑発して危ない。

メインの前の野菜料理。「今は一番京野菜が少ない季節なんですよ」と言われてハッとした。確かに蕪などの京野菜は秋から冬が旬のものが多い。それでもがっかりすることはない。これだけの野菜が並ぶのだから。

メインは肉料理(すきやき)と魚(かさご)のどちらかを選ぶ。どちらも松茸の香りが効いている。唐揚げされたかさごに身はあまりついていないが、スープが素晴らしく美味い。魚料理というよりも松茸料理と言った方がいいかもしれない。

横浜馬車道通りの近くに85年続いた料亭が火事で消失し、心機一転、銀座に店を構えたと言うだけあって、もともと店主はカウンターで客の相手をするのが苦手のようだ。銀髪が左端、店主が右端という距離も邪魔をする。銀髪のペースに引きずり込もうと何度か試みた末に「この音楽は誰の趣味ですか?」と聞くと、「私のです」と主人が恥ずかしそうに答えた。やっと会話が成立した。マニアというわけではないそうで、銀髪でも知っているスタンダード曲ばかりで楽しい。

電話の応対同様、所作も美しい店の女性に見送られて店を出た。「何か他と違ったところは気付かなかった?」と連れに聞いても首を傾げたまま。甘いものが苦手の銀髪にとっては嬉しいデザート無しの店だったのである。


京野菜 美登里
東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル B1F
03-3289-2362
http://www.ryoutei-midori.co.jp/

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2009年09月14日

[ブラッスリー銀座ライオン](渋谷マークシティ)

飲み放題はお得かな?


中学の同級生が集まる飲み会は、いつもの下北沢ではなく渋谷で催されることになった。仲間の一人が割引券を持っていたためだ。店員とすれ違って個室に入ると、集合時間の数分前にもかかわらずまだ半数が来ていない。

「時間通りに始めるってよ!」先ほどの若い店員に宣告されたらしく、仲間の一人が憮然とした表情をしている。幸い5分程度でほぼ全員が揃った。2時間制限のロスは最小限に止まったかに思えたが、ビールが来るのに更に5分ほどかかった。これはアンフェアだ。

前菜3種盛合せ、本日のカルパッチョ(タコ)

ようやくピッチャーに入ったビールが来たが、ジョッキを満たしていくと全員に行き渡らない。更にトラブル発生!グラスの一つが割れている。店員が10分だけ寛大だったら済んだのに、厳格すぎるとこちらも寛大ではなくなる。それでも人間は忘れることができる素晴らしい能力を持っている。すぐに仲間との会話に没頭した。

シーザーサラダ、鶏の半羽揚げ・ソーセージ&ポテト添え

それにしてもビールが飲めなくなったものだ。若い頃はビアガーデンに行ったら特大ジョッキを何度もお代わりし、トイレを往復してはまた飲んだものだ。ビールは早々にお役ゴメンとなり、みんなワインや日本酒に乗り換えた。

ミックスピザ、おつまみ塩焼きそば

料理は1時間を経過したところで全て出てきた。つまみなしの時間ができるのではないかと心配したが杞憂だった。女性もいるので大皿料理を食べ尽くすまでにはいかなかった。全員が50代で食が細くなったせいかもしれない。それでも、もし取り合いになるほど美味しい料理だったらどうなっていたかは分からない。さすが歴史あるライオングループだけある。上手に計算されている。

お腹が空いていたので、銀髪は割り当て分をしっかり食べた。赤ワインもたらふく飲んだのでちょっと酔っ払った。翌日用事があったので2次会は失礼した。電車に乗っている間に酔いがさめた。家に帰って晩ご飯の残り物でビールを飲んだ。早く帰ると飲んでしまう。どうせなら2次会で飲むべきだったかもしれない。


ブラッスリー銀座ライオン 渋谷マークシティ店
東京都渋谷区道玄坂1-12-5 渋谷マークシティウエスト4F
03-5428-3612
http://www.ginzalion.jp

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2009年09月13日

猿は木から落ちても猿だけど…

美味しいものを食べて腹一杯になれば喧嘩をする気もなくなる

ひじきから始まり、果物のデザートで終る全6皿。懐石料理にしてはどこか変だと思った人は観察力が鋭い。昨日は銀座スエヒロの350円弁当を紹介したが、今回はホテル ニューオータニの2万円弁当である。

まさか2万円と聞いて納得した人はいないだろう。正確に言うと会費が2万円で、弁当が実際のところいくらしたかは分からない。政治資金集めの朝食会に出された弁当だったわけだ。

衆院議員選挙前に企画されていたとはいえ、落選した議員の朝食会に200人以上が詰め掛けた。公示直前に立候補した実績も知名度もない相手に負けたとあっては励ましてあげたいと思うのが人情である。頭脳明晰で人柄も良いので投票してあげたかったが選挙区が違うので力になれず申し訳ない。

結果が出たからには、民主党に期待したいと思う。しかし過半数維持のために連立政権を組むのは、端から野党とは意見のすりあわせをするつもりがないように見えて心配になる。銀髪グルメ紀行を参考にしてもらい、美味しいものでも食べて仲良く日本再生に取り組んでもらいたいものだ。


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2009年09月12日

[スエヒロのお弁当]

350円のお弁当

9月7日の日本経済新聞「クイックサーベイ」はなかなか興味深い内容だった。職場で“お弁党”が急速に勢力を拡大、昼食は家から持参した弁当組が35%もいるとのこと。コンビニ弁当など買って食べる人を加えればなんと60%がお弁党らしい。

定食屋で食べて、喫茶店でコーヒーなんていうのは少数派になりつつある。弁当と飲料でワンコインが昼食の常識ということであれば、スエヒロは実に強い味方である。

随分前のことだが、日本橋三越を背に中央通りを渡って路地裏を歩いていたら弁当屋を見つけた。銀座スエヒロが350円の弁当を売っているとは知らなかった。
コンビニと比較するにはトンカツ弁当がいい。コンビニ弁当より安くて、味も悪くない。量が少なめのような気もするが、銀髪には腹八分目でちょうどいい。数日後、人気のドライカレー弁当を買ってみた。My唐辛子をかけて食べたらとても美味しくなった。

看板商品はすきやき弁当らしい。500円と聞いてすごく高く感じるから不思議だ。牛肉の下にうどんが敷いてあるものの、薄切り肉が9枚(多分)と豪華だ。

弁当に貼られた紙に製造者はスエヒロ食品株式会社と書いてある。かつては高級店として君臨したスエヒロと関係あるのだろうか。疑問に思って調べてみた。スエヒロの前身は1909年に大阪の堂島に開業した洋食屋「弘得社」で、1930年にビフテキのスエヒロとなる。その後、全国に関連会社が出来上がる。スエヒロ会の東京地区メンバーは株式会社スエヒロ、銀座4丁目のスエヒロ商事株式会社、新宿のスエヒロフーズ株式会社、そして銀座6丁目のスエヒロ食品会社である。

子供の頃、何かのお祝いで家族揃って新橋のスエヒロに行き、ステーキに感動したことが忘れられない。窓から見下ろすと、芸者さんを乗せた人力車がまさに動こうとしていた。スエヒロのファミリーレストランを見たときにも驚いたが、350円の弁当にはもっと驚いた。

350円弁当は世界同時不況の前からあり、最近始めたわけではないらしい。今度は先見性があったのかもしれない。350円の弁当にもスエヒロ100周年の誇りが反映されているに違いない。


スエヒロ弁当
東京都中央区日本橋室町1-10-9

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2009年09月11日

[マラコー](新宿歌舞伎町)

料理は美味しいけれど


丸の内のマンゴツリーのお陰で本物のタイ料理が食べたくなった。口コミで評判がいいマラコーを選んだ。しかし、あまりの落差に店の前で立ちすくんでしまった。テーブルは安っぽい場末のクラブ風で、ビニール地の椅子に男が一人寝そべってテレビを見ていた。天井にはミラーボールが回っている。店を間違ったと思って踵を返したが、思い直して店内に戻り若い女性に声をかけた。「ここはタイ料理の店ですよね?」

トムヤンクン

写真付きのメニューは立派なものだった。種類も豊富で、値段はちょっと高めに見える。店の格からして値段相応に量が多いと判断した。一品ずつ頼んだ方が無難だ。思ったとおり2,000円のトムヤンクンは4人で食べても何杯もお代わりできる。すこし控えめにしてもらったにもかかわらず、しっかり辛い。味はマンゴツリーよりずっと上だ。

タイ風さつま揚げ

だんだん事情が飲み込めてきた。12時を過ぎると歌舞伎町で働くタイ人女性たちの憩いの場になるのだろう。カラオケ代無料で歌って踊ってタイ料理を食べる。味が本場と変わらないのは当たり前だ。

なまず

店に慣れたらいたずら心が首をもたげてきた。連れに内緒でなまず料理を頼んだ。タイ産ならば大きくてただの白身にしか見えなかったかもしれないが、小さな台湾産だったので失敗した。なまずと目が合ったとか難癖をつけて食べようとしない。上手に料理されているのに、仕方なく銀髪が全部食べた。

汁ビーフン

〆は麺を食べることにした。連れは具をつまんだり、麺を引きずり出したり、入念にチェックしている。銀髪が信用できないらしい。一口食べて考えて、ようやく食べるスピードが増した。ホッとした表情を見て大いに笑った。干し海老とピーナツの風味が豊かで美味しかった。

食べ終わった9時前でも客は誰も来なかった。料理はとても美味かった。しかし、余程タイ通の日本人でなければ来たがらないだろう。女性を口説くために連れて行くのは止めた方がいい。これまでの努力が無駄になるかもしれない。

マラコー
東京都新宿区歌舞伎町2-39-12 AK会館ビルB1
03-3200-1759


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2009年09月10日

[菊地](渋谷・神泉)

美味くてリーズナブル


「迷惑かけたので行ってやって下さい」と友人に言われて出かけた。カウンターに座って、来たきっかけを伝えると「迷惑をかけたのはこちらの方ですよ」と店主の菊地さんが話し出す。酔っ払った客が友人の背広を間違えて帰ったため、すったもんだしたらしい。

ズワイガニ、まこがれいと白いか

丁寧な仕事ぶり、穏やかな口調から、迷惑を受けた友人が恐縮するような対応をした様子が窺える。迷惑の張本人は酔っ払いなのに非難めいたことは言わない。そんな店主が出す料理が不味いはずがない。たちまちファンになってしまった。

刺身盛合せ

中落ちの巻物、しまえび、つぶ貝、いしがき貝、かつお、まぐろ、あじ。産地や料理法を説明してくれるので、銀髪と話が弾む。全国各地から旬の素材を揃える。鹿児島県出水産のあじは料理人の取り合いになるほどの逸品である。一方で味が良ければ冷凍品や外国産でも排除しない。真摯な姿勢が好ましい。

帆立、さんま、そうはちかれい

「これ好きなんだよ!」帆立の磯辺焼きに噛み付くと、「それは良かったです」と菊地さんが笑う。酒の肴が次々と出て来ると、日本酒が進んでしまう。まあ、いいや!今日は飲んじゃおう。

漬物、新いか、こはだ

菊地に来る気になったのは友人の頼みもあったが、実は新いかを食べるのが目的だった。昼には日本橋のだぼ鯊で新いかの天ぷらを食べた。今年は新子を食べ損なったので、新いかはどうしても食べておきたかった。新いかも新子も食べられる期間が短いから高い。この日のこはだは成長したといっても新子より味は上かもしれない。

いわし、うに、あなご

いわしが美味いこと、美味いこと。三重産のいわしがこんなに美味しいとは思わなかった。うにを食べたところで「何か食べ残したものはありますか?」と聞いたら、あなごを食べてもらいたいと言う。すっかり忘れていた。確かにあなごを食べないで帰るわけにはいかない。あなごが苦手な連れも喜んで食べていた。

「そんなに高くないですよ」と友人が教えてくれたが、食べたものを考えると高そうだ。菊地さんによると彼は接待される側だったというから尚更不安になる。いい加減な奴だ。
それでも小上がりやカウンターに子供連れがいるのが頼もしい。勘定書きを見ると銀座と比べると遥かにリーズナブルなのに驚いた。

友人の背広のお陰でいい店を知ることが出来た。


すし 菊地
東京都渋谷区神泉町20-15 神泉モンド本社ビル1階
03-3780-3943

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2009年09月09日

[イル・リストランテ](銀座)

ブルガリのレストラン


ブランド品にはまったくと言っていいほど興味がない。しかし、食べ物となると話は違ってくる。カード会社から送られてきた冊子でブルガリのレストランがあることを知った。部下の女性たちを連れて行ったら、5,000円のランチでも喜ぶに違いない。

ビルの横にレストラン直通のエレベーターがある。店の前に置かれたメニューの写真を撮って中に入った。扉の外から中は見えなかったが、受付の女性からは銀髪が丸見えなのが分かった。彼女も銀髪も何事もなかったような顔をして対峙した。

各人の前に置かれた皿の上には持ち帰りが出来る立派なメニューが乗っている。店の前で恥をかく必要はなかった。みんなが揃ったところでカード会社予約特典のシャンパングラスを上げた。そのまま目を上に向けると棒高跳びのイシンバエワでも届かない高い天井に驚く。カーテンにつなぎ目があるのだろうかと目を凝らした。窓の反対側にはバーがあるようだ。

素晴らしく美味しいパンだ。食べ終えると新しいものを持って来てくれた。これだけで満足してしまいそうだ。コースの前に出てきたモッツァーレチーズのカプレーゼ。皿がゆがんでいるかと思ったが、みんなの皿も同じだった。さすがにお洒落である。フォーク&ナイフにもブルガリの文字が見える。

「和牛のカルパッチョ フレッシュハーブのミスティカンツァ」またも珍しいセッティングかなと思って他の人の皿と比べたら、単にチーズがこけているだけだった。緊張気味の部下たちの気持ちがほぐれた。「夏野菜と自家製水牛リコッタ アルフォルノのスパゲッティーニ」もとても美味しかった。さすがはブルガリ、スパゲティ用に出されたのはフォークのみ。スプーンを左手に持たせることはしない。

メインは「イサキと大麦の温製サラダ」と「ホロホロ鶏のロラティーナ ポテト タジャスカオリーブ 赤カボチャのクレーマ」のどちらかを選ぶ。銀髪はイサキを選んだので、隣のホロホロ鶏を少し分けてもらった。中心のフォアグラがいいアクセントになっている。鶏を頼んだ人が自分の選択を自慢したくなるのも無理はない。

「カカオのメリンガータ アーモンドのジェラート コーヒーのグラニテ」苦味の強いコーヒーのクラッシュアイスを甘い菓子にかけて食べる。これは見事な調和だった。クッキーが出てきて飲み物を待った。残念なことにカプチーノを頼んだ人のズボンは、若い店員によって汚された。ベテランスタッフたちの対応は素早かった。一流店らしからぬところと、さすがというところを見ることが出来た。

全ての食事が終了するまで約2時間。話をするためのみに口を動かす時間が約半分。ふんだんに時間を使うとお金持ちになったような気分だ。見渡すと殆どのテーブルの客たちはワインやシャンパンを飲んでいる。紳士淑女のテーブル脇にブランド品が誇らしげに鎮座する。1時を過ぎた頃にようやく満席に近づいた。

帰り専用エレベーターを降りると、売り場の中だった。恋人を連れていたら男は肝を冷やすことだろう。ガラスケースの前で立ち止まる部下たちを残して、銀髪はわき目もふらずに店を出た。

イル・リストランテ
東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー
03-6362-0555
http://www.bvlgarihotels.com/home.html?param_id_lingua=2

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2009年09月08日

[パッサテンポ](吉祥寺)

路地裏のビストロ


こんな路地に評判のビストロがあるのだろうか、不安な気持ちが頭をもたげた時、連れに呼び止められた。危なく通り過ぎてしまうところだった。店に入ってすぐが立ち飲みコーナーで、左側に小さなテーブルが並んでいた。古いレコードなどがクラシックな雰囲気を醸し出している。

メニューを2つ渡された。分厚く重いのが飲み物のメニューで、A4の紙一枚が料理である。小さなこだわりの店ではコース料理のみというところが少なくない。限られたアラカルトから選ぶより、シェフのお任せコースを頼むべきだったかもしれない。

本日のキッシュ、パンとバター

自家製パンが380円と別売りになっている。それ以上に発酵バターが200円と別売りになっているのが珍しい。普段はパンにバターをつけない銀髪だけに明朗会計と褒めてあげたいところだ。発酵バターと知って頼んでしまった。うまくはめられた感じだ。

単品ずつ頼んでいく銀髪に業を煮やしたのか「料理によっては時間がかかりますので、早めにオーダーしてください」と店の女性が言う。「どの料理?」と聞くと「岩中豚のソテーは出来上がりまで20分かかります」と言うので驚いた。焼く前に冷蔵庫から出して常温にする時間が必要と教えられて納得した。

飲み物のメニューが一冊しかなくて、我々を含めて3組の客の間を行き来する。ボトルで頼む客に女性店員が丁寧に説明している。グラスで飲む銀髪は遠慮がちにメニューをもらい、2杯目、3杯目のワインの名前を記憶した。

ミックスサラダ、岩中豚のパテ

海老、鶏、卵などが入ったボリュームたっぷりのサラダが来て、岩中豚のソテーを頼まなかった自分を褒めてあげた。代わりにパテを頼んだ。値段から予想した以上に大きなパテで腹一杯になった。食後酒を選ぶために再度メニューを求めるのも申し訳ないので店を変えることにした。

勘定をして振り向くと立ち飲みコーナーで一人グラスを傾ける若者が見えた。なかなか堂に入っている。この店を上手に楽しむ方法を教えてもらったような気がした。


パッサテンポ
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-27-101
0422-23-5125
http://www.passatempo.jp

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2009年09月07日

[COVO コーヴォ](代々木)

新鮮魚介と鎌倉有機野菜


予約の電話をしたら「牡蠣はお取り置きしますか?」と聞かれた。質問の意味が分からないまま「一応、取っておいてください」と告げて、店に向かった。テーブル席は満席で我々は入り口を背にしてカウンター席に座った。これは正解だった。狭い店内のあちこちから上がる紫煙から、もっとも離れることが出来た。店内を見回して初めてこの店がオイスターバーだと知った。

常時15種前後を用意してあるという牡蠣は殆ど売り切れ状態だった。取り置きしてもらっていた2種類と、追加で頼んだ女川産を除くと半端な数しか残っていない。半ダース以上食べるつもりなら、早めに来るか、あらかじめ予約しなければいけないようだ。電話の意味が分かった。

外に出て携帯電話で話していると、「君、生牡蠣は好きかい?ここ美味しいんだよ」と得意気に言いながら若い女性を連れた中年男性が店に入って行く。しかし、すぐに苦虫を噛み潰したような顔をして出てきた。カウンターには座れるはずだが、生牡蠣が売り切れと言われたのかもしれない。我々の後に1人で入って来た女性はカウンターで取り置きしていた牡蠣を4個食べただけで出て行った。常連さんたちの明暗が分かれた。

半分以上の客は銀髪たちよりちょっと前に着いたようだ。オーダーが集中して店員はてんてこまいしている。近くを通りかかった店員をつかまえてスペイン産サラミの盛合せ、ガーリックトースト、バケットを頼んだ。これなら待ち時間も我慢できる。

「あれは何ですか?」銀髪の目の先には美しい野菜サラダのようなものがある。バーニャカウダと聞いて即決した。色鮮やかな野菜の盛合せがやってきた。見たことのないものもある。

「隠元豆です」と言われて聞きなおした。黒く細長いものが隠元には見えない。聞きなおすとやはり「隠元です」と答える。首を傾げていると年配の女性がやってきた。「むらさきささげです。隠元の仲間です」と言い放つ。「これは?」「わさび菜です」「これは?」「角豆です」。「外国産?」「今朝、私が鎌倉で採ってきました」と言われて鎌倉有機野菜が自慢ということを思い出した。銀髪のお目当ても実は野菜だったのだ。

追加したバケットでバーニャカウダのソース皿をきれいにした。そのお陰でパスタやピザなどを頼む必要がなくなった。他の魚介料理も魅力的だが腹八分で店を出た方がよさそうだ。

「ばたばたしていてすみませんでした」と店員が謝ってきた。料理が運ばれるのが遅いのに業を煮やしたと思ったのかもしれない。「週の前半は空いてますから」と言われたが、予約は必須だろう。特に生牡蠣をたくさん食べたい人は要注意である。


海SEN倶楽部 コーヴォ
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-21-6 プラザF1ビル 1F
03-3356-5336
http://www.kaisen-covo.com

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2009年09月06日

[波留乃屋](赤坂)

不思議な蕎麦屋


ミャンマー料理シュエジンヨウで食べたのは2品だけなので、お腹が泣いていた。〆の代わりにラーメンかそばを食べようと思ったら、目の前に不思議な蕎麦屋があった。一見したところ飲み屋のようなので通り過ぎようとして、シュエジンヨウで缶ビール2本とそば焼酎1杯しか飲んでいないことを思い出した。

ワインを頼んだ。チャージ料200円を取られる代わりに揚げたそばの小さなサラダが出てきた。左隣に座っている3人の若者が食べるそばを見ることができたのは幸運だった。大盛りに見えたが普通盛りのようだ。迷わずスモールサイズを選んだ。

板そばスモール

のりごまそばスモール

そばが隠れるほどの海苔を連れに分けてあげた。連れはつけだれに鼻を寄せた後、箸の先にちょっとつけて味見している。そば通を自認しているだけあって、表情が曇っていくのが面白い。銀髪だって受け容れ難いが、相手の顔を見ると楽しくなってくるから不思議だ。

生卵をボッチャンして、ラー油の浮いたつゆにそばをドンブリコと浸して食べた。それを見て連れも何とか挑戦意欲を掻き立てられたようだ。何と言っても空腹という強い味方が後押ししてくれる。

右隣の2人の若者は飲み放題60分980円の有効活用に必死だ。時間切れを前にして追加注文をした。数分後、1人がまたも追加注文をすると「すいません、1時間過ぎてしまいました。30分500円で延長されますか?」と店員が言う。渋々OKすると「お連れ様はどうしますか」と聞かれ、これも断り切れないでいる。店員が姿を消すと「俺のはまだたくさん入っているんだぜ」「いいじゃないか、頼んじゃったんだから」と不機嫌そうな会話が聞こえてきた。

そばを食べ切るのも辛かったが、隣の会話が聞こえない振りをするのも辛かった。このタイプの店があちこちに出来ているという。いい経験をした。


波留乃屋
東京都港区赤坂2-15-12 パーク赤坂ビル1F
03-5229-0750

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2009年09月05日

[シュエジンヨウ](赤坂)

初めてのミャンマー料理


シュエジンヨウは赤坂の裏通りにあるビルの2階にある小さな店だった。店には男性4人と女性3人の2つのグループが居た。オーナーシェフの女性イーイーオンさん一人が、キッチンとテーブル席を忙しそうに往復していた。

メニューをもらってしばらく経っても注文を取りに来てくれない。注文するタイミングを見計らっていると、ミャンマービールを持ってやって来た。「いいですよね」と言われて素直に応じた。とりあえず、お奨めを2品注文して待った。瞬く間にビールを飲み干し、ミャンマー産のそば焼酎を追加した。

ラベットゥー(お茶の葉のサラダ)

店に入ってから20分ぐらい経っていただろうか、「空芯菜まだですか?」女性グループの一人が唐突にイーイーオンさんに問いかけた。「すいません、こちらに一品出してから作ります」と我々の方を見る。一番のお奨め料理ラベットゥーは美味しかったが、次の料理にありつくまで30分以上はかかりそうだ。

「ミネラルウォーターください」と女性客が言う。「すいません、1本しかなかったので」イーイーオンさんは申し訳なさそうだ。それを聞いて男性客が半分ほど残った大瓶のミネラルウォーターを女性客に譲った。どの客も苛立ちを表に出すことはない。イーイーオンさんが一生懸命なのは百も承知である。銀髪もみんなに倣った。

チェッウーチョー(ミャンマー風たまご焼き)

次の料理が来るまで30分と予想したが、我々の順番は一つ飛ばされてしまった。新たにカップルが入ってきたためだ。今度は我々がカップルに一品運ばれるのを待つことになった。

「ミャンマー人は知的で礼儀正しいので使いやすい」軍事政権誕生後、亡命して日本にやってきた知識人たちだからとか、信仰心の厚い仏教徒だからと飲食業を営む友人が随分前に教えてくれた。イーイーオンさんも、友人が言ったような生真面目で人柄がいい人のようだ。汗だくで動き回る彼女に文句を言える人が居るはずがない。しかし、更に30分以上待って3品目を食べる余裕はなかったので、勘定をしてもらった。他の客も競争相手が減って喜んでくれたに違いない。

たまたま店員が休んでしまった日だったのかもしれない。口コミ情報ではかなり評判のいい店である。イーイーオンさん、頑張ってね。


シュエジンヨウ
東京都港区赤坂2-15-16 ハイツサト赤坂2F
03-3583-9597

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2009年09月04日

[安居](下北沢)

和魂洋才


和洋折衷というとごちゃ混ぜのいかがわしい響があるので、当たらずとも遠からずで「和魂洋才の店」とでも言わせてもらおうか。日本人は外国の文化を取り入れるのが上手だ。特に食の世界ではそれが顕著で、料理人のアイデアに感服させられることが度々ある。

安居は下北沢で屈指の人気店らしい。若者の街・下北沢のイメージよりちょっと大人の雰囲気がある。予約なしで飛び込んだが運良く席が空いていた。2人で行ったのに4人席に導いてくれた。後から来る客を当てにして目の前の客をおろそかにする店が多い。安居の姿勢は料理にも反映されるに違いない。

お通し、お刺身5点盛り

いなだ、ひらめ、つぶ貝、ほたて、炙りさんま、北海道北見市西村商店より直送と胸を張るだけのことはある。炙りさんまのために添えられた肝醤油は、苦味が効いて大人の味だ。

ゆず入りざる豆腐、自家製炙りチャーシュー

安居は下北沢で最初に手作り豆腐を出した店とのこと。ヒマラヤ岩塩で食べるのは驚かないが、オリーブオイルは意外だった。
山形の蔵元から直送している日本酒など、酒にもこだわりが感じられる。もっとも、この冬一番の自信作という炙りチャーシューはホッピーでがつがつ食べた方が合うかもしれない。

豆乳のカニクリームコロッケ アメリカンソース添え

安居で一番人気というカニクリームコロッケ。豆乳を使っているものは最近では珍しくなくなってきたが、フランス料理定番のアメリカンソースとは面白い。残ったソースをフランスパンにつけて食べる。いいアイデアだ。一品得した気分になる。これはワインが欲しいところだ。

思ったより空いていると思った店内も、9時近くになって一杯になってきた。深夜1時までやっているのはやはり下北沢らしい。居酒屋といっても洋風の創作料理は女性たちにもうけるだろう。保守的なおじさんたちは「ポテトコロッケじゃないと邪道だ」「トンカツソースの方がいい」と言うかもしれない。食い物ぐらいちょっと冒険したらいい。楽しみはもっと広がるはずだ。

安居(あんご)
東京都世田谷区北沢2-11-2 パティオ下北沢2階
02-5430-6220

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2009年09月03日

[マンゴツリー](丸の内)

夜景が一番のご馳走かな


「今日はお任せしますね」タイに駐在経験があるFさんに言うと、メニューを開いて張り切っている。「ヤムウンセン、タイ風さつま揚げ、トムヤムクン…」と言った後はメニューを何度も何度もめくって言葉が出て来ない。創作料理が中心で、Fさんの思い出の品は殆どない。

ヤムウンセン、タイ風さつまあげ、ソムタム

「タイ料理はみんなで分けて食べてるのが楽しい」とマンゴーツリーを選んだのは銀髪だが、料理が出てきて絶句した。春雨サラダのヤムウンセンもグリーンパパイヤサラダのソムタムも5人で分けるには上品過ぎる量。一人一個と頼んだタイ風さつま揚げも実に可愛い。

トムヤムクン、新鮮魚介のタイバジル炒め

目の前で湯煙を上げるトムヤムクン鍋を期待したらがっかりする。各人に分けてくれたトムヤムクンを見て、その品の良さに嬉しいような悲しいような。今まで行ったタイ料理屋の中では群を抜いて高級な店で、タイ通のFさんは香菜と辛さで何とか郷愁を満たそうと努めている。

ガイヤーン(薩摩地鶏のハーブグリルもち米添え)、タイワイン

慣れ親しんだタイ料理ではないけれど、確かに味覚を研ぎ澄ませれば、どの料理にもタイ料理のエッセンスが隠されている。

店にとって望ましい食べ方とは、フランス料理のようにコースで食べることだろう。銀髪たちにとっては大衆居酒屋に行くつもりが、料亭に入ってしまったような気分だ。救いはフランス産ワインにこだわるKが、タイ産ワインを頼んだこと。これでかなり客単価を押し下げた。

店を出る頃にはほぼ満席になっていた。窓際に座るカップルたちにはロマンチックな夜景がいい思い出になるだろう。銀髪を除く老中年の4人の紳士たちはそれなりに満足してくれたようだ。

銀髪にとってはタイ人のおばさんたちが作る池袋や新宿のタイ料理の方がいい。香辛料も辛さもパンチが効いている。ただし、夜景もないし、ソムリエもいない。一緒に来てくれる美女もいないかもしれないが…

マンゴツリー
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング35F
03-5224-5489
http://www.mangotree.jp/

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2009年09月02日

[レストラン カナル](新宿)

小さなフランス家庭料理の店


狭い階段を下りると壁にびっしりとワインのラベルが貼ってある。最近見つけた店は思ったよりも歴史があるのかもしれない。店内のボードを見上げると15周年の感謝の言葉が書かれていた。週の初め&悪天候のせいか客は我々だけ。4人掛けのテーブルにゆったりと座り、メニューを開いた。

「お奨めはなんですか?」と女性店員に聞いた。「ずっとメニューにあるのは鴨の料理です。店名のカナルはフランス語で鴨のことなんですよ」と言われた。2品ある鴨料理の中から鴨のテリーヌを選んだ。これで一品決まり。もう一つは本日のシェフきまぐれサラダにした。

「メインはすずきのパイ包み焼き。もう一品頼んだ方がいいですか?」と助けを求めると、「お腹が空いているなら、3,000円のカナルディナーの方がお徳ですよ」と言う。オードブル、メイン、デザートをメニューから1品ずつ選ぶブリフィックスだが、多くの料理は割増料が必要なので5,000円程度になりそうだ。デザートを食べない銀髪にはアラカルトの方が徳だ。クスクス 仔羊とピリ辛ソーセージのソースを加えた。

「二人で分けて食べますから」と言ったにもかかわらず、料理は二品ずつ運ばれてきた。看板に「フランス人シェフの店」と書いてあったような気がしたが、日本人の若い女性が接客と料理を一人でこなしている。それでもサービスはフランス人の影響が強いのかもしれない。分け合って食べるのは日本人ぐらいのものだ。

グラスワインは赤白一種類ずつで、ハウスワインにしては800円は高そうに思えたが、なみなみと注いでくれるので文句はない。「フランス人のオーナーシェフは休みなの?」と聞いたら、今は日本人の奥様に店を任せて別の仕事をしているとのこと。その奥様も悪天候を理由に今日は休み。「休めばよかったのにと言われたんですけど、お客様が来てくれて嬉しいです」と笑った。

愛想のない女性と思っていたが、話し込んでいる我々に気を遣っていたようだ。「お店を開けていて良かったです」と笑顔を見せてくれたらこちらも嬉しくなる。食後の飲み物もサービスしてくれたのでゲストブックにしっかりと名前を書いてしまった。

目だないところにある小さなレストラン。こんなところにも頑張っている人が居る。

フランス家庭料理 レストラン カナル
東京都新宿区新宿5-17-6
03-3200-0706
http://canard.its.ac

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2009年09月01日

[印度園](大手町)

頑張れインド人と印度園


「中華料理もありますよ」と言われて驚いた。テーブルには確かに中華のメニューも置かれている。店は中で隣の中華料理屋と繋がっており、両店は同じ経営のようだ。「今日はインド料理を食べに来ましたから」と中華のメニューは横に置いた。

席を立ちキッチンを覗くとインド人の料理人がウインクをする。3人のインド人のうちタンドーリ釜を担当する彼が、ナンの生地をこねて釜の内壁に貼り付けるデモンストレーションをしてくれた。

パパダン

いつもビールのつまみに頼むパパダンの辛さは気合が入っていた。本格的なインド料理が作れる料理人である。中華を頼む必要はなさそうだ。

ナン、チーズ入りナン

先ほどデモンストレーションで焼いてくれたナンがやってきた。チーズ入りは酒の肴にちょうどいい。インド人か日本人店主か、どちらのアイデアだろうか?

タンドーリプロウン、チキン

香辛料タップリのタンドーリ料理。海老は思ったより小さく、それに反して鶏は大きい。いずれもパパダンと同様に辛くて銀髪好みに仕上がっている。これもなかなか気合が入っている。

サグマトン、チキンカシミールマサラ

これまでの料理とうって変わってカレーはマイルドになってしまった。ニューデリーやカルカッタ出身の料理人たちが納得しているとは思えない。辛いのが好きな日本人にとっても物足りない味になってしまった。オーダー時に辛さの好みを聞いたり、追加する香辛料をテーブルに用意して欲しいものだ。

夜、ゆっくり楽しみたい人には酒の肴になる料理がもう少し欲しい。ワインなどの種類も増やせないものだろうか。出来たばかりの店だから、みんなの意見でどんどん改善してくれると思う。店を仕切る砂子田さんの笑顔が安心感を与えてくれる。

心強いのは気合が入った料理を作る茶目っ気タップリのインドの料理人たちが居ること。便利ではあるけれど隣の中国料理の助けを借りるのは最後の最後。インド人たちに誇りを持って頑張ってもらいたいものだ。


印度園
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館・JAビルB1F
03-5220-2166

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