2008年11月17日
[江島]②(銀座)
今年も江島で松葉ガニ

「どこに行きたい?」と問われて「どこでもいいですよ」と答えながら、彼を常連としてもてなす数店を思い浮かべた。毎日違う店を探さなければならない銀髪にとっては羨ましい限りだ。再び電話が鳴り「江島を予約したぞ!」と言われほくそ笑んだ。店を指定するほどあつかましくはないが、望んだ店と一致した。
今年の松葉ガニ漁は11月6日に解禁された。日本海で獲れるズワイガニは松葉ガニ、越前ガニ、加能ガニと産地により呼び名が違うが、どれも食通垂涎の高級品である。地元の料理屋でも予約なしでは食べられないが、江島にはこの日2杯入荷していた。食べる人が決まらずに仕入れるとはさすが銀座である。

船のタグがついた約1kgの松葉ガニのお値段は2万8千円。江島では主に鳥取県、兵庫県から仕入れているそうだ。茹で上がるまでサラダなどを食べて酒を飲んだ。主役が来るまで腹は空かせている方がいい。

ミソをたっぷりと甲羅に乗せて松葉ガニがやってきた。スプーンでミソをすくって食べる。日本酒を飲む。もう一度ミソを。そして日本酒を口に運ぶ。
足を取って身を引き出す。ハラリと身が抜ける。口に入れるとほんのり温かく甘い。
いつもは苦労する甲羅の中の身も、簡単に取れる。かに酢も用意されているが、つける気にはならない。蟹を食べるときは身を取り出すのに無口になるが、今日は美味くて声が出ない。

蟹だけでは物足りないと思ったのか、和牛の鉄板焼きも頼んでくれた。江島はしゃぶしゃぶなどの和牛料理も自慢するが、活松葉ガニとの勝負では分が悪い。
考えてみれば、蟹は安いかもしれない。2人で分け合い、他に数品頼めば腹は満たされる。最高級の天然ふぐコースを食べたら一人3万円は下らない。白子を食べ、ひれ酒を飲めば4万円になる。松葉ガニを食べ、甲羅酒を飲む方が遥かに安い。
3月の漁が終るまでに何度食べられるだろう。もしかしたら今シーズンはこれが最初で最後かもしれない。感謝感激雨あられである。
江島
東京都 中央区 銀座 3-5-4 十字屋ビル4F(松屋デパート向かい)
TEL:03-3535-3131
http://www.ginza-ejima.com/
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2008年11月12日
[い津み](福岡市博多)
世界一(?)のふく料理屋

7~8年前、「東京で一番高いふぐ屋を予約しといたからな」と言われて行ったのが東京赤坂の「い津み」で、銀髪の願いもむなしく勘定するときに彼の台詞は冗談ではないことを悟った。それ以来、博多の本店に行くことは憧れであり恐れでもあった。
タクシーに店名を伝えても知らなかった。住所を告げると「あー、あの料亭ですね」と気付いた。赤坂の店とは比較にならないほど立派な店だ。個室は控えの間と客室に分かれる。仲居さんが上座の客に見えないようにメニューを銀髪の目の前に掲げた。
煮こごり、ひれ酒

煮こごりの善し悪しをどう表現したらいいか分からないが、上品な味で美味いのは間違いない。ひれ酒のひれが随分小さいと思ったら、い津みでは背びれしか使わないとのこと。つぎ酒をしても味は濃い。
てっさ

三人前のてっさが出てきて圧倒された。「当店のてっさは二枚引きです」と言われても何のことかわからない。厚めに切った刺身を切り開いたものとのこと。薄いピンク色の身は噛みごたえがある。ぽん酢に頼らなくても味がある。「天然です」と言われてもピンと来ないことが多いが、い津みのものを食べれば違いは歴然である。
白子、唐揚げ

「今週から白子が入っていますが、いかがしますか?」と聞かれて客と部下の顔を見る。目は口ほどに語っている。てっさほどの感動はないが、久し振りの白子はやはり美味い。
てっちり

鍋は控えの間で作られ、仲居さんが運んでくれる。あらためてしっかりした身だと思う。
雑炊、お新香

い津みでは雑炊に卵を入れない。ふぐを味わってもらうには卵はない方がいいと主張する。おかわりをして満腹になった。
福岡出身の芸能人が日本一と言ったそうだが、地元贔屓を差し引いてもトップクラスであることは間違いない。てっさはこれまで食べた中で一番と言ってもいい。満足感一杯で店を出た。店の外に並ぶ黒塗りの車を横目に歩く我々を、女将がしばらく見送ってくれた。
い津みのふぐのことは早く忘れよう。他の店のふぐが食べられなくなってしまう。
博多 い津み
福岡県福岡市博多区住吉2-20-14
092-291-0231
http://www.hakata-izumi.com/
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2008年11月10日
[山田屋]④(日本橋)
ふぐだ、ふぐだ

恒例の月末夕食会。10月末のことである。総勢9人なのに「ふぐが食べたい」と言われるとドキッとしてしまう。一度は拒否したものの考え直した。「連れて行くなら今の方が安くていいからな」と言うとみんな怪訝そうな顔をする。一人が銀髪の言葉の意味を解した。「白子が小さいからですね」その通り。まだメニューにもない可能性が高い。
付け出し

山田屋には何度も来ているので勝手が分かっているつもりだった。人数分のコースを頼むと量が多くて美味しい雑炊を食べられなくなってしまう。コースを止めて、刺身、唐揚げは一人一人前ずつ、てっちりは合計で6人前と少なめに頼んだ。単品で頼むと割高になるが、刺身の量は多くて何よりも不公平感がなくなる。大皿から欲望を隠しながら行儀良く食べるのは辛い。
刺身

何人かがビールをお代わりする。銀髪はひれ酒を頼んだがなかなかやって来ない。他の連中は刺身をたいらげてしまいそうな勢いだ。
下戸はウーロン茶を飲みながら既に食べ尽くし、「刺身は嫌いなんですか?」と銀髪の皿を虎視眈々と狙っている。イライラしながらひれ酒を待った。とうとう待ち切れずに隣の部下のビールを取り上げて、刺身を食べ始めた。危ない危ない。
唐揚げ

一人が「要らない」と言ったはずなのに、食べてしまったので唐揚げが一つ足りない。「俺のがない!唐揚げ大好きなのに!」と一人がダダをこねるので銀髪の皿から一切れあげた。あー疲れる。
「サー、次は鍋ダーッ」みんなで鍋をつつくと思ったら、部屋の隅っこで仲居さんが作り、取り分けて、各人に運んでくれる。6人前とケチったせいか一人一杯のみ。雑炊も同様に一杯ずつ。
少しでも安くするつもりが一人頭2万円支払ってお腹一杯にならなかった。刺身の量は少なくても、鍋で満腹にするコースの方が割安だった。策を弄して失敗した。
3次会が終ったところで「長崎ちゃんぽんに行かないか?」と誘われた。いつもは断るところを素直について行った。彼のオーダーしたちゃんぽんセット(餃子付き)と皿うどんを仲良く分け合って食べた。「ふぐよりこっちの方がいい」と嬉しそうにしている彼を、いつものように馬鹿にすることができなかった。
日本橋 山田屋
東京都中央区日本橋3-1-15
03-3271-2031
http://www.nihonbashi-yamadaya.com
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2008年11月07日
[鮎正]②(新橋)
子持ち鮎の生炙り

今日も一番乗り。「約束どおり来ましたよ!」奥から出てきた主人に声をかけるとニコリと返してくれる。9月に来た時に、10月になると子持ち鮎が食べられると聞いた。10月中に来るつもりが、予約が取れずに11月にずれ込んでしまった。みんな良く知っている。
前回は初めてなのでコースを食べたが、今回は子持ち鮎と鮎ごはんだけを予約時に頼んだだけ。ちょっと早めに来たので鮎が焼きあがるまで30分ある。メニューから数品を選んで熱燗を飲みながら待つことにした。
付け出し、子うるか、へしこ、

付け出しのくらげのような食感のものは白こんにゃく。さらしに包んで揉むとくらげのようになるそうだ。何でも手を抜かない主人だ。前回食べなかった子うるかは自家製だけに他の店で食べるものと全然違う。へしこは鮎正のために福井の業者に造ってもらっているとのこと。主人が惚れ込んだだけのことはある。今まで食べたものの中で一番美味い。
ゆり根まんじゅう

ウニ、コノワタを詰めて揚げたゆり根まんじゅう。紙で包んで熱々を口に運ぶ。カリッ、フワッ、ネットリ。他に例えようのない不思議な味。まー、よく考えるね。
子持ち鮎の生炙り

真打ち登場。これが鮎?っていう感じの体型。塩もふらずに串に刺して囲炉裏で炙るように焼くそうだ。これを手づかみで食べる。カリッとした食感と立ち上る香りが何とも言えない。1時間も炙ったにしては身も卵も意外とパサパサしていない。鮎の塩焼きとはまったく違う食べ物だ。一匹5千円もするが、10月になると予約が一杯になるのも頷ける。「鮎のシーズンが終わりに近づき正直ホッとしますよ」と主人は苦笑いする。
さあ、ぼちぼち鮎ごはんにでもするかと思っていると、隣から「うるか茄子が食べたい」と言う。渋々承知したら、今度は「土瓶蒸し、茶碗蒸し、揚げだし豆腐も食べたい」とのたまう。胃袋が異次元に繋がっているのではないかと疑う。鮎が終ると鮎正はふぐやかにの会席料理屋となる。それからでも良さそうと思うのだが、仕方がない人だ。
老舗の京料理屋の味を知る人には鮎正の土瓶蒸しなどは違うと言うかもしれないが、どれも主人が研究を重ねた鮎正風で創作料理にも思える。削り節、塩の使い方などのこだわりを拝聴すれば、感心しきりであった。

鮎ごはんの後に銀杏の焼餅を食べてお開きに。あー、腹が一杯で動けない。
鮎正
東京都港区新橋4-17-5
03-3431-7448
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2008年10月30日
[美々卯](京橋)
うどんすきは美々卯の登録商標

京橋の美々卯に最初に来たのは10年ほど前である。大きくて立派な店なので長い間本店だと思い込んでいた。美々卯が大阪で200年以上の伝統を受け継ぐ老舗であること、うどんすきが美々卯の登録商標であることを知ったのは道頓堀の今井へ行ったのがきっかけだった。グルメ紀行のお陰で予習復習をするようになったので食い物の知識はどんどん膨らんでいく。
煮穴子、にしん、そば寿司

Tさんが煮穴子とにしんを、銀髪がそば寿司を頼んだ。うどんすきが有名だが、石臼挽きの自家製粉したそば粉で打ったそばも捨て難い。遅い時間に入って「売り切れました」と言われたことがあるので、ついつい頼んでしまう。

昭和3年に先代・薩摩平太郎が考案したといううどんすき。名前も彼がつけたそうだ。道頓堀今井では「うどんすき」ではなく「うどん寄せ鍋」と呼んでいたので不思議に思って調べたら、うどんすきが美々卯の登録商標だと分かった。
良識ある今井とは違い、杵屋が「杵屋うどんすき」と名付けたものだから、美々卯が訴えた。結局、平成9年東京高等裁判所が「うどんを材料として魚介類、鶏肉、野菜類等の各種の具を合わせて食べる鍋料理」として普通名称化されていると結論付けた。そのため今では誰でも「うどんすき」を使えるようになった。美々卯は敗訴を悔しがるより「うどんすき」の名称がひとつの商品名から料理の名前として認められたことを喜ぶべきかもしれない。

美々卯のうどんすきで注意することは、活き車海老をつまんだまま熱湯の中で成仏させることである。放っておくと飛び跳ねて熱湯が飛び散ることになる。隣席では仲居さんが老夫婦に丁寧に教えていたのに、我々のところには来なかった。無視されたのか、常連と思われたのか分からない。
美々卯のうどんすきは美味しい。茹ですぎてもうどんがくたびれないのもいい。「麺を追加しますか」と聞いたら「腹一杯」と答えたTさんも、ゆらゆらと鍋の中で誘ううどんを見たら箸がのびてしまう。食べ過ぎてしまうのが、うどんすきの困ったところである。
美々卯 京橋店
東京都中央区京橋3-6-4
03-3567-6571
http://www.mimiu.co.jp/
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2008年10月28日
[梵](入谷)
普茶で厳かな誕生会

今年も誕生会を開いてくれた。銀髪の都合で遅くなってしまったが、今年も誕生日が7日違いのKと2人合同で祝ってもらった。感謝、感謝である。
店を選ぶ際に「フチャ料理でよろしいですか?」と聞かれ、「何でもいいです」と答えた。お茶会で出される食事らしい。Kに「今日はフチャ料理らしいよ」と言うと「中華ですか?」と勘違いしている。どんな料理かは見るまで謎のままにしておいた。
入谷と言えば鬼子母神が有名だが、梵は鷲神社(おとり様)の近くにある。11月には熊手を買う人で賑わう。あいにくの傘がうっとおしい日だったが、茶室もある古い日本家屋は雨の夜がよく似合って風情がある。
4人部屋の個室に入ると、既に小垪(前菜)が置かれ、横に献立が置いてあった。

ふり仮名を読むと中国語のようでもある。Kの予想は当たらずとも遠からずだ。精進料理に見えるが鮑や雲丹の文字が気になる。店の女性に聞いたら、精進料理と思ったのは正解だった。約3百年前に京都の万福寺を建立した中国・明の隠元禅師が伝えたものらしい。普(あまね)く、衆に茶を供する等の意味がある。店の雰囲気共々厳かで、ハッピーバースデーを歌う気分にはならない。



鮑に似せた麩、雲丹も本物ではない。挽肉団子に見えるものは大豆が原料。スモークチーズではなく豆腐の燻製。次から次に料理が出て来る。献立は月毎に季節の料理が加わるが、半分は定番の料理らしい。それでも若い店の女性が淀みなく料理の説明をするのに感心した。
「いつもは満室になるの?」と聞くと「そうでもありません」と正直だ。大小8室あるが、予約制なので飛び込みで入ってくる客はいない。さすがに酉の市の時は賑わうようだ。


野菜だけでは体が干からびてしまいそうなので、揚げ物も適当に混ざる。精進料理を食べる人も本当は魚や肉、油っぽいものを食べたいはずだ。そのため野菜類を使っても、見た目や食感、味は肉類に似せるのではないかと思った。いやいや、我々のような俗人に食べさせるために工夫しているのだと言われれば返す言葉はない。
毎日は辛いがたまには精進料理もいいものだ。楽しい誕生パーティーが終り、静かな余韻に浸りながら店を出たところで、Kの顔が輝き始めた。「銀髪さん!次の店でシャンパンを飲みましょう!」の明るい声で、一気に俗界に引き戻された。
竜泉 梵
東京都台東区竜泉1-2-11
03-3872-0375
http://www.fuchabon.co.jp
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2008年10月24日
[あつた 蓬莱軒]②(名古屋)
個室で会席料理&誕生会

「誕生パーティーをやるから来てよ」と言われてノコノコ名古屋まで行くことになった。場所は元祖ひつまぶしで有名な熱田神宮そばの蓬莱軒。昼間に来たことはあるが夜は初めて。もちろん個室で会席料理も初めてだった。
みんなが揃ったところで「あのー、私も先週誕生日だったんですが…」と銀髪が言うと、「あー、それならついでにおめでとう」と乾杯された。嬉しいような悲しいような。

小鉢がいくつか続いた後に伊勢海老と鮪のお造りがデーんとお出まし。伊勢海老は一人一匹ずつの豪華版。捌く前に4匹を皿に盛って見せてくれたが、部屋を出たところで飛び跳ねて仲居さんたちが大慌てで取り押さえるハプニングとなり大笑い。触角を折ってしまった一番元気な伊勢海老は主役の腹に納まった。

飲んだお酒は熱田神宮に奉納する草薙。老舗料理屋は日本酒に無頓着な店が多いが、蓬莱軒のこだわりは御奉納酒ということらしい。有難くももったいないが、上質な酒とは言い難い。嬉しいような悲しいような。

予想に反してうなぎ以外の料理もしっかりしたものを出す。それでも蓬莱軒に来たのだからうなぎを食べたい。店も心得たもので、肝焼き、う巻き、白焼きを他の料理の間に挟む。

最後にひつまぶしと行きたいところだが、コースの最後は一人ずつ出て来る会席まぶし。量を抑えても定番の3種類の食べ方をするために薬味やだし汁を用意してくれる。腹具合を考えればちょうどいい量だが、何だか嬉しいような悲しいような。どうせならひつまぶし由来のように大きなお櫃に持って来てくれたら盛り上がっただろう。分け合って、取り合って、食べる方が楽しい。

場を盛り上げてくれたのは部下がトイレで見つけた妙な貼紙。クリスマスの逆だからスマスリク?何のこっちゃ。いくら推理しても適当な答えが見つからない。仲居さんに聞いたら12月25日は石川五右衛門の命日で、逆さに貼っておくと泥棒除けになると言う。「キリスト様は五右衛門の生き還りでは?」なんて馬鹿なことを言う奴が居る。時代錯誤するほど飲ませてしまったのかもしれない。
イヤー、楽しかった。ついでに誕生日を祝ってもらえたし。良かった良かった。料理も美味しかった。しかし、やっぱり蓬莱軒ではうなぎを食べたい。特に肝焼きはもっと食べたい。おっきなひつまぶしを食べたい。
餅は餅屋、うなぎ屋はうなぎが主役。他の料理はうなぎの脇役に徹して出しゃばる必要はない。
あつた 蓬莱軒
愛知県名古屋市熱田区神戸町503
052-671-8686
http://www.houraiken.com/
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2008年10月21日
[たん良]⑥(赤坂)
名店の味を記憶に留めたい

料理屋ではたん良が当ブログ最多出場を誇る。過去3年で800軒以上で夕食をとったが、依然として好きな料理屋トップテンに居る。そのたん良から葉書が来た。季節柄「松茸が入りました」「天然ふぐ始めました」などの案内が多いので、たん良なら「まる鍋始めました」かなと思ったら違っていた。
ご主人の体調不良のため12月26日を以って店を閉めると書いてある。驚いたのなんのってすぐに電話をしたら女将さんが出てきた。早速行くことにした。もちろん既にまる鍋は始まっている。
お通し、刺身盛合わせ

たん良は季節ごとに異なる料理以外は殆どメニューに変化はない。従って行く度に違うお通しは楽しめる。もっとも定番の料理が中心といっても、種類が多いので一度に食べきれるわけではない。
鯛の皮、松茸フライ、かぶら蒸し

初めての人には必ずかぶら蒸しを頼んであげる。伝統の料理をいつも客の記憶どおりの味に仕上げる腕にはいつも感心する。ご主人は、薬を飲んでいないので味覚は研ぎ澄まされたままと嬉しそうに笑う。針による治療と休養でゴルフができるまでに体力は回復してきたという。
藤九郎、土瓶蒸し、稲穂

松茸がたっぷり入った土瓶蒸しは、これまで食べたものとは別物と連れが感嘆する。鯛の皮、藤九郎銀杏、揚げた稲穂、初めての人は誰でも喜ぶ素材、技術、遊び心である。
まる鍋、卵

雌のすっぽんだったそうで、卵を食べる幸運に恵まれた。鍋に入れると熱ではじけるので慎重に慌てて食べる。
「ご主人が休養中に丸なべが食べたくなったらどの店に行ったらいいんですか?」と聞いたが答が返ってこない。「治ったらまた店を再開します」の言葉を信じて待つしかなさそうだ。
壁にかかる銀髪の名が書かれた提灯を記念に持って帰ってくださいと言われたが、「年内にまた来ますよ」と断った。閉店まで2ヶ月余もあるというより、たった2ヶ月しかない。いろいろな思い出と共に、名人の味をしっかりと記憶に残していきたいものだ。
赤坂 たん良
東京都港区赤坂3-7-15
03-3586-1914
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2008年10月10日
[福助](山口市湯田温泉)
今シーズン初めてのふぐ

「ホテルは湯田温泉でいいですか?」と部下に言われて耳を疑った。生真面目な男が珍しいことを言うと驚いたが、調べてみると湯田温泉町には多くの会社がある。ひなびた温泉街をイメージした銀髪が無知だった。
ビジネス街が近いといっても由緒ある温泉街であることは間違いない。立派な温泉旅館も多いが、我々はビジネスホテルに泊まることにした。男二人で温泉宿の座敷で食事をする気にはなれない。ビジネスホテルにも温泉風呂はある。
ホテルにあった周辺案内でふぐを食べられる店を探した。これはと思った老舗の懐石料理屋は前日までに予約を入れないとふぐコースは出来ないと言う。その料理屋が紹介してくれたのが福助。足袋・下着メーカーのイメージから無視した店だった。ちょっと考えれば福=ふく(山口ではふぐをふくと言う)なのだから、ふぐ専門店と容易に分かる。
にこごり、ふぐ刺し、ひれ酒

1万円の天然とらふぐミニコースを頼んだ。15,000円、18,000円の本格コースとは基本的に量の違いだけと言われれば安いほうを頼んでしまう。写真のふぐ刺しは一人前なのでミニといっても貧弱ではない。ひれ酒のひれも立派。
木の芽焼き、唐揚げ

仲居さんによると、福助は創業40年以上になるふぐ料理の老舗。市場を通さず萩から直送するので天然ふぐを安く提供できるとのこと。禁漁期の夏でも、偶然網にかかったふぐを仕入れて客に出しているそうだ。夏でも予約をしておけば天然ふぐを食べられる。
ちり鍋

確かにふぐの量は少ないが、一人たっぷり2杯分あるので充分だ。この店でアルバイト歴4年の女学生が取り分けてくれるのも嬉しい。我が娘たちもアルバイト先では笑顔を振りまいているだろうが、家で銀髪にサービスしてくれることは滅多にない。アルバイト料より遥かに金を出しているのだが…
雑炊、漬物

いつもふぐコースを食べる度に鍋は余って食べ切れない。雑炊も味見程度に少し食べるだけ。ところが今日は雑炊もお代わりして、デザートも食べきった。食事が早く終れば酒の量も抑えられる。安くて、食べ過ぎず、飲みすぎずと完璧な食事が出来た。
ちょっと抑え気味の食事にはさらにご利益があった。ホテルで一息ついて温泉へ。しっかりと伝説の湯を堪能した。

目的のふぐと温泉を楽しんで、メデタシメデタシ。ん?目的は仕事だったかな?
割烹 福助
山口県山口市湯田温泉2-2
083-924-1616
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2008年10月09日
[御蔵](渋谷)
お手頃価格の京懐石

渋谷マークシティーの4階、奥まったところにある御蔵は高級そうでちょっと入り辛い。「京の田舎料理」の文句に勇気付けられて入ってみると、なるほど格式張った感じがなく臆することはなさそうだ。メニューはコースのみで4,200円、5,800円、7,600円の3種類。見栄っ張りが悲しむぐらいリーズナブルな価格設定である。
いずれのコースにも鍋があり、一番下が豆乳鍋で他は牛肉の鍋。健康に留意したら僅かな見栄も除外することができる。金を出す身に優しいコース設定に感謝した。
前菜、小鍋(豆乳鍋)

前菜の中では柿の白和えが季節感を出している。豆乳鍋は一人一鍋なので喧嘩しなくていい。上のコースは大鍋で、店の女性が取り分けてくれるようだ。羨ましくもあるが、煩わしさはない。
里芋だんご、鰊茄子

里芋だんごの中には鳥のつくねが入っている。京料理らしく優しい味だ。鰊も京料理らしい。ここまでは確かに田舎料理というのが頷ける料理ばかり。高級素材は使っていないけれど、満足感はある。
日本酒の器も遊び心があって面白い。演出効果は抜群である。

子持ち鮎塩焼き、南部鶏山里焼き

メインは4品の中から選べる。鰆の西京漬けと牛肉鍬焼きは食べ損なったが、選んだ2品は間違いではなかった。
湯葉豆腐丼と漬物、冷やしうどんとおにぎり、デザート


食事は2品から選ぶので迷わず一つずつ。京漬物がついた丼の方に軍配が上がる。それにしても、うどんはよく冷えていた。
気がつけば、前も横も外国人。しまりやの外国人にとっても気軽に京料理が味わえる店である。店の女性に「今日は外国人が多いですね」と聞いたら、いつものことらしい。「俺もヴェトナム人だけどね」と言ったら、マジで驚いてくれた。店の女性たちは可愛くて仕事ぶりもいい。「正社員?」と聞いたら「アルバイトです」と言われ、今度はこっちが驚いた。
銀座店も料金設定は同じようだ。外国人だけでなく、若い人にもお奨めの店だ。
京の田舎料理 御蔵 渋谷マークシティ店
東京都渋谷区道玄坂1-12-5 渋谷マークシティウェスト4F
03-5459-4011
http://www.fukunaga-tf.com/mikura
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2008年09月11日
[鮎正](新橋)
日本随一の天然鮎料理

5時45分に到着。2階には既に先客があるようだが、1階にはまだ誰もいない。カウンターの真ん中に座ると、店の人たち(板前さん6人、仲居さん2人)に見詰められているような気がする。「イヤー、緊張しますね」と笑って空気を和ませた。

一品目が出てきたところで「写真を撮っていいですか?」と主人に尋ねる。「そんなこと言われるのは初めてですよ。最近はみんな何も言わずに撮ってますから」と苦笑い。名刺を渡して「今日はよろしくお願いします」と言う。主人からも名刺を受け取る。さあ、楽しい食事の準備は整った。
鮎の椀物、フッコ(スズキ)の刺身

通常は鮎の刺身だが、鮎の数が足りないのでフッコになったのが残念。次回の楽しみにしよう。
塩焼き、苦うるか

一人二匹の塩焼き。頭から食べ尽くす。鮎の内臓と塩だけで丹念に作られた苦うるか。器がサメに似ていると相方が言うので馬鹿にしたら「実物より頭が大きいですからね」と主人が優しくフォローしてくれる。

茄子の味噌煮込みかと思ったら、これもうるか。汁を残すのがもったいないので「ご飯でも入れたら…」と口に出そうとしたら、「白いごはんをお出しします」と先に言われてしまった。あー悔しい。

鮎の揚げ物は小麦粉の衣がパリッとしていて香ばしい。鮎の中に挟んであるのは赤味噌かと思ったら、白味噌にうるかを混ぜたものとのこと。
煮浸しにすると、鮎はまた違った味わいになる。実に面白い。
酢の物、鮎ごはん

いつものことではあるけれど、他の客は自分たちで話し込んでいるので目の前の主人を我々がほぼ独占した。大量に使う鮎の全てを無駄にしないために、考え抜いた技の数々を説明してくれる。披瀝したいのは山々だが、そんな野暮は慎もう。是非、店に出向いて自ら聞いて欲しい。

工夫は鮎料理だけではない。デザートの氷の下に隠れている青梅の鮮やかな色も主人の研究と試行錯誤の賜物。酒、什器その他、隅々まで細やかな配慮がある。
主人の、女将さんの顔がいい。自信と謙虚さが見事にバランスしている。二人が店の外までお見送りしてくれた。頭を下げる二人に「また来月!」と既に常連さん気分で偉そうに手を上げる銀髪。いい店だった。
鮎正
東京都港区新橋4-17-5
03-3431-7448
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2008年08月20日
[魚一](銀座)
夏もやってるふぐ料理屋

「店は予約しといたからな」とメールが入ってきた。一人で魚一(とといち)へ向かった。以前、飛び込みで入ろうとして二の足を踏んだ店だ。「注文はお前に任せるよ」と言われたのでちょっと早めに店に着いた。生ビールを飲みながらメニューを見てちょっと驚いた。ふぐコース以外は目立った料理がない。
二の足を踏んだ時の胸騒ぎは当たっていたことになる。
カウンターの中の料理人は黙々とぶつ切りのふぐを揚げている。夏にふぐは食べる気がしないので、わずかな品数のメニューを見詰めて固まってしまった。店の女性が見かねて助け舟を出してくれる。
付け出し、枝豆

付け出しはちゃんとしている。枝豆もオーダーしてから茹でるので、悪くないかもしれないと思い始めた。
総勢4人が揃って乾杯をする頃、店の女性と決めたお造りの盛り合わせが出て来た。

生簀に泳いでいたシマアジを中心に、特別に造って貰った刺身の盛合わせ。メニューには書いてないが、コース料理に使う食材は豊富にある。他の連中も豪華な盛り合わせに大喜び。胸騒ぎはいい方に外れたようだ。
ふぐの唐揚げ

刺身がなくなりそうなので、ふぐの唐揚げを求めた。先ほど大量に揚げていたからすぐに出してくれるかと思ったら、別に作り揚げ始めた。前もって揚げていたものは、手を加えた後で地下の個室に行くようだ。意外にたくさんの客が入っている。
鱧の落としと焼き霜

メニューの中でふぐ以外に目に付くのは鱧。みんなに湯引きと炙った鱧の食べ比べをさせた。銀髪がうんちくを語るまでもなく、炙りの方が好評だった。

先ほどのシマアジを使ったアラ汁で満腹になったところで、料理人に話しかけた。思ったとおり若い料理人はオーナーではなく、魚一は「魚とやグループ」の一つと分かった。赤坂の大友が代表格で、4年ほど前に行ったことがある。高級魚を比較的安価で食べられる店として人気がある。魚一は大友よりきれいで、コンセプトはほぼ同じのようだ。
「ふぐは天然でなくっちゃ」と言う人には向かないけれど、夏のふぐも悪くないかもしれない。
銀座 魚一
東京都中央区銀座1-3-6 1F
03-3561-4131
http://www.sannotec.co.jp/yoyoya-gr
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2008年08月18日
[かどわき](麻布十番)
今シーズン初めての松茸料理

苦心惨憺して店まで辿り着こうとするタクシーの運転手を制して、支払いを済まし歩き始める。地図を見るまでもなく、すぐに雰囲気のある家の前に立つ見覚えのある影を見つけた。Tさんが心配して迎えに出てくれていた。
店主の門脇さんの前のカウンターに落ち着き名刺を渡した。写真を撮らせてもらう最低限の銀髪の礼儀である。生ビールを頼むとすぐにお任せコースがスタートした。
枝豆、芋の茎とカレイの昆布締め、松茸のコロッケ

山椒がアクセントをつける枝豆、シャリシャリとした食感の芋の茎と昆布締めのカレイ。気鋭の料理人の評判どおり、きめ細かい仕事がされている。コロッケ?と意表をつかれたが、松茸入りと聞いて納得。松茸は秋にしかないと思っていたが、梅雨時から早松茸が出回るらしい。韓国産など使うはずがないと思いながらも、恐る恐る尋ねたら山口産とのことだった。
鯛と松茸、秋刀魚の塩焼き

松茸を鯛で巻き、スダチを絞って塩で食べる。北海道産の見事なさんま。絞りやすいようにスダチに切れ目が入れてある。さんまの大根おろしは別の器に。芸が細かい。
焼き台は陶器のようなもので覆われている。料理だけでなく調理台、什器にもこだわりが見られる。
個室も一杯のようで、厳しい顔つきで料理を仕上げる門脇さんに話しかけるのは気が引ける。
胡麻豆腐、鱧しゃぶ

香ばしく焼かれた胡麻豆腐の上には鱧の卵。鱧の骨を焼いてとっただし汁がたっぷり入った鍋から、鱧や松茸を取り分けてくれる。他で食べる鱧しゃぶより濃厚で味が深い。
1合ずつ頼める酒は大吟醸しかない。招待してくれたTさんに申し訳なかったが、大吟醸酒を2杯飲ませてもらった。
個室の客を含めて料理も一段落ついたようだ。門脇さんも笑顔を浮かべてリラックスしている。きれいな奥さんも後ろから微笑みかけてくれた。同時に店全体の空気も和む。
サマートリュフの炊き込みごはん、デザート

松茸ご飯が出ると思っていたが、ちょっと香りが違う。味付けも濃い。トリュフの炊き込みご飯と聞いてちょっと驚いた。この店らしいと言える料理。もちろんお代わりした。
デザートを食べてお開きになった。食通のTさんが太鼓判を押すだけある店だった。それにしても門脇さんは若くて元気だ。知力、体力がなければ出来ない料理である。才気闊達から円熟へ向かうまで、何度か訪れてみたいと思った。
麻布 かどわき
東京都港区麻布十番2-7-2
03-5772-2553
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2008年08月13日
[神谷](銀座)
名物、炙りトロ寿司

テレビのグルメ番組で「寿司ネタを炙って握る」店を紹介していた。「魚も肉も少し火を通した方が上手い」というのが持論なだけに、我が意を得たりと行くことにした。
名店がひしめく銀座交詢ビルの4階、テレビで見たより大きく立派な店である。
頼んだのは看板料理「炙りトロ」が入ったコース。いつものようにカウンターに座ったが、この店にはオーナーの神谷氏らしき人は居ない。テレビに出ていた2代目も今はグループを離れて修行中とのこと。目の前の若い料理人に相手になってもらうしかないようだ。
鱧そうめん、イカのコノワタ和え、炙りトロ寿司

黒い麺が鮑の肝入り、卵の黄身も凝っている。コノワタも美味しい。早くも3品目に看板料理の炙りトロ寿司が出てきて驚いた。最後に炙り寿司の盛り合わせが出て来ると思っていたのだ。確かに美味いがこの後のコースはどうなるのだろう。
鱧椀、お造り(スズキ、鮪、イサキ)

鱧椀は完璧。5品目に刺身とは意表を突くと思ったが、よく考えれば懐石料理の手順を踏んでいる。テレビを見て寿司屋の感覚で来たのが間違いで、普通の懐石料理屋と今頃になって気がついた。
鮎

抜いた骨を再び焼いて食べやすくしている。余す事なく食べ尽くすことができる。芸が実に細かい。感心して質問ばかりするものだから、いつの間にか目の前の料理人が替わっていた。名刺交換すると料理長である。食事がワンランク楽しくなってきた。
豚の角煮

普通の豚肉ではない。金華豚と並ぶ銘柄豚の梅山豚(メイシャントン)と説明されれば更に楽しい。中国上海市北部の江蘇省に分布する在来種で現在日本で飼育されている梅山豚は100頭前後しかないそうだ。ありがたやありがたや。
そば、水羊羹、杏仁豆腐

〆は寿司ではなく蕎麦だった。神谷グループのこだわり蕎麦とのこと。もっと自慢するのが水羊羹。市販のものと違い、水分が多いので口の中でとろける。数時間で溶けてしまうので、作り置きはできないそうだ。
今回は初めてだったので決められたコースを食べたが、こちらの希望に従って内容を替えてくれると料理長は言う。テレビ番組のように炙り寿司を多くすることもできる。また来たくなるように上手に誘う料理長。なかなかの手練れ者だ。
銀座 神谷
東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル4階
03-5537-7700
http://www.kamiya-m.com
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2008年08月11日
[ありそ亭](青山)
青山で福井の味を

「青山の骨董通りお願いします」と告げると返事もなくタクシーは動き出した。「小笠原流会館を知ってますか?」と聞いたらぶっきらぼうに「知りません」と一言。仕方ないので窓外を注視してナビゲーターを務めた。道を間違えることもなく、路地を入って複数の飲食店やブティックのあるエリアに辿り着いた。ありそ亭は突き当たりにある立派な店だった。
席の間隔がゆったりしていてなかなか雰囲気のある店だ。窓の外には小さな庭園が見える。アラカルトを頼もうとしたが、強くコースを奨められた。料理が出て来るのもコースの方がスムーズだと言われてその気になった。7,000円の荒磯コースを頼んだ。
前菜盛合せ

強く奨める理由が分かった気がした。流れ作業で出せるし、見栄えも悪くない。レバーペーストとパンのような洋風のものもあれば、福井名物の「へしこ」もちゃんと入っている。
鱧椀、お造り

鱧の吸物がとても美味しい。あまり酸っぱくない梅干もいいアクセント役になっている。
鮎の塩焼き、いちじくの抹茶天婦羅

炭の入った壷の上に乗せられて鮎がやってきた。ホカホカの鮎は福井の酒が良く合う。場所柄女性向けに梅酒やワインなども置いてあるが、外国人向けに日本酒の何たるかの説明を載せている。もちろん日本語でも書かれている。日本人にこそ、銘酒を料理に合わせて欲しいものだ。
おろしそば、デザート

そばは2種類から選ぶ。「福井ならおろしそばだよね」と言ったら店の女性が嬉しそうに頷いた。
「ありそ亭ってどんな意味?」と相方に聞かれた。「ありそでなさそうないい店だからでしょう」と笑わせた後で、コース名の荒磯に「ありそ」とふり仮名がついていることを教えた。ありそ亭の本店は福井県三国温泉の荒磯(ありそ)亭で、約600年前に中国から伝わった名物裂(めいぶつきれ)の文様の一つ、荒磯緞子(ありそどんす)から名付けられたとのこと。座席にも荒磯緞子のクッションが置かれている。これに合わせて店造りをしたようにも思える。東京に居ることを忘れさせてくれるようないい雰囲気だった。
冬の主役はもちろん越前かにである。ありそ亭で食べるか、福井の荒磯亭本店(旅館)で食べるか。冬が待ち遠しくなった。
ありそ亭
東京都港区南青山5-4-41 グラッセリア青山1F
03-5466-5820
http://www.arisotei.co.jp
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2008年07月30日
[梅の花 横浜スカイビル店](横浜)
絶景の28階、湯葉と豆腐の店

7月は「禅家」「月の雫」と滅多に行かない豆腐料理屋に2回も行った。不思議なものでお客様が招待してくれた店も湯葉と豆腐の店だった。これで3回目。暑さのせいでみんな食が細くなっているのかもしれない。
梅の花は株式上場もしている大手で、湯葉と豆腐の店を全国展開したパイオニア的な存在だ。我が家の女性3人にせがまれて青山ベルコモンズにあった梅の花に行ったのが10年以上前。今回はそれ以来である。
豆腐のべっ甲あん掛け、名物とうふしゅうまい、アオリイカの細造り

テーブルの上には季節(7~8月)のお奨め懐石「涼」の献立が載っている。ランドマークタワーが見渡せる絶景、畳の美しい部屋、献立表、などなど。値段の割には高級感がある。給仕してくれる若い子がアルバイト風でぎこちない動きなのがご愛嬌だ。
冷やし変わり豆腐

ドーンと出て来た変わり豆腐。自ら柚子の皮をすりおろして香りをつける。悪くない。
中八寸、鱸の若狭焼き

中八寸の皿には穴子湯葉巻き寿司・海老旨煮・蛸小倉煮・季節のお浸し・夏鴨ロースが乗る。いかにも懐石風で楽しい。もっとも懐石料理という割には冷やし変わり豆腐から下の写真のかき揚げまで一気に出てきてテーブルを埋め尽くしてしまった。
湯葉と丸茄子の揚げ出し、紅芝海老のかき揚げ、鱧(はも)茶漬け

一転して茶漬けが出て来るのが遅くて少しイラついたが、支配人が挨拶に来て上手く間を取る。さすがに手馴れたものだ。
香の物、小豆入り葛餅、かぼすアイス

デザートを食べ終わった頃に、再び襖が開いた。今度は料理人が挨拶に来たのかと感心したら、「そろそろお時間です」とお開きの催促だった。個室は2時間制となっているようで次の客を迎える準備をするらしい。
料亭風、懐石風と風をつけたくなる店だが、お手頃価格でちょっと高級感を楽しめるのがいいところだろう。
梅の花 横浜スカイビル店
神奈川県横浜市西区高島2-19-12 スカイビル29F
045-450-1010
http://www.umenohana.co.jp
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2008年07月22日
[河太郎](福岡)
日本で最初のいけす料理店

河太郎は博多のみならず日本で最初の生簀料理店だという。生簀の主役は佐賀県呼子で取れたいかで、この活造りの元祖も河太郎である。早い時間だったこともあり、生簀のすぐ横の一等席が用意された。
河太郎は2度目だが、銀髪グルメ紀行で紹介するのは初めて。稚加栄や寺岡などに浮気していたが、戻ってみると、生簀は記憶していたより小さい。ソープランド街のすぐそばということも今回初めて気がついた。
いかの活造り

原油価格高騰でイカ釣り漁船などの休漁が話題になっている。その影響か、小さないかが三杯盛られてきた。透き通った身の下で尚も息づく様は迫力に欠けるが、大きないかよりも柔らかくて味も悪くない。
おこぜ

冬が旬のふぐがお休みの間の主役をはるのがおこぜ。白身の上品な味はふぐより上と言う人も居る。

刺身で食べた残りを調理してもらう。おこぜを揚げてもらうので、いかはいつものような天婦羅ではなく塩焼きにしてもらった。

おこぜの卵と肝は煮付けにしてくれた。「このおこぜは大きいので骨を食べるのは大変ですよ」と味噌汁を奨められたが譲らなかった。揚げるのに時間がかかってしまったが、骨までしっかり食べ尽くした。
食糧危機は深刻な問題になっている。偉そうなことを言える立場ではないが、我々ができることの一つは食べ残しをしないことだろう。野菜や果物の皮は剥かないで食べる。動物も魚介類もとことん食べ尽くす。内臓はもちろん皮や骨、血までも利用する。ソーセージなどいい例だ。意外と美味しいものを発明できるかもしれない。
河太郎では殆どゴミにしなかった。銀髪は偉い!と自画自賛。
河太郎
福岡県福岡市博多区中洲1-6-6
092-271-2133
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2008年07月15日
[銀座とよだ]②(銀座)
やっぱりとよだはいい

1年ぶりに「銀座とよだ」にやってきた。もっと早く来たかったけれど、ミシュランに選ばれたので控えていた。有名店から超有名店になってしまったので心配していたが、以前と変わらぬ自然体の雰囲気に安心した。
店の女性が「前回は15,000円のコースでしたね」と言うので、料理長の岡本さんだけでなく店の人たちも銀髪を覚えているようだ。今回はお祝いをしに同僚と3人でやってきたので2万円のコースをお願いした。

最初の品は煮鮑のぶつ切りにスッポンの煮こごりを乗せたもの。高級料亭などで使う浜名湖産養殖スッポンは夏場には出荷されないはず。まさか中国産ではと恐る恐る尋ねたら、熊本産の天然物とのこと。天然物は食べた記憶がない。地に沈むかもしれないと思った気持ちが天に舞い上がった。馬鹿だね。

箸休めは寿司のはずが蟹サラダ?と首を傾げたけれど、ちらし風の寿司だった。岡本さんは茶目っ気たっぷりだ。
はもの椀物、鮎の一夜干し

いつもアイデア満載の料理で飽きさせないが、既に完成の域に達して定番になっているのが上の2品。前回も食べたので銀髪は驚かないが、桃が入った鱧の椀にしろ、酒盗を塗って一夜干しした鮎といい、連れの2人は大喜び。夏になるとこの2品を楽しみに来る常連客も多いに違いない。
焼物、フォアグラ大根

「何だか当ててください」と出された焼物。いくつか答えて降参すると岡本さんはしてやったりの笑顔。先ほどのスッポンの身を固めて焼いた物だそうだ。
鱧ごはん、デザート

これも初めての鱧ごはん。いつもは食べないご飯やデザートまで銀髪に食べさせてしまうのだから、やはりとよだはいい。
カウンターはまさに一等席。鱧の骨切りを「テレビでしか見たことがない」とじっと見詰める部下の嬉しそうな顔。岡本さんの説明を真剣に聞いて、頷き、感心する。上司の説教や自慢話を聞かされずに済んで数百倍楽しいはずだ。
カウンターには恋人同士には見えないカップルが数組。男は女を口説くのに夢中なため、岡本さんを我々だけで独占出来て助かった。「おじさんたち、ありがとう!」
大好きなとよだで食べて、部下たちの嬉しそうな顔を見て、この日は少々舞い上がってしまった。何とお造りと鱧焼きの2品を撮り忘れたのだ。冷静沈着を装う銀髪にもたまにはこんな日があってもいい。
銀座 とよだ
東京都中央区銀座7-5-4 ラヴィアーレ銀座ビル2階
03-5568-5822
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2008年07月08日
[あわびの源太](銀座)
珍しいあわび専門店

「あわびを食べたい」なんて言われると腰が引けてしまうが、清水の舞台から飛び降りるつもりで行くことにした。予約の電話を入れたら銀座らしくない随分きさくな受け答えをする。もちろんカウンターを指定し、料理は行ってからということにした。
真新しい店は入って右側にカウンター、左と奥にテーブル席と個室がある。カウンターの真ん中に我々の席だけが用意されていた。早い時間なので店も料理人も貸切である。
料理は若い社長、客の応対は父親の会長の役目。電話を受けたのが会長だった。
付け出し、水貝

だし汁に浸かった水貝の鮮烈なこと。自慢の蝦夷あわびは確かに美味い。
会長が札幌で創業して36年、去年8月に銀座に移転した。客の殆どが東京、大阪からの出張者だったので、銀座で勝負しようと思ったとのこと。札幌まで行かずともこの蝦夷あわびが食べられるようになって常連さんは大喜びであろう。
茶巾揚げ、しそ焼