2010年03月02日
[山沖]②(日本橋)
いい仕事してるねー

山沖に初めて行ってから1ヶ月足らず、帰り際にもらった名刺に書いてあった「古典的江戸前鮨」の意味を聞くために再訪することにした。
今回も主人の正面に座るつもりで行ったが、男性1人、女性2人の年配客に占拠されていた。彼らと2つ席を空けて左端に座った。前回は気付かなかったが落語が小さく聞こえてくる。「古典的江戸前鮨とはネタなどに何らかの仕事をしている鮨」とのこと。疑問は早々に解決し、その意味をじっくり味わうことにした。
たこ、めじまぐろ、ひらめ、しゃこ、ほっき貝

茹でたり、煮たり、昆布締めにしたりと、殆どのネタに仕事がしてある。輸送手段の発達で全国から築地に新鮮な魚介類が集まる。冷凍・冷蔵技術の進歩で輸入魚も生で食される。そんな時代に古典的鮨を極めようと頑張る山沖さんである。
いわし、まぐろのづけ、ひげだら

づけは切り身を10分前後漬けて出すところもあるが、本来は塊ごと数時間醤油に漬ける。鮪の状態により漬ける時間を変えるのがプロの腕。「今日はどのぐらい漬けたの」と聞くのも楽しみだ。メニューの中で初めて見たのがひげだら。正式名はイタチウオで一般には出回らない高級魚。昆布締めにすると美味しくなるというから江戸前鮨にピッタリかもしれない。
すみいか、しらうお、うに

すみいかも大きくなって身がしっかりしている。春を告げるしらうお。卵がプリッとしている。うにの鮨の美しいこと。ネタによってにぎりの具合を変えるという。身が固いいかはしっかり、うにや穴子など柔らかいネタはふんわりと握る。回転寿司では味わえない技だ。
あか貝、さいまき、煮はま

やはり山沖の蛤は超美味い。煮汁を使ってネタに合わせた詰めを塗れば美味さが増す。
「それがホームページに出ていた壷ですね」カウンターの中を覗きこんだ。穴子の詰め、蛤の詰め、海老の詰め、煎り酒(梅干しとお酒を造った調味料)、昆布だし煮切り、鰹だし煮切りの壷。山沖では自分で醤油に鮨をつけて食べることはない。
かんぴょう巻、玉子、漬物

携帯電話に大声で話すおばさま達は居なくなった。山沖さんが「他のお客さんがいらっしゃいますので」と言っても、スポンサーの男性が注意しても止めることはなかった。静かになった店内で、ようやく山沖さんを独占できる。前回と同じような笑顔が戻ってきた。
「今日の穴子は良くないので」と真摯な山沖さん。通振って喋りすぎると食べ損なうことがよくある。まあ、また来ればいいや。
山沖
東京都中央区日本橋室町1-12-14
03-5201-8009
http://sushiyamaoki.cocolog-nifty.com/
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2010年02月23日
[とりで寿司]④(新橋)
やっぱり楽しいとりで寿司

一昨年の12月に1回目、2回目、昨年3月に3回目と短期間に訪問した。そのときの写真や寸評は銀髪グルメ紀行食べログ編でも見ることが出来る。それから何度か行こうとしたが予約が取れなかった。
複数のグルメ雑誌に紹介されたためか、先日は5時の予約も受けてもらえなかった。今回は約1週間前に電話した。週の前半だったこともあり、何とかもぐりこむ事が出来た。扉を開き店主の遠藤さんと目が合うと、お互い笑顔になる。「久し振り」の言葉がぶつかった。

雑誌の写真は店内を改装したようにきれいだが、特に変わったところはない。いつものように自家製の干物をお通し代わり選ぶところから始まる。「有名になったからって値上げしたんじゃないだろうね」と意地悪言ってもすぐに否定された。「ここまで支えてくれたお客様を裏切れない」とは明るく元気な遠藤さんには似合わない殊勝さだ。

いつものように次から次に酒の肴が置かれる。「オウッ!これは美味いね」とり貝が素晴らしくいい。さよりの皮の串焼き、アスパラの炭火焼き、手渡されてすぐ口に運ぶのもとりで寿司流である。

「アレッ?こっちにはホタルイカ来てないよ」と文句を言うと、「アッ!すいません。じゃあ、一個おまけ!」と余計にくれる。カウンターの6人に、同時に同じ物が出されるので多品種を味わえる。これもとりで寿司流。



芽キャベツ、アスパラ、トマト、ごぼうなどなど、野菜でアクセントをつけるのもとりで寿司流。「魚ばっかりじゃ飽きるでしょ」といつもの台詞。明るく元気なことを感心すると「楽しくなけりゃ、寿司屋なんかやってられないよ」と仰る。


前3回は身がくずれそうなウニだけだったが今回は全て手渡し。カメラマンの銀髪には気を使って皿に置いてくれた。銀髪がとりで寿司名物のゆで蛸を撮ると、客全員の携帯電話の内臓カメラにも記録された。蛸は恥ずかしくて真っ赤になった、かな?
とりで寿司は一昨年のベストレストラン of 銀髪グルメ紀行。マスコミにおだてられて変わってしまっていないか心配したが杞憂だった。めでたし、めでたし。
とりで寿司
東京都港区新橋4-10-6
03-5401-1441
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2010年02月14日
[すし鉄](東京駅大丸)
寿司は?

東京駅に着くのは5時前。会食にはゆっくり間に合うはずだった。ところが浜松駅を過ぎた辺りで携帯電話が鳴った。「お客様が早く来られたんですけど…」と部下が言う。有名店でご馳走しようという計画は消えた。この時間にやっている店は駅ビルぐらいだと意見は一致した。
1時間以上もカウンターにいるわけがない。銀髪の予想通り、お客様と部下が窓際のテーブル席で赤ら顔をしていた。夜景の見える一等席は、猫に小判のようなものだ。銀髪が席につくと、若い女性が注文を取りに来た。「あれっ?こんな美人いたかなー」と酔っ払い二人が目を丸くする。「5時からは美人に替わるんだね」と銀髪が言うと、彼女は悠然と笑みを返した。

大皿に残ったくたびれた刺身を見れば「僕らはお腹いっぱいですから」と言われなくても状況は把握できた。1時間の遅れを無理して取り返すことはない。メニューを見ると思ったより安くて良心的な店のようだ。こんな店は高級魚よりも、ヒカリモノの方が美味しいはずだ。

「穴子が美味しかったですよ」とお客様が気遣ってくれる。皿に一切れだけ残った白焼きを見て、煮穴子を頼んだ。味が変わればみんなも手を出してくれるだろう。

ついでに白焼きを頼んだ。お奨めを無視するわけにはいかない。一合徳利はすぐになくなるので何度も美人を見ることが出来た。すぐ出て来る熱燗は酔いが遅い。常に温められているからアルコールが飛んでいるという銀髪の説に部下は納得しない。
すし鉄は慶応2年(1866年)の創業だという。日本橋本店の前は何度も通ったことがあるが入ったことはない。きっちりとした江戸前寿司をリーズナブルに食べさせてくれるそうだ。「最後に寿司でも食べましょうか?」と聞いたら、「ラーメンを食べに行こう!」と言うので絶句した。
すし鉄さん、寿司を食べないですいませんでした。
日本橋 すし鉄
東京都千代田区丸の内1-9-1 グラントウキョウノースタワー 大丸東京店 12F
03-3217-8888
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2010年02月05日
[山沖](日本橋)
古典的江戸前鮨

「山沖さんですか?」「はい、山沖です」珍妙な応答から始まった。「山おき」「やま沖」「やまおき」などと平仮名を使う店が多いので、思わず聞いてしまった。「どんな漢字を使うの?」という定番の質問に続けられず苦笑いの銀髪。冷めた笑いを誘った。

たこを波打つように切る主人の包丁捌きを見ながら「アル中なら自然に切れるね」と茶々を入れた。「うちの包丁は切れないから、いつも波打つよ」と続けて大きな笑いを誘った。何とか名誉を回復できたようだ。楽しい食事の雰囲気作りは達成できた。

「養殖ではひらめも右を向くみたいですね」主人がひらめを切るのをみて再び茶々を入れると「養殖は右にならえですよ」と返ってきた。なかなかやるじゃないか。三平の息子のこぶ平(9代目林家正蔵)を思い出した。大好きなたいら貝の礒辺焼きを噛むと、海苔が乾いた音をたてる。


少し色づいた寿司めしを見て、「赤酢だね」と通ぶる。2種類の酢を合わせることで、酢のきつさが収まり優しい味になる。山沖の寿司は小振りで、見て美しい。だいぶん大きく育ったコハダは切れ目を入れたり結んだりで見た目だけでなく食べやすくもなる。キリリとした海老は赤坂の「喜久好」
を思い出させる。


「オウ、これは美味しいね」煮蛤を食べて感嘆した。主人が微笑んだようだ。会話の楽しさをしばし忘れた。なかなかやるじゃないか山沖さん。江戸前らしく穴子でぐっと盛り上げて、かんぴょう巻、玉子焼き、漬物と静かに食事は終焉に向かって行った。
帰り際にもらった名刺には店名の前に「古典的江戸前鮨」と記してある。今回はその意味を聞き損なってしまった。ホームページを開いてみると、主人のこだわりが次々と明らかになった。海老や煮蛤の美味しさの理由もある程度は理解できた。
近いうちに再訪しよう。古典的の意味するところをしっかりと学ぶために。
山沖
東京都中央区日本橋室町1-12-14
03-5201-8009
http://sushiyamaoki.cocolog-nifty.com/
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2010年02月01日
[金沢まいもん寿司](金沢)
待ち時間にサッと寿司

電車の時間まで1時間足らず、食べて飲んでとなれば寿司屋が一番いい。5時前に開いているのは駅ビルの中ぐらいしかない。2店ある寿司屋のうちでは回転寿司より金沢まいもん寿司の方がよく思えた。カウンターで一人居る客も同じ思いだったのだろう。
「これ食べろよ!」2,400円の寿司を頼もうとする部下を制して金沢百万石握りを奨めた。400円の違いで太っ腹を見せられれば安いものだ。しろえびや甘海老、のど黒も入ってお得に見える。酒を飲まない部下は余計なお金がかからなくていい。

「がすえび、生の甘海老、のど黒を刺身で」銀髪は酒の肴を求めた。北陸ではがすえびが名物と言っていいだろう。甘海老もやはり北陸名物。冷凍物より味はいい。海老2種類の食べ比べは正解だった。がすえび2匹は部下にも食べさせてあげた。
「こんなんだったかなー」と思ったのど黒に比べると、海老は食べる価値があった。

赤にし貝、なめら(きじはた)、白海老、北陸地物の3つを握ってもらった。赤にし貝はセットに入っていなかったので部下にも食べさせてあげた。「他に何か地物はありますか?」と聞いたら板さんはしばし考えて「アジぐらいですかねー」とつれない。

純米酒加賀鳶がグラスにまだ半分以上残っていた。ネタケースを見ながら考える。素直にマグロやウニを食べたらいいのに、食指が動かない。「これなーに?」と目の前にある貝を指さした。
「赤にし貝です」と言われて「あー、そうですか」と返した。そこで会話は途絶えた。残りの酒はガリを肴にすることを決めた。「どうだ、他に何か食うか?」部下に聞くと「お腹一杯ですよ」と満足気な笑顔を見せるのでお開きにすることにした。
時計を見ると土産を買う時間がたっぷりある。食事&お買い物で1時間弱、電車の時間に悠々間に合った。
金沢まいもん寿司
石川県金沢市木ノ新保町1-1 金沢百番街おみやげ館ぐるめ小路
076-225-8988
http://www.maimon-susi.com/
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2010年01月13日
[伴]③(八重洲)
親子で繁盛

新年会で伴に行くことになった。以前は頻繁に来ていたのに、新規開拓にかまけているうちに足が遠のいてしまった。それでも「大将、久し振り!」と声をかけると、「いつもブログでお世話になっています」と笑顔を向けてくれた。実に気持ちがいい。
岩のりと塩辛のお通し、厚めに切った刺身は以前と変わらない。鯖のたたきが来てオヤッと思った。初めて食べる料理だ。壁の貼り紙に自然と目が行く。純米酒は置いてなかったはずだ。もちろんハイボールなんか見たことない。

しばらく来ない間に鯖しゃぶが冬の看板料理になったそうだ。鮟鱇も今が美味しいと言う。会社の連中は忘年会で食べたらしいが、銀髪は参加しなかった。「よし!今度俺がご馳走してやる」とMさんが胸を張る。新年会の翌週、伴に再訪することになった。

「長崎産ですか?」と聞くと「さすが銀髪さん、良く知ってるね」と大将が答える。「ときさばを確保するのは大変なんですよ」と続ける。対馬海峡で獲れる寒さばのうち400gを超えるものが旬(とき)鯖と呼ばれる。青魚は中途半端に温めると臭いが気になるものだがその心配は無用だった。

「北海道産?」アンコウを茨城産と言うのは面白くないのでちょっとひねった。「茨城産です。北海道産は高くてね」と意外な答え。肉厚で身がしまった北海道産の方が値が張るらしい。昔は関東でしか食べなかったアンコウだが、今は全国区。漁獲高も他県の方が多い。それでもやはり茨城産アンコウはトップブランド。「今日のは最高ですよ。触ってみればすぐわかります」と大将の息子・二代目がアンコウを手づかみで鍋に放り込んだ。
本場の茨城県では水を加えず、アンコウの肝はすり潰し、味噌で味を整える「どぶ汁」が主流。伴のアンコウ鍋は初めての人でも食べやすい寄せ鍋風。火が通ったら食べ頃で、シンプルな味付けだけに鮮度が勝負となるそうだ。鯖、アンコウ、野菜の味が溶け込んだスープは最後に雑炊となって腹に収まった。
「息子が本腰を入れ始めてから店が変わってきたんだよ」とMさんが解説する。酒の品揃えや料理の変化は若者の意見が影響しているのだろう。不況にもかかわらず、店は一杯だった。繁忙だから息子が真剣になったのか、息子が真剣になったから繁盛しているのか。大将に聞いたら「そんなことはないよ」と照れ笑いを見せるに違いない。
すし処「伴」
東京都中央区八重洲1-5-21
03-3278-1644
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2009年12月14日
[なかがわ](築地)
カリッと香ばしい天ぷら

「中川さんですか?」カウンターに座るなり料理人に質問する。「そうです」と答えるので「店名と一緒で分かりやすいですね」と笑う。馬鹿げた質問と分かっているが、場をほぐすためには重要な会話だ。料理人と打ち解けるのも早い。
「写真撮っていいですか?」と聞く。カウンターに座って一番緊張するときだ。店主の顔が曇るので身構えた。「熱いうちに食べてもらいたいんですが…」と言われてホッとする。渋々ながらも許してくれたようだ。海老を早業で写して熱々のうちに口に放り込んだ。

しっかりと衣をまとった海老の頭が美味い。キス、銀杏と続く。「みかわさんもこんな天ぷらなんですか?」と聞く。中川さんは茅場町の名店「みかわ」で修行して6年前に独立したという。比較的衣が厚く、こんがりと揚げるので、サクッとして香ばしい。

海老2本、いか2枚を含んだコースにハゼを加えた。「すみいかも大きくなりましたね」といか談義の後に今の季節しか食べられない東京湾のハゼ。キスやメゴチと似ているが、身の割れ方が微妙に異なる。上品な白身のハゼに顔もほころぶ。

大きな穴子を中川さんが割るとシュウッと湯気が揚がる。「穴子は羽田沖が一番ですね」魚は江戸前にこだわる。全国の天ぷら屋の9割以上は東京にあるのではないだろうか。寿司と並んで天ぷらは江戸前の素材がなければ始まらない。

「菌床ですか、原木ですか?」身の厚い椎茸は只者ではない。思ったとおり「原木です」と答える。こんにゃくで有名な下仁田産で、市場では買えないもの。中川さんの同級生が作る椎茸は、レストラン「ヒロ」などの高級店でしか食べられないそうだ。

他のみんなは天茶を選び、銀髪のみが天丼にした。天丼にしたのは味噌汁がつくはずと思ったから。小川原湖産の特大シジミが食べられたのは銀髪だけだった。
満腹になったが太白ごま油と綿実油をほぼ半々に使っているので重くはない。オーソドックスな素材中心なので、料金も手頃。この店を予約した部下を褒めてあげた。
なかがわ
東京都中央区築地2-14-2
03-3546-7335
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2009年11月25日
[喜久好](赤坂)
本物を味わう

「静かですね」椅子に座るなり声をかけた。「明日は予約で一杯なんですけどね。こんな日もありますよ」と主人。「高級ってのがいけないんじゃないですか?」と表の看板のことを口にすると、「うちはそんなに高くありませんよ」と看板の意味するところを説明してくれた。
精悍で男前の主人を前にすると誰もが緊張するだろう。銀髪の軽口に連れはヒヤヒヤしているようだ。写真撮影を許してもらった後、名刺を渡した。主人も仕事の手を止めて名刺を銀髪にくれた。

ひらめの煮こごりと聞いて驚いた。ふぐなどはよく食べるがひらめは恐らく初体験。続いて出たひらめの刺身の確かな歯応え。感激していると、主人の顔が徐々におだやかになってきた。「髪は染めているのですか?」と聞くと笑って首を振る。70歳にはとても見えない。

「それ大好きなんですよ」さよりの皮を串に巻くのを見て嬉しくなる。さよりの身の厚さに感心すると、「かんぬき」だからねと説明してくれた。大きなさよりを閂に例えて呼ぶそうだ。いなだもこんなにしっかりとした身のものは食べたことがない。4時過ぎに起きて、5時半頃には築地の行きつけの中卸で仕入れする。何十年来の習慣があってこそ上物を手にすることが出来る。

「鮟鱇?」「ひらめの肝です」「松輪?」「松輪のサバは夏。これはシャコで有名な小柴産」「スミイカも大きくなってきましたね」「そうだね」。丁々発止の会話が続く。連れはもう安心して食べている。「昔はもてたんでしょうね」と持ち上げると、「忙しくてそんな暇はなかった」と修行時代の話。親方に包丁の背で叩かれた指の傷跡を見せてくれた。「今の若い奴は…」彼の技を盗む若手は横に居ない。それにしても職人の手のなんと凄いことか。

「同じ魚なのにどうして寿司にするとこんなにも味が変わるんですかね」と言うと、主人は大きく頷く。3日漬けた鮪のづけ、中トロ、すみいか、見て美しく、食べて美味い。しゃりを包むように握るために仕込んだ切り身を見せてくれた。手の平に乗せるとすべてきれいに収まる。「しゃり少な目」と言われれば応じるが、ネタも小さくしなければ美しくない。実に面白い。

海老が凛々しく美しい。キリリとした寿司とは対称的に場はますます和んできた。「あれは握と書いてあるんですか?」と料理を離れて壁の書のことを質問する。将棋の故大山康晴15世名人が40年前の開店祝いに書いてくれたもの。花柳界華やかなりし頃、政財界をはじめ多くの名士たちが喜久好で舌鼓を打ったそうだ。


最後に頼もうと思ったコハダと穴子は言わなくても出てきた。このコハダは堪らない。ひらめの椀物、玉、柿を食べてお開きになった。ふと目を上げると主人が名刺を差し出している。「あれっ?最初に交換したのに」と思ったが、素直に受け取った。先ほどのは単に銀髪に応じたもの。今回は主人の心からのものと勝手に解釈した。
「いやー、いろいろ勉強になりました」と頭を下げると「こちらこそ、お客様から教えてもらうことが多いんですよ」謙虚さも名人の条件と唸らせる。奥様に見送られながら店を出た。
ビール1本、日本酒三千盛2合を含めて2人で2万8千円弱と、主人が言ったようにそんなに高くはない。本物の職人、技に出会えたと思えば安いものかもしれない。
喜久好
東京都港区赤坂3-16-2 栄林会館B1
03-3585-2478
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2009年10月09日
[天朝](銀座)
飽きないオーソドックスな天ぷら

あるグルメ本に若い夫婦できりもりしていると紹介されていたが、店主は46歳で既にベテランの域。御徒町にあった先代の下で修行、現在の店を興して9年と年季が入っている。安心して美味しい天ぷらが食べられそうだ。2つあるコースの高い方(8,500円)を選んだ。
鱧と焼きなす、サラダ

銀座と言っても昭和通りを超えているので周囲はとても静かである。L字型のカウンターの一番奥に座った。店主夫妻も共に物静かに見える。鱧と野菜類で料理もゆるやかにスタートした。
銀杏、むかご、海老

「銀杏はトウ、トウ、なんだっけ…」忘れっぽくなっていけない。「祖父江産です。藤久郎(トウクロウ)の旬はもう少し後ですね」と教えてくれる。「むかごは自然薯に出来るやつ(正確には葉の付け根に出来る球芽)だよね。静岡産?」静岡で麦とろ飯を食べたので軽口を叩いてしまった。「日本中どこでも作ってますよ」とつれない。茨城も有名な産地のようだ。
きす、新いか、椎茸、鱧

いやー、この時期の新いかは柔らかくて本当に美味い。店主が吟味して仕入れているという椎茸。「それなら原木だね」と再度知ったかぶり。「いえ、菌床です」癇に障ったのか、自尊心に火を点けたのか、無口に見えた店主が饒舌になってきた。素材のこと、油のこと、こと細かに説明、教えてくれた。もう、こちらから聞き出す必要がなくなった。
めごち、海老の頭、穴子、漬物、栗、さつまいも


特別な珍味・高級品はないけれど、店主が吟味した素材はホクッと揚げられて実に美味い。石川県五郎島金時がブランドさつまいもということを初めて知った。
「ご飯ものの前に何か揚げますか?」と言われて野菜類を追加した。揚げてもみずみずしい茄子だった。
万願寺唐辛子、蓮根、水茄子、天茶、天丼


天茶か天丼と言われたら迷わず一つずつ頼んで味比べするのが我々の流儀。天丼には蜆の味噌汁がつく。半分ずつ食べて満足満足。
五郎島金時など新しいネタもたくさん仕入れることができた。今度別の店に行ったら「これはゴ、ゴ、ゴロー、エーッと、なんだったっけ」と言って失笑を買いそうだ。知ったかぶりを反省しつつ、黙ってられないのが辛い。
天朝
東京都中央区銀座1-27-8 セントラルビル1F
03-3564-2833
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2009年10月05日
[鮨 安吉](福岡)
店主も客も若い人気ナンバーワンの店

博多駅から歩いて行ける場所、通り過ぎてしまいそうな一軒家、立派な店だ。カウンターの中には若い料理人が2人。「ご主人ですか?」半信半疑で質問する。「若いのかな?若く見えるだけなのかな?」20代で開業してから9年、口コミでは博多でナンバーワンの評価を得る寿司屋の店主は「本当に若いです」と答えた。
電話で予約したとき「キャンセルは出来ませんよ」と念を押されるほどの繁昌店。料理はお任せのみ。部下は「何か嫌いなものはありませんか?」と問われて「珍味、肝類はダメです」と答える。「この店で食べたら好きになるかもしれないぞ。そうなったら料理人冥利に尽きるよね」と言うと主人が同意して笑った。いつものように順調なスタートに思えたのだが…
ガリ、いか印籠詰め、白えび、銀杏、さば炙り

あら、さんま、さざえ、あなごの肝、めひかり一夜干し

料理は少量で一品ずつ出て来る。70歳を超える地元の名士Rさんの皿に3品が並んだ。次の料理が来たら乗る場所がない。恐る恐る銀髪が促すと食べるスピードを上げてくれた。部下はあなごの肝で1回お休み。めひかりは脂が乗っていて素晴らしかった。
もずく、いくらごはん、鮑蒸し、あん肝、いわし、

あら、新いか、さわら、こはだ、さば箱寿司、づけ

銀髪が何度も会話のきっかけを作るが、店主は一言で答えて直ぐに下を向き仕事を続ける。日本酒の品揃えも良さそうだ。任せると純米酒以上の酒が続く。「酒が好きなの?」と聞くと「はい」とだけ答え再び下を向く。「この後も予約が入っているの?」と粘ると、左隣の客2人分に手を広げ「こちらは8時から」、我々の方に手を広げ「こちらは8時半」と多めに話してくれた。この不況下で2回転できるのは凄い。
中トロ、えび、うに、しゃこ、あなご、貝汁

かんぴょう巻き、玉、べったら漬

しゃこの寿司は面白かった。どこかで食べた記憶があるが思い出せない。寿司は途中から赤酢のしゃりに変わった。勉強熱心なのが客の心を掴んでいるようだ。Rさんが「若い人が喜びそうな店だね」と銀髪に囁く。「同感です」と銀髪も片目をつぶって笑う。しばらく仲良くヒソヒソ話し。他の客を盗み見るとRさんが最年長、次は銀髪のようだ。
Rさんは食べるのを止めて残りの寿司を部下に与えた。部下に2回休んだあなごの肝とあん肝の代わりが来なかったことを気付いていたのかもしれない。
左隣の客は既に入れ替わっている。我々の席を襲う新手が店の中を覗いたようだ。時計を見ると既に2時間が経っている。驚いた。そんなにゆったりと食べた気がしない。
「コースは終りましたが、他に何か握りますか?」主人は礼儀正しく笑顔で聞いてくれるが、Rさんも銀髪も即座に首を振った。日本酒もしっかり飲んで一人15,000円弱。店を出ると外で待っていた若者2人に睨まれた。
歩きながら「あれだけ飲み食いしたのに安いですね。美味しかったですね」と部下は感動の言葉を投げる。いくつもの店を渡り歩いて修行したという店主は、独自のすし道の頂点をどこに見据えているのだろうか。
鮨 安吉
福岡県福岡市博多区博多駅前4-3-11
002-437-8111
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2009年09月10日
[菊地](渋谷・神泉)
美味くてリーズナブル

「迷惑かけたので行ってやって下さい」と友人に言われて出かけた。カウンターに座って、来たきっかけを伝えると「迷惑をかけたのはこちらの方ですよ」と店主の菊地さんが話し出す。酔っ払った客が友人の背広を間違えて帰ったため、すったもんだしたらしい。
ズワイガニ、まこがれいと白いか

丁寧な仕事ぶり、穏やかな口調から、迷惑を受けた友人が恐縮するような対応をした様子が窺える。迷惑の張本人は酔っ払いなのに非難めいたことは言わない。そんな店主が出す料理が不味いはずがない。たちまちファンになってしまった。
刺身盛合せ

中落ちの巻物、しまえび、つぶ貝、いしがき貝、かつお、まぐろ、あじ。産地や料理法を説明してくれるので、銀髪と話が弾む。全国各地から旬の素材を揃える。鹿児島県出水産のあじは料理人の取り合いになるほどの逸品である。一方で味が良ければ冷凍品や外国産でも排除しない。真摯な姿勢が好ましい。
帆立、さんま、そうはちかれい

「これ好きなんだよ!」帆立の磯辺焼きに噛み付くと、「それは良かったです」と菊地さんが笑う。酒の肴が次々と出て来ると、日本酒が進んでしまう。まあ、いいや!今日は飲んじゃおう。
漬物、新いか、こはだ

菊地に来る気になったのは友人の頼みもあったが、実は新いかを食べるのが目的だった。昼には日本橋のだぼ鯊で新いかの天ぷらを食べた。今年は新子を食べ損なったので、新いかはどうしても食べておきたかった。新いかも新子も食べられる期間が短いから高い。この日のこはだは成長したといっても新子より味は上かもしれない。
いわし、うに、あなご

いわしが美味いこと、美味いこと。三重産のいわしがこんなに美味しいとは思わなかった。うにを食べたところで「何か食べ残したものはありますか?」と聞いたら、あなごを食べてもらいたいと言う。すっかり忘れていた。確かにあなごを食べないで帰るわけにはいかない。あなごが苦手な連れも喜んで食べていた。
「そんなに高くないですよ」と友人が教えてくれたが、食べたものを考えると高そうだ。菊地さんによると彼は接待される側だったというから尚更不安になる。いい加減な奴だ。
それでも小上がりやカウンターに子供連れがいるのが頼もしい。勘定書きを見ると銀座と比べると遥かにリーズナブルなのに驚いた。
友人の背広のお陰でいい店を知ることが出来た。
すし 菊地
東京都渋谷区神泉町20-15 神泉モンド本社ビル1階
03-3780-3943
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2009年07月21日
[若竹寿し](松江市玉造)
日帰り出張に最適の寿司屋

早めに仕事が終っても16時35分の出雲空港発羽田行きには乗れない。次は最終便の19時35分。松江市内では開店が早い店でも5時からなので、これまでは食事をして大慌てで空港に向かっていた。お粗末ながら、松江から出雲空港までの途中にある玉造温泉で食事をすることは考えもしなかった。
ネットで若竹寿しを見つけた。11時開店で夜中までぶっ通しでやっている。4時20分に仕事が終わりタクシーで若竹寿しに向かった。客はもちろん我々だけ。店は思ったより風格があるがそれもそのはず店主は3代目とのこと。「老舗ですね」と言ったら、「玉造温泉では老舗なんて言えませんよ」と謙遜する。日本最古の温泉と言われる玉造温泉には数百年の歴史を持つ旅館がいくつもある。
お通し、刺身(とびうお、しろいか、さざえ)

松江は宍道湖七珍が有名だが日本海に面していることを忘れていた。「とびうおが獲れるの?」あごと聞いて思い出した。土産物屋にはあご(とびうお)の野焼きが並んでいる。さすがに本場で食べるとびうおは美味い。
刺身(水だこ、いさき、あわび、白ばい貝)

「地元のものを中心にお願いします」と言ったのは愚かだった。ガラスケースに並ぶのは殆どが地物である。冬にはズワイガニもある。鮒の刺身も食べられるそうだ。もっと早く来るべきだったと後悔した。
のどぐろ一夜干し

「のどぐろを焼きましょうか?」と聞かれ、知ったかぶりをして「のどぐろは富山じゃないの?」と言ってしまった。浜田市の漁港から出荷されるのどぐろは「どんちっちのどぐろ」と呼ばれるブランド魚とのこと。脂の乗りがマグロ並みというだけあって今まで食べた中で一番美味しいのどぐろだった。店主と話している間に部下が全部食べてしまいそうな勢いなので慌てて取り上げた。
あご天、赤ウニ

店主のお母さんが作ってくれた揚げ立てのあご天。ハフッハフッ、ウマイ、ウマイ。地物の赤ウニ。店主に奨められたら断れない。4,200円は高いと思ったが、箱で出てきて納得。ミョウバンの臭いがしなくてなかなかいける。
寿司

かんぱち、まぐろ、とりがい、ひらめ、いずれも地物である。まぐろも今の時期は日本海を泳いでいる。ちょっと多目のシャリは客の7割以上を占める地元の人たちの好みかもしれない。次回はちょっと我侭を言わせて貰おうか。
タップリ時間があると思っていたら、タクシーが迎えに来てしまった。運転手さんには悪いが4種類目の地酒を飲み終えるまで待ってもらった。次回は秋か冬か、松江に出張するのが楽しみである。
若竹寿し
島根県松江市玉湯町玉造83-6
0852-62-0831
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2009年07月15日
[てん茂]②(日本橋)
鈴虫の音色を聞きながら江戸の味

名古屋からの客をランチで天ぷら屋に連れて行くと部下が言う。彼が言う店は美味しい天ぷら屋だが、ランチ時は2,000円前後の定食を食べる会社員達でごった返す。ミシュランの星をもらった店でもランチをやっているところは似たようなものだ。しばし考えた末、てん茂に行くことに決めた。夜に行ったことがあるので勝手は分かっている。(前回→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/03/post_1193.html)
昼は6,300円のコースもあるが、9,450円、12,600円のコースは夜と同じ。この金額なら昼間も混む心配はないだろう。案の定、我々の他には2人居ただけだった。
緑竹

いつものように海老からスタートする。前回はうどが入ったところは緑竹になった。「まだ竹の子があるんですか?」と聞いたら、待ってましたとばかり2代目が説明してくれる。2代目といっても80を超えている。台湾原産で夏場の高級竹の子として知られる。多くは鹿児島で栽培されているそうだ。えぐみがなくて美味しい。竹の子の王様と呼ばれるのも解るような気がする。
パセリ、稚鮎

日本の天ぷら屋でパセリを揚げたパイオニアが2代目だという。「飾り物を客に出すなんてとんでもない!」と先代に随分叱られたそうだ。50年以上前のことを懐かしがっているようだ。その間も3代目が天ぷらを揚げる。琵琶湖産の稚鮎は湖に留まっていると大きくならないそうだ。内臓の苦味が美味しい。
「鈴虫が鳴いてるの?本物?」と客が言って初めて気がついた。スピーカーから流れているかのように澄んだ音が店に広がる。「本物ですよ」と2代目が得意げに微笑む。後ろの椅子の下に籠が置かれているらしい。
きす

前回も食べた定番のきす。一度開いて骨を抜き、再び元の形に戻して揚げるのがてん茂流で、初代から2代目、3代目と受け継がれている。
天茶

他の客に邪魔をされずに食べられるのはいいが、ちょっと飲み過ぎたようだ。灯りを落とした店内では夜と錯覚するのは鈴虫だけではない。飲んだ後の天茶が美味い。
「次回はうなぎにしましょうか?」と言うと、客もあっさり同意した。名古屋にはうなぎの美味しい店がたくさんあるが、蒸しが入る関東風とは違う。どこでも食べられるのは天ぷらも同じだが、東京で食べるとちょっと違う。それを感じてくれたとしたら、てん茂にお連れした甲斐があったというものだ。
てん茂
東京都中央区日本橋本町4-1-3
03-3241-7035
http://tenmo.jp
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2009年07月12日
[うまい鮨勘]②(赤坂)
回転寿司が物足りなくなった人に

都議選の投票用紙が届いた。宛名が4つもあるので首を傾げた。一瞬考えて気がついた。回転寿司を喜んでいた下の娘も20歳になったのだ。
「誕生祝いはどこでする?」と聞いたら鮨勘がいいと言う。板さんに声をかけるのが嫌だと言っていた娘も、前回行って鮨勘は気に入ったようだ、すねかじりの新成人にとってはちょどいい寿司屋である。
上の娘はもちろん親の助けなどいらない。前回と同じように貝ばかり食べている。今回は担当が違うにもかかわらず、いつの間にか前回の担当に握ってもらっていた。

銀髪はいつものように刺身で酒を飲む。次に鮭の皮目を焼いてもらう。箸を伸ばすのはいつも下の娘。パートナー殿と上の娘は我が道を行く。

パートナー殿がメゴチの天ぷらを頼んでしまった。親切にも1枚分けてくれると言う。天ぷらは天麩羅屋で食べた方がいいと言おうとして口をつぐんだ。口は災いのもと。
ビールだけでなくワインも鮨勘ブランドがある。頼んだ後に甘口であることが分かった。一口飲んで娘たちに渡した。まだ甘い酒が好きな大人だ。

金目鯛でダラダラ飲んでいる間に、女性3人の注文するスピードが落ちてきた。アボガドの巻物を頼んだので、一つもらった。目の前にあった巻物が変わっているので注文した。高菜巻きだと言う。4個ぐらい来るかと思ったら1個だけ。それならそれで有難い。


そろそろ握ってもらう頃だが、既にみんなはお帰りムード。銀髪がダラダラやってお腹一杯の幸せな気分を壊す愚は犯せない。勘定をしてもらった。
今日も鮨勘はみんなを楽しませてくれた。ありがとう!
うまい鮨勘 赤坂店
東京都港区赤坂3-13-10
03-3560-6711
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2009年07月10日
[羽前 山久](入船、八丁堀)
頑張れ寿司屋の新星

「まだオープンしたばかりなんです。応援してくださいよ」と友人のI氏から電話がかかって来たのは札幌のたる善で寿司を食べていたときだ。偶然にも寿司屋への誘いだったので笑ってしまった。
入ってすぐに4人掛けのテーブル席、店主1人がやっと入れるL字型のカウンターが8席のこじんまりとした店である。テーブルに3人の女性が居た。カウンターの左に2人。もう1人が来るのを待っているようだ。カウンターの右端の1人は予期せぬ客だったようだが店主とは周知の間柄に違いない。我々は左から4つ目と5つ目の席にゆったりと座った。客がまばらで予想通りと思ったら、予約で満席と知って驚いた。

料理はお任せでどんどん出て来る。I氏は酒を飲まないのですぐに寿司を食べ始める。店主は手馴れたものである。間もなく若い3人連れが入って来た。銀髪はまだ空いている左席に動いた。I氏は銀髪が居た席に。3人が納まる席が出来上がった。

右端の1人は食べるスピードを上げて間もなく出て行った。入れ替わりに左隣2人の待ち人がやってきた。彼女のために再び大移動が始まる。我々2人と若者3人が一つずつ右にずれた。ようやく予約どおりの布陣になった。助け合いが美しい店である。

「純米酒はないんですよ」と言われてあるのは吟醸酒以上かその反対か考えた。あるのはもちろん下の醸造酒。真澄の300ml瓶が出てきた。客の懐具合を考えて高い酒は置かない方針らしい。主人の小松さんは23年間寿司清で働いた。修行したというより幹部社員だったのだろう。独立しても寿司清の方針をなぞっている。寿司清の近藤社長から送られた祝いの花が輝いていた。

一瞬、息が詰まる。煙草の煙だと気がついた。左を見ると女性が右手の煙草を耳の高さに掲げている。肘の角度はオードリー・ヘップバーンのようだ。他の席からも紫煙が立ち上る。男たちが真似ているのはジェームズ・ボンドだろうか。愛煙家にはいい店だ。
店名のごとく主人の小松さんは羽前(山形)の出身。山久はおじいさんが使っていた屋号とのこと。出てきた漬物はおばあさんの自家製。「お先に失礼します」と客たちに挨拶して帰って行ったのは奥様。満を持して独立開業した小松さんをファミリーが支えているのが分かる。
I氏に小松さんは寿司清の店長を歴任した人と聞いたので、強面かと思っていた。しかし、柔和で人柄がとても良さそうだ。寿司清の頃の常連さんで店が一杯になるのもよく理解できる。
小松さんの挑戦はまだ始まったばかり。これからの発展を祈るばかりだ。
羽前 山久
東京都中央区入船1-4-8
03-523-2733
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2009年06月29日
[たる善]②(札幌)
札幌でナンバー1の寿司屋

銀髪の左隣に堂々とした地元の紳士が座ったのは、我々がほぼ満腹になった頃だった。「札幌にいい寿司屋はたくさんあるけれど、たる善が一番だと思うよ」と言われて、銀髪も大きく頷いた。
たる善に初めて行ったのは昨年の10月、まだ移転前の店だった。新しい店はカウンター席が二室あり、喫煙可の方を覗くといつもは東京新丸ビル店を仕切るオーナーの眞田さんが居た。銀髪は大好きな板長・大坂さんの禁煙カウンターの中央に座った。5時半、まだ客は他にいない。
利尻うに、毛蟹、玉子、するめいか、ほっき貝



今日の料理は目の前に立つ高原さんにお任せした。解禁したばかりの利尻うにをはじめ地元の食材が並ぶ。写真では動くいかを見せられないのが残念だ。
ボストン鮪、しまえび、とうもろこし、にしん


するめいかで太る本鮪はまだ津軽海峡にいない。今の時期、大トロを食べたければ輸入物になる。鮪の後には再び北海道の食材。
数の子、あん肝、しまえび、時鮭、漬物、笹竹の子


数の子はたる善の自家製だと言う。国産にしんの卵を使い、塩抜きの必要のない美しい数の子である。時鮭はときしらずと呼ばれるように秋鮭と異なり今が旬。昼間覗いた二条市場でも主役を張っていた。
ぼたん海老、水だこの子、はまぐり、白魚、ます子、おかか&山わさび、白老牛


北海道で竹の子というと笹竹の子のことらしい。今回の出張中に市場や露天で何度も見た。この日、一番面白かったのが水だこの子。ねっとりとしてなかなかの珍味だった。
牡蛎で有名な厚岸産の白魚。「北海道でも獲れるの?」と驚いているところにやってきたのが冒頭書いた地元の紳士である。彼が頼んだものを見て「それって筋子?」と失礼ながら口を出してしまった。どうにも我慢が出来ない仕方がない奴だ。「ます子ですよ。もうじき終わりだね」教えてくれたのは紳士である。「さくらますの卵です。これも自家製です」と遅れて大坂さんが口を出す。
「何を飲んでるんですか?」と紳士。「北海道地酒の大吟醸です」と答えると「北の勝が一番」とご馳走してくれた。本醸造だが癖がない。「料理を邪魔しない酒ですね」という銀髪のコメントを気に入ってもらえたようだ。「大坂さん、山わさびと鰹節に醤油をかけたやつを出してあげて」と親切だ。鼻にツーンとして刺激的である。
穴子、時鮭、にしん、さくらんぼ

最後に3カンだけ握ってもらった。刺身でも食べた時鮭やにしんだが、寿司にするとまた違った味わいがある。
「もっと食べるか?」と部下に聞くと、日本酒で真っ赤になった顔を横に振った。
今回もたる善は素晴らしかった。そして、実に楽しかった。
たる善
北海道札幌市中央区南5条西4丁目クリスタルビル1階
011-511-4484
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2009年06月15日
[寿司清]②(新宿)
やっぱり楽しくリーズナブルな寿司屋

3年振りにやってきた。あの時はカウンターのど真ん中に座ったが、今日はコーナーの端っこ。見える魚は限られるし、目の前の板さん以外は後ろ頭しか見えない。
お通し(フカヒレ軟骨)、ウニ

「きれいなウニだねー。洗った後に並べたの?」板さんに最初に声をかけるときは、銀髪といえども少し緊張する。「いいえ、普通に洗っただけです」おそらく向こうの方が緊張しているだろう。胸の名札で大場さんとは分かったが、笑顔を引き出すタイミングは難しい。
ミズイカ、イサキ、カレイ、アジ、イワシ

取りあえず目の前にある魚の中から刺身を造ってもらった。「イワシは酢につけてあるの?」一口食べて質問する。「サッと酢にくぐらせてあります。アジも一緒ですよ」と答える。アジは身が厚いので分からなかった。なかなか話は膨らまない。
トリガイ、アカガイ、アナゴ

江戸前にこだわる高級店ではアナゴの白焼きを頼むと「うちのアナゴは全部煮てますから」とムッとされる。大衆的な寿司清は堂々と本日のお奨めに掲げているのが嬉しい。
キンメ、ホウボウ、白エビ、トロ

左隣に若い女性2人が座った。我々に背を向けていた板さんが彼女たちの前に立ち、魚の名前をスラスラと言う。名札を見たら副店長の小月さん。「あいつだ!」3年前相手をしてくれた板さんをやっと見つけた。
「あのおじいさんは最近も来ているの?」と声をかけた。「しばらく来ないですね」と言いながら、怪訝そうに銀髪を見る。若い女性たちから小月さんを奪い取ってしまった。90歳を超えてさすがに前のように来られなくなった老人の話で盛り上がる。
突然「あの日も殻つきのウニを食べた!」と連れが口を挟む。まったく蛍光灯である。老人の話が出るまでこの店に初めて来たと思っていたというから恐れ入る。いつの間にか大場さんも打ち解けて会話を盛り上げている。笑うと年齢相応に若く見えるから楽しい。たくさん笑って勘定の時間になった。「小月さん、また3年後に会おうね!」と言って最後の笑いを誘った。
寿司清
東京都新宿区新宿3-15-17 伊勢丹会館3F
03-5366-8830
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2009年05月29日
[だぼ鯊]⑥(日本橋)
もうすぐ終わる銀宝

今年もあぶないところでギンポオを食べ損なうところだった。最盛期がゴールデンウイークに重なり、営業日数が減るため時が経つのが早い。地方から来る人を連れて行くところを思案していて思い出した。お江戸日本橋の名物料理トップ3は寿司、天ぷら、鰻。そうだ!ギンポオ(銀宝)を忘れていた!てなもんだ。
一番好きな天ぷら屋さんは「だぼ鯊」。扉を開けた途端に笑顔で迎えてくれる。「他の2人はお任せ。俺はお好みで」と我儘が言えるのも良い。大将は臨機応変、変幻自在である。
稚鮎、三つ葉

琵琶湖の稚鮎はちょっと苦味があって美味い。軽く三つ葉を食べてお目当てのギンポオを揚げてもらう。
ギンポオ

しんこ、新いか、はぜ、ギンポオなどは、大きく育つ前の僅かな期間が旬。特にギンポオは大人になると皮が固くて食べられない。江戸前天ぷら、通好みの代表格である。
小玉ねぎ、あおりいか、めごち

他の人たちが一通りコースの品を食べ終えた。すかさずギンポオを勧める。大将が丁寧にギンポオの説明をしてくれる。これに口を挟むのが銀髪の悪い癖だが我慢できない。もちろん銀髪も2匹目を頼んだ。
ギンポオ、あなご


最後は穴子。ギンポオと食べ比べする。ホカホカ、サクッ、は一緒だが歯ごたえが微妙に違う。もちろん味も。イヤー、楽しいな。
しじみの味噌汁

連れの一人が椀物を頼んだ。立派なしじみは身も美味しく、いいだしが出ている。「十三湖?小川原湖?」と質問したら、茨城県涸沼(ひぬま)産とのこと。茨城県は宍道湖を擁する島根県、十三湖や小川原湖がある青森県に次いで全国第三位のしじみ漁獲高を誇る。イヤー、まだまだ知らないことはたくさんある。
知らないでいれば食べ損なって悔しい思いをすることはないが、知った以上は食べずにはおられない。何はともあれ今年もギンポオを2匹食べることができた。めでたし、めでたしである。
ギンポオが食べられるのもこれから1週間あるかないか。食べたい人は急いで天ぷら屋さんへ行こう。もちろん、だぼ鯊がお勧めである。
だぼ鯊
東京都中央区日本橋3-3-14
03-3271-7533
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2009年05月25日
[うまい鮨勘](赤坂)
家族で寿司カウンター

我がパートナー殿がお仲間と行った熱海で気に入った店が鮨勘だと仰る。前に二人で行った新橋店に今度は家族で行こうと提案された。ホームページで調べて、結局赤坂店に予約を入れた。
ながーいカウンターのほぼ中央に座った。最初にオーダーしたのは銀髪。お任せで刺身を作ってもらった。

カラーのメニューは子供にとって分かりやすくて有難い。1個からオーダーが出来ると知って、上の娘が4種類の貝を頼んだ。これを見てパートナー殿がいか尽くし、下の娘が鮭尽くしを頼む。隣に座った下の娘の食べたものだけ写真に撮った。鮭の後はヒラメとカレイのエンガワの味比べと遊んでいる。

上の娘は2回目も貝にこだわる。パートナー殿は海老尽くし。板さんはオーダーが分かりやすいと感謝している。鮨勘は豊富なネタが自慢だ。ぶどう海老など幻の高級海老もある。フカヒレ寿司は笑わせる。馬肉の刺身も面白い。

下の娘が今度はポン酢味の寿司を5種類頼んだ。他にタコの吸盤、鮪ユッケなど遊び心を満たして喜ぶ。

銀髪は再び刺身を注文した。カウンターの中を覗いて今度は自分で魚を選ぶ。鯛の湯引き、トロサーモン、アジにイワシ鯨を加えた。

そろそろみんなが満足したようなので、銀髪は穴子の寿司を頼んだ。半身を煮つめで、残りを塩味にしてくれる気遣いが有難い。

店独自のビールが2本あり、それぞれ個性があってなかなかいい。日本酒の品揃えも悪くない。

勘定をして店を出た。「妙な注文の仕方で変わった家族と思われただろうね」と言うと「寿司屋さんで刺身ばかり食べている方がよっぽど変わっている」と言い返された。
いずれにせよ好き勝手に注文できて、しかもリーズナブルで美味しいと好評だった。担当してくれた板さんがイケ面だったのも彼女らのご機嫌の理由。みんなが喜んでくれれば銀髪も嬉しい。
うまい鮨勘 赤坂店
東京都港区赤坂3丁目13-10 赤坂Bizタワー向い
03-3560-6711
http://www.sushikan.co.jp/
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2009年04月21日
[六覺燈](銀座)
銀座に溶け込む高級串カツ

大阪黒門市場に本店があると聞いていたので「串カツですよね」と切り出した。関東では串揚げと呼び、串カツは豚肉と野菜のはさみ揚げを指す。大阪名物串カツは「ソース2度つけ禁止!」という言葉に代表される庶民の食べ物である。
サラダ

高級串カツ店らしく、トマト・キャベツ・ごぼう・大根・きゅうり・ヤーコン・スナップエンドウが入ったサラダが美しい。なしのような味のヤーコンが珍しく、固い皮の塩トマトが甘い。
牛肉、貝柱、エンドウ豆のコロッケ

とろけるような牛肉やプリッとした海老を食べて、素材が高級なら串カツといえども庶民の手の届かない料理になると納得した。ところがエンドウ豆のコロッケが出てきたところで様相が一変した。単にネタを高級にしたわけではなく、かなり手を加えたものが次々と出てくる。
和食なら日本酒と決めている銀髪だが、揚げ物にはワインがいい。赤ワインをグラスで求めたら、ボトルを開けてデカンタに移し変えるので驚いた。値段が跳ね上がるのを覚悟しなければならない。
とんぶり、あさり、桜えびもち

基本コースは20本で、中でも一番鮮烈だったのが桜えびもち。銀髪の目の前に置かれた途端に香りが立ち上る。桜えびを炒って、車えびのミソを加え、餅と合わせて揚げたそうだ。
揚げてくれる楠さんと楽しく会話していたら、名札をつけていない人がにこやかに現れた。店主の水野さんだ。やわらかな大阪弁の合間に強烈な自負が顔を出しては消える。しばし空気を支配した後、客が入って来たからと風のように自分の持ち場に去っていった。
「楠さんも大変だねー」と声をかけたらなんとも言えない笑顔が返ってきた。
鮭、こんにゃく、豆腐

桜えびの次に感心したのがこんにゃく。歯応えがあって実に面白い。これだけ料理の工夫をすれば店主も従業員も楽しくて仕方がないだろう。ワインに合う自家製パンや各種デザートも大阪生まれとは思えないような(失礼)洗練されたものを出す。
勘定を終わったところで店主が再登場し、店の外まで見送ってくれた。「ニッポンイチや、ニッポンイチヤデー!」と、後ろで言っているような気がした。
六覺燈
東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル4F
03-5537-6008
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2009年04月16日
[天松](渋谷)
気取らない老舗の天ぷら

2階のカウンター席に座ろうとしたところで先客と板さんとの会話が聞こえた。コース料理ではなくお好みで揚げてもらえるようだ。料理人が銀髪の方にやって来たので、こちらもお好みをお願いした。「お通しはいかがしますか?」という質問には驚いた。内容を聞いて天ぷらに専念することにした。お通しを断ることが出来る店はあまり記憶がない。
カウンターの上に置かれた野菜の籠盛りからたらの芽、こごみ、ふきのとうの山菜3種、旬の竹の子、間に定番の海老、キスを挟んでもらうことにした。


板さんが座敷の客に揚げている白魚を見てこれを追加。季節の魚介類のメニューはなく、カウンターの上にも乗っていないので手探り状態。「はまぐりはあるの?」「ありますよ」鹿島産の立派なはまぐりが出てきた。「高そうだね」と言うと「はい、高いです」とあっさり肯定されて苦笑い。どうも話が続かない。旬の素材が一段落したところで穴子を頼んだらまず骨が出てきた。穴子はもちろん江戸前羽田沖。


「ごま油の比率はどのぐらい?」と聞いたらちょっと憮然としたように見えた。老舗の江戸前天ぷら屋さんが使うのは100%胡麻油と決まっていると言いた気だ。焙煎したものと、生絞りを調合しているそうだ。「穴子が嫌いと言っていた連れが、美味しいってさ」と褒めたら板さんは初めて嬉しそうに笑った。
デザート代わりに頼んでおいたかぼちゃとさつま芋を食べてお開きにした。甘いものが苦手な銀髪でも天ぷらにすると美味しく感じるから不思議だ。
天松は昭和11年創業。新宿のつな八や船橋屋などの老舗天ぷら屋に通じるものがある。奇をてらわないオーソドックスな天ぷらをリーズナブルに食べさせてくれる店である。ミシュランに選ばれることはないだろうが、誰でも気軽に利用できる店も貴重である。食べたい物を食べたいだけ食べることができるのも嬉しい。
連れが「今度、子供を連れて来よう」と言う。老舗でも肩肘張らないところがいい。
天松 渋谷本店
東京都 渋谷区 道玄坂1-6-1
03-3462-2815
http://www.tenmatsu.com/
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2009年03月30日
[秋月](渋谷)
外国人も集う正統派の寿司屋

「あれは3月ですよね」正面の壁の立派な書は見たまんま。「来月は4月に替えるんですか?」と聞いたら「いいえ、ずっと3月です。初心を忘れないように開店した3月の書を掛けているんです」とのこと。いつものように名刺を渡そうとすると、入り口付近の客に対していた料理人が名刺を持って飛んできた。彼が主人の秦さんだった。
わさび菜、白魚、たこ、ホタルイカ、さば、ひらめ


銀髪の相手をしてくれる料理人の名前は聞き損なったが、料理は彼と秦さんが手分けしてやっている。今月でオープンから丸8年とは思えない清潔な店内と同様に、料理も器も美しい。
宍道湖産白魚、富山湾産ホタルイカの沖漬け。いい仕事をしているたこ、さば。日本酒以上に豊富な品揃えのワインはカウンターと反対側のセラーに積まれている。正統派の料理に対して今風のワイン。主人の個性が垣間見える。



自家製のさわらと桜マスの燻製。鮪の中トロとづけ。炙って香ばしいみる貝でお任せをストップ。コース料理を食べている隣のイカが美味しそうで、我慢できずに追加した。これから産卵期に入ると味が落ちる魚もあるが、卵を抱いて美味しいものもある。このイカは美味しい代表格である。
イカに満足した後はお好みで握ってもらう。1カンずつでもいいのが有難い。大トロ、コハダ、春子、ウニ、はまぐり、穴子と続く。今日のハイライトは春子。かすごと読む鯛の稚魚。まさに春らしい一品。小さなくせに品のいい脂が乗って実に美味い。
他の店の寿司とちょっと違うなと感じたのがシャリ。赤酢など3種類を使った酢めしは少し色づいている。酢がきつくなくまろやかなのが銀髪好みだった。
入り口付近に外国人の二人連れが居たが、個室から出てきた家族も外国人。更に左隣にフランス人カップルが座った。若い料理人が達者な英語で応対している。海外経験が豊富な秦さん同様、彼も外国の寿司屋で働いていたとのこと。カウンターの料理人3人のうち2人が英語を使える寿司屋は外国人にも口コミで広がっているのかもしれない。
銀座久兵衛出身の秦さんらしく、凛とした雰囲気の店だった。
秋月
東京都渋谷区円山町22-16
03-5458-1550
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2009年03月19日
[とりで寿司]③(新橋)
いつも楽しいとりで寿司

いつものように6時に到着、いつもの席に座る。いつも運がいい。いつものように自家製の干物が出されたが、内容は若干異なる。大好きなサヨリの皮と珍しい穴子の内臓の串を選んだ。もちろん、連れが頼んだ分も少し味見した。
初めての客が注目したのは山陰沖に生息する鬼えび。いかつい顔をしている割に鋭利な角や殻は外敵に狙われないための鎧代わり。素材の説明を面白おかしく教えてくれる。
キンメ、ウマヅラ、カワハギなど刺身が少しずつ客に行き渡るのもとりで寿司の特徴。「こちらも同じものを」と言わずとも、客の心理を見透かしている。


目ざとく小さなとうもろこしを見つけた連れのために皮を剥ぎ七輪に乗せる。じゃがいもが出てきて「珍しいねー」と言うと、「刺身ばかりじゃ飽きるでしょ?」と明快だ。料理人だけでなく客が持っている常識や先入観に囚われない。さりげなく気取りがなく客に接する姿が心地よいい。


茹で上がったばかりのタコ、元気良く動く呼ぶ子のイカなど初めての人はみんな大喜び。遠藤さんの手のひらからウニや穴子の寿司を壊れる前に急いで口に放り込む趣向も受ける。素材の吟味や料理の腕は言うまでもないが、楽しい食事を演出するのも見事なもんだ。


女性客に供されるデザートは結婚前にパティシエをしていた奥様の手作りとのこと。3回目にして初めて聞いた微笑ましいエピソードである。なーんだ、愛されているじゃないか、こんちくしょう。
美味しい料理と酒、楽しい会話、いつものように満足して、さて勘定。値段を見て「アレッ?」と目を上げると、「お土産のちらしばら寿司が6,000円ですからね…」と申し訳なさそう。お互い苦笑いを交わした。見た目どおり美味しかったと後日教えてもらった。
海に囲まれ、北から南に長く伸びる日本列島。回遊する魚もあれば磯から離れない魚もある。浅瀬の魚貝や海の底に潜む深海魚・甲殻類。冷凍物や輸入物が幅を利かす昨今、日本の季節の移り変わりを感じることができる寿司屋は意外と少ない。またとりで寿司に来よう。
とりで寿司
東京都港区新橋4-10-6
03-5401-1441
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2009年03月18日
[てん茂](日本橋)
本物の江戸前天ぷら

「オッ!凄いね」老舗の雰囲気溢れる店の前に立ってつぶやいた。店に入ると時代を遡った感じがする。初代が明治18年(1885年)に屋台から始め、現在地に店を構えたのが明治40年。関東大震災や戦災に見舞われて立て替えること3度、現在の建物は昭和22年(1947年)に建築された。定番の質問に80を超えた3代目が淀みなく説明してくれる。
揚げ役の4代目の前には黒ずんだ油の鍋が見える。煎った胡麻油で揚げる昔ながらの江戸前天ぷらの店と分かる。雰囲気に気圧されそうになるのをこらえて「毎日、油の前にいると気持ち悪くなりませんか?」と軽口を叩くと、予想外の質問に3代目の表情が和んだ。
漬物、大根おろし、海老、うど

漬物、普通の大根おろしと柚子が混ざった大根おろしが並ぶ。海老を食べて笑みがこぼれた。菜種油や綿実油など透き通ったサラダ油系の揚げ油を使う店が増えたが、さすがに胡麻油100%で揚げると香ばしい。これが伝統の天ぷらの味である。
小なす、ゆべし、稚鮎、白魚

日本酒を頼んだらゆべしを出してくれた。お菓子ではなく、柚子に味噌などを詰めて作る酒の肴。自家製だそうだ。これは堪らん。稚鮎は琵琶湖産、白魚は兵庫産。3代目の説明は快調である。へー、なるほど、フーン。感心して、頷いて、食べて笑う。
銀杏、スミイカ、樋湯葉、椎茸海老しんじょ、めごち

「噛んでいると大豆の味がしますよ」と出された樋湯葉(とうゆば)。湯葉をすくう棒に絡まった湯葉を固めたもの。「本当だ!」思わず声が大きくなった。まるで大豆をそのまま食べているようだ。3代目が樋湯葉の袋を見せながら解説してくれる。
つくし、きぬさや、きす、海老、ふきのとう

「箸置きが素敵ですね」連れも負けずに話しかけると、3代目はますます饒舌になる。4代目は黙々と揚げながらも、時おり父親に合いの手を入れる。他の店員二人の暖かい視線も加わって、実に楽しい。
穴子、青唐、かきあげ、味噌汁

「天ぷらは野菜の季節感があっていいですね」と銀髪が通ぶると、「野菜を揚げるのは精進揚げの専門店で、昔は天ぷら屋は野菜を使わなかったんですよ」と言う。まったく教えられることが多い。
胡麻油100%では胃がもたれるという通説も、てん茂には当てはまらない。家に帰ってもコートから立ち上る胡麻油の香りは不快ではなかった。「私共にとっては胡麻油の臭いは空気のようなものでしてね…」3代目の言葉を思い出した。80歳を過ぎても元気、頭脳明晰。油が気持ち悪いはずがない。
てん茂
東京都中央区日本橋本町4-1-3
03-3241-7035
http://tenmo.jp
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2009年02月24日
[大寿司]3(錦糸町)
久々の錦糸町

最初に大寿司に来たのは8年ぐらい前だったと思う。錦糸町駅からすぐなのに、線路沿いの道は少しわびしい。遠くからでも赤い立て看板は目に付く。店に入るとすぐにカウンター。右の壁には北の湖親方の写真。いつもと変わらない風景だ。

Mさんの憧れだった厚切りのマグロを乗せたゲタが目の前に置かれた。タイラガイ、ヒラメ、ボタン海老、ウニ、イカなど、相変わらず豪快な盛り付けである。右上のニシンは北海道では食べたことがあるが、多分東京では初めてだ。
海が荒れて国内産生マグロのいいものがないと大将は残念そうだ。輸入物でも立派なマグロにMさんも満足している。あらかた食べ終えるとツブガイ、サヨリ、アカガイが追加された。

「何か焼きものはありますか?」と聞くと大将は悩む。どれも刺身や寿司のネタばかりだ。「海老でも焼きますか?」と生簀を指差すので慌てて制した。「それはもったいない!」
関サバ、ほうぼう、いかを従えて車海老が登場した。さらに豪華なあわびのお造りも加わる。
以前、酒は一種類しかなかったが、時勢を反映して冷酒の種類も少し増えた。八海山などの銘柄酒も置いてある。
しばらくは我々4人で大将を独占できると思っていたが、早い時間なのに次々と客が入ってくる。席を詰めてカップルを迎えたところで満席になって驚いた。
大将と女将さんの二人でやっていた店は、女将さんが入院して休んでいた間に息子が加わった。今は女将さんも復帰して三人体制になったので、満員の客にも対応できる。壁の写真の北の湖親方ほどではないにしても、しばらく来ない間に店も変化していた。

「刺身でお腹一杯になった。いやーよかった!」とMさんは満足気だ。巻物と穴子を食べてお開きにした。
「銀髪さんのブログで来る人もいて助かります」と女将さんが勘定場で頭を下げてくれる。頑張ってね、大将、女将さん、そして二代目!
大寿司
東京都墨田区錦糸4-5-8
03-3625-2591
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2009年02月08日
[飛鳥](新山口)
新山口駅でのランチ
新山口駅で新幹線を降りて昼食をとることにした。駅を出て見回しても全国展開するチェーン店が目につくぐらいで他に飲食店らしきものは殆どない。思案していると部下が駅裏に回りましょうかと言う。新幹線が開通するまでは、駅の反対側が繁華街だったはずだ。
跨線橋を歩いて駅裏に到達すると、スーパーのビニール袋が寒風にあおられ、カサカサと転がり舞っていた。まるで西部劇の根無し草のようだ。スーツに鞄より、テンガロンハットに拳銃の方が似合いそうだ。レストランらしきものも殆どない。ようやくバス停の横道に寿司屋を見つけた。
店の外には客寄せのメニューらしきものはない。高くても仕方がないと思って入ったら、カウンターの端に若いカップルが座っているので安心した。メニューを見ると1,000円以下のランチもある。せっかくだから寿司がつくセットを注文した。

値段の割に立派だ。主人が寿司を作り出したが、まずはカップルの方に行くようだ。「繁華街はどこにあるんですか?」と店の女性に尋ねる。バス停の向こう側にあるが、昼間は閉まっているとのこと。新幹線が開通して、どんどん寂しくなると言う。
おばさんたちのグループが入ってきた。躊躇なく店の奥に進み、個室に納まった。地元の常連さんだろう。旅行者なら高級なイメージがある寿司屋で、しかも値段表も出てないような店に入る気はしないだろう。
「値段表を出した方がいいですよ」とアドバイスしようかと思ったが、黙々と寿司を作っている主人を見て、余計なことを言うのは止めにした。

料金に見合った寿司と小さな茶碗蒸しを食べて店を出た。若い部下には物足りなかったかもしれないが、銀髪にはちょうどいい。
店に入る時には気付かなかったが、バス停は秋吉台・秋芳洞への基地のようだ。暖かくなると観光客で賑わうようになるのだろう。根無し草のイメージを頭から追い出すことにした。季節が変われば全てが変わる。飛鳥の店先にメニューが出ているかもしれない。
寿司和食 飛鳥
山口県山口市小郡下郷明治西1235-8
083-972-4138
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2009年01月26日
[鮨屋時蔵](熊本)
熊本は馬肉だけじゃない

熊本に行くと言ったら誰もが「馬刺しですねー」と羨ましがる。しかし毎回馬肉では能がない。部下に「馬刺しと寿司、どちらがいい?」と聞くと、銀髪の心をしばし読んで「寿司がいいです」と答えた。よく出来ましたと言いたいところだ。
熊本出身とはいえ、若い部下が寿司屋を知っているわけがない。ネットで評判が良くてリーズナブルな店を探して電話した。一度電話口から遠のいた声が戻って来て「大丈夫ですよ」と言われるとホッとする。タクシーでの行き方を教えてもらい電話を切った。
8時20分に到着。カウンターに座り、「地物の魚ってあるんですか?」と聞いたら大将は苦笑い。「もちろん目の前に海がありますからね。でも、品切れになっているのも多いんで」と申し訳なさそうだ。


お通しはハイウオ。いきなり食べたことがない魚かと思ったらカジキのこと。地方によって魚の呼び方は異なり面白い。「カジキとマグロは別種でカジキマグロと言うのは間違い」と解説が入る。さば、かんぱち、まはぎ、こはだと続いた。
我々に料理が来なくなった。座敷の客がメインの寿司を食べる時間になったようだ。しばし、酒の肴は主人との会話だけ。「店名の時蔵はどこから来たの?」「私の名前がときぞうなんですよ。苗字は鮨屋じゃないですけどね」と笑わせる。入店してすぐに名刺交換したが、三文字の名をときぞうとは読めなかった。
「握ってもらえる?」「いくつぐらい食べられますか?」腹具合によって食べるものを決めるのは主人の役割。「いいよ、お腹空いているから全部食べるよ」と言ったところで主人の考えはまとまったようだ。壁にはネタの値札がかかって良心的な店だが、主人に任せた方が良さそうだ。



主人の後ろには常に火が燃えている。寿司も炙るものが多い。少し火を通すと魚も肉も美味しくなるし、飽きない。小振りの寿司はもっと出てきても食べられた。
9時半頃に来た3人連れはネタがないからと断られた。それ以降、店に来る人はなかった。勘定をして、外に出ると入り口に札がかかっていた。熊本の夜は短い。時蔵には早めに行った方がいいようだ。

二代目正六 鮨屋時蔵
熊本県熊本市上通り4-11 司ビル地下
096-326-7771
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2009年01月20日
[旭鮨総本店 ルミネエスト店](新宿)
リーズナブルに食べる寿司

「高いから別の店にしましょう」新宿駅東口のルミネエスト8階の寿司屋に入ろうとしたら止められた。見栄を張るつもりでいたが、遠慮されるとちょっと嬉しくホッとする。しかし、他に食べたい店が見つからず7階に下りたらもう一軒寿司屋を発見。これには連れも頷いた。
下高井戸を本店とする旭鮨はあちこちで見かけるけれど、入ったのは初めて。「何軒あるんですか?」と板さんに聞くと40軒と言われて驚いた。回転寿司を除くと最大ではないだろうか。カウンターに座っても高級寿司店でないと分かれば気が楽になる。

お通しに続いて刺身を適当に作ってもらった。お任せで出てきたのがキンメ、ブリ、イカ、追加に頼んだのがアジ、シメサバ。ブリの産地は氷見と板さんはすぐに答えたが、他の魚については曖昧になる。大チェーン店なので一括仕入れをしているのだろう。板さんが答えられないのは無理もない。

「何か焼きましょうか?」板さんが奨めてくれた魚を断り、立ち上がって席から離れたガラスケースの中まで物色してホタテに決めた。「軽く焼いてくださいね」とお願いしたが、焼き手には伝わらなかったようだ。
板さんがテーブル客のために寿司を握り出した。振り向くと女性の二人連れが多い。年長親子の今日の夕食は寿司セットかな。若い友達同士もちょっとお酒を飲みながらセットの寿司を食べる。我々もダラダラ飲むのは止めて寿司を食べることにした。
メダイ、ウニ、シラス、イクラ、ブリ

最後にブリを頼むと連れが嫌な顔をする。刺身で食べた厚切りのブリが脂っぽかったらしい。無理に食べさせると今度は美味しいと喜ぶ。薄めに切って寿司にすると味が変わるから面白い。
寿司屋と言っても色々ある。旭鮨はリーズナブルに食べられる安心な寿司屋だった。
旭鮨総本店 ルミネエスト新宿店
東京都新宿区新宿3-38-1 ルミネエスト新宿7階
03-5369-2781
http://www.asahizushi.com
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2008年12月19日
[寿司栄](富山)
夜は行けない寿司屋

天然の生簀と言われる豊饒の富山湾。ここに来たら美味しい魚介類が食べられる店、寿司屋が一番である。クラウンプラザホテル(旧全日空ホテル)近くで昼食をとることになり、誘われたのが寿司栄だった。
12時前というのに既にカウンターは半分以上埋まっていた。我々が座って数分で14席はすぐに埋まった。おまかせ寿司コースは全国各地の素材を使った寿・司・栄、地元素材の総・曲・輪、お手頃なAランチ(1,575円)、Bランチ(2,100円)がある。銀髪はもちろん富山湾の魚介コースである輪を選んだ。
カウンターの前には水がチョロチョロ流れている。寿司をつまんだ指を洗うためだ。一度は箸を持ち上げたが、すぐに置いた。機内食のクラムチャウダーの香りがこみ上げてくるのでビールは頼む気はおきない。

客の半分以上は若者で、しかも女性が多い。正面の壷に昭和23年3月23日創業と記してある。地元の人にはもちろん、観光客にも有名な店らしい。Aランチといえども目の前で握ったものを順に食べられる。明朗会計で若い女性でも気軽に美味しい寿司を楽しめるのが人気の秘密だろう。

「なかなか美味いじゃないか。わざわざ「難波」に行く必要もないな」と部下に言うと「そうですね。美味しいですね」と頷く。前にも寿司栄に来たことがある言いながら、一度も銀髪を連れて来ないとは怪しからんと思った。難波は全日空ホテルのコンシエルジェで紹介してもらった。近くの寿司栄を奨めなかったのが不思議だ。
部下は地元食材にこだわらない寿を頼んだ。従って鮪のトロがスタート。最後にウニも出た。地元食材だけで高級ネタが少ない銀髪には3カン多く出た。部下は食い足りないと文句を言う。渋々追加オーダーを認めた。店を出ると「富山の寿司は美味いですねー」と言う。築地経由のネタをたくさん食べたにもかかわらず…
家に帰って寿司栄のホームページを見たところで全日空の女性との会話を思い出した。寿司栄は確かに候補に上げてくれていた。拒絶したのは銀髪の方である。寿司栄本店は禁酒禁煙の店だった。従って酒のつまみはなく、寿司しか出てこない。昼はともかく、夜は殆ど寿司を食べない銀髪にとっては無縁の店なのだ。
「あそこは酒が飲めないんじゃないか!」と部下に言ったら「そうでしたか?」とボケ顔を見せる。下戸の彼にとっては嬉しい店だが、酒呑みにとっては昼限定の店である。ご注意を。
寿司栄 総曲輪本店
富山県富山市総曲輪2-8-22
076-421-7035
http://www.susiei.com
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2008年12月17日
[かねいし](目黒)
金石・陣内夫妻のお店

元野球選手の金石さん、元バドミントン選手陣内さんが経営する寿司屋に誘われた。金石さんが寿司を握り、陣内さんが料理を運ぶ光景を思い浮かべたが、すぐに振り払った。テレビでよく見る二人が店を切り盛りしているわけがない。
かき、いか、ひらめ、あんこう

10年前の創業から店は大森さんが守る。開店したばかりのように清潔で、ゆったりとした席が心地よい。目の前には有名焼酎が並び、日本酒は大森さんの足元の冷蔵庫で出番を待つ。
「大森さんの店のようなものですね」と言うと曖昧に微笑む。信頼できる友人を持った金石さんは幸せ者だ。付き合いは夫人よりも長いそうだ。
ぎんなん、しまあじ、しまえび、しめさば、たいら貝

目黒駅から5分以上歩く目立たないビルにある店は、オーナー夫妻の知人や常連さんに支えられているようだ。先客は中年のおじさん二人とおばさん二人の2組。大森さんとは永遠に話せないかと心配したが、おばさん二人が帰ってからは我々が独占できた。
とり貝、あわび、あなご、玉子焼き、いくらおろし

「いわしは店で出せる仕入れ値ではない」「赤貝は値段が落ち着いてきた」ということばで店の思想が分かる。ブランドに捉われず、常連にリーズナブルで美味しいものを提供する主義のようだ。
べったら漬、赤貝、こはだ、エシャロット巻き、げそ

エシャロット巻きが大森さんのオリジナル自信作。数種類の味噌を混ぜているのがミソだ。
なまこ酢、鯛の塩辛、あわびの肝

そろそろお開きにしようと思ったところで自家製塩辛が出てきた。話は弾み、酒も進む。これ以上は飲み過ぎと困っていたら、寿司を食べ始める常連さんに大森さんを奪われた。潮時である。
行きつけのクラブから遠い目黒はいい。店を出てすぐにタクシーに乗り込み我が家へ向かった。テレビドラマをやっている時間に帰ると家族に怒られるが、今日は許してもらおう。まだクライマックスには時間がある。
かねいし
東京都品川区上大崎1-1-14 白金トーカンキャスティール2F
03-3444-9480
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2008年12月09日
[とりで寿司]②(新橋)
いつ行っても楽しいとりで寿司

「約束したとおり直ぐ来たよ!」「予約した?」「もちろん!」カウンター席には既に3組6人。我々が入った後の残り2席も予約済み。右のカップルが見ていたのは何と銀髪グルメ紀行のコピーだった。連れも気付いて合図してくれたが、軽く頷くだけにした。

お通しは炭火焼き。皿かごに盛られた小魚などは殆ど手作り。鮪のつみれと聞いたら追加してしまう。小さな七輪は一杯になってしまった。鮪は赤身がかたまりのまま残っている。
セイコ蟹、ブリしゃぶ

「前回食べ損なったブリシャブを」と頼むと、他の客の目がオーナーシェフ遠藤さんの手元に集中する。舞台の主役は空気を読むのも上手。ブリは他の客にも行き渡った。美味い美味いの大合唱。

生きたイカが登場。福岡で何度か食べた呼子のイカ。捌いても動いている。「ゲソは噛まないで飲み込むと、喉にくっつくので気をつけてくださいね」と注意される。しょうが醤油、わさび醤油で味わう。

次は佐島のタコ。イカと対照的に湯気を上げて出てきた。「何分茹でるの?」「18分!」と中途半端な時間。季節やタコの状態で微妙に変わると言う。客の入りや予約が入っている時間を見て茹で始めるそうだ。まだ来ない左の2席の客は大事なショーを見逃した。
大トロ、野菜焼、なまこ酢

大間のまぐろの後は下仁田ねぎとズッキーニの焼物がアクセントをつけてくれる。
鬼エビ、しめさば

北陸名物の鬼エビ。もちろん頭は焼くだけでなく、食べやすくしてくれる。今日のさばは松輪産。前回の金華さばと同様にブランド魚だ。
美味い美味いの合唱に「この店の客は失語症になっちゃってるよ、美味いしか言わない」と軽口を叩くと、左端のおばちゃん、いやお姉さまから「あら私は食通で通っているのよ。本当に美味しいんだから」とにらまれる。客のみんなが笑っている。
「今日は遠藤さん元気いいねー」「きれいな女性がいますから」、再び左から「本当にこの店は美人が多いわね」と何故か自慢気だ。「イヤイヤ、いい男が多いんですよ」と返すと、遠藤さんが握手を求めてきた。「そう、一番いい男は遠藤さんだよ!」
自家製からすみ、鮪赤身の酒盗和え

「何故、色が違うんですか?」連れがいい質問をする。赤いからすみは赤ワインに漬けたもので、ワインを飲む人に出すと言う。まだ試行錯誤の段階で遠藤さんは不満のようだが、なかなかいける。
赤身に和えた鮪の酒盗も自家製。今日も自主規制値より1合多く飲んでしまった。この店で酒を我慢するのは無理だ。
前回食べたウニと、初めてのコハダ、穴子(塩味)を握ってもらいお開きにしようと思ったらデザートが出てきた。これも自家製。イヤー、何度来ても驚かせてくれる。

店を出る間際に右のカップルに「これからも銀髪グルメ紀行をよろしく」と声をかけた。振り返った女性の驚きの表情が面白かった。余韻を残したままドアを閉めた。
とりで寿司
東京都港区新橋4-10-6
03-5401-1441
前回の記事→「とりで寿司」
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2008年12月03日
[とりで寿司](新橋)
新橋でいい寿司屋を見つけた!

昼3時から深夜3時までぶっ通しで営業して、自ら築地に買い出しに行く。熱意とアイデア一杯の料理は、若くなければ編み出せない。
新橋通のS氏に指定された店はちょっとくたびれた感じの外観。以前はうなぎ屋だったらしい。入り口に吊るされた籠の中のからすみをしばし眺めて扉を開けた。狭い店のカウンターの中に若い料理人が二人。カウンターの中央にデンと座ったS氏と共ににこやかに迎えてくれた。
げんげ、たいら貝、まんぼう

席につくなり、皿かごが差し出された。お通しは串焼きだと言う。7~8種の串から3種類選んだ。富山名物のげんげは思ったとおりの味だが、たいら貝、まんぼうが滅法美味い。内臓などの捨てるような部分をうまく使っている。
ぶり、ひらめ、かわはぎ、しめさば、いか

「今日、築地で一番のぶりです」と胸を張るだけあって、脂が乗っている。〆鯖は生より美味い。S氏が飛び込みで見つけた店と言うが、大当たりだ。主人が若くて明るいのが更にいい味付けになっている。
せいこ蟹、椎茸、あおやぎ

きれいに身を出して食べやすいせいこ蟹、香ばしい岩手産の原木椎茸。粗くおろした大根が美味い。
「ちょっとがっしりした純米酒」「爽やか過ぎない吟醸酒」などなど、訳の分からない注文をすると主人が酒の名前を店の女性に告げる。「ぼくは焼酎を」と言うS氏の注文は銀髪が断った。美味しい料理は冷蔵庫で出番を待っている旨い日本酒で食べたい。

タコが茹で上がった。ユーモアたっぷりに鉢巻きをする。パキスタン、ヒマラヤ、モンゴル、シベリア、カザフスタン、チリの6種の岩塩から一つ選んで削ってもらう。タコは塩で食べる。
たいら貝の海苔巻き、大トロ、シマエビ、こはだの海苔巻き

ぶり、からすみ、とり貝、うに

もう一度ぶりを頼んだ。早い者勝ちだ。自家製のからすみ。滅多に入らない国産のとり貝。最後に礼文のウニ寿司。写真を撮っているうちに崩れ出して、慌てて口に放り込んだ。
書きたいことはたくさんあるが紙面が足りない。近い内にまた行って続編を書くことにしよう。大吟醸酒などの高い日本酒を6合以上は飲んだはずだが、S氏は3枚払って数枚のお釣りをもらっていた。
いつの間にか満席になっている。予期せぬ客が扉を開くと「すいません、一杯です」と主人は威勢がいい。我々が出るタイミングに来た客は、幸運を噛み締めることだろう。
とりで寿司
東京都港区新橋4-10-6
03-5401-1441
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2008年11月26日
[おかめ]②(築地)
お座敷天麩羅

「今度は私がアレンジしましょう」とOさんが言った。何度か食事会をしていると、必ずそんな声が出て来る。贔屓にしている店に案内して喜んでもらいたい。そして、ちょっぴり自慢したいというのはよく分かる。銀髪は今度が2回目。やはりOさんに連れて行ってもらった。
予約の時間に店に着くと、扉の向こうでガチャガチャと鍵の音がした。通りすがりの客が入って来ないようにぎりぎりに店を開けると言う。2部屋しかない小さな天麩羅屋の外観は巨匠小津安二郎が愛した頃のままだという。
京都産茶豆、ほたてひも、愛知県産天然ふぐ

ふぐが出てきて驚いた。愛知県産の天然とらふぐは下関南風泊(はえどまり)市場を通さず安く仕入れたそうだ。肉厚に切られているので噛み応えがあり味が深い。
オーストラリア産アスパラ、天草車海老、ベビーコーン、松島産鯊

アスパラは季節が逆のオーストラリア産が旬。ベビーコーンはわざと焦がすぐらいに揚げてあるので香ばしい。
雌株、京都産茄子、メゴチ、帆立

玉子&佃煮、ミョウガ、鱧、万願寺唐辛子

穴子、トマト、漬物、かき揚げ茶漬け、

綿実油100%で揚げているのでいくら食べても胃は重くならない。パプリカなどちょっと他ではないようなものも揚げてくれる。デザートはパイナップルだった。先代から続く店なのに、勉強家の2代目店主は伝統にこだわらない。寿司など他のジャンルの職人を呼んで腕を磨いたそうだ。
みんなが注目したのが天麩羅を揚げる太い箸。天麩羅に花を咲かせふっくら仕上げるのに最適とのこと。感心していると先代が遺した箸を見せてくれた。孟宗竹の箸は使い込まれて細くなっている。

先代を誇らしげにしている店主の顔がなかなか良かった。
前回訪問の記事→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2006/03/post_159.html
御座敷天ぷら おかめ
東京都中央区築地2-12-2
03-3541-2288
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2008年11月21日
[北のおやじ](福井駅)
回転寿司でも蟹が食べられる

福井に到着したのは夜10時過ぎで、ただ寝るだけだった。翌日昼過ぎには富山に向かう。越前カニを食べるチャンスは昼飯しかない。駅ビルを歩いていたら蟹専門店を見つけた。店に入ると若い女性が寄って来る。「駅の中で蟹を食べられるところはない?」と聞いた。
「それなら、回転寿司がいいですよ。蟹の絵が出てましたから」と嫌な顔一つしないで親切に教えてくれる。ついでに店に並ぶ蟹の説明を聞いていたら、買うつもりはなかったのに、結局買ってしまった。たちまち財布が軽くなった。
回転すし屋の入り口に生簀があり、蟹がたくさん入っていた。「この蟹を食べられるの?」と聞いたら、「はい、買ってきます」と言う。部下と二人で???と怪訝な顔をする。カウンターに座って待っていると、店の前の魚屋から買ってきた茹でかにが出てきた。

越前ガニ(オス)ではないが、雌のセイコ蟹を一杯ずつ食べた。外子、内子、ミソが美味い。もちろんビールを頼んで、思いがけない立派な昼食になった。因みに蟹は一杯1,000円。大型のオスに比べると小さいが、安くて卵も食べられるので地元の人はセイコを好む。
「ブリも食べてくださいね」蟹屋の女性のことばを思い出した。トロぶりと書いてあったが、まだ脂の乗りは薄い。これから寒くなればさらに美味しくなるだろう。
ブリ、焼き鯖

福井名物の焼き鯖。ノルウェー産だろうか。日本への輸出のお陰でノルウェーの漁師が潤っていると先日テレビで紹介していた。身の厚さとお値段からして国産とは思えない。
中トロ、穴子、いくらと部下が回転台から取るのを見ていた。ビールを飲まない彼は、銀髪に遠慮する気なんかまったくなさそうだ。子供のように目が輝いている。
食べ終わって再び蟹屋に行った。さっきの女性に「美味しかったよ、ありがとう」と声をかけた。「ブリも食べましたか?」と言うので「もちろん」と微笑んだ。彼女は銀髪よりさらに大きな笑みを返してくれた。
北陸漁港 北のおやじ
福井県福井市中央1-1-25 JR福井駅構内プリズム福井内
0776-28-5550
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2008年10月27日
[たる善](札幌)
地魚を食べるならやっぱり寿司屋だね

「すし善」「さい藤」「政寿司」など、これまで行った中から選べば美味しい魚が食べられることは分かっている。「すし善の板さんが銀髪さんはどうしているの、と言っていましたよ」と部下が促すが、他の店を探すことにした。たくさんの店に行くのがグルメ紀行の使命である。
まだ5時を過ぎたばかり。これはと思う店で受け容れてくれたのはたる善。7時半までの条件付だが2時間あれば充分、帰りの飛行機の出発時間に丁度いい。カウンターに座り、板さんにこれまで行った札幌の寿司屋の名前を上げると、たる善のオーナーはすし善の出身と教えてくれた。店名に善を付けることを許されているなら味は保証付だろう。
板長の大坂さんと名刺交換。たる善一筋15年で板長に登りつめた。従業員が長く働く店はいい店に違いない。若い店員たちの真摯で緊張した面持ちも店の質の良さを証明している。
地物を中心にお任せした。

ホッキ貝 毛かに ぼたん海老、シャコ、すみいか、銀杏、さんま、玉子焼き、鱈の白子、鯨の舌、白老牛と続く。まだ混み合う前だから大坂さんをほぼ独占状態。料理が出て来るのもスムーズだ。
スミイカは捌いた後も動いている。死後硬直前の身は柔らかく、ゴロ(わた)も鮮烈で美味い。ぼたん海老や白子の下敷きになった昆布も焼いてくれた。玉子焼きは何とも言えない風味がするので質問したら、牛乳入りとのこと。近海で獲れたミンククジラのタンや北海道産の白老牛が出てきたのには驚いたが、地物には違いない。嬉しい驚きである。
ひらめ、大トロ、ししゃも、鮭児、炙りきんき、いくら、うに、にしん、穴子

「大トロは築地市場から?」と大坂さんに問いかける。築地の中卸し・石宮から仕入れるすし善と同じかと思ったが、地元の松前からと教えられた。地元でも立派な鮪が手に入るようだ。珍しいししゃもの寿司。脂が乗った炙りきんき。東京の高級寿司屋なら一貫2,000円もする寿司好き垂涎の鮭児。うまいうまい。

最後に漬物、網走湖の大しじみ。〆に北海道ならではのにしんの寿司。腹一杯だが穴子を忘れていた。塩と煮ツメで食べさせるのがたる善流。
部下と共に生ビールと冷酒を3合ずつ。大坂さんとの会話も楽しく飲みすぎた。勘定が心配だったが、銀座の半額ぐらいの印象である。部下に乗せられてすし善に行かなくて良かった。いい店見つけた。
たる善は来月に移転する。「店を新しく立派にしたら、値段は上がり味が落ちるのが通例だよ」と意地悪を言った。「そんなことはありません」と若い店員がムキになる。たる善なら間違いはないだろうが、次回チェックしに行こう。あー、次の出張が楽しみだ。
たる善
(現住所)札幌市中央区南5条西4丁目クリスタルビル1階
(新住所)札幌市中央区南4条西3丁目2-6
011-511-4484
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2008年10月23日
[あきば]⑤(八重洲)
長い日本列島の周りには豊かな海の幸がある

店に入ると「今日は遅いですね」と女将さんがにこやかに迎えてくれた。カウンターの中の大将が仕事をしながら笑いかける。遠方より来る友を待っている間に7時を回ってしまった。いつも座る奥の席は占拠されていたので、大将のまん前ど真ん中の席に座った。
お通し

しめさば、ひらめ、かつお、関アジ、つぶ貝

千葉県富津のさば、青森のひらめ、気仙沼のかつお、関アジは言うまでもない。お任せの後は釧路のつぶ貝、愛知のみる貝。大将の口から淀みなく産地が出て来る。「愛知のどこ?」と突っ込むと手が止まる。大将の律儀な性格が滲み出てくる。ど忘れする齢頃なのはお互い様だ。
カウンターの上にあるあきば名物の貝類。今日は大きなさざえ、つぶ貝、みる貝がデンと鎮座している。「実は貝が大好きなんですよ」と言われて、どれか一つだけのつもりがつぶ貝とミル貝の二つを頼んだ。ミル貝の写真は撮り忘れてしまった。
かんぱち

カウンターの中央に座ったときから気になっていたのが何かのカマ。「これ何ですか?」と聞いたら、大将が待ってましたと言わんばかりの表情。尾鷲(おわせ)産の6.5キロの天然釣りかんぱちだとのこと。「触ってみてください」と言われて従った。弾力があるというより固い。刺身と塩焼きで食べた。あー、シ・ア・ワ・セ!

今日のお客様O氏は酒を飲めないので早めに寿司に移った。すみいか、まぐろづけ、サーモン、いくら、えんがわ、うに、きんき、煮あなご。炙って旨みを増した網走産きんきが特に美味い。やはり魚も肉も少し火を通した方がいい。O氏は平目のえんがわに感激していた。いつも食べているのはカレイのえんがわかも。
O氏は仕事が終ると毎日家に直行するそうで、奥さんに同情してしまう。オーストラリアに住んでいた頃、毎夜家で夕食をとる銀髪に妻は「お金出すから週1~2日は飲んできてくれ」と懇願したものだった。「夫婦円満の秘訣はできるだけ顔を合わさないこと」と友人は言う。けだし名言である。

しじみと玉子焼きを食べてお開きに。2次会に誘ったがあっさり断られた。家で待っている奥様が気になるのかもしれない。我が家だったら「何でこんなに早いの?」と怒られてしまう。なんて幸せな夫婦だろう。 どっちが?
あきば
東京都中央区八重洲1-4-10
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2008年07月31日
[吉野鮨本店](日本橋)
明治12年創業の大衆的な寿司屋さん

グルメ本等にも度々登場する日本橋高島屋近くの老舗寿司屋と聞けばかなり高級と思い勝ちだが、意外と大衆的な雰囲気の店だ。広いカウンターにはかしこまって座る一見さん居るし、気楽に食べている常連さんも居る。テーブル席には仕事を終えたサラリーマンのグループが居酒屋気分で杯を交わしている。我々は居酒屋組に加わった。
お通し、刺身盛合わせ

お通しの塩辛や、雑然と盛られたように見える刺し盛りがいかにも吉野鮨らしい。茹でたタコ、アジ、サヨリ、鮪の赤身、季節外れのずわいがになど、高級なネタが殆どないのも気取らない店の姿勢が出ている。
サザエ壷焼き、ゲソ焼き

不器用なはずのTさんが、サザエの肝まできれいに取り出したので呆気に取られた。もっとも、あらかじめ茹でて身を取り出し、再び殻に戻して焼いたものと自分が食べてみて分かった。老舗らしい一仕事が真骨頂と言える。
貝の刺し盛り

今度はあわび、赤貝などが乗ってきた。大衆的な店といっても、高級ネタを頼んだらそれなりの覚悟はしなければならない。
鮨盛合せ

喧嘩しないように一人一貫ずつ握ってもらった。イカ、ミルガイはTさんが、ウニはみんなが何となく。ヅケ、コハダ、穴子は銀髪が頼んだ。
第一弾が来たらシャッターを押す前にTさんの箸がイカを捉えた。酔っ払ってしまい銀髪に対する協力姿勢は既になくなっている。

120年の伝統の技はコハダや穴子に発揮されると選んだけれど、コハダが一個余ってしまった。生活習慣病にもっとも近い人が、青魚を嫌う。味よりも青い肌の見た目が気に入らないようだ。みんなより1個分食べ損なった分を、場所を替えて1人でスパゲッティとサンドイッチを食べて補った。バイタリティーのある人である。
100年以上前の料理が飽食の時代のそれより上とは必ずしも言えない。もちろん吉野鮨も時代の変化に合わせて進化しているはずだ。老舗料理屋に行く度に受ける感動と戸惑い。良くも悪くも吉野鮨は疑いなく老舗である。
吉野鮨本店
東京都中央区日本橋3-8-11
03-3274-3001
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2008年07月26日
[あきば]④(八重洲)
あきばで今日も魚のお勉強

昔の記事にコメントを入れてくれたとどまささんに敬意を表してあきばに行くことにした。コメントの中の「シンコ」に引き付けられたのは言うまでもない。
他の社員の夏休みで留守番役になった数人を引き連れてあきばの暖簾をくぐった。主人と奥さんがにこやかに迎えてくれる。カウンターには「予約」の札がいくつも置いてあり、繁昌しているようで嬉しくなる。
最初にあきばに来たのは約2年前。そのときから比べると銀髪の知識も豊富になった。産地を言われたら漢字や地図が頭に浮かぶ。鹿児島県出水のアジ、明石の焼きアナゴ、小柴のシャコなどなど。大サザエの西伊豆安良里(あらり)は本日得た新しい知識。


寿司屋には大きく分けて2種類ある。伝統的な江戸前の仕事からあまりはみださず、ネタの仕込みに時間をかけ、酒の肴もあくまで素材重視の店。伝統にこだわらず、創作料理を得意にする店。あきばは前者に属するようだ。

最高の素材を探すことのこだわるあきばのような店の場合は夏場の仕入れには苦労しているようだ。うには当然北海道と思ったら徳島産。徳島出張でうにを食べていなければ怪訝に思ったところだ。若布が美味しい徳島はうにも美味しい。


大トロはインドまぐろ。国産物しか使わないと思っていたが、さすがに今の時期は冷凍物の方が美味しいらしい。大間の本鮪の信者には気の毒だが、回遊魚のまぐろは今は他の海を泳いでいる。太って脂が乗るのは秋以降だ。
関西は比較的小さめの穴子の焼きを好む。煮穴子は大きめの江戸前がいい。あさりは東京湾の三番瀬が最高と言われるが、今日のあきばは三重県産を使っていた。身が太って美味い。
そして本日の目玉はシンコ。コハダの今年生まれたもので、キロ当たり数万円もする高級品。通は一貫に3匹以上使うような小さなシンコを好む。もうだいぶん大きくなってきた。やがてシンコと呼べなくなる。今一番美味しい愛知県三谷のものと胸を張る。確かに小さいのに脂が乗って美味だった。
日本は縦長の地形のお陰で、旬の地域が北上したり南下したりして、長時間旬を味わうことができる。それでもあきばの主人の苦労は大変のようだ。猛暑を超えるのが待ち遠しい。
あきば
東京都中央区八重洲1-4-10
(店の希望で電話番号は載せていません)
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2008年07月17日
[すし秀](四谷三丁目)
常連さんで賑わう町の寿司屋さん

新宿から四谷方向に新宿通りを走り、四谷三丁目の交差点を越えて三菱東京UFJ銀行のある交差点を左折、1本目の信号の交差点(三栄町)を右折すると道の左側に見える。
店に入ると常連のKさんが連れと2人で我々を待っていた。「分かりにくかったでしょう?」と声をかけられたが、迷いようがない。もっとも荒木町のように料理屋が密集している地域ではないので、「こんなところに?」と思う人は多いかもしれない。
食事の前に主人の村岡さんと名刺交換した。名前の漢字が全く一緒なのを足掛かり一気に仲良くなろうとしたがどうもぎこちない。Kさんが銀髪グルメ紀行のことを事前に話していたせいか、少し緊張しているのかもしれない。

最初に出て来た豆粒のようなものがシャコの爪の身と聞いて驚いた。築地でもなかなか入荷しない貴重なもの。塩水ウニともども美味しいスタートとなった。

鰯、あわび、塩辛と酒の肴に向く料理が次々に出される。普段ならあれやこれや質問して、ちょっと知ったかぶりをして料理人を引き込むところだが、Kさんたちも無視できない。銀髪だけが目立つのも気が引けた。

座った時からカウンターにデンと鎮座している大きなサザエが気になっていた。日本橋の「あきば」寿司あきばでいつも食べるサザエと同じぐらいの大きさなので千葉産かと尋ねたら、こちらは伊豆産だという。もちろん壷焼きにしてもらって仲良く4人で分け合った。優しいKさんがスープもたっぷり注いでくれた。

手際よく出されるものを食べていて、ふと刺身を食べていないのに気が付いた。つまみに少し切ってもらうつもりで頼んだら4人分まとめて出てきた。Kさんをはじめ、みんなが譲ってくれるのでたくさん食べてしまった。

最後にコハダ、アナゴ、トロを握ってもらった。もう少し食べたかったが皆さんの協力でお腹が一杯。デザートのさくらんぼは2粒だけ味見した。シャブリを飲んでカウンターのこちら側で盛り上がった。
村岡さんはカウンターを埋めた常連さんたちの相手をしている。顔なじみに囲まれてリラックスしている様子。銀座あたりの店には見られない和やかな雰囲気である。表通りからは引っ込んだところに店を構え、宣伝もしない理由が分かる気がする。
料理が大切なのはもちろんだが、それ以上に料理人が好きで客が集まって来る。友達のように、兄弟のように和気藹々である。大都会・東京にもそんな店がある。
すし秀
東京都新宿区三栄町19
03-3351-0051
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2008年06月25日
[つな八 本店](新宿)
念願のつな八本店に遂に入れた

いつ行っても行列が出来ていて入れない。予約をすればいいものを、いつも飛込みでは仕方がない。目指して行くとダメなのに、他の店に行くつもりで店の前を通ったら誰も並んでいなかった。金曜日の7時に簡単に入れてしまうのだから世の中面白い。もちろん予定を変更してつな八の暖簾をくぐった。
つな八は1924年(大正13年)創業というから80年以上の歴史を持つ老舗の天婦羅屋さん。その割にカウンターで2千円位から食べられる庶民的な店。行列が出来るのも頷ける。
カウンターに座り、天婦羅膳1,995円、上天婦羅膳2,730円、特選江戸前膳3,990円のどれにしようか迷う。この上はポンと値段が跳ね上がるので、お好みにした。好きなものだけ食べよう。
産地直送盛合せ、白海老

めじな、くろむつ、やりいか、はもの4点盛りを頼んだが、なかなか来ない。お通しがない明朗会計は嬉しいけれど、ビールのつまみがないので白海老の天婦羅を頼んだ。すぐに揚げてくれるかと思ったが、銀髪の順番はかなり後。結局刺身が先に来た。
カリッではなく、衣が厚くてフンワリとしている。ものの本によれば、これが本来の江戸前天婦羅だそうだ。
海老、いか、めごち

めごちはフンワリというより、中がべチャッとしていた。尾びれとそれに続く骨は噛み砕けない。板さんがこまめに天婦羅鍋の火を点けたり消したりしているのが気になっていたが、揚げ油の温度が低かったのかもしれない。
大あさり、ほたて、小玉葱

お好みにしても、カウンターなら困らない。他人の天婦羅が揚がるのを見て、何を食べるか決断できる。隣席を覗き見て、中がレアのほたては特に美味しそうに見えた。結局、食べた中では玉葱が一番美味しかった。
ミシュランが星をつけた店の天婦羅は衣が薄く油もくどくない。グルメ本が推奨する店を好きな人がつな八の天婦羅を褒めないのはよく理解できる。もっとも、これこそ老舗が守る伝統の味なのかもしれない。「この値段なら充分美味しい」という口コミが多い。高級店なみの値段なら来ないということだろうか。
店を出る頃には行列が出来ていた。ラフな格好をした若いカップルが多い。カウンター天婦羅デビューに目を輝かしているのが窺える。「美味しいだろう?」「美味しいね!」なんて会話する恋人たちに野暮な話はするまいと思った。
つな八 本店
東京都新宿区新宿3-31-8
03-3352-1012
http://www.tunahachi.co.jp
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2008年06月20日
[乙女寿司](金沢)
お詫び
昨日、新しいドメインへの移行作業を行いましたが、画像が見られない状態が続きました。さらに、せっかく書き入れていただいたコメントが消えたものがありましたことをお詫び申し上げます。
プロが奨める寿司屋

富山の人気寿司店「難波」の主人は勉強家だ。近隣だけでなく東京にも度々行くという。金沢に行くと言ったら彼が紹介してくれた店が乙女寿司だった。
タクシーの運転手さんには店名を告げるだけでよかった。路地の奥にみすぼらしく佇むように見えたのでちょっと驚いた。店の入り口が見えると安心した。立派な店である。
古い建物の割に店主は若い。祖父の代から続いているのかと聞いたら血縁はないと言う。乙女寿司で長年修行したのかと聞いたらそれも違う。店と店名だけ引き継いで血縁も師弟関係もないとのこと。だとすると、乙女寿司の評判は鶴見店主が一代で築き上げたものということになる。
赤イカ、白バイ貝、マコガレイ

メジ鮪、アジ、万寿貝

地物中心にお任せにした。単純な刺身はわずかで、オリジナリティーが溢れる料理である。
アワビ、のど黒、ゲソ

アワビの肝和えは見た目も美しい。肝は餌によって色が違うらしく、我々が食べたアワビはきれいなグリーンである。
それにしても圧倒的な存在感があるのはやはりのど黒である。脂が乗って実に美味。
魚は目の前の木箱(氷を敷いたネタケース)に収められており、ガラスの冷蔵ケースはない。鶴見さんが蓋を開ける度に中を覗きこんで質問する。
キジ海老という地元の海老、能登うしつで獲れた近海鮪を頼んだ。
アラ、キジ海老、うしつ鮪

最後に椀物と巻物を頼んだ。連れの二人は穴子などを食べているが、愛知産には興味がない。
あら汁、かんぴょう巻き、かっぱ巻き、ウナギ

店に入った時から気になっていた肉厚の鰻。地物に徹するつもりが禁を破った。寿司の評価は割れた。しゃりの好みなどはよく分からない。
銀髪は創作料理などを充分に堪能した。保守的な人にはちょっと違和感があるかもしれない。10年後、20年後の乙女寿司も見てみたいものだ。
鮨処 乙女寿司
石川県金沢市木倉町4-10
076-231-7447
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2008年06月01日
[すし三崎丸](祖師谷大蔵)
回転寿司とどちらがいいか

子供が大きくなり、家族全員が揃うことは稀になった。平日は銀髪のせいなのは明白である。もっとも、銀髪がいない方が平和のようで、痛し痒しである。
休日に日頃の罪滅ぼしにちょっと気張って寿司屋にでも行こうと提案すると、いつも却下される。回転寿司がいいと言われて今度は銀髪が渋る。酒の肴も限られるし、混雑していて落ち着かない。双方の妥協したところがすし三崎丸だった。
ほたるいか、生しらす

あおりいかのげそ唐揚げ、焼き筍

旬の食材も結構取り揃えており、日本酒を飲みたくなる。回転寿司に比べると酒の品揃えもいい。純米酒や吟醸酒も各種あり、ちゃんと冷蔵庫で出番を待っている。



寿司をオーダーするのは銀髪の役目である。大トロなど一部を除いて2個240円均一のお手頃値段。たくさん食べようと思って「しゃり少な目」と頼んでも、希望が叶えられたとは思えない。職人の手に収まる量は長年の経験から固定されてしまっているのかもしれない。
いかは数種類を食べ比べできるし、聞いたことのない貝もある。安いからといって馬鹿にしたものではない。
すし三崎丸は関東一円に49店舗ある。持ち帰り寿司・京樽の一業態だということは、ホームページを開いて初めて知った。一度は経営破たんして上場廃止になったけれど、吉野家の子会社となり再建を果たした。助けた吉野家も再建組なのが面白い。
以前は寿司屋ではつまみや刺身ばかりでお腹を膨らませていたが、寿司中心だと酒も少なくて済む。刺身が減り、酒量が減るとお代も減る。おまけに身体にもいい。
そうそう、次の日の酒も食事も美味しい。52歳になってやっと気付いた好循環。お財布も身体も健康である。
http://www.kyotaru.co.jp/misakimaru/misakimaru.html
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2008年05月28日
[難波]②(富山)
久し振りに行った富山最高峰の寿司屋

「〇〇という料理屋知ってる?」と聞くと「知ってますけど、もっといい寿司屋がありますよ」とタクシーの運転手さんが言う。「ちょっと郊外にあるんですけど…」と続けるのを「アー、難波ね」と遮った。
難波から送られてきたメールを思い出した。いい魚を大量に仕入れてしまったので来て欲しい言う。翌日に富山出張するのを見越しているかのようだ。多数の人に送ったメールであることは分かっているが、タクシーの運転手さんに推奨されると、偶然には思えなくなってくる。部下に「難波に行くぞ!」と告げたら、顔がパッと明るくなった。
まぐろ3種

左から水揚げされたばかりの本まぐろの赤身。真ん中が今は壱岐を回遊している160キロの本まぐろの大トロ。水揚げは10日前。右が5日前に水揚げされた小型の氷見産本まぐろ。
獲れてすぐの赤身は死後硬直で身が固く、噛み切るのに苦労するほどだった。熟成されて柔らかくなった大トロ、中トロと比較できたのが面白かった。
あら、新湊さんアカイカ、穴水産のこはだ

新湊産天然車海老、穴水産しゃこ

地元の素材中心に造ってもらった。大きな車海老が印象的。もちろん頭は焼いてくれる。
のどくろ、炙りしめ鯖、漬物

のどくろには部下がうなった。皮を炙ったお陰で脂が程よく溶けて、口の中に広がる。しめ鯖も同様で、魚も肉も軽く火を通した方が美味いことが証明される。
料理はもちろんだが、店主との会話が滅法楽しい。銀髪のうんちくを嫌がらず聞いてくれる。もちろん色んなことを教えてくれる。
酒は勝駒。地元の小さな酒蔵らしいが、純米、吟醸、大吟醸、本醸造と飲み比べた。
マコカレイ、小柱、うに、穴子2種

握りも美味い美味い。3人で食べて酒6合、生ビール2杯、ウーロン茶2杯を飲んで合計41,200円。とても満足した。
難波さん、またメール待っていますよ。
鮨 難波
富山県富山市公文名34-12
076-493-8686
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2008年05月16日
[すしまみれ](新宿歌舞伎町)
明朗会計、安くて美味しい店、なのかな

4月23日、新宿区役所通りに寿し屋がオープンした。明るくきれいな24時間営業の店である。
お通し、刺身盛合わせ(お任せ)

210円と良心的なお値段のお通しが白木(プラスチック?)のカウンターに置かれた。刺身はお任せにしてちょっと後悔した。金目はともかくたこ、数の子、あおやぎは意外な組み合わせ。これで2,310円。
かに玉子焼き、刺身盛合わせ(指定した魚で)

「焼き立て」と一生懸命奨めるので断り切れず、「ちょっとだけ」と言ったら4個もくれた。2番目のの刺し盛りはお任せにしないでひらめ、たい、しめさば、あじを自分で選んだ。こちらが2,270円。満足感が違う。
寿司

大トロ、うに、しまあじ、かんぱち、えんがわ、こはだ
インドマグロの大トロとうにが378円、しまあじ252円、かんぱちとえんがわが210円、こはだが126円。
「脂が乗って柔らかい不思議なえんがわですね」と言ったら、「カレイのえんがわです。若い人に人気がありますよ」と返ってきた。ヒラメのえんがわが210円とは、随分安いと思ったがカレイなら頷ける。
インドマグロとはいえ大トロ378円はお値打ち。寿司の値段が壁に印刷してあるので、仕入れ値が上がっても客から取れる値段は不変。「大変でしょう?」と同情したら、「他のネタで調整しますから」と笑う。エッ?
お任せで作ってもらった刺身の盛合わせを思い出してドキッとした。同時に明朗会計の意味を考え直した。仕入れ値に適正な利潤を上乗せした価格のことではない。食べたものの値段が自分で計算できるかどうかが明朗会計の意味。「時価」の料理がないすしまみれはまさしく明朗会計の店である。
食べるものによって損得が生じるのはいたしかたないのかもしれない。
すしまみれ 新宿店
東京都新宿区歌舞伎町1-2-3
03-5155-7065
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2008年05月06日
[だぼ鯊]⑤ (日本橋)
今日のハイライトはギンポ

江戸前の魚と言えば、アナゴ、シロギス。一年中使われるが晩春から夏にかけてが旬だ。秋には甲イカの子が新イカと呼ばれ寿司種としてだけでなく天ぷらでも人気となる。晩秋から初冬にかけてはハゼの季節。店名にしてしまうほど上品で美味しい魚だ。
忘れてならないのがギンポ(銀宝)で、江戸前天ぷらになくてはならない物。死んでしまうと味が落ちる。成長すると皮が固くなってしまうので、4~5月の限られた期間しか食べられない。まさに通好みの魚と言える。昨年は食べ損なったが、今年は口に出来て幸せだった。
ギンポ

関西ではカミソリ、日本海側ではウミドジョウ、東北ではカタウナギと呼ばれることで分かるように、長細い異形の魚。これを関東では銀宝と呼んで珍重する。江戸前の天ぷらにすると宝になってしまうのが面白い。身はしっかりしていて、噛み応えがある分味が深く感じられる。天ぷらが上手いと見抜いた料理人は凄い。
メゴチ、稚鮎、姫ニンニク、アスパラ、あなご

銀髪は定番のコースではなく、お好みで揚げてもらった。アスパラを頼んでトイレに立った隙にアナゴが一片乗せられていた。ギンポと比べてみると見た目は似ているが味は明らかに違う。
もう一匹食べようかと思ったが止めにした。連れの3人にも敢えて奨めなかった。我々の後に続々お客さんが入ってきて店は満員になっている。予約なしで飛び込んできた我々が、ギンポ目当てに予約してきた客のものを食べたら申し訳ない。

代わりに豆腐をしっかり味わってもらうことにした。にがりを多めにしているので箸で刺しても持ち上がる。大将手作りの豆腐だ。いつもとは趣向を変えて、薬味は別盛りにするようにアドバイスした。まず豆腐だけで、次は塩で、そして薬味を乗せて醤油をかけて食べる。みんな、気に入ったようだ。
ギンポを食べられるのは5月末頃まで。あまり時間はない。
だぼ鯊
東京都中央区日本橋3-3-14
03-3271-7533
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2008年05月02日
[東寿し](札幌)
北海道最古の寿し屋

明治8年創業、東京から北海道に寿しを伝えたことから東寿しと名乗ったそうだ。
「古いからいいというわけでもあるまい」と地元の人が呟いたのが不気味に頭に残った。
5時半に店に到着。一斉に客が入ってきたため、1機しかないエレベーターを2度待ってようやく4階の座敷に到達した。席には銀髪の会社名付きのお品書きが置かれていて嬉しくなった。予算(1万円)と希望を事前に伝えておいたとおり、特別メニューを用意してくれたのが分かる。
メニュー、付け出し

全員揃うとすぐに付け出しと撮りそこなった塩水ウニがやってきた。
刺し身盛り合わせ、桜ますの焼き物

付け出しに箸をつけようとしたところで刺し身の盛り合わせが出てきた。ちょっと早いなーと思ったが、気を取り直して付け出しの里芋を食べたところで、焼き魚がをテーブルに置かれた。「料理を出すペースを落として」と仲居さんに注文をつけたが、頭に血が昇って他の人の話が耳に入らない。
目の前に付け出し、塩水うに、刺し盛り、焼き物の4皿が並んだ。あらためてメニューを見ると、あとは煮物を挟んですぐにお食事(にぎり寿司)になってしまう。
部屋を出て仲居さんをつかまえて、「とっとと食べて早く帰れということか?」と気色張った。仲居さんは「自分の不手際で、調理場の責任ではありません」と殊勝だ。刺身と暖かい焼き魚を同時に出す愚は料理人の仕業であることは疑いないところだが、自分の責任と言い張る仲居さんに免じて矛を収めた。
サービス(?)、煮物

煮物の前にお品書きにない料理が出てきた。仲居さんから一言もないので予定されていたものか、お詫びのしるしなのか良く分からない。多分後者だろうが、そうであれば仲居さんは只者ではない。彼女の言ったとおり、すべての差配をしているのかもしれない。
寿し

トイレに立った時に、今度は仲居さんに親しげに挨拶した。仲直りの時だ。注意してからは料理を出すタイミングも問題ない。
前半は怒りのため、後半は話が弾んでしまったために料理の味はよく覚えていない。仲居さんの本望ではないかもしれないが、料理よりも彼女の印象が強く残る店だった。
他の人たちは我々のやり取りに気付かず、楽しんでくれたようだ。もっとも、文句を言わない地元の客が一番怖い。北海道で最古の寿し屋なら、当然分かっているはずだ。
東寿し
北海道札幌市中央区南4条西3丁目
011-261-7161
http://www.azumazushi.com
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2008年04月17日
[すし処 N](四谷)
夫唱婦随の小さな寿司屋

「ブログに書かないでください」と帰り際に釘を刺された。八重洲仲通りの「あきば」と同じように電話帳にも載せていないと言う。女将に店名も電話番号も出さない約束をしてエレベーターに乗り込んだ。
「ブラディドール」に連れて行ってくれたMさんが紹介してくれた店は、飛び込み客はまず来ないところにある。ちょっと迷って携帯電話を鳴らし始めたとき、ビルの中に通りからは目立たない看板を見つけた。
お通し、刺身

毎日更新するおしながきがいい。それぞれの素材に産地が書かれており、素材へのこだわりが感じられる。自己流と謙遜するが、女将自筆の筆文字がいい味を出している。
鯵は産地の違うものが3種類あり味比べが出来る。しめさばを頼むと炙ったものを添えてくれるので、生と焼きの味の違いが分かる。芸が細かい。
寿司

こはだ、あなごを頼んで他はお任せにした。信頼できる店はお任せにした方が美味いものが食べられる。
うに

うにを箸でつまんでしっかりした身に驚き、食べてまた驚いた。鮪で有名な大間産のむらさきうにが入った容器を見せてもらった。うにをそのまま詰めただけで混ぜ物は一切なし。築地でも滅多に手に入らないそうで、実に美味。Nではうには旬の春~夏しか使わないとこだわる。軍艦巻きの海苔も特級品と誰でも分かるものだ。

席に着いたときから気になっていた大きなしじみを味噌汁にしてもらった。青森県小川原湖のしじみは巨大でしじみ特有の泥臭さがない。しじみとは別物と思える。
無口な若い主人も自慢の素材のことになると饒舌になる。日本酒も純米酒と生原酒しかない。酒も結構好きだと言うとおり飲み物も本物志向。しかも良心的な値段。これで儲かるのだろうか?
少し打ち解けたと思ったところで冒頭の会話になった。宣伝したくて仕方がないと思う銀髪の心情を読み取って機先を制された。
「会社の仲間に紹介してあげる」と言われても「お客様がまた来ていただくだけでいいです」と断ると言う。客を怒鳴りつけるような有名店とは違う。常連さんだけが偉そうにしている店でなく、たまに来る客でもいつも心地よく過ごせる店を作りたいそうだ。確かに銀髪以外は静かに飲み食いしている客が多い。
偉ぶらず偉そうにさせず、双方が自然体で客はゆったりと美味しい食べ物、酒を楽しむといったところだろうか。
毎日変わるおしながきや女将ノートなどをホームページで見ることができるけれど、これも紹介することができないのが残念だ。
主人と女将の思いが分かる方は、なんとか探し当てて行ってください。
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2008年03月19日
[がんこ](大阪道頓堀)
大阪の雄、本場のお味は?

全国に100店舗近くを展開するがんこグループ。銀座にも2店あるが、東京から出張したメンバーは今回も本場のがんこに行きたいと言う。道頓堀店が大店なので本店と思っていたようだが、例に違わずがんこの発祥の店も小型の十三店である。
お通し、がんこ地中海マグロ中とろ

がんこを冠した料理がいくつかあるので笑った。ところが中トロを一切れ食べたら意外に美味い。侮ってはいけないと思った。帰ってからHPで調べたら、マルハの協力を得てがんこ用に畜養したものだという。
野菜、豚、鶏、えびなどにもがんこを冠した素材がある。洒落で名づけたわけではないのが理解できた。笑わないでそれらを食べれば良かったと後悔した。
ふぐ(唐揚げ、刺身、皮)

皮も一切れもらって口に含んだ。神田。「満寿家」のようにはいかなかった。ふぐにもがんこの名前がついていたらよかったのに。
厚揚げ、サラダ

あおりいか、活きたこ

枝豆、茄子、お新香盛合せ

ネギトロ巻き、穴子寿司

がんこの良さはやはり値段だろう。スポンサー役の銀髪を気遣って、同行者がんこを選んでくれて本当に有り難かった。
安さだけで全国に100店舗近くまで展開できたわけではないことが分かったのも良かった。高いものを使って美味しいのは当たり前。安くても美味しくなければ厳しい大阪人には評価されないだろう。
銀座店に行って、「がんこ〇〇」をもっと食べてみたくなった。
がんこ
大阪府大阪市中央区道頓堀1-8-24
06-6212-1705
http://www.gankofood.co.jp/index.html
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2008年03月01日
[美苑寿司]②(新宿御苑前)
丁寧なのか、ノンビリしているのか

いつもはどこで食べるか銀髪が決めるのだが、今日は客が探すと言う。新宿御苑に事務所を持つ客なので、素直に従うことにした。ミーティングが終り、彼が明かした店の場所を聞いてショックを受けた。「近所で一番の寿司屋」と言われたら断る訳にはいかない。
歩きながら「御苑寿司ですね」と言っても、客の反応は鈍い。彼も行ったことがなさそうだ。奨めた誰かの顔を潰すのも悪い気がした。。
お通し、刺身

前回来た時は、2時間近くの殆どを料理が出てくるまでの待ち時間に費やした。料理人は主人一人しかいないので、刺身、寿司以外のものを頼んでも、間を埋めることは出来ない。順番に出てくる料理を待つしかない。一番早く出来るのが刺身ということは前回学んだ。
「さわらはあるの?」と聞いたら「岡山の人ですか?」と聞き返された。長時間待たされてもニコニコしていたカウンターの銀髪を覚えていないようだ。「今度はばら寿司を食べてくださいよ」と帰り際に声をかけられたことを銀髪は忘れていない。ばら寿司も早めに頼んだ。少しは時間が短縮されるかもしれない。
いいだこ、玉子焼き

ばら寿司が出てくるまで長時間を要した。前回は満席近い多くの客がいたせいかと諦めたが、今回は我々の他はカウンターに4人居るだけなのに状況は変わらなかった。いいだこはとっくに食べ終り、客がイライライし始めた。握りなら早いだろうとオーダーしようとするのを制止した。店主がばら寿司を作り終わるまでは、何を頼んでも無駄である。唯一の早く出る料理が玉子焼きだった。
ばら寿司

2人前を頼んだのに4皿出てきた。ちゃんと分けてくれた丁寧な仕事に感心したが、その分出来上がりが遅い。刺身のときは一人一皿に感激していた面々も、今度は首を傾げている。「2人前を一盛りにしてくれ」との銀髪の頼みを店員が執拗に拒んだのは、料亭・割烹風を貫きたい意欲の表れだろう。しかし、それを許すには我々は腹が空きすぎていた。
寿司

アッと言う間に食べ終えた客の一人が、握りを注文した。永遠と思える時が過ぎた。今度は立派な寿司の盛合せが出てきた。出来次第一品ずつ出てくることを予想したが、またしても予想は裏切られた。時間がかかるはずだ。
味は悪くない。丁寧な仕事をする。場所も地下鉄の出口と悪くない。店主も店員も親切で人が良い。誰か気の利いた料理人を一人増やせば最大の欠点は解消されるはずだ。今のままでは再訪する客は稀だろう。
前回と同様に、今回も人の良さそうな店主が憎めないのが辛い。
美苑寿司
東京都新宿区新宿2-1-13 フーバー新宿御苑ビルB1
03-3352-2840
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2008年01月11日
[さい藤](札幌)
冬の札幌は美味しい

「寿司屋がいい」という部下のためにプリンスホテルのベルボーイに店を紹介してもらうことにした。「札幌でナンバーワンのすし善に匹敵する店を」と頼んだら、インターネットで調べて部屋まで地図を持ってきてくれた。そこまでやってくれたら無視するわけにはいかない。素直に従って予約を取った。
5時半頃店に到着。すし善と匹敵するというのは大袈裟だが、悪くなさそうだ。くの字のカウンターの中に2人の料理人がいて、我々を担当する塚原さんは40絡み。脂が乗り切っているようで期待が持てる。「嫌いなものはありますか?」と聞かれ、全員が「ありません」と先生と生徒の会話みたい。もちろん「地物中心で」と付け加える。
3種和え物、ひらめ、ほっき貝

まずはいか、いくら、うにの和え物から。刺身のスタートはひらめ。ミル貝と思ってその大きさに感心したら黒ほっき貝とのこと。地元の人が「苫小牧産だよね」と口を挟む。さらに「ほたても美味しいですよ」とガラスケースの中のほたての宣伝もしてくれた。
鮭児、炙り白子

1万匹に数匹しか獲れず、幻の鮭とも言われる鮭児に久々のご対面。もちろん冷凍物だが、冷凍した方が寄生虫は死に、脂が全身に回ってより美味しくなるそうだ。見た目よりも脂が乗っている。
毛蟹、自家製からすみ、たこ

毛蟹の上品な身に蟹みそを和えて食べると本当に美味い。自家製のからすみもいい。たこは長めに茹でてあるので繊維が崩れ柔らかい。
にしんの刺身と寿司、うにの寿司

この日一番気に入ったのはにしんの刺身・寿司。札幌に来なければ生のにしんは滅多に食べられない。
山わさび巻き、山わさび漬け明太子

北海道ならではのものがもう一つ、山わさび。「ホースラディッシュでしょ?」と聞くが、みんな「???」。明治時代にやってきた西洋わさびを北海道では山わさびと呼び、わさびと同様の使い方をする。辛味は普通のわさびより強いので、チューブわさびの原料にもなっている。オーストラリアに居たときはローストビーフに乗せてよく食べた。
いい店だった。とりわけ大塚さんが良かった。寿司屋は板さんと気が合うとグッと楽しさが増す。店を持つ夢を胸のうちに秘めて頑張っている姿がいい。店主の斉藤さんは「やま田」から独立した。斉藤さんも独立したら「おお塚」だろうか。
いつになるか分からないが、その日が来たら必ず行こうと思った。
すし屋のさい藤
北海道札幌市中央区南6条西4丁目 プラザ6・4ビル1階
011-513-2622
http://www.sushisaito.com
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2007年12月05日
[さかい](広島)
瀬戸内は美味しい

お好み焼きもいいけれど、やはり夜は瀬戸内海の魚介類に限る。シンプルに楽しむには寿司屋が一番。全日空ホテルのコンシエルジェに紹介してもらった。候補に上がった数軒の名前をタクシーの運転手さんにぶつけ、「さかい」に決定した。
店の前に立って不思議な感覚に襲われた。店に入り板さんの顔を見て気がついた。銀髪グルメ紀行を始める前に来たことがある。部下はしばらくしても思い出さない暢気な男だ。
お通し

刺身盛合わせ

地物を頼んだら、おこぜ、夜鳴き貝、〆鯖が出てきた。夏が旬と言われるおこぜだが、他の魚と同様に冬場の方が美味しいと言う。
小いわし、かわはぎ

かわはぎの肝はおこぜより立派。しかし高級魚のおこぜやかわはぎを圧倒したのは、小いわし(かたくちいわし)である。東京ではなかなか口に出来ないような美味しいいわしだった。
かき酢、しゃこ

広島のかきは今年は成育が遅いとのことで、ちょっと残念。しゃこも広島名物の一つだそうだが、子持ちの時期ではなく、これも残念。
車海老

隣客が食べていた塩焼きを見て驚いた。20cmはあろうかという大きな車えびである。車海老といえば天草産が有名だが、これほど大きなものは見たことがない。地物ではない天然の鹿児島産と聞いて一瞬迷ったが、この機会を逃したらいつありつけるか分からないので食べることにした。頭は焼いてもらった。みそが美味い!
あさり

最後にあさりの味噌汁を飲んだ。築地でも瀬戸内産のあさりを見たことはないが、板さんが奨めるだけあって美味だった。
いろいろ食べた夜だったが、高級魚は値は張るが東京で食べる方が美味しい。いいものは高く売れるところに行ってしまうのだろう。
さかいでも小いわしが一番美味しかった。地方では地元で消費されてしまう安価なものが一番美味しいことを、あらためて思い知らされた。
磯辺料理 さかい
広島県広島市中区胡町3-12(パレ三番街ビル)
082-249-1988
http://www.11sushi.com/sakai
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2007年11月09日
[だぼ鯊]その4(日本橋)
ハゼが旬ですよ!

どの天ぷら屋が一番いいかと聞かれたら答えに窮する。しかし、どの天ぷら屋が一番好きかと問われれば「だぼ鯊」と答える。もっと高級なネタを使う店もある。店構えや店内がもっと立派で美しい店もある。しかし、銀髪にとって気兼ねなく楽しめる天ぷら屋はこの店をおいて他にない。
グルメ紀行を始めてから同じ店に顔を出す機会が減ってしまったが、この時期になるとハゼを食べに行かねばなるまい。店名にするだけあって、ハゼの天ぷらはここが一番美味い。
おひたし、ホタテ貝柱焼き

一応、コース料理の体裁をとって順番に揚がってくるが、海老、みつば、小玉ねぎに続いて今日はお目当てのハゼを挟んでくれた。

江戸前はまだ小さいからと今日は松島産。身はふっくらと、尾ひれはピンとしている。背骨は香ばしく、エラとカマのところは小振りながらも脂の乗りがいい。頭も残らず食べ尽くす。
高級店では絶対ないようなピーマンや茄子も客が好むとなると見栄を張らずに出してくれる。もちろん松茸などの高級ネタもある。もうじき終りの松茸だが、天ぷらにすると香りが閉じ込められて秀逸だ。
ピーマン、松茸

他の人にはサラダが配られ、穴子が出される。銀髪はサラダを断りもう一度ハゼをもらう。活きハゼは3時間前に処理されて、丁度食べごろと言われてもう一度と指を立てた。

他の名店でもハゼを食べたことはあるが、やはりハゼはこの店が一番。もちろん東京湾遊覧の屋形船で食べるものなど論外だ。
名店でコース料理をきっかり食べるのもいいが、我侭を言えるのがカウンターで食べる喜び。
大将も数回通えばこちらの気持ちを分かってくれる。ハゼが食べられるのは9~12月までのわずか4ヶ月。皆さんお見逃しなく。
だぼ鯊
東京都中央区日本橋3-3-14
03-3271-7533
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2007年10月19日
[野郎寿司本店](新宿歌舞伎町)
新宿で食べる安心価格の寿司屋

区役所通り、風林会館近くにはリーズナブルに食べられる大型寿司店が集まる。野郎寿司本店もそんな店の一つ。同伴族や接待風の客も居れば、上司の悪口で盛り上がっているサラリーマン達もいる。雑多な雰囲気が歌舞伎町らしい。
銀髪も今日は安く済ませようとたくらんでやってきた。まずはお任せで刺し身の盛り合わせ。

中トロ、赤身、タコ、とり貝、赤貝、かんぱち、いか、甘海老など予想以上に賑やかな盛り合わせが出てきた。一番奥に玉子焼きまで乗ってきたのには驚いた。
これだけでお腹一杯になりそうだ。
高級店ではかならず産地を聞くけれど、野郎寿司で聞くのは野暮に思われる。どれもそれなりに美味しいのだから余計なことは聞かない。
ナンダカンダと楽しんで飲んでいると、いつの間にか刺身はなくなった。今度はお任せではなく、立ち上がって冷蔵ケースの中を覗き込んで魚を指定した。

鮭の厚切りを見てちょっとげんなりした。梅丘美登利寿司などもネタの大きさで行列が絶えない人気店となったが、銀髪はどうにも好きになれない。鮭は脂が乗っているだけに辛かった。それに比べればウニやもイワシは上出来だった。
大トロ、穴子

刺身だけでお腹が膨らんだので、寿司は1かんずつ食べたかったが、許してもらえなかった。「手間がかかるんでねー」と言われたら仕方がない。安い店で我侭は言えない。
大トロは連れに手伝ってもらったが、穴子は拒否された。
下の写真は別の機会に行った時の写真。アジとしめ鯖を1かんずつ握ってくれた。大型店のサービスは担当する板さんで当たり外れがあるらしい。
あじ、しめさば、とり貝、すずき、うに

高級店並の繊細さを求めなければ野郎寿司で問題ないし、繊細さなど邪魔だと思う客も多いだろう。値段の割には美味しいと思った。名札を見ると「宮城水産」と書いてある。
領収書にも株式会社宮城水産と書いてあり、野郎寿司の名はない。住所も大久保だ。魚屋がやっているので安く出来るのかと思ったが、未だ確認できていない。
野郎寿司本店
東京都新宿区歌舞伎町2-10-4
03-3208-9496
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2007年09月29日
[大寿司]②(錦糸町)
欠食児童を引き連れて

「蕎麦屋と寿司屋どっちがいい?」と聞いたら全員が寿司屋と言う。候補にした蕎麦屋には純米大吟醸酒など銘酒が何種類もあるが、寿司屋は醸造酒のみ。酒好きが多いメンバーだが、寿司の魅力にはかなわない。
総勢男ばかり8名となれば安くて美味い店、錦糸町の大寿司に限る。狭い大寿司のカウンターは我々でほぼ一杯になった。

いつもながら豪快な刺身の盛合わせだ。これで2人前だから食べ応えがある。手前から 平目、鮪、雲丹、鯵、甘海老、蛸、烏賊。開業以来、生しか使ったことがない自慢の鮪は青森県大間産だが、大将は脂の乗りが悪いと不満顔だ。
これだけの刺身があればゆっくり呑めると踏んだのだが、他の連中の刺身は瞬く間になくなっていく。
右端のKがコハダを握ってくれと言う。彼は刺身の途中で握りを数個食べて、再び刺身を食べる変わった食べ方をする。それを知らない連中が素直に追随するものだから、一気に食事会は終盤に入ってしまった。大将はあちこちから寿司の声がかかるのでてんてこ舞いだ。


銀髪はあくまで刺身に執着する。刺身でコハダを食べる。今年はシンコを食べ損なったのが残念。「ばふんはもう終わったんですか?」と聞いたら、銀髪にだけバフン雲丹を出してくれた。他の連中はスズキ、牡丹海老、さんまを握ってもらう。その都度銀髪は同じネタの刺身を要求する。

1時間足らずでみんな満腹になってしまったようだ。仕方なく最後に穴子と大トロを握ってもらった。これで銀髪も終了である。
1人で3~4合を飲む奴が何人もいるのに、空いた酒は4合瓶が2本だけ。とにかく競争するかのように食べることに専念した面々だった。
お代は写真にない岩牡蠣などのつまみ類や酒を入れて1人約1万円。みんなは大いに満足したようだが、もう少しゆっくり味わって欲しかった。
一番喜んだのは、大いに食べてサッと帰る我々を送り出した大将だったろう。
大寿司
東京都墨田区錦糸4-5-8
03-3625-2591
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2007年09月07日
[吉備膳](岡山)
岡山名物ばら寿司

同じ名前でも所変われば内容が異なる。ちらし寿司もそんな料理の一つだ。九州出身の銀髪はちらし寿司=混ぜご飯だと思っていた。
東京の寿司屋でちらし寿司を見たときは違和感を覚えた。寿司飯の上に刺身を乗せたものは、慣れ親しんだちらし寿司とはまったく別物だった。
岡山名物がちらし寿司と知ったのは新宿御苑駅にある美苑寿司に行ったときである。岡山ではばら寿司と言った方がいいだろう。全国的に、混ぜご飯をばら寿司、刺身を乗せたものがちらし寿司と呼称を統一してくれていれば、オーダーするとき勘違いすることはなくなる。
岡山駅前のホテルグランヴィア2階の吉備膳に行った。知らない街を入る店のあてもなく歩くのは辛い。無難なのはホテルのレストランだと思った。迷わずちらし寿司膳を選んだ。
先付け

蛸が明石産なら岡山らしくて嬉しいが、質問はしなかった。
ばら寿司

錦糸卵に覆われて、華やかである。いくら、さわら、えび、ままかり、たこ、はも、まぐろ、しゃこ、しいたけ、はす、そぼろ、錦糸卵。食べながら何種類入っているのかと探すのが楽しい。
魚介類はすべて焼くか酢でしめてある。野菜も同様に煮たり、酢に漬けたりして、手がこんでいる。家庭でこれだけのものを作るのは大変だ。もっとも、ばら寿司は各店、各家庭で一つとして同じものがないと言われるので、家庭ではそれなりのばら寿司が作られるのだろう。
桃のアイスクリーム

岡山は瀬戸内の魚介類だけでなく、果物も豊富なところだ。桃太郎を持ち出すまでもなく、桃は岡山の代表的名な果物。桃が終る頃から葡萄の季節が始まる。新種の葡萄・桃太郎は種がなく皮ごと食べられる高級葡萄で、東京の千疋屋では一房2万円で売られているという。岡山駅の売店ですら大粒は8,000円くらいしていた。
駅の売店には桃、葡萄、吉備団子などの甘味が並ぶ。残念ながら果物を含めて甘いものは苦手だ。ばら寿司を意気込んで食べたが、実を言うと酢飯も好物とは言い難い。
昨日の「わたなべ」の魚介類は良かったが、岡山の味を半分ほどしか楽しめない哀れな銀髪だった。
ホテルグランヴィア岡山 吉備膳
岡山県岡山市元町1-5
086-234-7000
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2007年09月06日
[わたなべ]②(岡山)
久々の岡山で瀬戸内三昧

本来なら新しい店を探すところだが、久し振りなのでお気に入りの店「わたなべ」を再訪することにした。前回はタクシーに連れてきてもらったが、今度は歩き。苦もなく行けると思ったのが大間違い。汗だくになりながら、店に2回も電話してやっと探し当てた。入り口の記憶は鮮明で、中に入り大将と奥さんを見て懐かしさが込み上げる。
こちらは覚えていても向こうは違うようだ。「前に写真を撮って、インターネットに載せまして…」と言うと「アー、お客様がコピーを持ってきてくれましたよ」と少し思い出してくれる。「良く書いてあったでしょ。もっともけなしてたら今日来れないよね」と言ったところでみんな大笑い。これで楽しい食事への準備が整った。
お通し、こち、鱧、げそ

お通しは鱧の卵、かれいの肝の煮付け。「地物を中心にお願いします」と告げて後はお任せ。鱧は皮目だけちょっと炙って、お刺身に。鱧の刺身は初体験だった。旬の新いかは後で握りにしてもらうことにして、げそを肴にした。
さわら刺身とたたき、にし貝、ふか

さわらはシーズン外れで食べられないと諦めていたが、明石産のいい型のものが入っていた。刺身、たたきの2種類作ってもらった。同じ魚でもまったく違う味。個人的には刺身がいいかな。
地元ではネコと呼ばれるふか(鮫)の湯引きは酢味噌で食べた。
穴子の塩焼きと刺身、くじら

ガラスケースの中の煮穴子を見て、「生はないの?」と聞いたらあると言う。塩焼きと刺身にしてもらった。瀬戸内の穴子は評判が高い。刺身もいいが、焼いた穴子の美味いこと美味いこと。
くじらは近海で獲れた生のミンククジラとのことだったので、地物ではないが頼んでしまった。生は約2年ぶりだ。
握り

新いか、ままかり、あじ、きすを握ってもらった。他にげその握りと卵焼き。
各人生ビール1杯、酒3~4合を飲んで1人頭12,000円強。飲んで食ってこの値段は驚き物。もっとも、地物中心だったので高額の本鮪、うに、鮑などは食べていない。
東京で食べられない鮮度抜群で、しかも安い地魚を食べる。旅先での食べ方はこれに限る。
今回も大満足の「わたなべ」であった。
鮨三昧 わたなべ
岡山県岡山市幸町5-20
231-9290
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2007年09月03日
[八ツ花]②(日本橋)
野菜にだってこだわっている

八つ花の2階、お座敷天ぷらは2回目(→「八ツ花」)なので、グルメ紀行の取材は忘れて食べることに専念しようと思った。
平目の刺身

刺身が前回と違ったので、カメラを取り出した。食事に専念すると誓ったばかりなのに。
天ぷらが始まった。スタートは海老から。なす、みょうがと続く。
なす、みょうが、きす

立派なきすが出てきたところからグルメ紀行にスイッチが入ってしまった。きすは千葉県富津市竹岡産。板さんとの会話に他の人も割り込んできた。塩はチベット産。
はす、しいたけ

新はすは徳島産。魚だけでなく野菜の産地も聞き始めた。新はすだけに、優しい噛み応えで香ばしい。あおりいかを挟んで次はしいたけ。海老のすり身を抱いている。
ぎんなん、さつまいも、玉ねぎ

銀杏は岐阜県祖父江産。黄色が昨年のもので、緑が新物。違いが楽しめる。
さつまいもは高知産。さつまいも=鹿児島となるが、新物は高知産が好まれるとのこと。
玉ねぎは静岡産。香ばしくて甘い玉ねぎは天ぷらならではの逸品だと思う。
漬物、天茶漬け

羽田産の穴子を食べてご飯物へ。天丼なども選べるが、迷わず茶漬けを選択。他の皆も追随した。
目の前で揚げてもらうのは初めてと言う人も居たので、Iさんの選択は大正解だった。2階の座敷は2代目の担当だが、素材の産地などを淀みなく説明してくれたのでありがたみも倍加した。
Iさん、ご馳走様でした。
八ツ花
東京都中央区日本橋2-6-11
03-3271-9354
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2007年08月29日
[伴]②(八重洲)
久し振りに伴のカウンターでと思ったのだが…

3人なら寿司屋のカウンターがいいと思った。銀髪が最年少で他のお2人は60歳を超えている。食べる量も好みも違う3人なので、自分で調節できるカウンターがベストである。ところが会社を出ようとしたところで事態は急変した。太っ腹氏が落下傘してくることになった。
海苔と塩辛

4人ではカウンターは相応しくない。テーブル席に陣取るといつものように海苔と塩辛が出てきた。
刺身盛合わせ、きびなご

太っ腹氏はまだやってこない。3人分の刺身がでてきたところでビールから焼酎へと移る。
きびなごが美味しい。トロもいいがきびなごが一番美味しかったかもしれない。ようやく太っ腹氏が携帯電話を耳にあてながら入ってきた。
さんま一夜干し

気前のいい太っ腹氏を見て大将が即座に反応する。
刺身を食べない彼のために早速さんまを焼いて、大トロを中心に1人前の寿司を出す。
寿司

我々にもさんまと3人分のお寿司が出てきた。これを食べ始めると太っ腹氏が呼んだ人たちが次々にやってくる。結局4人が新たに参加して、合計8人になった。バラバラにやってくるので、その都度大将が寿司を握る。
伴の寿司は大将の気風に合わせてシャリが大きい。シャリ少な目と言うのだが、あまり小さくなった気はしない。
伴は比較的庶民的な寿司屋だ。居酒屋気分で利用する客が多い。勘定を持ってくれる太っ腹氏も、それほど財布の中身を気にする風ではない。
最後に来た1人が食べ終わるのを待てず、太っ腹氏は席を立つ。さてこれからどこに行くのだろう。予算は伴の数倍に膨らむに違いない。他人の懐ながらちょっと気になる。
伴
東京都中央区八重洲1-5-21
03-3278-1644
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2007年08月11日
[対馬](ニューヨーク)
ニューヨークも日本食中心

海外旅行気分は機内食が出て来る頃から盛り上がってくる。日本発のときはいつも日本食を選ぶ。郷に入れば郷に従えで、機内食を最後にしばらくは日本食を絶つ覚悟である。JALでの選択メニューでとんこつラーメンを頼んだが、乾麺に替わっていて残念だった。2年前の北米便では生めん風だった気がする。

浅い眠りから覚めて何気なく外を見るとまさに太陽が翼の先の雲間から顔を出す瞬間だった。

現地時間11時前、ニューヨークに到着した。2年前のワシントンに比べると入国時の検査は厳しくない。州によって、空港によって対応が違うのだろうか。或いは2年の間にチェック体制は緩和されたのだろうか。
1時前にホテルに着いて昼食のため街に出た。駅構内のフードコートにあるレストランに入り、2種類のサンドイッチを頼み3人で分けることにしたが、半分近くを残す結果となった。
夜はニューヨークに住む中学時代の同級生Fと寿司屋「対馬」に行った。二食目で日本食断ちの決意はもろくも崩れた。昨年のオーストラリア旅行は身内だけだったので1週間1度も日本食を食べなかったが、今回はご馳走してくれるFの好みを遮るわけには行かない。
刺身盛合わせ1

地元の平目の他はハワイのかんぱち、地中海のまぐろ、シアトルのミル貝、日本のあじと多彩。
刺身盛合わせ2

Fは握りに移ったが、こちらはいつものように刺身にこだわる。 剣先いかの横はカナダのとこぶし、平目のエンガワ、地元のシーバス(すずき)。ワシントンでも思ったが、東海岸で獲れる魚ではシーバスが一番美味い。有名なボストン鮪は手に入れるのが難しいようだ。
なす、いか、巻物

他に食べた3品。水なすはもちろん泉州産で日本からの輸入物。客の殆どが地元住民なので、旅行者が地元のものにこだわっても限度がある。
九州出身のFが長崎の対馬を連想して入った店だそうだが、店名は土地の名前ではなく店主の苗字。Fは当てが外れた後も対馬さんの人柄に惚れて贔屓にしている。遠来の友人を大好きな店に迎えてくれた。感謝、感謝である。
1升酒を飲み次の店に向かった。初日のニューヨークは旧友との昔話に盛り上がり、果てしなく日本的であった。
対馬
141 East 47th Street New York, N.Y. 10017
212-207-1938
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2007年07月02日
[つな八 つのはず庵](新宿)
新宿の有名店といえばここかな

新宿三越裏に2つの天ぷら屋がある。明治初期に開業の船橋屋と大正13年創業のつな八の本店は同じ通りのはす向かいで、どちらも行列の出来る天ぷら屋だ。銀座に比べると安くカウンターで食べられるとあって若いカップルも並んでいる。どちらか入れるだろうと思って予約なしで行ったがどちらも入れなかった。
仕方なく通りを一本変えると、飲食店らしくない入り口のビルがあった。つな八の迎賓館「つのはず庵」である。つのはずは新宿の旧地名「角筈」からとったとのこと。おそるおそる中に入ったら、空いているというではないか。「カウンターがいいんですが」と念を押しても平然としている。エレベーターに乗り上階で降りるとカウンターは半分も埋まっていなかった。
特選天ぷらコース6,300円を頼んだ。迎賓館と言ってもお手ごろな新宿価格だ。
前菜2種

一つは卵豆腐のうに乗せ。箸で縦に切ろうとすると引っかかった。下に白アスパラが2列敷いてある。横に切れば上手に食べられることに気付いて、隣にアドバイスしようと横を向くが、既に苦労の最中だった。
もう一品はタコにゼリー状のスープをかけてある。タコが柔らかいのに驚いた。
えび、なす、きす

どれも油が軽く上手に揚がっている。ごま油100%とは思えない。
きすはオリジナルのトマト&大根おろしで食べる。トマトの酸味が夏らしい爽やかな天ぷらになった。
れんこん、はまぐり、穴子

はまぐりは味がついているのでこのままで(もちろん殻は食べられない)。あなごはまず塩で、次に天つゆをつけて食べた。
調理台横の水槽が水泡をあげていたので蓋を開けて見せてもらった。立ってカウンター越しに覗き見ると、生きたエビや穴子が入っている。お手ごろ価格だが手抜きはない。
トマトのスープ、かきあげ

トマトがメインの野菜スープで口直しをして、最後は食事。天茶漬け、天丼も選べるが、かきあげと白いご飯にした。かきあげを酒の肴にしたり、天つゆにくぐらしてご飯に乗せたりと勝手に楽しんだ。
つな八は全国に34店舗を有する。歴史ある本店で食べたいのはやまやまだが、つのはず庵も悪くなかった。
つな八 つのはず庵
東京都新宿区新宿3-28-4
03-3358-2788
http://www.tunahachi.co.jp
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2007年06月29日
[鮨隆](福岡)
博多駅前でいい店見つけた!

何度も福岡に来ているが、博多駅前ではラーメン屋以外は入ったことがない。客の希望を聞くべきだろうが、「寿司屋に行きたい!」と自己主張する銀髪。連れて行かれたのが博多駅筑紫口から歩いて数分、外から見える生簀が気になっていた店だった。店に入るともちろんカウンター席に。野郎同士で向かい合っての食事は辛い。美味い料理を前にして仕事の話なんかしたくない。
いかの活き造り

地元の物を中心にお任せしたら、最初に出てきたのは佐賀県唐津・呼子のいか。博多で生簀を持つ料理屋の定番だが、他にも食べたいものがあるので、少し小さめのいかを頼んだ。
刺身盛合わせ

海老、玄海の鯛、大分の関さばに加えて鮪が出てきた。そこで意地悪な質問。「インド鮪?」「本鮪です」「国内産?メジ鮪?」「いえ、大西洋産です」。
先日、築地市場内で仲卸に教えてもらったばかり。今の時期、国内産で大物の本鮪は殆ど取れない。上物は大西洋産で築地に空輸されて来るとのこと。期待した答えが返ってきて店に対する信頼感が増した。
穴子の刺身

店主イチオシは穴子の刺身。立派なサイズの対馬産活き穴子を生簀から取り出して見せてくれる。穴子の頭を高くかざして首に包丁を入れる。さばいた穴子は身の表面を軽く炙って刺身にする。炙った皮を添えて我々の目の前に出てきた見事な穴子。ポン酢を奨められたが塩をつけて口に運ぶ。肉厚の穴子の美味いこと、美味いこと。広島「水軍の宴」の穴子塩焼きを抜き去ってトップに躍り出た。穴子はこれから旬を迎える。
あげ巻き貝、あじ、しまあじ

地元のお客様が絶対食べろと頑張った貝とあじ。しまあじは店主の推奨。あじの脂が光り輝き、さすが脱帽の美味さだ。
赤貝、とり貝、ゲソ焼き

九州産の貝を2種類。ゲソは最初に出た刺身の残り。焼き加減が絶妙で、ネットリして味が深い。やはり魚も肉も焼くとさらに美味しくなる。
穴子、雲丹、佐賀牛

雲丹はアカウニ。バフンウニとムラサキウニしか知らなかったが、アカウニは主に九州西岸で獲れる。高級寿司ネタとして人気があるというので、銀髪は海苔を巻かずに食べた。一度殻から直接食べてみたいものだ。
佐賀牛霜降りの寿司でお開きにした。
店に入ったときはアシスタントかと思った若者が、実は二代目店主の二田さん。笑顔が凛々しい若干28歳の料理人で、包丁さばきもあざやかだ。笑顔でお見送りしてくれたのが若奥さん。夫婦でやっている店はいい店が多いが、鮨隆も例外ではなかった。
引退して若い息子夫婦に任せてしまった先代は、怠け者なのか人格者か。多分後者だろう。30年の歴史がある店を任されて、若夫婦が成長しないわけがない。
ご満悦の銀髪以上に喜んでくれたのはお客様。紹介した手前、銀髪がどう反応するか心配していたようだ。3人で酒もそこそこ飲んで合計26,000円。店主夫婦、店員、お客様、銀髪、部下、みんなニコニコ、最後はお財布もニコニコだった。
鮨隆本店
福岡県福岡市博多区博多駅東1-12-26
092-431-6046
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2007年06月07日
[喜鮨](本郷)
東大正門前のお寿司屋さん

日本橋からタクシーに乗り、「東大の正門」と言ったのだが、車を降りて目を上げると赤門が見えた。仕方なく正門前まで歩いて左折するとすぐに寿司屋らしい店を見つけた。店主の山口喜久治さんの一文字を取って喜鮨、入り口に掛けられたのれんには七が3つの漢字が書いてある。扉を開けると、銀髪の手に地図が握られているのを見た店主が「すぐ分かりましたか?」と笑顔で声をかけてくれた。
赤門を正門と勘違いしているタクシーが多く、戸惑う客が多いと聞かされた。Tさん、Kさんが来るまでしばし談笑。グルメ記事を書いていると告げると、「あんまり載せないでくださいね」と言われた。今日もカウンター、テーブル、2階とほぼ一杯。ジャパンタイムズで紹介されて、外国人から電話が入り困ったこともあるらしい。
最初に網茸の漬物風のものや、芽昆布など4品が並んだ。今日はTさんが絶賛する女性Kさんを紹介してくれるのが目的なので、いつもの食べ歩きとはちょっと勝手が違う。茸の名前を教えてくれたのはKさんだった。故郷の秋田でよく食べたという。男2人より年長の起業家Kさんは、週末はスキューバダイビングをやるエネルギッシュな女性だ。
海ぶどう、とこぶし

4品の次に海ぶどうととこぶしの2品。Tさんに寿司屋というより居酒屋と聞いていたが、なるほど多種類のつまみが用意されている。店の奥の冷蔵庫にはたくさんの日本酒が出番を待っている。岡山の酒蔵に作ってもらっているオリジナルの吟醸酒「喜酒」を飲んだ、飲んだ、また飲んだ。
うに、穴子寿司

温かいうちに食べてくださいと出された人数分の穴子寿司。とっても美味しいのに話が盛り上がって2つが冷めそうなのが気にかかる。もちろん銀髪はとっくに食べ終わっている。
Tさんとは同い年で聞けば家も近い。さらに話を進めるとなんとTさんの長男と銀髪の長女が同じ小学校のクラスメイト。イヤー、世の中狭いもんだ。
つまみを続けるか、食事にするかと女将に聞かれ寿司にした。

アットホーム、つまみの種類が多い、日本酒の品揃え、リーズナブル、などなどで人気が高い寿司屋。宣伝するなと言われても、自慢をしたくなるのが人情だ。次回はカウンターを占拠しよう。
Kさんは野郎共に負けずとたくさんお酒を呑んだにもかかわらず、仕事場に戻ると言う。残された男2人はタクシーに乗り、地元で呑みなおす事にした。半世紀を越えて生きて来た同い年、まだまだ話は尽きない。
喜鮨
東京都文京区本郷6-17-2
03-3811-5934
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2007年05月23日
[あきば③](八重洲)
夏が来る前に

夏は寿司好き垂涎のスターであるシンコなどが出てくるが、基本的には寿司屋にとっては難しいシーズンだ。貝も産卵期に入り、しばらくは味が落ちる。そこで季節の変わり目に寿司屋で楽しもうということになり、総勢6人で繰り出した。
出かけたのはご近所のあきば。夫婦で営むカウンターだけの寿司屋だが、誰を連れて行っても喜ぶ。この店に来るようになった経緯は以前の記事を参考にしてもらおう。
お通し

真ん中のはしったか貝。主に太平洋側の浅瀬に生息しており、居酒屋でもよく見る貝だが名前を知る人は少ない。
関アジ、アオリイカ、タイ

ツブ貝、かつお、カンパチ

大型のかつおは脂が光っていて、これを食べたらかつおが嫌いな人はいなくなるだろう。
穴子

タレをサッと塗った焼き穴子。関東にはあまり入ってこない通も喜ぶ瀬戸内・明石産の穴子。
タコ、サザエ、タイとコハダ

タコは神奈川県佐島産。軽く茹でただけというが、砂糖を入れたのではないかと疑うほどに甘味がある。アフリカ産とはものが違う。
あきばの自慢は大きなツブ貝とサザエ。サザエは壷焼きにしてもらい、皆さんに食べてもらうことにした。遠慮したつもりだったが、大将がソッと刺身を銀髪だけに出してくれた。嬉しい心遣いだ。
鮪のづけ、トロ、あわび、はまぐり、穴子

鮪は今は和歌山沖を泳いでいるらしい。今度の穴子は江戸前。瀬戸内産は焼いて、江戸前は煮て出す。プロに言わせれば産地によって穴子は顔も味も違うそうだ。料理法が異なるのも頷ける。
最後に青森県十三湖産の大しじみの味噌汁を飲んでお開きにした。と、言いたいところだが、みんな帰りたがらない。ミル貝が欲しい、赤貝も、ウニもなどと頼み始めた。
次のお座敷が待っている銀髪はお金を部下に預けて引き上げた。お腹は一杯だが、お財布は空っぽになってしまった。
あきば
東京都中央区八重洲1-4-10
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2007年04月24日
[美苑寿司](新宿御苑)
サワラを食べるつもりだったのだけど

JR新橋駅前の岡山ラーメン「後楽」で「おいでんせえ岡山」という小冊子をもらった。そこに載っていたのが美苑寿司で、紹介記事中の「サワラの刺身」の文字に惹かれた。鰆は文字どおり春が旬の魚で、岡山ではこれがないと始まらない。
新宿御苑前、新宿寄りの階段を下りたところに店はある。地下の小さな店かと思ったら中は意外と広い。予約を入れていたカウンター席に陣取り、まずビールを頼む。カウンター内の店主・山本さんの悲壮感漂う忙しさに声をかけるタイミングが見つからない。
お通しも出てこないので店主を煩わせないような料理を頼むことにした。
たたみいわしのチーズ焼き、飯だこ

山本さんの忙しさの原因を探した。山本さんはお土産の岡山ばらずしを作っている。さわら、藻貝、ままかりなどを乗せたばらずしは岡山名物の代表格である。ところがテーブルや座敷、カウンターの客はお土産を待っている風情ではなく、他の料理を待ってイライラしている。
まだまだ忙しい山本さんを気遣って揚げ物を頼んだら、たたみいわし以外は全部山本さん1人で作るとのことで止めにした。料理助手に見えた若手は、ようやく出来上がった数個のばら寿司を籠に入れて店を出て行った。お土産ではなく出前だった。
刺身盛合わせ

結局一番早く出来るのは刺し身だった。お奨めのかつおをメインに、しまあじ、さよりの刺身が盛られてきた。岡山以外の魚介類が今日のおすすめとして白板に書かれているが、肝心のサワラはどこにもない。
聞けばサワラは殆ど酢でしめられてばら寿司に使われるそうだ。今日は所期の目的を達成することはできないことを悟った。電話で鰆の刺身ができるかどうか確認して来た方がよさそうだ。
「いつもはこんなに忙しくないんですけどね」と済まなさそうに話す山本さんは、実に気のいい料理人で怒りが湧き上がって来ない。出前料理が終わったものの、店内の客の注文を次々にこなさなければならないようなので、お開きにすることにした。
お土産や出前でも人気の岡山ばらずしを食べるのが一番だということは分かったが、これから頼んでも間が持てない。
「また今度、空いてるときに来ますよ」と話しかけた。暇な店を喜ぶ経営者はいないと思っていたが、「ええ、そうしてください」と言われたら苦笑するしかなかった。
料理は堪能できなかったが、好人物の店主を見ていると、普通なら「二度と来るもんか!」と言うところだが、「次回は絶対ばらずしを」と思ってしまう。
なんとも不思議な気分に陥ってしまった。
美苑寿司
東京都新宿区新宿2-1-13 フーバー新宿御苑ビルB1
03-3352-2840
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2007年03月27日
[大寿司]②(錦糸町)
連夜の寿司屋

2日続けて中華やイタリアンとなるとちょっと躊躇してしまうけど、寿司屋だったら許せてしまうのはやはり日本人。味比べもできるので大歓迎でもある。約1年半ぶりの「大寿司」に向かった。
錦糸町も変貌著しい町だ。タクシーでロッテ会館を目指していったのだが現在解体中。駅前の一等地には何が出来るのだろうか。線路沿いをちょっと歩くと赤い看板が見える。大寿司は変わる気配も見えないが、中に入るといつも笑顔で迎えてくれる女将さんの姿がない。入院中とのことで心配したが、すぐに復帰できそうと聞いた安心した。
まずお通しはホタルイカ。ぷっくらと太って美味しいが、このところ既に何回食べただろう。

刺し盛

相変わらず豪快な刺身の盛り合わせが出てきた。ウニ、本マグロの大トロ、ひらめ、 たいら貝、やりいか、しめ鯖、赤貝、とり貝、たこ。9種類の刺身が所狭しと並んでいる。開店以来20余年、一度も冷凍物は扱ったことがないという大トロが中央にデンと構える。
初めてお連れしたFさん、Hさんが感激している。
谷中しょうが、白魚、小柱

谷中しょうがと季節感漂う白魚、青柳の小柱を追加して熱燗を飲む。一緒に行った相手にもよるが、昨夜に比べるとスピード感あふれる食事だ。もう1人は納豆巻きやかんぴょう巻きを食べて、店を出る体勢になっている。
穴子、お椀

既にお土産の寿司も詰め終わっている。江戸前寿司なら穴子を食べなきゃ終わらないと思ったが、今日の穴子は九州産だった。それでも味には満足した。
お代は1人7~8千円といったところか。昨日の半分にも満たない。飾りのない直球勝負の寿司屋だが、国産の本物のネタをふんだんに食べて、酒をたらふく飲んでこの値段なら文句はない。今日はご馳走になったのだから、そもそも文句が言える立場でもないが…
大寿司
東京都墨田区錦糸4-5-8
03-3625-2591
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2007年03月26日
[天川](銀座)
大事なお客様との会食を初めて行く店で

ちょっと躊躇したが、銀座の高級クラブのママが奨めるのだから間違いはあるまい。ホームページでカウンターの形状も店を選ぶ重要な要素だった。主人は期待通り4人を3対1で座れる位置取りに配してくれた。あうんの呼吸が出来れば、今日の食事の出来も決まったようなものだ。
おひたし、筍、お造り

うるいとあさりのおひたし、筍の木の芽みそ和えと春を感じさせる小鉢2品。お造りは中トロ、鯛、とり貝。いずれも国内産の一級品。江戸前の老舗寿司屋は鯛を使わないところも多いが、天川は違う。老舗のしきたりに縛られない自由も必要だ。昔と違い流通技術の進化で明石の鯛も東京で美味く食べられるということか。
野菜、のど黒、白子

焼き物が出る前に繋ぎとして野菜3品。一見したところ工夫のないように見えるが、しっかりした味で手抜きはない。のど黒、ふぐの白子もなかなかいい。シーズンの終わりにまた白子を味わえるとは幸せだ。
いいだこ、かに、鯖・鯵

寿司に行くにはまだ早いのでお任せ(15,000円)以外におつまみを追加した。いいだこを箸で口に運ぼうとすると中身がゴロンと出てきた。白い固まりは卵で飯粒に見えることから「飯だこ」の名がついた。今が産卵期に当たり、メスは高値で取引される。
寿司と水物

大トロ、赤身、うに、甘鯛昆布締め、さより昆布締め、ヤリイカ、赤貝を食べて、蜆の味噌汁を飲んで、最後はデザート。
主役の料理が美味かったのは言うまでもないが、ガリが特徴があってよかった。薄切りして水分が垂れるガリを出すところが多いが、厚切りで歯ごたえがある。酒の肴にもなるように配慮しているそうだ。
主人と交換した名刺には「主宰 星 廣幸」と書いてある。新宿のセンチュリーハイアットで25年勤め、管理職より現場の喜びを求めて独立、銀座に天川を開いた。店名は苗字の星からの連想で天の川。天ぷら屋と間違えられる懸念を振り払い「天川」したそうだ。温厚な中に確かな職人気質を秘める星さんについてきた助手が数人。みんなベテランぞろいだという。
6時前に入ったが、7時頃から客の回転が良くてカウンターが空く事はなかった。みんな良く知ってるね。
初めて行く人はホームページで予習すると、楽しみはもっと膨らむ。
銀座 天川
東京都中央区銀座8-5-19 三幸ビル1F
03-3572-1633
http://www.ginza-tenkawa.jp
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2007年03月13日
[だぼ鯊]③(日本橋)
旬を味わうなら天ぷらがいい

だぼ鯊は久しぶりの登場だ。春に旬を味わうなら野菜が美味い天ぷら屋がいい。新規開拓をしようかと悩んだが、テーマが決まっているので気心の知れた所に行くことにした。我侭も許してくれるに違いない。
予約もなしに飛び込んだら幸いなことにカウンターにはカップルが一組。ラッキーと思ったのも束の間、入り口左と奥の小上がりが埋まっていて大将は大忙しだった。
まあ、急ぐ旅でもないので鷹揚に構えて料理が出てくるのを待った。
いか、自家製豆腐、ホタルイカ

しばらく来ない間に自家製豆腐がメニューに加わった。ホタルイカは富山産が出回り始め、スーパーでもよく目にするようになった。春を告げる代表選手だ。
白魚、ふきのとう、たらの芽、アオリイカ

旬にこだわると言ったので宍道湖産の白魚とふきのとうの天ぷら。たらの芽とアオリイカの天ぷらを出してくれた。イカは夏にスミイカの子「新イカ」が出てくるまではアオリイカが使われる。
「海老は旬があるのですか?」と聞いたら、天然物は6月~8月とのこと。養殖でもっとも成功したしたのが海老というのが大将の意見で、おかげで海老に季節感がなくなった。「今日は海老はいいよ」と言ったのに、海老を手にしたのでどうするかと思ったら特別料理の姿揚げにしてくれた。
海老の姿揚げ、みつば

頭に近い前足は歩くため、腹の足は泳ぐため、にあるそうだが、柔らかい足が取れないように剥くのは根気のいる作業だ。ミソが油に流れ出る可能性もあり、油が汚れるので姿揚げは滅多にやらないとのこと。頭から殻ごと食べる海老の美味いの何のって。
姫忍辱、貝柱、ホタルイカ

忍辱とは耐え忍ぶという意味の仏教用語で「にんにく」と読む。洒落てつけた名前のようだ。ニンニクを剥いて一片ずつ植えなおして芽が出たものが姫忍辱で、天ぷらにすると香ばしい。青柳の貝柱、ホタルイカは揚げて温まると味も濃厚に感じる。
今回は定番のキス、メゴチ、穴子などは食べず、春に徹した。料理屋は常連になるに限るが、また明日から新規開拓の旅だ。あーしんど。
だぼ鯊
東京都中央区日本橋3-3-14
03-3271-7533
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2007年03月03日
[桃太郎](新宿)
カウンターで気楽に寿司を
知らない店に入るのはちょっと怖い。特に猥雑な歌舞伎町では命の危険はないにしても、お財布の危険に怯えてしまう。大学生の時、友達と3人で客引きにつかまって大変な目に合ったことがある。
もっとも、食い物屋でそんな心配は殆どいらない。寿司屋でもピンからキリまであり、もちろん客引きをするような店はない。区役所通り近辺で目立つ寿司屋は野郎寿司と桃太郎寿司。どちらも気楽に入れそうな店だ。野郎寿司は何回か行ったが、今回は桃太郎寿司に連れて行かれた。
店に入るとグッと安心感が広がった。四角の大きなカウンターには同伴と思われるカップルもいるが、殆どは呑ん兵衛のおじさんたち。ノーネクタイ族も多く、歌舞伎町らしい雰囲気がプンプンである。
つまみに刺身を見繕ってもらった。さて、まず写真を撮ろうと思ってバッグを開いたがどこにもカメラがない。仕方なく携帯で写した。

マグロの中トロを見て「メジでしょう?」と板さんに聞いたら、「いえ、本マグロです」と言われた。メジは本マグロの幼魚だから板さんの答えは間違いではない。でも本マグロと言い張っていたので銀髪の思い違いかもしれない。しつこくない脂が乗って美味だった。
刺身で食べたのはつぶ貝、中トロ、鯖、ぼたんえび、はまち、あじ、こはだ、さより。酒の肴も豊富で居酒屋感覚で食べることが出来るが、今日は遠慮した。
最後にうに、えんがわ、トロ、赤身の寿司を食べた。二人でビール1本、冷酒4合を飲んで全部で12,500円。寿司幸本店の4分の1のお値段でした。
大昔、フィアンセに連れられて寿司屋に行ったことを思い出した。「安くて、美味しい寿司屋」との触れ込みだったが、1万円は軽く超えた。月給の手取りが10万円に届かない時の1万円は結構大金である。「何だ、高いじゃないか!」と彼女に言ったら婚約解消になるかと思う事態に陥った。
彼女は刺身を少し、それからせいぜい上寿司を食べて帰るイメージだったらしいが、若い銀髪はたらふく酒を飲んで、刺身だけでお腹を一杯にした。寿司は結局食わず仕舞い。「あんな食べ方をしたら安いわけないでしょ!」と怒られて、平謝り。「払ったのは俺だろう」とぼやいたら更に怒りの火は燃え上がった。彼女は既に結婚後の我が家の家計を心配していた。恋人同士の時にはなかった反応である。
あれから数十年。銀髪の食べ方はあの時と変わっていない。桃太郎で普通に食べたなら回転寿司+アルファの値段でもっと安くて、満足度は上に違いない。
桃太郎
東京都新宿区歌舞伎町2-28-2 東松ビル1F
03-3205-2322
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2007年03月02日
[寿司幸本店](銀座)
創業明治18年、120年の歴史を誇る銀座の有名寿司店

お客様の都合により食事会は思ったより早く4時にスタートした。ランチタイムから休み時間なしに営業している寿司幸本店に行くことにした。いつも予約で一杯の店だが、この時間なら問題ない。電話して店に着くと案の定貸切り状態だった。これなら他の客に気兼ねせず写真も撮らせてもらえるだろう。
白えび、あじ、まぐろのづけ

カウンターの中の主は寿司幸で24年の小林さん。若手の板さんを両脇に従えて我々3人の相手をしてくれる。職人を独占できる我々は幸せ者だ。
ひらめ、さより、のどぐろ、白子

昆布締めのさよりを1枚食べて写真を撮り忘れたことに気付いた。ズワイガニの網焼きと蟹ミソの一皿は完全に撮り忘れた。
お客様との会話が途絶えたところで遅まきながら気がついた。カウンターの上には魚のケースがない。板場の下に氷の冷蔵庫が隠されているのだ。
寿司幸本店では10年選手でもまだ修行の途中。客の前で握れるようになってから、本当の修行が始まるそうだ。単にいい材料を仕入れて客に供するだけが職人の仕事ではない。伝統の凄さを感じさせる小林さんの話の数々は面白かった。
酒もかなり回ってきた頃、5時過ぎには予約の客が入りだした。予約なしでドアを開ける客は1人でも断られている。
まぐろ、しまあじ、すみいか

うに、しいたけ、穴子

鉄火巻き、さば、こはだ、煮はま

べったら、椀物、玉

どれも文句のつけようがないが、久しぶりのせいかしまあじが特に良かった。椎茸は寿司幸2代目が編み出したかなり昔からの名物。小林さんが江戸前職人の誇りとして奨めてくれた煮はまぐりはもちろん美味い。
ぐるなびなどのグルメサイトは宣伝なので信用できないとの声がある。口コミ情報の方が役に立つという意見も多いが、寿司幸本店クラスの店になると口コミもあてに出来ない。
殆どのコメントは味と値段の評価に偏っている。安く食べたいなら築地で買って、自分で料理するのがもっともお得だ。
素材や料理法はもちろん重要な要素であるが、誰と食べるか、どこで食べるかも重要。店だけでなく客の側にも食を楽しむ姿勢・能力が必要だ。
食事の最中に爪楊枝を取って感激した。通常の楊枝に比べると細く・強い逸品。これを作れる職人は1人しか残っていないそうで、寿司幸の名をもってしても売ってくれないため人を介して仕入れている。家に帰って市販のものと比較したのが下の写真。値段は100倍もするとのこと。

魚の仕入れ値だけを想像して店の価値を測るのは、いかに愚かかというエピソードだと分かってもらえるだろうか。
寿司幸本店
東京都中央区銀座6-3-8
03-3571-1968
酒込みで1人約25,000円でした。
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2007年02月07日
[あきば]②(日本橋)
好きな店は毎週行きたいものだ。

グルメ紀行を書いていると、大好きな店に何度も行けないのが残念である。食事の種類によって行きつけの店を数軒持つ方がいいに決まっている。
寿司屋で好きな店はいくつかあるが、「あきば」は欠かせない。前に来たのは新子の頃だから既に6ヶ月以上も経ってしまった。その間、昼には何度か来た。いいものを頼もうとしたら、大将に「せっかく昼に来てるんだから1,000円のランチを食べなよ」と言われてしまった。そう諭されてますますこの店が好きになってしまった。
お通し

刺身盛り合わせ

刺身のおつまみはさより(千葉・富津)、石鯛(館山)、関さばの3種。さよりの皮は串焼きにして出してくれた。銀髪の大好物だが、このように出してくれるの店は少ないので随分と久しぶり。出足から嬉しい限りである。
目の前のケースには冬らしくたくさんの貝が並んでいる。その中でも赤貝から目が離れない。あきばなら国内産に違いない。
赤貝

大分に近い福岡県・行橋産の本玉である。正真正銘本物の赤貝を本玉と呼び、類似品の白玉、サルボウ貝と区別される。以前、築地で安い赤貝を見つけて産地を聞いたら、「韓国産に決まっているだろう!」と怒鳴られた。国産の本玉を使えるのは高級店に限られる。本玉の色・艶・味・香り、ますます楽しくなってくる。
白魚、しめ鯖、タイラ貝

宍道湖産の白魚は大型で食べ応えがある。今度の鯖は新潟産。タイラ貝はケースの中で存在感タップリだったが、刺身にしても肉厚でしっかりしている。
かつお、ホッキ貝

勝浦のかつお、長万部のホッキ貝。「しまった!」穴子の写真を撮り忘れた。穴子はなんと明石産だったのだ。瀬戸内の穴子は殆どが産地で消費されるため東京でお目にかかることは滅多にない。松山、広島、岡山などで食べたことがあるが、日本橋でも食べられるとは思わなかった。
ぼちぼち寿司に移ろう。

握りはお任せにした。マグロの中トロとづけはもちろん本マグロ、いくら、大柱、ウニと一人一カンずつ出てきた。ウニは津軽産のシロと言われた。シロとはムラサキウニのこと。アカと呼ばれるバフンウニと対比される。最近はバフンウニの方が味も値段も上のように思われているが、今日のウニを食べると通説に疑問を挟まざるを得ない。
かんぱち、大トロ、炙りきんき

きんきは脂が乗って大将の手がテカテカ光っている。これがまた美味い。
最後に蜆のお椀、玉。デザートはほおずき。

一升酒で酔ってしまったのでこれまで書いてきたことに若干自信がないところもあるが、大体のところは皆さんに伝わったと思う。
勘定書きを見たら酒なしで1人大体15,000円見当。、高級ネタを「これだけ食べたら仕方ない」というより、「これだけ食べてもこの値段」と感心してしまった。
今日も満足、満足のあきばであった。
あきば
東京都中央区八重洲1-4-10
(お店の希望により、電話番号は載せません。足で探してください。)
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2007年02月06日
[香車](名古屋)
寿司屋のコース料理

看板がない寿司屋の名店と聞かされていた香車に行った。時代がかった一軒家に表札より少し大きめの将棋の駒を模した札がかかっていた。知らなければ寿司屋と気付くことはないないだろう。中に入ると意外と大きな店だ。カウンターも思ったより広くて明るい。
奥の部屋に通されたが、6人ではちょっと狭く感じたが窮屈というほどではない。料理はお客様が事前に予約しておいてくれた。お通しに続いて大きな器に律儀に6切れずつ刺身が盛られてきた。寿司屋の刺身が悪かろうはずがない。
お通し、刺身

ホタテ貝の焼き物、白子

ホタテはちょっと焼き過ぎの感じがした。
鱈の白子はコースにはない別注品。さっと湯がいてあるが殆ど生の状態で悪くない。
メバルの煮物

頭から身は残さず食べ切った。これはこれで悪くないのだが、寿司屋で食べる以上は何か特徴が欲しくなった。6人がくっつき合うようにしているので、魚の食べ方、箸の使い方の自慢をしたりと、話は弾んで楽しいのだがグルメ紀行の銀髪としては何か物足りない。
天ぷら、鱈ちり鍋

天ぷらはいただけない。油切れが悪くベタッとしており、海老の頭もカリッと揚がってないので食べ尽くすのは無理。中のみそだけ箸でかき出して食べた。
一人ずつ食べる鍋は何の変哲もない鱈ちり鍋。旅先の宴会料理ならともかく、一流の寿司屋で有難がって食べる鍋ではない。
この他に極小の茶碗蒸しが出てきた。茶碗が持てないほどに熱々だったのは嬉しかったが、部下が期待した百合根はおろか中身は殆ど入っていなかった。
銀髪なら鱈ちりに代えてホタテを目の前で焼かせる。新鮮な鱈ならちょっと手を加えてみんなを驚かせるようなプロの技を披露する。天ぷらだって寿司屋ならではの粋なものを出して欲しい。
太巻き

結局、太巻きが一番インパクトがあり、味もよくて寿司屋らしい一品になったが、それまでにお腹が一杯になってしまったために、2次会の店へのお土産になった。
酒込みで1人約12,000円は寿司屋の価格としては良心的と言えるが、8,000円のコース料理は内容からしたら得をした気持ちにはなれなかった。
カウンターに座らなければ本当の良さがわからない寿司屋だったのかもしれない。お店の評価はその時まで保留にしておこう。
香車
愛知県名古屋市東区東桜2-17-47
052-933-3060
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2006年12月26日
[羽田寿司幸](羽田空港)
東京に戻ったら江戸前寿司。
出張から戻って羽田空港に着いたのは午後8時過ぎ。ここから銀座・日本橋界隈に戻って食事をする元気はもはやない。空港内のJALラウンジでおかきをつまみにして生ビールを数杯飲んでいるのでそれほど空腹でもない。そこで羽田空港の中で軽く飲もうと思った。
案内板で第1ターミナル3階に寿司屋を発見して即決した。エスカレーターを上がって寿司屋に入ると広いカウンターが見えた。時間が遅いせいか客は殆どいない。期待しないで適当に食べて帰ろうと思って板さんを見ると、胸に「寿司幸」の文字が見えた。ここで初めて店の名に気付いたのだからのんきなものだ。
銀座数奇屋通りの有名店、銀座寿司幸本店がプロデュースした店と聞いて、俄然グルメ紀行モードに変身した。前身の大和寿司経営のままだが、銀座寿司幸から毎日2~3人が手伝いに来ているとのこと。我々の前に現れたのはその一人、上野さんだった。
30を過ぎたばかりの上野さんだが、既に10年選手。本店に戻ればたくさんのベテランがひしめいているが、客の前で握れる役にまで上っていい顔をしている。安心して任せることにした。但し、ここは羽田、江戸前であることが基本だ。マグロはいらないとうるさい銀髪である。

最初は小柱、さより。ちょっと炙ったさよりは香ばしい。

脂が乗った極上のあん肝と煮あなご。あなごはもちろん羽田沖。白焼きでも食べたいところだが、一流の寿司屋で食べるならあなごは煮たもので文句はない。

銀髪はさば、こはだ、玉を食べて、部下は寿司をいくつかつまんでいる。
上野さんとの話が楽しいのでお銚子は7本を数えた。「数寄屋橋次郎は鯛を置いていないが…」と問うと、寿司幸も同様だとのこと。鯛は江戸前の魚ではない。鯛を置いているかどうかが、東京の寿司屋のこだわりがわかる。白身はヒラメでないといけない。
寿司幸本店は創業明治18年の有名店だが銀座久兵衛や数寄屋橋次郎ほど敷居は高くないと言われる。夜にご飯を食べない銀髪にとって、「うちは寿司屋ですから…」と言う店は敷居が高過ぎる。最後に2~3カンでも許して欲しい。羽田寿司幸では許してもらえた。
寿司幸本店の直営店は丸ビル店のみなので、羽田寿司幸は姉妹店といった位置づけだろう。羽田に行ってもいつも上野さんに会えるとは限らないのがちょっと残念だ。
羽田寿司幸
成田空港第1ターミナル3F
03-5757-8838
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2006年12月24日
鯖寿司
京都土産は鯖寿司を
京都の町を歩いていると、「板前寿司」と書いてある不思議な寿司屋の看板を見つけた。江戸前に対抗して大阪湾で獲れた阪前かと思ったが、どう見ても板前である。京都では若狭湾の魚を京に運ぶ鯖街道なるものがあり、京都で寿司と言えば鯖寿司の類になるのだろうか。
板前寿司とは板前が目の前で握って出す店、すなわち江戸前寿司のことを指すのかと想像した。回転寿司との区別かもしれない。店に入って確かめようと思ったが、タクシーの運転手さんが「京都で食べるなら鯖寿司」と言ったのを思い出して止めた。
鯖寿司を最初に食べたのはもう7年ほど前になる。京都の呉服屋さんに連れて行ってもらった寿司屋でお土産にくれたのだが、目の前で造っているのを見て心底驚いた。すしめしを次から次に足していく。あまりの大きさに見るだけで腹いっぱいになってしまった。家に持って帰っても、全部食べ切れるか不安になったものだ。
2度目は今年3月、滋賀大津の文福でのこと。7年前の苦痛を忘れさせてくれた。2切れで充分だったが、とても美味しく食べた。今回はタクシーの運転手さんの言葉に従い、鯖寿司をお土産に買うことにした。湯豆腐、餃子を食べて遅くなってしまったため、目的の「いづう」の鯖寿司は京都駅で既に売り切れていた。
已む無く1,000円の棒鯖寿司を買った。4200円のいづうを買おうと思っていたので、安くはあるが無念さは残った。諦めきれずに駅構内のみやげ物屋をぶらついていると、いづうと同じ売り場に2,000円の極上鯖寿司を発見した。そこでこれも買って食べ比べをすることにした。

博多に着いて馴染みのスナックに2種類の鯖寿司を持ち込んだ。極上(写真左)は既に切れ目が入っている。もう一方は店の女性がきれいに切ってくれた。

高い方には薄昆布が乗っていてバッテラ風だ。箱の型に入れて作る押し寿司が大阪名物のバッテラで、巻き簾で形を整えるのが京都の鯖寿司。
品質は2,000円の方が上なのは見ただけで分かったが、銀髪には1,000円の方が甘さ控えめで口に合った。
いづうは大丸東京駅店など、東京でも買えるようだ。1,000円を美味しく思ってしまうと買う意欲がなくなる。東京で買うのは何だか味気ないので、いづうを口にするのは次の京都行きを待つことにしようと思った。
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2006年11月17日
[すし善](札幌)
札幌の冬の味覚を求めて
札幌駅に着いて真っ直ぐに向かったのは駅に隣接する日航ホテルだった。今晩行く店をグルナビで下調べをしたが、グルナビは明らかに掲載店のPR化しており客観的な情報を得るサイトではない。店側の発信源であるため、実際行ってみて感激することもあるが、失望することも多い。大事な接客であれば、一流ホテルのコンシェルジェに相談するのが一番だ。
コンシェルジェの美女が真っ先に奨めてくれたのがすし善だった。すし善は現在のすすきの店を開いてから35年の歴史を誇る。10数年前に円山店を作り、そこに本店を移した。円山の本店は月曜定休のため、発祥の地であるすすき野店に行くことにした。
大通りに面した店は伝統を感じる。10人程度が座れるカウンターが2箇所と個室がある落ち着いた雰囲気の店だ。我々のお相手をしてくれたのはすすき野店の花板・山田さん。銀髪と丁々発止を見事にやってくれる。がりを薄切りにする包丁捌きは実に見事で、見ているだけで楽しい。
氷の入ったネタケースを眺めて、きょうの注文は「地物北海道尽くし」と頼んだ。後は山田さんのお奨めに従うことにした。

ぼたん海老は北海道ならではの活きで新鮮そのもの。富山の難波で食べたときも思ったが、新鮮なぼたん海老は独特のネットリした食感はない。
毛かにはほぐしてあるので食べやすい。

やりいかは山わさびでいただいた。山わさびはアイヌわさびとも呼ばれ、西洋わさびによく似ている。普通のわさびは北海道では生産されないので、地元産の山わさびが使われる。

白子ときんきは軽く炙って出てきた。脂の乗ったきんきが特にいい。
本日の目玉は戸井産の本マグロ。戸井は青森県大間の対岸にあるため、漁場は一緒である。
地元で捕れたまぐろでも、出荷されるのは築地。1本200万以上もするまぐろを尻尾の切り口だけで判断し、競り落とせる業者は北海道にはいない。すし善が仕入れるのは築地の「石宮」で、漫画「おいしんぼ」でも度々登場している。東京の高級店の多くはここから仕入れをしている。
今日のマグロは240キロで、250万円近くするもの。そのいいところをすし善は仕入れた。大トロに近い中トロはさすがに素晴らしかった。

最後にウニといくらの握りを頼んだら、いずれも海苔で軍艦巻きにすることなく皿で出された。最近は軍艦巻きをしない店も増えてきた。素材本来の味を楽しむためだ。酔っ払っても美味さは分かる。

山田さんと遣り合いながらの楽しい食事はあっという間に2時間を超えた。最終便で東京に戻る銀髪は、お客様を部下に任せて席を立った。
すし善
北海道札幌市中央区南7条西4丁目
011-531-0069
http://www.sushizen.co.jp/
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2006年11月07日
[深町]② (京橋)
約10ヶ月振りに深町に行った。
前回「深町」に来たのは2月。その時期は春を告げる野菜を楽しんだ。たらの芽、ふきのとう、タケノコなどだ。今回は紅葉の季節。何が出てくるか楽しみにして行った。店の様子は前回行って分かっているので、お客様を連れて行ったも喜ばれる店であることは間違いない。
オーナー板さんの深町さんのことも分かっている。前回は真剣に天ぷらを揚げている姿に話しかけるタイミングが難しく、帰り際にわずかに会話しただけだった。しかし、気難しい職人の印象が、優しい笑顔で払拭された記憶に助けられて、今回はのっけから話しかけた。予想通り笑顔で接してくれた。
湯葉、くちこ、海老は前回と一緒。ビールを終えて頼んだ熱燗は立派な徳利に入って出てきた。

この前「おぐ羅」 で見たやかんと同じ素材と見た。「錫ですね」と言うと深町さんが嬉しそうに微笑んだ。学習効果が出た。前も同じ徳利で飲んだはずだが、気付かなかった。名店と謳われる店は料理だけでなく、道具にもこだわりを持っているところに共通点がある。

秋の素材はぎんなん、松茸、たまねぎだった。松茸はシーズン終盤のため開いているのが惜しかった。「八ツ花」 の方がいい時期だったかもしれない。たまねぎは「熱いから気をつけてください」と出されたのに、小粒だったので注意を無視して丸ごと口に放り込んだ。吐き出すことも呑み込むこともできずしっかり口の中を火傷した。

きす、ウニの紫蘇巻き、蛤の海苔巻、めごちは前回食べたものと一緒。ウニ、蛤は深町オリジナルの自信作かいつ食べても美味い。魚の天ぷらが出てくるたびに、その名前を銀髪が言う。これもあちこちで食べ歩いたこの1年の成果だ。
左上から蓮根、めごち、新いか、椎茸、アスパラ、はぜ

蓮根、新いか、椎茸、アスパラ。新いかは秋の代表、もちろんしいたけも寒い季節が旬になる。
やはり秋の代表的な魚、「ハゼはないんですか?」と聞いたらもちろんあったので、追加注文した。これは日本橋「だぼ鯊」の方が上のようだ。さすが店名にするだけあると、「だぼ鯊」を再評価した。今出回っているのは松島産なので、江戸前の季節が来たら「だぼ鯊」に行かなければならない。
穴子でコース終了。お食事は天ばら、天茶、天丼の中から選ぶ。あまり聞いたことがない天ばらを食べた。天ぷらをご飯に混ぜたものだが、なかなかいけた。

初めて来たお客様たちは喜んでくれただろう。2回目の銀髪には1回目ほどの驚きはなかったが、このクラスの天ぷら屋さんに毎回驚きを求めてはいけないのだろう。深町の名物は山の上ホテル仕込みのサツマイモの天ぷらだが、今回はスキップした。次回は食べたいものをしっかり決めて行きたい。
てんぷら深町
東京都中央区京橋2-5-2
03-5250-8777
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2006年10月30日
[馬太郎](五反田)
馬太郎と言ってもお寿司屋さんです。
大学生のとき酔っ払って金がなくなると五反田に行った。友人のお母さんがやっていたスナックがあり、そこでタダ酒を飲むのが目的だった。そのお母さんに「バッカス」という有難いあだ名をいただいたわけだが、その頃から有名で行きたいと思っていた店が馬太郎だった。
Yさんの会社が五反田だったので、約30年も前の記憶が蘇った。「そうだ、馬太郎に行こう!」 予約を入れようと電話したら、カウンターは予約できないと言われた。6時に待ち合わせをして行ったらガラガラで、Yさんがカウンターにいるだけだった。お店の人が6時なら問題なく座れると言ったとおりだった。
付け出しは岩海苔。あん肝は今シーズン既に何度か食べたが、鱈の白子は初めて。ホカホカで出てきた。もっと寒くなって河豚の最盛期になるまで白子の主役は鱈である。

馬太郎はカウンター寿司屋としては大きな店だ。満席になると板さんは大忙しになるだろうが、客がまばらなお陰で二人の板さんが話しに付き合ってくれた。
お奨めはさんまの刺身にわたを味噌で溶いたソースをつけて食べる一品。他のお奨めの刺身はかつお、さば、あじ。比較的大衆的な店なので、青魚が多いのも頷ける。

馬太郎は戦後すぐに居酒屋として五反田に生まれた。その頃の店の売り物が馬肉だったことから店名を馬太郎としたそうだ。寿司屋に変わって既に40年位経つらしいく、今は2代目が店を仕切っている。それなら馬刺しを食べないわけには行かない。

残念ながら信州産の馬刺しは熊本の「菅乃屋」や銀座の「こじま屋」などで特上馬刺しを食べてしまうとちょっと辛い。気前よく厚切りの刺身を出してくれたが、もう少し薄切りにしたらいい勝負を出来たかも知れない。いずれにしても馬肉の他の部位はないので馬肉専門店並みにはいかない。創業魂を味わうと言った方がいいだろう。
最後に握りを頼んだ。これもお奨めに従ったら馬肉と青魚のいわし、こはだ。それと江戸前の穴子だった。

熱燗を飲みだした頃から気になっていたのがお猪口。

オーストラリアから帰国して感動した純米の「あさ開」の文字が書かれている。思い出話を始めたら後ろにいた女将が話しに入ってきた。「あさ開」がまだ東京であまり知られていなかった頃、いち早く馬太郎がこの酒を採用した。「あさ開」にとっては恩人とも言える店で、大量のお猪口を店に進呈したそうだ。お猪口の文字は手書きなので、一個一個が微妙に異なる。
女将は銀髪を気に入ってくれたのかお猪口を我々にプレゼントしてくれた。ところが、後ろの棚の荷物を取る間に、酔っ払い二人組はお猪口の存在をすっかり忘れてしまった。
カウンターに残して来てしまったお猪口。折角プレゼントしてくれた女将に申し訳ないやら、手に出来なくて悔しいやら、まったく酔っ払いは困ったもんだ。
すし屋の馬太郎
東京都品川区東五反田1-15-4
03-3449-0462
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2006年10月12日
[三ます](四谷)
どのぐらい経ってるの?と聞いたら100年と言われて驚いた。
四谷4丁目の交差点にある店構えがしっかりした寿司屋に入った。伝統を感じさせる雰囲気だったので尋ねたわけだが、思った以上の老舗だった。明治43年(1910年)の創業だそうだ。入って右にL字型のカウンター、左にテーブル席がある。カウンターの左端に先客が2人いるだけで、今日は空いている。座る場所はいくらでも選べるのに右端に陣取った。真ん中が好きな銀髪だが、客に合わせた。みんななぜか端っこが好きだ。
やまいも、まぐろ、赤貝、かれい

付け出しはやまいも。一見したところ素材がわからなかったが、なかなか面白い。マグロはバチで、バチはバチ以上は期待できない。白身の魚を見てカレイですね、と言ったら「お客さん、詳しいですね、怖いなー」と主人に返された。
先客は常連らしく、主人の顔はこっち耳は常連客に向いているようだ。我々が魚の英語名で盛り上がっていたら、やっと主人が話に割って入ってきた。やけに詳しくて驚くと「ソフィアを出てますから」と来た。上智を出て何で寿司屋かと思うが、もちろん老舗の跡取り息子。ラグビーばかりやってたと言うが、近くの商社ご用達になったのも主人の英語力のなせる業。その商社の外人客は必ず寄るそうで、三ますの名は海外でも有名と自慢する。
「これを食べなければただじゃ置かないというものを出してくれ」と言ったらこはだ、穴子が出てきた。寿司屋の仕事が光る二品だ。

主人が学校の先輩・細川元首相夫妻の話を持ち出したので、「こだわり」サイトに細川夫人のインタビューが載っていると言ったら、ますます話は盛り上がって来た。細川夫人の親友が常連らしく、若いときは細川さんより美人だったと主人が言うと、それを聞いて向こうの客を相手にしていた板さんが、意味深に笑う。
いか、しゃこ、いくら、うに、たまご、炙りトロ

軽口もほどほどにして握りに移った。今が旬の新いか、老舗寿司屋にないわけがない。ウニは北海道産と言うので積丹かと聞いたら、大将は店の奥に行ってしまった。何事かと思ったら老眼鏡をかけて戻ってきた。ウニの箱の文字を読んで「登別です」と答えた。
仕入れはベテランの従業員に任せているのだろうか。老舗寿司屋の坊ちゃんの顔がちらつく。
ぼちぼちお開きにしようと思ったら最後に炙ったトロが出てきた。向こうの板さんが奨める自慢の一品だ。バチのトロだがいいお味だった。
勘定を頼むと、アラ汁が出てきた。これでお開き。向うの常連客はハンディ5のゴルフ名人で、55歳でゴルフを始めた主人の先生。主人は100前後の腕前で、一番ゴルフが楽しい時期。道理で耳が向うを向いていた訳だ。
「ハンディ5なんてムカつきますよね」と、先客にこちらから声をかけて勘定が来るまでしばし談笑。それが良かったのか常連客並みに、店の人と先客に笑顔で見送られた。
東京都心の一等地なのに、なぜか田舎の寿司屋を思わせる店だった。
三ます
東京都新宿区四谷4丁目28
03-3341-1519
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2006年10月05日
[八ツ花](日本橋)
日本橋にも路地裏がある。
日本橋高島屋近くの路地裏を入ったところに八ツ花はある。開店してから40年、かつての名店稲ぎくで大将は修行したそうで、「だぼ鯊」の大将の兄弟子になる。2階の個室は初めて入ったが、ここを任されているのが2代目。彼はだぼ鯊の大将に魚の扱い方を教わったと言う。ドラマで見るような職人の世界。3人が修行した稲ぎくは拡張し過ぎて潰れた。
大将が仕切る1階のカウンター席もいいが、5人がゆったりと座れる個室もなかなかの雰囲気だ。新いかのゲソから天ぷらコースが始まる。秋の寿司屋、天麩羅屋は新いかがなければ始まらない。あっという間に生ビールを飲み干して日本酒に移る頃刺身が出てきた。
大間の本マグロだ。今年は例年より一月ほど早く大間産の本マグロが市場に出始めたそうだ。脂の乗りはまだ良くないが、いいマグロは赤身が美味い。

天麩羅は定番の天草産えびからスタートした。三つ葉はほろ苦いところがいい。再びえびが出て、蓮に続く。今日の目玉、マツタケ(右端)が出てきた。国産のマツタケだ。マグロと反対に国産のマツタケは例年より遅く、有名店でも中国産を使っていたが、ようやく国産にありついた。衣に香りが閉じ込められる天麩羅がマツタケには最高の料理法に思える。

銀杏に続いて、お目当ての新いか(左から2番目)。小さいのに身は厚く、柔らか。寿司もいいが天麩羅も最高だ。小なす、サツマイモ、穴子で取り敢えず終了。穴子は羽田沖。
今日の魚は殆ど江戸前とのことで、野菜を含めて食材の産地をよどみなく説明してくれる。揚げ油のごま油の比率は約4割。最近の傾向からすると若干多めだが、香りが高くて重くない。銀髪が2代目を差し置いて材料や油の講釈をたれる。

アー、ちょっと喋りすぎだなーと思いながらも、いい料理が目の前にあると制御不能の状態に陥っている。もっと2代目に話しを聞こうと思うが、逆にどんな店に普段行っているかを質問される始末。またこれが調子に乗って話すから、後でみんなの白い目が気になる。
最後に小さなかき揚げをご飯に合わせる。天丼、天茶などそれぞれの好みでご飯を食べる。銀髪はそのままかき揚げを肴にしてまだ呑んでいる。
シジミの味噌汁が出てきて驚いた。あさり並みの大きなシジミが入っている。普通は身を殻から引き離すのに苦労するが、この茨城産のシジミならその心配もなく食べ応えがある。

デザートのメロンを食べてお開きになった。1階席なら天麩羅の追加も頼めるが、個室はそれが出来ないのが辛いところ。それでも腹一杯なので文句はない。
いい天麩羅は胃にもたれず食後感もいいが、酒が進み過ぎるのが難点か。
呑まなきゃいいだろうって? そんな殺生な!
八ツ花
東京都中央区日本橋2-6-11
3271-9354
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2006年09月26日
[みつい](津) 三重県津の寿し割烹
近くに海があるのだから‥
津は目の前に海があるのだからということで、タクシーお奨めの寿司屋に連れて行ってもらった。店に着いたのは11時20分頃で、まだ暖簾はかかっていない。運転手さんが心配する。恐る恐る扉を開けたらまだ仕込み中。しかし、嫌な顔一つしないで招き入れてくれた。運転手さんのホッとした顔を残して店に入る。
右にカウンターがあり、座敷、個室が左手から続く大きな店だ。ランチに備えてセットにつく小鉢がテーブルに積まれていた。我々は当然カウンター。しかし、まだガラスケースの中に魚は登場していない。待つこと数分、美しく輝く魚がケースに並んだ。
例によって地元の魚を要求したが、津の港に上がる魚は限られているとのこと。範囲を広げて三重県で獲れる魚を出してもらうことにした。伊勢、志摩、鳥羽と範囲を広げれば三重県は魚介の宝庫だ。
穴子

東京だったら穴子と言えば金沢八景沖の江戸前が一番と思うが、鈴鹿市伊勢若松の穴子は中部地区では江戸時代から最高級品としてもてはやされているそうだ。遠浅の海は他の魚にとっては住み辛いが、餌となるプランクトンが豊富で穴子にとっては絶好の生育場所になるようだ。
白焼で食べたいところだが、ここは寿司屋。それは望めない。煮つめはうなぎの蒲焼と同様にちょっと濃い目。甘味はそれほど強く感じない。評判どおりの味だ。
すずき、しまあじ、さば

すずきは津沖で獲れる数少ない魚。今日のすずきは体長60㎝といい型。すずき、しまあじは大将が「歯が折れますよ!」と言うのは大袈裟にしても、たしかに身がしっかりしている。シャリは少なめだが、寿司にしては分厚く切ったネタのお陰で噛み応えがある。
さばまでが三重産の魚。「夜にはもっと種類も揃うが、ランチの準備に忙しく、まだ仕込が終わってないのが残念、申し訳ない」と大将は恐縮する。
地元の魚ではないと言うが、あまりに見事な型の太刀魚には抗することが出来ず、握ってもらった。思ったとおり美味い。感心していると、揚げた骨がポン酢と共に出てきた。嬉しいサービスだ。
たちうおの寿司と骨の唐揚

43歳の若い大将、三井一浩さんは、明るく表情豊か、冗談も弾んで好感が持てる。
迎えに来てくれた別のタクシーの運転手さんも、評判がいい寿司屋と太鼓判を押していた。今日の寿司にも満足したが、次回は夜に来て、大将の悔いのないご馳走を楽しみたいものだ。
席を立ち勘定をしようとしたら、大将が何か作っている。ご当地の牛肉の寿司。いやいや参った。

勘定が終わっても、陽気な大将とずっと話していたい気分だった。
みつい
三重県津市大門3-15
059-222-3851
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2006年09月22日
[河庄本店](福岡) 博多・西中洲の寿司割烹
博多で寿司屋と言えば河庄である。
博多の有名店の中で今まで縁がなかったのが寿司屋。寿司はカウンターで食べると決めているせいもあり、お客様との会食に使うことは避けてきた。河庄は寿司懐石もあるとのことだったので行くことにした。
創業は昭和22年。博多を代表する老舗寿司割烹だ。
店に入って左側に広いカウンター席がある。これを横目に見ながら座敷のある上の階に行く。我々にあてがわれた部屋は4人にしてはちょっと狭い。歴史や風格を取るか、今では当たり前になった掘りごたつ式の和室に変えるか、経営者が悩むところかもしれない。
料理は刺身から始まった。いかの上にうに、車えびの頭は殻を取り湯引きして食べやすくしている。中トロ、白身と文句のつけようがない。

あらのにこごり、ゴマ豆腐と野菜の煮物、酢の物などの小鉢数種