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2009年12月31日

2009年最後の一品

年越しそば

先日、長岡で小嶋屋のへぎそばを食べて感動した。へぎそばが100%そば粉で出来ているものとは知らなかった。東京のデパートでも売っていると分かったので年越しそばはへぎそばを家族に振る舞おうと日本橋三越に行った。

不況、不況と言ってもさすがに年末は財布の紐が緩むらしい。店内は大勢の客で押すな押すなの盛況だった。幸い年長の女性が多いので、混みあっていても見晴らしはいい。難なくそばの売り場に到達した。京都、出雲、信州などなど各地のそばが並んでいるが生そばは僅かだ。小嶋屋のへぎそばを見つけることはできたが、懸念したとおり乾麺だった。

国産原料100%使用というので「乾麺でもいいや」と思ったものの、念のため原材料をチェックした。目を疑った。強いショックを受けた。絶望感に襲われた。最初の文字は小麦粉、次にそば粉と書いてある。長岡で食べたへぎそばとは違い、そば粉の含有量は50%以下である。買うのを止めた。

へぎそばを食べさせる店が日本橋三越のすぐ近くにあることを思い出した。味比べでもするつもりで行ってみると年内は28日までの貼り紙。日本人は本当に働かなくなった。30~40年前までは毎年10%以上賃金は上昇していた。20%以上の年も何度かあった。労働より余暇を求めた欧米の真似をしているうちに韓国や中国が日本を追い抜いていく。

へぎそばを食べられない恨みを政府にぶつけながら立ち食いの六文そばに入った。勤勉なおじさんが営む店に期待を寄せたのだが、名物のゲソ天や大好きな春菊は売り切れと言う。そのことばは額面どおりには受け取れない。まだ11時を回ったばかりなのに、通常の半分も種類がないのだから。

仕方なくゴボウ天を乗せてもらった。これを食べたのは30日の昼だから、これが今年最後の食事というわけではない。年が変わる直前に我が家で年越しそばを食べる。100%そば粉のものを探しに行くつもりだ。見つからなければ最低でも原材料の最初にそば粉と書いてあるものを選びたい。

皆さんは丑年最後の食事に何を選ばれただろうか。来年も銀髪グルメ紀行をよろしくお願いします。よい年をお迎えください。

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2009年12月30日

[札幌 ドミニカ](京橋)

カレーシチューじゃないの?


「Get up ! Get up !」1960年代前半、日曜の朝は父に叩き起こされたものだ。カレーシチューが大きな寸胴鍋で煮立っている。大慌てで着替えてパン屋に走る。食パン1本を肩にかついで持ち帰り、父と兄二人と銀髪で競うように食べに食べた。1970年代に札幌で生まれたといわれるスープカレーよりずっと前のことである。どこが違うのだろうか。

札幌には現在100を超える専門店があるそうだ。ドミニカは2004年にオープンし、東京進出は2006年9月。近くを通る度に気にはなっていたものの、流行っているようには思えなかった。思い出して何気なく入ってみると意外なことに混んでいた。

小さなサラダを食べながらキッチンを覗くと実に面白い。たくさんのガスコンロがあり、オーダーが入ってから1食ずつ作り始める。スパイスを加えて思ったより長時間火にかける。肉類はあらかじめ煮込んでいるが、野菜類は素揚げする。我が家のカレーシチューとは作り方が違う。

オリジナル(チキン)、ライス普通盛り

先ずスープをオリジナルの黄色、とんこつベースの漆黒の黒、トマト酸味の情熱の赤の3種類から選ぶ。次に具をチキン、ポーク、トントロ、野菜、チキン野菜、魚フライの6種類から選ぶ。最後に10段階の辛さの選択。5番目までは無料で6番目から50円きざみで上がる。

とんこつ(ポーク)、トマト(野菜)

他のテーブルを見ると、もっとも人気があるのがチキンのようだ。骨付きだがスプーンで簡単に身が割れる。ポークは角煮風でちょっと固め。銀髪が一番気に入ったのはトマトベース。3種類の中では一番馴染みのないカレーが最も印象深かった。

一般的なカレーライスはまずスプーンにカレーを乗せてご飯に合わせるが、スープカレーの場合は逆。スープの量の方が多いので、辛いものが大好きな銀髪でも5番目で充分だった。

子供の頃の思い出に浸るつもりで入ったが、まったく別物だった。それでもやっぱり思い出す半世紀近く前の我が家。あの頃の父の齢を超えてしまったことに気付いて愕然とした。

スープカリー専門店 札幌 DOMINICA
東京都中央区京橋3-4-1 TM銀座ビル2F
03-3231-1347
http://www.s-curry-dominica.com

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2009年12月29日

[鮎正]④(新橋)

落ち着ける冬の鮎正


「カウンターがいいんだけどなー」と渋る銀髪に「近くなんだから、来たら?」と気軽に誘う。まるで電話の向こうから新橋駅にいる我々が見えるようだ。「そこまで言われたら仕方ない。行くよ」と答えた。場所が変わり新築した鮎正に行くのは初めてだ。

店は明るくなり、右側にあった小上がりがテーブル席になっているが、何となく懐かしくなるから不思議だ。カウンターの配置やキッチンの什器が一緒ということもあるが、主人、そのお姉さんを始め、スタッフの笑顔が変わらないのが一番の要因のようだ。

これまで来た3回はいつも鮎だった。メニューを一瞥しただけで「何を食べたらいいんですか?」とカウンターの向こうの主人に聞いた。「お任せ4品でどうですか?」と言う。断る理由はない。

先付けに続いてお造り(めじまぐろ、かわはぎ、ほうぼう、すみいか)4点盛り。日本酒はもちろん島根の純米酒。お代わりを頼もうとすると、主人がメニューに載ってない安いものを奨めてくれた。「酒で儲けようとは思っていませんから」とベテランの女性がフォローする。

全国的に名高い島根県浜田のカレイの一夜干。冬の鮎正名物の一つである。まとめ買いをして大きいものだけを仕入れ、店で干しなおしてから客に出すそうだ。浜田ではアジ、ノドグロ、カレイなどの最高のものに「どんちっち」というブランド名を冠す。主人がカウンターから出て来て魚談義が始まった。

湯葉巻き揚げ、椀物など、料理の説明を受ける。相変わらず凝っていて妥協を許さない。「弟も昔は痩せていて可愛かったのよ」と今度はお姉さんが我々の相手をしてくれる。鮎のシーズンは満員の客で大忙しだが、冬の鮎正は時間がゆっくり流れるようで楽しい。

もっと色んなものを食べたいが、先付けと4品でかなり腹は膨らんだ。迷いに迷った末に酒のつまみに適当な赤なまこと鯖のへしこを頼んだ。へしこは最初は生のままで、次に少し炙ってもらった。ノルウェー産の鯖を使ったへしこが一般的になってしまったが、鮎正のものは特注で長崎産の鯖で作ってもらっているそうだ。

カウンターには常連さんが二人と一人でのんびり飲んでいる。我々が終っても予約客は登場しない。鮎の時期とそれ以外とでは鮎正の雰囲気はまったく違う。それでも主人の料理に対するこだわり、スタッフの心のこもった接客は変わらない。居心地満点の冬の鮎正だった。

鮎正
東京都港区新橋4-21-14
03-3431-7448

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2009年12月28日

[和味 りん]③(新宿)

直送で鮮


今年も初めて行った店が300軒ほどある。しかし自らの意思で複数回行った店は僅かしかない。銀座の座屋、三軒茶屋のどぶろく一心、そして和味りんなど。この3店に共通するキーワードは産地直送である。

クリスマス特別料金で稼ごうとするフレンチやイタリアンを避ける懸命な客たちで店は混みあっていた。「今日は暇だと思ったんですがね」と店主が苦笑いする。「俺はキリスト教じゃないからね」と銀髪も笑う。サンタクロースを待つ齢ではなく、サンタクロースになる必要もなくなった。

いつものことではあるけれど、今回はいつも以上にメニューを見る必要はなかった。目の前を通り過ぎる料理、まな板を上り下りする魚たち、それらを見れば頼むものは決まってくる。見えない素材はお奨めに従う。「いい、鮟鱇が入ってますよ。肝はどうですか?」「いいよ、それもらおうか」

「あのマグロは美味そうだね。寒ブリもまぜてもらおうか」注文どおりの刺身盛合せがやってきた。思ったとおり凄まじく美味い。一緒に乗ってきたサワラの焼き霜、肝を抱いたカワハギもいい。脂が乗った魚ばかりでわさびが足りない

この日のハイライトはキンキ。店主が丸々と太った10匹ぐらいのキンキをまな板に乗せた。見た目の良さそうなものを数匹選び、次に両手で重さを比べながら選別している。銀髪たちにいいものを食べさせようという気持ちが伝わってきて嬉しい。

身が厚いキンキは遠火で時間をかけて焼かれる。待っている間に自家製のからすみを出してくれた。「もう少し熟成した方が美味しいんですが」と控えめだ。

立派なキンキの塩焼きがやってきた。「高級魚だよね」ちょっと財布の心配をすると「根室から直送してますから他より安く出せるんですよ」と安心させてくれる。りんで出されたものは大間のマグロ、氷見のブリ、茨城のアンコウ、岡山のサワラなどブランド化したものではない。しかし懇意にしている全国の業者から高品質のものを直送してもらっているからどれも美味い。直送に加え、ブランド料が上乗せされていないのでリーズナブルに食べられる。

ブランド服飾品には無関心の銀髪だが、食べ物にはブランド志向を消せないでいた。そろそろ自分の舌を信じてもいいのかもしれない。りんが教えてくれた。


和味 りん
東京都新宿区新宿5-17-6 地下1階
03-3205-7252
http://www.wami-rin.com


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2009年12月27日

[音羽](大阪、守口市)

関西風(?)はなかなかいい


11時40分、店の前で店主らしき人が煙草をふかしていた。「開いてますか?」と言いながら入ると女性店員が迎えてくれた。店内に客は一人もいない。煙草の人が我々を追いかけるように店に入り、追い越して調理場に消えた。

「何を食べたらいいですか?」と店員に聞くと「生地は一緒なので中に何を入れるかですね」と曖昧な返事。「豚玉でしょ」と言う部下に従った。焼きそばが入ったモダン焼きはエビを選んだ。「定食にもできますよ」と言うので笑った。やっぱり大阪ではお好み焼きはごはんと一緒に食べるんだ。

定食は断り、ごはんの代わりにビールを頼んだ。調理場で完成した料理が熱くなったテーブルの鉄板の上に置かれた。からしとマヨネーズはあらかじめつけることをせず、別に持って来てもらった。下戸の部下に2種類のお好み焼きを多めに切り分けた。

まず豚玉を口にした。「ウン、おいしいじゃないか」と言うと部下も同意した。「前に他の店で食べたら凄く不味かったんですよ」と続ける。トラウマから大阪では知らないお好み焼き屋に入らなくなったと言う。モダン焼きを食べた。「オヤッ?」豚玉よりも美味い。

関西風でも広島風でも焼そば入りのお好み焼きは何度も食べたが、どれも生地と麺が喧嘩していた。この店のモダン焼きは見事に合体していて実に美味い。そばを卵でコーティングしているとのことだが、目の前で作っていないので詳細はわからない。

12時を過ぎたところで男女3~4人のグループが続々と入って来た。僅か数分ですべてのテーブルは埋ってしまい、入りきれない客が入り口で踵を返した。「勘定をして!」口をモグモグしながら店員に告げた。タイミングよく入って来たグループが笑顔を見せた。

外に出て店の写真を撮った。看板に「関西風」の文字。大阪で関西風を謳うのはどうしてだろうかと気になった。大阪でも広島風が関西風を凌駕しているのだろうか。「美味しかったですね」と関西風お好み焼きに対する部下の評価も一変したようだ。メデタシ、メデタシ。

音羽
大阪府守口市松町2-12
06-6998-4330

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2009年12月26日

[小嶋屋](長岡駅)

美味しいへぎそば


「運転手さん、近くで美味しい食べ物屋さんある?」銀髪の質問に「駅からはちょっと離れますが小嶋屋ですかね」と即答された。すると隣に座っている部下が「駅の中にもありますよね」と言う。運転手さんはバツが悪そうに同意した。

駅に近くなると名誉挽回のつもりか「新潟の魚を出す店もありますよ」と運転手さんは他の店をいくつか紹介してくれる。「どうしますか?」と聞く部下に「へぎそばに行こう」と答えた。東京では何度も食べたことがあるへぎそばだが、新潟では初体験なのである。

メニューの一番上にあるへぎそばを頼んだ。これに付いた小鉢は大したものではないが銀髪を誘惑するには充分だった。「エビスビール下さい」2人で1本なら午後のアポにも影響することはない。オーストラリア駐在のときは当たり前だったことが、日本では特別なことになる。

「もしかしたら今までで一番美味しいかもしれない」一口食べて部下に言った。自分の味覚に自信がない情けない銀髪である「国内産石臼挽きそば粉100%使用 国内産布海苔でつないだ爽やかなのど越しの自家製そばです」勘定場で手にしたパンフレットを見て納得した。間違いなくこれまで食べたへぎそばで一番美味しい。自分の味覚だけでは自信がなかったものが、説明書きでなんとか裏付けられた。まったくもって情けない。

パンフレットを読み進み「おやっ?」と思った。屋号の前に「越後長岡」と書いてある。へぎそばと言えば十日町である。ホームページのアドレスにもnagaokaの文字。調べてみると十日町に小嶋屋総本店があることを知った。長岡小嶋屋が創業40年余りに対して小嶋屋総本店は90年。どうやらこちらが本家本元のようだ。

新潟県内にある総本店系列の店は8店舗で、長岡小嶋屋など別系列は初代の子供たちが独立して営んでいるそうだ。いがみ合っているようには見えないが、東京の府中、立川などに店を出している長岡小嶋屋の方が商売は上手のようだ。

残念ながら小嶋屋総本店の通販サイトでは年内の商品販売を終了している。長岡小嶋屋の商品は各地の有名デパートで買える。今年の年越しそばは長岡小嶋屋のへぎそばに決めた。

小嶋屋 CoCoLo長岡店(長岡駅ビル)
http://www.nagaokakojimaya.com

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2009年12月25日

[とん豚テジ](新宿歌舞伎町)

優しい韓国人


テレビなどで美味しい肉料理の店と紹介されたことも知らないで、なんとなく良さそうに見えたので飛び込んだ。テーブル席の間を抜けて右側にある座敷席の奥に案内された。左隣で4人が盛り上がっており、座席の間に座った店員が一生懸命調理している。彼を突き飛ばすか、テーブルを跨ぐかしなければ席に辿り着けない。やっと座って他の店員を待ったが来る気配がない。諦めて立ち上がった。

靴を履くと店員が飛んできた。「足が悪いので座敷はきついんだ」と掘り炬燵式でないことを理由に店を出ることを告げると、テーブル席に移ってはどうかと言う。言い訳がきかなくなったので留まる事にした。テーブル席は快適そうだ。

「あなたは韓国の人?」と聞いたら店の経営者も含めて全員が韓国人と言う。お通しが並んだ。キムチはともかく沢庵とキンピラは美味しくない。「ここで作ったの?」と聞いたら買ってきたものとのこと。丁寧な日本語は見事なものだが、妙なところで日本人に迎合する必要はないだろう。

お奨めはカンナ三段バラ肉の鉄板焼き。肉を見てようやくカンナの意味が分かった。カンナで削ったような薄い肉を上手に盛り付けている。冷凍肉であることは明らかだが、見栄えはする。

店員が斜めになった鉄板に肉をきれいに並べて、その上にレタスを乗せた。下の方にはキムチが溶けた肉の脂を待ち構える。テーブル席の方が店員もやりやすいだろう。店員が一旦離れても呼び戻しやすい。裏返した肉も焦げ目がついたところで再び手を上げた。寄って来た店員が食べ方の説明をしてくれた。わかめのように見えたのは行者にんにくだった。

店員が三種類の食べ方を説明してくれる。いなくなれば好き勝手に食べればいい。なかなか美味しい。半分ほど食べたところで手を上げた。キッチンと客席を往復する店員がすぐつかまる。席を替わって本当に良かった。カンナの面影はなく、皿の上でくたびれ果てた格好の肉を店員が鉄板に乗せてくれる。ついでに野いちごのマッコリを頼んであげた。手ぶらで帰らせるのは申し訳ない。

「量が多いので、カンナ三段バラを食べた後で追加注文したらいいですよ」とのアドバイスは良心的だった。ビールとマッコリを数杯飲めば腹も脳もちょうどいい。甘かったけれど野いちごのマッコリも面白かった。

とん豚テジ
東京都新宿区歌舞伎町2-22-8 第八金嶋ビル 1F
03-5292-1391

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2009年12月24日

[牛兵衛](渋谷)

リーズナブルに最高級の和牛


「一頭買いの店!」という言葉は焼肉店の殺し文句だ。高級牛肉を割安で食べられるイメージがビンと来る。「最高級A5ランクのみを使う焼肉店」と言われればよろよろっと階段を降りてしまっても納得してもらえるだろう。

それでも値段は気になる。ドアを開けて店内を見回してちょっと安心した。ごく普通の焼肉屋さんに見える。店員もアルバイト風。案内された席の隣には若い女性が二人、足を組んで食べていた。不安は吹っ飛んだ。

お通し300円、キムチ390円は良心的だろう。二人で色んな部位を食べたいと思ったら、ちゃんとメニューにあった。メニューの写真と比べると実物もそん色ないものだった。包み野菜に巻いてちょうどいいぐらいの脂の乗り方である。

ホルモンの盛合せもある。こちらはメニューの写真より実物の方が立派。コリコリタンの食感が面白かった。高額なものをたくさん食べたらお財布が泣くことになるが、色んな部位を少しずつ食べた方が美味しく楽しい。

極上一頭盛合せに入っていなかったタンを最後に食べよう。清水の舞台から飛び降りるつもりで幻の極上タン(数量限定)2280円を頼んだ。少しぐらい見栄を張ってみようと思ったが、幸か不幸かこの日は入荷していなかった。そこで薄切り上タン塩1,200円にした。

貧弱なタンを予想したが意外と立派。充分美味しく食べられた。「山形牛一頭買い」の看板に偽りなしと言ってもいいだろう。小さな店で一頭買いが出来るの?という疑問の答えはホームページにあった。グループに18店の肉料理屋を抱えている。

隣席の女性たちの食欲は凄かった。焼肉と一緒にご飯、それが終ればチヂミ。割安に腹を膨らませる方法を知っている。彼女らにとって草食男子は不要に違いない。もつ焼き屋も最近では女性同士の客で賑わっている。不況でエスコートするお金もない男は、女性とはますます縁遠くなってしまうのかな。

牛兵衛 渋谷店
東京都渋谷区道玄坂2-25-5 B1F
03-3770-6060
http://www.royal-shoji.co.jp/food/

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2009年12月23日

[大平庵本店](長野)

老舗のサービス


「有名な店で凄く混んでいるんですよ」と言われたら、12時前とはいえ自然と早足になる。店に飛び込んで拍子抜けした。客は誰もいないし、暖房も入れたばかりのようで寒々としている。席につくと店のおばさんが言った。「お茶はセルフサービスになっています」

銀座6丁目のラーメン屋・富松を思い出した。客はまばらでカウンター内の店員は手持ち無沙汰にもかかわらず、ビールを頼むとカウンターのこちら側にある冷蔵庫から自分で出してくれと言う。たまにこんな店に出くわすとムッとする。時と場合によっては客を煩わせるルールを侵してもいいと思うが、頭が固い。

ビールを頼んだら大瓶だった。老舗料理屋の中には中瓶や小瓶が発売されるようになっても大瓶にこだわるところがある。こんな頑固さなら歓迎である。これだけで機嫌が良くなる。コップ2つとそばを伸ばして揚げたようなつまみを持って来てくれたおばさんがとても優しくなったような気がするから不思議だ。

12時を過ぎた頃から客が入りだした。常連さんはすぐに給茶器に向う。よく躾けられている。後ろに座った老夫婦はおばさんから店のシステムの説明を受けたが、席を立つ気配がない。あれこれ観察しているうちに目の前にそばが来た。

「地元のHさんはそばに唐辛子をかけるんですよ」と部下が言う。刺身にわさびを乗せて醤油につけるのと同じ考え方。長野名物八幡屋の唐辛子を味わうにはいい手法だ。これは真似しないわけにはいかない。

激辛唐辛子でなくてもいつもより辛く感じる。しかし、そばつゆをたっぷりつけるのが好きな人にとってはあまり意味がないようだ。試しにやってみたら、唐辛子はつゆに浮遊した。唐辛子だけ先に舌に乗せて、それからそばを食べるのが一番かもしれない。やってみる気はしないけど。

帰って大平庵のことを調べてみた。大正3年(1914年)創業の老舗である。現在地への移転が昭和2年というから建物自体も重みがある。手打ちのそばも悪くない。それにしてもあの老夫婦はお茶を飲めたのだろうか。確認しそこなって妙に気になる。


大平庵本店
長野県長野市南石堂1248
026-226-6579
http://www.taiheian.com/

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2009年12月22日

[とことん倶楽部](東京駅)

リーズナブルに楽しく


「東京駅までたった30分じゃないか。出ておいでよ」自宅近くで仕事をしているからと渋る次兄を説得した。しつこく誘う理由を明かすわけにはいかない。とにかく次兄が来なければ話にならないのである。努力の甲斐あって、東京駅八重洲中央口で兄弟3人が揃った。

ときどき神の存在を信じる気になる。ほぼ満員に見えた店内左奥に3人用のテーブルが空いていた。座るなり長兄と相談して買ったプレゼントを取り出した。1週間後に還暦を迎える次兄に手渡す。生ビールがやってきた。おめでとうの言葉と共にジョッキをぶつけ合う。

テーブルに置いてあったピーナツを食べながらメニューを見る。「兄貴、適当に頼んでよ」促された長兄がオーダーを始めると、残りの二人が口を挟む。「モツ鍋のお味は何にしますか?」と聞かれて意見がまとまらなければ「両方頼んじゃえ!」となる。

「オウ!レバカツ美味いな!」長兄が感嘆の声を上げる。「レバーが美味しければ合格だよ!」と店を選んだ銀髪が自慢する。「美味い、美味い」髭をひきつかせながら次兄が同意する。焼き物だって悪くない。

女性店員を呼んで「椎茸!」と長兄が注文する。「しろ!」と銀髪が続く。「兄貴の奢りだからバンバン頼もうぜ」と次兄を煽るが遠慮している。「じゃあ、酢モツ」と銀髪が結着する。

再び女性店員を呼んで頼もうとしたら「俺はもう肉はいいよ」と長兄が情けないことを言う。1本減らしてみんなで分けることにした。野菜は大丈夫のようなのでしし唐は一人一本。「いやー、本当に食べられなくなったよ」と嘆く62歳の長兄に比べれば、次兄はまだ若々しい。それでも「俺の還暦は祝ってもらえるんだろうね」と54歳の銀髪が口を尖らせる。

焼酎のボトルが空っぽになり、口直しに頼んだ2本の瓶ビールも飲み干した。「次、行こうぜ!」銀髪の掛け声でみんな席を立った。

口々に「3兄弟なんだよ!」とママに言うと、疑わしそうな目つき。みんな名刺を見せる。「たまたま同じ苗字なんじゃないの?」と言われて懸命に分からせようとする。どこに行ってもいつも店の人たちはこんなやりとりにつき合わされる。

「誰が一番もてるの?」と聞かれて真っ先に手を上げるのは長兄だ。「オヤジが生きてたらなあ」と誰ともなくつぶやくと一瞬、間が空く。オヤジが生きていたら、そう、きっと長兄より先に手を上げて自慢していたことだろう。そう、そう、オヤジが生きていたら、3人の肩を抱き、大きく笑ったことだろう。そう、そう、そうだよな…


とことん倶楽部
東京都千代田区丸の内1-9-1 東京駅八重洲北口1階 キッチンストリート内
03-6267-2904

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2009年12月21日

[蛍屋](金沢)

古都、金沢


金沢には10回以上来たと思う。いつも仕事と会食だけで観光などしたことがない。タクシーを降りて呆然とした。京都祇園を思わせる街並みに灯りが点々と続く。暗闇が早く訪れる冬で良かった。初めて見る光景はことのほか美しい。

我々の他は誰も歩いていない。早い時間だったためか三味線や太鼓の音は聞こえなかった。蛍屋に上がると我々のために広い部屋が用意されていた。「芸妓さんはアレンジしているんだろうな」部下に意地悪を言うと、ゆがんだ笑顔を見せて首を振った。

料亭らしく、どの料理も美しい。居酒屋などでも食べられるセイコ蟹(ズワイガニの雌)も、ここでは美しく盛られて幸せそうだ。北陸の海の幸、加賀野菜、加賀の酒、ご機嫌である。

「アルバイトやろ?」地元の人が店の女性に聞くと「社員です」ときっぱり。銀髪も少し驚いたが蛍屋が浅田屋の系列と知って納得。1659年創業という浅田屋は金沢市内を中心に旅館、ホテル、料亭、レストラン、居酒屋などを経営する大企業。赤坂にも関連の店がある。

「芸妓さんを頼んだらいくらかかるの?」高額のイメージがあるので経験がない人にとっては値段を聞くのも憚られる。8人で行けばお料理10品 + 飲物 + 芸妓2名(120分)で一人19,000円というコースもあり、人数、内容については要相談。意外と気軽に三味線・太鼓で本格的なお茶屋遊びが体験できそうだ。

蟹、寒ぶり、伊勢海老、河豚などなど。お腹一杯食べて飲んで、一人13,000円程度だった。最後のデザートも立派だ。東京と比べるとどこに行っても割安に感じてしまう。

「さすが小京都と言われるだけありますね」とタクシーの運転手さんに言ったら不満そう。誇り高き金沢市民によると、もはや金沢は小京都と言わないそうだ。ズワイガニも加能蟹と名付けて独自性を出している。昔から加賀友禅、金箔など金沢の名産品も多いが何故か影が薄い。ひがし茶屋街を見て、金沢を応援したくなった。


蛍屋
石川県金沢市東山1-13-24
076-251-8585
http://www.asadaya.co.jp/hotaruya/

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2009年12月20日

[西町大喜 二口店](富山)

再びの富山ブラック


「アレッ?この辺りだったんですが…」タクシーの運転手さんが車を停めてキョロキョロしている。見つけたのは銀髪だった。目立たない小さな店はドアを閉ざしてさらに目立たなくなっている。タクシーを飛ばしてラーメン屋に到着して休みだったのは何回目だろう。

途方に暮れながらも壁に張り紙を見つけた。支店は営業しているらしい。駅前店には行ったことがあるので二口店に向った。「こちらも休みですね」店に着いて運転手がつぶやく。「ここは二口店なの?根塚店って書いてあるよ」運転手の間違いだった。無線で連絡を取りながら、ようやく西口店に辿り着いた。

本店や駅前店とは違って二口店は立派な店だ。広い店内は客で一杯。カウンターに座れたのは幸運だった。料理人の動きを見ているだけで退屈しない。ラーメンは一度に作れる数が限られている。3順目に入って部下に言った。「今度は俺たちの番みたいだぜ!」

駅前店で食べて以来、今度はライスと生卵を頼むと決めていた。醤油辛く味が濃いブラックラーメンはご飯のおかずとして生まれたという。カウンターで観察していると、半分以上の客がご飯を頼んでいる。生卵をラーメンに入れる客はあまりいない。料理人が2つの丼に生卵を入れ、2つの茶碗にごはんをよそった。我々のものに間違いない。

オーダーするときに「生卵はラーメンに入れますか?」と聞かれた意味が分からなかったが、ご飯にかけて食べる人もいると後で知った。銀髪は生卵を真っ黒なスープに混ぜ合わせた。徳島ラーメンを思い出す。

二度目になると、驚きは半減どころか拍子抜けした。生卵のお陰かそれほど醤油辛く感じない。ご飯がよく合うのは予想通りだった。「思ったほど辛くありませんね」と部下も銀髪と同様な感想を述べた。二人で丼をかかえてスープをすすってみた。今度は「やっぱりしょっぱいですね」これも銀髪と意見が一致した。

タクシーが間違えた根塚店は西町大喜本店とは別系列だった。ブラックラーメンの産みの親からのれん分けされた正統性を主張しているそうだ。どこでも本家争いがあるものだ。客にとっては美味しければどちらでも構わない。一生懸命味を競ってもらいたいものだ。

念願のブラックラーメン+ライス+生卵を食することができた。しかし、ライスに生卵をかける人のことが気になって仕方がない。スープをかけて玉子かけごはんにするのだろうか。なかなかブラックラーメンから卒業できない。

西町大喜 二口店
富山県富山市根塚町3-9-10
076-420-2644

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2009年12月19日

元祖 天むす

津名物?それとも名古屋?


津駅周辺でランチをすることになった。三重県には伊勢えびや松阪牛など高級料理をイメージする素材があるが、津となるとピンと来るものがない。仕方なく駅前のビルの中にある全国チェーン店で津とは直接結びつかない料理を食べて駅に向った。

切符を買い、改札を抜けたところで天むすの売店に気がついた。前に来たときも首を傾げたことを思い出した。「どうして名古屋名物を津で売っているのだろうか?」
腹一杯のお腹をさすって逡巡した。「食べ切れなきゃ、捨てればいいや」と自分を納得させた。

名古屋行きの特急に乗り込みビニール袋から天むすの包みを取り出した。包装紙の中には見慣れた文字「めいふつ 天むす 千寿」に加えて「元祖」の文字が輝く。竹皮を開くとアルミホイル、これを開くと一口で食べるには微妙な大きさのおむすびが5個ときゃらふ(ふきの佃煮)。名古屋の天むすは海老の天ぷらがおむすびから顔を出していたはず。

渋る部下に1個あげた。いや、食べてもらった。名古屋の天むすと同様にほんわりと温かい。中には小さな海老の天ぷら。名古屋の天むすと比較したいところだが、あやふやになっている味の記憶では公正さに欠ける。「腹一杯なのに食べられたので、美味しいんじゃないですか」と部下は言う。残すつもりが銀髪も4個すべてを食べ切った。天ぷらだけでなく、ご飯や海苔も美味しかったからだ。

初代が発明したエピソードが一緒なので、津の千寿が発祥で元祖なのは間違いないようだ。名古屋名物味噌煮込みうどんの山本屋本店と総本家のように、全国では正統性を巡っていがみ合っている店が多い。3代目が小さな店を細々とやっている津の千寿に対して、名古屋の千寿は支店を出すなど隆盛で元祖を凌駕している。しかし、ホームページを見ても、両者が喧嘩しているようには見えない。

名古屋駅で降りたら、改札近くの売店で天むすが売られていた。対抗心をむき出しにしないのがなかなか好ましい津の千寿である。

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2009年12月18日

[オーキッドルーム ランの館](名古屋)

花屋のレストラン


「ランの館を予約しました。ランは花のランです」と言うだけで、住所も電話番号も教えてくれなかった。インターネットで検索するとランの花を中心としたミニテーマパークとある。こんなところに男同士で行くような料理屋があるのか不思議に思った。念のため住所を控えてタクシーに乗ったが必要はなかった。

「入場料?」ラーメン博物館のようにレストランに入るのに入場料が必要なのだろうか。券を買わずに建物の中を見回した。左手の階段を上ると階上に洒落たレストランがあるようだ。そこに銀髪を待つ男たちが居た。

既に4,200円のコースが注文されていた。本日のアミューズに続く前菜、パスタ、メイン、デザートをメニューの中から選ぶブリフィックススタイル。他のみんなは素直に食べたい物を選ぶが、銀髪は地元の素材にこだわった。フレッシュフォアグラの自家製スモークと知多産イチジクアカシアの蜂蜜はフォアグラが小さくて微笑ましい。

名古屋コーチンと九条葱のクリームソースはいい出来だった。他の人のパスタやリゾットも食べさせてもらったがなかなか美味しかった。ランチが人気の店という評判も頷ける出来だった。ビールを飲んだ後に白ワインが1本空いた。再び白か、今度は赤か思案していると他の人は焼酎を飲むと言う。半信半疑で店員に聞くと笑みを浮かべて頷いた。

メインはカナダ産オマール海老とブールコンポーゼのグラティネ・フィーヌゼルブブールブランソース。残念ながらメイン料理の中には地元の素材を使ったものはなかった。出て来た料理はちょっとイメージが違った。オマール海老は大きなハサミが特徴だがそれがない。「ハサミはどこに行ったの?」と聞いたら、身の部分だけ仕入れているとのこと。もちろん活き海老ではない。4,200円のコースでは贅沢は言えない。

デザートはビターチョコレートのフラン・カシスのソルベとへーゼルナッツのクロッカンを選んだ。甘いものが好きではない銀髪にとってコース料理はデザートが余計だ。それでも半分食べた。

トイレに行って席に戻る際、窓の外のベランダを震えながら歩いた。庭園全体が見渡せる。オーキッドルームから入場料が必要な店内のランもしっかり見える。ちょっと得した気分になった。

クリスマスには人気のレストランだろうが料金も特別メニューとなる。クリスマスを避ければ、手頃な値段で食べられるいいレストランだ。焼酎も飲める気軽なところも悪くない。焼酎を飲みに来る人はいないだろうけれど。

オーキッドルーム
愛知県名古屋市中区大須4-4-1 ランの館2F
052-269-1919
http://www.rannoyakata.net/

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2009年12月17日

[農家の台所](新宿三丁目)

この店はなかなかいい


数週間前、飛び込みで行ったら断られたので今度は予約の電話をした。入店時間は1時間毎になっているようだ。エレベーターを降りると左の入り口に案内された。野菜売り場を通ってレストランに入るシステム。思ったとおり女性が多い。銀髪が最年長かと思ったら、奥の座敷におばさまが4人居た。

「初めてですか?」大学生と思われる女性店員が聞く。3,800円、4,800円、5,800円の3コースがあり、それぞれに野菜、魚、肉の比率が4:3:3、6:2:2、10:0:0の3種類あると説明してくれた。銀髪には5,800円の10:0:0、連れには4,800円の4:3:3を選んだ。分け合って食べれば10種類以上の料理が楽しめる。

前菜代わりに食べるのはサラダバーで。好きなものを何度でも取りに行ける。籠に入っているものを取ろうとすると、野菜を切っている女性が生食用の春菊などを盛ってくれた。お代わりを食べ終わったところでコース料理が始まった。下の写真左側が10:0:0、右が4:3:3の料理である。


野菜だけのコースには野菜の天ぷら、コロッケと揚げ物が2種類ある。以前、似たような店で生野菜ばかり食べて閉口したことがある。途中で揚げ物を食べた時の幸福感が忘れられない。農家の台所はよく考えている。我々を担当してくれた女性をつかまえて「美味しいね」と言うと、満面に笑みを浮かべる。アルバイトが料理に自信を持ち、楽しく働いている店が悪いはずがない。


「私の方が美味しいですね」野菜、魚、肉を4:3:3の割合にしたコースはバランスが良く、懐石料理に通じるものがあるので食べやすい。大きな黒い塊がデンと乗っかった銀髪のメインディッシュを見て、連れは勝利を確信したかのようだ。「勝負は下駄を履くまで分からないよ。なぜ野菜尽くしの方が高いか考えなきゃ」と銀髪は余裕である。

銀髪の料理を一口食べて連れが目を剥いた。黒色をしたキャベツは見た目は悪いが、口に含むとトリュフの濃厚な香りが広がる。一口でいいと言ったくせに、半分近く強奪された。

最後はムラサキ米で満腹になった。それでも身体は軽く感じるから不思議だ。翌朝、しっかりお腹が空いて、朝ごはんが美味しかった。しかし空腹感がおさまったのは昼にラーメンを食べた後。焼肉屋が恋しくなった。


農家の台所
東京都新宿区新宿3-5-3 高山ランド会館4F
03-3226-4831
http://www.noukanodaidokoro.com

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2009年12月16日

[やまと 銀座2丁目店](銀座)

豊富な豚料理


直営牧場で育てたやまと豚を提供するのが直営レストランのやまと。
銀座8丁目店が良かったので、今度は銀座2丁目店に社員を引き連れて行った。座敷には10人程度が座れる大テーブルが3列ある。大人数の宴会には2丁目店の方がいい。

お通し

「美味い、美味い、これ美味いよ!」お通しから部下たちは気に入ったようだ。薬膳不老長寿鍋と前回食べなかったコラーゲン刺しだけ銀髪が頼んで、他は部下たちの好きに任せた。

自家製ハム、コラーゲン刺し

牧場を経営するブリーデンはハム、ベーコン、ソーセージなども造っている。自家製なのでどれも安心して食べられる。酒呑みとそうでない者とで評価が別れたのがコラーゲン刺しと究極レバーの甲州煮。豚骨を煮込んで骨を抜いて固めたものがコラーゲン刺しでコリコリしている。レバーは甲州ワインに漬けて煮込んだもので、パテのような食感だ。

究極レバーの甲州煮、春巻き

我々の隣の大テーブルに若者たちが入って来た。男ばかりの銀髪グループと違って男女混合チーム。おじさんたちの関心は料理より隣席に向う。何やら自己紹介を始めた。昔なら合コンと呼ぶところだが、今なら婚活パーティーと言うべきか。どの娘が可愛いかヒソヒソ話をする部下たちをたしなめて少し声を上げて言った。「みんな可愛いじゃないか!」。隣席に聞こえたかもしれない。

鉄板焼き、匠の技直伝ドイツソーセージ

鍋の用意ができた。銀座8丁目店と同じなので、経験者の銀髪が忙しい店員を助けてあげた。壁を背にした男たちはなおも隣席グループを観察しているが、背中を向けた連中は食事に専念した。やがて、全員の関心は鍋に移った。思ったとおり薬膳鍋は好評である。辛い中華の薬膳鍋に比べると甘味のあるマイルドな鍋は食べやすい。

雑炊

銀座8丁目店ではうどんにしたが、量が少なくてびっくりした。そこで今回は雑炊を頼んだ。残った薬膳スープを残さず食べられて正解だった。

満腹になって席を立った。部下たちもみんな満足したようだ。再び婚活グループを見るとせっかく男女互い違いに座っているにもかかわらず、同姓同士で話をしている。あー、もったいない、もったいない。

やまと 銀座2丁目店
東京都中央区銀座2-6-1 中央銀座ビルB1F
03-5159-9751
http://www.frieden-dining.com/restaurants/2chome.php

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2009年12月15日

[アッラ・クチーナ・デル・ソーレ](千駄ヶ谷)

客にも優しい?


「有機栽培の野菜と産地から直接届く魚を中心にしたメニュー構成で、無添加の調味料などを使って、身体と環境に優しい料理を提供している」と聞けば行きたくなる女性は多いだろう。行きたくなるオヤジは?まあ、そんなには多くはないかな。

原宿はもちろん代々木や千駄ヶ谷の繁華街から離れているにもかかわらず、口コミの評価は高く人気の店である。小さな店は予想通り女性たちが目立った。しかし、女性を連れた中年男性もチラホラ見える。メタボを気にしているのか、女性に引っ張られたのかは分からない。

アンティパストはトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼと豆のサラダ。アンティパストは4~5種類乗っているのが普通なのでちょっと意外だったけれど、これを一皿の料理と考えれば悪くない。「???」イタリアンのカタカナメニューはよく分からない。2皿目は他の客のものが出てきたといぶかった。簡単に言えば小麦粉の代わりに山芋を使ったお好み焼き。親しみやすい味だった。

「ぺペロンチーノはないんですか?」と聞いたら、店の人は一瞬顔を曇らせて「作りますよ」と言ってくれた。迷ったがメニューにあるバジリコ風味トマトソースのスパゲティを食べることにした。店の人はホッとした顔をする。

スパゲティも魚(すずき)も2つに分けて出してくれた。もう一品あった方がいいと奨められたが、パンを食べれば我々には適当だった。グラスワインは赤白一種類ずつでいずれもオーガニックワイン。有機野菜のお店らしくて面白い。

お金を払って調理場の若い女性に声をかけた。「誰が料理を作っているの?」と聞くと、我々の隣に立っていた男性店員が「私です」と答えた。接客をしていた男性が店主兼料理人の伊崎さんだった。本を出すなど有名な料理人らしい。その割には気さくで優しい人である。

身体や環境に優しい料理は客にも優しい料理人から生まれるということだろうか。


アッラ・クチーナ・デル・ソーレ Alla Cucina Del Sole
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-22-4
03-3479-4640

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2009年12月14日

[なかがわ](築地)

カリッと香ばしい天ぷら


「中川さんですか?」カウンターに座るなり料理人に質問する。「そうです」と答えるので「店名と一緒で分かりやすいですね」と笑う。馬鹿げた質問と分かっているが、場をほぐすためには重要な会話だ。料理人と打ち解けるのも早い。

「写真撮っていいですか?」と聞く。カウンターに座って一番緊張するときだ。店主の顔が曇るので身構えた。「熱いうちに食べてもらいたいんですが…」と言われてホッとする。渋々ながらも許してくれたようだ。海老を早業で写して熱々のうちに口に放り込んだ。

しっかりと衣をまとった海老の頭が美味い。キス、銀杏と続く。「みかわさんもこんな天ぷらなんですか?」と聞く。中川さんは茅場町の名店「みかわ」で修行して6年前に独立したという。比較的衣が厚く、こんがりと揚げるので、サクッとして香ばしい。

海老2本、いか2枚を含んだコースにハゼを加えた。「すみいかも大きくなりましたね」といか談義の後に今の季節しか食べられない東京湾のハゼ。キスやメゴチと似ているが、身の割れ方が微妙に異なる。上品な白身のハゼに顔もほころぶ。

大きな穴子を中川さんが割るとシュウッと湯気が揚がる。「穴子は羽田沖が一番ですね」魚は江戸前にこだわる。全国の天ぷら屋の9割以上は東京にあるのではないだろうか。寿司と並んで天ぷらは江戸前の素材がなければ始まらない。

「菌床ですか、原木ですか?」身の厚い椎茸は只者ではない。思ったとおり「原木です」と答える。こんにゃくで有名な下仁田産で、市場では買えないもの。中川さんの同級生が作る椎茸は、レストラン「ヒロ」などの高級店でしか食べられないそうだ。

他のみんなは天茶を選び、銀髪のみが天丼にした。天丼にしたのは味噌汁がつくはずと思ったから。小川原湖産の特大シジミが食べられたのは銀髪だけだった。

満腹になったが太白ごま油と綿実油をほぼ半々に使っているので重くはない。オーソドックスな素材中心なので、料金も手頃。この店を予約した部下を褒めてあげた。

なかがわ
東京都中央区築地2-14-2
03-3546-7335

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2009年12月13日

レモン牛乳

昔懐かし(?)のレモン牛乳


「絶対買っていった方がいいぞ」とM氏に教えてもらったのがレモン牛乳。「漫才のU字工事のお陰で、大人気になっているんだ」と続ける。宇都宮には何度も来たが、レモン牛乳なんて聞いたこともなかった。「レモンは入っていないけれど、レモンの味がする牛乳なんだ」と言われれば興味が湧いてくる。

「レモン牛乳を買えと言われたんだ」と部下に言うと「エッ?銀髪さんもですか?」と部下が驚く。彼は栃木県出身の同僚に買ってくるように頼まれたらしい。土産物屋に入ると、「レモン牛乳入り」と書かれたお菓子がたくさん売っているが肝腎の飲料はない。取りあえずケーキを買った。

使命感に燃えた部下は飲料がなくて途方に暮れているので、一緒に探すことにした。隣の店に行ったら難なく見つかった。1本だけ買って、味見をすることにした。

一口飲んで顔をしかめた。「レモン味がする牛乳」のイメージとは違う。原材料を見ると生乳は50%未満で、砂糖、ぶどう糖、着色料、香料などを含んでいる。100%生乳でなければ牛乳とは名乗れない。あらためて見てみると乳飲料となっている。銀髪には甘すぎた。

家に帰ってケーキを渡すと「レモン牛乳が飲みたかった」と不満そうだ。家族がレモン牛乳を知っているとは思わなかった。「変わった味」と評されたケーキを一口食べてみたが、チーズケーキのようで悪くはなかった。

もしかしたら土産物屋には以前からレモン牛乳関連のお菓子が置いてあったのかもしれない。漫才師のお陰で銀髪も知ることになった。

牛乳と思ったら失望する。牛乳入りレモン風味の甘いジュースと思えば意外と悪くない。もちろん、期待しすぎてはいけない。餃子に次ぐ名物に育つのだろうか。興味深い。

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2009年12月12日

[VAL’S BAR](宇都宮)

宇都宮でハバナクラブ


「存じやす」のソムリエ美保さんに案内されてVAL’S BARに向った。オーナー兼バーテンダーの清野さんが18年前に開いた店だ。「あそこです」と言われた先には灯りがポツンとあるだけ。「エッ?どこ?」と暗闇に目を凝らすと「あの灯りのところです」と言う。連れてきてもらって本当に良かった。地図だけでは辿り着けなかっただろう。

暗い店内に客が一人だけ。カウンターの中の清野さんを孤独な客からひっぺがすのは気が引けたがオーダーしないわけにはいかない。正面に並んだボトルを右から順に見て行った。

左側の棚にハバナクラブの15年物を見つけた。日本には輸入されていないキューバ産ラム酒が宇都宮のバーに置いてあるとは思わなかった。M氏に聞くともちろん飲んだことはない。彼のためにハバナクラブを頼んだ。銀髪は久し振りにアイリッシュウイスキーを飲むことにした。

「どこで手に入れたの?」謎解きは簡単だった。常連さんがキューバに出張した際に買って来てくれるそうだ。恐る恐る口につけたM氏も気に入ったようだ。
銀髪の携帯電話がなった。宇都宮在住のT氏が道に迷っているらしい。迎えるためにM氏が店を出て行った。

「何か変わったスコッチはありますか?」先客が去り清野さんと二人になった。「まだ若いけれど、これから美味しくなると思います」と2本示してくれたが、1本はまだ飲めないと言う。そう言われると飲みたくなるので随分と粘ったが飲ませてくれなかった。許してくれたのはアラン島のウイスキー。3年物とは思えないようないいスコッチだった。清野氏の目利きは信頼できる。

M氏が戻ってきた。T氏だけかと思ったら、若い女性を二人連れている。M氏がナンパできるわけはない。T氏の部下だった。男3人より女性が加わった方が楽しくなる。ビールで乾杯をすることにしたら、ちゃっかりとM氏がハバナクラブをお代わりしている。気に入ってくれたのは嬉しいが、貴重な酒を何杯も飲んでは他の客に申し訳ない。

酔っ払いのT氏と盛り上がっているうちに、2組入ってきて店はほぼ一杯になった。人気の店は場所を選ばない。今回はよそ者が地元の人たちにお店を教えてあげることになった。インターネットは恐ろしい。

VAL’S BAR
栃木県宇都宮市二荒町5-18 栄マンション1F
028-635-8676

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2009年12月11日

[存じやす](宇都宮)

とちぎ和牛のステーキ


「栃木の酒を飲ませようと思ったんだけどなー」銀髪がステーキ屋に行くと言うとM氏は残念そうな顔をする。日光や那須の山々から発する水に恵まれた栃木には50を超える酒蔵があることを忘れていた。しかし今日は栃木の牛を食べると決めて来た。譲るわけにはいかない。

洒落たステーキハウスの先客はカップルのみで、その横でむくつけき男二人で食事するのは気が引ける。「大丈夫ですよ」と店員に励まされてオーダーを始めた。海がない栃木では肉以外の地元素材は野菜物に限られる。

地野菜のテリーヌ、パルマ産生ハム

テリーヌは二皿に分けて持って来てくれた。ますます恥ずかしくなるではないか。生ハムを頼んだM氏は、ビールの後に日本酒を飲むと言う。銀髪も気取っている場合ではない。ソムリエバッジをつけた美保さんを呼んで日本酒を頼んだ。「ごめんね、ワインでなくて」

四季桜、惣誉

さすがにソムリエがいる老舗レストランだけある。グラスも洒落ているし、存じやす限定の6年古酒も味わいがある。栃木の日本酒で歓待しようとしたM氏も満足気だ。何よりも洋食に日本酒が合うことが分かっただけでも収穫だった。海外で日本酒の評価が高まっているのに、どうして日本で衰退しているのか理解に苦しむ。

秋山農園と地場の野菜たちのオーブン焼き

栃木の日本酒と野菜でご機嫌である。いつの間にか中年男性の団体が集合している。若い男女のグループ客も居る。おやじ二人で飲んでいても目立たなくなった。

特選牛ステーキ(サーロイン、ヒレ)

栃木県内の指定生産者による4等級以上の枝肉だけに与えられるのがとちぎ牛の名称。栃木県は産出額では本州1位の牛肉生産地だけに、栃木産の牛肉は東京でもよく食べられている。それでも地元で食べるとちぎ牛のステーキは格別だった。

サラダ、焼めし

期待以上だったのが焼めし。ステーキは銘々の鉄皿で焼かれたに違いない。焼めしは鉄皿で調理されるので、米が肉の脂や汁を吸収して美味。腹一杯と乗り気でなかったM氏もしっかり食べ尽くした。

清算した後、美保さんはコートを羽織った。銀髪たちをショットバーに案内するためだ。ソムリエは利き酒のプロというだけではなく、接客を含めたサービスのプロであることを改めて確認できた。もっとも、彼女の心遣いはもともと持ち合わせているものかもしれない。ご機嫌な存じやすだった。

ステーキ&ワイン 存じやす
栃木県宇都宮市中央5-9-2
028-637-4129 / 028-636-8701
http://www.zonjiyasu.com/

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2009年12月10日

[ミルクワンタン 鳥藤]

これは本当に牛乳だ


竜馬を出て「電車に乗るぞ!」と言う兄に従った。牛乳焼酎のあとにミルクワンタンとは見事な企画だが、この時はまだ竜馬で飲んだ牧場の夢が牛乳焼酎だとは知らなかった。有楽町のガード下にある鳥藤も有名な店で、銀髪がリストアップしていた店の一つである。

カウンターに座ると「今日は遅いねー」と兄に声がかかる。「新橋で飲んできたからねー」とご機嫌だ。「これ、俺の弟」と続ける。みんなが似てる、似てないと付き合ってくれる楽しい場面だ。「兄貴は貧乏人の子、俺はいいとこのおぼっちゃん」と銀髪が話をかき混ぜる。8歳違えば戦後貧困時の世代と高度成長時の世代となり、兄弟でも暮らし向きは大きく異なった。

「食べてきたのなら少なめのコースにしますね」おじさんも、おばさんも、みんな笑顔がやさしい。小皿がどんどん出て来る。少なめは有難いが、ビールがどんどん飲めてしまう。まあ、払いは兄だから遠慮なくどんどん追加する。

納豆に箸をつけると兄が焼き飯が来るまで待てと制する。竜馬で兄もその同僚も焼酎に専念していた理由が分かった。だいぶん腹も膨らんできたが、焼き飯に納豆が絶妙にマッチしてすぐに腹に収まった。


いよいよ店名にもある名物ミルクワンタン。一口すすって思わず笑った。クリームシチューを想像していたのだが、これはそのまんま牛乳スープ。改良に改良を重ねて完成したものというよりも、牛乳を加えていいかげんに作ったような感じだ。熟練の技が隠されているのかもしれないが、子供の頃に銀髪が作ったものに似ていて懐かしい。

外国人観光客向けの雑誌でも紹介されたという鳥藤は、地方都市にもあるようなアットホームで気軽な居酒屋だ。大都会東京のど真ん中であっても、ガード下にこんな店がたくさんあるのが面白い。不況なんか関係ないように見えるがどうだろか。いつか本来のコースをしっかり食べに行って聞いてみよう。

お兄ちゃん、また連れてってよ。


ミルクワンタン 鳥藤
東京都千代田区丸の内3-7-9
03-3215-1939

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2009年12月09日

[立ち飲み 竜馬](新橋)

食い物は安い!


不況の影響か、立ち飲み屋がやたらに増えた。その中でも評判が高いのが竜馬で、以前から行く機会を窺っていた。そんなとき、「いい店見つけたんで今度連れて行ってやるよ」と長兄が嬉しそうに誘ってくれたのがなんと竜馬だった。異論はない。

兄が「もう一人連れて来る」と言うので期待して待ち合わせ場所に行くと、銀髪と同年輩の男が兄の横に立っていた。「なーんだ、美女だと思っていたのに」と初対面の人に先制パンチを放つ。続けて数発ジャブを繰り出すと、竜馬に到着する頃には気兼ねがなくなった。

カウンターの上の籠に兄が2千円を放り込む。1枚は銀髪のためかと思ったら、兄の同僚のTさんも2枚入れた。銀髪も観念して2枚出した。注文すると店員が籠から代金分を抜いていくシステム。この店のウリは壁に並んだたくさんの焼酎。最初の人が高級焼酎を頼むと、次も同程度のものを頼む。銀髪も負けじと続く。割り勘のシステムを利用する竜馬の戦略にまんまとはまる。

焼酎に比べると料理の安さは際立つ。鮪脳天の刺身など珍しいものもある。焼きそば(200円)は学園祭の屋台より安い気がする。嬉しくなってたくさん頼もうとする銀髪を横目に、兄とTさんは焼酎に集中している。

日本料理には日本酒が一番と思っているので、実のところ焼酎はあまり好きではない。もっとも竜馬の肴には焼酎が合っているように思える。割り勘競争からは離脱して、竜馬ならではの焼酎を探した。「ぼくじょうの夢を下さい」と店員に告げると「まきばです」と訂正された。この牧場の夢が滅法気に入った。吟醸酒のような香りと口当たりに驚いた。

3杯目を飲むために籠の中に千円ずつ拠出した。「まきばの友をください」と言うと「みんなが夢だよ、夢!」とからかう。店員も苦笑しているが気にしない。ちゃんと通じているから問題ない。最後に「イヤー、まきばのゆめは美味いね」と言って安心させてやった。

最初は入り口に近い場所に居たが、奥へ奥へと3回引越しをした。ほぼ満席になったところで兄が店を替えると言う。今度はご馳走してもらえる雰囲気なので自己主張は封じ込めた。

翌日兄からのメールで牧場の夢は牛乳焼酎だと知った。ホームページで見ると、「球磨焼酎伝統の米と当社独自のアルカリ温泉水、そして新鮮な生の牛乳を同時に発酵させて造り上げた焼酎。フルーティでほのかに甘いミルクの香り、軽快な飲み口が特徴。」とある。

竜馬では、牛乳焼酎に出会えたのが収穫だった。


立ち飲み 竜馬
東京都港区新橋2-13-3 ALC.BID 1F
03-3591-1757

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2009年12月08日

[でんぱち](新宿歌舞伎町)

創業40年のサービス


お通し、いわしの刺身

「どうだい、俺の鼻はよくきくだろう?」イワシの刺身を美味い、美味いと食べるB氏に対して胸を張った。歌舞伎町を約10分歩いて探し出したのは、狭い階段の上の古臭い店だった。入り口から見て左奥の部屋と12人程度が座れる大テーブルにグループ客がいたが、店内は6分程度の入り。煙たいカウンターを断ると、誰もいない大テーブルの一角を勧められた。

牛タンの塩焼き

「これは固いな」いわしと並ぶ看板料理の牛タンをB氏は気に入らない。「すいません、さんが焼はできません」女性店員が戻って来てすり身関係の料理はできないと言う。さつま揚げ、つみれ汁などの人気料理が既に売り切れでは、店の魅力は半減してしまった。竜田揚げを食べた(写真は撮り忘れました)。

塩焼きのリベンジをやってもらうつもりで牛タンのつみれ鍋を追加した。さらに里芋煮もお願いすると、煮物は時間がかかると言われた。熟慮の末、もろきゅうを頼んだ。料理を待っている間に我々の大テーブルに3人の男たちとカップルが座った。4人席に予約の客、カウンターも一杯になった。人気の店に予約なしで入れたことを喜んだ。

もろきゅう

もろきゅうをつまんでいると、3人組に里芋煮が運ばれて行く。後から来た人たちも複数の料理を手に入れた。B氏がイラついているので日本酒の追加を頼みながら牛タンつみれ鍋を催促した。「今、やっています」と言うので安心した。もろきゅうは食べ終わったが鍋はまだ来ない。縁が欠けた皿をいじくりながら酒を飲んだ。

更に10分程度待った。店員を呼ぶと「すぐ、来ます」と言い残し、去って行った。B氏が立ち上がった。目が釣り上がっている。止むを得ず、銀髪も鞄を持ち上げた。
勘定しながら調理場を覗くと、二つの鍋に素材を盛っている。「出来ている鍋はなさそうだね」と言うと、「一斉にお客様が見えましたので」と答えただけだった。

銀髪の鼻は詰まっていたようなので、次の店はサッサと前を歩くB氏に任せることにした。寒さのせいだけでなく、銀髪の身は縮こまったままだった。

でんぱち
東京都新宿区歌舞伎町1-15-8
03-3200-8003
http://www.denpachi.com/

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2009年12月07日

[銀座 座屋]⑥(銀座)

師走の座屋


最初に来たのが7月、店主の岡添さんを気に入って毎月来ると約束して今回が6回目。ぐるなびの予約状況を見ると個室はかなり前から埋ってしまうようだ。「今日は銀髪さんのブログを見て初めて来られる方がいますよ」と言われた。「銀髪さんが居ると知ったら喜びますよ」と続ける。喜んでくれるか、がっかりするのか。

太陽に見られながら歩いてビールが上手かった7月。座屋最初のメニューはところてんだった。今は茶碗蒸しが優しく温かい。連日の飲み会で傷んだ胃も毛蟹の椀物が癒やしてくれた。「なんだ、居たのか!」の声に振り向いた。ブログのファンは高校の同級生だった。がっかりしたのは仲人役になるはずだった岡添さんみたいだ。

「写真は撮らないんですか?」と言われた時にはかつおが一切れなくなっていた。7月から欠かさず登場する座屋名物のかつおの塩たたきは焼き手が若手に交代した。座屋も少しずつ進化している。

「めひかり?」炭火の上でプチプチと脂が弾ける魚に目をやった。八寸の準備が進んでいる。うつぼ、真珠貝、猪など珍しい素材が並ぶ。うつぼは高知の「こうじ家」、銀座の「祢保希」、新橋の「そのまんま」で食べたことがある。見かけによらず美味しい魚である。座屋ではアラカルトでいつでも食べられるようだ。

蒸し野菜は上に乗せられた生ハムから塩分をもらう。高知から直送される素材が自慢の座屋だが、岡添さんは必ず一品は外国の素材で遊ぶ。

先月に続いてメインは小鍋。鮟肝は一つはそのまま、もう一つは鍋に溶いて食べる。このあたりで腹具合に個人差が出る。しかし、満腹と言いながら、次を食べない人はいない。

誰もが好きな玉子かけご飯。食べ方には一家言がある。岡添さんも無理強いしない。余裕で食べていた銀髪も、デザートを食べてさすがに満腹になった。

個室から友人たちの大きな声と、笑い声が聞こえる。挨拶しようかと思ったが邪魔をしないようにそっと席を立った。カウンターには美女を含むカップルが3組残った。男二人の我々が、一番わびしく思えた。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090


師走の献立
[先付]雲子と雲丹の茶碗蒸し
[御椀]毛蟹と聖護院大根薄葛仕立て
[お造里]かつお、いし鯛
[八寸]めひかり、海鼠酢、うつぼ唐揚げ、真珠貝掻揚げ、烏賊寿司、からすみ大根、猪八丁味噌
[蒸物]野菜と生ハムの蒸し物、蕪の擂り流し
[炭焼]寒鰤の照焼き
[小鍋]鮟鱇鍋
[土鍋御飯]四万十川源流産「ヒノヒカリ」、土佐ジローの卵かけごはん
[御数]漬物
[甘味]蜜柑いろいろ

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2009年12月06日

[センス]③(日本橋 マンダリンオリエンタル)

センスがいい?


2006年2月(昼)、2008年1月(夜)に続いて3度目のセンス。今回は個室を予約したのでこれまでとは違う景色。日本橋コレドなどが遥か下に見える。馬鹿と煙は高いところが好きというが、なんだか偉くなったような気分になって恥ずかしい。

ミシュランガイド東京で毎回星をもらっているセンスだが、2010年版発売直後にもかかわらず個室が簡単に取れた。実際、昨年までは銀髪グルメ紀行にも掲載している店が星を得ると、アクセス数が増えたものだが今年は殆ど影響がない。書店にも山積みされたまま。2008年版の大騒ぎはいったいなんだったのだろうか。

センスはミシュラン2008年発売の前も今も殆ど変わっていない。一つ星はあってもなくても関係ないのかもしれない。あるいは三つ星ならともかく一つ星では不本意で迷惑かも。

鶏肉が嫌いな人にはレタスのスープが出て来た。彼は出汁ぐらいは平気なのだが、しっかり配慮してくれたのは流石である。

飲茶ランチといってもワゴンサービスというわけではない。各人に行き渡るのに時間がかかるけれど、それがゆったりと落ち着いた食事の演出にもなる。壁を背にした人たちは景色も楽しめる。窓を背にした銀髪は会話で場を持たせるしかないけれど。

銀髪が香港でもっとも多く泊まったホテルがマンダリンオリエンタルである。夜の美食三昧も思い出深いが、翌朝ホテルの中二階でお粥を食べるのが楽しみだった。レタス、ネギ、揚げパンもいいが、塩炒りピーナツが銀髪の一番のお気に入り。センスのお粥も期待通りだった。

ぜんざいのようなデザートを食べてお開きになった。帰って写真を見ると3,800円は高そうに思える。しかし、みんなの食後の感想は「安い!」ということだった。個室、絶景、優雅なサービスがそう思わせたのだろう。

ミシュランは純粋に味で選ぶと言うからたいしたもんだ。銀髪はこのブログを書き始めた頃から個人差がある味については出来るだけコメントをしないようにしてきた。食事を楽しめるかどうかの重要なポイントはサービスにある。それ以上に重要なのは誰と行くかだ。

「あなたとなら、どこでもいいわ」なんて言われたら有頂天になる。しかし、調子に乗って妙な店に連れて行くと「センスがない」と言われる。社交辞令は程々に聞いておいたほうがいい。


東京都中央区日本橋室町2-1-1
マンダリン・オリエンタル センス
03-3270-8800

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2009年12月05日

[イルサッジオ](横浜)

崎陽軒でイタリアン


「崎陽軒のイタリアンに行きましょう」と言うと地元の人も、我が社の横浜地区担当者も意外そうな顔をする。崎陽軒=しうまいのイメージが強すぎて、百歩譲っても本格中国料理をイメージするのが精一杯のようだ。全員が行ったことがないことを確認して鼻を高くした。

一日50食限定のボンジョルノセットを頼んだら、各人にメニューが配られた。周りを見ると男だけのテーブルは我々だけだ。ちょっと高めのレストランで昼食をとると、お父さんは弁当なのにと揶揄したくなるが、この日は既に一人暮らしを楽しんでいる女性たちが多そうだ。ワイングラスを掲げて自由を謳歌している。お父さんの魂がよだれを流して浮遊している。

前菜を食べ終わってナイフとフォークを皿の上に整列させると、店員は皿だけ持ち去った。最近はフォークとナイフを最後まで使わせる店が多くて戸惑う。最初からテーブルに置かれていたら、フォークやナイフは取り替えないというようなルールがあれば分かりやすいが、取り替えてくれる店もあるから厄介だ。

料理はスムーズに出て来るので有難い。我々が食べるスピードに上手く対応している。一方で、ゆっくり食べているおばさま達を急かせることはない。さすが崎陽軒、サービスは行き届いている。

デザートが出てきたところから再び他の客の様子を窺う。料金をどこで払うか探るためだ。最近では居酒屋でもテーブルで会計できる店が増えたが、昔ながらの店は出口で支払う場合が多い。代表的なのはデパートの食堂。高級化しても支払い方法は変わらない。

うまい具合に帰り支度を始めたテーブルを見つけた。勘定書を右手に持って歩き出す。銀髪が取るべき行動が分かった。デザートを食べ終わり、店員に向って両手の人差し指をクロスした。勘定書をもらうと「いきましょうか?」とみんなを促した。「どうぞ、もうこちらで」と挨拶したのに客は店の外でじっと待っていてくれた。申し訳ない。

イルサッジオ
神奈川県横浜市西区高島2-13-12  崎陽軒本店2階
045-441-3331
http://www.kiyoken.com/restaurant/honten/h_ilsaggio/index.html

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2009年12月04日

[Ça va サヴァ?]

380円均一で元気?


最近、立ち飲み屋がやたら目立つようになった。バブルが弾けた後、面白がって酒屋のカウンターで缶詰や乾き物で飲んだことを思い出す。最近の立ち飲み屋は当時に比べると女性が多い。立ち飲みが当たり前の外国のバーに似ていないこともない。

Sava?には椅子があり純粋な立ち飲み屋ではない。最近よく見られるようになった均一価格の飲み屋である。飲み物も、食べ物もすべて380円。一人でちょっとひっかけて帰るもよし、ワイワイガヤガヤと仲間内で飲んでも楽しい。

渋谷や新宿でも似た様な店を見かけたことがあるので系列店かと聞いたら、違うという答え。土砂降りの後に自然発生的にあちこちに出てきた業態なのかもしれない。

ビールの泡が随分と多いように見えたが、380円では文句は言えない。子供の頃、ビールを飲む父の横に銀髪が居た。父はグラスにビールを注ぐとすぐに銀髪に手渡す。グラスに口をつけ泡を飲み、いよいよ液体に届くか届かないかの瞬間に取り上げられた。恨めしそうな銀髪を見ながら、ゴクゴクやるのが心底楽しそうだった。思い出にひたりながらビールをお代わりした。三杯目にもなると注ぎ方はましになった。

均一料金だと、ついついどれが一番得か考えてしまう。例えばラーメンの幸楽苑。テレビのインタビューで社長が語ったところによると、味噌、しょうゆ、塩の中で味噌ラーメンが一番原価が高いとのこと。社長は塩ラーメンを頼んで欲しいと言うが、逆効果だっただろう。

一番割安と目をつけた生ハムの見事なこと。いや、生ハムではなく腕前が見事。骨付きのハムを削ぎ切り皿に盛ってくれたが、まるでふぐ刺しのように皿の模様が見えそうだ。

会計は「1点、2点、3点、………」と実に簡単だ。100円ショップ、ダイソーの会計を思い出した。「また利用してくださーい」と言う女性店員が明るく元気で実に気持ちがいい。サヴァ?(Ça va ?)とはフランス語では元気ですか?という意味。最後の最後に、ただでこんな笑顔を見られるなんて、なんてご機嫌な380円ショップなのだろう。


Ça va ? サヴァ?
東京都千代田区丸の内3-1-1
03-5208-5011

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2009年12月03日

[プラナバルカ](茅場町)

ニューヨークスタイルのイタリアン?


食のテーマはニューヨークのトラットリアだそうだ。先日行った力々の横を首都高速の入り口方向に歩く辺鄙なところにある意外と大きな店だ。「こんなところで満席になるの?」と思うのは当然。「繁昌してる?」と聞くと「ハイ!」と言う。「なんだ、高い料理を頼んで協力してあげようと思ったのに」と意地悪言うと、慌てて訂正するので大笑いした。

お通しはフェンネルを入れた焼チーズ。「三陸産の牡蠣がお奨めです」と言うので「どこ?」と聞いても分からない。赤崎とか志津川と言われても、味の違いが分かるわけではないからいいけれど。

我々5人に対して5切れのカルパッチョは良かったが、アンティパストは失敗した。銀髪と部下と二人で5皿に取り分けた。

からいもどんの塩漬け豚バラ肉・キノコ・丹波産栗のソテーは分けやすい。からいも(さつまいも)で育てた豚肉とのこと。車海老と白子のビールころもフリットは失敗だった。3本の車海老を5つに分けるのは至難である。

分けるのに苦労する料理を頼むのは止めにした。大山鶏のもつ煮込み、牛トリッパのトマト煮を2つずつ頼んだ。取り分けるのも止めにした。客のはずがいつの間にか店員みたいになっている。食べたい人が食べたいだけ取ればいい。

北海道産ホタテスモークと沖縄産四角豆のサラダも適当につまんでもらった。断面が四角と言うが、どれが四角豆か分からない。ピザはシンプルなマルゲリータを奨められた。ミラノピザとローマピザの中間ぐらいがこの店のウリと言う。出て来たピザにはトマトが一杯。これは初めて見るタイプのマルゲリータだ。きっとトマトが自慢なのだろう。「どこのトマト?」と聞いたら「………」それを見て「いいよ、いいよ、大した問題ではないから」と慰めた。しかし、牡蠣を運んで来た店員と異なり、今度はちゃんとキッチンで聞いてきた。「愛知産です」と言われて「愛知のどこ?」と聞くと「………」。「意地悪はこのぐらいにした方が良さそうだ。

トイレに行くとラスベガスのべラージオの写真が置いてあった。べラージオは店とは何の関係もない。バルバリの名刺もあった。バルバリは系列店とのこと。バルバリと聞いて何となくこの店のことが分かった気になった。

帰り際になると悪天候にもかかわらず、思ったより客が入っていた。人気の店は場所を選ばないということだろう。ちっともニューヨークっぽくないけれど。


プラナバルカ
東京都中央区日本橋蛎殻町1-3-2
03-5651-3393
http://www.purana-barca.com

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2009年12月02日

[福みみ](渋谷)

元気一杯、笑顔一杯


階段を下りると正面の壁にお通し代がない店と書いてある。グッと気分が良くなって店に入ると、若い店員たちの大合唱で迎えられた。近くの男道場や女道場の系列かと思ったが違うようだ。最近はこんな店が流行りなのだろうか。

お通し、コリコリ鶏のゆびき

お通しはないと思っていたらキャベツが出てきて戸惑った。こんなものでも200~300円を取る店もある。壁の張り紙は勘違いだったのだろうか。

ぼんじり、レバー、つくね

「あなたが橋本さん?」目の前で鶏を焼いている若者に声をかけた。彼の後ろの額を見ると焼き師の称号を得ているらしい。「美味しいよ!」と銀髪が言う前から実に楽しそうに仕事をしている。店員を乗せるのも上手い店だ。

シソ巻き、白レバー、チーズもち巻

お奨めをまとめて頼むと全部一緒に来そうなので2度に分けてオーダーしたが、杞憂だった。さすが認定焼き師だけあっていいタイミングで出してくる。白レバーは中がトロトロでなかなかのものだった。

確認して落胆したのは日本酒のメニューが貧弱なこと。品揃えが豊富な焼酎や梅酒は若い客のためのものだ。店内を見渡すと間違いなく銀髪が最年長。連れが2番目。もっとも銀髪が日本酒党というだけで、中高年にも焼酎党が多い。一度覇権を失ったら復権は本当に難しいものだ。

牛スジとモツの煮込み、味噌汁

煮込みを肴に熱燗を空けたところでお開きにした。勘定を頼むと味噌汁が出て来た。釣り銭を財布に収め、レシートを見るとご丁寧にお通し¥0と書いてあった。気に入ったので帰り際に店長と名刺交換した。彼もアルバイト学生と見間違える若さだ。

Kuurakuグループは国内外21店舗の経営の他、人材育成などのコンサルティングをやっているようだ。傘下の従業員の出来が悪ければ洒落にならないが、福みみ渋谷店を見る限りアルバイトを含めて実に楽しそうに働いている。楽しさの源は客の笑顔。その笑顔は料理と接客から生まれる。笑顔のキャッチボールがあれば店が廃れるはずがない。

福みみ
東京都渋谷区道玄坂2-25-17 小島ビルB1F
03-3461-2911
http://kuuraku.co.jp

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2009年12月01日

[白梅](新橋)

どて焼き?みそ鍋?


広島かき料理の白梅に興味を持ってから2年半。かき料理は10月~3月までと限られるので、思い出したときにはシーズンオフの繰り返しで時間が経ってしまった。新橋の路地裏らしい店は思ったより小さい。主人と会話できないのが残念だが、カウンターも寛げる広さではないので2階の座敷を選んだ。2階に上がると更に年季を感じる建物だ。

予約をすれば自動的に刺身をオーダーすることになる。カワハギの煮こごりでビールを飲んでいると瀬戸内の魚の盛合せがやってきた。牡蠣以外の瀬戸内の幸も味わってもらおうという配慮なのかもしれない。日本酒も広島の千福。

鍋は一人前でもいいと言われたが、出来上がったものを持って来てもらうのはつまらないので2人前を頼んだ。女将は綺麗に盛られた鍋の上のキノコ類を別皿に移して火をつけた。超弱火にして「私がやりますので絶対に触らないように」と釘を刺す。酢牡蠣を食べながらひたすら待つ。

10分して戻ってきた女将は鍋をかき混ぜ、キノコを乗せた。まだまだ道は遠い。鍋奉行がいたら半狂乱になるかもしれない。
牡蠣の塩焼きを食べながら待つ。白梅では殻ごとではなく、剥いた牡蠣を焼く。焦げ目がついて香ばしいからという説明に納得。

女将が戻って来て中火にした。まだ食べさせてはもらえない。キノコに火が通ったところで火を最大にした。グツグツと言い出したところでやっとお許しが出た。ここまで20分以上経過している。牡蠣が煮えすぎて縮んでしまわないか心配だったが、思ったよりプックラしている。「私の主人のお腹のようです。帰りに見てやってください」と女将が笑わせる。

一人前にしなくて良かった。20分待っても来なければ、忘れられたと怒ったことだろう。二人前にした恩恵は女将と話ができたこと。テキパキと働く姿に感心したら、白梅は女将の実家。調理場を預かる3代目はこの店の調理人だったというから上手く店が承継されたことになる。

最後は広島菜とジャコ、雑炊を頼んだ。通常、どて鍋とは鍋肌に味噌を塗って土手を作り、崩しながら食べるものだが白梅のものはみそ鍋と言った方がいいかもしれない。東京の人が食べやすいように工夫した白梅風である。

勘定をして階段を降りると、後ろで立ち止まったS氏が「あー、よく見える」と言う。何事かと思って振り返ると目の先に3代目の腹があった。「成る程、ここの牡蠣のようにふっくらしているね」と言うと、女将も一緒になって笑った。

店を出ると女将が頭を下げた。数歩進んで振り返るとまた下げる。角を曲がる間際に振り向くと女将はさらに頭を深く下げ、背中は地面と平行になった。寒くなれば牡蠣はさらに膨らむ。しばらくしてもう一度三代目の腹と比較しに来ようかな。

白梅
東京都港区新橋3-9-7 黒滝ビル
03-3459-8839

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