2010年03月13日
[とんかつ富貴](秋葉原)
大きなカキフライ

チリの大地震の影響で宮城、岩手の養殖場は数十億円の被害を受けたという。富貴では岩手県広田産の牡蠣を使っている。ちょっと心配したが看板に貼られた紙を見て安心した。

決して立派な造りとは言えないとんかつ屋。年老いた夫婦がやっている店と思ったら、ピンクのエプロンをしたおば様が3人。イメージがガラリと変わった。店内はカウンターとテーブル二つの小さな店。年配のおじさんと相席になった。
広田産の牡蠣は築地場内で買ったこともあるし、オイスターバーで食べたこともある。北陸産の中ではもっとも名が通った牡蠣の一つである。大きなカキフライを想像したが、期待したとおりだった。

日本橋の今泉のように数個合わせたような大きさである。一口で食べることは無理。何回かに分けて食べると贅沢な感じがする。中にしっかり火が通るまで揚げても縮まないのが凄い。銀髪からしたらもう少し生っぽい方が好みだが、誰でも安心して食べられるぐらいの揚げ具合。充分ジューシーである。
豚汁とおしんこがついて1,000円。豚汁が美味しくて気に入った。銀髪が食べ終わる頃、常連さんがカウンターに座った。「あら、今日は早いのね」なんて言われて家でごはんを食べる気分に違いない。「コロッケにカキフライ2個」とオーダーの仕方も常連らしい。
アットホームな店だった。とんかつの評判もいいようだ。牡蠣のシーズンが過ぎたら、とんかつでも食べに来ようかな。
とんかつ富貴
東京都千代田区外神田3-11-11
03-3255-0607
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2010年02月27日
[まるや](新橋)
行列のできるとんかつや

ビーフン東に行った日の11時45分、食後にビルの中の飲食店を見て回った。なんと、行列が出来ている店がある。店名を見て納得した。これが「まるや」か。新橋で一番人気のとんかつ屋である。以前リストアップして、そのままになっていた店だった。

後日、10時56分に到着するとドアの前に1人待っていた。さすがに開店前から並ぶ人は少ない。開店時間ぴったりにドアが開いた。先客はカウンターの角に、銀髪は揚げ場の料理人の正面に座った。続けて入って来た2人を含めて全員がロースカツを注文した。5人目の男性がヒレカツ定食を頼んだが、銀髪が食べ終わるまでの間、殆どの客がロースカツを注文した。
目の前の調理人がカツを頭より高く上げて振り下ろした。まるでラーメン屋の湯切りのようだ。切った油が飛んでくるのではないかと一瞬身構えた。もちろんそんな心配はいらない。

テーブルには塩、辛子、醤油とトンカツソースの壷。何もつけずに食べると肉が香ばしい。次に塩をつけて一切れ。次いで醤油、さらにトンカツソースと味を変えていった。トンカツソースも悪くない。先客がごはんと味噌汁をお代わりした。無料なので大半の客がお代わりする。銀髪は味噌汁だけ2杯目を求めた。

食べ終わった皿に油は殆どついていない。油をしっかり切った証だ。キャベツからの水も出ていない。700円はとても価値あるものに思えた。
注文を受けると店員が声を合わせる。感謝の声はうるさ過ぎず、心地よい。内装と共に清潔な印象を与える4人の料理人と女性1人。なかなかいい店だ。昼のメニューは限られるが、夜にはもう少しバラエティーがあり酒の肴にもなる。
銀髪が一番で店を出た。11時半頃にはまだ行列はできていない。贔屓にしたい店である。家に戻り、このブログを書くために住所を調べたら、リストアップしていたのは烏森口店だと気付いた。相変わらずボケの銀髪である。
とんかつ まるや
東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館 1F
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2010年02月21日
[レストラン サカキ](京橋)
評判のカキフライは?

あるブログによると銀座・日本橋界隈でのカキフライ三傑は今泉、三州屋とサカキだそうだ。このブログを信じて今泉に行ったら大正解だった。続けて行くつもりが随分と時間が経ってしまった。牡蠣のシーズンが終わる前に行かねば!
11時35分、開店してまだ5分しか経っていないのに光が差す奥の広い部屋はほぼ満杯。銀髪は狭い入り口に近い席に案内された。それから5分後には満席になった。みんなカキフライが目当てなのだろうか。
左隣の人はエビフライ、その向こうは日替わり、右隣の人はハンバーグ、メンチカツなどなど。意外なことに周りの人はカキフライではない。思い込みとは恐ろしいものだ。サカキはカキフライ専門店ではないのだ。

ちょっと拍子抜けした。もちろん美味しいのだが、今泉のカキフライのような衝撃を求めてはいけなかった。評判の洋食屋の料理で「醤油ありますか?」とは聞けなかった。醤油派にはちょっと辛い。
ドレッシングは銀髪には酸っぱすぎた。普段、ドレッシングを使わないのに、サカキの自家製ドレッシングを試したくなった。味見をすればいいのに、ドボドボとかけてしまったのも良くなかった。いつものようにカキフライは醤油で、野菜はタルタルソースで食べれば至福の昼食だったろうに。
店内で待っている人たちがチラチラ銀髪を見る。「あー、もう半分食べたな」「もうすぐ食べ終わるな」「食べ終わったらさっさと勘定すればいいのに」心の声が銀髪に突き刺さる。
店に居た時間は15分程度だったろう。もちろん店の人が急きたてるようなことはしなかった。店を出るとそこにも7~8人が待っていた。名店は不況知らずである。
レストラン サカキ
東京都中央区京橋2-12-12
03-3561-9676
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2010年01月11日
[フリッツ](赤坂)
明るいとんかつ屋(?)

美味しいとんかつ屋のイメージが頭にあった。テレビで見たのか、グルメ雑誌で見たのか覚えていない。「赤坂の客先に同行お願いします」と部下に言われてフリッツのことを思い出した。アポは11時なので30分で切り上げれば丁度いい。
法人回りの営業マンをしていた15年ほど前、ランチの店を決めてから訪問先を選んだものだ。顔繋ぎが目的だけで客のところに行くのは気が重い。ランチのついでと考えれば何とか重い腰を上げることができた。ランチの楽しみがあれば客先への足取りも軽くなる。
綺麗な店で驚いた。くたびれた暖簾、すすけた感じのカウンター、カツを揚げる職人肌のオヤジの店と思っていた。己の記憶力のなさ、甚だしい勘違いに少し呆れた。入居しているビルからも容易に想像できたはずだ。「とんかつ屋に行くぞ!」と連れて来られた部下も意外そうな顔をしていた。

店名の前に「洋食 とんかつ」と書いてあるのにメニューの筆頭はハムカツ。次が名物ビーフカツなので何を食べるか迷った。熟考の末、ランチ限定のロースカツを食べることにした。部下はミンチ&メンチを頼んだので味見をすることが出来た。
まず部下のミンチ&メンチを少しずつ、まだきれいな箸で銀髪の皿に取り分けた。次いで銀髪のカツを一切れ部下の皿に移した。ミンチとメンチ、どちらも美味しい。次に何もつけずにトンカツを噛む。フワーッといい香りが口に広がる。銀髪より先に「これは美味いですね」と部下が言った。

入り口に近いテーブルでは4人が肉厚のトンカツを食べていた。店員が豚の産地を言って置いて行ったので一番高いロースカツと特上ヒレカツのようだ。揚げ時間は約20分のはずが入店して10分足らずで食べ始めたので、あらかじめ電話で注文して来たのだろう。
右隣に座った客たちは迷わずビーフカツを頼んだ。3人連れのおばさま達は仲良く日替わりを食べていた。
ハンバーグもコロッケも美味そうだ。ハムカツも食べなければならない。ラーメンもある。再び部下が同行訪問を頼みに来るのはいつになるか。それが問題だ。
フリッツ
東京都千代田区永田町2-13-10 プルデンシャルタワー1F
03-3500-3755
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2009年12月30日
[札幌 ドミニカ](京橋)
カレーシチューじゃないの?

「Get up ! Get up !」1960年代前半、日曜の朝は父に叩き起こされたものだ。カレーシチューが大きな寸胴鍋で煮立っている。大慌てで着替えてパン屋に走る。食パン1本を肩にかついで持ち帰り、父と兄二人と銀髪で競うように食べに食べた。1970年代に札幌で生まれたといわれるスープカレーよりずっと前のことである。どこが違うのだろうか。
札幌には現在100を超える専門店があるそうだ。ドミニカは2004年にオープンし、東京進出は2006年9月。近くを通る度に気にはなっていたものの、流行っているようには思えなかった。思い出して何気なく入ってみると意外なことに混んでいた。

小さなサラダを食べながらキッチンを覗くと実に面白い。たくさんのガスコンロがあり、オーダーが入ってから1食ずつ作り始める。スパイスを加えて思ったより長時間火にかける。肉類はあらかじめ煮込んでいるが、野菜類は素揚げする。我が家のカレーシチューとは作り方が違う。
オリジナル(チキン)、ライス普通盛り

先ずスープをオリジナルの黄色、とんこつベースの漆黒の黒、トマト酸味の情熱の赤の3種類から選ぶ。次に具をチキン、ポーク、トントロ、野菜、チキン野菜、魚フライの6種類から選ぶ。最後に10段階の辛さの選択。5番目までは無料で6番目から50円きざみで上がる。
とんこつ(ポーク)、トマト(野菜)

他のテーブルを見ると、もっとも人気があるのがチキンのようだ。骨付きだがスプーンで簡単に身が割れる。ポークは角煮風でちょっと固め。銀髪が一番気に入ったのはトマトベース。3種類の中では一番馴染みのないカレーが最も印象深かった。
一般的なカレーライスはまずスプーンにカレーを乗せてご飯に合わせるが、スープカレーの場合は逆。スープの量の方が多いので、辛いものが大好きな銀髪でも5番目で充分だった。
子供の頃の思い出に浸るつもりで入ったが、まったく別物だった。それでもやっぱり思い出す半世紀近く前の我が家。あの頃の父の齢を超えてしまったことに気付いて愕然とした。
スープカリー専門店 札幌 DOMINICA
東京都中央区京橋3-4-1 TM銀座ビル2F
03-3231-1347
http://www.s-curry-dominica.com
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2009年10月02日
[じじあんどばば](日本橋)
移転してもカジュアルで気楽な店

移転の手紙が届いたのは8月初め。前の店のお別れ会に参加したかったが叶わなかった。新しい店にもすぐに行くつもりだったのに、アッという間に時間が過ぎてしまった。2人で行くより3人がいい。なんとか人数を揃えて出かけて行った。
5時ちょっと過ぎ、自動ドアを手で開けて中に入った。早い時間でも入れた前の店とは勝手が違う。それでも「開いてる?」と覗き込む我々を喜んで迎え入れてくれた。ソファで昼寝をしていた若い男性店員が叩き起こされたのは可愛そうだった。

実に3年ぶりなので料理を運ぶ若者たちに見覚えがない。たどたどしい日本語の若い女性とのコミュニケーションにちょっと苦労したが、お奨めに素直に従った。自家製ビーフジャーキーのお通しの後に海鮮サラダがドーンと登場した。リーズナブルで量が多いのは以前と一緒だ。

米沢牛、山梨産馬肉の刺身盛合せの味比較。定番料理の中から選ぶつもりだったが店員の推奨は本日のお奨めが殆ど。洋食屋のイメージが強いじじあんどばばにしてはユニークな料理に思えた。もっとも、店主夫婦の出身地の素材にこだわることを知っていれば納得の品だと言える。
とろーり豆腐の特製ピリ辛甘みそタレ付き、コロッケ

初めて食べる変わった料理も面白いが、〆はやはり定番のコロッケ。「ビーフシチューをコロッケにしたような奴」とオーダーしても店員に分かってもらえない。銀髪の勝手な思い込みではあるが、割ってみたらみんな頷いてくれた。

「前より立地がいいので絶対繁昌する」と言う銀髪の説は6時を過ぎる頃から現実味を帯びてきた。肉料理などカロリー過多のメニューが多いことをKさんは懸念するがそんな心配はいらない。メタボは大病するまで治らないし、予備軍もどんどん増えているのが現実だ。会席料理や洒落たフレンチ、イタリアンより素朴な洋食が大好きなお父さんたちにとって、じじあんどばばは安心な店である。
店内を見回すと、おじさんを囲んで若い男女が楽しんでいるグループが複数ある。政府も少子化対策の一環として仲人手当てや合コン幹事手当てを作ってくれないだろうか。
♪今日はお見合いで酒が飲めるぞ~ 酒が飲める飲める飲めるぞ! 酒が飲めるぞ~♪ なんちゃってね。
じじあんどばば
東京都中央区日本橋2-2-15 日本橋テイトビル2階
03-3274-1797
http://www.jiji-baba.jp/
以前の記事
http://codawari.info/ginpatsu/archives/2006/04/post_183.html
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2009年09月26日
[大正軒](有楽町)
スローライフ

「飲みねぇ 飲みねぇ すしを食いねぇ 江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」カウンターで待っていると、広沢虎造の浪曲「石松三十石舟道中」の名調子が聞こえてくる。普通は客のために音楽が流れているものだが、まさか浪曲ファンの客がいるとは思えない。
「清水一家で強いのは誰だか知ってるかい?」「大政、小政、大瀬半五郎、…」次兄が二代目広沢虎造を真似てだみ声で唸っていたのを思い出す。懐かしさに浸っていたらビーフカツが出来上がった。通常より50円引きの950円、本日のサービスランチだ。

巣鴨(住所は文京区千石4丁目)にある肉屋「ミートショップ大正軒」が経営しているとはいえ、1,000円で上等の和牛カツというわけにはいかない。ソースがたっぷりかかってきたのは予想外だったが、それなりに美味しく食べた。
「虎造ですね、ラジオですか?」食べ終わった食器を店主に差し出しながら聞くと、照れ臭そうに「テープです」と答えた。勘定場に行き1,000円札を渡してもお釣りが来ない。「950円ですよね」と遠慮がちに言うと「あー、そうだった、いつも1,000円なので忘れてた」と屈託なく笑う女性店員。アットホームな店である。
「今日はビーフカツがお得ですよ」と奨められた結果とはいえ、やはりメニューのトップにあるロースカツを食べなければ片手落ちだ。もしかしたらうまい具合に浪曲のクライマックスが聞けるかもしれないと思い再訪した。

残念ながら浪曲ではなく、懐かしいと言うには銀髪でも若すぎる昭和の曲が流れていた。それでも名曲は聴きやすく、オーソドックスなとんかつを食べる邪魔にはならない。今回は銀髪式に半分にトンカツソース、半分に醤油をかけて食べた。
なんだかホンワカする洋食屋である。
キッチン大正軒
東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館地下1階
03-3201-0147
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2009年07月22日
[王ろじ](新宿三丁目)
とんかつの名付け親

とんかつが銀座の煉瓦亭で初めて出されたのが明治32年(1899年)。しかし名前はポークカツレツだった。王ろじは発明者ではなく名付け親だという。名付け親については元祖を名乗る店が他にもあるようだが、大正10年(1921年)創業で、商標登録までしているとあっては素直に聞いてもいいだろう。
とんかつ

王ろじのとんかつは普通のとんかつとちょっと違う。ロース肉を重ね合わせて丸く成形し、約12分かけてじっくり揚げる。ポークカツレツが世に出て30年以上経ち、特徴のあるものを作り出す必要があったのかもしれない。独自のものにはポークカツレツとは違う名称が必要だった。そこでとんかつと名付けた。銀髪の勝手な推理である。
とん丼

一番人気はとん丼だそうだ。カツカレーをとん丼と称する。カツカレーの元祖は銀座のグリルスイスで1948年に巨人軍の千葉茂があみ出したと言われる。ポークカツをとんかつにしたのと同様に、カツカレーをとん丼と名付けたのはいかにも王ろじらしい。とん汁に入っているのはベーコンのようだ。これは王ろじ風。漬物は王ろじ漬け。自己主張が立派だ。
王ろじ漬け、とん汁

煉瓦亭、グリルスイス、ヨーロッパ軒(大正2年創業、福井のソースカツ丼屋)そして王ろじ。老舗のとんかつには共通点がある。衣が薄くてカリッと揚げてあることだ。最近では生パン粉を使ったふんわりとした食感のとんかつが多くなった。油っぽくてどうも好きになれない。バターやミルクをタップリ使った生パン粉は味もカロリーも肉と競争してしまう。
ドアを開けて女子高生が入って来た。オウ!女子高生にも人気なのかと思ったら、カウンターに座る銀髪の後ろを通ってさっさと2階に上がってしまった。店のおばさんの声が女子高生を追いかける。2階は住居になっているようだ。新宿通りからちょっと入っただけなのに、なんともアットホームな店があったものだ。
カリッとした衣がいい。下町の食堂のような雰囲気も悪くない。気に入った。
王ろじ
東京都新宿区新宿3-17-21
03-3352-1037
煉瓦亭
http://codawari.info/ginpatsu/archives/2007/05/post_560.html
グリルスイス
http://codawari.info/ginpatsu/archives/2007/05/post_559.html
ヨーロッパ軒
http://codawari.info/ginpatsu/archives/2009/03/post_1177.html
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2009年05月16日
[恵亭](日本橋高島屋)
和幸グループの究極のとんかつ専門店

和幸は全国各地の駅やデパートなどにレストランが150店舗、惣菜屋が95店舗もある。さらに別の名前のとんかつ屋さんがあるとは知らなかった。恵亭は最良の肉、生パン粉を使用し、つなぎの卵は黄身のみを使う。油は60枚を目安に取り換えるなど、頑固なまでにこだわっているそうだ。
こだわりは豚カツだけではない。店内はゆったりとして雰囲気がいい。接客態度もいいし、上品な高島屋の客層によくマッチしている。こんなに豚カツ好きなお年寄りが多いのかと驚いてしまう。
1,600円のロースかつ膳を頼むと、お代わり自由のキャベツや漬物が並ぶ。隣席の老夫婦の旦那の方が席に着くなりビールを頼んだ。恵亭でのビールは奥様の買い物に付き合ったご褒美に違いない。


生パン粉を使った豚カツは油っこくてあまり好きではない。厚い肉に火を通すためには油の温度を下げなければパン粉が焦げてしまう。恵亭ではきれいな純正植物油を使っているためか、なんとか銀髪の嗜好に合った。
「キャベツのお代わりはいかがですか?」「なくなったお漬物を持ってきましょうか?」などと店の女性がかまってくれる。食べ終わったのに「お茶を取り替えましょうか?」と丁寧だ。辛子もこだわっている。爪楊枝もちゃんとしたものだった。和幸グループの力の入れようが分かる。

キャベツには胡麻と柚子の2種類を交互にかけて食べきった。土佐醤油をかけた大根おろしをカツに乗せたり、とんかつソースや醤油をかけるなど味を変えて楽しんだが、あれこれ選択肢があるので忙しかった。結局、最初に何もつけずに食べたものが一番美味しかったかもしれない。
恵亭は各地の高島屋などに7店舗を展開している。伊勢丹4店舗に展開しているさき亭も同ランクの店らしい。和幸をちょっと見直した。
恵亭 日本橋店
東京都中央区日本橋2-11-1 高島屋日本橋店6階
03-3517-1971
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2009年05月08日
[銀座キャンドル](銀座)
文豪も通った老舗の味

洋食屋での食事を誘われて「喜んで!」と言ったものの、とんかつ、ハンバーグ、オムライスを思い浮かべてしまって気分は盛り上がらない。ランチなら問題ないけれど、夕食で2時間近くを潰せるものか考え込んでしまった。
1950年に銀座みゆき通りに創業した老舗だが、今の店舗は思ったよりきれいな店だった。照明を落としているのでデートでも問題ない感じ。「看板料理はチキンバスケットらしいですよ」「ハンバーグがお奨めと言われたけど」「マカロニグラタンもいいんじゃないですか?」洋食屋は知らない料理が殆どないので、誰もが意見を言いやすい。
白レバーのパテ いちじくのビュレ添え、チキンバスケット

パテでビールを飲んでいると、チキンバスケットがやってきた。フライドチキンと言うよりチキンカツ。確かに看板料理だけのことはある。柔らかく美味しい鶏肉だった。
1950年の海老マカロニグラタン、特選和牛のハンバーグ<200g>

創業年が記されたグラタン、和牛のハンバーグなどオーブンでじっくり焼きあげる料理が多いので、食事の時間はゆっくり進む。心配は杞憂だった。
栃木県産霧降高原牛のビーフシチュー、アップルパイ

店を出る予定の時間に合わせてアップルパイが焼きあがってくるはずだ。もう一品食べる時間がありそうなのでビーフシチューを頼んだ。ハンバーグよりもデミグラスソースがマッチして、個人的にはビーフシチューの方が美味いと思った。
右隣の中年夫婦と娘の3人連れはいかにも日本的な昔風のピザを食べている。左隣の若い女性二人はチキンバスケットを平らげて、オムライスに取り掛かっている。後ろの席には若いカップルが食べるのを忘れて笑っている。二人の向こうには会社員風の男性二人が何か深刻な相談をしている。左の壁際にはちょっと派手目の美女とおじさんがワインを飲んでいる。
60年近くあらゆる客を愉しませてきた料理の数々。変わらないのも偉大なことだと思える。
銀座キャンドル本店
東京都中央区銀座7-3-6 有賀写真館ビルB1
03-3573-5091
http://www.ginza-candle.com/
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2009年04月26日
[達 Tatsu](福岡)
もやし入り和風ハンバーグ

福岡に来たときの昼食はラーメンかうどんが定番になっている。どちらにするか悩んでいると「洋食はどうですか?」と部下が言う。「以前、地元の人に連れて行ってもらったんですが、ハンバーグが美味しい店ですよ」とまで言われたら断るわけにはいかない。
12時を回っていたので混んでいた。普段は4人掛けのテーブルを、分けて2人用の席を作ってくれた。壁にくっついた長椅子に座ると、クッションの切れ目でお尻が痛い。わざわざ奥の席を勧めてくれた部下を責めるわけにはいかない。
ランチのハンバーグを頼もうとして「期間限定」の文字が気になった。店員に聞くとやはり看板料理のハンバーグではない。ジュージュー音を立てて鉄皿で出されるのが名物らしい。シェフのお奨め、和風ハンバーグを頼んだ。

もやしが入っているハンバーグは初めて食べた。もやしが入っているのが和風ということだろうが、もやしの原産国は東南アジア、インド、中国などで日本ではない。海外各地で料理に使われており、オーストラリアでは生のままサラダに入っていて驚いたことがある。
もともと外国のハンバーグは牛肉100%で、それ以外は和風ではないかという疑問も湧いてくる。合挽き肉、玉ねぎなどで作るハンバーグは日本人の発明品と言われる。もやしハンバーグと言われれば素直に納得するのに我ながら偏屈と呆れる。
それにしても日本人の創造力は素晴らしい。豆腐ハンバーグ、鰯ハンバーグなどいったい何種類のハンバーグがあるのだろうか。不況下で麻婆もやしの素が大ヒットしていると聞いた。和風ハンバーグは安価な割に見栄えがする。カロリーも低く健康志向に合う。もやしハンバーグも家庭料理のレパートリーに是非とも加えたいものである。
もやし入りハンバーグはなかなか美味しかった。1965年創業の老舗洋食屋さんらしく、ビーフシチューなど他の料理も評判がいいとのこと。反対側の壁には表彰状らしきものが掛けてある。福岡を代表する洋食屋に違いない。
達 Tatsu
福岡県福岡市中央区天神3-16-1 日若ビルB1
092-751-7302
http://www.tatsu1965.sakura.ne.jp
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2009年03月27日
[レストラン東洋](日本橋)
和洋中みんなが楽しめるビヤホール?

日本橋交差点のすぐ近く、数え切れないほどビルの前を通ったことがあるにもかかわらず、不思議なことにこれまで1階でコーヒーを飲んだことしかない。大人数で宴会が出来る近場を探していたらレストラン東洋に行き着いた。
2階に上がると5時半というのに既にビールを飲む客が数組居た。広い店内はビアホールのようである。メニューを開くとますますその印象が強くなる。和洋中何でもござれで好き嫌いが多い人でも困らない。
ソーセージ盛合わせ、しゅうまい、串カツ

「よう、久し振り」ソーセージを持ってきた女性に年配の部下が声をかける。「ホントねー」と若いアルバイトや外国人の女性などを使う店とは一線を画す年季を漂わせる。出てきた料理はビアホールよりずっと美味い。
エビフライ、シーザーサラダ、キムチ

シーザーサラダも昔はこんな感じだったのだろうか。或いは東洋のオリジナルか。昔の洋食屋らしい料理に集中しているとキムチが出てきて肩透かしされる。
目玉焼き、サイコロステーキ、タコフライ

「目玉焼きできないの?両面焼きだよ」と我侭なオーダーを受けても、かの女性は怯まない。歳の割には使いこなしているオーダー端末に目玉焼きがなくても意に介さないのはさすがだ。他の店なら若い店員が「できません」と一言で済ませてしまいそうだ。
スパゲッティー

名物はスパゲッティー焼きそばという珍妙なもの。約25年前、オーストラリアに赴任してすぐに、スパゲティーでうどんを作ったことを思い出した。日本食の代用品を試しては節約に努めた日が懐かしい。味付け次第でどうとでもなるのが麺類のいいところだ。
湯豆腐、天ぷら、笹かまぼこなど、他にもたくさん食べてみんな満足したようだ。7時を過ぎる頃には店内は満席になった。リーズナブルに満足できるのもレストラン東洋のいいところである。
カードは使えないので念のため。
日本橋 レストラン東洋
東京都中央区日本橋1-2-10
03-3271-0003
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2009年03月03日
[ヨーロッパ軒 総本店](福井)
元祖カツ丼

福井駅から歩いて10分弱、3度目の福井出張でようやくヨーロッパ軒に来ることができた。既に20回も福井に来ている部下はソースカツ丼はおろか越前おろしそばすら食べたことがない。彼の案内はあてに出来ないので、自ら調べて一人で本店に行った。
「もともとは早稲田大学の近くにあったパッとしない食堂で、関東大震災の後に福井に移転した」という話が記憶に残っていた。福井でもパッとしない店と思っていたので3階建ての立派な店を見て、大正時代の話を今に結びつけて考えていた自分を笑った。

1時半を過ぎているのに1階は満席で、2階に通された。この時間の客はすべて観光客や出張者など他県の人たちのようだ。単品のソースカツ丼を頼んでから、メニューを開いた。ステーキ、カレー、オムライスなど結構種類があるが、この時間にはカツ丼以外の出番はなさそうだ。
銀髪以外に4人が同時に注文したのでちょっと待たされるかと思ったが、5分位でカツ丼が出てきた。薄いロースカツが3枚、ごはんの上に乗っているだけの極めてシンプルなカツ丼だ。調理時間が短いのも頷ける。

脂身を切り落としたロース肉に目の細かいパン粉をまぶし、ラードでカラリと揚げる。口上どおり油臭くなくサラリとした口当たりのトンカツは悪くない。ウスターソースに各種香辛料を加えた秘伝のタレもカツによく合っている。
途中まで感心して食べていたけれど、だんだんごはんにかかったタレが甘くベタつくように感じてきた。醤油派の銀髪には秘伝のタレは甘すぎる。後発の店がキャベツの千切りを乗せるようになったのも、案外銀髪のように感じた人が多かったせいかもしれない。
ヨーロッパ軒の創業者高畠増太郎氏がソースカツ丼を創案発表したのが大正2年で、大反響を呼んで銀座や日本橋の洋食店のメニューに入った。これが大阪に伝わって道頓堀で玉子とじカツ丼が登場したという。ヨーロッパ軒のカツ丼はソースカツ丼の元祖だけでなく、すべてのカツ丼の元祖ということになる。
カツ丼を発明したことは尊敬に値するが、結局玉子とじカツ丼が元祖を凌駕することになってしまったことにはそれなりの理由がありそうだ。いずれにしても一度は味わってみたい元祖カツ丼である。
ヨーロッパ軒 総本店
福井県福井市順化1-7-4
0776-21-4681
http://homepage2.nifty.com/yo-roppaken/
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2009年01月30日
[燕楽](新橋)
人気店は場所を選ばない

評判が高いとんかつ屋さんというので新橋駅前にあると思った。地図で探したら、浜松町一丁目の交差点近くで繁華街から離れている。
前を歩く人たちの数がどんどん少なくなり、燕楽の看板が見える頃には前にも後ろにも誰もいなくなった。11時ちょっと過ぎに暖簾をくぐると一番乗りである。

カウンターの向こうに料理人が3人、こちら側に女性が3人、開店の準備をしていた。「暖房を入れますね」と言われたものの、暖まるまで時間がかかりそうだ。調理場の火に近い席を勧められた。2,300円のロースカツを頼む。

「ロースカツについています」とポテトサラダが出された。漬物と交互に食べながらカツが揚がるのを待つ。冷蔵庫から取り出された豚肉は厚くて揚げるのに時間がかかりそうだ。揚げ油は3つあり、奥の鍋に銀髪の肉が静かに沈んだ。
ポテトを三分の一ほど食べたところでガラス戸の向こうに影が見えた。他の客が来たかと思ったら、鳩が2羽店先で遊んでいた。とんかつが目の前に来る頃、ようやく一人だけの寂しさから解放された。今度は間違いなく人間のカップル。11時30分過ぎからは次々に人が入ってきて、店は活気を帯びてきた。

衣は薄く、淡い狐色で上野ぽん太のトンカツに通じるものがある。何もつけないで食べてもしっかり下味がついているのが分かる。塩で、醤油で、とんかつソースで、味を変えながら食べていった。
カウンターの中を観察するのは面白い。2,300円のカツは弱火でじっくり揚げられる。900円のカツランチの肉は少し色づいた真ん中の油の鍋に入る。厚さの違いかカツランチの肉は強火でどんどん揚がっていく。一般的な濃い狐色のトンカツが好きな人や急いでいる人はカツランチの方をお奨めする。
揚げている料理人と女性店員の一人は中国人のようだ。名店の味や技を受け継ぐのが外国人というのが珍しくなくなった。真面目に働く外国人にはどんどん日本国籍を与えていいのではないだろうか。伝統が維持され、日本人の人口が増える。こんなにいいことはないと思うのだが…
勘定を払って外に出た。鳩のカップルは消えていた。
燕楽
東京都港区新橋6-22-7
03-3431-2122
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2008年12月27日
[いもや](東神田)
安くてボリュームたっぷりのとんかつ

昼時に馬喰町の問屋街近くに行く用事があり、めし屋を検索していたらいもやが引っかかった。駿河台下のいもやには30年以上前によく行った。郷愁に誘われて他の店はどうでもよくなってしまった。
日本橋から江戸通りに入り早足で歩いた。高カロリーの食事にありつくまでに、エネルギーを消費しなければならない。少し寒いぐらいがちょうどいい。
店は表通りから外れた路地にあった。迷わず店を見つけたのが誇らしい。

どこのいもやも外観は似ている。店に入ったら神保町界隈の店と錯覚してしまう。12時前なのに店はほぼ一杯だった。違うのは主人が客と親しげに話していることだ。常連さんだろうか。
隣に運ばれたとんかつ定食を見てごはんの量に驚いた。大盛りだと思い黙っていたのが間違いだった。自分の前に大きなとんかつと大盛りのごはんがやってきた。とても消費したエネルギーに見合わない。

750円にしてはボリュームたっぷりで美味しいとんかつである。ごはんを残そうと決心して食べ始めたら店のおばさんから話しかけられた。「大変な世の中になりましたねー」と言われて「そうですねー」と返した。常連さんだけと話すのかと思っていたが、どうやらこの店の人は話好きのようだ。神保町界隈よりもはるかに下町っぽくて和む。
ごはんを残せなくなってしまった。こんなにいい人たちが精魂込めて作った料理を残すなんてばちが当たりそうだ。後から入ってきて「ごはん少な目」という人たちが恨めしく思えた。
夜には銀座「江島」での宴会があるのにタップリ食べてしまった。帰りはタクシーに乗るつもりだったが、歩くことにした。お金は減らずカロリーを減らす両得である。夜は蟹だから摂取カロリーを調整できそうなのが救いと思ったのだが…
いもや 東神田店
東京都千代田区東神田1丁目14-6
03-3861-9454
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2008年11月16日
[ランチョン](神保町)
思い出は思い出のままがいい?

12時過ぎに御茶ノ水で仕事を終えた。「ひるめし食って帰ろう」と行き先を告げずに早足で歩く銀髪に、部下は不安顔でついて来た。
高校3年生、17歳のときに御茶ノ水で模擬試験を受けた後に偶然入った店がランチョンだった。定食を頼んだらビールが出てきて驚いた。ランチョンが美味しい生ビールを飲ませることで有名な店とは知らなかった。それ以来、大学に入ってから何度も行った。遅れまいとついて来る部下は銀髪の頭の中は分からない。
2階に上がり、本日のランチを頼んだ。もちろんビールも一緒に。部下が懸念したような変な食べ物は出て来ないが、下戸の彼にとってはランチョンのありがたみは分からない。日本で最高級の生ビールを飲ませる店として名高いといっても猫に小判である。

定食は上出来だったがビールには首を傾げた。泡が山を作りいびつだ。カウンターを見るとビールサーバーのところに泡が半分ほど入ったグラスが並んでいる。オーダーが入ると、ビールを注ぎ足して泡が適当な厚さになるようにしているようだ。
ランチョンは明治42年創業という老舗の洋食店。今の店も店主も銀髪が通った頃から代替わりしている。かつては泡の注ぎ方で味が変わると信じた時期もあったが、オーストラリアに行って考えが変わった。外国では泡が多いと客が怒り出す。線を引いたグラスを使う店も多い。
ハワイのビール

ハワイで頼んだビールもオーストラリアと同様に泡は殆どなかった。そもそも喉を潤すためにがぶ飲みするビールに、微妙な味の差を求める客などいないのだろう。まして、アルコール入り炭酸ソーダ並みのビールが全盛の日本で、泡のきめ細かさや厚さを議論しても意味がないような気がする。泡よりビールそのものの味を議論した方がいい。
それでも、こだわるのが日本人。昔、八重洲に灘コロンビアというランチョンと並ぶ有名店があったが、主人が亡くなり伝説となってしまった。その一番弟子の店(ビアライゼ98)が新橋にあるという。外国人が理解できない繊細さを確認に行きたいもんだ。
もちろん、ランチョンにもチャンスをあげよう。思い出の彼方に葬り去るのは悲しい。
ランチョン
東京都千代田区神田神保町1-6
03-3233-0866
http://www.gourmet.ne.jp/Luncheon/index.shtml
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2008年09月26日
[丸善]②(日本橋)
他人の飯は白い

丸善の看板料理は創業者の早矢仕氏が開発したというハヤシライス。どちらかというと元祖争いをしている上野精養軒の方が銀髪の口に合うが、食事に連れて行く店としては近くてきれいなので重宝している。残念ながら席の間隔が狭いため、隣席で食べているものが嫌でも目に入る。今回は前に来た時に隣で食べていたハヤシとカレーのミックスしたものを食べた。

ハヤシライスはいつもと同じようにひっかかるような苦味がある。カレーの方がまろやかな感じがする。味が混ざらないように慎重に食べていたが、境目のところは止むを得ない。ところが混ざったところの方が美味しいから面白い。ハヤシライスの苦味も消えた。
一人悦に入っていたが、今度は目の前でFさんが食べていたオムライスが気になる。
別の日にAさんを誘った。もちろん頼んだのはオムライス。これにハヤシとカレーをかけたものに決めていた。ハヤシとカレーを一口ずつ味見して、残りはごちゃ混ぜにする。やはり混ぜた方が美味しい。これにオムライスと来たら無敵である。

完璧だ。実にいいバランスである。ハヤシライス → ハヤシ&カレーライス → ハヤシ&カレーオムライスと進んで3回目にようやく満足する料理に到達したと思った。ところが、左隣のテーブルに運ばれてきたものが気になって仕方がない。

ポーチドエッグが乗ったものかと思ったが、割っても黄身が出てこない。メニューを見て、カマンベールチーズ入りのハヤシライスと分かった。女性2人が美味しそうに食べている。
今度は一人で行った。もちろん頼んだのはカマンベール入りハヤシライス。さて、その評価は?
他人の飯は白い。隣の芝生は青い。自分が食べているものより、他人のものの方が美味しく見えるのは仕方がない。昼飯程度ならすぐ次の機会に挑戦することができるが、他人のデートの相手が良く見えたら困ってしまう。ただ指をくわえて見てるしかない。
丸善カフェ
東京都中央区日本橋2-3-10
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2008年07月20日
[双葉](上野)
上野とんかつ御三家をようやく制覇

制覇と言うには大袈裟すぎるが、蓬莱屋に行ったのが2005年12月、ぽん多本家が昨年の8月だから遂に達成した気持ちになるのも理解してもらえるだろう。何故そんなに時間がかかったかと問われたら、怠慢以外の言葉は浮かばないけれど…
蓬莱屋は大正元年、ぽん多本家は明治38年に創業、それに比べて双葉は昭和43年と比較的新しい。もっとも外観も店内も双葉が一番年季の入っているように見える。おそらく創業時のままなのは双葉だけだろう。周辺を含めて地方都市の定食屋の雰囲気が漂う。
並ぶのを覚悟して来たが、意外とあっさり入れた。メニューを見ていると隣席から「ヒレカツはないんですか?」と尋ねる声が聞こえた。メニューは至ってシンプル。ロースカツ定食一種類しかない。隣席の言葉に救われた。いかにも常連風に軽く一言でオーダーした。

一人で来た客には新聞を渡している。その気遣いはぽん多と変わらないが、ぽん多ほど料理が来るまで時間はかからなかった。分厚い肉に薄い衣。御三家に共通する昔ながらのトンカツである。最近は生パン粉を使った厚い衣の店が人気だが、個人的には薄い衣の方が好きだ。この方が肉の味が分かっていい。衣の役目は豚肉の旨みを引き立たせることにある。
脂身を削ぎ落としているので、ヒレと言われても納得してしまうかもしれない。ヒレカツを欲した隣席の客もきっと満足したに違いない。
テーブルに立つプラスチックケースに入ったメニューを再度見て部下の目の色が変わった。最初に見たときでも高いと思ったらしいが、「結構いい値段だよな」と銀髪に言われて棒を一つ見逃していたことにやっと気が付いた。最終的にはトンカツを食べて二九四〇円に納得しただろう。

店を出たら外に「只今満席です」の札が立っていた。確かに空きテーブルはなかったが、4人席に2人、2人席に1人が殆どで詰め込むことが出来ない訳ではない。店内で待たせることはもちろん、外に列を作らせることも善しとしないようだ。
わざわざ来た客を拒絶するような姿勢を批判する人が居るかもしれないが、高いトンカツ代には居心地も含まれると考えているに違いない。待たせる苦痛を客に与えないのも受け入れる側の分別だろう。
上野3傑はそれぞれ特徴があって面白い。選定者に拍手を送りたい。
双葉
東京都台東区上野2-8-11
03-3831-6483
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2008年06月26日
[かつ銀](銀座)
とんかつ居酒屋

夜、とんかつ屋に行こうと言われるとちょっとめげる。中学・高校と毎日とんかつを弁当に入れてもらっていたほどのとんかつ好きだが、フライ物ばかりを酒の肴にするのは辛い。
かつ銀は酒の肴も多種あると聞いてホッとした。
店は広い。壁にはフライ物以外のメニューもたくさん張ってある。とんかつの評価が高い店ということを忘れてしまいそうだ。
おつまみ類各種


タン盛合せ、ハンバーグ、ポークソテー

口コミではタン盛り合わせが美味しいと書いてあったので頼んだが、10人の男たちの殆どが箸をつけようとしない。男は保守的で、女性の方が逞しいといつも思う。
ハンバーグがなかなかいい。メンチカツも美味しいに違いないが、既にたくさん頼んであるので遠慮した。
カツ丼、カツカレー

ご飯物は他の店とはちょっと違っている。客自らが別盛りのご飯にかけて食べる。いつまでも熱いのが嬉しい。
とんかつ2種

ブログや口コミで絶賛されるとんかつ。中がほんのり赤く、切り口は斜めに入っている。豚飼育の衛生管理が行き届いているのか、最近では豚肉も刺身で食べさせる店が増えてきた。とんかつでもちょっと生が一番美味しい揚げ方なのだろう。
例によって慌しく食事を終えた。とんかつをおかずにご飯を食べた者もいる。色んな食べ物があると言っても、やはりこんな飲み会は辛い。銀髪だってとんかつならご飯を食べたい。メタボ回避のための自制心が邪魔をした。食べずに悔やむか、食べてから後悔するか。
今度、ゆっくり昼に来よう。とんかつにご飯。ランチならどちらの後悔もしないで済む。
かつ銀
東京都中央区銀座2-14-5 B1F
03-3543-2485
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2008年01月19日
[アカシア](東京駅GRANSTA)
東京駅構内地下、TOKYO STATION CITY GRANSTAで買ったお弁当

東京駅が変わった。まだリニューアル途上であるが、徐々に新しい姿を見せ始めている。先陣を切ったのがGRANSTAだった。東京駅構内の地下に45店が出来た。そのうちの約半分が弁当を販売している。浅草今半のすき焼き弁当、まい泉のとんかつ弁当、過門香のあんかけ焼きそばなども捨て難かったが、結局アカシアのロールキャベツシチュー弁当を買うことにした。
12時6分の新幹線に乗る予定だったので、11時50分まで待って注文した。650円と800円の弁当の違いは、ごはんの量とコロッケが帆立てのクリームコロッケかポテトコロッケかだけ。お目当てのロールキャベツに差はないので安い方を選んだ。

階段を上りホームに立つとほぼ同時に新幹線の清掃が終了してドアが開いた。寒風が吹きすさぶホームで、弁当を冷めるままにする愚は冒さずに済んだ。
殆ど誤差なく計画通りにことが進んでいる。指定の席に座ると、弁当を開ける。蓋を固定しているセロテープを剥がすのに手間取って、切れそうになるのを堪えた。

いきなりロールキャベツを食べるのも惜しい気がして、ポテトコロッケを一口食べた。次にご飯をたべて、ようやくロールキャベツに箸をつけた。キャベツは繊維質も壊れ、箸だけではらりと割れた。

口に含むとほんのり温かい。弁当屋でよそってもらったときから熱々でなかったのだから仕方がない。新宿「アカシア」の思い出はかつて書いた。懐かしくて久し振りに食べたロールキャベツだったが、本店の味より薄く感じた。とろみも少ない(ような気がする)。
「オウッ! これこれ!」と笑みを満面に浮かべることはできなかったが、久し振りのアカシアの味は楽しめた。他の弁当より特色があり面白かった。
追伸 初めて食べる人へ。
お弁当が美味しいと思った人には何も言いません。美味しくないと思った人は、これに懲りずに新宿本店に行ってください。それでもダメだったら。潔く諦めましょう。
http://www.gransta.jp
http://www.restaurant-acacia.com
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2007年11月16日
[キラク](日本橋人形町)
人形町の洋食屋といえばキラクは外せない

昭和21年(1946年)創業というから既に60年以上の歴史を誇る有名な洋食屋である。それなのに不思議なことにこれまで入ったことがなかった。店の前までは何度も足を運んだが、小さい店なのですぐに満席になる。並んでまで食べたくないので近くのラーメン屋に入ることが度々だった。
この日、部下に同行して客先に行った。客先から人形町まで歩いて5分、運良く11時過ぎにミーティングが終了した。店は既に半分埋まっていたが、余裕で席を確保。お目当てのビーフカツを頼んだ。キラクのことを知らない部下はポークかつを頼む。
ポークカツ

2人同時に料理を出すためにポークカツが先に油に入った。待てど暮らせど銀髪のビーフは登場しない。永遠にも感じるほどの時間が過ぎたところで鍋に投じられ、拍子抜けするほど早くポークカツと共に引き上げられた。
ビーフカツ

霜降り肉ではないので噛み応えがあるが、レアに仕上がっているので固くなく味がある。部下のポークカツを奪い取り、こちらのビーフカツと引き換える。「どちらが美味い?」と聞くと「ビーフカツが美味い」と答える。生まれて初めて食べたそうで、嬉しそうである。それを見るとこちらも嬉しいが、周りを見渡すとちょっと引っかかる。
ポークソテーがメチャメチャ美味そうなのである。
日を替えて1人で行った。まだ早い時間なのに既に3人が食事中で、4人が料理の出来上がるのを待っている。席に座るなり「ポークソテー!」と伝え、しばらく待つことを覚悟した。女将さんが格闘しているフライパンの中はおそらくポークソテーだ。
「にんにくを入れますか?」と聞かれ「ハイ」と答えて、もしかするとフライパンの中に銀髪の分も入っているのではないかと期待した。
ポークソテー

思ったとおり、銀髪を含めて5人の前に料理が置かれた。ビーフカツが1人で他はポークソテー。にんにくの香ばしさに覆われたポークソテーの美味いこと。多くの人がポークソテーを頼むのがハッキリ分かった。
女将さんが再びポークソテーを作り始めて気付いたが、銀髪に出された分はテークアウトされるものだったようだ。お陰で待たずに食事にありつけた。
それにしてもこのポークソテーは秀逸だ。しばらく我が家の献立から消えていたが、復活したくなった。週末は分厚い豚肉を買って、家族に振る舞おう。キラクほど美味くはできないだろうが、その味は今も明確に舌に残っている。
洋食キラク
東京都中央区日本橋人形町2-6-6
03-3666-6555
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2007年11月12日
[とんかつ 河](新橋)
新橋で評判のカツの店

「日本で一番美味いトンカツだ!」と絶賛する仲間に連れられてタクシーに乗った。銀座を過ぎて新橋の機関車を左にやり過ごしてすぐに看板を見つけた。想像したより小さな店だ。開店して4年とのことだが、店は開店して間もないかのように磨き上げられている。店主と女将の中年夫婦の笑顔をも考え合わせると、味は保証されたようなものだ。
エビフライ

まず特大のエビフライから。揚げる前に見せてもらった海老は20㎝近い大型のブラックタイガー。車海老のプリッとした食感には負けるが、かぶりつくと食べ応えがある。
自家製のタルタルソースはざく切りしたゆで卵にマヨネーズを和えただけのもので、そのまま卵サンドにも使えそう。
ロースカツとヒレカツ

じっくり揚げた厚い肉の中心部はほんのり赤くジューシーである。衣は生パン粉でサクサクしている。個人的には昔ながらの薄い衣の方が好きだが、今はサクサク衣の方が好まれるようだ。
カキフライ

大型のカキフライを一口食べたら中から汁が溢れ出して来た。これを見てみんなが歓声を上げた。家でカキフライを作るとあたるのが嫌なのでどうしても揚げ過ぎてしまう。
鮮度と揚げる技術に自信がないとジューシーなカキフライは食べられない。
トンカツなどの揚げ物は家庭や定食屋の定番料理。高い料金を払って食べるものではないように思う人も多いが、高いトンカツ屋で混んでいる店は確かに何かが違う。たまには贅沢して2~3日分の昼飯代をつぎ込んでも後悔はしないだろう。
常連さんを気遣ってテレビ取材は断っているという小さなお店。新橋で見つけた美味しいとんかつ屋さんはいかが。
とんかつ 河
東京都港区新橋3-16-21
03-3578-0778
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2007年10月06日
[上野精養軒](日本橋)
上野精養軒の元祖ハヤシライスを食べた。

ハヤシライスの元祖争いの話は以前にも書いた(→「丸善」)
丸善の早矢仕有的が考案したというものと、上野精養軒の林というコックが賄い食として考案したという説があり、どちらも元祖を名乗っている。
上野精養軒まで行くのは面倒なので、日本橋三越の向かいのビル9階にある日本橋店に行った。ビルの入り口にメニューが置いてあり、それを見ると敷居が高そうなので今まで敬遠していた。ランチはコースのみと思っていたが、ランチコースのページをめくるとアラカルトメニューがあることに気がついた。ハヤシライスを単品で食べようと決心してエレベーターに乗り込んだ。
想像したとおり格式張っている。店員も老舗フランス料理屋ですといわんばかりの所作で、洋食屋のくだけた感じはない。席に案内されてハヤシライスを頼んだら、スープはいかが、サラダはいかがと熱心に奨めるので抗し切れずスープを頼んだ。ハヤシライスだけでは許さないぞという雰囲気がムンムンしている。
コンソメスープ

上品なスープを飲み干したところで、ハヤシライスがやってきた。ご飯と別々に持って来られるとちょっと高級感がある税込み1,575円の品。
ハヤシライス

上野精養軒のハヤシライスは日本橋店の裏の掘っ立て小屋「上野精養軒カレーとハヤシのお店」で食べたことがある。記憶を呼び起こすと裏の店のハヤシライスの方が美味しかったような気がする。
翌日、立派な店の味を忘れないうちにと思い、裏の店に行った。「昨日、上のレストランでハヤシを食べたんだけど、同じもの?」と聞いたら、700円の方は牛ばら肉で、高い方はヒレ肉だそうだ。「同じだとお客さんに怒られてしまいますよ」どおばさん、いやお姉さんが笑う。但し、どちらも同じ料理人が作ったものとのこと。

料理人も客の意見を知りたがっているそうなので、「ばら肉の方がコクがあって美味い。」と言うと、お姉さんは、本当に嬉しそうだ。
「美味しかったよ、ごちそう様」と言うと、「またいらしてくださいね」とにこやかに送り出してくれる。ハヤシライスやカレーを食べるだけなら、安くて美味しくて愛想がいい店のほうがいいに決まっている。
上野精養軒 日本橋店
東京都中央区日本橋室町1-5-3 福島ビル9F
03-3241-2741
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2007年08月18日
[梓](ニューヨーク)
リーズナブルに食べられる日本食屋さん

帰国してから気付くのも間抜けな話だが、ニューヨーク情報満載のiSEENYというサイトを見つけた。→ http://www.iseeny.com
我々はニューヨーク駐在中または駐在経験者の方々におんぶに抱っこだったので必要なかったが、旅行者だけでなく現地在住の人にも便利なサイトである。
このサイトで紹介している日本食の店は130店以上あり、値段によって3段階に分けられている。稲ぎくが高級店、対馬が中級店のところに載っている。もっとも多いのは3番目のクラスで全体の過半数を超える。その中に梓も見つかった。
いわゆる庶民的な店のコンセプトは脱日本人客にあるのだろう。料理や味付けに工夫を凝らすのも必要だが、もっともアメリカ人向けにしているのは食事の量だろう。昼食に梓に連れて行かれてそれを実感した。
とんかつ定食

目の前に置かれて笑い出した。驚きが度を過ぎるとなぜか笑ってしまう。とんかつが2枚、その下にたっぷりの野菜とスパゲッティが敷かれている。これで9ドル50セント(約1,100円)だから、非常にリーズナブルである。
決断力が求められた。全部食べるか、何か残すか。残すとしたら何を残すか。もったいないから肉は全部食べよう。健康のために野菜も食べよう。水分は料理が出てくる前にビールを摂取したので、味噌汁は残す。スパゲッティとごはんは炭水化物で同類だから、食べながらトータルで量を調整しよう。
オーストラリアにも日本食レストランは山ほどあったが、これほど量の多い定食はあまり見たことがない。なぜ、アメリカ人はこんなにたくさん食べるのだろう。まったく理解が出来ない。出されたものは全部食べなさいと教育されたが、齢をとったら残す勇気も必要である。神様ごめんなさい。お百姓様ごめんなさい。
梓
3 East 44th Street, New York, N.Y. 10017
212-681-0001
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2007年08月06日
[ぽん多本家](上野)
明治から続く洋食屋の看板メニューはカツレツ

お詫び: 8月1日夜にサーバーがダウンしました。復旧作業をしておりますが、今も画像が表示できない状態が続いています。画像は
食べログ http://u.tabelog.com/ginpatsu/
Yahooブログ http://blogs.yahoo.co.jp/hn2460jp
蓬莱屋、双葉と並んで上野とんかつ御三家の一店と聞いて、トンカツ専門店と思い込んでいた。店の前に立つと重厚な木の扉が閉まったまま。休みかと一瞬不安になったが、「営業中」の札を見て安心した。一見客を圧するような扉をエイ、ヤッ!と押し入ると、調理場が正面にあり、いらっしゃいませと温かい声に迎えられた。
11時35分と早い時間のせいか、先客はいない。カウンター右端に陣取った。メニューを渡されて初めてトンカツ専門店ではないことを知った。メニューの中心あたりにやっとカツレツの文字を見つけてオーダーすると、店員がスポーツ新聞を持ってきてくれた。豚肉をトントンと叩く音。控えめな揚げ音が聞こえ始める。
興味のある記事は殆ど読み終わった。15分以上経っただろうか。カツレツを切るサクサクという音がお腹を刺激した。カウンターの上にはウスターソースが乗っている。とろみのあるトンカツソースでないのが老舗らしくて好ましいが、醤油も別に持ってきてもらった。
カツレツ

話には聞いていたが、揚げ色が薄い。聞かされてなければ揚げ足りないと不満に思うところだ。厚い肉を低温でじっくり揚げた証しで、揚げ音が控えめな理由が分かった。
カツは狐色に少し焦げた方が香ばしくて好きなのだが、まったく別物の仕上がりである。何もかけずに口に含んで驚いた。思い描くトンカツとは明らかに違う食べ物だ。
大昔、長兄が帰省して東京での学生生活を面白おかしく教えてくれた。東京で彼が食べるトンカツの肉は限りなく薄く、まるで衣だけ食べるようなものだと聞いて大いに笑ったものだ。他の店で食べるトンカツの肉は厚くても、揚げ物における衣の存在感はかなり大きい。
ところがぽん多のカツレツでは衣は豚肉の引き立て役を謙虚に引き受けているように思える。脂身を削げ落としたロース肉が柔らかく、しっとりとして、香りがある。
日本橋コレドにある「平田牧場」の揚げ色が薄いのも、ぽん多と同じことを意図しているのだろうが、脂身がくどくて閉口した。平田牧場の安いランチ定食では気付かなかった意図が、ぽん多で理解できた。
ごはん、赤だし、漬物をつけて3,150円。トンカツにこの値段は法外と思う人も多いだろうが、ぽん多本家のものはカツレツ。名称は老舗洋食屋としてのこだわりかと思ったが、「他店のトンカツとは違うんだぞ!」という誇りの表れかもしれない。
ぽん多本家
東京都台東区上野3-23-3
03-3831-2351
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2007年07月11日
[元酒屋](銀座)
元は酒屋(?)という不思議な洋食屋

「何か美味しいものを食べに行こうぜ!」と誘われる。曖昧に頷くと寿司屋に行こうと言う。明らかに気を遣ってくれている。こちらに異論はないが、目指す寿司屋の対面に洋食屋を発見した。「こちらに入りましょうか?」と声をかけると、スポンサー氏の顔がパッと明るくなった。
それでも「予約なしで大丈夫かな?」と不安顔だ。「賭けてもいい。絶対は入れますよ!」と言ったが、入ってみると予約でほぼ一杯。我々4人に狭いテーブルをやっと確保できてホッとした。意外と人気があるのに驚いた。
メニュー

レトロな店内に合わせてメニューもレトロ。写真は使わず絵で料理の様子が書いてある。
タラコのカナッペ、白レバー、牛タン燻製

酒の肴に最高と思ったが、オヤジはちょっと変わったものは絶対に食べない、食に冒険はしない。責任を取らされるのは頼んだ銀髪だ。
ロールキャベツ、コロッケ、ハンバーグ

誰もが好き嫌いしない料理はしっかりと4等分して食べた。いくつになってもオヤジが懐かしがり、喜ぶ3品だ。コロッケは2個乗っていたが、写真を撮る時間も待てずに持っていかれた。
マカロニサラダ、チキンカツ、ピザ、茄子のグラタン

ピザに乗せる生ハムも一緒にオーブンに入れる店は珍しい。ちょっと焼きすぎのピザを食べてみると他がやならない理由は明解だ。
それにしても元酒屋とはユニークな店名だ。ビールを飲んで、シャブリを一本空けて、酒のメニューを再び開いたところで気がついた。洋食屋なのに10種類の日本酒が書いてある。
3年古酒の美吟微吟と純米大吟醸の大中屋を呑んだがなかなかのものだった。
食べた料理の中ではミートボールみたいなハンバーグが一番良かった。本格洋食と言うよりは家庭料理に近い。20年以上の歴史をもつ元酒屋のオーナーは、1750年創業・山梨県の蔵元「七賢」12代目の実弟。
蔵元を飛び出すほど洋食に惚れ込んだのだろうが、袂を分かっても実家の酒を置くのだから兄弟仲は悪くなさそうだ。洋食ではなく日本料理屋をやってくれていたら、兄貴はもっと嬉しかっただろうが…
元酒屋
東京都中央区銀座8-5-24 西八ビル2F
03-3572-6240
http://www.sake-shichiken.co.jp/motozakaya/index.html
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2007年07月08日
オムライス
子供の頃の思い出には必ず入るかな?

子供の頃、チャーハンとオムライスを食べたことのない人はいないはずだ。残ったご飯を処分するには一番の方法だからである。
チャーハンは昼ごはんのイメージが強いが、ケチャップを加えて卵で包むだけで夕食のメインになったのだから、オムライスは倹約家の大蔵大臣兼料理人の強い味方だったに違いない。
もっとも、残り物のご飯を使った料理が手抜きと言っては母に失礼だろう。東芝の電器炊飯器が発売されたのが1955年、銀髪の生まれた年である。今のように朝起きたら美味しいご飯が炊けているなんてことがなかった時代は、ご飯を炊くこと自体大仕事だったろう。
たいめいけんのオムライス

たいめいけんには有名な「タンポポ・オムライス」があるが、殆どのおじさんたちが頼むのは慣れ親しんだ普通のオムライスである。見た目は一緒だが、作り方は多分おじさんたちのお母さんとはちょっと違う。レシピが公開されているのでご覧いただきたい。
http://www.taimeiken.co.jp/faq/index.html
具を炒める→ご飯を加える→ケチャップをからめる→卵で包むが一般的だが、たいめいけんは順番がちょっと違う。
冷ご飯は温めなおしてから加えるとのことだが、昔は電子レンジもなかったのだから、ご飯を温めること自体手間がかかった。
電気冷蔵庫をやっと手に入れても、容量が小さいので母は毎日お買い物に行かなければならない。ご飯も毎日苦労して炊く。洗濯機のない時代に毎日ひどい汚れ物をこさえてくる子供たちを恨んだことはなかったのだろうか。当時エステがあったとしても救いようのない手だったはずだ。
こんな状態だから太ったお母さんは少なかった。太っていても間食で太ったのではなく、残り物を自ら処分したからに違いない。
昨今、オムライスを看板にする店が増えたが、残ったご飯で作るイメージが強くて、オムライスをお店で食べる気がしないのは銀髪だけかな? たいめいけん(2階)の2,100円のオムライスはもちろん、1,000円台でも高い気がする。オムライス好きな人にとっては、余計なお世話というのは重々承知しているが…
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2007年06月21日
[明治記念館ビアテラス 鶺鴒(せきれい)](信濃町)
クーラーの風を逃れて庭園でビールを

最後にデパートの屋上で大ジョッキを飲んだのはいつのことだったろうか。昔は夏になると涼を求めてよく行った。特大の大ジョッキに枝豆、焼き鳥、唐揚げ、フライドポテト、焼きそばなどのしけたつまみでも嬉しかったが、やがてどの店にも空調が完備するようになって廃れていった。多数の大ジョッキを1人で運ぶ名人芸を見ることもなくなった。
「ビアガーデンに行こう!」と連れて行かれたのは明治記念館。結婚式場の印象しかなかったが、和洋中と立派なレストランがたくさんある。ビアテラスは緑の芝生がまぶしくて、想像以上にいい雰囲気である。
ソーセージ盛合せ

ビールならソーセージ。パブロフの犬さながらによく躾けられたのん兵衛だ。レストランの思惑にまんまとはまる。
冷しトマトと白アスパラ

いまだにトマト1個に数百円を支払うのに疑問を持つが、肌にいいリコピンが豊富と聞けば頼んでしまう。男だってエステに通う時代である。
最近流行りの白アスパラには素直に喜んでしまう浅はかさ。昔は缶詰が高級品で憧れだった。
庭園ではショータイムが始まった。2人の芸者さんが芝生の上で日本舞踊を踊りだす。あまりに遠くて美人かどうか判別できないのがいいのか悪いのか。品の良さと話を邪魔しない雅楽が好ましい。
オクラの揚げ物

何がなんでも変わったものを食べなければならないのが銀髪の宿命。オクラは蓮根をすり潰したもので覆われ、海苔を巻いて揚げてある。これは美味い。今度家でやってみよう。
山芋ステーキ

これも家のレシピに加えることが出来そうだ。最近、鉄板焼きなどにする機会が多いので予想どおりの料理だが、味付けは参考になった。
トイレを我慢できる程度のビールでお開きにしてタクシーに乗った。品のいい庭園で飲むには丁度いい量だと思ったが、二次会の目的地に着いたらわれ先にトイレに駆け込んだ。明治記念館のきれいなトイレで済ませればいいのに、まったく酔っ払いはしょうがない。
明治記念館ビアテラス 鶺鴒(せきれい)
東京都港区元赤坂2-2-23
03-3746-7723
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2007年05月27日
[チョウシヤ](銀座)
元祖コロッケ?超有名らしいけど知らなかった。

日本橋方面から昭和通りを歩き博多ラーメンの「一風堂」に入った。元気のいい店員に新作ラーメンを奨められるも、断って定番の赤丸新味を頼んだがぬるいスープに失望した。欲求不満解消のため歌舞伎座寄りの1本裏道を散策することにした。歩き出してすぐに「元祖コロッケ」の文字が目に入った。
1927年(昭和2年)の創業というからコロッケを発明したわけではないだろうが、元祖とつけるには意味があるに違いない。歌舞伎座に近いこともあり、役者たちも創業以来変わらない味を愛しているとのこと。随分前に昔のコロッケを食べたいと書いたが、それっきり忘れていた。(→「コロッケ」)
買おうかどうか迷ったが、お腹に一風堂の麺とぬるかったスープが詰まっている。翌日出直すことにした。
開店から20分後の11時20分に店に着いたが、先客がいないので買う要領が分からない。ボーとしているとカツを揚げている人から声がかかった。
「コロッケパンをください」と言うと、「食パンですか、コッペパンですか?」と聞かれる。「コッペパン」と答えるとビニール袋に入ったコッペパンを取り出し、横から2つに切ってマスタードを塗った。コロッケも二つに切って挟みソースをかけた。実にシンプル。ついでにメンチカツも1個買った。

コロッケは松坂牛のミンチを使ったこだわりの味とのことだが、肉はその味や食感を楽しむほど入っていない。昔懐かしいコロッケそのものである。パンに挟んだためか揚げ物のサクサク感はなくなったが、コッペパンが熱気を吸い取ってコロッケとよく馴染んでいた。

メンチカツは単品で買ったのでサクサクして美味だった。コロッケパンの半分をメンチカツに入れ替えて食べた。銀髪にとってはこちらの方が懐かしさを飛び越えて美味い。
コロッケパンを作ってもらっている間に来た若い客が、迷わずメンチカツパンと頼んでいたのが思い出された。
トンカツやハムカツなど他の揚げ物もある。常連はダブルで挟んだり、マカロニサラダを加えたりと思い思いの味を作っている。銀座の裏通りに今もあるレトロの世界を見つけた。
チョウシヤ
東京都中央区銀座3-11-6
03-3541-2982
コロッケ130円、メンチカツ140円、コロッケパン220円
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2007年05月17日
[煉瓦亭](銀座)
元祖カツカレーを食べたら、元祖ポークカツも食べねばなるまい。

揚げ物を海外では何と言うのだろうか。英辞郎でカツと引くとcutlet、カツレツと引くとSchnitzelと出てくる。ちゃんとした外国語があるように元々揚げ物は海外で生まれたもの。なぜ煉瓦亭が元祖なのだろうか。
シュニッツェルで思い浮かぶのはウインナー・シュニッツェルだが使う肉は牛肉で、揚げるのではなく多目の油をひいたフライパンで焼く。海外でも日本のようにタップリの油で揚げる(deep fry)料理もあるが、牛、鶏、魚介類のみで不思議なことに豚を揚げたものに出会ったことがない。
明治時代に日本に伝わった洋食の揚げ物にはなかった豚肉を、煉瓦亭が初めて使ったわけだ。煉瓦亭の創業は明治28年(1895年)で、4年後に考案されたポークカツレツは千切りキャベツ、パセリを添えて日本中に広まる。ご飯をお皿に盛ったのもこの店が発祥。フォークの背にご飯を乗せて食べる妙なマナーもここで生まれたのだろうか。
11時13分に店に着いた。きっちり2分後に店が開き、2階に上がり席についた。おしぼりと水を持って来た店員にポークカツレツ(1,250円)とライス(200円)を注文したのが11時17分。11時30分には、銀髪の前に本日の煉瓦亭最初の料理が運ばれてきた。

何もつけずに一口食べたら意外なことに美味い。意外とは失礼かもしれないが、昔ながらの味を守り続ける老舗料理屋よりも、後発の店の方が美味しい例は山ほどある。
しかし、生パン粉をたっぷりつけ、甘めの豚カツソースをどっぷりかける流行りの豚カツと違い、煉瓦亭のポークカツレツは母が作ってくれた豚カツのようで気に入った。何もかけずに半分、残りは塩をつけたり、テーブルの上のウスターソースを少しだけかけて食べた。
煉瓦亭が生まれて110年以上、この店が日本中に広めた料理も多い。それにしても、煉瓦亭のある銀座ガス通りは中央通りを1本外れただけなのに、いい店が多く風情がある。らん月の裏口から、カツカレーのグリルスイス、煉瓦亭と続く道の並びにはキャバレーの「白いばら」がある。創業は昭和6年で昔からのファンも多い。
午後3時半、豚カツを食べて4時間足らずでお腹が空いたのには驚いた。新鮮な油に替えたばかりだったのだろうか。自分の体調が良かったのだろうか。もしかしたら、これが店の実力かもしれない。
午後4時過ぎ、記憶にないほど久しぶりにマクドナルドに入り、コーヒーと小フライドポテトを頼んだ。夕飯までの空腹感を紛らわして余りある重さだった。
煉瓦亭
東京都中央区銀座3-5-16
03-3561-7258
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2007年05月16日
[グリルスイス](銀座)
元祖カツカレー

豚カツは中学生のとき毎日お弁当に入れてもらっていたほど好きだった。カレーはもちろん大好物だった。ところが家で2つの大好きな食べ物を一緒にして食べた記憶がない。どちらも立派な独立した食事になり得るのだから、2つ一緒にするのはもったいないと母は思ったのかもしれない。
これを一緒にしたのが元読売巨人軍選手の故千葉茂氏で、1948年に彼がオーダーしたグリルスイスでカツカレーが誕生したという。日本的なとんかつは1899年に銀座の煉瓦亭が考案したとされ、日本にカレーライスが普及したのも明治期のようであるから、60年近くもの間だれもが我が家の食卓と同じ考えを持っていたのだろう。
そのグリルスイスに行った。カツカレーを食べに来たので悩むことはないと思ったのだが、メニューには2つある。復刻版の千葉さんのカツカレーを食べようと一度は決めたが、オーダーする際出てきた言葉は「カツカレー」だけ。すかさず店の人に「元祖カツカレーですね」と言われて素直に従った。

カレーが本格的なので、調子が狂った。銀髪にとっての元祖カツカレーは大学の学食で食べたハムカツ・カレーで、当然カレーは黄緑色の粉っぽい代物だった。カツカレーに合わせて作られたに違いないグリルスイスのカレーは、カツが必要のないほどしっかりしたものだった。
千葉さんのカツカレーをメニューで見る限り、腹が減って豚カツもカレーも両方食べたいが皿を分けるのが面倒なので、一皿に盛ってもらったように見える。まったく偶然の産物でまさか合わせたら人気メニューになると考えたわけではあるまい。人気料理として完成させたのがグリルスイスで、従って元祖カツカレーと命名したのだろう。
勝手に想像しないで勘定場に今も元気に座る庄子静子さんに聞けばいいのに遠慮した。故人の名誉のためにも千葉氏が発明したと言った方がいい。庄子さんは千葉氏を敬う優しく謙虚な女性に見える。
周りを見渡せば常連さんたちが思い思いのものを食べている。カツカレーを目当てに来る人以外は普通の定食屋の気分でいるようだ。店の人の応対もそれに倣う。昔懐かしい店と思えば、何度か足を運ぶうちに雰囲気に溶け込むようになるだろう。

グリルスイス
東京都中央区銀座3-5-16
03-3563-3206
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2007年05月05日
[丸善](日本橋)
元祖ハヤシライス?

ハヤシライスは約40年前に亡き喜劇俳優・南利明が「ハヤシもあるでよ」とCMで言ったところから全国に広まった。と、勝手に解釈していたが、実際は明治の初期に人気を博していたというから南利明より更に100年近く遡ることになる。
友人からハヤシライスの元祖は日本橋の丸善だと知らされて驚いた。ハヤシライスはハッシュド・ビーフが訛ったものと信じていたが、はやしという人の名前からつけられたという説も知らなかったわけではない。驚いたのは「はやしさん」が目と鼻の先の丸善の人だったことである。
ところが「はやしさん」説は2人いて、丸善の創業者である早矢仕さんと上野精養軒の林さんが名乗りを上げている。100年以上も前の話で未だに結着していないものを、銀髪がとやかく言える話ではない。とにかくご近所の早矢仕さんのところに行ってみた。
今年の3月9日にリニューアルオープンしたばかりなので、店内は美しい。11時をちょっと過ぎたばかりなので客は殆ど入っていない。12時過ぎたら女性客で列が出来るのだろう。
席に案内されてメニューを見ることもなくハヤシライスを注文した。

一口目は美味しく食べた。半分ほど食べたところで考えた。一品でお腹を満たす料理はいつの時点で一番美味しく感じるように作られているのだろうか。カレーであれば段々辛く感じるようになっても銀髪は問題にしないが、段々甘味が強く感じるようになるハヤシライスには疲れてくる。
ハヤシライスを食べ終わる頃にベストの食べ方を思いついた。ルーとご飯を同じペースで食べるべきではない。最初はルーが多めで、ご飯を少なめで食べる。終わり頃には逆にご飯を多めに食べる。これなら感じる甘味は一定を保つことができる。
話の種に使えるのだから元祖ハヤシライス、サラダ付1,000円は高くない。肉などの具が殆ど見えない程シャビシャビなので、歯の悪いお年寄りでも問題なく懐かしい味を楽しめる。
丸善の名物料理はハヤシライスだけではない。 「カレーもあるでよ!」

丸善カフェ
東京都中央区日本橋2-3-10
03-6214-2001
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2007年04月27日
[たいめいけん]②(日本橋)
たいめいけん名物を食い尽くす

たいめいけんのタンポポオムライスはあまりにも有名であるが、老舗洋食屋の他の料理も食べてみたい。ホームページを見ると太っ腹にもいくつかの看板料理のレシピを紹介している。割高だが格調の高い2階に上がりレシピが紹介されているコールスロー、ポテトコロッケ、グラタン、他にメンチカツ、タンシチューを頼んだ。
フレンチなどのマナー本には、料理を分け合って食べることは下品であると書いてある。そんなことは先刻承知であるが、色んな料理を味見したい欲求は捨てられない。実際たいめいけんでもオーダーを受けた後、取り皿をたくさん用意してくれるから心得たものだ。追加注文を見越してか、注文を受けたウエイトレスはメニューは置いたまま厨房に消えた。
順番に持ってきてくれると安心していたら、料理が一斉にテーブルに並べられて驚いた。


こちらが非常識なのか、店側が配慮に欠けるのか自問していると、ウエイターがやってきてメニューを無言で持ち去ろうとする。目が合うと無愛想に「メニューの数が限られていますので」と言い訳して行った。後姿を追いかけると、彼は無人のテーブルにメニューを置いただけだった。
早く食べなければどんどん料理が冷めていくのでムカッとしている余裕はない。まずグラタンを片付けた。悪くない。メンチカツもそれなりだがジューシーさで勝る店はいくつもある。ビーフコロッケは冷えても美味しい街のコロッケの方に軍配を上げてしまう。話しに夢中になっている2人の取り分が冷めてしまうのが気が気ではない。こちら側2人は店の評価を肴に大笑いを繰り返している。不平不満を笑い飛ばす度量が必要だ。
タンシチューに到達したときには完全に冷めていた。さっきのウエイターを呼んで、暖めなおしてくれないか頼んだが、「煮詰まってしまうので」とにべもない。煮込み料理なので唯一暖めなおしが出来る料理と踏んだのだが読みが甘かった。電子レンジでチンでもいいのだが、料理人のプライドが許さないかもしれない。客がマナー違反をしているのだから仕方ない。我慢して冷めたシチューを口の中に放り込んだ。
気持ちを取り直して追加注文をするために先ほどのウエイターを待った。出番のなかったメニューを取り戻そうと思うのだが、一向にこちらに注目してくれず店内をうろついているだけ。やむを得ず中年の女性ウエイトレスにメニューを持ってきてもらって追加の料理を頼んだ。追加したのはポテトサラダと撮り損なったコールスローをもう一回。

ウエイトレスは注文を聞くとメニューを放置して引っ込んだ。さっきのウエイターを待ってしばらく様子をうかがったが今度は取りに来る気配がない。痺れを切らしてウエイトレスに声をかけて丁重にメニューをお返しした。メニューが置いてない空きテーブルがあったら大変だ。銀髪の大人気ない遊びは不完全なまま終了した。
これまでたまに来てはオムライスばかり食べていたので気付かなかったが、たいめいけんが繁盛しているのは昔から変わらない味のためだと分かった。ここの味をお手本にして、もっと美味しい料理屋がたくさん出来たのだろう。従って「思ったほど美味しくない」とか「○○の方が美味しい」などの評価は正しくない。「これが洋食の老舗・たいめいけんの味だ!」「これこそ大正ロマンだ」と感激しなければならない。
なんだか大変なことに気付いたようで嬉しくなった。日本橋の他の洋食屋さんと同様に昭和6年から続く味を維持することが大切なのだ。味の進化は必要ないし、やってはいけない。これはこれで大変な努力だと思う。
それにしても、フロアスタッフの接客態度も創業以来変わらないのだろうか。みんなが懐かしがって喜ぶような代物とは思えないのだが…
たいめいけん
東京都中央区日本橋1-12-10
03-3271-2464 (2階)
http://www.taimeiken.co.jp/
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2006年12月28日
[せんば自由軒グリル](さいたま新都心店)
大阪で有名なカレー屋に連れて行かれた。
子供の頃、カレーをご飯に注ぐとすかさず万遍なく混ぜ合わせて食べたものだ。いつの日からかこれが下品な食べ方と言われるようになった。ご飯をフォークの背に乗せる、スプーンを使ってスパゲッティをフォークに巻きつける、などなど日本人が勝手に考え出した食事のマナーは多い。
自由軒のカレーは創業した明治43年当時のままという。出すときから混ぜてあるのは珍しかったかもしれないが、昔は誰もがこんな食べ方をしていたに違いない。ご飯とカレールーが同時になくなるように食べるのは結構骨が折れるし、本場でもグチャグチャに混ぜて食べるのが当たり前のようだ。

カレーライスとハヤシライスの2品が乗った皿を食べた。「熱いうちに卵を割り、ウスターソースをかけて混ぜ合わせて食べてください」と、紙に書いてあった。試しにそのまま食べてみたら味が薄い。ソースをかけてちょうどいい味になるように調理してあるというが、成る程そのとおりだ。ハヤシライスより名物インディアンカレーの方がいい。
家に帰って自由軒をインターネットで検索したら「自由軒」と「せんば自由軒」の2つが出てきた。「自由軒」のホームページでは「せんば自由軒」を非難している。創業者は共に吉田四一氏であると言う。「せんば自由軒」は孫の一人が「自由軒」の料理長を呼んで創業したようだ。親戚といえども何代も経れば赤の他人、ただの競争相手になるのだろうが、客にとっては骨肉の本家争いよりも味の争いを楽しみたい。
名古屋味噌煮込みうどんの「山本屋」、牛たんの「味太助」など商号に対する諍いは多々見られるが、自由軒も2系統あるとは大阪出身者でも知らないようだった。
自由軒のホームページによると、カレーに卵を乗せたのも、ソースをかけさせたのも、自由軒の発案だそうだ。卵もソースも高級品だった時代だけに、宣伝にはなっただろう。
我が家でソースをかけることはなかったので、カレーにソースをかける人を初めて見たときとても驚いたものだが、90年も前からの食べ方だったとは知らなかった。
感激してまた行きたいと思うようなものではなかったが、歴史を紐解く楽しさは味わえた。
銀髪はカレーに目玉焼きを入れるのが好きだ。昔、「カレー固め」と注文する声を聞いて耳を疑った。固めではなく片目つまり目玉焼き一個という意味と知って笑ったが、これを最初に使ったのはどこの店だろうか。
話はどんどん膨らんでいく。
せんば自由軒グリル さいたま新都心店
埼玉県さいたま市大宮区吉敷町4-267-2
048-600-1691
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2006年11月23日
[いもや](神保町)
思い出の「いもや」は何処に
今、当社ではちょっとしたウォーキング・ブームである。肥満・高血圧で悩む数人が選んだ運動がウォーキングだった。財布にも肉体にも負担がかからないのがウォーキング。短距離のタクシーや電車を我慢すれば、ジムに行く必要もないのだからこんなにいいことはない。
今の季節ならほんのり汗をかく程度で、シャツやスラックスを汗で濡らすこともない。週末に数十キロを自転車で走る銀髪と言えども平日は運動とは無縁だから、ウォーキングをやる気になった。ただ目的もなく歩くのは辛いので、遠くの店でランチを取ることにした。
御茶ノ水・駿河台下のいもやは格好のターゲットだ。食べた後は電車かタクシーで帰ることにして、日本橋から早足で歩く、歩く。12時前に到着しなければ並ばなければならないと思ったら、歩幅は広く、足の回転も速い。約25分で「とんかついもや」に着いた。店は一杯ですぐには座れないが、カウンター席後方の長椅子で待つ権利は確保できた。自分の番が来る頃には汗も引くはずだ。
待つ間に店内を観察した。料理人は豚肉に小麦粉をつけて、溶き卵のパットに放り込む。これを竹串で刺して取り出し、両手でパン粉をつける。手を汚すことなく下ごしらえをした肉を、油の中に落とす。昼のとんかつメニューは700円の一品のみだから、流れ作業でどんどん揚げていく。客の注文を聞く必要もないので、並んでいる人数だけ確認すれば足りる。
その間におばさんはご飯をよそい、しじみの味噌汁を注ぐ。ご飯は大き目の茶碗に大盛りなので、自分の番が来たら「ご飯は軽めに」と言おうと決めたが、結局それは叶わなかった。待つこと10分程でカウンター席に座ったら、間髪入れずにとんかつ、ごはん、味噌汁、お茶が目の前に出てきた。

仕方なくご飯は残そうと思ったが、貧乏性で気弱な銀髪は残せず全部たいらげた。予定外に摂取したカロリーを消費するために、復路も歩くことにした。そのついでに思い出の「いもや」を探した。いもやはとんかつ屋の他に、天ぷら、天丼など専門店が複数ある。銀髪の思い出の店は、淡路町寄りにあった肉詰めピーマンなどの揚げ物屋である。
しかし、記憶の場所は昔と大きく変わっていた。もちろんいもやは遥か昔に消えたそうだ。
無念さを押し殺して歩いていたら、見覚えのある顔がこちらに向かってくる。昔の職場の後輩で、もう何年も会ったことがない奴だ。こちらに全く気付かない彼の前に立ちはだかると、期待通り驚いてくれる。まったく愉快である。今度、飲みに行く約束をして別れた。
ドラマだったら出来過ぎと笑ってしまう偶然だが、「事実は小説より奇なり」である。「歩いていもやに行かなかったら」「ご飯が大盛りでなかったら」などなど、たった一つの要因でも欠けていたら彼に会うことはなかっただろう。
もしかしたら神様が本当にいるのかもしれないと感謝しつつも、どうせなら美女に会う偶然にしてくれたら良かったのにと、ちょっと怨めしく思った。
いもや
東京都千代田区神田神保町1-4
03-3293-0509
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2006年11月05日
[やえす亭](八重洲) 閉店しました
勝負の前はいつもとんかつ。
Mさんに、「書かないのか?」と聞かれた店がやえす亭である。「最近行っていないので、一緒に行きましょうか?」と誘ったら、あまり行きたくないと言われてしまった。理由は落ち着いて食べられないことにあるらしい。
確かに狭い店で、15人程で満席になる。相席は当たり前で、2~3人で行ったら並んで座らなければ奥に座った人は出ることもできない。意外と人気の店なので、すぐに待つ人の列が出来る。狭い厨房で調理している主人と、配膳をしている女性2人は感じよくて、早く食べて早く出て行けというような素振りをしたことは一度もない。そうであっても周りの雰囲気を見ると、出て行かざるを得ないだろう。
また、銀髪と一緒に行く相手が悪い。とにかく食べるのが早い。お店のためにも早く食べて帰らなければならないと気を遣っているらしく、我々が食べていても平気で席を立って勘定を払いに行く。ゆっくり食べてもいいよと言って出て行くのだが、そんなことをしたら勝手な奴に見えそうだ。
銀髪が頼むのはいつもとんかつ定食780円だ。ご飯は少なめ。相手はハンバーグとコロッケのセット。


定食だけでなく、メニューにあるものであれば追加注文ができる。立派なロースカツやヒレカツに普通盛(それでもどんぶり飯)のご飯を食べたい気もしないではないが、相手の食べるスピードに合わせて店を出るためにはとんかつ定食と少なめのご飯以外はあり得ないのだ。
初めて付いてきたYはそのあたりの事情を知らない。立派なものを注文した。銀髪は常に相手の料理の減り具合を見ながら、自分の食事を進めていく。ここのコロッケは中身がトロトロで超熱い。以前口の中を火傷したため、せわしないランチ時に頼むことは止めた。このコロッケを熱さをものともせず食べているのを見ると、感心して手が止まりそうになるが、休むのは危険である。
彼の口はいつも一杯になっているが、それでも喋り続けている。噛むことなどしないで、喉の中に押し込んでいるのではないかと心配になってくる。5分も経たずに食事は終了した。銀髪の皿もほぼきれいになった。今日も大成功である。Yの皿を見ると予想通りまだ半分しか減っていない。相手は入り口の列をチラッとみて立ち上がった。Yは呆然としている。「ゆっくり食べてください、外で待っていますから」と声をかけたが、残りの一部を口に放り込んで出てきたのであろう。Yを待った時間はわずかだった。
これじゃあ、Mさんもついて来たくない訳だ。味は悪くないと思うが、ゆっくり味わった記憶がない。興味のある方は自分で確かめてください。
やえす亭
東京都中央区八重洲1-5-11
03-3271-8815
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2006年10月28日
[串TEN](日本橋室町)
安くてそこそこ美味しい店を見つけた。
東京は高層ビルが多く、洗練された街とのイメージが強いが、至る所に低層木造建築物に囲まれた路地がある。中央通りを挟んで日本橋三越と反対側の一画にもそんな路地があり、たくさんの小さな飲食店がひしめく。高級店もあるが、殆どはサラリーマンの懐に優しい店のようだ。
串TENは串揚げ1本150円の店だ。グルメ紀行の取材で疲弊した我が財布にはオアシスに見えた。立ち飲み屋といってもいいような店だが、背が高い椅子が置いてある。背もたれは無いに等しいものなので、ゆったりと座ることはできないが、無いよりましだ。
揚げ物に行く前にたこわさび、牛すじ煮込み、手羽先唐揚を頼んだ。

たこわさびは何の変哲も無いものだが、牛すじ煮込み(480円)は量もあり立派。手羽先は山椒、七味、ブラックカレー、オリエンタルカレー、マジックスパイスの5種類の味が選べる。銀髪は山椒を食べたが、結構オツな味で良かった。もっと山椒を効かせてもいいくらいだ。
ここまでは悪くない。さて本番の串揚げに行くことにした。ふぐ、角煮、チーズ巻き、ウズラ、しいたけ、ぎんなん、つみれ、ごぼう入りつくね、キスのしそ巻き、たちうおなどを食べた。

150円だからふぐはもちろんトラフグではない。干物にされることが多いシロサバフグだ。毒が無いので家庭でも調理できる。安くてもフグ独特の食感と甘味がある。
角煮は紛れも無く柔らかく煮込まれた角煮。わざわざフライにすることもないだろうけれど、意外といける。他の串揚げも悪くない。
店員二人を誉めまくって食べている間は良かったが、調子に乗ってアドバイスを始めてしまった。串揚げは美味いのにテーブルの上に薬味は殆どない。辛子だけでなく、塩や醤油などに気をかければ「こだわり」の店に見える。「柚子胡椒を置いたら面白いよ」などと余計なことを言うものだから、店員は気分を害したようだ。
不思議に思って「創作串揚げは二人で考えているの?」と聞いたら、「本社の商品開発部門が考えます」との返事。串TENは居酒屋チェーン「てんのてん」のグループ店。店員の二人はマニュアル通りにやるだけで、客の意見を聞いても煩わしいだけのようだ。
「てんのてん」のグループ店だから一定の水準を維持しているが、アルバイト店員に高い意識を持たせるのは難しいだろう。
店の空気が淀んでしまったので困惑していたら、4人連れの若いサラリーマンたちが入ってきた。女性もいるので一気に店の空気が変わった。潮時である。
「もったいないなー もっといい店になるのに‥」と呟きながら、2軒目を目指した。
串TEN 日本橋三越前店
東京都中央区日本橋室町1-12-12 水島ビル1階
03-3272-1115
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2006年10月07日
[ウスケボー](日本橋)
夜のうすけぼーも面白い。
ランチによく行くが、夜は久し振りである。洋風居酒屋の店なのだろうが和洋中なんでもござれだ。うすけぼーとはケルト語で命の水という意味とのこと。ウスケがウイスキーの語源だそうで、修道僧が製造技術を広めたらしい。命の水とは嬉しいじゃないか。
大勢で予約していたためか、予約をしてくれた人が常連だったためか、メニューにない料理を用意してくれていた。料理が出てきてサッとカメラを構える銀髪を無視して、シャッターを押す瞬間に手が伸びてくる。気を取り直して再度シャッターを押す。デジカメは何枚でも取り直しがきくから楽でいい。

ポテトフライ、しめさんま、かぼちゃ冬瓜のあんかけ、石川いも(さといも)、すずきのマリネ、コマイまでが事前に用意してくれていたメニュー。
さんまはしめさばに比べると身が薄いせいか、酢が効きすぎていると思ったが、発想は面白い。かぼちゃ冬瓜とは初めて聞いたが甘みがあって上出来の料理。石川いもは箸で割ろうとするが、固ゆでのためうまくいかず、突き刺してかぶりつく。歯応えも楽しめてこれが正しい食べ方のように思える、
これだけあれば銀髪にとっては充分だが、嫌いなものが大半だと言う人が何人もいるから驚く。
これから無政府状態に陥る。あれやこれやと一遍に追加注文する。うすけぼー本来の何でもござれの料理が間を置かずに次々と運ばれてくる。

焼きそば、ポテトサラダ、ほうれん草炒め、皿うどん、チンジャオロースー、エビチリ、サイコロステーキ、ソーセージの盛り合わせ。運ばれてきても置く場所がないから、慌てて皿の料理を腹に詰め込んでスペースを作る。好き嫌いが多い人は嫌いなものには絶対手をつけない。いきおい嫌いなものがない銀髪たちが清掃係になってしまう。
その繰り返しをやっていると、胃が悲鳴を上げ始める。好き嫌いをしない人の中で、年長者が戦線離脱を始めた。時間があればまだ詰め込めると思うが、お開きの時間が確実に迫ってきている。飲み会のはずが食い会になってしまった以上、既に満腹になって手持ち無沙汰の人も出てきたためだ。
店の人はじっくり時間をかけて料理を味わってくれる客がいいのだろうか。さっさと食べて、席を開けてくれる客がいいのだろうか。気になったが聞くのは止めにした。
うすけぼー 日本橋店
東京都中央区日本橋2-1-1
03-3271-9144
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2006年07月28日
[アカシア](新宿) 懐かしのロールキャベツ
東京でロールキャベツと言えばここだ。
最初に来たのはいつだったろうか。まだスタジオ・アルタが二幸デパートだった頃だ。表通りはアルタだけでなくヨドバシやさくらやが出来て景色が変わった。しかし、裏に回れば殆ど変わっていない。
創業は1961年。スタジオ・アルタの裏の路地にアカシアは今もある。新宿駅東口からすぐの好立地にもかかわらず、この近辺は昔からの店が多数残っている。バブルの時期に各地で再開発が行われたが、その波に乗らなかったためにバブル崩壊後もしぶとく生き残ることができたようだ。
後輩から羽田空港にもアカシアがあると聞いたときには驚いた。いつも日本航空を利用していたので気付かなかったが、第2ターミナルにあるらしい。違う店ではないかと思ったが「あのロールキャベツはしょっぱいですね」と言われて、アカシアの支店だと確信した。最初に食べたときの印象が「随分と濃い味だな」というものだったからだ。
澄まし汁で煮込んだ母のロールキャベツとはまったくの別物で驚いた。ロールキャベツはそれなりの器に入ってくるのだが、ご飯はどんぶりで出て来て驚いた。キャベツの中身は挽き肉ではなくコンビーフではないかと疑った。しっかりと練られていて挽き肉の粒々感がない。

後輩にはごはんと一緒に食べるようにアドバイスした。アカシアのロールキャベツは単品で酒の肴にするようなものではない。ごはんのおかずなのである。大学に入って一人暮らしをするようになってから、何度か足を運んだ。もちろん昼。ごはんを大盛りにすればしっかり満腹になった。
アカシアはロールキャベツで有名な店だが、他にもいろんな種類の料理がある立派な洋食屋さんである。しかし、行くのはいつも突然思い出したとき。従ってロールキャベツ以外の料理は口にしたことがない。この日は1時を過ぎていたがしばらく待たされた。ロールキャベツを懐かしがるのは銀髪ただ一人。同行した二人はメニューを吟味している。ロールキャベツが看板だと力説する銀髪に対して、思い出に付き合わされては迷惑だと無視をする。二人が頼んだのはシチカレとキャベハヤ。
シチカレ(左)とキャベハヤ

シチカレとはポークシチューとカレー、キャベハヤはロールキャベツとハヤシライスを一皿に盛ったもの。目の前に並んだ料理を見て感心した。懐かしさとは無縁の人の方が楽しみ方を知っている。
今度は違うものを食べようと思ったが、次に来るのはいつになるやら。そのときはやっぱりロールキャベツを食べるに違いない。
アカシア
東京都新宿区新宿3-22-10
03-3354-7511
http://www.restaurant-acacia.com/acacia.htm
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2006年07月25日
[サリュコパン](日本橋) 気軽に夜景を
リーズナブルな値段で美しい夜景を見ることができるレストランがある。
10年前に比べたら高層ビルからの夜景がきれいなレストランが増えた。高級洋食レストランだけでなく、割烹、焼肉、焼き鳥、インド料理など料理も多彩。
しかし、静かで雰囲気のいいところで夜景を見ながら食事を楽しみたい。しかも安くとなると選択肢は限られてくる。
少人数で同期会や同窓会を開きたい。女性もいるので居酒屋よりちょっと洒落たレストランの方がいい。洒落たレストランとなると必然的に会費は高騰する。割勘をいいことに高い酒や料理を頼む輩が必ずいて、せっかくの親睦会なのに「もう2度と参加しない」と不満を持って帰る人もいる。友情を壊す一番の原因が数千円、いや数百円ではあまりにも悲しい。
そこで銀髪イチオシのレストラン、それがサリュコパンである。東京駅から歩いて約5分。中央通り沿いに建つ大日本インキのビル(ディックビル)の18階にあり、もう少し進めば日本橋高島屋に達する。18階とは言え夜景は素晴らしい。日本橋界隈は高層ビルが殆どないため東京タワー、レインボーブリッジ、新宿高層ビル群などが見える。
幹事として頼むのは4,000円の飲み放題コース。この日の料理は下の写真のとおり。枝豆以外は各人に配されるので、大皿から取る手間もいらず遠慮することもない。

飲み放題はビール、ワイン、日本酒、ウイスキー、ウーロン茶などから選ぶ。飲めない人もウーロン茶を何杯も飲めば元が取れるだろう。いい酒を飲みたい人は自分で払えばいい。自分で払って皆にふるまうぐらいの気持ちが必要だろう。
客層は周辺の会社員たちなので、雰囲気は悪くない。ただし、恋人同士ではちょっと辛いかもしれない。窓際の二人席で愛を語りたいなら、男はもっと高層のビルで奮発することを覚悟した方がいい。それでも、時々若いカップルを見ることもある。周りのおじさんたちも興味を持つのは最初だけで、酔えばカップルのことなどすぐに忘れてくれる。
大人数であればパーティールームもある。着席でも立食でもOKで、週末には結婚式にも使われる。銀髪もしばしばパーティールームを使う。飲み放題を頼むが、もらい物の高級酒などを持ち込む。飲み放題料金を払っているので、自分で酒を持ち込んでくれれば、店側の酒の消費量が減り、お店もハッピーだ。常連でなくても相談する価値がある。
飲み放題コースで驚くほど美味しい料理や酒を期待するのは無理な話だが、場所・雰囲気・夜景を考慮すれば納得のリーズナブルなレストランだと思う。
サリュコパン 第一ホテル日本橋店
東京都中央区日本橋3-7-20 ディックビル18F
03-3273-1717
http://www.salutcopain.com/
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2006年06月27日
[松本楼](日比谷公園)
ガーデン・テラスでビールを飲むのは最高だね!
日比谷公園内のヴィラデマリアージュで開かれたパーティーに行った。葉巻の会社が主催者だが、オープンをちょっと過ぎただけなのに人が溢れていた。会費1万円を払って中に入り荷物を預けようとしたら「クロークが一杯なので、お預かりできません」と言われて愕然とした。憮然として黒人スタッフに文句を言ったが埒が明かない。
諦めて彼と雑談したら、今日の出席者は500人とのこと。これを聞いてもっと驚いた。大ホテルのボールルームで行うべき規模である。赤ワインを一杯飲んで、料理を覆う銀紙が取り払われる前に退散した。お土産は高価な葉巻のようだが、銀髪は吸わないから人にあげた。グルメ紀行の取材にもならない不愉快なパーティーだった。
救いはパーティーが始まるまで時間を潰した松本楼だった。ヴィラデマリアージュから松本楼に向かう散歩道の木々が日没前の日差しを遮り、そよ風が体の熱気をやさしく取り除いてくれた。松本楼に入って屋内のクーラーの効いているテーブルか、ガーデンテラスの席か迷ったが、自然の空気に触れる方を選んだ。
飲み物は迷わず生ビール。パーティーで美味しいものが食べられるかと思い、軽めのオードブルだけを頼んだ。テーブルの上を走る、米粒ほどの白く透き通ったような蜘蛛を眺めながら、ビールが来るのを待った。
オードブル盛合せ

昔は今の時期になると屋上ビアガーデンによく行ったものだ。当時はまだ冷房がない場所も多く、夜の野外はとても心地よかった。いつしか、我々が要求する気温は著しく低くなった。縁側で団扇を使ったこと、慎重に蚊帳の隅を持ち上げて布団に駆け込んだ頃が思い出された。
日比谷松本楼は10円カレーのチャリティーで有名だが、明治36年創業と歴史は古く、多くの人に愛されてきた。ホームページを開くと、「恋人の聖地」に認定されたとあるように、日比谷公園の環境を存分に享受している。結婚式にもよく使われるようだ。
ビールをお代わりして、さらにワインを追加して飲んでいるうちにパーティーの時間が来た。パーティー会場に行ったが前述のとおりの有様で、このまま松本楼で食事をすれば良かったと後悔したが後の祭りだった。
松本楼での僅かな時間は、遠い昔のときめきを思い出させてくれた。
恋人の聖地と言うぐらいだから、デートに最適だろう。恋人たちは、高級レストランで食べる料理以上の楽しみをここで味わえるに違いない。
松本楼
東京都千代田区日比谷公園1-2
03-3503-1451
http://www.matsumotoro.co.jp
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2006年06月21日
[平田牧場](日本橋) 困った!
とんかつで行列の出来る店に行った。
とんかつは銀髪の大好物である。中学時代、お弁当には毎日とんかつが入っていた。育ち盛りの上、毎日放課後に柔道部の練習がある。50年の人生の中でもっとも食べていた頃だ。
毎朝揚げ物を強いられた母は大変だったろうが、献立を考える必要がなくて楽だったかもしれない。
そんなに大好きなとんかつなのに、夕食に食べることはまずない。とんかつは何故か酒のつまみと考えることが出来ない。白いご飯とセットとのイメージが子供の頃から変わらないためかもしれない。夜はご飯を食べないので、必然的にとんかつは昼食のメニューになる。
会社近くのCOREDO日本橋4階にある平田牧場に行った。いつも昼時は行列が出来ているので早目に来たが、まだ11時半にもならないのに、ほぼ席は一杯である。それでも約3分の2がカウンター席なので、忙しい昼時でも意外と席は見つけやすい。幸いなんとか席を確保した。
隣の客を覗き見ると小さなすり鉢で、黙々と胡麻をすっている。やってきたとんかつは厚さ、脂身のなさから判断して、もも肉を使った1,000円の三元豚やわらかかつ膳と思われる。揚げ色が薄いのがちょっと気になった。彼は目の前のソースをすり鉢にいれて胡麻と合わせ、とんかつにかけて食べ始めた。連れとの会話が弾んでいる。
店員が注文を取りに来たのでお奨めを聞いて、1,300円の三元豚ロースかつ膳に決めた。しっかり揚げてくれと言いたかったが我慢した。醤油党なので醤油を欲しいと言おうとしたがこれも我慢した。
隣がすっかり食べ終わった頃、銀髪のとんかつが出てきた。揚げ色は隣と同じように淡い。

ソースは甘めのものと、ニンニク風味の辛いものと2種類あるが、すり鉢は一つ。混ぜ合わせないでごまはとんかつの上に直にかけ、2つのソースで味わうことにした。塩で食べても美味しいと言われたので一切れは塩をつけてガブリ。「しまった、噛み切れない」肉汁で口の中を火傷したことが何度もあるので覚悟したが、これは火傷するほど熱くない。ロースの脂身が多い端っこだったせいもあるが、衣も油が切れてないように感じた。脂っこい。ソースをたっぷりかけたら何とか脂っこさは消えたが、肉の味よりもソースの味が勝ってしまった。
豚そのものに対するこだわり、店の造りに対するこだわり、接客へのこだわり、ソース・ドレッシング・塩に対するこだわり、パン粉・揚げ油に対するこだわりが随所に披瀝されている。それらを評価して手放しで美味しいとんかつと誉めたいのにそれができないもどかしさ。
今日は揚げ油の温度がたまたま低かったのだろうか。パンフレットやホームページにあるとんかつの写真の揚げ色は濃い。
ネットで見ると、平田牧場には絶賛の嵐。困った! 悪口を書かない主義の銀髪グルメ紀行としては、こんなときは本当に辛い。もう一度行って味を確かめなければならないのだろうか。今度行ったら醤油も頼もうかな。
平田牧場
東京都中央区日本橋1-4-1 COREDO 日本橋4階
03-6214-3129
http://www.hiraboku.com
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2006年04月13日
[じじあんどばば](八重洲) 昼だけでなく夜も行こうよ!
ランチ時は女性客で一杯になる店だが、ランチだけにしておくのはもったいない。夜の方が楽しい。
2009年8月、日本橋に移転しました。
夜の方が楽しいと言っておきながらランチに行ったことがないので無責任な話だが、夜も実は今回が2回目。最初に行ったときは頼んだ料理が出てこないで友人が文句を言って帰った思い出がある。銀髪にとって「じじあんどばば」の印象は悪くなかったので、再度行くことにした。
「じじあんどばば」は東京駅八重洲北口から2~3分のところにある。大通り(外堀通り)に面しているが、目立たない古いビルの地下にあるため通り過ぎてしまいそうな店だ。
店内もそれほど広いわけではないが、ファミリーでやるにはちょうどいいサイズだ。
「じじあんどばば」は若い夫婦(創業当時)が共にじじとばばになるまでやろうと作った店だが、カウンターのお二人はまだまだじじ&ばばには見えない。フロアを任されているのが息子さんで、柔和な笑顔が人の良さを表している。
洋風料理の店と思い込んでいたが、メニューを見ると牛刺しや煮込みがある。ワインだけでなく焼酎も置いてある。なんだか統一性のないように感じる。この違和感を解消させるキーワードが「ファミリービジネス」だ。じじは米沢牛が有名な米沢(山形県)の出身。ばばはワインが有名な甲州(山梨県)の出身。共に実家の関係先からの特別なルートで店の料理を安く・美味しく客に提供している。
お勧めに従って、牛すじの煮込み、ポテトサラダ、ソーセージの盛り合わせ、牛肉とにんにくの炒め物、コロッケを頼んだ。
米沢牛の煮込みとパイ皮入りのポテトサラダ

料理が出始めてから「しまった!」と思った。早い時間のため客は2組しか入っていない。このような場合はキッチンが暇なのでオーダーしたものが次々と出てくる店が多い。息子の駒沢君を呼ぼうと思ったが、料理の出し方まで指図することはないと思いとどまった。出てきたらそれで仕方がない。
ソーセージ盛り合わせ、牛肉の炒め物

ところが心配は杞憂に終わった。ちゃんと料理を食べ終わりそうになったところで次が出て来た。前回来たときは食べきれない量を構わず頼んでしまった。テーブルに料理が残ったままだったので、店主は次を作るのを遠慮したのかもしれない。事実、今回ピザも頼もうとしたが、多すぎるので止めたほうがいいと言われた。
コロッケ(左)とその断面(右)

コロッケはこの店の評判の一品だが、中身は牛肉入りのシチューのようなコロッケで美味。ポテトコロッケやクリームコロッケとも違う独特のものだ。
二人で飲んだ酒は生ビール2杯、自家製ワインを一本、海外でも引っ張りだこという貴重な白百合酒造のワインをグラスで2杯、最後に名酒の呼び声高い焼酎「佐藤」を2杯。
焼酎の肴に漬物をサービスしてくれた。なかなか気が利いているじゃないか。

二人分、1万円強を払って店を出た。ランチだけではこの店の本当の良さは分からないだろう。
女性だけに占領させておくにはもったいない店だ。
じじあんどばば
中央区八重洲1-4-21 共同ビルB1
03-3274-1797
移転先
じじあんどばば
東京都中央区日本橋2-2-15 日本橋テイトビル2階
03-3274-1797
http://www.jiji-baba.jp/
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2006年02月17日
[芳味亭](人形町) 老舗洋食屋のビーフシチュー
日本橋人形町には昔風に言えばハイカラな老舗料理屋が多い。軍鶏・親子丼の「玉ひで」、すき焼きの「人形町今半」「日山」などなど。
洋食屋では12月17日に紹介したトンカツの「小春軒」、ビーフカツの「キラク」などがあるが、忘れてならないのが「芳味亭」だ。

老舗有名店となると批判する人も多くなる。味覚は各人各様なので、不味いと言う人がいても不思議ではないが、手放しで「美味い!」と褒め上げるとグルメ失格とばかり蔑む人がいる。美味しいと喜んでいる人の前で不味いと言うのは下品な行為だ。悪口を言って食通を気取るのは慎みたい。
銀髪にとって人形町の老舗料理屋の味は総じて濃く甘い。今の人の好みは以前より軽く胃にもたれないものになっているが、老舗は移ろい行く客の好みに合わせるわけにもいかない。伝統の味は一つの文化遺産だから、維持していかなければならないのだろうか。
芳味亭の入り口左側の席の壁際には、映画評論家でグルメでも知られた故荻昌弘氏が随分昔にサンデー毎日に寄せた記事が置かれている。もちろん絶賛しているのだが、芳味亭の味はおそらく当時のままだろう。

ナイフとフォークが用意されるが、無論ナイフは必要ない。テレビのグルメ番組ではないが「ヤワラカーイ!」「トロケチャウ!」牛のばら肉、野菜は茹でてあり、スパゲティはいかにも昔風の味付けだ。
ビーフシチューとライスで2,650円。
一口食べると本当に美味い。「味が落ちた」と言う人もいるが間違いだと思う。二口目、三口目を食べると今度は「やっぱり人形町の味は濃い」と感じる。そこでご飯と一緒に食べる。ちょうどいい。所謂「洋食屋」の料理はパンよりご飯に合うように作られているに違いない。バターを塗ったパンと一緒ではくど過ぎるように感じる。
「芳味亭の畳席で洋食」というのもオツなもんだが、ワインを飲んでグダグダ時間をかけて女性と食事する雰囲気ではない。何種類もの料理が堪能出来る弁当をランチで食べるのが一番賢いかもしれない。
そんな訳で銀髪が芳味亭に行くのはいつも昼だ。今日の客の年齢層は様々。最初は年配者が多いかなと思っていたら、若い人も入ってくる。比率でいうとこの日は女性の方が多かった。みんな靴を脱いで2階の座敷に上がっていく。やがて弁当目当ての客が座敷を埋め尽くす。1階のキッチンも大忙しになる。
老舗洋食屋の味を愛する人が老若男女、今も多いのがわかって少し安心して店を出た。
芳味亭
東京都中央区日本橋人形町2-9-4
03-3666-5687
http://www.homitei.com
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2006年01月17日
[たいめいけん](日本橋) たんぽぽオムライス
日本橋でもっとも有名な洋食屋がたいめい軒。昼時は特に人気で11時の開店と同時に席が埋まりだす。
昼の1階席はお得感があって、11時半になると既に行列が出来る。名物のボルシチ、コールスローが50円で食べるられる。2階席は打って変わって空いている。ボルシチは1階のものとは具の量などが若干違うものの、味は一緒で800円。
値段の差が大きいために2階は昼時でも並ばずに座れる。予約をすることもできる。
今日は昼の接待だから行列客を横目に階段を上る。大衆食堂的な1階とは趣が違う。お客様にはミニラーメンを勧める。洋食のスープをベースにした醤油ラーメンはあっさり味で人気が高い。1階には立ち食いのラーメン専用カウンターがあるが、テーブル席でも気軽に食べることができる。
銀髪は2階のボルシチを試したかったので、一人だけでラーメンはやめにした。
ボルシチ

メイン料理は多種多彩。銀髪は迷わずタンポポ・オムライスを頼んだ。これは故伊丹十三監督の映画「たんぽぽ」で披露された料理だ。
映画「たんぽぽ」は伊丹監督が「お葬式」に次いで発表したもので、その後の「マルサの女」で名監督との評価が定着することになったが、その後数作を残して自ら命を絶った。
「たんぽぽ」は西部劇調の軽快なストーリー運びで、トラック運転手がたまたま入ったラーメン屋の未亡人経営者を助け、やがてさっそうと去って行く物語だ。
不味いラーメンを美味いラーメンになるまで鍛えていく過程で、いろんな料理が紹介される。以前名コックだった浮浪者が深夜のレストランに忍び込み、冷蔵庫の中の有り合わせの材料で作った料理がタンポポ・オムライス。たいめいけんが撮影に協力したこともあり、この店の名物料理になった。
普通のオムライスはチキンライスを薄焼き卵で包んだものだが、タンポポ・オムライスはチキンライスの上に中がトロトロのオムレツを乗せて出てくる(下の写真左)。熱いうちに自分でオムレツを割って食する(下の写真右)。

前にも書いたが伊丹十三はトロトロの卵料理が好みだったようで、銀髪と嗜好が似ている。
オムライスは子供の食べる料理のような気がして普段は食べない。ましてやチキンライスに卵数個を使った料理が2,700円とはとても割高に思えて普通なら頼む気がしない。
オムライスの料理法はいたって簡単だ。たいめいけんは寛容にもホームページでそのレシピを公開している。卵焼きで包む代わりにオムレツを乗せればたんぽぽオムライスの完成。
今度は自分で作って家族にご馳走しよう。銀髪はオムレツ作りの名人なのです。
名人に至るまでの苦労は涙なくして聞けないよ!
日本橋「たいめいけん」
http://www.taimeiken.co.jp/
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2005年12月22日
[蓬莱屋](上野) ひれかつ定食
グルメ紀行を書いていると言うと、みんなが美味い店を紹介してくれる。銀座の女性が教えてくれたとんかつ屋さんが上野蓬莱屋だった。
上野松坂屋の裏と教えられたが、ガラスケースに豚かつのサンプルが置いてある店をイメージしていたため通り過ぎてしまった。オヤッと振り返ってみると古い一軒家に確かに蓬莱屋の暖簾がかかっている。恐る恐る引き戸を開けると「いらっしゃいませ!」の声。

入ってすぐのカウンター右手の席に年配の3人連れがいるのみ。正面のカウンターには誰も居ないのでその端っこの席に案内された。名店にしては空いている。
外観に比べて店内は明るく新しく見える。店員はみんな名札をつけており、中国人の若い女性もいる。老舗といっても、しっかり現代風だ。
メニューを見ると定食はひれかつ(2,900円)、一口かつ(2,900円)、串かつ(1,900円)の3種類のみ。下調べをして来なかつたため何を頼むか悩んだが、一番目に書いてあるのが多分看板料理。従ってひれかつ定食を頼む。
せっかくカウンターに座ったのに、山岡さん(店主?)はこちらに背を向けて豚肉に衣をつける作業に没頭しているため話しかける隙がない。右奥の油が入った大鍋からは煙がモウモウと出ている。店の奥からはキャベツをきざむ音がかすかに聞こえてくる。
山岡さんは鍋を見ることもなく分厚いひれ肉に衣をつけ続けている。焦げないのかと心配していると、やおら鍋に向かい右奥の鍋から右手前の鍋に豚かつを移す。まず高温で揚げ、低温の鍋に移してじっくり揚げるようだ。結構長く揚げている。家であんなに長時間揚げると真っ黒になるが、出来上がった豚かつは程よい色合いだから不思議だ。
箸を取って待っていると、無常にも皿は先客の3人のところに行く。銀髪の分はまだない。
12時近くになったら、次々と客が入って来た。カウンターが埋まってからは、続々と奥の階段から2階に上がっていく。
前と同様、山岡さんはいきなり鍋に向かいひれかつを油から出し、かつを銀髪の目の前のまな板に置いた。揚げたての豚かつに包丁を入れる。アシスタントが肉を支えて切るのを手伝う。皿に乗せたらすかさずアシスタントがキャベツを添える。
今度は銀髪の分に間違いない。のどが鳴る。唾を飲み込む。

来た来た。やっと来たひれかつの衣は薄い。ふわふわ生パン粉の豚かつが隆盛になったが、揚げ物は薄い衣がいい。脂身のないひれ肉に薄い衣のためあっさりしている。そう言えば次々と入ってきた客はみんな銀髪より年長に見えた。
ソースはウスターソース。ねっとり甘いトンカツソースではない。
帰ってからホームページを見た。大正元年創業、松坂屋の脇で屋台を出し、昭和3年に今の地に開店。日本で初めてひれ肉を使ったとんかつを出したとのこと。
煙を出していた高温の油は自家抽出のラードだ。
年配者は肉が嫌いと思ったら大間違いだ。脂っぽくなく、軟らかい蓬莱屋のひれかつなら誰でも食べたいと思うはず。
銀座の女性にうけるのも納得できる。いい店を紹介してくれたお礼を言いたいが、誰だったか忘れてしまった。心当たりのある方、コメントください。
銀髪は脂の乗ったロースをカリッと揚げた方が好みだ。まだまだ若い!なんちゃって。
蓬莱屋のホームページ
http://www11.ocn.ne.jp/~houraiya/
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2005年12月17日
[小春軒](人形町) フライの名店でかきフライ
銀髪にとってフライと言えば豚カツ。中学時代からの好物は50歳になっても変わらないが、この季節になるとかきフライ。「季節限定」の文字がきらびやかに目に映る。
オーストラリアに居たとき、かきフライは憧れの料理の一つだった。オーストラリアで牡蠣と言えばまず生食。次がキルパトリックという殻に牡蠣の身とと千切りベーコンを乗せてオーブンで焼くもの。あとはシチューやグラタンなど。
オーストラリアでかきフライを食べようと思えば家で食べるしかない。牡蠣は日本から輸入の冷凍物。地元の牡蠣はフライにするには小粒過ぎた。揚げると身は無残に縮んでしまう。
帰国してからかきフライ作りにはまった。凝りだすとトコトンまでやらないと気がすまない。まず牡蠣の選択。中がジューシーな状態に仕上げたいが、生焼けは怖い。しっかり火を通すと水分が油に溶け出し油がはねる。出来上がりはちっとも美味しくないパサパサ。
溶き小麦粉を使ったり、小麦粉、卵、パン粉を2回りつけたりして衣を厚くしたが出来上がりは悲惨。
水分が抜けないように衣に工夫した。パン粉は市販のものがいいか、食パンをフードプロセッサーで砕いて作った自家製生パン粉がいいか。結構奥が深い。
生食用なら生でも問題ないから上手にできると思ったが、生食用は小粒で風味に欠ける。たまに大粒があっても生食用に育てたのではなく、洗浄して滅菌するので旨みがなくなってしまう。
豊橋に居たときはしばしば浜名湖・弁天島近辺まで牡蠣を買いに行った。店員は「生食用ではありませんよ!」と言った後で「そう言わなければいけないのでね」と囁いてにやりと笑う。黄色く新鮮な牡蠣を生で食べた。あの濃厚な旨味は今も忘れられない。
生を堪能して残りをかきフライにする。これが美味いの何のって。
強火の油でサッと揚げる。外はカリッと仕上がり、中はあくまでジューシーだった。
さて小春軒。明治45年に開業の老舗の洋食屋。並びの元祖親子丼「玉ひで」の行列には勝てないものの、なかなかの人気店で昼時はいつも満員になる。
左が「小春軒」、右の行列が「玉ひで」

季節限定のかきフライを頼む。牡蠣が5個入って1,000円。ころもは最近流行のやたら分厚い生パン粉ではなくて、シンプルな昔風。老舗ならではの伝統のある洋食店のフライ。
溶き小麦粉やころもの2度つけをしてないため家庭で揚げるかきフライに近い。ころもが薄くカリッと揚げた感触の良さがこの店の特徴か。

「薄いころもでサッと揚げて中はジューシー」を期待したが、ちょっと揚げすぎかな? ジューシー過ぎると生焼けだと怒る客が居るのかもしれない。店主が一番美味しい思うものを頑固に貫いても客が嫌がれば仕方がない。商売は難しい。
広島産や岡山産が主流になる年明け以降がかきフライの最盛期。築地に行って新鮮な大振りの牡蠣を買う。殻の破片が残っていないか調べる程度、風味が落ちないようにさっと濃い目の塩水で洗う。水が濁らなくなるまで2~3度丁寧に洗うなどもっての外だ。
シンプルに小麦粉、卵、パン粉をつけて揚げるのは他のカツと変わらない。油に入れると徐々に水分が出始める。油の中を水分がダンスする前に油からかきを救出。
皿に盛っても水分は溢れ出さないが、口に入れると熱い汁がジュワッと出て来る。生かきとは違った濃厚な海の味が口に広がる
ウーン!堪らない。今度の週末は築地に行こうかな。
小春軒
東京都中央区日本橋人形町1-7-9
03-3661-8830
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