2010年08月27日

[松楽](日本橋)

老舗の楽しみ方


日本橋三越と中央通りを挟む向かい側の路地。昼時に歩く度に入ろうかと思いながら、お値段に尻込みして数年が経った。一度は行かなきゃならない近所の老舗料理屋。遂に行く機会を得て、電話でカウンターを予約した。

店の前に掲げられた札を見て、スタンディング割烹の入口は裏にあることを知った。店は二つの路地に面している大きな建物のようだ。裏に回ってドアを開けるとカウンターはスタンディングバーの趣。カウンター割烹でないと分かって、素直にテーブル席に腰を落ち着けた。

女将はウィスキーを飲む常連さんの相手をしている。着物を着たベテランの仲居さんが我々の面倒を見てくれるようだ。銀髪の母よりは少し若いだろうか。表側の完全個室の料亭ならコースメニューを頼まなければならないが、裏のテーブル席はアラカルトが可能。お通しの後は、刺身、焼物、煮物、メインと銀髪が勝手にコース料理風にしつらえた。

旬の穴子は素材の質が分かりやすい塩焼きに、カレイは店の味が分かる煮つけにしてもらった。

「茶碗蒸しを食べたい!」とK氏が言う。どこに行っても好物は頼まないではいられないようだ。「茶碗蒸しは2つからお願いします」とお母さんに言われれば仕方がない。銀髪も食べる破目になった。「この前食べた時、他の人たちはグチャグチャに混ぜる方が美味しいと言うんですよ」と食べる前に気持ちの悪いことを言う。

蓋を開けると椎茸の香りが広がる。スプーンですくって口に入れると卵がプルンと震える。グチャグチャにするよりこの方が美味しいに決まっている。

最後はひれかつに決めていた。ランチ時のヒレカツ定食2940円は知る人ぞ知る名物料理だそうだ。もともと初代が洋食の出身だったらしく、割烹にもかかわらずヒレカツを出す。洋食屋が多い日本橋ならではの割烹料理ということだろうか。お母さんの薦めで串カツも盛ってもらった。

日本橋の雑踏を忘れさせ、時代を遡ったような気持ちにさせてくれる風格のある一軒家。女将や年配の仲居さんたちものんびりとした雰囲気作りに一役買っている。お金持ちの常連さんたちにとっては我が家のように寛げる店に違いない。もしかして我が家より?

割烹 松楽
東京都中央区日本橋室町1-11-2
03-3241-7639

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2010年08月10日

[潤菜 どうしん](新富町)

素敵な若さ


「あー、ここだ!」新富町1丁目の交差点の近く、店は思ったよりも簡単に見つかった。階段を上がり扉を開き名前を告げる。正面にバーのようなカウンター、壁際に2人用のテーブルが一つ、奥に4人掛けのテーブルが二つ。左手にある階段は天井で行き場を失う。

生ビールが体の熱を鎮めてくれたところで「食事は何を頼めばいいですか?」とやんわりメニューを求める。「一種類しかありませんので」と言われて納得。何を食べさせてもらえるか、出てきてのお楽しみである。

「明太子?」いえいえトマトのゼリー寄せ。スタートから洒落ている。水茄子以外では初めて生で食べた十全茄子。きゅうりともども店に合った可愛い野菜たちだ。

赤茄子に湯葉ゼリーあんかけ。口にした途端、笑みがこぼれる。次に出て来た盛合わせには感心した。ひとつひとつが輝きながらうまく調和している。料理人の思いが込められた一皿である。冬瓜の赤ワイン煮には笑った。てっきり鮪の刺身だと思った。稚鮎、秋刀魚に並んでいれば間違えるのは無理もない。

しじみのジュレは日本酒党の銀髪には嬉しい限り。ソーメンと一緒にすすれば肝臓も快調に働いてくれそうだ。お猪口を選んでいると店主の矢長さんが挨拶に出てきてくれた。「器が好きですか?」と聞いたら「大好きです!」と来た。矢長さん自慢のお猪口を見せてくれた。かなりいいものらしい。銀髪は器のことはさっぱり分からないが、姿がいいお猪口で日本酒を飲むと味が格段と良くなるから不思議だ。

加茂なすを食べた後、シンプルなみょうがだけのご飯が炊き上がってきた。矢長さんが自ら摘んできたブルーベリーのシャーベット、茶豆ようかん、抹茶でコースが終了した。

出て来た素材のすべてはとても覚えられないのでメモしていたら、店の女性がメニューを手書きしてくれた。心のこもった接客に感心、感謝!

矢長さんの目指すところはよく分からないが、マスコミに騒がれるような店でないのは間違いない。これだけ手間暇かけた料理を6,800円で食べられるのは幸せだが、我々しかいない店内に気を揉むばかり。しかし帰り際にはちゃんと女性客で埋まって一安心。

矢長さんはまだ33歳。どのように進化していくか、暖かく見守りたいものだ。

東京都中央区新富1-9-11 亀田ビル2F
03-5542-8851
http://dousin.jugem.jp/?pid=1

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2010年07月30日

[雲海](名古屋金山)

安心な一流ホテルのレストラン


迷ったらホテルのレストランということだろうか。迷ったのは銀髪ではない。グルメ紀行を書いているせいで、みんなに気を使わせてしまう。焼き鳥屋でも充分満足なのに、よほどうるさい奴と思われているようだ。

青雲(6,000円)を予約してくれていた。自分で予約したら1万円程度のコースを頼んだに違いない。相手にアレンジしてもらうとお財布にも気を使ってくれる。

野菜ゼリー寄せ、とうもろこしのすり流し。ゴールデンキャビアはとびっ子のことだろう。カタカナや難しい漢字で表記することで有難味が増す。いったい何人の人がメニューをすべて理解できるだろうか。漢字を読むことさえままならないだろう。

お造り、煮物は一品が小さくて可愛い。居酒屋だったら「みみっちいなー」と言われそうなものも、「上品」と評価されるから面白い。

鮎は4人のうち3人が頭からかぶりついたが、飲み込むことはかなわず吐き出した。焼き方が悪いのか、成長して骨が硬くなったのかは分からない。
「これってさらしくじらですよね」と部下が店員に質問する。メニューには「尾羽雪」と記されている。これはオバケと読むと聞いて納得。ラレシはラディッシュのことらしい。いやはや難し過ぎる。

残すはごはんとデザートのみというところで一人が「ひつまぶしが食べたい!」とのたまう。店員が「時間がかかります」というので、出てくるまで凍結酒の氷で遊んだ。

眉毛の角度を変えて遊んでいるうちにひつまぶしがやってきた。名古屋は蒸さないはずだが、とても柔らかい鰻だった。

最後はコースに戻ってとろろ飯とデザート。会食にはちょうどいい質と量だった。因みに同じ雲海でも東京赤坂ANAホテルの雲海の会席料理は12,075円から。名古屋はとってもお得である。


日本料理 雲海
愛知県名古屋市中区金山町1-1-1
全日空ホテルズ ホテルグランコート名古屋
052-683-4111

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2010年07月28日

[熊はん](浜町・人形町)

鱧を求めて丸なべを


人形町界隈で評判のいい店を探していたら京料理の熊はんを見つけた。鱧を食べに行くことに決めた。京料理の老舗、たん熊北店系列には大きな店もあるが、熊はんの規模でカウンターなら楽しめるに違いないと思った。
店の外から覗き見て、思ったより長いカウンターに二の足を踏んだ。板さんと話し込むにはちょっと広すぎるが、意を決して中に入りカウンターのほぼ中央に座った。

ほうれん草のお通しが出てきた。カウンターの客もテーブル席もコース料理を食べているようだ。銀髪は食べたいものだけに的を絞った。まずは鮒ずしである。飲むのはもちろん日本酒。たん熊オリジナルの熊彦原酒を頼んだ。思った通りいい鮒ずしである。

アラカルトメニューに鱧が載っていないことにショックを受けたが、壁の黒板にちゃんと書いてあった。ハンサムな店長の林さんに「刺身、おとし、炙り、どれにしますか?」と聞かれて迷った。どれも食べたいが3皿は多過ぎる。「少しずつ盛りましょうか?」と助けられて失語症が解消した。目の前で骨切りが始まる。刺身は塩とオリーブオイルで食べさせる変わり種。3品それぞれ特徴があって面白い。

一つ席を開けて右隣に座っているおじいさんに岩ガキが出された。コースの一品らしいが、「生牡蠣はダメなんだ」と断る。行き場を失った岩ガキをしばらく見ていたが、だんだん可哀想になってきた。「店長、その岩ガキ、俺がもらってあげるよ」と声をかけた。林店長はもちろんカキだって嬉しかろう。

主役の座を奪ったのはすっぽんの丸なべだった。赤坂のたん良で、浜名湖産が出荷されないこの時期に丸なべは出来ないと言われた。京都の大市だけでなく、たん熊も夏に仕入れが可能なのだろうか。すっぽんの身が美味しかった。それにしてもたん良がなくなったのは残念だ。

忙しい林さんに代わって、たん熊北店統括部長の上畑さんが時折話し相手になってくれた。さすがに小料理屋風とはいかなかったが、久しぶりのたん熊伝統の丸なべを懐かしく味わった。

熊はん 浜町店
東京都中央区日本橋浜町2-36-4 五城ビル 1F
03-5695-5470
http://www.tankumakita.jp/gr_kumahan.html

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2010年07月26日

[いづもや](日本橋)

本日土用丑の日


江戸料理と言えば寿司、天ぷらは異論のないところ。三大江戸料理にもう一つ加えるとしたら鰻だろう。日本橋界隈には伊勢定大江戸美国屋、はし本、神田川、きくかわなど老舗の鰻屋がたくさんある。昭和21年創業のいづもやもその一つ。ガタピシと床が鳴く本店は風情がある。

土用丑の日は避けて先週いづもやを訪れた。予約なしだったが幸い本店のテーブル席に入ることができた。色んなうなぎ料理を食べるにはベストの4人連れ。「お通しをつけますか?」と言われて「いらない」と答えた後は矢継ぎ早に鰻料理を頼んだ。

う巻きは他店との差別化をしやすい料理。う巻きを名物とする鰻屋さんも多いが、いづもやのう巻きはうざくと同様、オーソドックスなものだ。

白焼きと生醤油焼き。違いを聞いても良く分からない。「いいよ、両方頼んじゃおう」四分の一ずつなので苦にならない。意外なことに面白半分に頼んだ生醤油が秀逸だった。パリッとした食感が関西風の蒲焼に似て面白い。

最後にうな丼を食べることは決まっている。それまで口直しをすることにした。もう少し日本酒も飲みたい。枝豆、板わさ、もろきゅうで十分と思われたが、「高柳豆腐店のとうふ」と豆腐屋の名前に釣られてしまった。人形町の老舗豆腐屋らしい。

最後は半丼にしてもらった。銀髪は遠慮なく頭側を取った。幸い尻尾の方が好きだと気を使ってくれた人が2人。和気あいあいでお開きとなった。

平賀源内が夏場で売れない鰻屋の要請を受けて作ったと言われるキャッチコピーが「本日土用丑の日」で、200年以上を経た現在でも最も鰻が消費される日である。しらす不漁のため国内産が例年になく高値で、中国産や台湾産が幅をきかせるとのこと。まさか輸入物がキャッチコピーの恩恵を受けるとは、平賀源内でも予想できなかっただろう。


いづもや
東京都中央区日本橋本石町3-3-4
03-3241-2476
http://www.idumoya.com

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2010年07月04日

[いいむら](京都)

650円で京都気分

京都駅を出て大通りを北に歩く。京都タワーを過ぎて最初の大きな交差点、烏丸七条を右に曲がった。目指す店は口コミで評価が高い楽膳という店。「おうっ!あれだ」と看板を見つけたところで足を止めた。たった今、通り過ぎた店が気になり数歩、戻った。

京都駅周辺にはホテルグランヴィアやセンチュリーホテルなど鉄筋コンクリートの巨大なホテルがある。京都タワーの周囲も他の都市と変わらないビルばかりの風景。ところがちょっと中に入ると木造の旅館や家屋が隠れている。やはり古都だと感心させられる。いいむらもそんな京都らしい店に思えて後ろ髪を引かれた。

恰好つけても仕方がない。正直に告白しよう。建物以上に気になったのがランチの値段。料亭風の佇まいにもかかわらず、650円とは挑戦意欲を掻き立てられる。失敗しても懐が傷つくことはない。楽膳に行くのは止めた。

11時20分頃、テーブル席にもカウンターにも誰もいない。店は奥に広く長細く、町屋風でますます京都らしい。主人らしき年配のおじさんや、店員たちが素っ気ないのも京都っぽい。「写真(ビデオ)撮影禁止」と書かれた複数の張り紙が銀髪を威圧している。メニューもお茶も持ってきてくれないまま、時間が過ぎた。

「あれは、ぼくらの料理じゃないですかね」部下が額を近づけてくる。「奥の部屋に客がいるんじゃないか?」野郎二人がひそひそ話。厨房を見ると、談笑する店員たち。主人の顔は厳しいままだ。勇気を振り絞って声を出そうとしたところで店員が動き出した。おぼんを持ってこちらに歩いてくる。部下の予想が当たった。おぼんの上にはお茶とうな丼、うどん、小鉢が乗っていた。

ガイドブックに載っているのだろうか。若い女性が次々入ってくる。横並びの相席は当たり前のようだ。我々には謎解きの時間があったが、他の客には考える暇もなく料理が運ばれていく。流れ作業の準備が整ったに違いない。

勘定を払って扉を開くと、後ろから若々しい「ありがとうございます」の声が追いかけてきた。ちょっと気分を良くして店を出た。良くも悪くも京都っぽい空気を味わせてもらって650円。これは安い。


割烹 いいむら
京都府京都市下京区七条通烏丸東入ル南側
075-351-8023

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2010年06月29日

[おでん かま田](新橋)

若い「かま田」も美味しい


「いやー、この前もう一つのかま田に行っちゃったんだよ」と言うと若い店主が苦笑する。「どっちも人気で良かったね」と言うと嬉しそうに笑った。こちらの方が狭くて客層は若いので、賑わっているように見える。7時頃、店の前を通ったら満席だった。8時過ぎに再度覗いたら運よく入れた。

小さな店でも、料理人は店主一人なので大忙し。枝豆も、律儀にオーダーを受けてから茹でるので気を使った意味がない。会議が長引いて遅れて来たくせにSは腹が減ったと急かせる。もっとも遅れなければ満席で入れなかった。これは縁かも。

「毎朝市場に行って、少しずつ買ってくるんですよ」と優しい笑顔で話す。ウニがどれだけ立派なものであるか熱心に聞かせてくれる。その割にリーズナブルである。若い人が多いのも頷ける。しかも女性客が多い。

先客たちのオーダーは途絶えたのか、次々に我々の料理がやってきた。品質保持が難しい日本酒もちゃんと品揃えしてある。新橋だからといって焼酎に逃げないのが偉い。焼酎が好きな人は近くにある大人気の立ち飲み 竜馬に行けばいい。

おでんの出汁と器を見て「おた幸の出身なの?」と聞いた。暖簾分けというわけではないが、育った店に敬意を抱いているのは間違いないようだ。もっとも、既にかま田風と独自の道を歩み始めている。

「奥さんなの?」と料理を運ぶ女性のことを聞いたら、彼は独身だという。ついつい「もったいない」という言葉が出てしまう。それでも「店が恋人です」と言われたら信じてしまうかもしれない。実に楽しそうに仕事をしている。

「頑張ってね」と握手。「近いうちに必ず来るからね」と約束した。輝いている若者を見るのは実に気持ちがいい。基本的に予約は受けない店だが、新橋に着いたら電話しよう。「10分以内に行くからね」「ハイッ、お待ちしてます」なんてことになればラッキーだ。


おでん 新橋 かま田
東京都港区新橋2-11-5
03-3502-5133

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2010年06月03日

[かま田](新橋)

湘南地魚・全国地酒・大皿料理


「あれっ?かま田ってここだっけ?」店を覗くと主人らしき人と目が合った。えい、ままよ!「二人」と指を立てると「空いてるのはここだけなんですよ」とカウンター席に通された。カウンターの上には大皿料理。メニューには本日の地魚。おでんのかま田とは別の店のようだ。

お通しは2品。これを見ればいい加減な店ではないことが分かる。入り口に近い掘り炬燵式の席では我々と同年輩の男性たちが盛り上がっている。奥の掘り炬燵式の席も次々と宴会メンバーが揃い出した。

すずき、こしょう鯛、蛸、しめ鯖の刺し盛りが置かれた。「この店初めてですよね」主人がにこやかに話しかけてくる。いつも常連さんたちで店が一杯になるため、主人は自慢話が出来ないようだ。「毎朝湘南の漁港まで仕入れに行くんですよ」漁船に電話して河岸に出る前の魚をゲットするそうだ。「東京で一番新鮮な魚を出す店」と言うのも大袈裟ではないかもしれない。

刺し盛りについてくるさざえ。大皿から選んだ蓮根と茄子・ピーマン。「息子さん?」カウンターの中の料理人に声をかけた。主人と笑顔がそっくりだ。料理を運ぶのはお母さん。ファミリーで営む店で悪いところはない。

カレイの煮付けも期待通り。刺身は福岡の醤油で食べたが、煮物も同じものを使っているのだろう。福岡で少年時代を過ごした銀髪にとっては母の煮付けに通じる。「これ食べてみてよ」かますの卵の塩漬けは自家製だ。
お奨めの日本酒は店オリジナルの「かま田」である。「日本酒にこだわるのは、相当好きなんでしょ?」
と言うと、「毎朝、仕入れがあるんでそんなに飲めないんですよ」と可哀相。

常連客で賑わう店は一見さんには冷たいものだが、こんなに歓待されるとは思わなかった。「出来れば予約してくださいね。いい魚を仕入れてきますから」と言う主人は、美味しい魚を食べさせたいという気持ちが溢れている。あの親子の笑顔に見送られれば、また来たくなる。


かま田
東京都港区新橋3-10-2 第3新橋ヴィレッジ1F
03-3459-8477
http://www.kamata-shinbashi.jp

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2010年06月01日

[Serge 源’s ](名古屋)

今年初めての鮎


「ディナーの店はゲンジです」と言われ、てっきりヒルトンホテルの源氏だと思った。ところが歩く方向が違う。「なんだ!ゲンズじゃないか」ビルの前に立って呟いた。源’sには初めて来た。色んな業態の入ったビルは全て源’sの経営である。

予約してあったのは5階の鮨・日本料理の店。カウンターを左に見ながら歩き、個室に案内された。掘り炬燵式の和室のようで椅子は洋風の長椅子。店の主張はユニークだ。料理はもちろん和食のコース。前菜、あわびの椀物、お造りと続く。「トロはどこからの輸入?」と聞いたら、「国産ですよ」と顔をしかめる。

念のため聞きにいってくれたが、「地中海産でした」と低姿勢。今の時期、これだけの脂の乗った鮪は国内では滅多に獲れないはずだ。「鮎は養殖?」というのは失礼な質問だった。「長良川の天然鮎です」と即答されて気がついた。長良川の鮎漁解禁は5月11日。寒い春のせいで、解禁日のことをすっかり忘れていた。新橋の鮎正も予約が一杯になってしまっただろう。

コースの食事は天ぷら、寿司と終盤に差し掛かったが、ここで遊ぶことにした。源’sのビルには焼肉屋、イタリアン、居酒屋などが入っており、各階から出前をしてもらうことが可能。他の人たちは和食で統一しようとしたがそれでは面白くない。焼肉は認めたが、ピザも食べると言い張った。画的には一番面白い。飲むのは源’sがプロデュースする赤ワイン。

再びコースに戻りあさりの味噌汁が出てきた。三河湾のあさりは大粒で美味しい。八丁味噌(赤味噌)なのが名古屋らしい。メロンは渥美半島産だろうか。

和洋なんでも食べられるのは楽しいけれど、割烹でイタリアンばかり食べたら料理人は不愉快だろう。連れが一皿380円のイタリアンを頼もうとしたらさすがに断られた。銀髪はピザで遊んだが、ほどほどにした方が良さそうだ。店は許してくれても、客の方も品格を疑われる。

「なんでも屋の太郎は何もできない」中学生の時、先生が和訳してくれた。英文は忘れ、訳文だけが頭に残っている。

セルジュ源’s 錦店
愛知県名古屋市中区錦3-11-26 ジリオンビル錦
052-209-2333
http://sgg-nishiki.jp/

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2010年05月21日

[つかさ](長野)

御柱祭フェア


信州諏訪最大の祭りが御柱祭である。寅と申の年に行われるので実際は6年に一度だが、数え年の7年ごとということで一般には7年に一度と言うそうだ。諏訪出身の部下に何度も聞かされた話だ。その部下が長野での食事をアレンジした。ホテル国際21にある「つかさ」で信州諏訪御柱祭記念会席を食べた。

ホテル国際21には何度も泊まったが、つかさに来たのは初めて。なかなか立派な店だ。他に客は殆どいないため、大きめの部屋を使わせてもらった。ゆったりとしてなかなか気持ちがいい。

料理は手際よく運ばれてくる。スタート時間が早かったこともあり、仲居さんたちは我々の専属みたいなものだ。それでもビール、冷酒、熱燗、焼酎とそれぞれが好きなものを飲むために息をつく暇もない。銀髪はもちろん長野の酒を飲んだ。

せっかくの料理も酒盛りに忙しくて味わう風情ではない。宴席の料理ほど悲しいものはない。酒を注ぎながら席を移動し始めると収拾がつかなくなる。

どこが御柱祭記念会席なのだろか?誰も疑問を持たないまま食事は進んでいく。食べ終わった後に和牛ステーキが御柱を模していたと教えてもらった。和牛ステーキは柔らかすぎて柱に見せるのに随分と苦労したらしい。

〆はもちろん信州名物そばとなる。「おっ、やぶのそばですね」地元の人はさすがにお目が高い。長野にあるやぶ本店は創業明治12年の老舗。新興の蕎麦屋が次々と出来て評判を呼んでいるが年配者にとってやぶのそばは別格のようだ。つかさではやぶからそばを取寄せているそうだ。腹一杯なのに2枚も食べてしまった。

御柱祭では毎回のように死亡事故が起きている。今年も2人が亡くなった。それでも行事は予定通り行われるから諏訪の人たちの思い入れは凄い。父子2代の転勤族である銀髪には命を賭けるような祭りはない。羨ましいながらも、どこかホッとするような不思議な心境ではある。

会席料理 つかさ
長野県長野市県町576 ホテル国際21 4階
026-234-1111
http://www.kokusai21.jp

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2010年05月12日

[ささ花](銀座)

日本酒好きの人たちへ


コースにするか悩んだ。一流の料理人が居る店ならお任せ料理の方が銀髪の想像を上回るものが出て来る可能性が高い。特に少量ずつ盛られる八寸に興味がある。しかし、いくらのコースにするべきか。悩みながら電話をかけると主人らしき人が出た。押し付けがましくない応対がいい。コースでなくても楽しめそうだ。

店の前に来て、以前満席で入れなかった店と気がついた。高津川の鮎を食べ損なって残念な思いをしたものだ。今日はカウンターの一等席を占拠して大満足。白海老のウニ乗せのお通しの後、「コースの八寸のようなものを造ってもらえる?」と早速我が侭を言った。

「刺身を少しずつ別々に盛ってくれますか?」またも板さんは快く受けてくれた。春らしい桜鯛の桜蒸しは目の前に出された途端、桜の葉の香りが幸せにしてくれた。

他の客のために目の前で桜鯛昆布〆と菜の花を造っている。「菜の花だけもらえますか?」思わず頼みたくなるような鮮やかな緑色である。稚鮎は小さくても腹に苦みを持つ。これが堪らない。

煮あわび、とびしまの塩辛、あん肝旨煮、日本酒に合う料理が多い。特に塩辛は超塩辛く、これだけでいくらでも日本酒が飲めそうだ。

最後は筍土鍋ごはん。これで満足しない人は居ないだろう。

それにしても驚いたのは豊富な日本酒の品揃え。しかも店の格と比較して値段は抑え目。酒を出す時に必ずラベルを添えてくれる。アル添の吟醸酒、大吟醸酒よりも純米酒を増やしてくれれば言うことはないのだが銀髪の勝手なこだわりかもしれない。

我々の後ろに立って、店員たちの動きに目を光らせている店主の土佐さんに店名の由来を質問した。「ささはお酒のことです」と言われて納得した。「それにしてもリーズナブルですよね」と言うと「美味しい日本酒をたくさん飲んでもらうために店を作りました」とは泣かせてくれる。

いやー、いい店だった。土佐さんこだわりの日本酒がたくさんある。店主と日本酒の議論をするには、銀髪は10年早いかもしれない。

銀座 ささ花
東京都中央区銀座1-4-9 第1田村ビルB1
03-3561-4761
http://www.sasahana.com/info.html

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2010年04月27日

[一乗寺]②(銀座)

リーズナブルに懐石料理


「ピザがいい!」娘の希望は「ちゃんとした日本料理がいい」と言うパートナー殿に即刻却下された。さらに「値段はそれほど高くなく」と条件をつける。しかも「銀座で」と加えるので頭を抱えてしまった。

銀座一丁目の一乗寺を思い出した。実に2006年8月以来の訪問である。幸いパートナー殿は「ボロ家」ではなく「風情がある」と受け取ってくれたようだ。銀座といっても中心街から外れると、田舎の一軒家のような建物もある。

桜の木の立派な柱を持つ床の間前の席に案内された。前回は室町膳(5,250円)を頼んだが、今回は桃山膳(6,300円)と見栄を張った。お手頃な小懐石の季節膳(3,990円)もあるし、最高値が要予約の一乗寺本膳(7,350円)と銀座価格とはかけ離れている。軽いおつまみセットや一品料理があるとは知らなかった。

我々の席は薄暗いので老眼には辛い。カメラの感度がいいのが救いだ。前に来た時は若い女性が料理を運んだが、今回は男性店員が2人。料理の説明をしないで置いて行くのは前と変らない。「これは鰹かな」「胡麻豆腐と卵豆腐。中に入っているのはアスパラだね」「椀の魚はサワラだよ」「鮭の上に乗ってるのはじゃがいもだ」謎解きをした後で我々が店員に正解を求めるものだから、後半は料理の説明をして去るようになった。

茄子の田楽、海老しんじょ、豚の角煮は4品の中から各人が選んだ。4人いれば全部味見ができたのに…

「これは鶏肉を竹の子で巻いたものです」どう見ても逆なので聞き返したが同じ説明。食べたらやはり竹の子を鶏肉で巻いたもの。誤りを正そうと店員を呼ぼうとしたら「いいのよ、そんなに高い店じゃないんだから」とパートナー殿は鷹揚である。

「普通なら白いごはんなんですが…」と出てきたのは鯛めし。デザートはシャーベットで終わりかと思ったら3品がサービスで出て来た。ランチ用に用意したものが余ったのかもしれない。女性陣はご機嫌だ。「甘味」と「サービス」に女性は弱い。


我が家の女性2人は満足してくれたようだ。洗練されたサービスとは言えないが、控えめな接客に気分を害することはなかった。大正ロマンの中にいるような一乗寺での懐石は、20歳の娘には得難い体験になったに違いない。

一乗寺
東京都中央区銀座1-6-14
03-3561-5405

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2010年04月20日

[いちりん](新宿)

初めての雲丹しゃぶしゃぶ


ぐるなびを見ると「新宿からのタクシー代負担します」と書いてある。大好きなヴィンチェロほどではないが、いちりんも新宿の繁華街から外れたところにある。予約なしで行った。空いているカウンターに案内されるかと思ったら、時間限定で地下の部屋に通された。

店員の応対がとても丁寧だ。いい店の条件は半分満たされたようなものだ。コース料理を食べるべきのようだが、時間が限られるので定番メニューの最初にある逸品料理を食べることにした。

お通し(生しらす、いかの塩辛)の後に、アボガドとジャガイモの明太子サラダがやってきた。サラダの上に乗っているのは何だろう? 隣席に料理を運んで1階に戻ろうとする店員をつかまえた。細く切った湯葉を揚げたものだとのこと。面白い。

すぐに看板料理に入る。雲丹のしゃぶしゃぶとは珍しい。当然のことながら雲丹も鯛もイカも刺身で食べられる。雲丹を生のまま口に入れた。鍋に入れるのがもったいない。しかし、それでは創作料理を食べたことにならない。

味醂が入っているのでちょっと甘い。雲丹の風味が溶け込んでいるスープに野菜を入れ、鯛やイカをしゃぶしゃぶして食べる。「他で同じような鍋があったら教えてください」と言う店員もどこか誇らし気だ。

一人前を追加した。今度はホタテやタコが入っている。「同じものでは飽きると思って…」と気が利いている。ビールのうすはりグラスも感心したが、錫の徳利とお猪口も洒落ている。店主のこだわりや心意気が伝わってくる。

最後は雑炊で〆た。勘定を払い、1階に上がるとカウンターも満席。実はカウンター席から予約が埋ると言う。次回は予約をして来よう。店主との会話も楽しいに違いない。

いちりん
東京都新宿区新宿5-12-1
03-3358-9774
http://www.ichirin.com

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2010年04月15日

[銀座 座屋]⑦(銀座)

1万円コースで文句なし


「値上げしたんじゃないんですよ」電話の向こうで店主の岡添さんが言う。以前は1万円が一番上だったのが、8千円がなくなり1万3千円、1万5千円のコースが加わった。「どれでもいいよ」と見栄を張ったが、「1万円で行きましょう」と岡添さんが応じてくれた。

いつものように人懐っこい笑顔で迎えられた。吉澤さんに代わって中野さん、女性スタッフも加わっている。数ヶ月でも景色は変るものだ。桜蝦白豆腐蚕豆擂り流し、鯛の白子豆腐の上に桜鯛を乗せた潮汁。景色は変っても相変わらずのアイデア一杯の料理にお連れしたお客様もすぐに気に入ってくれた。

お造りには珍しくうつぼのたたきが加わった。名物かつおのたたきはあっさり目の初鰹。定番の鰹でも季節によって味が違う。毎月通うのが楽しみな座屋である。八寸も見るだけで楽しい。日本酒が進む、進む。

あいなめ、春キャベツ、ほたるいか、和牛木の芽焼き、原木椎茸、れんこん。少量多品種はまさに座屋の真骨頂といったところか。

肉がダメなお客様にはキンメダイの兜焼き。他人のものは美味しく見える。嬉しそうな横顔を見ると腹が立つ。気持ちを抑えて次を待つ。桜鱒に添えられた野菜は肉じゃが風。じゃがいもの上に煮溶けたたまねぎが乗る。

最後はおばあちゃんが作った四万十川源流産ヒノヒカリ。漬物は酒の肴で食べてしまったが問題ない。定番の卵かけご飯の後、今回は自家製の海苔も追加された。今月のデザートはよもぎ尽くしだった。

岡添さんの言うように、1万円のコースは以前と同じ満足のいくもので、値上げした訳ではなかった。しかし、1万5千円のコースが出来ると他の銀座の高級店とコンセプトが同じになってしまった感がある。

高知からの直送素材を使い、アイデア満載の座屋の1万円コースが他の店より遥かに充実しているのは間違いない。「あら、一番安いコースを頼んだのね。この人は」と冷たい目で見られるのを恐れる己の小ささを恥ずべきかもしれない。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090


卯月のお献立

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2010年04月12日

[いし井](広島)

広島で一番人気


「カウンターしか空いてないんですけど」と言われたが、もちろん望むところ。口コミサイトの食べログで4点以上、最高クラスの評価は正しいのだろうか。

通り過ぎてしまった。小さな入り口を抜けると左にカウンター、奥に座敷がある。座ると自然にそれぞれの席の前の紙片に目が行く。「本日〇月〇日 平均気温二十℃ 湿度40%でしたので全体的にややこいめの味にさせて頂きました。あしからず。店主」 
炎天下、4時間自転車で走った後、チャーハンを作ってあげた家族から「塩辛い!」と文句を言われたことを思い出した。

料理はお任せにした。豆と根菜の店というだけはある。寿司のあとは数種類の豆のジュレが出て来た。なかなかいい。

刺身もこだわりがある。単純に切っただけでなく、それぞれに味付けがしてある。軽く炙って塩味のカンパチが特に良かった。

野菜を上手く使った料理が続く。奥の部屋には若い女性が満杯。カウンターにも女性が多い。

二人の料理人、料理を運ぶ女性、みんなきびきびとして動きがいい。料理はアイデア豊富で味もいい。勘定をすると酒込みで一人5,000円程度とリーズナブル。若い女性が多いのも頷ける。

食事を終え、名刺を渡そうとすると、店主がカウンターから消えた。戻って来ない理由はすぐに分かった。裏口から出て我々を外で待っていてくれたのだ。石井さんは脂が乗り切っている36歳。評判の店なのに驕った感じは微塵もない。

食べログの評価は正しかった。銀髪食べログ編でも追随しよう。

豆と根菜 いし井
広島県広島市流川6-14 千歳ビル1F
082-247-0141
http://mamekon-ishii.jp/

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2010年03月24日

[多奈何](西新宿)

心地よい接客


先日、新宿三丁目のせいちゃんで串カツを食べたばかり。串揚げ屋のイメージはリーズナブルで外れがないということである。多奈何の前に立った。せいちゃんほど気楽ではないが、銀座の六覺燈ほど高級でもなさそうだ。凝った店名を見てちょっと期待した。

ドアを開けるとほぼ満席。カウンターの中の店主らしき人が申し訳なさそうに言う。「座敷なら入れますが…」と言われて素直に頷いた。掘り炬燵式でないのはちょっと辛いが、我が侭を言えば串揚げは食べられない。

お通しと串揚げの間に若竹煮を頼んだ。他にも選択肢はあったがやはり今の時期は筍がいい。店構えから想像したとおり、日本料理もきちんと出来る店のようだ。若竹煮を食べ終わる頃、串揚げが始まる合図のようにスティック野菜がやって来た。

海老はちゃんと頭も揚げてくれた。どの串も工夫がされていて面白い。何より料理を運んでくれる若い女性の応対が気持ちよい。時折顔を出す中国語訛りの娘も可愛い。

糸こんにゃく、おくらチーズ、みょうがなど、変り種の串揚げがたくさんある。男性2人、女性1人のグループが座敷に入って来た。常連さんと思われる男性が、店の自慢をしている。もっとも、彼らで満杯になったためか、料理が来るスピードは明らかに鈍ってきた。


勘定を頼むと、店主が勘定書を座敷まで持って来た。一等席のカウンターでなかったことや料理の進行が送れたことを詫びる。店を出ようとすると、再び店主がカウンターの中から頭を下げた。この店主なら従業員の応対が気持ちいいのも当たり前か。

今度は予約してカウンターで食べよう。きっと今日以上に楽しいはずだ。


多奈何
東京都新宿区西新宿1-14-5 新和ビル1F
03-3343-6672


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2010年03月19日

[鯛めし楼](名古屋)

鯛グルメ


「あれ?手羽先なんかもあるのかな?」危うく入りそうになったが思い止まった。派手な居酒屋の看板の向こうに鯛めし楼がひっそりと佇んでいた。150年近くの歴史がある立派な料亭。部屋に入るとお客様が一人待っていた。テーブルには店の人が持って来た新聞。接待客を迎え慣れている店である。コースは1万8千円。卓上のメニューに目を奪われる。

遅れて二人やってきた。コース料理は避けて、一品料理を少しずつ頼んで味比べをすることにした。まずは先付けを食べながらビールを飲む。どれも上品で美味しい。

お造りは鯛、ひらめ、いか3人前を一盛りにしてもらった。どれも美味しいが特に鯛がいい。伊勢湾の天然鯛、さすがである。

鯛料理の人気トップ3はあら煮、酒蒸し、うしお汁だと言う。もっともシンプルなうしお汁を2つ頼んで4人で分けることにする。銀髪の方には目玉を入れてもらった。ゼラチン質がぷりんぷりんで最高。部下があら煮を食べたいと言うので追加した。これも素晴らしい。

竹の子は愛知産。出始めは四国や九州が主流だが、愛知でも採れるようになったようだ。既に食の世界では春爛漫だ。

まだまだ魅力的な料理はあるが、そろそろ鯛めしを食べることにした。鯛茶漬も捨て難いので2つずつ頼んで味見した。

茶漬けは鯛の切り身をごはんに乗せて食べた方が良かった。茶漬けにするには鯛が立派過ぎる。さー、いよいよ真打の鯛めしの番だ。

鯛めしは神戸の銀平で紹介した鯛を丸ごと入れて炊き上げるものが一般的だが、鯛めし楼のものは松江のみな美(日本橋コレドに東京店皆美がある)のようなものと思っていた。出てきたものはまったく違うそぼろ。実に細やかで上品だ。感心すると若女将が微笑んだ。

帰り際にカウンターを覗いた。客がリラックスして楽しんでいるのが分かる。これは魅力的だ。店を出ると5代目と若女将が見送ってくれた。料亭ではあるが、気取らない明るさが好ましく思える店であった。

鯛めし楼
愛知県名古屋市中区錦2-18-32
052-211-6355

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2010年03月16日

[方寸 Murata](銀座)

和と洋を楽しむ


銀座ベルビア館に初めて入った。特徴のある店が色々ある。方寸は大分・由布院の名旅館「山荘 無量塔(むらた)」とのコラボレーションで生まれたという。木材を多用した店内は、「山荘」のイメージ通りの温かい和の空間を作り出している。

カウンター席は足置きになる段差があり、女性にも優しい。喫煙可というのが心配だったが幸い隣に客が来なくてラッキーだった。煙に邪魔をされずに料理長の茅野さんとの会話を楽しめた。

菜の花を食べると春到来を実感する。佐賀県産のホワイトアスパラは輸入物のような大きくて立派なもの。きんかんは宮崎産。種を残したら一緒に行ったK氏に怒られた。「体から芽が出てきたらどうすんだい?」ブツブツ言いながら食べた。温泉たらの芽のフリット。天ぷらと言わないのが方寸らしい。

メニューには2種類の日本酒しか載っていない。「これは飲めないの?」カウンターの右端に並ぶ一升瓶を指さす。茅野さんの目が輝く。彼と親しい板橋の酒屋「酒道庵」から仕入れるらしい。メジャーな酒蔵のものではないが、マイナーでも良質の日本酒を扱っているらしい。純米酒「くくみ酒」純米大吟醸「一石」を飲んだ。茅野さんがじゃこと小エビを酒の肴に出してくれた。

方寸の自慢料理は牛すじとギアラの自家製デミグラス煮込み、マカロニグラタンなど洋食にもある。ワインで食事をしたい女性や洋食が大好きなおじさんにも嬉しい店だ。煮込み料理はフランスパンにもごはんにも合いそうだ。

納豆やっこは日本料理のようだが、ネギに熱々の胡麻油をかけるのは中国料理に似ている。上品に食べている銀髪に再びK氏がクレーム。グチャグチャに交ぜてくれた。見かけはともかく確かにこの方が美味しい。

最後はクレソンの土鍋ごはん。2年間シドニーで働いた経験が茅野さんの料理の幅を広げている。33歳と脂が乗ってきた茅野さんが、今後どのように飛躍していくか、見てみたいものである。

方寸 Murata
東京都中央区銀座2-4-6 銀座ベルビア館8階
03-5524-6765
http://www.hosun.jp/

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2010年03月12日

[かなわ](銀座)

牡蠣と瀬戸内料理


創業140年という広島の老舗料理屋。広島駅ビルのASSE店には2度行ったが、橋から見えるかき船には行きたいと思いながらも未だに果たせていない。。東京では数寄屋橋の東芝ビルにあった頃に何度か行ったが閉店した。交詢ビル前に移転したのだろうか。

例によって男ばかり10人の宴会。少し遅れて行ったら、生牡蠣を食べ終わったところ。すぐに銀髪のために追加オーダーをしてくれた。米国産のクマモトや北海道の牡蠣も入っている。広島産にこだわっているわけでもないらしい。マガキが食べられない季節には岩牡蠣を出すそうだ。

明太子の玉子焼き、サラダ、じゃがいものフライなどが2~3人に一皿やってくる。瀬戸内料理と思えないものもあるが、オーダーする人は気にしない。

サワラやメバルは瀬戸内料理になくてはならない素材。鯛、蛸、おこぜ、穴子など瀬戸内の魚は美味しい。牡蠣がなくても瀬戸内は食いしんぼを満足させてくれる。

メインは当然、牡蠣の鍋。だし汁と合わせた味噌が鍋底に敷かれているようだ。水分は殆どないように見えたが、火が通ると溢れるぐらいなってきた。かなわでは牡蠣は後から入れる。新橋の白梅や新宿の安芸路 酔心でも土手焼を食べたが、各店作り方が違って面白い。

マガキは秋頃から食べられるようになるが、産卵の準備に入る3月~4月が一番太って美味しい。鍋が嬉しい季節もあと僅か。週末は牡蠣鍋といきますか。

かなわ 銀座店
東京都中央区銀座6丁目7-7 第三岩月ビル地下一階 交詢ビル前
03-3572-2325
http://www.kanawa.co.jp/restaurant/ginza/index.html

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2010年03月05日

[四季彩](富山)

ほたるいか解禁


店は地元の人に予約を取ってもらった。店名はどこかで聞いたことがある気がする。チェーン店かと思ったが、地図を見て思い出した。以前連れて行かれたのに休みだった店だ。気軽に飲める居酒屋としても、個室で接待にも使える店である。

料理も予約してあった。どんどん出て来るから楽でいい。喋り役の銀髪はどうしても食べるのが遅くなる。次が来て慌てて食べる繰り返し。他の人たちは聞く振りをしているだけなのかもしれない。お銚子が次々と空いていく。

「ホタルイカは解禁したばかりなんですよ」と言われて不思議だった。既に2週間ほど前に東京で食べたし、スーパーにも出回っている。3月1日に解禁したのは富山湾のホタルイカ漁。産卵のために浅瀬に上がってくるホタルイカを定置網で獲る。底引き網漁では乱獲だけでなく、ホタルイカに傷がつくおそれがあるからだそうだ。つまり富山産は品質がいいことになる。

四季彩の料理は品よりも実を重んじるようだ。どの皿も食べ応えがある。季節の素材を使った料理をぎっしり詰め込んだ感じだ。相変わらず遅れ遅れで食べていると、セイコ蟹(ズワイガニのメス)が出てきて驚いた。1月10日で禁漁になっているはずだ。もっとも新潟以北では5月末まで獲ることができる。思わぬご馳走に喜んだ。

おっとっと。天ぷらを撮り損ねた。半分食べちゃったけど、まあ、いいか。酒を飲みすぎてしまったようだ。それでも料理は残さず食べ尽くした。デザート以外は。これだけ日本酒を飲むと糖分の補給は充分すぎる。

たらふく日本酒を飲んで35,600円。4人の食事としては安くもないし高くもない。もっとも、東京で同じものを食べたら3割~5割は高くなるかもしれない。解禁したばかりの富山湾のホタルイカ、禁漁で食べられないと思っていたセイコ蟹。収穫が多い食事だった。

「イヤー、喋りすぎて申し訳ありませんでした」と謝った。「そんなことありませんよ」と言ってくれるかと思ったら、苦笑いが返ってきただけ。ちょっと反省した。

四季彩
富山県富山市総曲輪2-8-24
076-492-2299

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2010年03月04日

[三崎よし田](渋谷)

漁師料理?


ビルの地下にある店といえども割烹風の店構えを見ると入り辛かった。冷たい雨の中、鼻を頼りに店を探す気になれず、思い切って扉を開けた。案ずるより生むが易し。店内は銀髪と同様なおじさん、おばさんたちで賑わっていた。割烹というより居酒屋に近い。

カウンターの左端に座り、壁に貼られた短冊を見る。お通しが来た。メニューは来ない。見えにくい右端の方の短冊を女将さんが読み上げてくれた。料金は高め。目の前を他の人の料理が通っていく。大きい。質と量を見ると値段と見合っているようだ。

「刺身の盛合せはやってないんですよ」と言われて困った顔をすると「赤身と白身の盛合せならできます」と優しい。まぐろの赤身と中トロ、アイナメの盛合せがやってきた。大きく切った刺身は漁師料理のようだ。

「あら煮をお願いします」と頼むと、時間がかかりますとのこと。ガス台は10人ほどの宴会客の料理で忙しい。大きなメンチカツ(?)が運ばれていく。次は海老が揚げられる番のようだ。料理人は主人一人、ガス台も限られているとなれば止むを得ない。鯛の塩焼きなら空いたロースターが使える。幕間つなぎにカウンター上のタッパーに入った穴子の骨煎餅をもらった。

女将さんも八面六臂の大活躍。「日本酒を下さい」手が空く一瞬を見逃さず声をかける。「お冷もらえますか?」今度はちょっと遠慮しながら頼む。骨煎餅はいい酒の肴になった。

立派な兜焼きが出て来た。ここの料理は何でも豪快だ。味も悪くない。さて次は何を頼もうか。「メニューくれる?」と言ったところで女将さんと目を合わせ「メニューはなかったんだよね」と苦笑い。「何か汁物ある?」「ありません」、「ご飯とか麺はないの?」「もう出ちゃいました」となって困り果てた。まだ8時過ぎとはいえ、大量の刺身単品は食べたくない。焼き物、煮物は時間がかかる。お開きにするしかないようだ。

勘定をしてもらう。穴子の骨煎餅はサービスにしてくれた。美味しくて、気さくな店だけど、3~4人で来た方が良いかもしれない。

三崎よし田
東京都渋谷区宇田川町35-4-1
03-3464-2010

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2010年03月03日

[招福楼](丸ビル)

お茶の心を基にする料理


「床の間を背にする席が上座でございます」と言われるまでもなく、景色を楽しめる壁際に客を座らせるべきだと思った。しかし、与えられた座敷からは向かいのビルが見えるだけ。夜景ならともかく、昼間の景色は楽しくない。窓を背にした自分が客のようだ。明治元年(1968年)創業の招福楼本店を知る人には勝手が違うだろう。

しその茶からスタートした。漆の盃に日本酒を注いで貰う。酒を飲まない部下の分と合わせて2杯飲んだ。ウニの料理、いわしの寿司と続く。日本酒が欲しいがビールで我慢した。

椀物の中にはふぐの白子が入っていてちょっとびっくり。店の女性に思わず聞いてしまった。お造りは赤貝とひらめの昆布締め。さすがにいい素材を使っている。

料理を運ぶ女性は3人目でようやく店の格に相応しくなった。店の造りや料理より、店の格を決めるのはやはり人である。接待の席で目立つのを避けるためか、料理の説明はそこそこに立ち去ろうとするので呼び止めた。まながつおの焼き物、八寸も上品。客は梅の花の香りを気に入った。

白魚の卵とじにはふき、酢の物はうど。「今の季節は冬の終わりの野菜、旬の野菜、初春の野菜と、季節をまたがった野菜が食べられます」と説明されれば得をした気分になる。四季を味わうのが日本料理の真髄と思える。

煮物の魚が分からない。すぐに言い当てる人がいたら尊敬してしまう。再び呼び止めると「おこぜです」と言う。高級食材を存分に使える料理人は幸せだ。もっとも、家賃や人件費にいくら消えるか考えると23,100円のうち材料費に使えるのは限られるかもしれない。

「もう腹一杯」と思ってもデザートがある。緑豆の餡が入った饅頭は一口食べて部下にあげた。日本酒のお返しだ。これで終わりと思ったらデコポンが出て来た。ゼリー状になってとてもいい出来だった。最後に抹茶を飲んでお開きになった。

濡れた杉の箸、饅頭には不揃いの黒文字と楊枝、随所に茶懐石の作法が取り入れられている。本店に行きたくなった。地下に下りて駅に向う途中で千疋屋を見つけた。デコポンの値段を見て部下と2人で感心した。こんなんじゃ、本店に行くのは恥ずかしいかな。


招福楼 東京店
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング36F
03-3240-0003
http://www.shofukuro.jp/

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2010年02月25日

[割烹 とよだ](日本橋三越前)

老舗のおもてなし


とよだのホームページを開くと「文久三年から受け継がれてきたおもてなしの心」が最初に目に飛び込んで来る。西暦で何年かは書いていないので調べてみると1863年。新撰組が誕生した年で、坂本龍馬は前年に勝海舟の門下に入っている。なんとも物騒な世の中に創業したものである。さておもてなしの真髄やいかに。

映画「蒲田行進曲」のクライマックスを思い出させるような急な階段を上り、3階の部屋に入った。7人ではもったいないようなゆったりとした空間。壁の華麗な書は万葉集の2首。何を書いているかさっぱり分からない。仲居さんに聞くと、現代かなで書かれた紙片を持って来てくれた。

料理専用のリフトがついているのだろうか。仲居さんが急な階段を調理場と往復するのだろうか。長旅をしてきた料理の器たちは統制を乱していた。「これなーに?」と真ん中の料理を指さすと、仲居さんが困った顔をする。ど忘れしたのだろう。「あー、なまことこのわただね」と銀髪が先に分かった。これは美味しかった。さすがとよだである。

お造りも悪くない。刺身が食べられない人の代わりの料理も立派だった。ギンダラの西京焼きはもちろん自家製。5,000円の料理は、日本酒が欲しくなるものばかり。昼食なのが辛いやら、もったいないやら。

牡蠣が乗った大根も美味しかった。「1時までには終らせたい」という銀髪の要請を受けて、料理はテンポ良く運ばれてくる。メインが何かワクワクして待っていると海老しんじょだった。小さな料理なのでちょっと拍子抜けした。

しかし、この海老しんじょが頗る美味い。帰ってネットで調べてみると、とよだの名物料理とも言えるものだった。美味いはずだ。材料にもこだわっているに違いない。同時に出された炊き込みごはんと味噌汁でお腹一杯になった。

デザートの器も受け皿の真ん中に座っていなかった。美味しければいいじゃないかと思いながら、やっぱりおもてなしの心が気になった。

割烹 とよだ
東京都中央区日本橋室町1-12-3
03-3241-1025
http://www.n-toyoda.com

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2010年02月08日

[博多 ふじ本](福岡)

卓袱料理もある割烹


部下がタクシーの運転手さんに道順を教えている。地図を手に一生懸命説明したのに店名を言ったら「ああ、ふじ本ね」と素っ気無い。ベテランの運転手にとって老舗の名店は名前を告げるだけで充分だった。

一番乗りでまだ店内は寒かった。それでも日本人ならまずビール。喉を潤した後は、熱燗にした。お通しの大根が温かくて美味しい。すじで煮込んで味もよく染みている。続いて赤なまこ。「オレ、胡麻さば」地元のAさんに銀髪と部下は追従した。醤油と合わせていないのがふじ本流だ。

「藤本さん?」と聞くとカウンターの料理人と店の女性が同時に「ハイ!」と言う。店の人たちを交えて冗談合戦していて、目の前の藤本さんが「大将が…」と言うのが気になった。壁に掛けられた感謝状を見て「庄之助さんのこと?」と聞くと頷く。「まだ健在なの?」と続けるまでもなく、奥の調理場から大将が出て来た。さらに背筋がピッとしている女将さんが登場。店には初代夫婦、2代目夫婦の4人の藤本さんがいた。

「タイラギのひもはある?」Aさんが聞くと、「ありますよ!」と喜ばせる。有明海の代表的な海の幸だったタイラギとは平貝のこと。普通は貝柱のみを使うが、福岡ではひもが好まれるそうだ。銀髪がパクパク食べるとAさんが嬉しそうにする。部下も「美味しいですね」と言うので「もっと食べるか?」と聞くと慌てて首を振った。まったく正直な奴だ。

「えびハトシって何ですか?」銀髪が席につくなり聞いた質問を部下が今頃になって繰り返す。まったく他人の話を聞いていないマイペースの男だ。2代目が再度説明してくれた。長崎で修行した店で覚えた卓袱料理の代表的なものらしい。中国語で蝦吐司、蝦和麺包などと書く。ハは海老のこと、トシはトーストから来ているそうだ。なかなか美味しく、妙に懐かしい味だった。

Aさんがしきりに大女将の着物を褒めるので「顔を褒めなきゃダメじゃないですか」と茶化した。実際、頬紅を塗ったように血色が良く、つやつやしている。80を超えても大将、大女将が元気な店は不況知らずに見える。中州ふじ本は弟がやっているそうだ。

2軒目で「博多雑煮は食べましたか?」と聞かれた。「特大の太刀魚や鰯に惹かれて食べ損なった」と言うと憐れむような顔をする。ふじ本の名物を食べ損なったことが悔やまれた。

博多 ふじ本
福岡県福岡市博多区下川端町10-11
092-271-1968

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2010年01月29日

[よしおか](福岡)

随一のあら料理


扉を開け、店に入った瞬間に感じるなんとも言えない空気。どこにでもある割烹料理屋の造りだが、いい店だと確信した。常連さんと座った席はカウンターのど真ん中。目の前のネタケースに20kgを超えると思われるあらがオーラを発していた。

「剥製じゃないですよね」銀髪の冗談に主人は素直に反応してくれた。創業してから26年、季節によって大きさは異なるが年中あらを出しているそうだ。「仕入れが出来ないこともあるでしょう?」と聞くと「あらがなければ休みます」と胸を張る。

お通し、ふぐ刺し

「歯応えがあるように厚く切りました」と出て来たてっさ。確かに話しながら食べることは不可能。喉を通り過ぎるまで会話は止まる。

お造り、塩焼き

あら、さば、大トロのお造りは軽く炙ってある。「少し火を通した方が美味しいんですよね」と話しかけると主人も満足気だ。「あらは塩焼きが一番美味しいんですよ」と常連さんに講釈をたれているところに、塩焼きがやってきた。銀髪の話を予想していたかのようだ。

ふぐの唐揚げ、野菜

料理はお任せで、少しずつ出してくれる。ガラスケース越しに主人が度々我々の皿を見る。次の料理を出すタイミングをはかっているのだ。男っぽい顔つきの主人だが、気配りは行き届いている。店に入った瞬間に感じた空気はこんなところから発せられていたに違いない。

あら汁

「唇は食べられるんですか?」あらの大きな顔を指さした。「もちろんです」と作ってくれたのがあら汁。「食べたいところを言ってもらった方がいいんですよ」と優しい。プルンとしたコラーゲンを食べると、男だって肌がツルツルになりそうだ。

天豆、漬物、おにぎり

常連さんが女将さんに囁くので何が出て来るのかと思ったら、おにぎりだった。具がたっぷりのおにぎりがとても美味しかった。さすが常連さん、よくご存知だ。

あらの奥深さをもっともっと教えてもらうために、もう一度行きたいよしおかであった。

板前割烹よしおか
福岡県福岡市博多区中洲2-7-29
092-291-5246

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2010年01月26日

[江島]⑤(銀座)

今シーズン初めての松葉ガニ


お客様のHさんが煙草に続いてデジタルカメラをテーブルに置いた。銀髪よりかなり年上に見えるのにブログを書いていると言うので驚いた。いつもは接待の席でカメラを出すのに気を遣う銀髪も今日は遠慮がいらないのを喜んだ。

白子2種

「まずビール」と誰もが典型的な日本人なのにHさんは最初から日本酒を飲むと言う。酒のメニューを見て「アルテンはダメだ!」とまた驚かせてくれる。アルテンとは醸造用アルコールが添加されている日本酒のこと。「純米でなければ日本酒とは言えない」と銀髪と同意見。同好の志と知って喜んだ。

刺身(ひらめ、しまあじ)

紹興酒も40年物、50年物などを多く保有しているそうだ。中国に赴き紹興酒の工場見学に行ったとは恐れ入る。日本酒古酒のコレクションもあると言う。Hさんと銀髪の酒談義に他の人はついて来れない。途中から銀髪も聞き役に専念した。

「久し振りの松葉ガニだ」とさすがのHさんも嬉しそうだ。銀髪にとっても約1年振りの松葉ガニである。Hさんは蟹の足についているタグを持ち帰ると言う。食べ始めるとその勢いにまたまた驚かされた。銀髪は遠慮しながら何とか自分の食べる分を確保した。もちろん半々とはいかない。甲羅酒は全部譲った。Hさんはゴクゴクと美味そうに飲み干した。

「この皿を下げてよろしいですか?」と店の女性が言うのが聞こえた。見ると向こうの皿にヒラメのエンガワが残っている。「こっちに持って来て」と言ってHさんと二人で分けた。せっかくの美味しい料理を残す方が恥ずかしいと同意してくれたようだ。実に愉快だ。

「お食事はどうされますか?」と店の女性が聞く。「どうせだから蟹尽くしにしましょう」と蟹寿司を選んだ銀髪にHさんも追随した。北海道産のズワイガニは松葉ガニより味は落ちるがそれなりに美味しい。だしになってしまった椀の中の蟹もむさぼるHさん。立派!

数年前までは自分がノーマルだと思っていた。今では自分が変わり者だと思わざるを得ない。銀髪よりも上を行く変わり者に会えたのは収穫だった。銀髪よりも人生を楽しんでいるHさんがちょっと妬ましくもあった。

江島
東京都 中央区 銀座 3-5-4 十字屋ビル4F(松屋デパート向かい)
TEL:03-3535-3131
http://www.ginza-ejima.com/

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2010年01月19日

[佐賀 雑穀](渋谷)

佐賀の珍味と旬の素材を使った料理


東京では珍しい佐賀料理の店。開業して40年以上というが、板前は店の年齢より若そうだ。客の応対を担当する女性に「夫婦ですか?」と自信なげに聞くと兄弟と言う。やっぱり、「お姉ちゃんですね」と銀髪も合点がいった。先代が二人の親ということになる。

「これは麩ですか?」板前の弟に聞いたら「鶏のミートローフです」ときた。日本料理=麩と結びつけたのは浅はかだった。老眼による勘違いは時々白い目で見られる。

佐賀県の特産物であるがんづけ、むつごろう、わらすぼなどを連れはあまり喜ばなかった。丸天は喜んで食べたので、魚ロッケや竹輪、はんぺんなどを頼んだ方が良かったようだ。佐賀県産日本酒の金波や東一の肴にして殆どを銀髪がたいらげた。

「お嫌いでなかったら生のナガスクジラがありますよ」とお姉さんが言う。南氷洋産と書いてあったので冷凍だと思っていた。生の鯨と聞けば断れない。連れも最初は恐る恐る、次からは喜んで箸を出した。

ガラガラだった店内もかなり埋ってきた。そうなると姉弟二人では手が足りなくなる。お姉さんは弟に指図するだけでなく、時折包丁を握る。その包丁捌きを感心して見詰めた。姉と弟の力関係は年齢だけではないのが分かる。
本日の煮物は大根。かなり大きいのでそれなりに腹が膨れた。雑穀まで行き着けるかな?

「もうすぐ煮魚も来るんだよね」と言うと、弟の顔が少し変化した。注文をこなしきれなくなっている。時計を気にしていた右隣に座ったカップルが席を立った。ホウボウが煮えるまでそれほど時間はかからなかったが、雑穀の料理を頼む気は失せた。勘定を頼むとぜんざいが出て来た。

佐賀料理といっても高級な佐賀牛や呼子のいかなどは置いていない。東京生まれ、東京育ちの姉弟の店は、佐賀名物というよりも旬の料理がお奨めのようだ。弟と話をするには忙しすぎたのがちょっと残念だった。


佐賀 雑穀
東京都渋谷区宇多川町31-4 しのだビル7F
03-3464-8416
http://www.zakkoku.co.jp

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2010年01月15日

[和香](神戸)

アットホームに京料理


「どうやって見つけたんですか?」と部下に聞いたら「ヤフーで調べた」と答える。数年前まではインターネットとは無縁の60代だったが、今は自由に使いこなしている。見知らぬ土地に来ても、店探しに苦労することはない。

「ゆったりと使ってください」主人は6人掛けのカウンターを我々4人に占拠させてくれた。「どうせ今日は貸切りでしょう」と意地悪を言う部下にも優しい笑顔を返す。「お奨めは何?」と聞いたら「京都で修行しましたので…」と言う。日本料理全般何でもござれのようだ。

付出しが3品。日本酒に合いそうな肴と思うものの、他の人たちの意向は焼酎。酒のメニューを見ると3分の2が焼酎で占められている。京料理に焼酎では可哀想だと思うが、自己主張は慎んだ。

「少しずつ盛合せにしてくれる?」面倒な要求にも主人は快諾する。おこぜ、自家製からすみ、寒ぶりのかま、よこわ(メジマグロ)を切ってくれた。地元瀬戸内産のおこぜが特にいい。

「去年来た時に食べたすっぽんが絶品ですよ」と部下が奨める。「浜名湖産?大分産?」と聞くと近場の岡山産とのこと。天然物を使うこともあるというが、この日は養殖物。小鍋の底に卵が沈んでいる。2人は黒色のゼラチン部分を残した。おじさんたちは食べ物に冒険しない。それにしても赤坂の「たん良」が閉店したのは残念だ。

ふぐ白子の刺身は一皿のみ頼んだ。鮮度が良くて癖がまったくない。一人で食べるつもりだったが、みんなにも味わってもらうことにした。今度はゼラチンを残した二人が喜んで食べた。部下はあまり嬉しそうな顔をしていない。まったく難しいものだ。なまこは全員喜んで食べた。定番のものは苦にしない。

部下の予想は外れた。奥のテーブル席は2つとも埋り、カウンターも我々の独占が崩れた。震災にも妨げられることなく常連客に支えられて20余年。〆のうどん作りに忙しく働く主人にカウンターの常連客が「そんな安いもの一生懸命作らなくてもいいよ」と茶化す。それを笑顔で軽く受け流す優しい主人。出来上がったうどんを女将が運んで行った。

夫唱婦随のアットホームな割烹。初めて来た銀髪にも優しかった。

和香
兵庫県神戸市中央区北長狭通1-20-12 地蔵ビル2階
078-332-0447

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2010年01月14日

[青山](大宮)

大宮の老舗割烹


「もっとわかり易い場所にしろよ、ボケ!」幹事役のFはインターネットで選んだ店への道がよく分からず、ボスになじられた。歩道橋などで囲まれた大きな駅は平面的な地図では迷うことが多い。拡大した地図を用意していた銀髪が道案内をすることになった。

「イヤー、迷っちゃったよ」招待客がパラ、パラと揃ってきた。散々携帯で道を聞いてきた客も無事辿りついた。その客を迎えに出て、行き違いになったFを皆で待つことになった。Fは戻って来てまた怒られた。

「ここ、来たことあるよ」と一番迷った客が随分昔のことだと言い訳する。料理を運ぶ女性に聞くと大宮では老舗といってもいいらしい。ところが「開店はいつ?」の質問には「かなり前」としか言えなかった。

焼き魚の皿が妙に殺風景だ。他の人たちと比べるとレモンが乗っていないことに気がついた。もともと焼き魚や唐揚げにレモンをつけるのは好きではないので丁度いいと思ったが、隣席の皿にも乗っていない。店の女性に言うと慌てて銀髪の分まで持って来てくれた。文句をつけた手前、銀髪も焼き魚にレモンを搾った。

ふぐ刺しの写真は撮り損なった。メインは蟹のしゃぶしゃぶである。Fは欲張り過ぎだ。8000円のコースにふぐもズワイガニも入れるのには無理がある。そもそも8人の宴会で料理を楽しもうというのが間違っている。仕事の話、遊びの話、硬軟取り混ぜての会話に数本の焼酎ボトルで油をさせば何を食べても一緒だ。

店主が来たので「青山さん?」と声をかけた。ところが本名は斉藤さん。割烹に相応しい名前をつけたと言う。字画の多い名前は固すぎると思ったのだろう。和食店では「さいとう」とひらがなだけか「さい藤」など漢字かな混じりにするところが多い。しかし堂々と斉藤にしてもいいような気もする。「埼玉」に比べると「さいたま」はちょっと弱弱しいと不満な市民もいるはずだ。

勘定をしてコートと鞄を受け取った。カウンターには常連客らしい3人が板前と談笑しながら食べている。「青山」の味はカウンターで楽しむ方が良さそうに見えた。

割烹 青山
埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-181
048-647-0860

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2010年01月07日

[左京 ひがしやま](銀座)

銀座で京都


銀座は1丁目から8丁目まであるが、一般的に銀座といえば北は電通通り、南は中央通りの周辺をイメージする。その区域を外れたところには隠れ家的で、銀座としてはリーズナブルな店が多い。左京ひがしやまもそんな店の一つである。

地下の店に誘う階段から打ち水がしてあり、一歩降りるごとに京都に近くなった。店内はゆったりとして落ち着いている。我々はカウンターの一番奥に案内された。がらんとした店内のカウンターの隅に我々と先客2人が並んで座った。

料理の説明をしてすぐに持ち場に戻る料理人の気を引くのは難しい。手を休めず働く彼を振り向かせるのはさらに難しい。次に料理を運んで来たときに素材の産地を尋ねたら、入り口近くの板場にいる料理人に聞きに行った。常連さんが「あちらが主人ですよ」と教えてくれたので驚いた。てっきり忙しく働いている方が主人と思っていた。

白味噌の椀物が出て来た。初めて豊橋の妻の実家に食事に行ったときに、白味噌の味噌汁を出されて驚いた記憶が甦ってきた。わざわざ銀髪のために買って来たと言うので、お代わりを断ることが出来なかった。銀髪も義理の両親たちも合わせ味噌を白味噌と思い込んでいたのだ。

京風料理が次々と運ばれてくる。常連さんが主人と言った料理人を観察する。手前の料理人とは対照的なゆったりとした動き。そこで思い出した。ホームページには、左京ひがしやまは青山のフォンダ デ ラ マドゥルガーダも入っているアトワンズグループの一つとして紹介されていた。オーナーではなく店長だとすると、彼の身のこなしも納得できる。

「阿部さん、卵はないの?」常連さんが店長に聞く。「探してきます」と明るい返事。かくして特別に我々は玉子かけごはんを食べることができた。


手が空いたのか阿部さんが相手をしてくれた。「さっきのカラスミはどこの?」と聞くと「自家製です」と答える。「自分のところで真空パックしているの?」ビニールパックを破るのを見ていた銀髪が疑問を呈する。「築地場内に機械があって、お金を出してパックしてもらうんです」と言う。これは勉強になった。築地は色んな機能を持っているようだ。

阿部さんが持ち場に戻ったので今度は近くにいる料理人に声をかけて名前を聞いた。本当によく働くのに感心した。無表情に見えたが「鶴田さん頑張ってね」と言うとなかなかいい笑顔を見せた。阿部さんも頑張ってね。


左京 ひがしやま
東京都中央区銀座3-7-2 オーク銀座B1
03-3535-3577

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2009年12月29日

[鮎正]④(新橋)

落ち着ける冬の鮎正


「カウンターがいいんだけどなー」と渋る銀髪に「近くなんだから、来たら?」と気軽に誘う。まるで電話の向こうから新橋駅にいる我々が見えるようだ。「そこまで言われたら仕方ない。行くよ」と答えた。場所が変わり新築した鮎正に行くのは初めてだ。

店は明るくなり、右側にあった小上がりがテーブル席になっているが、何となく懐かしくなるから不思議だ。カウンターの配置やキッチンの什器が一緒ということもあるが、主人、そのお姉さんを始め、スタッフの笑顔が変わらないのが一番の要因のようだ。

これまで来た3回はいつも鮎だった。メニューを一瞥しただけで「何を食べたらいいんですか?」とカウンターの向こうの主人に聞いた。「お任せ4品でどうですか?」と言う。断る理由はない。

先付けに続いてお造り(めじまぐろ、かわはぎ、ほうぼう、すみいか)4点盛り。日本酒はもちろん島根の純米酒。お代わりを頼もうとすると、主人がメニューに載ってない安いものを奨めてくれた。「酒で儲けようとは思っていませんから」とベテランの女性がフォローする。

全国的に名高い島根県浜田のカレイの一夜干。冬の鮎正名物の一つである。まとめ買いをして大きいものだけを仕入れ、店で干しなおしてから客に出すそうだ。浜田ではアジ、ノドグロ、カレイなどの最高のものに「どんちっち」というブランド名を冠す。主人がカウンターから出て来て魚談義が始まった。

湯葉巻き揚げ、椀物など、料理の説明を受ける。相変わらず凝っていて妥協を許さない。「弟も昔は痩せていて可愛かったのよ」と今度はお姉さんが我々の相手をしてくれる。鮎のシーズンは満員の客で大忙しだが、冬の鮎正は時間がゆっくり流れるようで楽しい。

もっと色んなものを食べたいが、先付けと4品でかなり腹は膨らんだ。迷いに迷った末に酒のつまみに適当な赤なまこと鯖のへしこを頼んだ。へしこは最初は生のままで、次に少し炙ってもらった。ノルウェー産の鯖を使ったへしこが一般的になってしまったが、鮎正のものは特注で長崎産の鯖で作ってもらっているそうだ。

カウンターには常連さんが二人と一人でのんびり飲んでいる。我々が終っても予約客は登場しない。鮎の時期とそれ以外とでは鮎正の雰囲気はまったく違う。それでも主人の料理に対するこだわり、スタッフの心のこもった接客は変わらない。居心地満点の冬の鮎正だった。

鮎正
東京都港区新橋4-21-14
03-3431-7448

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2009年12月28日

[和味 りん]③(新宿)

直送で鮮


今年も初めて行った店が300軒ほどある。しかし自らの意思で複数回行った店は僅かしかない。銀座の座屋、三軒茶屋のどぶろく一心、そして和味りんなど。この3店に共通するキーワードは産地直送である。

クリスマス特別料金で稼ごうとするフレンチやイタリアンを避ける懸命な客たちで店は混みあっていた。「今日は暇だと思ったんですがね」と店主が苦笑いする。「俺はキリスト教じゃないからね」と銀髪も笑う。サンタクロースを待つ齢ではなく、サンタクロースになる必要もなくなった。

いつものことではあるけれど、今回はいつも以上にメニューを見る必要はなかった。目の前を通り過ぎる料理、まな板を上り下りする魚たち、それらを見れば頼むものは決まってくる。見えない素材はお奨めに従う。「いい、鮟鱇が入ってますよ。肝はどうですか?」「いいよ、それもらおうか」

「あのマグロは美味そうだね。寒ブリもまぜてもらおうか」注文どおりの刺身盛合せがやってきた。思ったとおり凄まじく美味い。一緒に乗ってきたサワラの焼き霜、肝を抱いたカワハギもいい。脂が乗った魚ばかりでわさびが足りない

この日のハイライトはキンキ。店主が丸々と太った10匹ぐらいのキンキをまな板に乗せた。見た目の良さそうなものを数匹選び、次に両手で重さを比べながら選別している。銀髪たちにいいものを食べさせようという気持ちが伝わってきて嬉しい。

身が厚いキンキは遠火で時間をかけて焼かれる。待っている間に自家製のからすみを出してくれた。「もう少し熟成した方が美味しいんですが」と控えめだ。

立派なキンキの塩焼きがやってきた。「高級魚だよね」ちょっと財布の心配をすると「根室から直送してますから他より安く出せるんですよ」と安心させてくれる。りんで出されたものは大間のマグロ、氷見のブリ、茨城のアンコウ、岡山のサワラなどブランド化したものではない。しかし懇意にしている全国の業者から高品質のものを直送してもらっているからどれも美味い。直送に加え、ブランド料が上乗せされていないのでリーズナブルに食べられる。

ブランド服飾品には無関心の銀髪だが、食べ物にはブランド志向を消せないでいた。そろそろ自分の舌を信じてもいいのかもしれない。りんが教えてくれた。


和味 りん
東京都新宿区新宿5-17-6 地下1階
03-3205-7252
http://www.wami-rin.com


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2009年12月21日

[蛍屋](金沢)

古都、金沢


金沢には10回以上来たと思う。いつも仕事と会食だけで観光などしたことがない。タクシーを降りて呆然とした。京都祇園を思わせる街並みに灯りが点々と続く。暗闇が早く訪れる冬で良かった。初めて見る光景はことのほか美しい。

我々の他は誰も歩いていない。早い時間だったためか三味線や太鼓の音は聞こえなかった。蛍屋に上がると我々のために広い部屋が用意されていた。「芸妓さんはアレンジしているんだろうな」部下に意地悪を言うと、ゆがんだ笑顔を見せて首を振った。

料亭らしく、どの料理も美しい。居酒屋などでも食べられるセイコ蟹(ズワイガニの雌)も、ここでは美しく盛られて幸せそうだ。北陸の海の幸、加賀野菜、加賀の酒、ご機嫌である。

「アルバイトやろ?」地元の人が店の女性に聞くと「社員です」ときっぱり。銀髪も少し驚いたが蛍屋が浅田屋の系列と知って納得。1659年創業という浅田屋は金沢市内を中心に旅館、ホテル、料亭、レストラン、居酒屋などを経営する大企業。赤坂にも関連の店がある。

「芸妓さんを頼んだらいくらかかるの?」高額のイメージがあるので経験がない人にとっては値段を聞くのも憚られる。8人で行けばお料理10品 + 飲物 + 芸妓2名(120分)で一人19,000円というコースもあり、人数、内容については要相談。意外と気軽に三味線・太鼓で本格的なお茶屋遊びが体験できそうだ。

蟹、寒ぶり、伊勢海老、河豚などなど。お腹一杯食べて飲んで、一人13,000円程度だった。最後のデザートも立派だ。東京と比べるとどこに行っても割安に感じてしまう。

「さすが小京都と言われるだけありますね」とタクシーの運転手さんに言ったら不満そう。誇り高き金沢市民によると、もはや金沢は小京都と言わないそうだ。ズワイガニも加能蟹と名付けて独自性を出している。昔から加賀友禅、金箔など金沢の名産品も多いが何故か影が薄い。ひがし茶屋街を見て、金沢を応援したくなった。


蛍屋
石川県金沢市東山1-13-24
076-251-8585
http://www.asadaya.co.jp/hotaruya/

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2009年12月07日

[銀座 座屋]⑥(銀座)

師走の座屋


最初に来たのが7月、店主の岡添さんを気に入って毎月来ると約束して今回が6回目。ぐるなびの予約状況を見ると個室はかなり前から埋ってしまうようだ。「今日は銀髪さんのブログを見て初めて来られる方がいますよ」と言われた。「銀髪さんが居ると知ったら喜びますよ」と続ける。喜んでくれるか、がっかりするのか。

太陽に見られながら歩いてビールが上手かった7月。座屋最初のメニューはところてんだった。今は茶碗蒸しが優しく温かい。連日の飲み会で傷んだ胃も毛蟹の椀物が癒やしてくれた。「なんだ、居たのか!」の声に振り向いた。ブログのファンは高校の同級生だった。がっかりしたのは仲人役になるはずだった岡添さんみたいだ。

「写真は撮らないんですか?」と言われた時にはかつおが一切れなくなっていた。7月から欠かさず登場する座屋名物のかつおの塩たたきは焼き手が若手に交代した。座屋も少しずつ進化している。

「めひかり?」炭火の上でプチプチと脂が弾ける魚に目をやった。八寸の準備が進んでいる。うつぼ、真珠貝、猪など珍しい素材が並ぶ。うつぼは高知の「こうじ家」、銀座の「祢保希」、新橋の「そのまんま」で食べたことがある。見かけによらず美味しい魚である。座屋ではアラカルトでいつでも食べられるようだ。

蒸し野菜は上に乗せられた生ハムから塩分をもらう。高知から直送される素材が自慢の座屋だが、岡添さんは必ず一品は外国の素材で遊ぶ。

先月に続いてメインは小鍋。鮟肝は一つはそのまま、もう一つは鍋に溶いて食べる。このあたりで腹具合に個人差が出る。しかし、満腹と言いながら、次を食べない人はいない。

誰もが好きな玉子かけご飯。食べ方には一家言がある。岡添さんも無理強いしない。余裕で食べていた銀髪も、デザートを食べてさすがに満腹になった。

個室から友人たちの大きな声と、笑い声が聞こえる。挨拶しようかと思ったが邪魔をしないようにそっと席を立った。カウンターには美女を含むカップルが3組残った。男二人の我々が、一番わびしく思えた。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090


師走の献立
[先付]雲子と雲丹の茶碗蒸し
[御椀]毛蟹と聖護院大根薄葛仕立て
[お造里]かつお、いし鯛
[八寸]めひかり、海鼠酢、うつぼ唐揚げ、真珠貝掻揚げ、烏賊寿司、からすみ大根、猪八丁味噌
[蒸物]野菜と生ハムの蒸し物、蕪の擂り流し
[炭焼]寒鰤の照焼き
[小鍋]鮟鱇鍋
[土鍋御飯]四万十川源流産「ヒノヒカリ」、土佐ジローの卵かけごはん
[御数]漬物
[甘味]蜜柑いろいろ

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2009年11月29日

[なだ万](日本橋三越)

高級店でおばさま達に混じってランチ


創業は天保元年(1830年)、ホテルニューオータニの庭園内にあるなだ万本店山茶花荘をはじめ国内25店舗、海外8店舗を擁する老舗料理屋。日本橋店は日本橋三越本店新館10階にある。ビジネス客は部屋代が別途必要な個室に消え、我々はマダム達が食事をする席から少し離れたところに案内された。

「お嫌いなものはありますか?」一流店はコースではあってもメニューを入れ替えてくれるのが有難い。我々7人の中には鶏肉が駄目な人、刺身が駄目な人が居る。2人が申告した後に銀髪も手を上げた。「鶏肉も刺身も駄目なんです」と言うとみんながビックリする。店員が消えたところで「ちょっと遊んでみようと思ってね」と笑った。

落花生豆腐

3,000円のランチコースがスタートした。広いフロアでは店員は上座、下座は区別しないようだ。もともとそんな考えすらないのかもしれない。扱いは大衆食堂と変わらない。ビールも小鉢もアトランダムに配られた。

御造り、サラダ

さてお待ちかねの御造りが5人に配された。銀髪を含む2人には何が来るかワクワクしていたが、サラダを見てがっかりした。なんだか損した気分だ。上に乗っているのがカニ脚なので原価は同じぐらいだと思うと気が収まった。それでも手抜きに見える。

窓を背に座ったのでフロア全体が見渡せて面白い。窓際のカウンター席の老人に生ビールが運ばれていく。グラスの半分以上を泡が占めているのを見て、老人の反応が気になった。運んだ方も、受け取った方も実に自然だ。「泡を多めに注いで欲しい」と頼んだのだろうか。

栗ごはん、デザート

他の人の栗ご飯には細かい鶏肉が混ざっているが銀髪のご飯にはかけらもない。店員を呼んで聞くと鶏肉嫌いの人のために別途ご飯を炊いてくれたとのこと。他の人たちのご飯は大釜で炊かれたもの。サラダの分が帳消しになった気分である。さすがなだ万だ。

実験は意外と面白かった。しかし、ちょっと下品な行為と反省した。銀髪もいい歳なんだから、カウンターの老人のように品良く振る舞うべきかもしれない。

なだ万日本橋店
東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店新館10階
03-6214-2701
http://www.nadaman.co.jp

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2009年11月19日

[和味 りん]②(新宿)

旬の魚介類を安く美味しく

今年7月、初めて訪れた時は殆ど飛込みだった。家に戻り、りんのホームページを開いて失敗したと思ったものだ。板長が全国を歩いて信頼できる業者を探し出し、りんの食材は産地から直送されてくる。何が入荷されたのか、板長日記でチェックして行くべきだった。今回は狙いを定めて行った。

前回に比べて店は賑やかだった。天候のせいか客はまばらだが、カウンターにいるカップルの声がやけに大きい。その二人に板長の前の一等席は占拠されていた。我々は前回と同じ若手料理人の前に。2度目になると彼も親しげに接してくれて心地よかった。

割烹らしく付け出しは立派なものが出て来る。もみじだけ残して全て食べ尽くした。刺身は赤イカ、しめ鯖、鯛、金目、さわらの5種類。わさび醤油、ポン酢を用意してくれたが、塩もお願いした。さわらの焼き霜やいかは塩が美味い。松輪の鯖は脂の乗りが抜群だった。

お目当ては板長日記に下関で競り落として空輸されてきたとあった渡り蟹。昔は東京で蟹と言えば渡り蟹のことだったらしいが、今はスパゲティや中華料理以外で食べることは殆どない。ズワイガニ、タラバガニ、毛ガニなどに押されてしまった感もあるが、漁獲高も減っている。スーパーなどで売られている小型の蟹は中国産の冷凍物。国内産の活き渡り蟹をシンプルに蒸すか茹でて食べさせる店は殆どなくなってしまった。

味噌汁に入れる安価な蟹と思っている人も多いだろうが、上物は一杯一万円近くもする高級品である。これを産地直送ならではの価格でりんは出してくれる。銀髪にとっても約3年前に広島のきっ川で食べて以来の渡り蟹だった。卵もいいが柔らかくて品のいい身が堪らない。

最後に鯛めしと蟹雑炊を一つずつ頼んで分け合った。冷凍技術や流通網の発達は痛し痒しである。東京では渡り蟹を食べることがなくなった。一方ではりんのように地方の市場で早朝に競り落としたものを空輸して、その日の夜に客に出すことも可能になった。文明の利器に振り回されるか、利用するかは使う人の力量次第。何も料理屋に限った話ではない。

今日も板長日記が銀髪を誘惑する。


和味 りん
東京都新宿区新宿5-17-6 中田ビルB1
03-3205-7252
http://wami-rin.com

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2009年11月11日

[座屋]⑤(銀座)

霜月の座屋


「昭和通りに面した平城苑本館の裏手のビルですからね」この説明で間違えることはないだろうと思っていたら一人迷った。階段を駆け上がり迎えに行くと、1本裏の道をウロウロしていた。柳通り沿いと言えばよかったかもしれない。

何はともあれ3人全員が揃った。「岡添さん、それじゃあお願いします」銀髪の声で霜月のコースがスタートした。7月から毎月来ているので既に5回目。銀髪としては異例の頻度だ。座屋にとって毎回違う人を連れて来るいい宣伝マンである。

座屋では毎回初めての食材に出会えるのも嬉しい。今日の初対面は足赤海老。調べてみると関東ではクルマエビの一つとして流通しているが別種。関西ではアシアカと呼ばれ、クルマエビに次ぐ高級海老とのこと。正式名がクマエビという通り、クルマエビよりずんぐりしていて、食べ応えがある。

かつおはぼちぼち終りかなと心配して来たがちゃんとあった。食通のMさんがこれまでで一番美味しいかつおと喜ぶので銀髪まで嬉しくなる。料理人はまさに舞台役者と同じ。観客のはじける笑顔を見れば、気持ちも高揚するだろう。

殆ど酒を飲まない二人は食べるのが早い。隣で日本酒を飲んでいる銀髪が眼に入らないかのように、二人で盛り上がっている。まあ、勝手に楽しんでくれればいい。
銀髪は岡添さんに相手してもらう。小さな器を覗くと牡蠣がいくつも入っている。「こんな小さな牡蠣を獲っていいの?」と茶化すと、これでも大人の牡蠣だと言う。小粒でも濃い味の牡蠣だった。

焼き魚に添えられた塩は高知の佐賀塩。解説を聞き終わって二人の皿を見て驚いた。骨などが皿の端にわずかに残っているだけ。美味しく料理されて、殆ど残さず食べてもらったら、魚もしっかり成仏できるだろう。

さあ、最後は卵かけごはんと思ったら、今月は趣向を変えると言う。和牛ロースのすき焼きに歓声が上がる。「ちょうどすき焼きが食べたかったんですよ」とMさんも上手だ。さつまいものデザートが終ったところで「このコースは1万円なんですよ」と種明かしをした。「えーッ!」と驚いてくれるので銀髪も鼻が天井まで届きそうになる。「1万円もいただいてます」と岡添さんが大見得を切る。千両役者である。

今月も楽しかった。月を追うごとに予約を取るのが難しくなってきたように思える。「もう、俺が来ることもないかな?」と言うと、「励みになるから来てください」とおだてる。「しょうがないなー」とニヤつく愚かな銀髪であった。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090


霜月のお献立

[先付]甘鯛 御強(おこわ)蒸し
[御椀]足赤海老 帆立貝 真薯 清汁
[御造里]かつお、いしだい、金目
[八寸]柳葉魚(ししゃも) 地牡蠣酢 ズワイ蟹奉書巻 土佐清水鯖炙鮨 蕪とじゃこ 鶏と茸とミモレット 牛蒡と鶏レバーの田舎煮
[煮物]眼仁奈(メジナ)煮付け
[炭焼]のどぐろ塩焼
[小鍋]和牛ロース鋤焼
[土鍋御飯]四万十川源流産「ヒノヒカリ」
[御数]3年物の沢庵、粕漬け、しば漬け、干物
[甘味]丸十(さつまいも)

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2009年11月10日

[活屋本店](銀座)

これから期待しましょう


銀座6丁目、近くには名だたる名店や高級クラブが並ぶ。ビルの2階ではあるが、土地柄を意識した立派な店である。「テーブルでも構いませんよ」と言われて迷った。普通なら絶対カウンターだが大皿が重ねられて料理人の手元が見えない。なんとか胸から上は見えるので決断した。

「この店はイケメンばかりだね」同行したYさんは上手だ。「お嬢さんだって綺麗だよ」と女性料理人を褒める銀髪。「いやー、それほどでも」と言わんばかりの笑顔を見せるので、「お客様こそ格好いいとか、お客様には負けますよと言わなきゃ」と突っ込んだ。場は一気に和んだ。

お通し、刺身

店の自慢は鮮度抜群の刺身と馬肉。先ずは刺身から。鮪、ボタン海老、かんぱち、しめ鯖、つぶ貝、たこがきれいに盛り付けられる。「まぐろはどこ?」と聞いたらイケメン料理人の和田さんが「みんまや」と教えてくれた。大間と漁場を同じくする青森の漁港だが知名度が今ひとつ。大間ばかりがもてはやされるが、プロには三厩(みんまや)も評価が高い。勉強になった。

お浸し、万願寺唐辛子

自慢の馬刺しに行く前に、箸休めに野菜を頼んだ。お浸しに乗った松茸が可愛い。「あなたが料理長?」和田さんはまだ25歳。分かっているが聞いてみた。料理長はキッチンの真ん中で若い料理人たちに目を光らせている人に間違いない。

馬刺し、大動脈

「熊本産?」と聞くと「会津産です」と答える。歯応えがあるように厚く切っているようだが、たてがみは薄い方が口の中でとろける。料理長に言いたいけど遠すぎる。

ハラミ焼き、豆腐、厚揚げ

この店の絶品料理はこちらも26歳と若い安崎さんが作る豆腐。チーズのような豆腐にYさんが唸る。水分が少ないので銀髪が「揚げてくれる?」と悪乗りした。厚揚げは焼いて温めて食べると思っている人が多いが、揚げ立ての厚揚げは本当に美味いのだ。快諾して調理を始めた安崎さんのところに料理長が歩み寄る。料理長!心配ご無用。厚揚げは期待通りの出来でしたよ。

カウンター好きの銀髪にしたら、大皿を取っ払って料理人たちとの垣根を下げてほしいと思う。厳選素材だけで高級クラブに行くような客たちを喜ばせることはできない。ハツラツとした若い料理人たちも立派なウリである。楽しく応対してくれた若者たちに名刺を渡すと申し訳なさそうな顔をした。名刺ぐらい持たせてあげないと可愛そうだ。


銀座六丁目活屋本店
東京都中央区銀座6-3-11 西銀座ビル2階
03-3571-3004

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2009年11月09日

[い津み]②(福岡)

芸者さんと一緒


「奴姉さんを偲ぶ会を開かなきゃいけないんだけど…」博多の粋人の呟きを聞き逃さなかった。「その時は必ず呼んでください」とお願いしたのが現実となった。場所は以前にも行ったことがあるふぐの名店「い津み」である。

奴姉さんとは芸歴68年、82歳で約半年前に亡くなった邑田美恵子さんのこと。偲ぶ会には芸妓さんが2人、三味線と唱の女性が2人、総勢4人が来てくれた。踊りの前に先ずは腹ごしらえである。

にこごりに続いてふぐ刺し。い津みの刺身は2枚引きなので食べ応えがある。皿の縁の方から食べ始めると芸妓さんから疑問の声が上がった。刺身は縁から並べられて、最後は中心に盛りつけ牡丹の花に見せる。彼女の言うとおり真ん中から取った方が食べやすい。しかし、お客さんが端から食べ始めたら中心に箸をつけるのは勇気がいる。

唐揚げ、鍋と料理が出てきたところで再び芸妓さんから疑問の声。「あら、身酒にする刺身が残っていないわね」と言われて気がついた。芸者遊びに長けた粋人が好むのは、超熱燗の酒にふぐ刺しを入れる身酒。もちろん身酒用に刺身を新たに作って貰った。本来は刺身を入れて熱燗を注ぐらしい。食べ方についてかまびすしい女性たちに圧倒された。

そこそこ腹が膨らんだところで、芸妓さんたちが席を外す。再び登場して三味線の響、のびやかな唱にあわせて踊りが始まった。黒田節を踊りだすと「イヤー、奴姉さんを思い出すねー」と粋人が唸る。奴姉さんは亡くなっても、芸は弟子の舞いに生きている。

踊りが終って、芸妓さんたちは我々の席に戻ってきた。銀髪は彼女たちにビールを注ぎ続ける。これだけ賑やかに、笑って偲んでもらえば奴姉さんも嬉しかろう。最後に雑炊。卵なしのい津みの雑炊は本当に美味い。

「博多の芸妓」のホームページを見ると、最盛期には5つの券番があり約2,000人の芸妓さんがいたが、今は博多券番一つに統合されているそうだ。十数人にまで減少していた芸妓さんも、公募で半玉さんが加わり少し賑やかなになった。伝統芸能がいつまでも見られることを願うばかりだ。券番の繁栄こそが奴姉さんへの一番の供養となるだろう。


前回の記事
http://codawari.info/ginpatsu/archives/2008/11/post_1072.html

博多 い津み
福岡県福岡市博多区住吉2-20-14
092-291-0231 
http://www.hakata-izumi.com/

博多の芸妓
http://www.media-line.or.jp/h_kenban/main.html

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2009年11月07日

[今泉](日本橋)

絶品のフライ


11時10分、既に先客がいた。胸の社章を見ると証券会社。11時の午前の取引時間が終ると同時に会社を出て来たのだろう。カウンターは5席、4人掛けのテーブルが2つ。すぐに店は一杯になった。外に行列が出来ることも多いそうだ。

通常、ランチの主役は穴子フライ。この従者として白身魚、帆立、鮭、イカなどから一品選んで1,000円。江戸前では煮たり天ぷらで食べる穴子だがフライで食べさせるのは珍しい。最初に来たときは皿一杯に広がった穴子に驚いた。この日は丸まって出て来てもっと驚いた。従者はイカである。

穴子は衣を2度つけしてサクッと揚げる。癖のない白身魚のようだ。イカは薄い衣で固くならないようにサッと揚げる。ソースはウスターソースなのが嬉しい。半分は醤油をかけて食べた。

秋になると一方の主役として牡蠣が登場する。穴子と同様に従者を選んで1,300円。特大のカキフライは複数の牡蠣を合わせているようだ。銀髪が選んだのは帆立。揚げすぎないように祈った。

このカキフライには思わず唸った。何もつけずに食べると牡蠣の濃厚な味が口に広がる。中がレア状態なので生牡蠣が嫌いな人には辛いかもしれない。生牡蠣大好きな銀髪にとっては最高のカキフライだった。帆立ももちろん中は生。これはトップクラスの揚げ物屋さんだ。

カキフライと穴子フライの揃い踏みなら1,500円。銀髪が居る間に最強コンビを頼む人は居なかった。面白いことに連れ立って来ている客は、1,000円か1,300円のどちらかに統一する。相手のことを慮る優しい日本人だ。

口コミ情報を読むと今泉に対するコメントはランチばかり。忙しそうに働く主人に勇気を出して「夜は割烹ですか?」と聞いた。「夜はコースだけなんですよ」と女性が主人に代わって教えてくれた。「いくらからですか?」と今度は女性に。「4,000円です。前日までに予約してください」とのこと。思ったより安い。

よし! 今度は夜来よう。電話帳に載ってないので今度カキフライを食べに行ったときでも予約しようかな。

今泉
東京都中央区日本橋3-1-15

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2009年10月30日

[楽太朗](新宿三丁目)

おでん風のおでん


伊勢丹近くの路地、小さなビルの地下に降りる入り口は目立たない。扉を開けると思ったよりきれいな店で期待が膨らむ。座ったのはもちろんカウンター。男同士の客や恋人たちでなく、50歳前後のキャリアウーマン風が多いのは珍しい。

お通し、大根おぼろ昆布

以前、予約なしで来て入れなかった。今度は予約と下調べをしっかりした。つみれ、茄子ソーメン、白レバー、評判の料理を頼んだ。お通しが刺身なのも調査済み。すぐに出て来る料理をということで、大根を勧められた。味は期待より上でも下でもない。

地鶏と鮭のつみれ、茄子ソーメン

鮭のつみれは珍しい。崩れやすいためかオーダーを受けてから作る。箸使いに気を抜けないと、口の中でハラリと壊れるのを楽しむ前に落下して砕ける。
料理人が茄子を切るのをじっと見詰める。切っただけで麺のようになるのが不思議だ。特別な茄子かと思ったら、普通の米茄子と聞いて驚いた。桂剥きしてから元の形に成形したと種明かしをしてくれた。片栗粉をまぶして茹でたのだろうか。ところてんのような食感が面白い。

牡蠣豆腐のとろろ掛け、地鶏白レバーの瞬間燻製

我々以外は殆どの人がコース料理を頼んだようだ。牡蠣豆腐がとても美味しそうに見える。カウンターに座っているので「それ、ください」とオーダーは簡単だ。
白レバーはさっさと食べなければ火が通り過ぎてしまう。食べ終わった後もまだ熱い器を欲しくなった。色んな料理に使えそうだ。

牛すじ豆腐、チョコレートムース

「牛すじ豆腐はまだ?」鍋から器に盛るだけと思ったのになかなかやって来ない。おでんが自慢の店だが、鍋の中はカウンターから見えない。大根など限られたおでん種の他は鍋にはスープが満たされているだけのこと。濃厚味噌スープ、薄塩スープの2つの鍋におでん種がぎっしり詰まっているとの先入観は捨てた方が良さそうだ。つみれ同様、豆腐もオーダーを受けてから鍋に入れられたから時間がかかったのだ。

最初に食べた大根が他の名店のような複雑な味ではない理由が分かった。おでん種同士が味を出し、吸収する関係は楽太郎の鍋では起こり得ないのかもしれない。その代わりすぐに壊れるような作りたてのつくねがある。

煮物以外に料理の種類は多い。隣席で食べていた鶏が旨そう。次に来るときは焼き物を試してみよう。


煮炊きや 楽太朗
東京都新宿区新宿3-17-21 新三ビルB1
03-3357-4939
http://www.rakutaro.com/

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2009年10月29日

[尾崎幸隆](麻布十番)

高級まぐろと宮崎牛


「どこに行くかアイデアある?」と電話で聞くと「ハイ、あります!」と来た。地図は持っていても、日が暮れて店を探すのは難しい。不安にかられているとタクシーのライトにYさんが浮かび上がった。板塀に囲まれた立派な店は7月にオープンしたばかりとのこと。

店名が尾崎幸隆と聞けば、オーナーシェフの名前と思うのが普通。ところがメニューの末尾に書かれた料理長の名前は石川さん。当然のことながら会話は謎解きから始まった。オーナーは吉村さんでこれも外れ。尾崎は幻の宮崎牛と呼ばれる尾崎牛の生産者。幸隆は築地のまぐろ問屋「やま幸(ヤマユキ)」の山口幸隆さんから取ったとのこと。店名の謎解きは素材の良さの割にリーズナブルな謎も解いてくれた。

写真撮影の許可を得て撮ろうとしたらカメラが動かない。バッテリーは会社のコンセントに入れたままということに気がついた。Yさんが携帯電話で写してくれた。幸いまだ客は我々だけでシャッター音が他の客を煩わせることはなかった。

上質のまぐろ、和牛、さらに松茸、牡蠣、トリュフを使って10,500円のコースはお値打ちである。それにしても山口さんと尾崎さんの勝負は面白い。仲はよくても一流のプロ同士である。無粋な客の評価でも聞き流すことはできないだろう。

銀髪に言わせれば山口さんは分が悪い。大間や戸井のまぐろで勝負できる冬場はいいとしても、夏に美味しいまぐろを仕入れるのは至難だ。冷凍物を使わない高級寿司屋の中には、夏はまぐろを出さない店もあるほどだ。

料理人も大変だろう。牛肉もまぐろも新鮮なら美味しいというものではない。熟成させて食べ頃を見極めなければならない。素晴らしい素材を生かすも殺すも料理人次第。プレッシャーは相当なものだろう。

石川さんや佐藤さん、石田さんなど若い料理人たちに期待したい。彼らをサポートするスタッフたちの笑顔も悪くない。みんなと談笑している間に店は満席になってきた。お店の食べ頃はこれからである。

尾崎幸隆
東京都港区麻布十番2-6-4-103
03-5413-4129

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2009年10月27日

[流石 はなれ]②(新富町)

さすが、流石だね!


「銀髪です」と告げると、電話の向こうの声のトーンが変わる。久し振りの訪問でワクワクする。前は日本橋から歩いたが、この日は銀座から。迷うはずはないと侮って、しっかり迷った。路地裏に店の明かりを見つけてホッとした。

「今日は効率的でいいね」そばの実、もずく、湯葉、いくらを4つの器に分ける五十嵐さんをからかった。6時過ぎ、先客2人と我々の夕餉は同時にスタートした。そばの実を雑炊のようにして食べると誰もが感動する。「かますを生で食べるのは初めてだよ」皮目を炙った焼き霜造りが実にいい。

さっと湯がいた白子の美味いこと。蒸し器から出てきたがこれは温めるため。電子レンジがなかった頃は、冷ご飯など蒸し器で温めたことを思い出した。今では電子レンジが必需品となり、蒸し器のない家庭も多くなった。

美味しい料理に感心しながらも、みんなの目はそばを打つ矢守さんに注がれる。丸い塊がどうしてきれいな長方形になるのだろう。そば打ちの手法も色々あるらしい。矢守さんが饒舌に語る間に五十嵐さん自作のにしんを乗せた温かいそばが出来上がる。汁も全部飲み干した。

焼き場から煙が襲ってきた。換気が悪いことを恨むより、煙の多さに期待が膨らんだ。出てきたのは白皮あまだい。あまだいはぐじの名前で知られる赤皮、ちょっと安価な黄皮と3種類あり、白皮が一番高価で美味とのこと。脂が炭火に落ち焼き燻された白皮あまだいの美味いこと。

矢守さんが自前の石臼を速めに回転させる。粗く引いてそばがきを作る為だ。そばの実を奥歯でつぶすと粘り気を感じた。その余韻をもってそばがきを食べるとそのモッチリ感がよく理解できる。いいそばはつなぎなんか必要ない。矢守さんが打つそばは全て十割である。目の前では五十嵐さんが4種の茸のみぞれ和えの準備に忙しい。次は茸に関する質問が浴びせられた五十嵐さんが饒舌になる。

「鹿児島産?」軍鶏と聞いて知ったかぶりをすると「青森です」と言われた。青森が誇る特産地鶏シャモロックとのこと。セリとしめじを加えた鍋はきりたんぽ鍋に似ていた。

まず北海道のそば、お代わりは徳島のそば。矢守さんの産地に対するこだわりのキーワードは日本原産。純粋種を維持するには自治体や生産者の大変な努力が必要とのこと。若いのに矢守さんと五十嵐さんには教えられることが多い。新そばが出始めているが、少し時間が経った頃の方が美味しいそうだ。寒くなって魚介類も美味しくなる。築地を歩く五十嵐さんの顔も輝きを増すだろう。

流石はなれのますます美味しい季節到来である。


流石 はなれ
東京都中央区湊3-13-15
03-6228-3870

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2009年10月23日

[遊膳](福岡)

絶品ウニごはん


満腹が一人、腹八分が一人、食事前が一人。この三人で嫌がられないお店を教えてもらったのが遊膳。中州川端商店街に入ってすぐに見つかった。

若く見える店主は既に40代半ば。開店してから20年といっても改装した店舗は明るく清潔だ。カウンターに座ると3品が目の前に並んだ。

さざえ、あなご巻き、きぬかつぎ

満腹だと言っても目の前に料理があると手を出す。銀髪は八分目なのでまだ余裕があるが、慎重に腹と相談する。銀髪の主戦場は酒になり、料理は腹ペコ氏にお任せする。

あなごの白焼き、鯛あら煮

「格好いいねー」店主を乗せるのも忘れない。山笠の山車の上で胸を張る店主の写真が壁にかかっている。山車の上に乗るのも嬉しいだろうが、その栄誉は地元の人に認められた証。余所者が大役を射止めることは大変な名誉だ。地元のためのボランティアにも尽くしたに違いない。

腹ペコ氏が頼んだ料理をつつきながら日本酒を飲む。「この店の自慢料理はなんですか?」と聞けば自家製明太子だと言う。どっちの料理ショーで紹介されたことがある看板商品。昆布が決め手のようだ。

自家製明太子、生うにめし

腹ペコ氏もボチボチ仕上げにかかり始める。生うにめしを頼んだので少しもらおうと思ったが、出てきたものを見て目をみはった。うにも卵も実に鮮やかな色をしている。これを奪っては申し訳ない。いや、それ以上にちょっとだけで満足出来るとは思えない。銀髪にももう一杯作ってもらうことにした。味噌汁と少量のうにめしを満腹氏にあげた。

料理も美味しいが、気分もいい店だった。多くを頼まなかったにもかかわらず、嫌な顔ひとつしない。今度は空腹の状態からゆっくり楽しみたいものである。


遊膳
福岡県福岡市博多区上川端12-183
092-271-9271

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2009年10月08日

[銀座 座屋]④(銀座)

新米登場!神無月の座屋


7月から毎月お邪魔して4回目。今回は何とか月の前半に訪れることができた。個室からは既に声が聞こえる。カウンターも徐々に埋まって今日も満席になるとのこと。降りしきる雨にもかかわらず、予約で一杯になるとは喜ばしい。

いつになく静かな滑り出し。原木栽培の椎茸にフォアグラを乗せて素材の良さで食べさせる。二口で食べ終わった後のスープを舐めたい。パンがあったら皿をきれいにできたのに残念だ。吸物も実にシンプル。高知産の蛤は自らの旨味を汁に出した後も、口に含むと存在感がいや増す。

初めての人は間違いなく感動するかつおのたたき。炎のショーが終るまで銀髪は口にチャックをする。かつおに対抗するのは歯応えのあるアジと脂が乗ったアカバ。アカバとはアカハタ(赤羽太)のことらしい。ユメカサゴのことをアカバというところもあるようだ。いずれにしても滅多に食べられない貴重な魚。高知から直送された箱を開けたときの岡添さんたちの興奮が伝わってくる。

季節感たっぷりの八寸を目で楽しみ、舌で味わう。2杯目の日本酒をワイングラスで飲んでみた。吟醸酒などは香りも楽しみたいものだ。グラスによって味わいも変わるはず。岡添さんは銀髪の実験にも快く付き合ってくれる。奥は深い。勉強が必要だ。

和牛・雲丹・葱のコラボレーション。盛り方を変える遊び心が岡添さんらしい。そして本日のメイン料理、赤座海老の炭焼き。これには参った。今まで食べたアカザエビの中で一番美味しい。車海老や伊勢海老と異なり身はやわらかく甘味がある。思わず殻もチューチュー吸ってしまった。皿をさげられると取り返したくなる。殻に残ったエキスをも味わい尽くす方法はないものだろうか。

北陸や山陰地方での呼び名「のどぐろ」がすっかり定着してしまった赤むつ。高知産の丸々と太った赤むつも箱を開いた岡添さんたちを感激させたらしい。故郷の素材たちの魂が料理人に乗り移る瞬間だ。食べる我々も素材から譲ってもらえる命に感謝したい。


「間に合いました」岡添さんがまたまた嬉しそうに話すのがお婆ちゃんが作ったヒノヒカリの新米。予約を月の後半にしようか迷ったのも杞憂だった。ごはんのまま、卵かけごはん、おこげといつものように3種の食べ方をした後で新たな提案をした。お代わりしたおこげに吉澤さんが慎重に醤油を垂らしてくれる。名付けて醤油おこげ煎餅。これで4種類になったと銀髪はご満悦である。

最後は柿尽くしのデザート。今日も食って飲んで喋ってはしゃぐ銀髪に、岡添さんが「米は採れたてより、1~2ヶ月経った方が美味しいんですよね」と余計なことを言う。「じゃあ、来月試してみよう」と言ってしまった銀髪は、見事に彼の戦略に嵌まってしまったのかもしれない。今度は11月。メインは何かな?楽しみだ。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090


神無月のお献立
[先付]大正椎茸とフォアグラ
[御椀]高知産蛤清汁
[御造里]かつお、あじ、あかば
[八寸]栗、牡蠣フライ、秋刀魚寿司、フランス産鴨、むかご、茸白和え、海老春巻、鳥皮串焼き
[御凌ぎ]和牛炙り・雲丹・葱
[炭焼]赤座海老炭焼き、焼茄子、牡蠣クリーム
[肴]のどぐろと蕪擂り流し
[土鍋御飯]四万十川源流産「ヒノヒカリ」
[御数]3年物の沢庵、粕漬け、しば漬け、ふぐ干物
[甘味]柿色々

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2009年10月01日

[尾花](南千住)

一番はサービスかな


尾花は東京のうなぎ料理屋の最高峰と言われる。南千住に行ったことがない銀髪は郊外の遠い場所にあると思っていた。無意識に住んでいる世田谷からの時間距離を考えてしまうが、勤め先に近い茅場町から南千住まで電車で僅か15分。意外だった。

いつも行列が出来るという尾花も、秋ともなると客足は遠のくのかもしれない。6時前でも空席が目立った。うざく、う巻き、焼き鳥、鯉あらい、白焼き、うな重、いつもならこんな順番で食べていくのだが、大江戸で食べたごはん少な目のうな重の反省から思い止まった。しっかり蒲焼きとごはんを食べよう。そうは言ってもビールについてくる漬物だけではうな重が来るまで間がもたない。

うざく、焼き鳥

ピックアップするよりも、切り捨てる方が難しい。すぐに出てきそうなうざくと、焼き上がるまでちょっと時間がかかる焼き鳥。さばくところから始めるので長時間待つうな重。我ながらよく考えた。うざく1,500円、焼き鳥2本で1,100円は人気店ならではの価格に思えたが、食べてみるとこの値段も仕方ないかと思う。濃い目のたれがかかった焼き鳥も独特のもの。

焼き鳥を食べても時間が余ったときのために、ビールについてきた漬物は残しておいた。それでも40分~1時間はかかると言われる蒲焼は焼き上がって来ない。再びメニューを見てう巻きを追加した。すると、すぐに注文を受けた女性が戻ってきた。「もう出来上がるそうですが、う巻きはご飯の後にしますか?」と言う。もちろんキャンセルした。空いていれば焼き上がりまで30分というところだろう。

料理を少なくした分ビールや日本酒を飲みすぎた。一番目方が少ない3,000円のうな重を頼んだのは正解だった。メニューを見るとご飯のない蒲焼の方がうな重より高い。「値段の差は目方です」と店の女性は言うが、目方とはうなぎ一匹の大きさ(身の厚さ)なのだろうか、質も関係あるのだろうか。解明するのは次の機会にしよう。

尾花のうなぎは美味しかった。しかし同じ日に食べ比べをしなければ味の差はよくわからない。食べた時の体調、季節によっても印象は異なる。個々人の好みもあるだろうから軽々しく優劣はつけられない。

うなぎの味はともかく、特筆すべきは料理を運ぶ女性たちの応対の良さだ。最高の評価を得る行列が出来る人気店にもかかわらず、どの女性たちも偉そうなところがまったくない。ミシュランの選者や有名人にだけ愛想を振り撒く店でないのが心地よかった。


尾花
東京都荒川区南千住5-33-1
03-3801-4670

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2009年09月28日

[大江戸](日本橋)

食った!食った!


創業は江戸寛政年間1800年という老舗うなぎ屋。接待にも使える立派な個室があるそうだが入ったことはない。何度か使おうかと迷ったが、うなぎ以外の料理が混ざる会席料理はどうも気乗りしなかった。

11時から通しでやっているので仕事を早めに切り上げ、予約もせずに出かけた。銀座方面から昭和通りを歩いて行くと左手に柳が見える。左の入り口が料亭、我々は右の入り口のドアを開けた。こちらには約10年前、昼に来たことがある。

枝豆、うざく、うまき

取りあえずのビールには枝豆。大瓶のビールも枝豆もよく冷えていた。料理を運ぶのはアルバイト風の若い女性。老舗につきもののベテランは料亭の方で忙しいのかもしれない。

きも焼、肝山椒煮

売り切れご免のきも焼。一人前で7~8匹分の肝を使うというから早く行かないとありつけない。「ちょっとお待ちください。聞いてきます」と店員が調理場を往復するのも儀式ではあるまい。ついでに山椒煮も頼んで精をつけることにした。何のために?

白焼き

日本酒もなかなかの品揃えである。銀髪より年長のYさんは酔ってくると食べなくなってしまう。白焼は底にお湯を張った容器で出されるから、ゆっくりとつまみ代わりに出来るのが嬉しい。

蒲焼

「俺はもういらないぞ!」とYさんが言うのでご飯は薄く敷いて貰った。一杯になった腹と酒浸しになった脳では味を云々する状態ではなくなっている。それでもうな重と一緒に持って来てくれた箸には感心した。これまでの先が細い割り箸と異なり、ごはんを食べやすい先が角張った割り箸。さすがに細かいところに気が利いている。

腹ごなしと酔い覚ましを兼ねて歌いに行くことにした。たっぷり精をつけたので発散するにはうってつけだ。


大江戸
東京都中央区日本橋本町4-7-10
03-3241-2828

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2009年09月25日

[座屋]③(銀座)

常連とまでは言えないけれど


銀髪グルメ紀行を始めて丸4年、3ヶ月連続で訪れた店は記憶がない。1回目で友達になり、2回目にはマブダチ、3回会ったら大親友とほざく友人をいつも笑っている銀髪だが、座屋に関しては銀髪も友人と五十歩百歩。既に常連客気分である。

5時半「やあ、こんばんは!」と軽やかに店に入って行った。店主の岡添さんはじめスタッフみんなが笑顔で迎えてくれる。てぐすね引いて待っていたようだ。今月の料理の出来はどうか、さあ、勝負勝負!

清水鯖、松茸とキスの椀

「オッ!純米吟醸だね」座屋は高知の全18蔵の日本酒を揃えており、いつも料理に合わせて何を飲むか岡添さんに任せている。料理との相乗効果で酒が進む。「もうないよー」と言うと、次の料理を考えて「〇〇出してー」とスタッフに命じる。なかなか格好いい。

御造り

「今度は純米酒?」これも当たった。鰹を藁で炙る(燻す)ショーが始まる。「赤いセロファンをヒラヒラさせて焼く真似をするだけだよ」と連れに言うと、岡添さん、吉澤さん、共に話を合わせてくれる。笑いも重要な調味料だ。鯛に似た魚はウメイロとのこと。高知から直送する座屋だからこそ味わえる素材だ。

八寸

「あれっ?これは純米ではないね」吟醸酒でも醸造用アルコールが入っていると読んだ。三連続正解で銀髪の鼻が得意気にヒクヒク動く。献立表の岩牡蠣がなく、代わりにチャンバラ貝(写真の左下)が出された。先っちょが刀のようだ。2匹がぶつかり合うとチャンバラをしているように見えるらしい。これも初めて食べた。牡蠣がなくて得した気分だ。

まながつお西京焼き

まながつおは南日本から東シナ海の大陸棚の砂泥底に生息しており、全長60センチにもなる。鰹と漁獲期が重なるのでかつおの名がついたらしいが、まったくの別種。西京焼きにぴったりの魚だ。

伊勢海老

伊勢海老の身はどこに行った?心配ご無用。頭の下にちゃんとあった。クルリと身を取り出して口に入れるとレアの食感。刺身を同時に食べるようなイメージで面白い。

朝引き鶏のたたき、漬物と干物、デザート(無花果盛り)

「これは清酒?本醸造?」「いえ、純米吟醸です」遂に外れた。酔っ払ったせいにしてしまおう。写真はないが、もちろん土鍋ごはんもいつもどおり美味しかった。うまくいけば来月にはヒノヒカリの新米が入って来るそうだ。米だって生鮮食品である。薫り高い土鍋御飯を目当てに来月も来なければならない。

「大きなアカザエビが入りますよ!」10月の献立は既に出来上がっているようだ。自信満々の岡添さんを見ているだけで嬉しくなった。座屋での勝負はいつも負ける方が楽しい。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090

座屋の7月、8月
7月→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/07/post_1296.html 
8月→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/08/post_1335.html

長月のお献立
[先付]土佐清水鯖、白桃酢擂り流し、蛇籠蓮根
[御椀]松茸と鱚の天吸 
[御造里]鰹、ひらあじ(?)、ウメイロ
[八寸]鮪とマンゴー和え、チャンバラ貝、もち豚ロースとカマンベール、鰹と胡桃の旨辛煮、車海老握り寿司、新銀杏
[炭焼]真魚鰹西京焼き、酢取り茗荷
[煮物]伊勢海老共餡掛け、茸・菊花・三つ葉
[強肴]朝引き鶏のタタキ、梅大根・白菜サラダ
[土鍋御飯]ヒノヒカリと土佐ジローの卵掛け御飯
[御数]高知漬物、干物
[甘味]無花果

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2009年09月15日

[京野菜 美登里](銀座)

ゆったりと京料理


銀座金春通りには銀座九兵衛をはじめ有名店が並ぶ。周辺には高級クラブも多く、もっとも銀座らしいところだ。そんな金春通りをきょろきょろしながら歩いていたら、危ないところ通り過ぎてしまうところだった。

階段を下りるとグッと落ち着いた京都の町家に入ったような気分になる。カウンターの正面に見える茶箪笥が店の雰囲気を支配しているかのようだ。対称的にバックに流れるオペラの曲が調和していて面白い。一番乗りだったので、カウンターの左端の席を選んだ。

目の前を店主が過ぎて行った。彼の持ち場は右側の焼き場近辺らしい。しまったと思ったが後の祭り。たくさんの小皿はどこに行くかと見ていたら、盆に並んで銀髪の前に来た。これを見たら日本酒を頼まずにはいられない。

琵琶湖産の稚鮎、まぐろ尽くしと進んでいくと酒を飲むピッチが上がっていく。酒のメニューには酒米の名称も書いてある。全29種、初めて聞くような酒米、銀髪を挑発して危ない。

メインの前の野菜料理。「今は一番京野菜が少ない季節なんですよ」と言われてハッとした。確かに蕪などの京野菜は秋から冬が旬のものが多い。それでもがっかりすることはない。これだけの野菜が並ぶのだから。

メインは肉料理(すきやき)と魚(かさご)のどちらかを選ぶ。どちらも松茸の香りが効いている。唐揚げされたかさごに身はあまりついていないが、スープが素晴らしく美味い。魚料理というよりも松茸料理と言った方がいいかもしれない。

横浜馬車道通りの近くに85年続いた料亭が火事で消失し、心機一転、銀座に店を構えたと言うだけあって、もともと店主はカウンターで客の相手をするのが苦手のようだ。銀髪が左端、店主が右端という距離も邪魔をする。銀髪のペースに引きずり込もうと何度か試みた末に「この音楽は誰の趣味ですか?」と聞くと、「私のです」と主人が恥ずかしそうに答えた。やっと会話が成立した。マニアというわけではないそうで、銀髪でも知っているスタンダード曲ばかりで楽しい。

電話の応対同様、所作も美しい店の女性に見送られて店を出た。「何か他と違ったところは気付かなかった?」と連れに聞いても首を傾げたまま。甘いものが苦手の銀髪にとっては嬉しいデザート無しの店だったのである。


京野菜 美登里
東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル B1F
03-3289-2362
http://www.ryoutei-midori.co.jp/

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2009年08月25日

[どぶろく一心](三軒茶屋)

田舎に行ったみたいな寛ぎの割烹


三軒茶屋にある料理屋を検索していてどぶろく一心にぶつかった。それまでたくさんリストアップしたけれど、手作り感のある素朴なホームページを見た途端ここに決めた。18時開店だが朝9時から予約を受け付けている。電話に出た主人の声は、想像したとおり気取りのない人柄を表していた。

「面白いホームページですね。あれは大将が毎日更新してるんですか?」席につくなり言葉を投げたら、上手に返ってきた。キャッチボールは実にスムーズである。今日も楽しく飲み食いできそうだ。

お通し(バイ貝、巻鰤、加賀太いきゅうり)

「寒鰤の間違いだと思ったよ!」銀髪の減らず口は続く。鰤を藁と縄で巻いた保存食で、巻きぶりと言う。能登の名物らしい。これを食べると日本酒を頼まないではいられなくなる。

七尾産岩牡蠣、越中庄川の若鮎

主人の横井さんは世界遺産菅沼合掌造り集落で有名な五箇山の出身。それだけに北陸地方の素材がたくさん食べられる店である。その日何があるかはホームページを見れば分かる。60歳を超えるにもかかわらず、横井さんが自分で更新しているというから大したものである。

のどぐろ一夜干し、鱧白焼き

小振りだが脂の乗ったのどぐろだった。一夜干しは本当に美味い。一心では馬肉、鯨、沖縄のやんばる島豚、うつぼなど北陸地方以外の素材もたくさんある。銀髪が目をつけたのが淡路産の鱧。シンプルに塩焼きと、横井さんが奨める天ぷらの2種類の料理を作ってもらった。パリッとした白焼きとふっくらとした天ぷら。味や食感が変わって面白い。

鱧天ぷら、3色魚そーめん

〆は京都の魚そーめん。適度に飲んで食べて満足した。料理もさることながら、横井さんと奥さん、二人の常連さん、我々二人の合計6人。ワイワイ、ガヤガヤ、冗談の投げ合いで滅茶苦茶楽しかった。笑いに紛れて図々しくも横井さんの経歴を聞いた。大学を出て料理屋で修業、料理人として数年過ごし、その後大手ハイテク企業の社員になって定年まで勤め、それから一心を開いたとのこと。自分でホームページを更新できる謎が解明できた。

日本全国の料理が食べられる大人の割烹・居酒屋。初めての人でも主人夫婦や常連さんが温かく迎えてくれるいい店である。


ふるさと割烹 どぶろく一心
東京都世田谷区三軒茶屋2-13-10
03-3418-3155
http://www.doburoku.info

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2009年08月19日

[座屋]②(銀座)

葉月(8月)は天然うなぎ


5時45分に店に到着。一番乗りかと思ったら、座敷から声が聞こえる。8月14日、お盆休みで静かな街と対称的に6時半にはカウンターも満席になると聞いて驚いた。銀髪グルメ紀行も多少の貢献はしているようで、スタッフ全員が好意的に迎えてくれて有難い。

八寸は2人前を一つの品に見立ててのプレゼンテーション。料理は素材のコラボレーションを楽しむために、一口で食べられるサイズである。見せるだけでなく料理の説明をすることで、客を一気に座屋の世界に引き込んでいく。

座屋名物の鰹のたたき。二度目になると感動は薄れるかと思ったら、今日の方が美味く感じるから不思議だ。「吉澤さんの方が炙り方上手なんじゃないの?」と岡添さんを茶化す。脂の乗りがよくなっているのかもしれない。かつお以外は少量ずつ。金目が美味い。

「さあ、これからメインですよ!」岡添さんが本当に嬉しそうに言う。客に自信作を食べてもらうのが心底楽しいのだ。白焼きと蒸し焼きが1枚ずつ。それぞれを半分にして4通りの食べ方を奨められる。関西風でも関東風でもない白焼きは、天然鰻ならではの弾力ある噛み応え。「今まで何回か食べたけど、養殖物と天然物の違いは正直分からないんだよなー」と言って食べ始めたが、岡添さんに一本取られた。

相変わらずどれもこれも手がこんでいる。15,000円のコースなら匹敵する店が銀座には何店もあるが、10,000円でこれだけのものを出す店は殆どない。そう言って褒めると「高知からいいものを直送してもらってますから」と謙遜する。創業した地元高知や2号店のある神戸から数百人の客が銀座店を訪れたという。地元の名士も多くやって来るらしい。皆のサポートを得られるのも岡添さんの実力である。だからこそ調達できる地元の素材だろう。彼の人柄と情熱には誰もが心を動かされる。

いよいよお婆ちゃんが作った米の土鍋ごはん。これは前回と同じもの。(→http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/07/post_1296.html)ところがまるでとうもろこしのような香りが立ち昇るのには驚いた。前回は写真を撮るのに夢中でご飯への注意が散漫になっていたのかもしれない。

料理もデザートを残すばかりとなって連れが「実は鰹も鰻も嫌いだったんですよ!」と打ち明けた。好き嫌いが多い人と思っていたが本当は味覚が鋭いのかもしれない。美味しければ偏見なく受け容れる。岡添さんもしてやったりと微笑む。

最後まで一つだけ空いていたカウンター席に若い男性が座った。岡添さんは忙しく手を動かしながらも「もう少し待ってくださいね。すぐ、そちらに行きますから」と寂しげな客を気遣う。まったく大したものだ。

さて、次は9月。今度はどんな感動や発見があるか、とても楽しみである。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090

葉月の献立

(八寸)白子ポン酢 海素麺と茗荷 オクラと長芋胡麻汚し 賀茂茄子田楽 
    胡瓜とチーズの博多 鰺南蛮 牛しゃぶとアスパラのサラダ
(冷鉢)南瓜豆腐 蛸梅煮・丸十・アスパラ・あられ長芋
(御椀)鱧清まし仕立て
(御造里)鰹、金目の肝添え、いか、ひらあじ       
(炭焼)高知産天然鰻白焼き 石川小芋豆腐・煮詰め焼きおにぎり
(煮物)もち豚の角煮 玉蜀黍の蒸しパン添え
(酢物)新秋刀魚きずし 蓮芋・水茄子・冬瓜・黄味酢餡
(御飯)四万十川源流産『ヒノヒカリ』 生産者 岩崎花美
(御数)越知漬物 高知干物(3年物の沢庵、粕漬け、しば漬けのこだわり)
(甘味)葡萄づくし

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2009年08月05日

[萬久満](銀座)

メニューのない割烹料理屋


開店の10分前に到着した。開店準備をする店の女性に「ご主人はまだなの?」と声をかける。「はい、社長はもうすぐ来ると思います」「メニューはないようだね」「はい、社長に聞いてください」。忙しそうだ。海老を肴に生ビールを飲んでいると、6時ちょうどに主人らしき人が入って来た。店の女性たちが緊張するかと思ったら、逆に笑顔を浮かべる。店の雰囲気が柔らかくなった。。
「社長と呼んだ方がいいの?」と聞くと「好きに呼んでください」と笑う。戸田さんと呼んだ方がいいのかもしれない。

お通し、小鯛の笹漬けと続く。懐石の手順を踏んでいるようだが、そうでもないようにも見える。立派な鰻肝の串が炭火の上に乗った「牡蠣食べる?」銀髪の連れが常連なので口調が軽い。三重県産の岩牡蠣。連れは2個食べた。

鼻高々に「今日は250g超もある最高のさんまが入ってるよ」と言われて、「刺身にしてくれる?」と言ってしまった。「他にもいい魚はあるのに、さんまを刺身にするのは好きじゃないんだけどなー」と言いながらも造ってくれる。いい人だ。海老しんじょの椀物、さんまが入った刺身の盛合せと続く。

「いいウニがあるよ」殻を割りウニの身を取り出す。「稚鮎は天ぷらにする?それとも塩焼き?」いつの間にか銀髪も常連になった気分だ。一人で食べる常連さんが我々より先にさんまの塩焼きを頼んだ。「はらわたを取って焼いてくれる?」と言われて「エーッ、そんなの初めてだよ」と言いながらもちゃんと要望通りにする戸田さん。さんまから脂がしたたり落ちるのを見て、銀髪もオーダーした。

別の常連さんが入って来た。彼のところにもさんまの刺身が出された。「美味しいねー」と褒めるので、「主人が嫌がるのを僕が頼んだんですよ」と銀髪がしゃしゃり出る。我ながら恥ずかしい。

そろそろ、そばを食べてお開きの時間である。戸田さんがカウンター下の冷蔵庫から黒ムツを取り出して常連さんに見せる。「一匹は多いなー」と渋っているので、「半分食べてあげますよ」とまた出しゃばった。そばは連れのものをちょっとだけもらった。

右にも常連さんが一人で座った。戸田さんの人柄がひきつけるのだろう。初めて来た銀髪でも歓迎してくれた。常連さんとも歓談できた。楽しかったが飲みすぎた。でしゃばりにもちょっと反省。


萬久満
東京都中央区銀座8-4-24 藤井ビル6階
03-3574-7963
http://www17.ocn.ne.jp/~mankuma/

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2009年08月03日

[ふぐ 福治](銀座)

夏は鱧


大阪の天神祭り、京都の祇園祭などに鱧はつきもので、関西には鱧の食文化が根付いている。福島県以南の日本近海で広く捕獲されるにもかかわらず、多くが関西で消費される。京都などには鱧の専門店があるようだが、東京には多分ないだろう。旬の季節が重ならないため食べるとしたらふぐ屋になる。ミシュランの星に輝く福治に電話した。ふぐの季節なら予約を取るのは至難だろうが、当日にもかかわらず6人の予約が出来た。

お通し、湯引き鱧

生牡蛎と一緒に皿に乗るのは一見したところ玉子焼きのようだが、鱧の卵を煮付けたもの。鱧を食べたことがないという連中も、一気にとりこになった。
鱧料理の代表格である湯引き鱧は身が厚くてとても美味しい。鱧は淡路が有名だが、長崎など九州産も悪くない。

焼き鱧、鱧寿司

焼き鱧は蒲焼のようにして出す店が多い。塩焼きの鱧に「珍しいですね」と女将に言うと、寿司とかぶらないようにしているとのこと。湯引きを梅肉で食べるのもいいが、焼いた方が味が逃げなくていいような気がする。

「鍋は量が多いので4人前でいいと思います」とアドバイスする女将に素直に従った。ところが出てきた大皿を見て驚いた。鍋2つに4対2の割合で分けてくれたのだが、上の写真はその小さい方。鱧しゃぶは他の店で何度も食べたことがあるが、せいぜい4~5切れ。
鱧尽くしコースは1人分で1匹以上使うそうだ。鱧の体長は鰻の倍近い約2メートルである。これは凄い!

鱧しゃぶ、雑炊

松茸と白菜のシンプルな鍋なので量があってもどんどん腹に納まった。松茸の香りが湯気に乗って食欲を刺激する。雑炊はもちろん、期待した通りだった。

火を止めてもグツグツという鍋を見て、メニューにある「天然スッポンコース」を思い出した。すっぽんのまる鍋に使う素焼きの鍋のようだ。これならすっぽんコースも期待できそうだ。ふぐは鱧の倍の価格帯だが、値段以上の満足度を得られるに違いない。

ミシュランは肝腎なところをガイドブックに書きそこなっている。女将をはじめ店の人たちがとてもフレンドリーで和ませてくれるのだ。テーブルで寛いでいる常連さんたちを見ていると、本当にいい店だと思った。


ふぐ 福治
東京都中央区銀座5-11-13 幸田ビル3F
03-5148-2922
http://www.fukuji.jp/

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2009年07月23日

[よこい](銀座)

出汁が自慢の京会席


ビルはすぐに見つかったが入り口が分からない。守衛さんに聞いて花屋の隣と教えてもらった。お洒落な店名の文字は壁面に溶け込んでしまっている。これでは気がつかなかったはずだ。会席を楽しむカウンター席は地下にあった。先客は着物を着た年配の女性2人と男性が2人。いかにも銀座らしい風景だ。

先付け(鱧のゼリー寄せなど)、アボガドのスープ

予約の際に10,500円の雪コースを頼んでいたので、座るとすぐに食事が始まった。数々の賞を取った横井さんが総料理長というだけあって、味だけでなく見せ方もうまい。しかしカウンターに座っても料理人は遠くて話ができない。カウンター割烹ではなくオープンキッチンと言った方が正しい。若い料理人たちが黙々と働いている。

お造り(あおりいか、ひらめ昆布締め、まぐろ、湯葉)、鮎

稚鮎が籠に飾られて出てきた。皿の炭火がほんのりと鮎を温める。。素材について、料理を運ぶ店員に聞いても全部は把握していないようだ。横井名人らしき姿はカウンターの中には見つからない。

魚介類のしゃぶしゃぶ

シャリッ…、シャリッ…。鱧の骨切りの音は料理人によって個性がある。鱧でとった出汁で鱧、海老、蛸、帆立をしゃぶしゃぶする。鮎の塩焼きは炭火を使っていたのに、今度は旅館の鍋でよく使う固形燃料。それでも料理の味には問題ない。具を食べた後の汁はさらに美味しくなったので、殆ど飲みの干した。

酢の物、素麺、水菓子

和の出汁が自慢というだけあって、我が家でつゆの素につけて食べる素麺とは比べ物にならない。夏定番の手軽な料理という位置付けは素麺に申し訳ないかもしれない。昔は麺つゆは母が食べる毎に作ってくれたが、今は市販のものを使うのが当たり前になってしまった。我が家でも一手間かけて素麺に主役を張らしてあげたいものだ。

料理が次々と出てきて慌しく感じたが、時計を見れば2時間近く経っていた。こちらがお願いした時間にピタリと合わせてくれるところは流石に銀座である。連れが美味しかったと喜んでくれたので、良かった良かった。


京料理 横井
東京都中央区銀座7-3-13 ニューギンザビル1F・B1F
03-3573-8855
http://www.kyoryori-yokoi.jp/

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2009年07月17日

尾瀬 (日本橋)

寿しとステーキ


「どこに行こうか?」と銀髪。「もう決めました」と部下。昼食会の場所は銀髪を煩わせることなく決定していた。会社の近くだが、聞いたことのない店だ。ネット上でも情報は少ない。「ステーキのコースを頼みました」と言われたが、昼にはちょっと重い。「他に何かないのか?」と聞けば「寿司があります」と答える。ステーキと寿司? なんじゃそれは

3月に開店したばかりというだけあって、まだ真新しくてきれいな店だ。カウンターとテーブル席、小さな個室が2つある。我々が入った方は大きい個室だろうが7人ではちょっと窮屈だ。椅子の後ろを歩くスペースはないので、バケツリレーの要領で皿を渡していく。

先付け

鮨コース(3,000円)、和牛ステーキコース(3,600円)のどちらも先付けは一緒。かんぴょう煮、椎茸といくら、ひらめの昆布締めの3品。悪くない。

鮨コース

海老しんじょに続いて鮨とお吸物。思ったよりも美味しい。

和牛ステーキコース

スープ、サラダ、ステーキ、ごはんと鮨コースよりボリュームがある。銀髪は鮨コースを選んだので、部下からステーキを一切れ恵んでもらったが、なかなか美味しい肉だった。夜のメニューを見ると特選和牛ステーキなるものがあるから、ランチコースの肉は一段下なのだろう。それでも脂が乗っており、年配者にはちょうどいい。

「最後はデザート?」と聞いたら、コースはこれで打ち止め。夜のコースも7,800円のコースを除いてデザートはついていない。甘味嫌いの銀髪には嬉しい献立だが、他の人たちは残念がっていた。

寿司とステーキの組み合わせをいかがわしいと思ったのは間違いだった。和風ステーキと言ってくれれば違和感はなかっただろう。

店名の由来を聞き損なった。メニューを見ると夜は「鬼怒」「日光」「華厳」「尾瀬」と4つのコースがある。主人は栃木県の出身だろうか。あるいは日光、尾瀬を熱愛しているのだろうか。今度は夜にカウンターに座って聞くことにしよう。

尾瀬
東京都中央区日本橋1-2-2 親和ビル1F
03-6214-2761

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2009年07月14日

[和味 りん](新宿)

繁華街の外れにある落ち着いた日本料理店


入り口に立つと、どのレベルの店かだいたい分かる。りんは店の前を通る度に気になっていた。しかし階段を下りるのはそれなりに勇気がいる。たまたま雑誌で紹介記事を見て、行く決心をした。電話をかけると女性の応対が素晴らしい。いい店であることは決まったようなものだ。

カウンターに座りメニューを見ると、目移りして何を食べたらいいか決まらない。目の前で立派な型の鮎が焼かれている。「どこの鮎ですか?」と聞くと、目の前の若い板さんが「岡山です」と答える。すぐに板長らしき人が「養殖です」と付け加えた。さすが板長、こちらの聞きたいことがよく解ってらっしゃる。

付け出し、刺身盛合せ

鮎は要予約で個室の客に運ばれて行った。メニューの「本日のお造り」には各魚の産地が書き添えられている。もちろん天然物でブランド魚も多い。「少しずつ盛り合わせましょうか?」と女性店員。電話の彼女に違いない。城下かれい(大分)、かつお(気仙沼)、あかいか(萩)、しめ鯖(松輪)、あおやぎ(北海道)。二人で分けやすいように4切れずつ。付け出し、刺身、どれも美味しくてとても順調だ。

はも木の芽焼き、豚角煮和風ブイヨン仕立て

シャリッ、シャリッ、シャリッ!鱧の骨切りは何度聞いてもリズミカルで美しい。この調べで不味いはずがない。和風だしの角煮もなかなかのもんだ。

料理や日本酒を頼むと後ろに立つ若い店員がきれいに動く。アルバイトのようだがよく教育されている。電話をしたときに受けた女性の印象は、全ての店員にも当てはまる。
「飲んだことがない酒ばかりですね」と言うと、板長が「酒屋さんが奨めてくれるので」と正直だ。目利きが出来る料理人も立派だが、プロ同士の信頼も重要だ。

はものにゅうめん、白玉ぜんざい

はもそうめんと勘違いしたが、料理の流れを見て気がついた。鱧でだしをとった上品な味で、吸物のように全部飲み干した。白玉ぜんざいも酒呑みでも嫌にならない甘さだった。

帰ってホームページを見たらオーナーは飲食店とはまったく違う業種で驚いた。板さんの名刺を見ると店長となっているが、ブログも書いているので実質的にはりんの経営者のようなものだろう。女性店員も雇われ従業員とのこと。銀座の「おぐ羅」「京ふじ」「バードランド」など従業員の電話応対がいい店はどれも素晴らしい店である。

新宿では貴重な落ち着いた大人の店。それでいて銀座ほど高くないので若者も行ける。贔屓にしたい店である。


和味 りん
東京都新宿区新宿5-17-6 地下1階
03-3205-7252
http://www.wami-rin.com

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2009年07月07日

[銀座 座屋](銀座)

ミシュランの星たちに負けてないよ


♪一丁目の柳がため息ついて 二丁目の柳がささやいた♪ 口ずさみながら銀座柳通りを歩き、昭和通りに出る前のビルで立ち止まった。「ここだ!」一発で見つけると気分がいい。
エレベーターではなく階段を下りる決断をした。階段も店の一部になっている気がしたからだ。思ったとおり導入部から店内まで雰囲気のある店だ。ど真ん中が好きな銀髪なのに案内されたのはカウンター奥のコーナー寄りの席。店主の岡添さんと名刺交換をした。

「くれから取り寄せた心太(ところてん)です」と出された先附け。呉?あれは広島だしなーと思いながら手書きのメニューを盗み見て久礼と分かった。蒸し暑い中を歩いた後の冷たい心太とビールは最高だった。
ホッとしたのも束の間、ショーが始まった。かつおを藁で燻す炎が上がる。初めて見る光景だ。皮はガスコンロでしっかり炙る。ニンニクを乗せて塩で食べるように言われた。「これはかつおじゃないねー」と言うと岡添さんがニンマリする。「最初からこんなに飛ばして大丈夫?」と聞くと、自信たっぷりの笑みが返ってきた。

「オーッ!」雛壇のようにして二人分の八寸が出てきた。料理をする岡添さんの手の動きを見ていたにもかかわらず、完成して出て来ると驚きの声を上げてしまう。あっ、俺の席は一等席だ!遅まきながら、気がついた。目の前で岡添さんの仕事が見える。会話するにもベストの場所だった。

冷たい玉蜀黍(とうもろこし)のスープに入ったじゅんさいが口の中で震える。金目鯛の美味しいこと。思わず笑ってしまう。最近、美味しいものを食べると笑う癖がついてしまった。

フレンチマスタードの瓶を見せられた。「鴨はフランス産ですか?」食材の殆どは高知から送られて来ると聞いていたが、これはというものは外国産でも使う。
日本酒は4本目に入る。18あるという高知の蔵元すべての地酒を揃えており、その中から料理に合わせて出してくれる。ワインではよくやるが、日本酒をお任せにしたのは初めてかもしれない。

土鍋ごはんが炊きあがった。岡添さんの奥さんの80歳を超えるお婆ちゃんが作る四万十川源流産「ヒノヒカリ」。なんともいえない薫りが立ち上る。

ごはんの用意をしてくれている間に漬物などで日本酒を飲む。最高だね。


まずごはんに醤油をかける。高知の地鶏・土佐ジローの小さな卵を軽く混ぜてごはんにかける。たまごかけご飯の写真を見ると思い出して涎が出てきてしまう。ご褒美のごとく、煎餅のようになったおこげを食べる。何とも幸せな時間である。

最後はすいか尽くしのデザート。最後まで手抜きはない。帰る前にトイレに入り大きく頷いた。ここにも神経が行き渡っている。

食べ慣れた素材を使っているが、どれも初めての味ように思わせるのは神楽坂の「石かわ」に似ている。和を超えた料理の発想は麻布十番の「かどわき」を連想させる。しかし、ほんわかとした楽しげな雰囲気は、座屋が抜きん出ている。高知でスタートして、神戸、銀座と店を増やしてきた。次はギリシャで店を開きたいと言う。若いのにたいしたもんだ。ミシュランの選考委員はもう来たのだろうか。フランス人にたまごかけご飯の美味しさがわかるかなー?

岡添さんに勧められるまま、帰りはエレベーターに乗った。1階でドアが開くと岡添さんが待っていた。最後まで驚かせ、笑わせてくれる人だ。イヤー、楽しかった。


銀座 座屋
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル 地下1階
03-3248-9090

文月(7月)のお献立(1万円コース)

[先附] 久礼心太 車海老・茗荷・青林檎・蓮芋
[御造里] 鰹、鯛、ひらあじ
[八寸] 手長蝦、鬼灯トマト、昆〆鯛と糸瓜の酢物、だだ茶豆、にが瓜クリームチーズ、馬肉ユッケ、水茄子搾り
[冷椀] 玉蜀黍の摺り流し椀 蛸・雲丹・蓴菜
[炭焼] 高知産金目鯛翡翠焼
[爽肴] マグレ鴨と夏野菜蒸物・粒辛子餡掛け
[揚肴] 鱧筒揚げ、薯蕷モロヘイヤ、忍び山葵・まこも竹
[土鍋御飯] 四万十川源流産「ヒノヒカリ」生産者 岩崎花美
     土佐ジロー卵
[御数] 高知漬物
[甘味] すいか尽くし

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2009年07月01日

[坐来](銀座)

大分県のお店


「アラカルトでもいいんですよね?」「基本的にコース料理を食べていただきたいのですが…」電話のやり取りでおおよその雰囲気は分かる。言われたとおり任せた方が良さそうだ。

ウェンディーズの横手にあるエレベーターホールには、数人の紳士が集まっていた。8階で降りると大分県物産品ギャラリーにも紳士達がたむろしており、接待の相手がエレベーターを降りる度に駆け寄っていく。窓際のテーブル席もほぼ一杯の賑わいよう。銀座にはまだまだ銀髪が知らない人気店がたくさんある。

先付け、前菜、きらすまめし

献立には読めない字や、意味不明のことばが混ざる。どんなものが出て来るか、見てのお楽しみだ。
きらすまめしとはおから(きらす)とありあわせの魚(この日はカジキマグロ)を使った臼杵市の郷土料理とのこと。かぼすの香りがとてもよくて、おからとは思えない逸品である。

お造り

せっかく選んで座ったカウンターだが、オープンキッチンが見渡せるといった感じで、料理人と気軽に話すところではない。若い料理人がひととおり魚の名前を言って、すぐに持ち場に戻ってしまう。物足りなさそうにしていると、奥から年長者が飛んできて話をしてくれる。さすがは料理長、しっかり客の様子を見ていた。

酒肴

使うのはもちろん大分の素材。関あじ、関さば、城下かれいなどの魚介類、豊後牛、椎茸、かぼすなど有名なもの以外にも豊富な食材がある。大分の酒としてはいいちこに代表される麦焼酎がよく知られているが、日本酒も捨てたものではない。この日はメニューにない限定酒「豊潤」を飲むことが出来た。純米酒だが吟醸酒にも劣らない美味しい酒だった。

主肴、〆の逸品、プリン

福岡の胡麻さばの茶漬けに似た鰤のゴマ出し茶漬け。竹の筒に入っただし汁をかけて食べる。「〆の逸品」というのは決して大袈裟ではない。

銀髪が残したプリンを見た料理長に「これは不味い!」と言ったら、顔色が変わる。慌てて「イヤー、本当は甘いものが苦手でね」と安心させた。悪い冗談だと知りながら、いたずらな心が我慢できない。
県が株主というだけあって、大分の面汚しになるようなことは出来ない。真剣勝負の店に下手な冗談は慎むべきだった。

帰り際に店長兼総料理長とマネジャーが挨拶に来てくれた。なかなかいい店でしたよ。

 
坐来
東京都中央区銀座2-2-2 新西銀座ビル8階
03-3563-0322


献立

先付け 国東 銀太刀 背越し 朝摘み赤紫蘇よせ 瓜香
前菜 竹田 玉蜀黍 掻き揚げ 無花果 麦こがし
造り 関あじ 関伊佐木 真子鰈 臼杵郷味 きらすまめし
酒肴 玉蜀黍 雲丹焼き 豊後牛 焼き椎茸
主肴 国東稚鯛 冬瓜 香り蒸し合せ
〆の逸品 佐伯 鰤 ゴマ出し茶漬け 香の物
甘味 

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2009年06月19日

[いづ政](湯島)

銀座の名店・出井は湯島で生きている


「昔、銀座に居たのでわざわざ来てくれるお客様が多いんですよ」と主人が言う。店の住所が6丁目と聞いてピンと来た。入り口に書かれた「関西割烹」と銀座6丁目と来れば、出井しかない。それなら安心して料理は任せた方が良さそうだ。

付き出し、こちの吸物

「出井出身と言えば、四谷のゆたかもそうですよね」と言うと、一気に主人との距離が縮まった。思ったとおり先輩、後輩の仲。ゆたかの主人は引退して代替わりしたことを二人で残念がった。

お造り(こち、かつお、はも、うに、さざえ)、たこ唐揚げ

いづ政の名物はたこの唐揚げ。マスコミの取材もこれに集中するそうだ。揚げる前に茹でてあり、独特の歯応えとなかなかの味付けだ。メニューを見ても料理法を想像できなかったので、やはり任せて正解だった。

あま鯛一夜干し、茄子油煮

一夜干しの上に出汁がかけられた。「アッ!ゆたかと一緒だ!」思わず口にする。本来焼くときに使う出汁を、仕上がりにかけるのはいづ政のオリジナルと言う。それを兄弟子のゆたかも取り入れたとのことだった。自ら作った一夜干しとの絶妙のコラボレーションに湯島で再会できるとは思わなかった。

岩牡蛎、小芋煮ころがし

話を中断して岩牡蛎と奮闘する主人。日本海産と思って見ていると、「こんなの初めてですよ」と嬉しそうに差し出された。殆ど地元の宮崎で消費されていた牡蛎が、不況のせいで県外にも出荷されるようになったそうだ。しっかりした身で中ほどは濃厚な味がする。

唐辛子味噌きゅうり、もずく雑炊

唐辛子味噌を頼んで、マイ唐辛子を鞄から取り出した。「八幡屋のBIRD EYEで、これが一番辛くて美味しい」と自慢すると主人も持っていると言う。話を合わせているだけかと思ったら、冷蔵庫から袋を取り出して見せてくれた。思わずカウンターの向こうに手を伸ばし握手を求めてしまった。
最後はもずく雑炊。これはゆたかのオリジナルで、今はゆたかでも食べられないと言う。

大阪人でも知る人が少なくなってしまった関西料理。京料理と区別がつかない人も多い。本家がなくなってしまっても誇りを胸にして、熱い友情を持ち続けるなんて、感動してしまう。主人は29歳で独立して還暦を迎えるまでになった。今後も関西料理の伝統をしっかり伝えていって欲しいものだ。


関西割烹 いづ政
東京都文京区湯島3-38-3
03-3832-3210

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2009年06月16日

[鮎正]③(新橋)

美味い!笑っちゃうほど美味い


夏の盛りの雄鮎、秋の子持ちの鮎を昨年食べて、次は何としても出始めの鮎を食べようと思っていた。ところが天然鮎の解禁日を見誤った。島根県高津川の解禁日はいつもより早い5月20日と知り、慌てて電話をしたが7月まで予約は取れない。粘ったら開店早々の5時~7時までならOKとのこと。ホッと胸をなでおろした。

骨せんべい、前菜

ドアを開けるとこちらを見た店員の表情が一瞬和んだような気がする。カウンターの真ん中に座って骨煎餅でビールを飲んでいると主人が現れた。今度ははっきりと顔に笑みが広がる。「オッ!今年も来たな!」という感じだ。

鮎の味噌仕立て、背越し

味噌仕立ても背越しも初めて食べた。鮎が大きくなると身だけの刺身になるが、今の時期は背骨ごと引いている。初夏らしく美しい逸品だ。

塩焼き

頭から食べて思わず「美味い!」と言った。何故か笑いが込み上げる。もう一度食べてまた「美味い!」。ハフハフ、ハッハッハッ!相方のしゃべくりを無視してまた「美味い!」
焼き場を見ると若い料理人が真剣勝負をしている。任せてもらえるまで何年も修行するという。まったく凄いものだ。

うるか茄子、うるか

鮎正自慢のうるか茄子は3度目だが、前2回と微妙に味が異なる。若鮎の内臓はどこか爽やかである。無理を言って来た甲斐があった。いつも同じ料理のように見えて、季節により異なった趣がある。

揚げ物、酢の物

忙しいのでアラカルトはダメと電話で言われたが、コースにして良かった。調理法が変わって素材の特徴を余すことなく味わうことができる。

鮎ご飯、青梅のデザート

鮎ご飯がまたまた美味しい。客ごとに炊き立てが出て来る。2人分で4匹入っていると聞いて驚いた。コース全体で7~8匹食べた計算になる。イヤー、満足満足。

早い時間に来たので今日も主人をほぼ独占。料理の話はもちろん、馬鹿話にも付き合ってもらえてとても楽しい。「カウンターに座って女を口説く奴は馬鹿だよねー」と銀髪も舌好調だった。

店を出て連れが「右隣で口説いていたの分からなかったんですか?」と銀髪に注意をする。「エーッ!そうだったの?気にしない、気にしない」何を言われたって気分は高揚したままだった。

鮎正
東京都港区新橋4-17-5
03-3431-7448

2009年秋、移転しました
鮎正
東京都港区新橋4-21-14
03-3431-7448

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2009年05月20日

[織音]②(日本橋)

カウンターの割烹もいい


織音は2度目だが夜は初めて。カウンターに座って割烹料理を楽しむことにした。「昼に来たときのことをブログに書いたんですよ」と言うと、「あー、あの時の。みんなで読ませてもらいました」と女将が微笑む。カウンターの中の上神田さんが「今日は逃げ出したい気持ちです」と冗談を言う。

安いコースだと物足りないし、高いものは多すぎる。メニューを見ながら迷っていると、6825円のコースを示し「基本のコースにお好みのものを足したらどうですか?」と勧められた。「私が採って来た山菜もありますよ」と上神田さんに言われて決心した。「お任せします」




「酒選揃い」は箸染(車海老と蚕豆の黄金和え、筍と百合根と花山葵の梅肉絡め、うるいの辛子明太掛け、山独活の辛子酢味噌)、凌ぎ(冷昆布うどんと日本橋野菜)、椀(蓬餅とあいなめ葛打ち)、差味(さしみ二種)、風韻(丸茄子味噌田楽)食事(すっぽんご飯 黄身生姜餡)で構成される。昆布を練り込んだうどんは珍しい。和食の椀にムール貝は初めての経験。スッポンごはんにカレーとは驚かされる。

「そら豆は鞘が空を向いてなるので空豆や天豆、繭に似ているので蚕豆とも書きます」と教えられる。「山独活って何?」「日本橋で野菜ができるの?」各人に配られたメニューを見ながら話が弾む。

「何か当ててください」と出されたものの味や食感はイチジクのようでもあり、キウイのようでもある。またたびと教えられて驚いた。人間も食べるものだとは思わなかった。キウイはまたたび科ということなので味が似ているのも頷ける。
スタッフが作ったという鰹の酒盗には肝が入っているとのことでちょっと苦味がある。日本酒好きの銀髪には危険極まりない。
なるこ百合、あぶらこごみ、せり、姫筍などもコースの途中で出してくれるのでますます酒が進んでしまった。

カウンターには我々の右隣に接待風の3人が座り、後ろの大きなフロアは貸切りで満席、それでもあまりうるさくなくて気にならない。ゆっくり時間が流れていくような感じがするのも、目の前の上神田さんや女将の接客のお陰だろう。

昼の会席も良かったが、夜の割烹も楽しめた。オーナーシェフが仕切る割烹が好きな銀髪だが、一流ホテルにある割烹のような織音もなかなかいいもんだ。


織音(おりね)
東京都中央区日本橋3-6-2 日本橋フロントB1
03-3516-1097
http://www.orine.jp/

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2009年05月13日

[鈴なり]⑧(荒木町)

ステップアップは果たせるか


今日は珍しく一番乗り。6時をちょっと回ったところでカウンター席に座った。料理は1万円のコースを電話で予約してあるので、スムーズに食事は進行していった。

うるいと片栗菜、富山産岩牡蛎

八寸(本ミル貝、赤貝、子持ち昆布、蒸し鮑、ほたるいか、バイ貝

徐々に客が入りだす。驚いたことにカウンターの右隣と左隣に中年の男性客がずらりと並んだ。先日発売されたグルメガイドでも鈴なりが紹介されていた。すっかり予約が取れない店になってしまったが、圧倒的に女性客が多かった。男性にも支持されるようになったのは好ましい。

稚鮎とこごみの天ぷら、栗かに、玉地蒸し、白海老

青森産の栗かには初めて食べた。珍しい食材があるとすぐに取り入れるのが店主の村田さんのいいところ。珍しいもの好きの銀髪は素直に感動する。

マコカレイ、かつお、メジマグロ

変わったものがもう一つ。アシスタントの板前が違う。独立心旺盛な力のある板前は去っていく。板前を育てながら使っていくのは大変だろう。村田さんの苦労が分かる。

スッポンの焼き物、焼き竹の子(金沢産)、伊勢海老

スッポンの焼き物は気に入った。塩味がちょうどいい。ここまでで2時間が経過した。料理が出るスピードが遅くなってきた。振り向くとテーブル席は女性中心に埋まっている。左の男性客3人が料理を土産にしてもらい席を立った。

あさりごはん

銀髪もあさりごはんを少し食べて残りは握ってもらった。デザートの杏仁豆腐を食べ終わった時には既に3時間が経過しようとしていた。

我侭な客を満足させるのは大変だと思う。進歩してはじめて現状維持のイメージとなる。従業員を育てながら、料理の質を高めなければならない。もちろん利益を上げて次の展開に備えることも重要だ。

勘定をして若い板前に声をかけた。「頑張ってね。鈴なりの将来は君にかかっているからね」緊張した顔に初めて笑みが広がった。従業員たちが育ち、鈴なりが次のステージに駆け上がることを期待したい。

鈴なり
東京都新宿区荒木町7 清和荘1F
03-3350-1178

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2009年05月12日

[嶋村]②(日本橋)

気楽に行ける老舗割烹


客を迎えるにあたって料理屋を決めるのは難しい。行きつけの店なら我侭がきくし安心できるが面白味に欠ける。漫画美味しんぼでは客の生い立ちや性格、趣味趣向等を熟知した上で接待せよという。久し振りに東京に来る友をどこに連れて行くか考え込んだ。最終的に彼が長年勤務した日本橋にあり、知る人ぞ知る老舗割烹料理屋・嶋村に決めた。

お通し、ほたるいか、空豆

堅苦しい場を嫌うので1階のテーブル席にした。「初めて来た」と言っていた彼も、ビールから日本酒に変わったところで「あのカウンターで昼飯を食べたことがある」と目を輝かせ始めた。苦労のし甲斐があったというものだ。

お造り(ひらめ、さざえ、かつお)

壁に貼られた短冊の魚をピックアップしたら立派な刺身の盛合せが出てきた。さすが名料理店だ。実に上手に盛り付ける。

鯛兜の塩焼き、煮付け

嶋村の名物は鯛兜の煮付け。塩焼きも捨て難いので2品頼んでみんなで突っついた。もっと大きいイメージがあったが、一人一皿でもよかったかもしれない。

出し巻き玉子、地鶏塩焼き、新じゃが煮、3種入り雑炊

老舗割烹といっても仲居さんはとてもフレンドリーで気楽な雰囲気。居酒屋気分で予約なしに扉を開ける客も多い。我々も名物の鯛兜を食べた後は居酒屋で頼むような酒の肴で盛り上がった。

壁を見ると何やら番付表のようなものが額に入れて飾られている。これが文久元年の大江戸料理屋番付表で嶋村の名前が中心に大きく記されている。文久元年は西暦では1853年で、黒船来航(1855年)、安政の大獄(1860年)、桜田門外の変(1862年)より前。嘉永3年(1850年)創業から長く存続できた秘訣は、妙に格式張らず庶民にも愛される店作りにあったのではないか。今の嶋村を見て勝手に納得する銀髪だった。


03-3271-9963
東京都中央区八重洲1-8-6
03-3271-9963

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2009年05月02日

[らん月]⑤(銀座)

朝掘り竹の子の刺身


「悪いなー、またらん月で」とKさんが申し訳なさそうにする。「一緒に食事すると決まったときから諦めていましたよ」と笑ってあげた。10店ぐらいの馴染みの店をローテーションできる人が羨ましい。銀髪グルメ紀行を始めてから約3年半、休日を除いてほぼ毎日新しい店を探すのは辛い。

「すきしゃぶ、プレミアムビーフカツレツ、プレミアムハンバーグ、グリーンサラダ」K氏がスラスラとオーダーするのを聞きながら、メニューを繰っていたら竹の子の刺身が目に飛び込んできた。

朝掘り竹の子の刺身

竹の子の代表品種孟宗竹は801年に京都府長岡京市の海印寺、寂照院の開山・道雄上人が唐から持ち帰ったと言われる。この日の早朝、掘り出した長岡京の高橋さん夫妻の顔写真もメニューに載っている。まさに本場の竹の子の刺し身を食べられると喜んだ。

竹の子の伝来には諸説ある。近畿農政局のホームページでは「承応3年(1654)宇治黄檗山万福寺に明国の僧隠元が孟宗竹の母竹を携えて来日し、これが西山の麓一帯に定着し、たけのこが食されるようになったといわれています」とある。小学館の食材図鑑には「薩摩藩主島津吉貴によって元文元年(1736年)に現在の鹿児島市磯公園に株が植えられた」と記される。

実際、福岡、鹿児島など九州地方が竹の子の主な生産地である。もっとも平成19年の消費量の92%は輸入品が占めており、その大半は中国産というから日本での生産量争いはあまり意味がないかもしれない。長岡京の竹の子を食べられたことを素直に感謝したい。

越谷、鈴木さんの生卵

らん月のこだわりは生産者の顔が見える食材を使うこと。脇役であっても例外ではない。すきしゃぶに使う生卵の生産者は越谷の鈴木さんだそうだ。箸で挟んでも簡単には割れない。

そうそう、今回もKさんがプレミアムハンバーグを頼んだ。前回の記事(http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/04/post_1218.html)で予想したとおり、しっかり中まで火が通っていた。本当に余計なことを言ってしまったと後悔している。

銀座らん月
東京都中央区銀座3-5-8
03-3567-1021
http://www.ginza-rangetsu.com/

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2009年04月27日

[かゆう](福岡)

リーズナブルに楽しめる天ぷら割烹


「西中洲とは通だね」褒められた部下は、別の地元の人に紹介されたとは言えずに曖昧に笑った。お通しから細やかな仕事が見て取れる。カウンターに立てかけられたメニューが見事だ。白墨で店主の奥様が書いたそうだ。

お通し、メニュー

部下が常連ぶって次々に頼む。福岡に来たら定番のごまさば。目の前でポテトチップを作るのを見て不思議に思っていたら、看板メニューのポテトサラダになった。

ごまさば、ポテトサラダ

「鯨はミンク?」と聞いたら鰯クジラとのこと。「珍しいね。それならもらいましょう」実にきれいだ。さえずりも赤身も美味い。嫌がる部下に無理やり食べさせたら再び箸を伸ばした。「天然鰻じゃないの?」と部下が残念がる。養殖物だが柳川産と聞いて食べることにした。白焼きは関西風の仕上がりである。

鯨刺身、鰻白焼き

「おーッ!えつがあるじゃないか」地元の人が解説を始める。カタクチイワシ科に属し筑後川に産卵する。東京人にとっては幻の魚かもしれない。美しい姿に相応しい繊細な味の魚だ。
イチオシの日本酒は店名と同じ「かゆう」。店主が一流料理屋の料理人たちと米作りから搾りまで参加して若竹屋酒造に詰めてもらった酒である。日本酒にこだわる店が悪いはずがない。

エツの天ぷら、辛子蓮根

もちろん看板料理は天ぷらである。部下が食べたことがないと言うこしあぶらとこごみを頼んであげた。

天ぷら(畳いわし、有明海苔、こしあぶら、こごみ)

最後は天むす。名古屋大須・千寿の天むすをイメージしたので、出てきたおにぎりを見てちょっと戸惑った。随分と試行錯誤したと言う天むすは美味しかった。

天むす

東京で修行して九州出身の奥さんに手を引かれて店主が西中洲に落ち着いたのが2年半前。リーズナブルに美酒美食が出来る店を手に入れた博多の人たちは奥さんに感謝しなければならない。

美酒美食 かゆう
福岡県福岡市中央区西中洲5-3
092-752-6779

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2009年04月23日

[伊勢定](日本橋)

うなぎ会席


「うなぎ屋を予約しました」と言われて考え込んだ。だらだら酒を飲んでから最後にうな重では満腹で動けなくなるし、分け合ってどんぶり飯をつつくのもゾッとする。コース料理の内容を見たら、最後の食事は半うな丼になっている。よし!5,250円の「野立」に決めた。

ぬた、おから、お造り、焼鳥、うなぎの肝焼き

コースとは別に焼鳥とうなぎの肝焼きを頼んだ。苦味のある肝焼きは通好みで、酒を飲まない連中はあまりいい顔をしない。うなぎ屋定番のうざくを頼もうかと思ったが止めにした。酢の物を嫌う男は多い。

白焼き、う巻き、若竹煮

白焼きが出てきてようやくうなぎ屋らしくなってきた。う巻きもなかなかいい。伊勢定は日本酒の品揃えがいいのが気に入った。うなぎ屋で純米酒や吟醸、大吟醸を何種類も置いている店は他に知らない。

半うな丼、肝吸い

うな丼を仲居さんが各人の前に置いて行く。優しい部下がそれを奥に座っている人にまわそうとして仲居さんに止められた。先ほど白焼きの腹の方を食べた人には、蒲焼きは尾の方を出すらしい。公平に分配するという気配りには感心した。

漬物、水菓子

バランスの取れた良いコースだった。しかし、うなぎは大勢揃ってコースで食べるものではないと、あらためて思った。うざく、う巻き、肝焼きを肴に軽く日本酒を飲み、最後にうな丼を食べるのがベストではないだろうか。デザートなんていらない。

昼なら肝焼きでビールを飲み、うな重で腹を満たす。これが一番だな。

伊勢定
東京都中央区日本橋室町1-5-17
03-3241-0039

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2009年04月15日

[織音](日本橋)

接待にも使えるお店


「会員様ですか?」電話予約の際に聞かれた。そのとき織音は東急リゾート・ハ―ヴェストクラブが昨年10月に開いた会席・割烹料理屋だとは知らなかった。「近隣の方ですか?」と会員以外でも優しい応対に安心した。

社員6名を引き連れてランチに出かけた。5,040円の小会席、一人は刺し身、もう一人が鶏肉が苦手だと告げてある。

烏賊の文字が鳥に見えたので文句を言いそうになった。どうも老眼がひどくなって落とした照明の下では見えにくい。「品書きにさしみ醤油と書くのは珍しい」とMさんが指摘する。「ダシを加えて作っているのでしょう」と銀髪。名料理長らしく、さりげなくアピールしているように見える。


「立派だなー」刺し身の代替料理は見事な野菜尽くし。銀髪も刺し身がダメだと言えば良かった。「ぜんまいじゃありませんからね」煮物に入っている山菜を指して皆に知ったかぶりをする。色鮮やかなこごみである。

山菜の天ぷらはこごみ、ふきのとう、たらの芽の3種類。次の料理が出てくる間の話題は箸に向かった。再びMさんの指摘で変わった形状の箸であることに気付いた。「女将が器に凝っていますので」と店の女性に教えられたのは箸置き。裏返すと素材が書いてあり、集めてみると5種類あった。

本日のお楽しみデザートは夏みかんのゼリー。甘さ控えめなので銀髪でも美味しく食べられた。ここでも自家製か高島屋で買ってきたのかとたわいもない話で盛り上がった。

日本橋界隈は意外と接待に使える店が少ない。織音は6人用の個室が2つだけだが、大きな部屋でも席の間にゆとりがある。我々が大はしゃぎしても、他の席のおば様たちの迷惑にはならなかったと思う。6席の割烹や、バーもリゾートクラブらしい趣がある。

ホームページを見ると料理長は見事な腕前を持っているようだ。女将も経験豊富とのこと。次回はゆっくり割烹にでも行ってみようかな。


織音(おりね)
東京都中央区日本橋3-6-2 日本橋フロントB1
03-3516-1097
http://www.orine.jp/

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2009年03月25日

[新ばし 久](新橋)

和洋割烹


2年前の「日経おとなのOFF」でお一人様歓迎の名料理店という特集があった。一人で来る機会をうかがいながら時は過ぎ、結局2人で来ることになった。

有名な寿司屋「しみず」の並びだったはずだが見つからない。電話して尋ねると、看板はなく傘つきの裸電球だけが頼りだと分かった。店に入るとまだ6時を回ったばかりなのに席は殆ど埋まっている。我々はカウンターの一番奥、店主の目の前に座った。

ほたるいか、お造り

「雑誌の写真よりいい男ですね」と声をかけると「いつも言われます」と言う。続けて「冗談ですよ」と笑うが、真に受けてしまった。料理はローストビーフまでの5品がお任せで、足りなければ追加する方式。ほたるいかの黄身酢和えから和風割烹らしい料理が続く。

若竹煮、太刀魚

どの料理も丁寧な仕事ぶりで美味しい。太刀魚に添えられた大根おろしを見て「オッ、いいおろし道具を使っているね」と誉めると、連れも気付いて感心する。目の粗い大根おろしは水分が流れ出ずに甘味がある。骨を抜いてあるので魚も食べやすい。

ローストビーフ、ポテトサラダ

ローストビーフはお任せ5品の〆を飾るに相応しく、洋食屋風の料理に移るきっかけにもなる。マヨラーには不満かもしれないポテトサラダが軽やかでいい。

エビフライ、ツブ貝のフライ

雑誌で絶賛していたエビフライ。もちろん頭も揚げてくれる。ツブ貝のフライは珍しい。料理が出てくるたびにうるさい銀髪。「会話を愉しむなら手が空いている時を見計らって」と雑誌に書いてあったにもかかわらず、ずっと付き合ってくれた。

ホワイトアスパラのフライ、鰹節ごはん

旬のホワイトアスパラの後に白いごはんが出てきた。席についてすぐにごはんを炊くかどうか聞かれたので、てっきり混ぜごはんが出てくると思っていた。同時に出されたのが鰹節。カウンターの端に置かれた削り器には気付いていたが、こんな趣向とは思わなかった。ほんの少し醤油をかけて食べる鰹節ごはんの美味いこと。今では滅多に味わえないぜいたくなごはんだ。

食事と酒を愉しむもよし、ノスタルジックに浸るもよし。主人の店や食に対する思いを想像するもよし。楽しさ一杯の店だった。

新ばし 久
東京都港区新橋2-15-13
03-3500-5772

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2009年03月12日

[石かわ](神楽坂)

ミシュラン三ツ星の理由


ミシュラン東京掲載の店には行かない、と心に決めている。選考者が気に入らないとか、選ばれている店に納得できないとか、確たる主義主張があるわけではなく、単にミーハーに見られたくないためだ。銀髪グルメ紀行を書くためにカメラを構える姿は、どこからどう見てもマスコミに踊らされて喜ぶ馬鹿者そのものだろう。

お互いに兄弟と呼び合う友人から久し振りにお誘いがかかった。彼の秘書からのメールには、神楽坂の「石かわ」とある。移転する前に行こうとして果たせず、ミシュランに選ばれたので縁がないと忘れることにした店である。素直に喜んだ。

普通ならカウンターに座るところだが、写真を撮るには個室が有難かった。友人が到着するまでにおしぼりやお茶を持って店の女性が2人現れては消えた。店を出るまでに4人の女性が料理や酒を運び、誰に聞いても的確かつ優雅に説明してくれた。

ミシュランに『料理は枠にはまらない「石かわ流」』と評されているとおり、アンコウの肝に黄身酢をかけたり、寒ブリと辛み大根を併せたりと、どの皿も京料理のようでも少し違っている。若竹煮ではなくて、素麺と一緒に椀物にしてしまうと違和感を覚える人もいるかもしれない。銀髪はもちろん大歓迎である。面白い。

帆立の炊き込みご飯を2杯食べた。料理は月替わりとのことだが、何か名物料理というものはないのだろうか。入れ替わりやってくる女性の一人をつかまえて尋ねると鯛茶漬けだと言う。「出せるかどうか聞いてきましょうか?」となれば断る理由はない。

何と本日3杯目のごはんも首尾よく腹に収まった。主人の石川さんが挨拶に来てくれた。友人とは食事を共にする間柄らしい。「料理はもちろんだが、店の女性たちが素晴らしい」と話したら心底嬉しそうだった。ミシュランに選ばれる前から誇りと愛情を持って店を支えているスタッフたちに感謝していると言う。従業員を見れば社長が分かる。どの世界も一緒だ。

三ツ星の真価はそんなところにあるのかもしれない。ミシュランなんかどうでもいいけれど… 

連れて行ってくれた友人にも謝謝。

石かわ
東京都新宿区神楽坂5-37
03-5225-0173

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2009年03月08日

[江島]④(銀座)

今シーズン最後の松葉蟹


昨年11月6日に解禁された松葉蟹漁もいよいよ3月20日で終る。解禁後すぐに江島で食べたときには有難かったが、今回で3度目となると感激も薄くなるのだから我ながら身勝手だと思う。

入り口近くの水槽にはいつものように毛蟹が群れをなしている。ところが松葉蟹は2ハイしかいない。我々が予約したのが2ハイなので、他の客が食べる松葉蟹はないということになる。途端に有り難くも感激してしまうのだから我ながら愚かである。

予約がなくてもいつも数匹は仕入れている江島でも、さすがにこの時期になると事前の予約が必要。価格も跳ね上がっているので、冒険はできない。常連さんからの強い要望がなければ予約も受け付けないそうだ。ますます有難い。

本日の蟹は鳥取産を示す赤いタグがついている。1.2キロ以上もある大物で、一パイ2万8千円だった。お客様に爪や太い足の殆どを譲ったが、腹の部分でも身は簡単に取り出せて、甘く美味しかった。2ハイの蟹はすぐに食べ尽くされた。

5人に対して2ハイの松葉蟹では腹一杯にはならない。銀髪なら味比べに毛蟹を頼むところだが、常連氏は蟹だけでは飽きると受け容れてくれない。腹を満たすのはしゃぶしゃぶの役目になった。

みんな良く食べた。2人前で充分と思った肉も、足りずにさらに2人前を追加した。茨城産とはいえ、霜降りの上等な肉は蟹に負けないぐらい人気だった。

若い仲居さんに「雑炊は蟹にしますか、しゃぶしゃぶのスープを使いますか?」と聞かれると、間髪入れずに常連氏が「しゃぶしゃぶ」と答える。銀髪が「お客様に選んでいただいたらどうですか?」とたしなめたら、蟹好きの客が「しゃぶしゃぶでいいですよ」と気を使う。銀髪の淡い期待はまたしても葬られた。

再び活き松葉蟹を拝めるのは8ヶ月後になる。食べる機会が幸運にも訪れたらの話だが…


江島
東京都 中央区 銀座 3-5-4 十字屋ビル4F(松屋デパート向かい)
TEL:03-3535-3131
http://www.ginza-ejima.com/

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2009年02月20日

[大瓶猩々](神戸)

瀬戸内の幸を神戸で


「洋品店の主人がわざわざ店まで連れて行ってくれたんですよ」と部下が言う。ホテルに戻りインターネットで行き先を探そうかと思っていたが、手間が省けた上にこれほど確実な情報はない。

「あそこですよ」と指差す先の袖看板に書かれた店名は難しくて読めない。「タイヘイショウジョウと読むんですよ」と教えてくれたが意味は分からない。

カウンターに座るなり立派なお通しが出てきた。コース料理の前菜と言った方がいいかもしれない。刺身は他の地域のものも混ざるが、地物を単品でオーダーすることにした。神戸牛、中華料理、洋食などが名物だが、近くには明石があり瀬戸内海の幸に恵まれている。

渡り蟹、穴子白焼き

今はメスが旬の渡り蟹。タップリ卵が入っている。関東なら江戸前の穴子、関西なら瀬戸内・明石海峡の穴子が有名だ。

一息ついたところで店名の由来を尋ねた。名刺の裏には次のように書かれている。「猩々は形がサルで顔が人に似た中国の架空の動物で酒を好みます。大瓶猩々は観世流能楽の曲名で、猩々が酒に浮かれて舞を舞い、親孝行な若者を祝福し無尽蔵な酒壷(大瓶)を与えるという物語です。」

若布、イイダコ

店の壁には能面が掛けられている。主人も舞うそうで、いい趣味を持っている。髪が黒々としているので若く見えるが既に還暦とのこと。

ガシラの煮つけ

ガシラとはカサゴのこと。よく似た鎧メバルもガシラと呼ばれるそうだ。醜い魚だが、味はいい。地物の方がリーズナブルで美味しい。手頃な値段で飲み食いできる店である。

創業から20年以上というが、難しい店名でよくやってこれたと感心する。地元の人たちに支えられてきたのだろう。ほぼ満員の客たちに倣ってひれ酒を飲んだ。もう少し日本酒の品揃えがあれば嬉しいのだが、常連さんが求めないのであればそれも仕方ない。ぶらっと入ってきた我々よそ者も歓迎してくれた。それだけで充分である。

大瓶猩々(たいへいしょうじょう)
兵庫県神戸市中央区北長狭通2-5-1 タイシンサンセットビル7階
078-322-2215

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2009年02月17日

[ユック](新橋)

えぞ料理を老舗料理屋で


長兄と飲むことになった。「新橋あたりでいい店ないかな?」の問いに「ユックでどうだい?」と返ってきて戸惑った。先入観とは恐ろしいものだ。ユックの看板をあちこちで見たような気がする。チェーン店がいい店なのだろうか?

待ち合わせに遅れそうだ。急ぎ足で駅を抜けるとニュー新橋ビル1階ガラス戸の向こうに白髪頭が見える。不安そうに携帯を持ち上げたところで目が合った。
銀髪が2つ揃ってエスカレーターに向かう。4階の店に入って先入観の修正を迫られた。客層はほぼ我々と一致する。カウンターの向こうで料理人が忙しく働く。和装の女将がやってきて完全に考えを改めた。

お通し、かき

えぞ料理を謳うだけあってお通しの上にさりげなく鮭とばが乗る。店名のユック(鹿)は親会社である北海道定山渓温泉の旅館「鹿の湯」から来ている。アイヌ語に馴染みのない者にとってはいつもユッケと読んでしまう。

貝盛合せ

「貝三種盛りにウニも入れてよ」5分もすれば、久し振りに来たという兄もすっかり常連さんに戻る。チェーン店らしい写真満載のメニューだが、客の我がままも聞き入れてくれる普通の割烹料理屋だ。

金目鯛の煮付け

母の濃い味付けに似た水分が少ない煮物に兄弟大いに喜ぶ。弟が頭を求めると、兄は尻尾を選ぶ。腹身は仲良く2等分。昔は食べやすい尻尾の方が末っ子に与えられ、それを喜んだものだったが、母と過ごした年月が一番ではなくなって久しい。

かじか鍋

「かじか鍋は出来る?作って持ってきてよ!」と兄。「ここで煮ていいよ」と遠慮する弟。「大丈夫ですよ!」と快諾する板さん。女将が来て二人の顔を覗き込む。「似てる?似てない?俺の方がいい男だろう?もう一人は新潟にいるんだよ!」兄は饒舌だ。

今度は3兄弟で飲みに行こう。

えぞ料理 ユック
東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル4F
03-3567-3388
http://www.yukku.net/

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2009年02月13日

[游月]②(長野)

長野はやっぱりそば


前に来てから既に2年が過ぎていた。前回はタクシーで乗りつけて、カウンターに座った。他に客はなく、身体が暖まるまでしばらくかかった。今回は雪が残る路地裏の道を、恐るおそるゆっくりと歩いてきた。裏の階段を上がると暖かい座敷が我々を迎えてくれた。

カウンターでの一品料理と、座敷でのコース料理では店の印象が全く違う。料理は淀みなく運ばれてくるが、出番を今か今かと待っていただけに、晴れやかに登場してきたかのように見える。料理人も腕のふるいがいがあるだろう。

地元の人は游月のような料亭や割烹の類が少なくなったと嘆く。官僚の接待が殆どなくなったことが影響しているようだ。それでもどっこい生きている店は、何か秘訣があるに違いない。

海がない長野でも流通の発達で海の幸が楽しめる。東京からの出張者は魚も自分と同じ経路でやってきたと思いがちだが、長野は太平洋よりも日本海に近い。寒ブリが出てきても何の不思議はない。

米を炊く土鍋が普及したお陰で、最後に炊き込みご飯を出す割烹が増えた。それでも流されないのがさすがに長野だ。そばが出て来るとご馳走していただいた地元の名士たちも満足気だ。

一度外に出て、1階の扉を開けた。記憶よりも明るい店内でちょっと驚いた。寒い時候は記憶までも変質させてしまったようだ。それとも年齢による衰えがかなり進行しているのだろうか。いやいや注ぎつ注がれつ熱燗を飲みすぎたせいだ。団塊の世代を超えた方々は酒も強いし話も巧みだ。

女将の明るい印象は変わらない。何よりもこの気取らない笑顔がお客様を失わない秘訣なのだろう。座敷もいいが、次に来るときはやはりカウンターに座ろう。女将の話も立派なご馳走である。


味楽処 游月
長野県長野市新田町1110-5
026-232-0078

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2009年02月05日

[山はら]④(築地)

立派な、立派なあんこう鍋


昨年末、山はらに行き損ねた人の希望で再訪することになった。山はらのメニューは2種類。大きな刺し盛が共通で、蟹と焼き魚(または煮魚)+寿司かあんこう鍋を選ぶ。今回はあんこう鍋を予約した。

いつものように初めての人は市場内に足を踏み入れると緊張しているのが分かる。2度目の人は銀髪が自慢気に話すのに同調する。もう立派な常連さんだ。
店に入るとたくさんのスリッパが並んでいた。「いつもこうなんですよ」と銀髪が笑う。階段を見上げると仲居さんと目が合った。「アラッ!」嬉しそうにしてくれる。

本マグロ、ヒラマサ、メジマグロ、キンメ、いか、タイ、ホタテ。6人前となると刺し身自体のの量が多く、主人もさすがに「立派なのは大根のつまだけです」とは言わなかった。人数に合わせて上手に盛るもんだと感心した。

あんこう鍋を食べるのは一昨年の12月以来。「鍋におさまらないぐらい大きな鯛がだしなんですよ」とみんなに予告したのに、前回より小さな鯛で拍子抜けした。それでも鍋のだしには立派過ぎる鯛ではある。鍋の具の方は前回より大量でびっくりした。みんなも圧倒されている。仲居さんが「鍋奉行はどなたがやっていただけますか?」と聞く。銀髪がサッと手を上げた。

仲居さんを呼ぶ声が聞こえる。この日は全部で5組が入っており、入り口に並んでいたスリッパは飾りではなかった。忙しいのは仲居さんだけではない。主人も料理にてんてこまいなのか、楽しい話を聞かせてくれる時間もないようだ。もちろん鍋奉行も忙しい。

立派なあんこうの肝に感心しきり。12月初めに来た前回より大きくて美味しい。今が旬である。身は厚く、フランス料理のようにソテーにしても美味そうだ。皮や胃も入り、これがあんこうの七つ道具かと満足する。

最後は雑炊。銀髪が卵を溶き入れるとみんなが感心してくれる。家では何もしないのだろうか。関白が奉行をやったって恥ではないのに。

出口に主人、奥さん、仲居さんが揃った。一仕事終えてホッとしている様子が窺える。いつもながら、楽しい山はらだった。


山はら
東京都中央区築地5-2-1
03-3541-8747

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2009年01月16日

[つる幸](金沢)

小京都の美味しい料亭


「天候チェック中」の文字が画面を右から左に流れていく。「定刻どおりに出発することになりました」のアナウンスにホッとしたところで、「天候次第では羽田空港に引き返すこともあります」と不安を煽る。無事に小松空港に着陸、バスも順調に金沢駅に到着した。地元の人に苦労話をしようとしたら一笑に付された。富山空港ならともかく、自衛隊と共用の小松空港は殆ど問題ないと言う。

何はともあれ予定通り昼食会に間に合った。場所は地元の人に探してもらったが、なかなか苦労をかけたようだ。狭い部屋ながらもちらつく雪が見えて風情がある。料理は正月らしく金粉入りのお屠蘇から始まり、盛合せはおせちを思わせる。

白玉貝をすりおろした蓮根で包んだ蓮根饅頭の椀物、すずき昆布〆、ぶり、あかいか、甘海老を配したお造り。2代目主人は道場六三郎と料理の鉄人勝負をしたと聞くと、大向こうを唸らせる料理を出すと思いきや、なかなか繊細でやさしい味の料理を作る。

ほんのり柚子が香る和風かにしゅうまい、ゆり根、穴子、銀杏などが入った蕪蒸し風の椀物もなかなかのものだ。なまこと加賀野菜、ごはんに移るちょうどいい箸休めになる。残った日本酒を飲み干す場面だが、残念ながらランチの酒はお屠蘇のみで終っている。

給仕をしてくれた若い女性のアクセントが京都弁に聞こえたが、能登の出身と聞いてちょっと意外。店と料理の雰囲気によく合う女性だから京都出身と思い込んでしまったようだ。

うなぎには品よく薄くタレがかかっている。もう少し味が欲しくてタレの入った器を持つと温かかった。鉄人勝負だけでなく、数々の料理番組に引っ張りだこというのも頷ける。

水菓子、和菓子と続いて抹茶が来た。地元の人は時計を見て1時間半も経っているのに驚いていた。美味しくて楽しければ時が過ぎるのは早い。

雪が掃き寄せられ、店に入る時にはなかったむしろを踏んで門の外に出た。振り返ると女性店員だけかと思ったら、若い料理人も一緒に頭を下げていた。料理の合間に挨拶に来た女将はともかく、ランチにもかかわらず料理長が外でお見送りしてくれるとは驚いた。俄然、夜に来たくなった。きっと美味い酒席になるだろう。


つる幸
石川県金沢市高岡町6-5
076-264-2375
http://turukou.com

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2009年01月15日

[鈴善](大宮)

頑張れ大宮の関西割烹


地元の人を4人迎えて食事会をすることになり、部下がネットで調べた3店の中から鈴善を選んだ。大宮駅東口の狭い道は不況を忘れるほど人ごみで賑わっている。牛丼屋の角を曲がって少し歩くと右手に大きな提灯が見えた。入り口に立ってネットの写真との違いに戸惑った。

階段を上がって店内に。生簀に泳ぐトラフグを見てちょっと安心。ところが座敷に入ると我々を含めて7人には狭すぎる部屋に顔が曇った。かき入れ時では止むを得ないかと諦めかけたものの部下がダメ元で交渉するとあっさり広い部屋に移してくれた。

煮こごり、皮湯引き、てっさ

「せっかくですから広い方がいいでしょう」と2部屋を一つにしてくれた店主の笑顔がいい。全員が揃って宴席が始まると食事に酒に話に口は忙しい限りで、みんな満足してくれているようだ。

唐揚げ、焼きふぐ、白子

唐揚げや焼きふぐが一匹丸ごととは珍しい。小さいけれどこれもトラフグと店員が答える。先ほどまで泳いでいたふぐから取出した白子は中が少し生のように思える。新鮮だからできる焼き方。「これまで白子は食べれなかったが、これは美味しい」と言う人もいれば「これはちょっと…」と尻込みする人もいる。残った白子は銀髪がいただき、鍋に放り込んだ。

てっちり、雑炊(明太子入り)

平均年齢が60歳に近い我々には鍋の量は少し多かったかもしれない。雑炊には明太子と粗く千切った海苔が入る。本格関西割烹と謳うだけあって、店主には色々なアイデアが詰まっているのだろう。若く見える店主だが大阪の料亭での修行を経て大宮に店を開いて既に26年と知っていれば、入り口に立ったとき店構えは老舗の風格と思えたかもしれない。

かつて近くに数軒あったふぐ屋も新興勢力を除けば鈴善一軒になってしまったそうだ。店主の明るさが客を引きつけてきたのだろう。ふぐだけでなく、すっぽん、蟹、鱧などの高級料理をリーズナブルな値段で提供する大宮では貴重な存在。

いつまでも頑張って欲しいものだ。


鈴善
さいたま市大宮区仲町1-94 2F
048-644-9919
http://www.k5.dion.ne.jp/~suzuzen

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2009年01月14日

[鈴なり]⑦(荒木町)

やっぱりここが好き


「昨年4月以来じゃないですか?」店主の村田さんの記憶は大したものだ。帰ってから半信半疑で調べてみたら確かに前回来たのは昨年の4月だった。「何度も電話したんですけどね」と言い訳したが嘘ではない。特に昨年12月は10日頃電話したにもかかわらず年内満席で予約が取れなかった。

おひたし、三重産の牡蠣

久し振りなので6,000円のコースを頼んだ。4,500円のコースもあるので若い人も気軽に来れる。予約が取れない理由の一つだろう。村田さんに「痩せましたか?」と連れが言う。「エッ?太ったんじゃないの?」と銀髪が反論する。確かに顔は精悍になったように見えるが、動きはゆったりとして無駄がなく貫禄が出てきた感じだ。奥様も笑顔の輝きが増してきたように思える。店が順調なのだろう。

単品で頼むのが好きな銀髪だけど、コース料理の楽しみはあん肝、きびなごの天ぷら、このわた、塩辛など酒肴の華麗な盛合せである。これだけでいくらでも日本酒が飲めそうだ。豊富な品揃えの純米酒がリーズナブルで危険だ。

うにの玉地蒸し、カワハギ

コースでなくても玉地蒸しは頼んだ方がいい。何度食べても感激する。鈴なりはだし汁を使った料理がとても上品で美味しい。玉ねぎや大根を煮たシンプルな料理も好きだ。

お造り、鴨・竹の子、

氷見産ぶり、壱岐産まぐろ、鹿児島産竹の子など、産地談義も楽しい。カウンター席は実に楽しい。

キンメダイのしゃぶしゃぶ、

予想外のものが出て来るのがコース料理の楽しみ。キンメダイをシジミのスープでしゃぶしゃぶするのは初めて。しゃぶしゃぶをした後、キンメダイの旨味も加わったスープを炊き込みごはんにかける。スープをかけなくても充分美味しいが、もう一品得した気分になる。

牡蠣の炊き込みごはん、汁かけごはん

「銀髪さんが何回も書いているからいい店に違いない、と来る人が多いんですよ」と村田さんが言う。来店回数だけでなく文章から銀髪の評価を読み取ってしまう読者の鋭さには頭が下がる。「自分の予約が取れなくなるので褒めちゃダメですよ!」と連れが睨む。

杏仁豆腐

アッと言う間に2時間が過ぎた。いつも以上に酒がすすんでしまった。「ドタキャンが出たら電話くださいね。予定が入ってなければ飛んできますから」と伝えた。テレビで紹介されて以来、失礼な客も増えたらしい。奥様の笑顔が曇ることがないように、みなさんよろしくお願いします。


鈴なり
東京都新宿区荒木町7 清和荘1F
03-3350-1178


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2009年01月08日

[やさい家めい Yasaiya Mei](六本木ヒルズ)

ヘルシーで美味しい野菜のしゃぶしゃぶ


このところ野菜を前面に出す店が増えてきたような気がする。妙に「やさい」の文字に惹かれてしまう。胃にやさしく、メタボにならない食材を求めるようになったせいかもしれない。ネットで「野菜、レストラン、東京」で探すとたくさんの店が出て来た。その中から六本木ヒルズの「やさい家めい」を選んだ。

予約もしないでぶらりと出かけた。六本木ヒルズなら他にも選択肢が多い。早い時間なので見た感じガラガラ。難なく入れて喜んだものの、隣席とくっついた窮屈なテーブルをあてがわれた。予約客を待つ周囲のテーブルが我々を嘲っていた。

野菜チップス、野菜スープ

野菜しゃぶしゃぶコースが始まった。男性店員が右隣の客に野菜スープの説明を始める。野菜チップスをつまんでいても、耳は自然と説明の声に向いてしまう。5品の前菜プレート、野菜のお造りが来る心の準備が出来る。

前菜、野菜のお造り

料理が終るまで2度ずつ説明を聞いたが、言う方も聞く方もちょっと照れ臭い。説明が終るのがもどかしいが、お互い辛抱強く耐えた。隣と違ったのは我々のコースには黒トリュフがスライスされて放り込まれたこと。香り豊かなトリュフスープを2杯飲んで、野菜のしゃぶしゃぶを食べ始めた。

黒トリュフスープと鍋

数種類のキノコ、白菜、レタスなどをしゃぶしゃぶして食べる。半分ほど食べた頃には殆どの席が埋まり、隣席も気にならなくなってきた。
野菜に飽きたらスープのだし代わりの山形産牛の頬肉スライスを口に入れる。柔らかくてとても美味しい。全部食べてしまおうかと思っていると、隣席にお釜がやってきた。鍋の頬肉で牛丼を作ってくれると言うのを聞いて、肉を食べるのを止めた。

釜炊きごはんとほほ肉の牛丼、水菓子

我々の方にもお釜がやってきた。面倒くさいので説明を遮り、「残ったごはんはおにぎりにしてください」と伝えた。既にお腹一杯で2合は食べ切れない。鍋に入れる肉や魚の追加をしなくてよかった。勘定を頼むとまだデザートがあると言う。食べ終わるのは隣と一緒になった。

我々のテーブルを担当してくれたのは渡辺学さん。まだ入店してから数ヶ月と言うが、見事に仕切ってくれた。おまけに自筆の書まで添える丁寧さに感激した。
「今度は予約して来てください。必ずいい席を確保しますから」と言われて思わずにっこりした。最後に渡辺さんと心が繋がった感じがした。

やさい家めい 六本木店
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ 森タワーウエストウォーク5F
03-5775-2960
http://www.eat-walk.com/roppongi/

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2008年12月30日

[油山山荘](福岡)

ふぐの白子は日本一


ANAホテルに油山山荘から紹介を受けたタクシーが迎えに来た。ホテルから20分強の道のりを間違えずに行けるタクシーが少ないためだ。街の灯りが乏しくなるにつれて、東京の知り合い、大金持ちの食通が日本一と絶賛するふぐ白子への期待が膨らんでくる。

宿泊もできるだけに料亭というより旅館のような建物。着物を着た老女将が出て来るかと思ったら、迎えてくれた女将は思ったより若い。部屋に案内して、我々の面倒を見てくれたのは美しい若女将だった。「お父さんに似たんだね」と言うと全員大笑い。お客様も銀髪も部下も、みんな既にご機嫌である。

付け出し、煮こごり、身皮

「天然とらふぐは身と皮の間が筋肉のように発達する」と出されたのが身皮。梅肉で和えた身皮はなるほど歯応えがあって美味しい。

刺身

「天然ふぐは味があるので、福岡の人はねぎを巻かないで食べるんですよ」と若女将が言うと素直に従う。ねぎはおろか、ポン酢をつけずに食べても味がある。ひれ酒が美味い。

最後の数枚を譲り合っていたら、昔なら身酒にしたもんだとお客様が言う。遊び人だったのがばれると恥ずかしがるので、銀髪がつぎ酒を頼むことにした。若女将に「身酒にしたいんだけど」と言うと、「ハイッ」と笑みを浮かべた。油山山荘は多くの粋人に支えられているようだ。熱々のつぎ酒にふぐ刺しをしゃぶしゃぶして食べた。

唐揚げ、白子

身がたっぷりついた唐揚げを食べていると、お目当ての白子がお披露目された。ここぞとばかりやって来た女将が誇らしげに説明する。滅多に入らない特大の白子とのことで、銀髪も初めて見る大きさだ。小さいのが刺身にされ、大きいのは焼かれる。

白子刺し、白子酒、白子焼き

初めて食べた白子の刺身、初めて飲んだ白子酒。他ではなかなか味わえないものも良かったが、やはり秀逸だったのは白子焼き。何とも言えない香りが立ち上ってくる。食通が日本で一番と言うのも頷ける。

てっちり、雑炊

ピンク色が美しい。身も厚くてボリューム満点の豪華な鍋だ。腹一杯だが食べ続けた。雑炊も逃さない。銀座だったら一人前で4万円ぐらいはしそうなコースが半分以下で食べられるのは、柳橋連合市場の西本が女将の実家だから。地元の名士のお客様も西本と聞いて納得していた。その名士を初めて連れて来たのが東京から来た我々だったのが愉快だ。

刺身、唐揚げ、白子、鍋、雑炊、みんな美味しかった。ひれ酒、身酒、白子酒、旨かった。元気な女将が楽しませてくれた。また食べたい。飲みたい。会いたい。もちろん一番は若女将かな。


割烹御宿 油山山荘
福岡県福岡市城南区東油山147
092-871-5034
http://www.aburayama.co.jp

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2008年12月28日

[江島]③(銀座)

今年最後の松葉ガニ


本日のスポンサー氏にとっては今シーズン4度目の江島である。銀髪ならうんざりするところだが、他の人たちが喜ぶ様を見れば満足らしい。5人居るので二匹を予約してくれていた。