2008年11月16日

[ランチョン](神保町)

思い出は思い出のままがいい?


12時過ぎに御茶ノ水で仕事を終えた。「ひるめし食って帰ろう」と行き先を告げずに早足で歩く銀髪に、部下は不安顔でついて来た。

高校3年生、17歳のときに御茶ノ水で模擬試験を受けた後に偶然入った店がランチョンだった。定食を頼んだらビールが出てきて驚いた。ランチョンが美味しい生ビールを飲ませることで有名な店とは知らなかった。それ以来、大学に入ってから何度も行った。遅れまいとついて来る部下は銀髪の頭の中は分からない。

2階に上がり、本日のランチを頼んだ。もちろんビールも一緒に。部下が懸念したような変な食べ物は出て来ないが、下戸の彼にとってはランチョンのありがたみは分からない。日本で最高級の生ビールを飲ませる店として名高いといっても猫に小判である。

定食は上出来だったがビールには首を傾げた。泡が山を作りいびつだ。カウンターを見るとビールサーバーのところに泡が半分ほど入ったグラスが並んでいる。オーダーが入ると、ビールを注ぎ足して泡が適当な厚さになるようにしているようだ。

ランチョンは明治42年創業という老舗の洋食店。今の店も店主も銀髪が通った頃から代替わりしている。かつては泡の注ぎ方で味が変わると信じた時期もあったが、オーストラリアに行って考えが変わった。外国では泡が多いと客が怒り出す。線を引いたグラスを使う店も多い。

ハワイのビール

ハワイで頼んだビールもオーストラリアと同様に泡は殆どなかった。そもそも喉を潤すためにがぶ飲みするビールに、微妙な味の差を求める客などいないのだろう。まして、アルコール入り炭酸ソーダ並みのビールが全盛の日本で、泡のきめ細かさや厚さを議論しても意味がないような気がする。泡よりビールそのものの味を議論した方がいい。

それでも、こだわるのが日本人。昔、八重洲に灘コロンビアというランチョンと並ぶ有名店があったが、主人が亡くなり伝説となってしまった。その一番弟子の店(ビアライゼ98)が新橋にあるという。外国人が理解できない繊細さを確認に行きたいもんだ。

もちろん、ランチョンにもチャンスをあげよう。思い出の彼方に葬り去るのは悲しい。


ランチョン
東京都千代田区神田神保町1-6
03-3233-0866
http://www.gourmet.ne.jp/Luncheon/index.shtml

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2008年09月26日

[丸善]②(日本橋)

他人の飯は白い


丸善の看板料理は創業者の早矢仕氏が開発したというハヤシライス。どちらかというと元祖争いをしている上野精養軒の方が銀髪の口に合うが、食事に連れて行く店としては近くてきれいなので重宝している。残念ながら席の間隔が狭いため、隣席で食べているものが嫌でも目に入る。今回は前に来た時に隣で食べていたハヤシとカレーのミックスしたものを食べた。

ハヤシライスはいつもと同じようにひっかかるような苦味がある。カレーの方がまろやかな感じがする。味が混ざらないように慎重に食べていたが、境目のところは止むを得ない。ところが混ざったところの方が美味しいから面白い。ハヤシライスの苦味も消えた。
一人悦に入っていたが、今度は目の前でFさんが食べていたオムライスが気になる。

別の日にAさんを誘った。もちろん頼んだのはオムライス。これにハヤシとカレーをかけたものに決めていた。ハヤシとカレーを一口ずつ味見して、残りはごちゃ混ぜにする。やはり混ぜた方が美味しい。これにオムライスと来たら無敵である。

完璧だ。実にいいバランスである。ハヤシライス → ハヤシ&カレーライス → ハヤシ&カレーオムライスと進んで3回目にようやく満足する料理に到達したと思った。ところが、左隣のテーブルに運ばれてきたものが気になって仕方がない。

ポーチドエッグが乗ったものかと思ったが、割っても黄身が出てこない。メニューを見て、カマンベールチーズ入りのハヤシライスと分かった。女性2人が美味しそうに食べている。

今度は一人で行った。もちろん頼んだのはカマンベール入りハヤシライス。さて、その評価は?

他人の飯は白い。隣の芝生は青い。自分が食べているものより、他人のものの方が美味しく見えるのは仕方がない。昼飯程度ならすぐ次の機会に挑戦することができるが、他人のデートの相手が良く見えたら困ってしまう。ただ指をくわえて見てるしかない。

丸善カフェ
東京都中央区日本橋2-3-10

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2008年07月20日

[双葉](上野)

上野とんかつ御三家をようやく制覇


制覇と言うには大袈裟すぎるが、蓬莱屋に行ったのが2005年12月、ぽん多本家が昨年の8月だから遂に達成した気持ちになるのも理解してもらえるだろう。何故そんなに時間がかかったかと問われたら、怠慢以外の言葉は浮かばないけれど…

蓬莱屋は大正元年、ぽん多本家は明治38年に創業、それに比べて双葉は昭和43年と比較的新しい。もっとも外観も店内も双葉が一番年季の入っているように見える。おそらく創業時のままなのは双葉だけだろう。周辺を含めて地方都市の定食屋の雰囲気が漂う。

並ぶのを覚悟して来たが、意外とあっさり入れた。メニューを見ていると隣席から「ヒレカツはないんですか?」と尋ねる声が聞こえた。メニューは至ってシンプル。ロースカツ定食一種類しかない。隣席の言葉に救われた。いかにも常連風に軽く一言でオーダーした。

一人で来た客には新聞を渡している。その気遣いはぽん多と変わらないが、ぽん多ほど料理が来るまで時間はかからなかった。分厚い肉に薄い衣。御三家に共通する昔ながらのトンカツである。最近は生パン粉を使った厚い衣の店が人気だが、個人的には薄い衣の方が好きだ。この方が肉の味が分かっていい。衣の役目は豚肉の旨みを引き立たせることにある。
脂身を削ぎ落としているので、ヒレと言われても納得してしまうかもしれない。ヒレカツを欲した隣席の客もきっと満足したに違いない。

テーブルに立つプラスチックケースに入ったメニューを再度見て部下の目の色が変わった。最初に見たときでも高いと思ったらしいが、「結構いい値段だよな」と銀髪に言われて棒を一つ見逃していたことにやっと気が付いた。最終的にはトンカツを食べて二九四〇円に納得しただろう。

店を出たら外に「只今満席です」の札が立っていた。確かに空きテーブルはなかったが、4人席に2人、2人席に1人が殆どで詰め込むことが出来ない訳ではない。店内で待たせることはもちろん、外に列を作らせることも善しとしないようだ。

わざわざ来た客を拒絶するような姿勢を批判する人が居るかもしれないが、高いトンカツ代には居心地も含まれると考えているに違いない。待たせる苦痛を客に与えないのも受け入れる側の分別だろう。

上野3傑はそれぞれ特徴があって面白い。選定者に拍手を送りたい。


双葉
東京都台東区上野2-8-11
03-3831-6483

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2008年06月26日

[かつ銀](銀座)

とんかつ居酒屋


夜、とんかつ屋に行こうと言われるとちょっとめげる。中学・高校と毎日とんかつを弁当に入れてもらっていたほどのとんかつ好きだが、フライ物ばかりを酒の肴にするのは辛い。
かつ銀は酒の肴も多種あると聞いてホッとした。

店は広い。壁にはフライ物以外のメニューもたくさん張ってある。とんかつの評価が高い店ということを忘れてしまいそうだ。

おつまみ類各種

タン盛合せ、ハンバーグ、ポークソテー

口コミではタン盛り合わせが美味しいと書いてあったので頼んだが、10人の男たちの殆どが箸をつけようとしない。男は保守的で、女性の方が逞しいといつも思う。
ハンバーグがなかなかいい。メンチカツも美味しいに違いないが、既にたくさん頼んであるので遠慮した。

カツ丼、カツカレー

ご飯物は他の店とはちょっと違っている。客自らが別盛りのご飯にかけて食べる。いつまでも熱いのが嬉しい。

とんかつ2種

ブログや口コミで絶賛されるとんかつ。中がほんのり赤く、切り口は斜めに入っている。豚飼育の衛生管理が行き届いているのか、最近では豚肉も刺身で食べさせる店が増えてきた。とんかつでもちょっと生が一番美味しい揚げ方なのだろう。

例によって慌しく食事を終えた。とんかつをおかずにご飯を食べた者もいる。色んな食べ物があると言っても、やはりこんな飲み会は辛い。銀髪だってとんかつならご飯を食べたい。メタボ回避のための自制心が邪魔をした。食べずに悔やむか、食べてから後悔するか。

今度、ゆっくり昼に来よう。とんかつにご飯。ランチならどちらの後悔もしないで済む。


かつ銀
東京都中央区銀座2-14-5 B1F
03-3543-2485

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2008年01月19日

[アカシア](東京駅GRANSTA)

東京駅構内地下、TOKYO STATION CITY GRANSTAで買ったお弁当


東京駅が変わった。まだリニューアル途上であるが、徐々に新しい姿を見せ始めている。先陣を切ったのがGRANSTAだった。東京駅構内の地下に45店が出来た。そのうちの約半分が弁当を販売している。浅草今半のすき焼き弁当、まい泉のとんかつ弁当、過門香のあんかけ焼きそばなども捨て難かったが、結局アカシアのロールキャベツシチュー弁当を買うことにした。

12時6分の新幹線に乗る予定だったので、11時50分まで待って注文した。650円と800円の弁当の違いは、ごはんの量とコロッケが帆立てのクリームコロッケかポテトコロッケかだけ。お目当てのロールキャベツに差はないので安い方を選んだ。

階段を上りホームに立つとほぼ同時に新幹線の清掃が終了してドアが開いた。寒風が吹きすさぶホームで、弁当を冷めるままにする愚は冒さずに済んだ。
殆ど誤差なく計画通りにことが進んでいる。指定の席に座ると、弁当を開ける。蓋を固定しているセロテープを剥がすのに手間取って、切れそうになるのを堪えた。

いきなりロールキャベツを食べるのも惜しい気がして、ポテトコロッケを一口食べた。次にご飯をたべて、ようやくロールキャベツに箸をつけた。キャベツは繊維質も壊れ、箸だけではらりと割れた。

口に含むとほんのり温かい。弁当屋でよそってもらったときから熱々でなかったのだから仕方がない。新宿「アカシア」の思い出はかつて書いた。懐かしくて久し振りに食べたロールキャベツだったが、本店の味より薄く感じた。とろみも少ない(ような気がする)。

「オウッ! これこれ!」と笑みを満面に浮かべることはできなかったが、久し振りのアカシアの味は楽しめた。他の弁当より特色があり面白かった。

追伸  初めて食べる人へ。
お弁当が美味しいと思った人には何も言いません。美味しくないと思った人は、これに懲りずに新宿本店に行ってください。それでもダメだったら。潔く諦めましょう。


http://www.gransta.jp
http://www.restaurant-acacia.com

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2007年11月16日

[キラク](日本橋人形町)

人形町の洋食屋といえばキラクは外せない


昭和21年(1946年)創業というから既に60年以上の歴史を誇る有名な洋食屋である。それなのに不思議なことにこれまで入ったことがなかった。店の前までは何度も足を運んだが、小さい店なのですぐに満席になる。並んでまで食べたくないので近くのラーメン屋に入ることが度々だった。

この日、部下に同行して客先に行った。客先から人形町まで歩いて5分、運良く11時過ぎにミーティングが終了した。店は既に半分埋まっていたが、余裕で席を確保。お目当てのビーフカツを頼んだ。キラクのことを知らない部下はポークかつを頼む。

ポークカツ

2人同時に料理を出すためにポークカツが先に油に入った。待てど暮らせど銀髪のビーフは登場しない。永遠にも感じるほどの時間が過ぎたところで鍋に投じられ、拍子抜けするほど早くポークカツと共に引き上げられた。

ビーフカツ

霜降り肉ではないので噛み応えがあるが、レアに仕上がっているので固くなく味がある。部下のポークカツを奪い取り、こちらのビーフカツと引き換える。「どちらが美味い?」と聞くと「ビーフカツが美味い」と答える。生まれて初めて食べたそうで、嬉しそうである。それを見るとこちらも嬉しいが、周りを見渡すとちょっと引っかかる。
ポークソテーがメチャメチャ美味そうなのである。

日を替えて1人で行った。まだ早い時間なのに既に3人が食事中で、4人が料理の出来上がるのを待っている。席に座るなり「ポークソテー!」と伝え、しばらく待つことを覚悟した。女将さんが格闘しているフライパンの中はおそらくポークソテーだ。

「にんにくを入れますか?」と聞かれ「ハイ」と答えて、もしかするとフライパンの中に銀髪の分も入っているのではないかと期待した。

ポークソテー

思ったとおり、銀髪を含めて5人の前に料理が置かれた。ビーフカツが1人で他はポークソテー。にんにくの香ばしさに覆われたポークソテーの美味いこと。多くの人がポークソテーを頼むのがハッキリ分かった。

女将さんが再びポークソテーを作り始めて気付いたが、銀髪に出された分はテークアウトされるものだったようだ。お陰で待たずに食事にありつけた。

それにしてもこのポークソテーは秀逸だ。しばらく我が家の献立から消えていたが、復活したくなった。週末は分厚い豚肉を買って、家族に振る舞おう。キラクほど美味くはできないだろうが、その味は今も明確に舌に残っている。

洋食キラク
東京都中央区日本橋人形町2-6-6
03-3666-6555

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2007年11月12日

[とんかつ 河](新橋)

新橋で評判のカツの店


「日本で一番美味いトンカツだ!」と絶賛する仲間に連れられてタクシーに乗った。銀座を過ぎて新橋の機関車を左にやり過ごしてすぐに看板を見つけた。想像したより小さな店だ。開店して4年とのことだが、店は開店して間もないかのように磨き上げられている。店主と女将の中年夫婦の笑顔をも考え合わせると、味は保証されたようなものだ。

エビフライ

まず特大のエビフライから。揚げる前に見せてもらった海老は20㎝近い大型のブラックタイガー。車海老のプリッとした食感には負けるが、かぶりつくと食べ応えがある。
自家製のタルタルソースはざく切りしたゆで卵にマヨネーズを和えただけのもので、そのまま卵サンドにも使えそう。

ロースカツとヒレカツ

じっくり揚げた厚い肉の中心部はほんのり赤くジューシーである。衣は生パン粉でサクサクしている。個人的には昔ながらの薄い衣の方が好きだが、今はサクサク衣の方が好まれるようだ。

カキフライ

大型のカキフライを一口食べたら中から汁が溢れ出して来た。これを見てみんなが歓声を上げた。家でカキフライを作るとあたるのが嫌なのでどうしても揚げ過ぎてしまう。
鮮度と揚げる技術に自信がないとジューシーなカキフライは食べられない。

トンカツなどの揚げ物は家庭や定食屋の定番料理。高い料金を払って食べるものではないように思う人も多いが、高いトンカツ屋で混んでいる店は確かに何かが違う。たまには贅沢して2~3日分の昼飯代をつぎ込んでも後悔はしないだろう。

常連さんを気遣ってテレビ取材は断っているという小さなお店。新橋で見つけた美味しいとんかつ屋さんはいかが。


とんかつ 河
東京都港区新橋3-16-21
03-3578-0778

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2007年10月06日

[上野精養軒](日本橋)

上野精養軒の元祖ハヤシライスを食べた。


ハヤシライスの元祖争いの話は以前にも書いた(→「丸善」
丸善の早矢仕有的が考案したというものと、上野精養軒の林というコックが賄い食として考案したという説があり、どちらも元祖を名乗っている。

上野精養軒まで行くのは面倒なので、日本橋三越の向かいのビル9階にある日本橋店に行った。ビルの入り口にメニューが置いてあり、それを見ると敷居が高そうなので今まで敬遠していた。ランチはコースのみと思っていたが、ランチコースのページをめくるとアラカルトメニューがあることに気がついた。ハヤシライスを単品で食べようと決心してエレベーターに乗り込んだ。

想像したとおり格式張っている。店員も老舗フランス料理屋ですといわんばかりの所作で、洋食屋のくだけた感じはない。席に案内されてハヤシライスを頼んだら、スープはいかが、サラダはいかがと熱心に奨めるので抗し切れずスープを頼んだ。ハヤシライスだけでは許さないぞという雰囲気がムンムンしている。

コンソメスープ

上品なスープを飲み干したところで、ハヤシライスがやってきた。ご飯と別々に持って来られるとちょっと高級感がある税込み1,575円の品。

ハヤシライス

上野精養軒のハヤシライスは日本橋店の裏の掘っ立て小屋「上野精養軒カレーとハヤシのお店」で食べたことがある。記憶を呼び起こすと裏の店のハヤシライスの方が美味しかったような気がする。

翌日、立派な店の味を忘れないうちにと思い、裏の店に行った。「昨日、上のレストランでハヤシを食べたんだけど、同じもの?」と聞いたら、700円の方は牛ばら肉で、高い方はヒレ肉だそうだ。「同じだとお客さんに怒られてしまいますよ」どおばさん、いやお姉さんが笑う。但し、どちらも同じ料理人が作ったものとのこと。

料理人も客の意見を知りたがっているそうなので、「ばら肉の方がコクがあって美味い。」と言うと、お姉さんは、本当に嬉しそうだ。

「美味しかったよ、ごちそう様」と言うと、「またいらしてくださいね」とにこやかに送り出してくれる。ハヤシライスやカレーを食べるだけなら、安くて美味しくて愛想がいい店のほうがいいに決まっている。


上野精養軒 日本橋店
東京都中央区日本橋室町1-5-3 福島ビル9F
03-3241-2741

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2007年08月18日

[梓](ニューヨーク)

リーズナブルに食べられる日本食屋さん


帰国してから気付くのも間抜けな話だが、ニューヨーク情報満載のiSEENYというサイトを見つけた。→ http://www.iseeny.com
我々はニューヨーク駐在中または駐在経験者の方々におんぶに抱っこだったので必要なかったが、旅行者だけでなく現地在住の人にも便利なサイトである。

このサイトで紹介している日本食の店は130店以上あり、値段によって3段階に分けられている。稲ぎくが高級店、対馬が中級店のところに載っている。もっとも多いのは3番目のクラスで全体の過半数を超える。その中に梓も見つかった。

いわゆる庶民的な店のコンセプトは脱日本人客にあるのだろう。料理や味付けに工夫を凝らすのも必要だが、もっともアメリカ人向けにしているのは食事の量だろう。昼食に梓に連れて行かれてそれを実感した。

とんかつ定食

目の前に置かれて笑い出した。驚きが度を過ぎるとなぜか笑ってしまう。とんかつが2枚、その下にたっぷりの野菜とスパゲッティが敷かれている。これで9ドル50セント(約1,100円)だから、非常にリーズナブルである。

決断力が求められた。全部食べるか、何か残すか。残すとしたら何を残すか。もったいないから肉は全部食べよう。健康のために野菜も食べよう。水分は料理が出てくる前にビールを摂取したので、味噌汁は残す。スパゲッティとごはんは炭水化物で同類だから、食べながらトータルで量を調整しよう。

オーストラリアにも日本食レストランは山ほどあったが、これほど量の多い定食はあまり見たことがない。なぜ、アメリカ人はこんなにたくさん食べるのだろう。まったく理解が出来ない。出されたものは全部食べなさいと教育されたが、齢をとったら残す勇気も必要である。神様ごめんなさい。お百姓様ごめんなさい。


3 East 44th Street, New York, N.Y. 10017
212-681-0001

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2007年08月06日

[ぽん多本家](上野)

明治から続く洋食屋の看板メニューはカツレツ

お詫び: 8月1日夜にサーバーがダウンしました。復旧作業をしておりますが、今も画像が表示できない状態が続いています。画像は
食べログ http://u.tabelog.com/ginpatsu/ 
Yahooブログ http://blogs.yahoo.co.jp/hn2460jp 

蓬莱屋、双葉と並んで上野とんかつ御三家の一店と聞いて、トンカツ専門店と思い込んでいた。店の前に立つと重厚な木の扉が閉まったまま。休みかと一瞬不安になったが、「営業中」の札を見て安心した。一見客を圧するような扉をエイ、ヤッ!と押し入ると、調理場が正面にあり、いらっしゃいませと温かい声に迎えられた。

11時35分と早い時間のせいか、先客はいない。カウンター右端に陣取った。メニューを渡されて初めてトンカツ専門店ではないことを知った。メニューの中心あたりにやっとカツレツの文字を見つけてオーダーすると、店員がスポーツ新聞を持ってきてくれた。豚肉をトントンと叩く音。控えめな揚げ音が聞こえ始める。

興味のある記事は殆ど読み終わった。15分以上経っただろうか。カツレツを切るサクサクという音がお腹を刺激した。カウンターの上にはウスターソースが乗っている。とろみのあるトンカツソースでないのが老舗らしくて好ましいが、醤油も別に持ってきてもらった。

カツレツ

話には聞いていたが、揚げ色が薄い。聞かされてなければ揚げ足りないと不満に思うところだ。厚い肉を低温でじっくり揚げた証しで、揚げ音が控えめな理由が分かった。
カツは狐色に少し焦げた方が香ばしくて好きなのだが、まったく別物の仕上がりである。何もかけずに口に含んで驚いた。思い描くトンカツとは明らかに違う食べ物だ。

大昔、長兄が帰省して東京での学生生活を面白おかしく教えてくれた。東京で彼が食べるトンカツの肉は限りなく薄く、まるで衣だけ食べるようなものだと聞いて大いに笑ったものだ。他の店で食べるトンカツの肉は厚くても、揚げ物における衣の存在感はかなり大きい。

ところがぽん多のカツレツでは衣は豚肉の引き立て役を謙虚に引き受けているように思える。脂身を削げ落としたロース肉が柔らかく、しっとりとして、香りがある。
日本橋コレドにある「平田牧場」の揚げ色が薄いのも、ぽん多と同じことを意図しているのだろうが、脂身がくどくて閉口した。平田牧場の安いランチ定食では気付かなかった意図が、ぽん多で理解できた。

ごはん、赤だし、漬物をつけて3,150円。トンカツにこの値段は法外と思う人も多いだろうが、ぽん多本家のものはカツレツ。名称は老舗洋食屋としてのこだわりかと思ったが、「他店のトンカツとは違うんだぞ!」という誇りの表れかもしれない。


ぽん多本家
東京都台東区上野3-23-3
03-3831-2351

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2007年07月11日

[元酒屋](銀座)

元は酒屋(?)という不思議な洋食屋


「何か美味しいものを食べに行こうぜ!」と誘われる。曖昧に頷くと寿司屋に行こうと言う。明らかに気を遣ってくれている。こちらに異論はないが、目指す寿司屋の対面に洋食屋を発見した。「こちらに入りましょうか?」と声をかけると、スポンサー氏の顔がパッと明るくなった。

それでも「予約なしで大丈夫かな?」と不安顔だ。「賭けてもいい。絶対は入れますよ!」と言ったが、入ってみると予約でほぼ一杯。我々4人に狭いテーブルをやっと確保できてホッとした。意外と人気があるのに驚いた。

メニュー

レトロな店内に合わせてメニューもレトロ。写真は使わず絵で料理の様子が書いてある。

タラコのカナッペ、白レバー、牛タン燻製

酒の肴に最高と思ったが、オヤジはちょっと変わったものは絶対に食べない、食に冒険はしない。責任を取らされるのは頼んだ銀髪だ。

ロールキャベツ、コロッケ、ハンバーグ

誰もが好き嫌いしない料理はしっかりと4等分して食べた。いくつになってもオヤジが懐かしがり、喜ぶ3品だ。コロッケは2個乗っていたが、写真を撮る時間も待てずに持っていかれた。

マカロニサラダ、チキンカツ、ピザ、茄子のグラタン

ピザに乗せる生ハムも一緒にオーブンに入れる店は珍しい。ちょっと焼きすぎのピザを食べてみると他がやならない理由は明解だ。

それにしても元酒屋とはユニークな店名だ。ビールを飲んで、シャブリを一本空けて、酒のメニューを再び開いたところで気がついた。洋食屋なのに10種類の日本酒が書いてある。
3年古酒の美吟微吟と純米大吟醸の大中屋を呑んだがなかなかのものだった。

食べた料理の中ではミートボールみたいなハンバーグが一番良かった。本格洋食と言うよりは家庭料理に近い。20年以上の歴史をもつ元酒屋のオーナーは、1750年創業・山梨県の蔵元「七賢」12代目の実弟。
蔵元を飛び出すほど洋食に惚れ込んだのだろうが、袂を分かっても実家の酒を置くのだから兄弟仲は悪くなさそうだ。洋食ではなく日本料理屋をやってくれていたら、兄貴はもっと嬉しかっただろうが…


元酒屋
東京都中央区銀座8-5-24 西八ビル2F
03-3572-6240
http://www.sake-shichiken.co.jp/motozakaya/index.html

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2007年07月08日

オムライス

子供の頃の思い出には必ず入るかな?


子供の頃、チャーハンとオムライスを食べたことのない人はいないはずだ。残ったご飯を処分するには一番の方法だからである。
チャーハンは昼ごはんのイメージが強いが、ケチャップを加えて卵で包むだけで夕食のメインになったのだから、オムライスは倹約家の大蔵大臣兼料理人の強い味方だったに違いない。

もっとも、残り物のご飯を使った料理が手抜きと言っては母に失礼だろう。東芝の電器炊飯器が発売されたのが1955年、銀髪の生まれた年である。今のように朝起きたら美味しいご飯が炊けているなんてことがなかった時代は、ご飯を炊くこと自体大仕事だったろう。

たいめいけんのオムライス

たいめいけんには有名な「タンポポ・オムライス」があるが、殆どのおじさんたちが頼むのは慣れ親しんだ普通のオムライスである。見た目は一緒だが、作り方は多分おじさんたちのお母さんとはちょっと違う。レシピが公開されているのでご覧いただきたい。
http://www.taimeiken.co.jp/faq/index.html

具を炒める→ご飯を加える→ケチャップをからめる→卵で包むが一般的だが、たいめいけんは順番がちょっと違う。

冷ご飯は温めなおしてから加えるとのことだが、昔は電子レンジもなかったのだから、ご飯を温めること自体手間がかかった。
電気冷蔵庫をやっと手に入れても、容量が小さいので母は毎日お買い物に行かなければならない。ご飯も毎日苦労して炊く。洗濯機のない時代に毎日ひどい汚れ物をこさえてくる子供たちを恨んだことはなかったのだろうか。当時エステがあったとしても救いようのない手だったはずだ。

こんな状態だから太ったお母さんは少なかった。太っていても間食で太ったのではなく、残り物を自ら処分したからに違いない。

昨今、オムライスを看板にする店が増えたが、残ったご飯で作るイメージが強くて、オムライスをお店で食べる気がしないのは銀髪だけかな? たいめいけん(2階)の2,100円のオムライスはもちろん、1,000円台でも高い気がする。オムライス好きな人にとっては、余計なお世話というのは重々承知しているが…

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2007年06月21日

[明治記念館ビアテラス 鶺鴒(せきれい)](信濃町)

クーラーの風を逃れて庭園でビールを


最後にデパートの屋上で大ジョッキを飲んだのはいつのことだったろうか。昔は夏になると涼を求めてよく行った。特大の大ジョッキに枝豆、焼き鳥、唐揚げ、フライドポテト、焼きそばなどのしけたつまみでも嬉しかったが、やがてどの店にも空調が完備するようになって廃れていった。多数の大ジョッキを1人で運ぶ名人芸を見ることもなくなった。

「ビアガーデンに行こう!」と連れて行かれたのは明治記念館。結婚式場の印象しかなかったが、和洋中と立派なレストランがたくさんある。ビアテラスは緑の芝生がまぶしくて、想像以上にいい雰囲気である。

ソーセージ盛合せ

ビールならソーセージ。パブロフの犬さながらによく躾けられたのん兵衛だ。レストランの思惑にまんまとはまる。

冷しトマトと白アスパラ

いまだにトマト1個に数百円を支払うのに疑問を持つが、肌にいいリコピンが豊富と聞けば頼んでしまう。男だってエステに通う時代である。
最近流行りの白アスパラには素直に喜んでしまう浅はかさ。昔は缶詰が高級品で憧れだった。

庭園ではショータイムが始まった。2人の芸者さんが芝生の上で日本舞踊を踊りだす。あまりに遠くて美人かどうか判別できないのがいいのか悪いのか。品の良さと話を邪魔しない雅楽が好ましい。

オクラの揚げ物

何がなんでも変わったものを食べなければならないのが銀髪の宿命。オクラは蓮根をすり潰したもので覆われ、海苔を巻いて揚げてある。これは美味い。今度家でやってみよう。

山芋ステーキ

これも家のレシピに加えることが出来そうだ。最近、鉄板焼きなどにする機会が多いので予想どおりの料理だが、味付けは参考になった。

トイレを我慢できる程度のビールでお開きにしてタクシーに乗った。品のいい庭園で飲むには丁度いい量だと思ったが、二次会の目的地に着いたらわれ先にトイレに駆け込んだ。明治記念館のきれいなトイレで済ませればいいのに、まったく酔っ払いはしょうがない。


明治記念館ビアテラス 鶺鴒(せきれい)
東京都港区元赤坂2-2-23
03-3746-7723

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2007年05月27日

[チョウシヤ](銀座) 

元祖コロッケ?超有名らしいけど知らなかった。


日本橋方面から昭和通りを歩き博多ラーメンの「一風堂」に入った。元気のいい店員に新作ラーメンを奨められるも、断って定番の赤丸新味を頼んだがぬるいスープに失望した。欲求不満解消のため歌舞伎座寄りの1本裏道を散策することにした。歩き出してすぐに「元祖コロッケ」の文字が目に入った。

1927年(昭和2年)の創業というからコロッケを発明したわけではないだろうが、元祖とつけるには意味があるに違いない。歌舞伎座に近いこともあり、役者たちも創業以来変わらない味を愛しているとのこと。随分前に昔のコロッケを食べたいと書いたが、それっきり忘れていた。(→「コロッケ」
買おうかどうか迷ったが、お腹に一風堂の麺とぬるかったスープが詰まっている。翌日出直すことにした。

開店から20分後の11時20分に店に着いたが、先客がいないので買う要領が分からない。ボーとしているとカツを揚げている人から声がかかった。
「コロッケパンをください」と言うと、「食パンですか、コッペパンですか?」と聞かれる。「コッペパン」と答えるとビニール袋に入ったコッペパンを取り出し、横から2つに切ってマスタードを塗った。コロッケも二つに切って挟みソースをかけた。実にシンプル。ついでにメンチカツも1個買った。

コロッケは松坂牛のミンチを使ったこだわりの味とのことだが、肉はその味や食感を楽しむほど入っていない。昔懐かしいコロッケそのものである。パンに挟んだためか揚げ物のサクサク感はなくなったが、コッペパンが熱気を吸い取ってコロッケとよく馴染んでいた。

メンチカツは単品で買ったのでサクサクして美味だった。コロッケパンの半分をメンチカツに入れ替えて食べた。銀髪にとってはこちらの方が懐かしさを飛び越えて美味い。
コロッケパンを作ってもらっている間に来た若い客が、迷わずメンチカツパンと頼んでいたのが思い出された。

トンカツやハムカツなど他の揚げ物もある。常連はダブルで挟んだり、マカロニサラダを加えたりと思い思いの味を作っている。銀座の裏通りに今もあるレトロの世界を見つけた。

チョウシヤ
東京都中央区銀座3-11-6
03-3541-2982


コロッケ130円、メンチカツ140円、コロッケパン220円

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2007年05月17日

[煉瓦亭](銀座)

元祖カツカレーを食べたら、元祖ポークカツも食べねばなるまい。


揚げ物を海外では何と言うのだろうか。英辞郎でカツと引くとcutlet、カツレツと引くとSchnitzelと出てくる。ちゃんとした外国語があるように元々揚げ物は海外で生まれたもの。なぜ煉瓦亭が元祖なのだろうか。

シュニッツェルで思い浮かぶのはウインナー・シュニッツェルだが使う肉は牛肉で、揚げるのではなく多目の油をひいたフライパンで焼く。海外でも日本のようにタップリの油で揚げる(deep fry)料理もあるが、牛、鶏、魚介類のみで不思議なことに豚を揚げたものに出会ったことがない。

明治時代に日本に伝わった洋食の揚げ物にはなかった豚肉を、煉瓦亭が初めて使ったわけだ。煉瓦亭の創業は明治28年(1895年)で、4年後に考案されたポークカツレツは千切りキャベツ、パセリを添えて日本中に広まる。ご飯をお皿に盛ったのもこの店が発祥。フォークの背にご飯を乗せて食べる妙なマナーもここで生まれたのだろうか。

11時13分に店に着いた。きっちり2分後に店が開き、2階に上がり席についた。おしぼりと水を持って来た店員にポークカツレツ(1,250円)とライス(200円)を注文したのが11時17分。11時30分には、銀髪の前に本日の煉瓦亭最初の料理が運ばれてきた。

何もつけずに一口食べたら意外なことに美味い。意外とは失礼かもしれないが、昔ながらの味を守り続ける老舗料理屋よりも、後発の店の方が美味しい例は山ほどある。
しかし、生パン粉をたっぷりつけ、甘めの豚カツソースをどっぷりかける流行りの豚カツと違い、煉瓦亭のポークカツレツは母が作ってくれた豚カツのようで気に入った。何もかけずに半分、残りは塩をつけたり、テーブルの上のウスターソースを少しだけかけて食べた。

煉瓦亭が生まれて110年以上、この店が日本中に広めた料理も多い。それにしても、煉瓦亭のある銀座ガス通りは中央通りを1本外れただけなのに、いい店が多く風情がある。らん月の裏口から、カツカレーのグリルスイス、煉瓦亭と続く道の並びにはキャバレーの「白いばら」がある。創業は昭和6年で昔からのファンも多い。

午後3時半、豚カツを食べて4時間足らずでお腹が空いたのには驚いた。新鮮な油に替えたばかりだったのだろうか。自分の体調が良かったのだろうか。もしかしたら、これが店の実力かもしれない。

午後4時過ぎ、記憶にないほど久しぶりにマクドナルドに入り、コーヒーと小フライドポテトを頼んだ。夕飯までの空腹感を紛らわして余りある重さだった。

煉瓦亭
東京都中央区銀座3-5-16
03-3561-7258

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2007年05月16日

[グリルスイス](銀座)

元祖カツカレー


豚カツは中学生のとき毎日お弁当に入れてもらっていたほど好きだった。カレーはもちろん大好物だった。ところが家で2つの大好きな食べ物を一緒にして食べた記憶がない。どちらも立派な独立した食事になり得るのだから、2つ一緒にするのはもったいないと母は思ったのかもしれない。

これを一緒にしたのが元読売巨人軍選手の故千葉茂氏で、1948年に彼がオーダーしたグリルスイスでカツカレーが誕生したという。日本的なとんかつは1890年に銀座の煉瓦亭が考案したとされ、日本にカレーライスが普及したのも明治期のようであるから、60年近くもの間だれもが我が家の食卓と同じ考えを持っていたのだろう。

そのグリルスイスに行った。カツカレーを食べに来たので悩むことはないと思ったのだが、メニューには2つある。復刻版の千葉さんのカツカレーを食べようと一度は決めたが、オーダーする際出てきた言葉は「カツカレー」だけ。すかさず店の人に「元祖カツカレーですね」と言われて素直に従った。

カレーが本格的なので、調子が狂った。銀髪にとっての元祖カツカレーは大学の学食で食べたハムカツ・カレーで、当然カレーは黄緑色の粉っぽい代物だった。カツカレーに合わせて作られたに違いないグリルスイスのカレーは、カツが必要のないほどしっかりしたものだった。

千葉さんのカツカレーをメニューで見る限り、腹が減って豚カツもカレーも両方食べたいが皿を分けるのが面倒なので、一皿に盛ってもらったように見える。まったく偶然の産物でまさか合わせたら人気メニューになると考えたわけではあるまい。人気料理として完成させたのがグリルスイスで、従って元祖カツカレーと命名したのだろう。

勝手に想像しないで勘定場に今も元気に座る庄子静子さんに聞けばいいのに遠慮した。故人の名誉のためにも千葉氏が発明したと言った方がいい。庄子さんは千葉氏を敬う優しく謙虚な女性に見える。

周りを見渡せば常連さんたちが思い思いのものを食べている。カツカレーを目当てに来る人以外は普通の定食屋の気分でいるようだ。店の人の応対もそれに倣う。昔懐かしい店と思えば、何度か足を運ぶうちに雰囲気に溶け込むようになるだろう。

グリルスイス
東京都中央区銀座3-5-16
03-3563-3206

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2007年05月05日

[丸善](日本橋)

元祖ハヤシライス?


ハヤシライスは約40年前に亡き喜劇俳優・南利明が「ハヤシもあるでよ」とCMで言ったところから全国に広まった。と、勝手に解釈していたが、実際は明治の初期に人気を博していたというから南利明より更に100年近く遡ることになる。

友人からハヤシライスの元祖は日本橋の丸善だと知らされて驚いた。ハヤシライスはハッシュド・ビーフが訛ったものと信じていたが、はやしという人の名前からつけられたという説も知らなかったわけではない。驚いたのは「はやしさん」が目と鼻の先の丸善の人だったことである。

ところが「はやしさん」説は2人いて、丸善の創業者である早矢仕さんと上野精養軒の林さんが名乗りを上げている。100年以上も前の話で未だに結着していないものを、銀髪がとやかく言える話ではない。とにかくご近所の早矢仕さんのところに行ってみた。

今年の3月9日にリニューアルオープンしたばかりなので、店内は美しい。11時をちょっと過ぎたばかりなので客は殆ど入っていない。12時過ぎたら女性客で列が出来るのだろう。
席に案内されてメニューを見ることもなくハヤシライスを注文した。

一口目は美味しく食べた。半分ほど食べたところで考えた。一品でお腹を満たす料理はいつの時点で一番美味しく感じるように作られているのだろうか。カレーであれば段々辛く感じるようになっても銀髪は問題にしないが、段々甘味が強く感じるようになるハヤシライスには疲れてくる。

ハヤシライスを食べ終わる頃にベストの食べ方を思いついた。ルーとご飯を同じペースで食べるべきではない。最初はルーが多めで、ご飯を少なめで食べる。終わり頃には逆にご飯を多めに食べる。これなら感じる甘味は一定を保つことができる。

話の種に使えるのだから元祖ハヤシライス、サラダ付1,000円は高くない。肉などの具が殆ど見えない程シャビシャビなので、歯の悪いお年寄りでも問題なく懐かしい味を楽しめる。

丸善の名物料理はハヤシライスだけではない。 「カレーもあるでよ!」


丸善カフェ
東京都中央区日本橋2-3-10
03-6214-2001

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2007年04月27日

[たいめいけん]②(日本橋)

たいめいけん名物を食い尽くす


たいめいけんのタンポポオムライスはあまりにも有名であるが、老舗洋食屋の他の料理も食べてみたい。ホームページを見ると太っ腹にもいくつかの看板料理のレシピを紹介している。割高だが格調の高い2階に上がりレシピが紹介されているコールスロー、ポテトコロッケ、グラタン、他にメンチカツ、タンシチューを頼んだ。

フレンチなどのマナー本には、料理を分け合って食べることは下品であると書いてある。そんなことは先刻承知であるが、色んな料理を味見したい欲求は捨てられない。実際たいめいけんでもオーダーを受けた後、取り皿をたくさん用意してくれるから心得たものだ。追加注文を見越してか、注文を受けたウエイトレスはメニューは置いたまま厨房に消えた。

順番に持ってきてくれると安心していたら、料理が一斉にテーブルに並べられて驚いた。

こちらが非常識なのか、店側が配慮に欠けるのか自問していると、ウエイターがやってきてメニューを無言で持ち去ろうとする。目が合うと無愛想に「メニューの数が限られていますので」と言い訳して行った。後姿を追いかけると、彼は無人のテーブルにメニューを置いただけだった。

早く食べなければどんどん料理が冷めていくのでムカッとしている余裕はない。まずグラタンを片付けた。悪くない。メンチカツもそれなりだがジューシーさで勝る店はいくつもある。ビーフコロッケは冷えても美味しい街のコロッケの方に軍配を上げてしまう。話しに夢中になっている2人の取り分が冷めてしまうのが気が気ではない。こちら側2人は店の評価を肴に大笑いを繰り返している。不平不満を笑い飛ばす度量が必要だ。

タンシチューに到達したときには完全に冷めていた。さっきのウエイターを呼んで、暖めなおしてくれないか頼んだが、「煮詰まってしまうので」とにべもない。煮込み料理なので唯一暖めなおしが出来る料理と踏んだのだが読みが甘かった。電子レンジでチンでもいいのだが、料理人のプライドが許さないかもしれない。客がマナー違反をしているのだから仕方ない。我慢して冷めたシチューを口の中に放り込んだ。

気持ちを取り直して追加注文をするために先ほどのウエイターを待った。出番のなかったメニューを取り戻そうと思うのだが、一向にこちらに注目してくれず店内をうろついているだけ。やむを得ず中年の女性ウエイトレスにメニューを持ってきてもらって追加の料理を頼んだ。追加したのはポテトサラダと撮り損なったコールスローをもう一回。

ウエイトレスは注文を聞くとメニューを放置して引っ込んだ。さっきのウエイターを待ってしばらく様子をうかがったが今度は取りに来る気配がない。痺れを切らしてウエイトレスに声をかけて丁重にメニューをお返しした。メニューが置いてない空きテーブルがあったら大変だ。銀髪の大人気ない遊びは不完全なまま終了した。

これまでたまに来てはオムライスばかり食べていたので気付かなかったが、たいめいけんが繁盛しているのは昔から変わらない味のためだと分かった。ここの味をお手本にして、もっと美味しい料理屋がたくさん出来たのだろう。従って「思ったほど美味しくない」とか「○○の方が美味しい」などの評価は正しくない。「これが洋食の老舗・たいめいけんの味だ!」「これこそ大正ロマンだ」と感激しなければならない。

なんだか大変なことに気付いたようで嬉しくなった。日本橋の他の洋食屋さんと同様に昭和6年から続く味を維持することが大切なのだ。味の進化は必要ないし、やってはいけない。これはこれで大変な努力だと思う。

それにしても、フロアスタッフの接客態度も創業以来変わらないのだろうか。みんなが懐かしがって喜ぶような代物とは思えないのだが…

たいめいけん
東京都中央区日本橋1-12-10
03-3271-2464 (2階)

http://www.taimeiken.co.jp/

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2006年12月28日

[せんば自由軒グリル](さいたま新都心店)

大阪で有名なカレー屋に連れて行かれた。

子供の頃、カレーをご飯に注ぐとすかさず万遍なく混ぜ合わせて食べたものだ。いつの日からかこれが下品な食べ方と言われるようになった。ご飯をフォークの背に乗せる、スプーンを使ってスパゲッティをフォークに巻きつける、などなど日本人が勝手に考え出した食事のマナーは多い。

自由軒のカレーは創業した明治43年当時のままという。出すときから混ぜてあるのは珍しかったかもしれないが、昔は誰もがこんな食べ方をしていたに違いない。ご飯とカレールーが同時になくなるように食べるのは結構骨が折れるし、本場でもグチャグチャに混ぜて食べるのが当たり前のようだ。

カレーライスとハヤシライスの2品が乗った皿を食べた。「熱いうちに卵を割り、ウスターソースをかけて混ぜ合わせて食べてください」と、紙に書いてあった。試しにそのまま食べてみたら味が薄い。ソースをかけてちょうどいい味になるように調理してあるというが、成る程そのとおりだ。ハヤシライスより名物インディアンカレーの方がいい。

家に帰って自由軒をインターネットで検索したら「自由軒」と「せんば自由軒」の2つが出てきた。「自由軒」のホームページでは「せんば自由軒」を非難している。創業者は共に吉田四一氏であると言う。「せんば自由軒」は孫の一人が「自由軒」の料理長を呼んで創業したようだ。親戚といえども何代も経れば赤の他人、ただの競争相手になるのだろうが、客にとっては骨肉の本家争いよりも味の争いを楽しみたい。

名古屋味噌煮込みうどんの「山本屋」、牛たんの「味太助」など商号に対する諍いは多々見られるが、自由軒も2系統あるとは大阪出身者でも知らないようだった。

自由軒のホームページによると、カレーに卵を乗せたのも、ソースをかけさせたのも、自由軒の発案だそうだ。卵もソースも高級品だった時代だけに、宣伝にはなっただろう。
我が家でソースをかけることはなかったので、カレーにソースをかける人を初めて見たときとても驚いたものだが、90年も前からの食べ方だったとは知らなかった。

感激してまた行きたいと思うようなものではなかったが、歴史を紐解く楽しさは味わえた。
銀髪はカレーに目玉焼きを入れるのが好きだ。昔、「カレー固め」と注文する声を聞いて耳を疑った。固めではなく片目つまり目玉焼き一個という意味と知って笑ったが、これを最初に使ったのはどこの店だろうか。

話はどんどん膨らんでいく。


せんば自由軒グリル さいたま新都心店
埼玉県さいたま市大宮区吉敷町4-267-2
048-600-1691

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2006年11月23日

[いもや](神保町)

思い出の「いもや」は何処に

今、当社ではちょっとしたウォーキング・ブームである。肥満・高血圧で悩む数人が選んだ運動がウォーキングだった。財布にも肉体にも負担がかからないのがウォーキング。短距離のタクシーや電車を我慢すれば、ジムに行く必要もないのだからこんなにいいことはない。

今の季節ならほんのり汗をかく程度で、シャツやスラックスを汗で濡らすこともない。週末に数十キロを自転車で走る銀髪と言えども平日は運動とは無縁だから、ウォーキングをやる気になった。ただ目的もなく歩くのは辛いので、遠くの店でランチを取ることにした。

御茶ノ水・駿河台下のいもやは格好のターゲットだ。食べた後は電車かタクシーで帰ることにして、日本橋から早足で歩く、歩く。12時前に到着しなければ並ばなければならないと思ったら、歩幅は広く、足の回転も速い。約25分で「とんかついもや」に着いた。店は一杯ですぐには座れないが、カウンター席後方の長椅子で待つ権利は確保できた。自分の番が来る頃には汗も引くはずだ。

待つ間に店内を観察した。料理人は豚肉に小麦粉をつけて、溶き卵のパットに放り込む。これを竹串で刺して取り出し、両手でパン粉をつける。手を汚すことなく下ごしらえをした肉を、油の中に落とす。昼のとんかつメニューは700円の一品のみだから、流れ作業でどんどん揚げていく。客の注文を聞く必要もないので、並んでいる人数だけ確認すれば足りる。

その間におばさんはご飯をよそい、しじみの味噌汁を注ぐ。ご飯は大き目の茶碗に大盛りなので、自分の番が来たら「ご飯は軽めに」と言おうと決めたが、結局それは叶わなかった。待つこと10分程でカウンター席に座ったら、間髪入れずにとんかつ、ごはん、味噌汁、お茶が目の前に出てきた。

仕方なくご飯は残そうと思ったが、貧乏性で気弱な銀髪は残せず全部たいらげた。予定外に摂取したカロリーを消費するために、復路も歩くことにした。そのついでに思い出の「いもや」を探した。いもやはとんかつ屋の他に、天ぷら、天丼など専門店が複数ある。銀髪の思い出の店は、淡路町寄りにあった肉詰めピーマンなどの揚げ物屋である。
しかし、記憶の場所は昔と大きく変わっていた。もちろんいもやは遥か昔に消えたそうだ。

無念さを押し殺して歩いていたら、見覚えのある顔がこちらに向かってくる。昔の職場の後輩で、もう何年も会ったことがない奴だ。こちらに全く気付かない彼の前に立ちはだかると、期待通り驚いてくれる。まったく愉快である。今度、飲みに行く約束をして別れた。

ドラマだったら出来過ぎと笑ってしまう偶然だが、「事実は小説より奇なり」である。「歩いていもやに行かなかったら」「ご飯が大盛りでなかったら」などなど、たった一つの要因でも欠けていたら彼に会うことはなかっただろう。

もしかしたら神様が本当にいるのかもしれないと感謝しつつも、どうせなら美女に会う偶然にしてくれたら良かったのにと、ちょっと怨めしく思った。


いもや
東京都千代田区神田神保町1-4
03-3293-0509

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2006年11月05日

[やえす亭](八重洲) 閉店しました

勝負の前はいつもとんかつ。

Mさんに、「書かないのか?」と聞かれた店がやえす亭である。「最近行っていないので、一緒に行きましょうか?」と誘ったら、あまり行きたくないと言われてしまった。理由は落ち着いて食べられないことにあるらしい。

確かに狭い店で、15人程で満席になる。相席は当たり前で、2~3人で行ったら並んで座らなければ奥に座った人は出ることもできない。意外と人気の店なので、すぐに待つ人の列が出来る。狭い厨房で調理している主人と、配膳をしている女性2人は感じよくて、早く食べて早く出て行けというような素振りをしたことは一度もない。そうであっても周りの雰囲気を見ると、出て行かざるを得ないだろう。

また、銀髪と一緒に行く相手が悪い。とにかく食べるのが早い。お店のためにも早く食べて帰らなければならないと気を遣っているらしく、我々が食べていても平気で席を立って勘定を払いに行く。ゆっくり食べてもいいよと言って出て行くのだが、そんなことをしたら勝手な奴に見えそうだ。

銀髪が頼むのはいつもとんかつ定食780円だ。ご飯は少なめ。相手はハンバーグとコロッケのセット。

定食だけでなく、メニューにあるものであれば追加注文ができる。立派なロースカツやヒレカツに普通盛(それでもどんぶり飯)のご飯を食べたい気もしないではないが、相手の食べるスピードに合わせて店を出るためにはとんかつ定食と少なめのご飯以外はあり得ないのだ。

初めて付いてきたYはそのあたりの事情を知らない。立派なものを注文した。銀髪は常に相手の料理の減り具合を見ながら、自分の食事を進めていく。ここのコロッケは中身がトロトロで超熱い。以前口の中を火傷したため、せわしないランチ時に頼むことは止めた。このコロッケを熱さをものともせず食べているのを見ると、感心して手が止まりそうになるが、休むのは危険である。

彼の口はいつも一杯になっているが、それでも喋り続けている。噛むことなどしないで、喉の中に押し込んでいるのではないかと心配になってくる。5分も経たずに食事は終了した。銀髪の皿もほぼきれいになった。今日も大成功である。Yの皿を見ると予想通りまだ半分しか減っていない。相手は入り口の列をチラッとみて立ち上がった。Yは呆然としている。「ゆっくり食べてください、外で待っていますから」と声をかけたが、残りの一部を口に放り込んで出てきたのであろう。Yを待った時間はわずかだった。

これじゃあ、Mさんもついて来たくない訳だ。味は悪くないと思うが、ゆっくり味わった記憶がない。興味のある方は自分で確かめてください。

やえす亭
東京都中央区八重洲1-5-11
03-3271-8815

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2006年10月28日

[串TEN](日本橋室町)

安くてそこそこ美味しい店を見つけた。

東京は高層ビルが多く、洗練された街とのイメージが強いが、至る所に低層木造建築物に囲まれた路地がある。中央通りを挟んで日本橋三越と反対側の一画にもそんな路地があり、たくさんの小さな飲食店がひしめく。高級店もあるが、殆どはサラリーマンの懐に優しい店のようだ。

串TENは串揚げ1本