2008年12月29日

[アディング・ブルー](南青山)

美味しいものはレストランで学ぶ


「外でよろしければ…」「寒くはないんですか?」わずかなやり取りだけで、行くことに決めた。年末の忙しい時期、評判のいい店はどこも一杯なので贅沢は言えない。

店内はガラガラだったのに、わずかな期待はかなわず予定通り外に連れ出された。店の前に立てられたテントは電気ストーブと灯油ストーブで温められていたが、足元には冷たい空気が居座っていた。

シューブレッドとオリーブ、もち豚の自家製ハム

パンも自家製ハムも美味しくて少し元気になってきた。皿を出すときに料理の説明はなかったものの、こちらが求めると淀みなく答えてくれた。自家製ハムに乗ったソースが面白い。

パン盛合せ、エシレバター

女性店員が木の樽のようなものを脇に抱えてやってきた。もうアイスクリーム?と思ったらバターだった。「美味しいバターですね」と褒めたつもりが、「バターだけは自家製ではないんですよ」と不満気である。後で調べてみると、ロブションやタイユバンなど一流レストランで使われる発酵バターとのこと。(http://www.webgrandchef.com/breakfast/echire/echire.htm

フランス産キノコのフリカッセのサラダ、島根産ウリボー(仔猪)のロワイヤル

数種類のキノコは薫り高くてワインが美味しく感じる。ウリボーも悪くない。テントの中も満員になってきた。最後に入ってきたグループには食材が乗ったワゴンが登場した。何故、我々のとことにやって来なかったのだろう。他の客も羨ましそうに、不満気に見ていた。すべての客にいちいち店内からワゴンをひいてくるのは面倒なのかもしれない。

店内から目の届かないテントではサービスの評価をするのは酷かもしれない。料理は悪くなかった。パンも美味しかったので、いつか店内で食べたいものである。

何よりも良かったのはエシレバターを知ったことだ。銀髪が知らないことが何と多いことか。後日、成城石井で50g(399円)のエシレバターを買った。天然酵母を使ったパンとお歳暮でもらった生ハム、チーズ、娘が作ってくれたクリームシチューで豪華な食事が出来た。

アディング・ブルーに行って本当に良かった。

アディング・ブルー
東京都港区南青山6-3-16 ライカビル1F
03-5485-2266
http://www.addingblue.com

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2008年11月19日

[コール・ド・ルージュ](赤坂)

カジュアルな赤坂のマキシム


自他共に認める天邪鬼。話題の赤坂サカスなんか行くもんか、と思っているうちに時が過ぎた。マキシムの銀座本店から赤坂店に異動になった店員に「必ず行くからね」と約束したことは、ずっと気になっていたけれど…

赤坂でふぐでも食べようかと歩いていたらきらびやかな建物が目の前に現れた。「これが赤坂サカスか」と好奇心で目を輝かせているとワインバーから声がかかった。ワイン好きの相手をおだてると、簡単に宗旨替えをした。

ビールで喉の渇きを癒やした後、ワインに取り掛かる。ワインメニューは遊び心があって実に面白い。グラスの足に上の写真のような名刺大の札が掛けられている。もちろん、記念に持ち帰ることが出来る。

生ハムサラダ、バーニャカウダ

カジュアルな店に合わせて気楽な料理を頼んだが、思ったより美味しい。バーニャカウダのソースを余らせてはもったいないので頼んだパンが、滅茶苦茶いけると連れが感激する。

パン、牛肉のカルパッチョ

肉に合わせてちょっと高めの赤ワインを頼んだ。食べながら、飲みながら、話しながら、ワインリストを何度もめくる。オーパスワン、ラトゥール、ムートンなど後ろのページになるほど高級になり、100万円弱のロマネコンティまである。

赤坂でこんな高いワインを飲む客がいるのだろうか。湧き上がった好奇心に突き動かされて一番利発そうな店員をつかまえた。「赤坂にも私が勤めていた銀座の店以上のお客様がいます。恐るべし赤坂ですね」と言う。「銀座のどこに勤めていたの?」「マキシムです」「エッ!?」と名札を見る。何と「必ず行くからね」と約束した落合さんである。いや、落合君と呼ばせてもらおう。実に気持ちのいい若者である。

「入店されたときから分かっていました」と言われたら会わす顔がない。自分から声をかけるのは失礼だと思い遠慮していたとのこと。「カジュアルなユニフォームなので見違えた」と言い訳した。それからの会話の楽しかったこと。2階のレストランも見学させてもらった。

高級ワインがあるのも、パンが美味しいのもマキシムの支店なら不思議ではない。コール・ド・ルージュは銀座のマキシムの水準を求める客には物足りなく、赤坂の若い客には高すぎるかもしれないが、これからどのように折り合いをつけていくか楽しみではある。

何の気なしに入った店に落合君がいた。神様の存在を信じてもいいような気がした。

コール・ド・ルージュ
東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー マキシム・ド・パリ1F
03-5545-4505
http://www.maxim-s.co.jp

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2008年11月13日

[大渕座](銀座)

銀座の超フレンチ


16,500円の松茸コース


冷製スクランブルエッグ、ピザ、クリームソース、甘鯛のポワレ・サラダ仕立て、ホロホロ鳥のラグーパスタと続く松茸尽くし

「松茸の産地は?」と聞くとトルコ産とカナダ産とのこと。これは避けて安いコースの方が良さそうだと思って客の意見を聞くと「どちらでも」と応える。「どちらでも」は「高い方を食べたい」という意味である。

9,800円のコース


野菜のディップ、鯖煮、キスの天ぷら、太刀魚アンチョビバター添え、三種のチーズ盛り合わせ

コースは2種類しかないが、値段には大きな開きがある。銀髪も松茸コースにしようかと迷っていると、「私のを分けてあげますよ」と言われた。「あなたは安いコースにしなさい」という意味である。

両方のコースを楽しめる幸せなアドバイスである。偏見を持って臨んだ松茸コースは思ったより香りが高くて美味しかった。一流シェフの目利きのなせる技だろう。国産より安価な分、タップリ使っているのがいい。ピザが特に気に入った。

いくら美味しくても松茸ばかりでは飽きてしまう。安いコースがいいアクセントになった。カウンター席だと二人で分けるのも簡単だ。西欧では分け合って食べることはしないが、日本では嫌な顔をされないので有難い。

料理が終ったところでオーナーシェフの大渕さんがやってきた。「フランス料理と言うより日本料理に近いですね」と有名シェフをつかまえて生意気を言う。ところが一番日本的に思えた鯖もフランスの田舎料理とのこと。奥が深い。

それでも懲りずに「ヌーベル・キュイジーヌなんて新しいものより、ガッツリした伝統的なものが食べたいですね」と憎まれ口をたたいたら「私も40年間フランス料理一筋ですから、そういったものを作りたい」と言うので驚いた。フランス料理の流行はヌーベル・キュイジーヌから2段階も先に進んでいるそうだ。

新しいフランス料理の旗頭と思われる大渕さんだが、その理想がどこにあるのか興味が湧いた。評価が高かった代官山の「ラ・ヴィーナス」を閉め、3年前に銀座に今の店を開いた。ちょっと有名になると支店を作ったり、他店のプロデュースをして稼ぐ料理人が多いのに大渕さんは変わっている。

柔和な笑顔の奥に潜む闘志を垣間見た気がする。支える奥様も大変だろうが、頑張って欲しい。いつか「これを食ってみろ!」という大渕さんの理想の料理を味わいたいものだ。


御魚 大渕座
東京都中央区銀座3-10-14 東銀1ビル2F
03-5565-3788

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2008年11月04日

[ボルドーセラー](南青山)

心地よい隠れ家にしちゃおう


老若男女、日本人と外国人、たくさんの人で賑わう表参道の交差点のすぐ近くなのに、小さなビルの階段を下りると喧騒を忘れてしまう。店にとっては悲しいが、こちらにとっては嬉しい半分ほど埋まっただけの静かな店内。南青山でワインバーとなれば女性ばかりと思いきや、左の席は日本人の上司と部下、右の席は外国人おやじ二人で、アベックは一組だけ。実に面白い。

スモークたくあん、お婆さんの作るパテ

メニューの中で変わったネーミングの料理2つを頼む。「甲州ブドウの香り」というたくあんは、ワインを売り物にする店ならではのもの。「キッチンにお婆さんが居るの?」と茶化した相手は美形の店員。男共は彼女目当てに来てるのかと思ってしまう。これだけで楽しくなるのだから男は困る。

自家製スモークサーモン、自家製ソーセージ

スモークサーモンまでテーブルに置かれた割り箸で食べていたが、ソーセージになって初めてナイフとフォークを手にした。評価が高い中国原産の梅山豚を使った自家製ソーセージ。こだわりの料理は知る人ぞ知る柿崎シェフならではのもの。テーブルに来てくれなかったので話ができなかったのが残念だ。まあ、美人のお姉さんがいるからいいか。

ウニとキャビアの冷製パスタ

日本ならではの海の幸を使ったスパゲティ。日本ほど様々な麺料理がある国はないだろう。日本古来の麺類が超えることが出来ない壁を、スパゲッティは軽々と越えていく。本場では思いもつかない料理も、異国では簡単に出来てしまう。実に面白い。

左右の席ではポンポンとボトルが開けられていく。外国人のワイングラスはグラスワインを飲んでいる我々のものと比べるとひときわ大きくて妬ましくなる。

勘定を払って店を出たところで空き瓶が放り込まれた木箱が目に入った。高級シャンパン・サロンの空き瓶もある。値段が高いワインも置いているがひけらかさない謙虚な店主の心根が窺える。いい食事、いいワインをリーズナブルに楽しめる店。何を飲むかは客の懐次第。店主のメッセージをしっかり受け止めて階段を上った。

表参道は人通りが2時間前より増えたようだ。夜はまだ長い。


ボルドーセラー
東京都港区南青山5-1-25 北村ビルB1
03-5467-8420
http://www.bordeaux-cellar2005.com

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2008年10月20日

[グット ドール](銀座)

金色の滴り


君嶋屋、君嶋屋、横浜君嶋屋とMさんが言う。キミシマと言われてもデザイナーぐらいしか思い浮かばないが、どうやら有名な酒屋のようだ。横浜の酒屋が銀座にワインバーをやっているから行こうと言われてその気になった。

日本橋から銀座4丁目の店まで歩いた。やっと着いたところでホッとするわけには行かない。店のドアを開けるには狭くて急な階段を3階まで上らなければならない。軽快に上りきった銀髪をMさんがゆっくり追いかけてきた。

カウンターを左に見ながら窓際の奥の席を目指した。ビールで喉を潤したところでワインのメニューをもらった。常時10種類のグラスワインが用意されている。味比べを出来るのは嬉しいが、値段は正直だと分からされるのはちょっと辛い。料理が出て来るまで胡麻パンスティックやパンを肴にする。

ブーダンノワールのテリーヌ、サラダ、海老とイカのソテー・プロヴァンス風

料理も楽しめる。しかし、フランス料理屋やイタリア料理屋のメニューは本当にわかりにくい。ブーダンは豚の血と脂肪で作ったもの。ノワールは黒の意味で、フランスのギャング映画をフィルムノワールと言ったことを思い出させる。プロヴァンス風とは トマト、にんにく、オリーブオイルをたっぷり使った料理のこと。

トリップの煮込みニース風、鴨もも肉のコンフィ、チーズ盛り合わせ

トリップは牛の内臓肉でイタリア料理ではトリッパというもの。ニース風とはトマト、オリーブオイル、アンチョビなどを入れて作られた料理、コンフィは玉葱などを煮崩れるまで炒めたもののこと。フランス在住歴6年のKも料理の説明は上手くない。ワインの味は分かると言うが、値段を見れば彼の評価は必要ない。

全ての種類を飲んだ頃にはカウンターの半分以上が埋まった。全て女性である。途中で若い男がワインを2杯飲んですぐに帰った。我々は場違いな客だったかとバーテンダーに尋ねたら、いつでも大歓迎と言ってくれた。それはそうだ。これだけ飲み食いする客は居ないだろう。

因みに店名のグットは滴り、ドールは黄金の意味とMさんが教えてくれた。フランス語の予習をして行けば、楽しみも倍増するのは間違いない。


グット ドール
東京都中央区銀座4-3-5 銀座ハトリビル3F
03-3564-7218
http://www.goutte-dor.com/ginza

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2008年07月10日

[マキシム・ド・パリ]②(銀座)

夜のマキシム


ランチで行った「マキシム」は楽しかった。担当してくれた落合さんの貢献大であったが、彼は赤坂の新店に移ってしまった。彼を追って赤坂店に行こうか迷ったが、本店の夜に賭けることにした。

陽が当たらない地下の店だから昼も夜も同じようなものだが、店に入るなり空気が違うように感じた。クロークやバーには年配の男女が集い、オペラの開演を待っているかのような華やかな緊張感が漂う。クールビズを守っているのは銀髪だけで、珍しく客の平均年齢を下げる側に回った。

前菜2品

前菜には「柔らかく煮込んだ黒鮑とアスパラガスのサラダ、トリュフ風味ドレッシング」「フレッシュフォアグラのポワレ、ビュイ産レンズ豆添えバニュルスワインビネガー風味ソース」を選んで、分けて出してもらった。写真は半人前ということになる。

隣の年配の男女6人はコース料理を選び、ステーキの焼き方を告げている。銀髪はコースを避けていつものようにアラカルト。この方が色んな料理を楽しめる。相手に一応好みは聞くが、オーダーするのは全て銀髪である。

メイン2種

メインとして「フランス産仔鴨のヴァリエーション キノコのバルマンティエを添えて」「舌平目のブレゼノイリー酒の香り アルベール風」を選んだ。色々な部位の鴨は分けられないと言われたので写真がそれぞれ一人前。

高貴な夜らしい雰囲気を演出していたヴァイオリン奏者がステージを降りて隣席にやってきた。主役の男性は還暦を遥かに超えているようで、多分古希のお祝いだろう。彼がケーキのろうそくの火を吹き消すと、恋人同士、クラブの同伴組、接待中の中年紳士達、満席のフロアから一斉に拍手が湧き上がった。隣の我々がもっとも大きく手を鳴らすと、ハニカミながらこちらに会釈を返した。

デザート

ヴァイオリンが再びBGMを奏で始めると、一つにまとまった心がそれぞれのテーブルに戻っていった。我々はデザートに取り掛かる。プチケーキを出す店が多いが、マキシムはあくまで伝統的である。

料理もクラシックなものが一番いい。特にフォアグラが美味しかった。鴨は殆どを相手に食べられてしまって悲しかった。鮑と舌平目も悪くはないが、和食で魚介類の美味さを知っている日本人には物足りない。フレンチでは肉の方に軍配を上げる。

落合さんと大笑いしたガラガラのランチ時も楽しかったが、重厚な雰囲気の夜のマキシムも大いに楽しめた。


マキシム・ド・パリ
東京都中央区銀座5-3-1 ソニービル地下3階
03-3572-3621
http://www.maxim-s.co.jp

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2008年07月01日

[マクシヴァン](六本木)

2005年全日本最優秀ソムリエのお店


「いいお店があるので是非」とお誘いを受けたことも忘れていた。社交辞令で終わることが多いので気にしてなかったが、相手は違ったようだ。諸般の事情で遅れた理由の一つがマクシヴァンが有名になり過ぎたことだった。チャンピオンの佐藤さんが挑んだ世界大会の模様が昨年6月にNHK「プロフェッショナル」で報じられたため、予約が取れない店になってしまったのだ。

その番組を見たことを佐藤さんと話をしてようやく思い出した。コンテストの模様が鮮やかに蘇ってくる。壇上に立つ競技者たちの顔にすっぽりと佐藤さんの顔が納まった。脳の不思議を言う前に、ボケ頭を反省すべきかもしれない。

ブリオッシュ、自家製パン

とびうおとサザエのタンバル、うさぎのバロティーヌ、カサゴのポワレ

料理はコースのみで4,800円、6,500円、8,500円の3種がある。一番上のコースを頼んであった。それにしてもフランス料理はメニューを見てもイメージが湧かない。
ブリオッシュとはバターと卵を多く使ったパン。タンバルとは型のことを言い、魚介類を刻んで型で成形した料理ということだろう。パロディーヌとは筒状に詰め物をして煮た料理。ポワレはカリッと焼き上げること。説明を一生懸命聞くが、すぐに忘れる。知ったかぶりをするよりも、毎回聞いた方が楽しいからと言い訳する。

ワインは全日本最優秀ソムリエの佐藤さんにお任せする。白と赤を2種ずつ、注ぐときの説明が田崎真也氏(1995年第8回世界最優秀ソムリエコンクール優勝)を髣髴とさせる。さすがにチャンピオンともなると表現力も豊かだ。楽しいアイデア料理にどんなワインが来るか期待が膨らむ。

フォアグラのポワレ、豚足のコロッケ仕立て

フォアグラは2種の中から、豚足は5種のメイン料理から選択した。伝統的なフランス料理と斬新なものの組み合わせだ。
豚足の形に整えられているが、衣の下はジャガイモを骨を抜いた豚足のゼラチン質で覆ったもの。自家製パン粉のパリパリ感、ゼラチン質のプヨプよ感が上手くバランスされていて面白い料理になった。気鋭の料理人にはアイデア料理の方が向くようだ。

チーズ、エスプレッソ

チーズのお供はカルヴァドス(ノルマンディー地方で造られる林檎のブランディー)にした。棚にはスコッチなど世界各国の酒が並ぶ。
日本ソムリエ協会のHPを開いてみた。ソムリエはワインの知識だけでなく、その他の飲料・食料や、食品衛生などの知識、サービスの技術など多くのことが求められるとのこと。

佐藤さんの表情や働き振り、軽やかな身のこなしを見ていると、ソムリエ協会が求める姿がよく分かるような気がする。ソムリエコンクールでは、人間性も評価の重要な要素なのだろう。

知性、品格、情熱、自信などなど、すべてが表れる笑顔に、佐藤さんが名誉を得た決め手があるように思われた。

マクシヴァン
東京都港区六本木7-21-22
03-5775-1073
http://www.maxivin.com

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2008年06月16日

[ヴィロン](渋谷)

とにかくフランスパンが美味しい


「パン屋が経営するフランス料理屋」程度の予備知識を持って行った。渋谷東急百貨店本店の向かいにあるパン屋は思ったより大きく立派だ。
店に並ぶパンやケーキを横目に右隅にある階段を上った。気取った高級フレンチではなさそうで良かった。

ベテランの味わいとフレンドリーな雰囲気を身にまとった店員と何を食べるか相談した。「うちは一皿の量が多いですよ」と言う巨躯を見ると、さもありなんと思える。

バケット・レトロドール

「パンを食べすぎなければ」という条件で3品を頼むのを許してもらった。確かにバケットはいつも食べるフランスパンよりかなり美味しい。忠告を守ってゆっくり食べた。

ホタテとサマートリュフ

秋のトリュフほど香りは強くないが、安価なので厚めのスライスで食べられるのがいい。ホタテやジャガイモとうまく調和している。

自家製スモークサーモン

ノルウェー産の鮭を使った自家製スモークサーモンは生のように色鮮やかだ。

松坂ポーク・4種の料理

メインは店員のお奨めに従って一品を分け合って食べた。松坂牛はあまりにも有名だが、豚もあるとは知らなかった。
料理はどれもフランスの田舎のレストランで食べるような素朴なものばかり。忠告された通り量が多くて田舎料理的である。グラスワインも数種類揃えていてご機嫌だ。

もっとも、どの料理もバケットにはかなわない。デザートも食べずに1階のパン屋に向かった。「遅くなると売り切れますよ」とアドバイスしてくれた店員は2階の売り上げを減らした。バケットを手に入れることが出来てホッとした。

バケット・レトロドールはパリ市主催バケットコンクールで10年間に7回も優勝した名品。ヴィロンではフランスのヴィロン社と独占契約した100%フランス産の小麦粉・レトロドールを使っている。日本で食べることが出来るのは渋谷の本店と丸の内の2店だけとのこと。

買ったバケットをお土産にして友人にあげた。その場でちぎって食べて、あまりに喜ぶのでまた買いに行かなければならなくなってしまった。嬉しいような悲しいような…

ブラッスリー ヴィロン
東京都渋谷区宇田川町33-8 塚田ビル2F
03-5438-1776


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2008年05月22日

[銀座レカン](銀座)

今日のテーマはフォアグラ


何を食べたいか明快に希望を述べてもらえると、接待におけるホスト役は楽である。「何でもいいですよ」と言ってくれる気遣いは有難いが、的が絞れず悩ましい。しかし今回は「フォアグラが食べたい!」と言われて困った。

銀座にフレンチの名店は多い。評判が高くても新進気鋭の店は候補から除外した。ヴァンピックルのフォアグラも悪くないが、高級店を期待している人には向かない。数種類のフォアグラ料理を食べられる店ということで、30年以上の歴史を誇る銀座レカンに行くことにした。

マキシムドパリには及ばないまでもなかなか重厚な雰囲気の店である。スタッフの応対も申し分ない。「今日のテーマはフォアグラなんだよ」とメニューを差し出したギャルソンに告げた。歴史のある立派な店では何を食べるか相談する時間が楽しい。

アミューズ2種

選んだ料理は4品。その前に目も楽しませてくれる2皿がご機嫌だ。

手長海老、黒鮑

「赤座手長海老とビーツのコラボレーション ハチミツとマニゲット風味」、「山口県萩産 黒鮑のコンポートと温度卵 トリュフのクーリ」の2種類はメニューのまま食べることにした。シェフの創意工夫が楽しめるのが前菜である。
昆布だしで煮込んだ鮑が和食のようだが、肝を使ったソースは伝統的なフランス料理だという。これが美味い。

フォアグラ2種

結局メニューにある料理を銀髪の好みにアレンジしたものを作ってもらった。一つはフォアグラの素材を活かしたオーソドックスな焼物。もう一つはフランス産アスパラを添えて一工夫したもの。表面をカリッと焼いたオーソドックスなソテーが本当に美味しくて感動的だった。
もう一品は同じフォアグラなのに、一口大に切っただけで幾分淡白な味になるから不思議だ。フランス産
アスパラが香ばしくて歯ごたえがある。国産では味わえない食感だ。

デザートのワゴンには多種のケーキが並ぶ。女性なら小躍りしそうな風景だ。
デザートを頼まなくても甘いものが次から次に出て来る。

伝統的な料理、新しい創作料理のどちらも楽しめるのがいい。身のこなし、豊富な知識、笑顔が勝負のスタッフ陣にも文句はない。

老舗と言っても格式張ったところはなく、フレンドリーである。怖気ずに若い人も行って欲しい店である。


銀座レカン
東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビルB1
03-3561-9706
http://www.lecringinza.co.jp

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2008年03月22日

[アルエット](海老名)

みんなで墓参り


我が家の墓は海老名にある。先祖代々の墓というわけではなく、母が父のために建てたものだ。晴れた日は富士山が見える高台にあり、30年近く父は一人そこで眠る。幼い孫の手を引いて軽快に坂道を上っていた母も、今は逆に手を引かれるようになった。

海外勤務をしていた期間以外は年に2回、殆ど欠かさずやって来る。通常は母、長兄と銀髪の家族で、少ないときは2人、母が欠けたときもあった。今回は新潟に単身赴任する次兄を除いて総勢10人が父の墓の前に顔を揃えた。

春分の日は台風のような天気だった。父が赤飯とビールの匂いを嗅ぐことが出来る半年に一度の大事な日はほんの一瞬で終わり、我々は線香の煙だけを残して立ち去った。「私のお墓の前で泣かないでください」と父が歌う時間など無論なかった。

予約しておいたオークラフロンティアホテル海老名のアルエットに飛び込んだときには3本の傘の骨が折れていた。息子とその家族合計10人の真ん中に座った母は嬉しそうだった。

スープとサラダが出てきた。

大荒れになるという天気予報を見ながら墓参りを決行した理由は、食事の途中で明らかになった。孫の一人の結婚内定が発表された。彼女はいつになく神妙な気持ちで父の墓に手を合わせたに違いない。

立派な料理を予約することも考えたが、軽めの1,575円のアルエットバリエーションプレートにした。8人が女性なので、食後に105円のプチケーキを何個も食べた方が楽しいだろうと思ったからだ。長兄と銀髪は彼女らの笑顔を見ながらコーヒーを飲めば充分である。

父は最初の孫だけしか抱くことができなかった。女ばかり4人の孫に囲まれたら、父はどんな顔をしただろうか。外国で生まれ育った父だから、大袈裟な仕種をして彼女たちに抱きついたことだろう。そのうちの一人が結婚すると聞いたら…  

想像を膨らましていたら、確かに歌のように千の風になって我々を見詰めてくれているような気がした。まさか子や孫に囲まれた嬉しそうな母に嫉妬して、この日吹き荒れて傘を壊した訳ではないだろうけれど… 

いや、あの親父ならあり得る

アルエット
神奈川県海老名市中央2-9-50
046-235-9828
http://www.okura-ebina.co.jp/rest2.html

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2008年03月13日

[ホテルオークラレストラン ニホンバシ](日本橋茅場町)

久し振りの


「オッ!高級レストランみたいになったね」と言うと、席に案内してくれたフロアスタッフが苦笑した。軽いジャブを繰り出す度に、随分と齢をとったものだと思う。
最初にこのレストランに連れてこられたときはまだ20代で、少し緊張気味にメニューを開いた。ホテルオークラレストラン ニホンバシは昭和40年、銀髪がまだ10歳の頃に開業した。証券会館の7階にあり、これまで多くの経済人が利用した老舗レストランだ。

久し振りに行ったら、店内は随分と変わっていた。個室に近い空間が増えたおかげで、以前より高級感がある。近くに接待ができるような店が少ないため、顔見知りと鉢合わせになるのが嫌だった。その懸念も解消された。

メニューを開いても緊張しなかったが、ご馳走になる身で料理を選ぶのは難しい。招待してくれた大先輩はさすがに手馴れたもので、自分から何を食べるか申告してくれる。メインの内容を選べるブリフィックスコースと確認して、同じコースを選んだ。

クラムチャウダー

20代前半に仕えた上司を前にすると、上下関係がなくなってしまった今も緊張感がある。大先輩が丁寧な言葉遣いをしてくれると、こちらも身を正してしまう。神とも恐れていた頃、大先輩はまだ30歳代半ばだった。自分が50歳を超えても、その思いはなかなか消えない。多分一生変わらないだろう。

牡蠣フライ、魚介のグラタン

今日はちょっとかしこまった食事になってしまったが、ホテルオークラレストラン ニホンバシでは一品料理で昼食を済ませることが多かった。別の先輩、食通のM氏のお奨めがカレーだった。
この日もカレーを食べようと思ったのだが、相手がコースだと一品料理では間がもたないので我慢した。コース料理がデザートを含めてイチ、ニイ、サンで出てくると分かっていれば、サラダとカレーを頼めばよかった。何事も経験である。

次回は久し振りにカレーにしようと誓った。


ホテルオークラレストラン ニホンバシ
東京都中央区日本橋茅場町1-5-8 東京証券会館7F
03-3667-4828

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2008年03月07日

[ヴァンデリス](新宿御苑前)

ビストロで気軽にワインとフランス料理


金曜日の夜に歌舞伎町、新宿三丁目近辺で安くて美味しいと評判の店に予約なしで入るのは難しい。四谷三丁目、荒木町でも状況は変わらない。中間点の新宿御苑前には人気のある店が意外にたくさんあるが、忘れられてしまったような店もある。

1階のオープンカフェにはそれなりの人が居たが、外の螺旋階段を上って様子を見に行った2階に客は一組しかいなかった。ラッキー!と思う反面、大丈夫かな?と不安になった。他を探すのも面倒なので観念して席についた。

メニューの値段を見て一つ安心した。面白そうな素材、料理に興味がそそられた。本日のおすすめを書いた黒板を見て期待した。

豚足のテリーヌ、自家製ソーセージのオーブン焼き

テリーヌも美味いし、ソーセージも悪くない。イベリコ豚を使った自家製ソーセージはミートローフかと見まがうような代物だが、充分美味しい。

ブルーチーズ風味のニョッキ、群馬産鹿肉のソテー

ブルーチーズが嫌いと言う相手を説き伏せて頼んだニョッキは、期待通りの味だった。恐る恐る一口食べて、さらに二口、三口と食べる様を見るのは何より楽しい。

黒板の中から選んだ鹿肉。蝦夷鹿は食べる機会が多いが、群馬産もあるとは知らなかった。個人的には塩、胡椒だけの味付けで、レアで焼いて欲しかったが、いかにもフランス料理らしくブルーベリーと赤ワインのソースがかかってきた。これはこれで赤ワインを美味しく飲むには適当だった。

結局、食事が終わるまで、先客と我々の2組だけしかいなくて、とても静かだった。店員も品のようさそうな女性が一人のみで、出しゃばってあれこれ奨めることもしない。
もう少し客が居ても良さそうだが、暗闇に沈む新宿御苑の向かいという場所が悪いのかもしれない。

桜の季節が到来すれば、花見客で店は賑わうようになるだろう。その後は日が高くなりレストラン周辺の雰囲気も一変するに違いない。

値段、味、雰囲気など満足できるレストランである。満席にならない程度に繁盛して欲しいと、身勝手な応援をしたくなった。


ヴァンデリス
東京都新宿区新宿1-1-1ワコー御苑ビル1F~2F
03-3356-6637

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2008年01月20日

[キャトリエム]②(日本橋)

♪ 私の 私の彼は~ 左利き~

日本橋界隈で10人以上のランチを受けてくれるところは少ない。売り手市場になる昼時は団体で長時間粘られたらあがったりである。そう思う店が殆どで、読みが浅い。銀髪のグループなら長く居れば居るほど酒の売り上げが伸びて儲かるはずなのに…

快く受けてくれたのはコレドにある「キャトリエム」である。前もランチで利用した。銀座レカンの系列店で料理はしっかりしており、1,200円、1,800円、2,600円の3種類のランチがあり、この日は真ん中を選んだ。内容は行く度に違うが、いつも充分にお得感がある。
そう言えば銀座レカンもミシュランには選ばれなかった。マキシム・ド・パリと同じように地下の店であることが災いしたのだろうか。

砂肝のサラダ

前に食べたとき、違った料理だったがやはりポーチドエッグが乗っていた。シェフはよほど好きなのだろう。

豚の頬肉

牛の頬肉はよく食べるが、豚の頬肉は焼きとん屋以外ではあまり食べたことがない。肉が嫌な人は魚も選べる。魚を選んだ人の中には頬肉と聞いて豚を拒絶した意気地なしが何人か居た。

コーヒー

最後にデザートとコーヒーが出てきたが、取っ手が特徴的なカップにみんなの注目が集まった。右手で飲むとしっくり手に馴染むのだが、左手では明らかに使い難い。左利きには不便だとの声に、みんなが同意して話が盛り上がったところでお開きとなった。

そのときは何とも思わなかったのだけれど、しばらくしてから果たして洋食器に利き手が問題になるのか疑問に思った。箸を左手に持つ人はいても、左利きの人がフォークを右手、ナイフを左手に持つところを見たことがない。ペンを左に持つ外国人でも、ナイフを左手に持つことはないだろう。

左利きの人がコーヒーカップを右手に持っても何の不思議はないはずだ。大昔にヒットした麻丘めぐみの「私の彼は左利き」で、彼はブラックコーヒーを左手で飲むがナイフを左手で持つという歌詞はない。
もっとも右利きでも右手にペンを持てばコーヒーカップを持つ手は左なので、妙な歌詞ではある。

それにしても、ときどきドラマで見る麻丘めぐみはおばさんになってしまった。それでも上手に年齢を重ねた方だと思う。他人のことを言えた義理ではないけれど…

キャトリエム
東京都中央区日本橋1-4-1 コレド日本橋4階
03-3272-8446
http://www.lecringinza.co.jp/4eme/

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2008年01月15日

[マキシム・ド・パリ](銀座)

古のパリを味わう


1966年開業、フランス本店のイメージを銀座に再現した。バールームの壁にはロートレックの絵と鏡がかけられている。映画「赤い風車Moulin Rouge」を思い出した。この部屋で食前酒を飲みながらしばし語らうべきところだが、日本人らしくさっさとメインダイニングへの階段を下りていく。ここでも重厚な雰囲気が心地よく、「オペラ座の怪人」になった気分だ。

コース料理はどれを見ても量が多そうだ。食べたいものと、そうでないものが混ざっている。銀髪のテーブルを担当する若くハンサムな落合さんと相談した。客には希望どおりポタージュスープとエスカルゴを頼む。エスカルゴは6個あるので、もちろん奪い取るつもりだ。自分には魚介類の前菜。メインは2人で分けることにした。我侭な客に臨機応変なのが老舗レストランのいいところ。フレンチに慣れた常連客に鍛えられているのだろう。

ポタージュ、雲丹と黒鮑の冷製ジェリー寄せ キャビアを添えて

魚介類の料理はおそらく本店より銀座店の方が上だ。魚の扱い方は日本人が世界一だから。

殻付エスカルゴ ブルゴーニュ風、茸の形をしたパン

前菜2つが終わった頃、エスカルゴが焼き上がってきた。2人で前菜3品というイレギュラーなオーダーにもかかわらず、銀髪の想定したとおりのサービスが淀みなく進む。
パリパリしたパンが香ばしくて美味しい。2つ目のパンを頼み、残ったエスカルゴのソースをつけて食べた。

仔鳩胸肉とフォアグラのパイ包み 腿肉トリュフつめサルミソース

肉の匂い(多くの日本人には臭みと感じるだろうが)が強く、いかにも伝統的なフランス料理の味わいが懐かしく感じられた。臭みのある肉にはフレンチの真髄である力強いソースの力が輝く。
この店では是非ともクラシックな料理に挑戦してもらいたい。

ミシュランに選ばれなかったのが不思議だと落合さんに言ったら、ミシュランの基準では地下の店は寿司屋以外NGとのこと。加えて約30年前にパリの本店がミシュラン選出を拒否したのが響いたのかもしれないと教えてくれた。落合さんは残念そうだが、常連客にとっては落選は朗報だっただろう。

経験5年でもまだ若手と謙遜する落合さんは、近く赤坂にオープンする店に栄転するそうだ。オープンしたら必ず行くと約束した。また楽しみが一つ増えた。


マキシム・ド・パリ
東京都中央区銀座5-3-1 ソニービル地下3階
03-3572-3621
http://www.maxim-s.co.jp

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2008年01月07日

[TALK BACK Galopin](吉祥寺)

吉祥寺ならではのビストロ


中央線沿線、吉祥寺周辺には大学・女子大が多く、若者向けの洒落たレストランが多い。Galopinのホームページによると、「1987年に吉祥寺に初めて出来たオープンキッチンのフレンチ・レストラン」とのこと。吉祥寺におけるフレンチ、イタリアンなどの西洋料理の草分け的な存在ということだろうか。

海外から直輸入した調度品がもっと古い歴史あるレストランと錯覚させる。フランスの片田舎のビストロをイメージしたと言うが、無論行った事がないので信じるしかない。それなりの雰囲気に仕上がっており、悪くない。

店に入るとテーブル席は一杯で、申し訳なさそうにカウンターに通された。銀髪にとっては希望の席で不満はない。見栄を張らずにお腹の状態に合わせて1,900円のコースを選んだ。

前菜、スープ

前菜の皿には3種類の料理が品よく盛られてきた。窓側のカウンターに座ったため、料理人たちを横から見る格好になる。手元が良く見えて楽しいが、料理人に声はかけ辛い。

ペスカトーレ、ぺペロンチーノ

コースにスパゲッティが入っていたので、家に帰ってホームページを開くまではイタリア料理屋と信じていた。フランスでもビストロではパスタをだすのだろうか。

フランス出張の際、現地に駐在していた旧友にご馳走になった。連れて行かれたのはシャンゼリゼ通り近くのイタリアン。フレンチを食べさせてくれると期待していたのでショックを受けた。日本でも高級料亭に行ける人は限られている。フランスだって一般の人が行くのは気楽なビストロやパスタの店かもしれない。

間にサラダを挟んで、メインは仔羊か白身の魚。ワインを飲みながら、自分の料理が出来上がるのを目の前で見るのは楽しい。助手が2人居るが、料理をするのは1人だけ。下ごしらえされた素材の皿を受け取るやあっと言う間に仕上げていく。

仔羊のカツレツ、白身魚のオーブン焼き

銀髪のものと思われる料理はシェフの手からキッチンの向こうに遠ざかり、やがてカウンターを越えて女性店員の手に渡りこちら側にやってくる。料理は我々の背後からカウンターに置かれる。

デザート

結局、最後までシェフと話す機会はなかった。勘定をしてシェフに「美味しかったよ」と目で話して軽く会釈すると、少し微笑んだような気がした。

TALK BACK Galopin
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-24-6
0422-21-0275
http://www.talkback.jp

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2007年12月06日

[Pont du Gard ポンデュガール](銀座)

居酒屋気分で楽しめるビストロ


1丁目は銀座と言っていいものかどうか迷う。まして昭和通りを越えるとなると、銀座とは言えないように思う。実際に行ってみると、それはもっと実感できる。店もそれをわきまえてか、およそ銀座らしくないご機嫌なお店だ。

007ボンド・ガールのフランス語読みかと茶化したが、ポンデュガールは世界遺産にもなっている南仏にある水道橋で、ローマ時代に建設されたものだそうだ。
予約なしだったが、時間限定で外の席に入れてくれた。ビニールで覆われていて寒くない。恋人同士なら楽しいだろうが、残念ながら野郎2人の晩餐である。

トリッパ、自家製フランクフルトソーセージ

料理も気取りがない。ピザやパスタ、みそ煮込みやとんぺい焼きもあり、ポンデュガールが泣いてしまいそうだ。せめてワインだけでもフランス産で統一しているかと思えば、オーストラリア産など多彩でこだわりがない。ワゴンに複数のワインのボトルが置かれており、グラスワインの選択肢も多い。飲みたいワインを選ぶと、若く明るい女性店員がたっぷり注いでくれる。とても気分がいい。

牡蛎の炒め物、ペンネ・アラビアータ

店内に入るとおばさんだけのグループや若いカップルなどが思い思いに楽しんでいる。黒板に書かれた本日のメニューから牡蛎を選んだ。
外の席に戻り白ワインを飲み干して、再び店内に戻りワゴンから赤ワインを選ぶ。外と中を行ったりきたりするのもいいもんだ。好んでウロウロしているのだが、不便をかけるとペンネは通常より大盛りにしてくれた。

ガツガツ食べて、グイグイ飲んで、指定された時間をかなり残して勘定を頼んだ。「飲むだけの客はお断り」と入店時に確認されたが、店の希望通り料理もしっかり堪能した。フランス料理は食べなかったような気がするけれど…

勘定を済ませ、かわいい店員に「実は、我々はミシュランの覆面調査員なんだ」と言った。彼女は銀髪を見つめ10分の1秒間強張った顔をしたが、すぐに破顔一笑した。「うちが選ばれるわけありませんよ!」と返す。よく分かってらっしゃる。「銀髪グルメ紀行なら結構いい線行くよ」と言おうと思ったが、止めにした。

ミシュランに倣って評価をしても仕方がない。「安く飲み食いできるご機嫌な洋風居酒屋」で充分ではないだろうか。


Pont du Gard ポンデュガール
東京都中央区銀座1-27-7 銀座里村ビル1F
03-3564-0081
http://www.pontdugard.jp


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2007年09月16日

[名古屋マリオットアソシアホテル]

高級ホテルのパーティー


高級ホテルのパーティーにしばしば招待を受けるが殆どが立食で、着席して食事する数百人規模のパーティーは久し振りだった。しかも1人で乗り込んでいくのは約15年ぶり。日本人は仲間内だけで固まり、見知らぬ相手が輪に入ってくるのを歓迎しないので1人でパーティーに参加するのは憂鬱である。

自分のテーブルを探し出し、同じテーブルの人たちと名刺交換した。銀髪から時計回りにA氏。B氏はA氏の部下。C、D氏とE、F氏がそれぞれ同じ会社で4人とも若い。G氏が銀行の支店長で最年長。その横はまだ無人のまま。会が始まってもまだやって来ない。そしてその横が銀髪で一巡する合計9人の丸テーブルだった。

「飛騨牛のコンソメを添えた魚介類 夏野菜を添えて」に次いで「フォアグラのブラマンジュ オレンジ風味の冷製スープと共に」が出る頃にH氏がやってきた。名刺交換すると証券系企業の部長さん。気を遣って話しかけても曖昧に応えるだけで乗ってこない。
CDEFの各氏は以前からの知り合いらしく、同年代のB氏を交えて話が盛り上がっている。銀髪は幸いA氏と旧知だったので楽な道を選び、H部長をG支店長に委ねた。

「淡白な味わいのヒメジのポワレ オリーブとトマトのソースを添えて」の後にパイナップルのシャーベットで口直しをしてメインの「特製牛フィレ肉のプレゼ ポルチーニとマスタード風味ソース」が出てきた。

前の二品に比べて、その後の二品はもう一つ。数百人の客に同時に温かい料理を最善の状態で出すのは難しい。東京六本木のグランドハイアットでは見事なステーキに感動したけれど…

食事をしながらG支店長、H部長の様子を窺うと、二人はまったく会話をしていない。助け舟を出してやろうかと思ったが、年下の自分が出しゃばることもないだろうと遠慮した。そもそも二人とも助けを求めている風でもない。

デザート(「ヨーグルトとパッションフルーツのデザート レモンのシャーベット添え」)が来る前にH部長が立ち上がったのには驚いた。おそらく立食と思って来たのだろう。名刺を置いて、知っている人に挨拶して早々に帰るつもりだったに違いない。我々同じテーブルの人にとっては存在感のない人だった。

若い連中はG支店長が居ることを、名刺交換した時点で忘れ去っているようだ。目を合わせることすらしない。G支店長も自ら話しかける気はなさそうだ。隣が賑わえば賑わうほど、G支店長の孤立感が際立ってくる。

コーヒーを飲み始める頃に終りの挨拶が始まった。新幹線のゆりかごで眠るまであと少しである。G支店長の苦痛のときが去るのももう少し、と思ったが余計なお世話だったかもしれない。

人の観察が面白すぎて、立派な料理の味の記憶が殆どない。これだけのパーティーで肉の焼き方や給仕するスタッフのレベルを云々しても仕方がない。パーティーでは、料理よりも一期一会を楽しみたいと思うのだけれど、皆で努力する気持ちがなければ叶わぬ望みだ。

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2007年08月22日

[Botanica ボタニカ](東京ミッドタウン)

大好きなウエイターを追っかけて


グルメ紀行を始めてフロアスタッフの重要性に気付いた。教えてくれたのは「SHIZUO TOKYO」の中田さんだった。高名な井上静雄シェフの料理の妙だけでなく、自らの思いも的確に伝えてくれたことにより料理に命が宿り、店は輝きを増した。その中田さんが店を替わると手紙をくれた。しばらくして彼が移った店がオープンした。東京ミッドタウンの予約が取れない店「Botanicaボタニカ」だった。彼と再会するのが至難だと知って失望した。

ミッドタウンのオープンから4ヶ月以上が経過した。相手の都合で8時を回ってしまったため、もしやと思って行ってみるとピークを過ぎた店内は空き始めていた。入り口で中田さんを呼んでもらった。数分後に現れるなり笑顔が満面に広がった。がっちりと握手をする。嬉しい再会だった。

オリーブ、パン

中田さんのサービスで心地よい食事がスタートした。
数種類のオリーブを食べながらビールを飲む。そば粉を交ぜて焼いたパンをオリーブオイルにつけて食べる。塩気はオーストリア産のローズソルトで補う。
テーブルの飾りかと思ったグラスの中のハーブ(タイム、ミント、ローズマリー)をちぎってオリーブオイルにアクセントをつけるように奨められた。店名のボタニカは植物を意味する。ハーブ類は窓の外の菜園でスタッフが育てたものだ。どれもこだわりがある。

キッパーとジャーマンポテトサラダ フライドエッグと共に

自家製の燻製にしん(キッパー)が美味い。もちろん添えてある野菜も。

フォアグラのリゾット トリュフソース

1品を2つに分けてもらうには10%の上乗せ料金を払うのがこの店のシステムだ。SHIZUO TOKYOのような高級店に比べると、ボタニカは意外とカジュアルで席数も多い。10%はサービスの公平感を維持する面白いシステムだ。
濃厚に感じるリゾットの一皿は半分で丁度いい量だった。大変美味しい。

ボタニカ特製のローストビーフ

ボタニカはフレンチの「ひらまつ」のグループ店だが、イギリスのコンラングループとのコラボレーションで生まれた店でもある。そこで自慢料理はローストビーフ。ソースを断り、塩胡椒、ホースラディッシュ、マスタードで食べてみたが、この店のローストビーフはソースをかけて完成品のようだ。ソースをかけた方が美味い。

ハーブティー

お茶を頼んだら数種類の茶葉が入った箱を見せられた。ハーブティーはボタニカのオリジナル品。お茶好きの人は小躍りしそうだ。

食事の間、常に中田さんが目を配ってくれた。ゆっくりサービスできる時間帯だったのが幸いした。それでも彼が忙しいときは星野支配人がカバーする。20年近くコンビを組んで来たと言うだけに、2人は信頼と尊敬で結ばれているようだ。
食後にデザートを頼もうとしたら既に中田さんは料理長に頼んで立派なものを用意してくれていた。フロアと調理場のコミュニケーションも素晴らしい。

食事が終り、ガーデンテラスを案内してもらった。4階とはいえ高台にあるため素晴らしい夜景が広がる。秋風が吹く頃には店内よりも人気になるだろう。

忙しい一日が終りに近づき、安堵と満足感を漂わせるスタッフたちがお見送りしてくれた。「やっぱり中田さんが僕にとってはナンバー1です」と言ったら、「褒めすぎですよ」と星野支配人が笑う。
本当に楽しい夜だった。

ボタニカ
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガーデンテラス4階
03-5413-3282  
http://www.conran-restaurants.jp/botanica/

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2007年08月12日

[METERAZUR](ニューヨーク)

グランド・セントラル駅構内にある洒落たレストラン


ニューヨークのイメージは近代的な高層ビルが林立する姿だ。そのイメージを持って中心街のミッドタウンを歩くと古めかしく重厚なビル群に驚く。東京駅に相当するグランド・セントラル駅も歴史的な風格を感じさせる建物だ。天井には大きな星条旗がかかっている。

グランド・セントラル駅には有名なオイスターバーの他にも素敵な店がいくつかある。その一つがMETERAZURである。東側の階段を上がるにつれて、きれいにテーブルセッティングされた店内が見えてくる。昨日のいかにもアメリカ的な昼食から、かなり格が上がった感じだ。

席につくとすかさずワインリストを持ってきてくれるが、日本人らしく我々4人はビールを頼む。庶民的なレストランと比較すると、高級レストランでは料理の量は少ないと分かってはいるが警戒は緩めない。前菜はサラダ、メインも前菜の欄に書かれたシーフードの盛り合わせを頼んだ。

予想は間違っていなかった。アメリカらしくない控えめな量のサラダが出てきた。唯一、サラダの上のポテトチップがアメリカらしい。

牡蠣が3つ、蛤(あさり?)が4つ、大海老が1つ、伊勢えびが半身と希望通りの量だ。氷の中にタバスコの小瓶が埋まっている。あさりの生は食べたことがあるが、蛤なら初めての経験。磯臭さもなく美味しかった。

デザートの量はアメリカらしかった。4人のうち2人だけがシャーベットを頼んだが大正解。巨大なシャーベットに度肝を抜かれた。こうじゃなければ面白くない。みんなで分け合って食べた

星条旗やポテトチップス、タバスコがなければロンドンを思わせるような素敵な雰囲気の中では、男4人の我々よりも隣の席のようなカップルに相応しいレストランだった。男ばかりで一番嫌だったのはご馳走してくれたSさんだったろう。米国在住16年のハンサムなSさん。どうもありがとうございました。


METERAZUR
Grand Central Terminal, East Balcony New York, NY 10017
212-687-4600
http://www.metrazur.com

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2007年07月28日

ローストビーフ 赤坂プリンスホテル

バイキングでローストビーフ


バイキングやパーティーでの主役は昔も今もローストビーフ。牛肉の輸入解禁は1991年だから、それ以前のローストビーフはもちろん和牛。牛肉を食べることは年に数度しかなかった。

すき焼きで肉を奪い合った思い出を持つ人は多いだろう。1978年、就職が内定して会社からご馳走に