2010年01月16日

[MALLIGAN マリガン](神戸)

ショットバーでゴルフレッスン


1次会が終って、今は9時少し前。「なんだー、せっかく来てやったのに」ゴルフ狂の部下が鍵のかかったドアをガチャガチャ言わせた。階段を降りて看板を見ると開店は8時となっている。その看板もビルの上の方にかけられた看板もライトが消えていた。諦めて違う店に向った。

11時半、部下が意図したわけでもないのにさっきの小道に迷い込んだ。「ライトが点いてますよ」と銀髪が言うと、彼は時計と睨めっこする。もうホテルに戻って眠る時間である。銀髪のことを気にかけているようなので、銀髪から階段に足をかけた。

「火曜日はレッスンがあるから11時開店なんです」店主の武藤さんが謝っても「年賀状に書いてなかったぞ」とまだ文句を言っている。武藤さんはプロゴルファーで、MILLIGANはゴルフ好きが集まる店らしい。「カクテルは出来るの?」と聞いたら「自信有りません」と正直だ。焼酎の水割りを頼んだ部下を横目に、銀髪は棚に並ぶボトルを左から順番に見ていった。

席を立ち、右の棚を見に行くと、カウンターの右端に珍しいボトルを発見した。「これは売り物じゃないんでしょ?」銀髪が唯一興味を持ったスコッチのラベルはセントアンドリュースなど名門ゴルフコースの写真だ。見るだけのボトルを写真におさめて席に戻った。

フォアローゼスをシングルで頼んだ。まず店名であるMALLIGANの由来から聞くことにした。ティーショットを無打罰で打ち直すことをMALLIGANと言う。1世紀前の米国の医師Malligan先生がやっていたことから、彼の名前がゴルフ用語になった。米国でのシニアツアー参戦を目指す武藤さんは自分の人生をこの言葉に重ね合わせているそうだ。

「シャンクが出て困るんですけど」「ドライバーを買いなおすときに気をつけることは何ですか?」部下や常連客を差し置いて銀髪が武藤さんを独占した。ホームページによると、武藤さんはレッドベターを日本に紹介し、通訳をするなどの多彩な経験でティーチングプロとしての礎を築いた。サックス奏者のKenny Gとも親交があり、彼に「世界一のゴルフの先生」と言わしめたそうだ。

東京からは頻繁に行けないのが残念である。彼にゴルフ練習場やラウンドでのレッスンを受け、夜にはMALLIGANで一杯やりながらアドバイスをもらうことができる。そんな神戸の人たちは幸せだ。


MALLIGAN マリガン
兵庫県神戸市中央区中山手通1-9-6 リバーアップビル3F
078-393-2228
http://www.h4.dion.ne.jp/~golfg

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2010年01月12日

[MARUGO マルゴー](新宿三丁目)

気取らないでも大丈夫


「エッ!ここがマルゴーなの?」驚く銀髪に我々の相手をしてくれた久保さんが「2店目がマルゴーⅡで、3店目が一番大きなマルゴーグランデです」と続ける。確かにどのチェーン店も1店目が古くみすぼらしく、儲かるに従って大きな支店を作る。

当然のことながら1号店がマルゴーである。どの店もワインバーであるが、扱うものはマルゴーがフランス産、マルゴーⅡが新世界、マルゴーグランデがイタリア産を主に扱っているそうだ。もっとも3店は近いので、他の店のワインセラーから数分でボトルが届けられる。

キッチンは狭くて本格的な料理ができるとは思えない。その代わり、融通はきかせてくれる。バーニャカウダとチーズフォンデュを食べたいと言うと、野菜はかぶらないようにしてくれた。二つの料理の間のお奨めは牛トリッパと白インゲン豆の煮込みだった。700円とは良心的だ。

ワインバーだけにグラスでも選択肢は多く、1,000円未満のリーズナブルなワインが主流なので安心である。しかし、「シャトーマルゴーやシャトー・ぺトリュスはあるの?」なんて馬鹿にしてはいけない。久保さんに聞くと、他の店に電話をして確認し始めた。もちろん確認するのは在庫があるかなしかではなく何年産があるかである。

さすがにシャトーマルゴーやシャトー・ぺトリュスのグラス売りはないが、1本10万円程度のワインをグラス売りするかどうかは久保さんが決断できるようだ。彼女の前だからといって、ワイン通のように振る舞うべきではない。「〇〇をグラスで飲めたら頼むんだけどなー」なんて言おうものなら、久保さんが「いいですよ、開けましょうか?」と答えるのである。

本当に高級ワインを飲むつもりなら、マルゴーはいい店である。他の店より安く飲めるのは間違いない。しかし、出来ればワインに深入りしたくはない。久保さんとのワイン談義で満足すべきである。彼は決して高級ワインを無理強いすることはない。

リーズナブルな食事とワインでも充分である。「あなたと一緒なら、高級ワインなんていらないわ」と言ってくれる人が隣にいてくれたら…


MARUGO マルゴー
東京都新宿区新宿3-7-5
03-3350-4605
http://www.bar-maru5.com/pc/

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2009年12月12日

[VAL’S BAR](宇都宮)

宇都宮でハバナクラブ


「存じやす」のソムリエ美保さんに案内されてVAL’S BARに向った。オーナー兼バーテンダーの清野さんが18年前に開いた店だ。「あそこです」と言われた先には灯りがポツンとあるだけ。「エッ?どこ?」と暗闇に目を凝らすと「あの灯りのところです」と言う。連れてきてもらって本当に良かった。地図だけでは辿り着けなかっただろう。

暗い店内に客が一人だけ。カウンターの中の清野さんを孤独な客からひっぺがすのは気が引けたがオーダーしないわけにはいかない。正面に並んだボトルを右から順に見て行った。

左側の棚にハバナクラブの15年物を見つけた。日本には輸入されていないキューバ産ラム酒が宇都宮のバーに置いてあるとは思わなかった。M氏に聞くともちろん飲んだことはない。彼のためにハバナクラブを頼んだ。銀髪は久し振りにアイリッシュウイスキーを飲むことにした。

「どこで手に入れたの?」謎解きは簡単だった。常連さんがキューバに出張した際に買って来てくれるそうだ。恐る恐る口につけたM氏も気に入ったようだ。
銀髪の携帯電話がなった。宇都宮在住のT氏が道に迷っているらしい。迎えるためにM氏が店を出て行った。

「何か変わったスコッチはありますか?」先客が去り清野さんと二人になった。「まだ若いけれど、これから美味しくなると思います」と2本示してくれたが、1本はまだ飲めないと言う。そう言われると飲みたくなるので随分と粘ったが飲ませてくれなかった。許してくれたのはアラン島のウイスキー。3年物とは思えないようないいスコッチだった。清野氏の目利きは信頼できる。

M氏が戻ってきた。T氏だけかと思ったら、若い女性を二人連れている。M氏がナンパできるわけはない。T氏の部下だった。男3人より女性が加わった方が楽しくなる。ビールで乾杯をすることにしたら、ちゃっかりとM氏がハバナクラブをお代わりしている。気に入ってくれたのは嬉しいが、貴重な酒を何杯も飲んでは他の客に申し訳ない。

酔っ払いのT氏と盛り上がっているうちに、2組入ってきて店はほぼ一杯になった。人気の店は場所を選ばない。今回はよそ者が地元の人たちにお店を教えてあげることになった。インターネットは恐ろしい。

VAL’S BAR
栃木県宇都宮市二荒町5-18 栄マンション1F
028-635-8676

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2009年11月21日

[R](野毛、桜木町)

食後はショットバーで


三陽は面白い店だった。滅茶苦茶テンションが高い店主とは対称的に静かに食べたにもかかわらず、なんだか疲れてしまった。部下を従えて駅と反対方向に歩き出す。野毛にはキャバレーのロンドンやソープランドも点在するが、そんなところに行くつもりはない。すぐにお目当てのショットバー「R」を見つけた。部下は安心したのか落胆したのか分からない。

思ったより広い店内にバーテンダーが一人だけ。カウンターの前を真っ直ぐ歩けばそのまま裏口から外に出ることが出来るが、バーテンダーの正面で椅子にのぼる。彼の顔を見て安心した。良さそうなバーだ。彼も見知らぬ我々に不安感は持たなかったようだ。

部下は誰もが知っているボーモアを頼んだ。その間、棚に並べられたボトルを端から端まで見ていく。「あのグレンモーレンジは何?」と聞くと「アメリカの樽で熟成されたウイスキーです」と言う。スコッチウイスキーの熟成期間中に樽を入れ替えて再熟成されたウイスキーをフィニッシュ系ウイスキーと言う。シェリー酒の樽を使えばシェリーフィニッシュ、バーボン樽ならバーボンフィニッシュという具合だ。

バンフ(BANFF)蒸留所は1983年に閉鎖された。ウイスキーは蒸留所自らが瓶詰めするものと、外部の業者が樽ごと買い付けて瓶詰めするものがあるそうだ。バンフは後者で、蒸留所閉鎖後も瓶詰め業者により売り出されている。しかし、それも無限なわけではないので、貴重なボトルである。

最後はアイラウイスキーのカリラ。サントリーが輸入総代理店になっているボーモアなどに比べると知名度は低いが、アイラウイスキーでは最大の生産量を誇る。久し振りのアイラは美味かった。

ウイスキー談義に花が咲いた。チーフバーテンダーの塚田さんは60年も続くRの三代目。初代と2代目は親子だったらしいが、塚田さんは血縁ではない。横浜ロイヤルパークホテルのメインバー「ロイヤルアスコット」の出身。一目で安心した理由が分かった。一流ホテルの出身者らしく品がある。共通の知り合いの名前も出て大いに盛り上がった。

勘定を払うと近くにあるシープに行くように奨められた。ウイスキーの巨匠らしい。電話をかけてくれたが繋がらない。制止するのも聞かず、店まで飛んでいった。落胆の色を浮かべて戻ってきた塚田さんは「休みでした」と申し訳なさそうに言う。

楽しい時間を過ごすことができた。お楽しみは次の機会に取っておくのも悪くない。


R
神奈川県横浜市中区野毛1-15 1F
045-253-2588

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2009年10月17日

[風長閑(かぜのどか)]②(日本橋)

バースデーにはトラウト・スシケーキ


銀髪のホームバーと呼ばせてもらっているのが風長閑。銀髪グルメ紀行でもっとも登場回数が多いのに、意外なことに風長閑の表題で書くのは約3年振りだ。初めて来たときは雇われマダムと思った美女(かな?)が、実はオーナーママ。着物でビシッと決めたときは、高級クラブと勘違いして客が店に入らず逃げ出すというから笑える。

ボランティアで着付けを教え、髪を結い、茶道に通じ、花を活け、箸の使い方が上手な才色兼備のママだけど、時たま一言多い。「Kさんは偉いのよ。いつもお土産を持って来られるの。ああそうそう、銀髪さんも一度だけ肉まんをくださいましたね」と言う。唐辛子なども持って来たことがあるのを忘れている。もっともKさんに比べたらないに等しいのだろう。

そのKさんと久し振りに風長閑で会った。今日も手ぶらではなく、富山のます寿司と一緒だ。それを予定外に会った銀髪にくれると言うから恐れ入る。遠慮しようと思ったが遊び心がムクムクと湧きあがって来た。「ママ、ろうそくある?」

今週は銀髪のバースデーウイークだった。あちこちで祝ってくれたがケーキは固辞した。甘いものが好きではないし、何より恥ずかしい。しかし遊びならば積極的になる。ます寿司も笹の葉がなければ立派なケーキに見える。鼻の右側を押さえて空気を飛ばすと2本消えた。今度は左側を押さえて1本消した。残り2本は口を使った。ああ、愉快だ。風邪をひいてなくてよかった。

グループ客は奥のテーブル(ソファ?)席で盛り上がる。カウンターに対する壁際のテーブル席で飲む客がママを呼ぶ。ママが笑みを浮かべて歩み寄る。カウンターに座る紳士たちは客同士で品良く会話してママの帰りを待つ。チーフバーテンダーの石井さんだって人気者だが、やっぱり女性一人客のお目当てもママかな。

帰る前に寄ったトイレでは、季節の移り変わりを感じさせてくれる。身も心も軽くなって席に戻ると厳しい現実に引き戻された。メニューを見ながらオーダーすればショットバーならではの明朗会計だが、部下がシャンパンを2本も開けたからちょっと不安だ。それでも、高級クラブで飲むような悲惨なことにはならない。

「また明日」と笑顔で見送るママに「OK!」と気軽に返事をする銀髪。明日とは明日の明日、そのまた明日の明日かも。まあ、いつの明日かわからないけれど「ママ、また明日ね!」。

風長閑(かぜのどか)
東京都中央区日本橋2-2-8 風月堂ビルB1 
03-3231-0140
http://www013.upp.so-net.ne.jp/kazenodoka/

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2009年08月27日

[サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス]②(銀座)

シャンパーニュのお勉強


「先日、ビストロの方に行って楽しかったですよ」と女性ソムリエの武井さんに言うと、「あちらは閉店しました」と言われて驚いた。好きな店だったのに残念だ。気を取り直してシャンパンを楽しむことにした。こちらの店はシャンパン専門店として銀座で確固たる地位を築いているから安泰だ。

グラスで飲めるシャンパンは5種類用意してある。まず飲み比べ3種のシャンパンとおつまみのセットで始めることにした。シャンパンの知識は乏しいので武井さんにいろいろ教えを乞おうと思ったが、彼女はカウンターで一人で飲んでいる男性客のお相手で忙しい。

瞬く間に3種類を飲み尽くした。残りは高いものが2種類。「ピノノワールだけで作ったシャンパーニュです」と言い残して武井さんが去っていったので、もう一人の女性スタッフの斉藤さんがお相手してくれた。

シャンパンという呼び方が当たり前になっているが、正式にはシャンパーニュと言った方がいいらしい。どこで勘違いしたしたのかシャンパーニュのぶどうはシャルドネ種とばかり思っていた。シャルドネ、ピノノワール、ピノムニエを使うとのこと。ピノノワール100%のシャンパーニュがあるとは知らなかった。

ヴィオニスは食べるものも豊富にあるが、斉藤さんのイチオシは小さなクロワッサン。シャンパーニュはあまり好きではないが、ヴィオニスで飲むと何故か美味しい。350種類ものシャンパーニュを揃えているから甘味を抑えた銀髪好みのものにも出会える。

武井さんは我々以外のカウンター客に加えて、テーブル客の対応に大忙しの様子。斉藤さんは相変わらず質問攻めをする我々のお相手をしてくれる。「ヴィオニスで一番高いのはどれ?」と聞いたら、わざわざガラスケースから出して見せてくれた。百万円もすると言う。

「よし!、次はこれを開けてもらおう!」なーんてことは口が裂けても言えないのは分かっていながら、親切にも斉藤さんは銀髪にそのボトルを持たせてくれた。ありがたや、ありがたや。斉藤さんのお陰で知識が増えた。シャンパーニュ、シャブリ、コニャックなどブランド銘柄と土地の関係の整理ができた。、グランクルー、グランプレミエなど用語の意味も分かった。しかしすぐに忘れてしまうだろう。知ったかぶりをするよりは、毎回ソムリエを頼った方が良さそうだ。その方がきっと大事にしてくれる。


サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス
東京都中央区銀座8-8-18 銀座8818ビル3階 (金春通り)
03-5537-0700  
http://www.vionys.com/salon/index.htm

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2009年07月31日

[ビアライゼ ’98](新橋)

懐かしの名人芸


「くさやはないんですね」店主に対する銀髪の精一杯のアピールである。約17年前に日本一美味しい生ビールを飲ませる店があると聞いて、通ったのが八重洲にあった灘コロンビアである。珍しくくさやを焼いて出していた。いつの頃からか主人の姿が見えなくなり、やがて亡くなったと聞いた。そして店の前で呆然とする日がやって来た。店は閉店していた。

ビアライゼは灘コロンビアの亡き名人の技を引き継いだ松平さんが開いた店だ。銀髪は顔を覚えていたが、彼はもちろん覚えているはずはない。くさやの話を出したのは正解だった。距離はグッと縮まった感じだ。「トイレに行く時に見てください」と師匠と一緒に写る大きな写真を指さした。

新名人のビールをグイッとやる。新といっても数十年のキャリアである。さすがに泡がきめ細かくて口髭になる。お通しのパンと枝豆でグイッ、グイッ。アッ!ビールを撮り忘れていた。この店の主役はビールなのだ。

2杯目は本日の生ビールであるバスペールエール。つまみはハムステーキ。それにしても広い店は大賑わいである。予約の客がどんどん現れ、飛び込みの客はすごすごと退散する。灘コロンビアは長いカウンターのある鰻の寝床のような店だったと記憶している。ビアライゼはビアホールというのが相応しい。

くさやは置いていなくても、もずくなど日本的なつまみもたくさんある。撮り損なった一杯目のビールを写真のために再び飲むことにした。他の店なら「泡が多い」と文句を言いたくなるが、ビアライゼはこれが身上。かち割り氷で冷やすビアサーバーは灘コロンビアから引き継いだ。名人が注いだグラスを口に運び、もう一度口ひげを作って遊ぶ。

2種類の横浜ビールを飲み比べた。生ビールを3杯と小瓶でお腹はパンパンである。ビアガーデンで大ジョッキをがぶ飲みした若い頃とは、比較にならないほど飲めなくなってしまった。この辺で切り上げてショットバーに行くことにした。

途中でお漏らししないように、念のためトイレに行った。壁にかかった大きな新旧名人の写真がホールを見下ろしている。技が引き継がれ、多くの人たちが楽しんでいるのを毎日見て幸せだろう。写真を見ながら想像していると、銀髪もなんとなく幸せな気分になった。


ビアライゼ ’98
東京都港区新橋2-3-4
03-5512-5858

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2009年07月11日

[クロノス]②(銀座)

楽しく遊ぶカクテル


クロノスがオープンしたのは2007年11月17日で、時間が経つのは早いものである。行かなきゃ行かなきゃと思いながらご無沙汰してしまった。約1年振りだろうか、たまたま思い出して行ったらカウンターにモーリバーを紹介してくれたIさんが座っていた。なんという偶然だろう。時の神様(クロノス)は運命の女神(モイラ)をも操っているようだ。因みにクロノスの子が主神ゼウス、ゼウスの子がモイラである。

「銀髪さん、もっと来てやってよ」とIさんに言われたら断れない。約束どおり行くことにした。1ヶ月振りではあまり威張ることはできないけれど…
運良く空いていた。オーナーの時任さんにとっては嬉しくないだろうが、彼を独占できるから我々はハッピーだ。

「冴えない男がカッコ良くなるカクテルと、カッコいい奴がもっと良くなるカクテルを作ってくれる?」と時任さんにお願いした。「簡単に言うと、意外にやるじゃんとやっぱりやるじゃんだな」と言いたい放題。モーリバーの毛利さんや、名の通ったバーテンダーには恐れ多くて言えない事も、時任さんはニコニコと聞いてくれるからいい。

後から入って来た常連さんも笑って我々のやり取りを聞いていた。そして、彼も新作カクテルに相乗りしてくれた。知らない客同士でも時任さんのファンであることに変わりはない。

意外にやるじゃんとやっぱりやるじゃん

使ったリキュールを見せてくれた。「意外にやるじゃんはこいつにやって」と部下を指した。もちろん銀髪と常連さんはやっぱりやるじゃんを飲んだ。意外にやるじゃんは女性に勧めたら喜ばれるだろう。やっぱりやるじゃんはミントが効いて夏らしい清涼感がある。清清しく颯爽とした男のイメージだろうか。さすがカクテル大会でチャンピオンになっただけはある。

さんざん笑った後は、レア物のラフロイグを飲み比べした。瓶の底に沈んでいるのは樽の内部が剥げ落ちたものだそうだ。18年物はアイラでもさすがにまろやかに感じる。ところがとっかえひっかえ飲んでいると、どちらがどちらか分からなくなる。ぼちぼち酔いが回ってきたようだ。潮時だ。

ちょうど新手の客が3人入ってきた。いい流れだ。時任さんまたね。楽しかったよ。

CHRONOS(クロノス)
東京都中央区銀座7-6-19 ソワレ・ド・銀座 弥生ビルB1F
03-3289-0027

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2009年06月30日

[サニーサイド](新宿三丁目)

気楽なカフェバー


薄暗い店内はカップル向けのカフェといったところだろうか。案内された奥の小さなテーブル席に素直に座ろうとしたら、別の店員が広い方を勧めてくれた。マニュアル通り、無理矢理詰め込もうとしないのが気に入った。まだゆったりできる時間帯だ。

レバーパテ

店員がテーブルに置くときに転げ落ちてしまったパン。彼はそれを気付かずに去っていった。やっぱりおおらかな店だ。パテがなかなか美味しい。

ロメインレタスのサラダ あつあつのブルーチーズをかけて

溶けて熱々のブルーチーズをレタスにかける。想像したとおり、なかなかのお味。サービスは行き届かないカフェだが、料理は悪くない。

トリッパのアラビアータ煮込み

ビールから白ワインに、そして赤ワインへと順調に進んでいく。グラスで飲めるワインの選択肢が限られるが、気にしない。トリッパも水準に達しているのだから。

パルマ産プロシュートと青唐辛子のぺペロンチーノ

真正面に見える席に若い女性2人が座った。大きな生ビールを飲みながら、豪快に煙草をくゆらしている。アホ面で鑑賞している白髪じじいはまったく気にならないようだ。
左横の席も、その隣の席も女性だけの二人連れ。雰囲気も料理も悪くないので若い女性が気に入るのも理解できる。

腹一杯になったので勘定を頼んだ。席を立って見回すと、やはり女性が圧倒的に多い。それが店の雰囲気を優しくしているのかもしれない。気が利かない店員たちも邪気がなさそうで怒る気にならない。緊張感なく寛げる雰囲気を作る戦略だとしたら、大したものである。

サニーサイド
東京都新宿区新宿3-28-7 キーストン1F
03-3350-6860

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2009年05月05日

ジャパニーズウイスキー(キリン編)

キリンにもいいウイスキーがある


銀髪のホームバーである日本橋の風長閑に行った。ママの努力か石井さんたちスタッフの頑張りか、不況にもかかわらず賑わっている。カウンターに座って棚に並んだ瓶を見渡しても何を飲むか決まらず、いつものように石井さんの助けを借りる。笑顔と共に出されたのは軽井沢だった。

軽井沢17年

「ジャパニーズウイスキーが美味い!」と、これまで何度か書いてきたがサントリーとニッカの製品しか頭になかった。キリンと言えばロバートブラウンかボストンクラブ。大学生のときにロバートブラウンには世話になった。それ以来しばらくご無沙汰している。

軽井沢は1976年に国産で初めて瓶詰モルトウイスキーの商品として発売されたそうだ。銀座などの高級料理店で飲まれていたというから銀髪が知らなかったのは無理もない。一般に普及しなかったのはメルシャンの製品だったからかもしれない。メルシャンは2006年にキリングループに入った。2004年インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ金賞受賞という銘酒の知名度が高まるのはこれからだろう。

富士山麓18年

これもシングルモルト。各社のジャパニーズウイスキーは世界でも評価が高く、賞を得た商品も少なくない。学生時代のキリン製ウイスキーのイメージと異なり富士山麓は値段も立派なものである。

日本は水がいいし酒造りの技術もある。何より日本人は繊細で香りにも敏感だ。ウイスキーが美味しく出来る条件は揃っているが、スコッチウイスキーには敵わないと思っている人が多い。先入観を捨てて、自分の舌や鼻で評価したいものである。熟成年数が伸びるに従って、評価はますます高まっていくことだろう。


軽井沢http://www.kirin.co.jp/brands/sw/karuizawa/index.html 
富士山麓http://www.fujisanroku.jp/

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2009年04月04日

[ブラディドール]②(銀座)

ウォッカの品揃えがギネス級のショットバー


「人通りが少なくなりましたねー」窓の外を見ながらマスターが言う。「銀座のクラブも随分潰れているらしいですよ」と続ける。銀髪が2軒目に選んだ店は一年振りのブラディドール。我々のように「クラブに行っても高いだけだからなー」と言う客が増えれば潰れる店が増えても仕方がない。

「ここは400種類ものウォッカがあるんだぜ」日本酒を二人で6合飲んだ後なので、友人はウォッカに尻込みする。「日本のウイスキーもあるよ」と言ってもニューヨーク暮らしが長い彼は「スコッチがいい」と譲らない。バーボンと言わないのが彼らしいが、ソーダ割りにするのがアメリカ的でもある。

「ダークタイプのウォッカってあるの?」と聞くと、「もちろんです」と即答。ウォッカとは思えないまろやかな味。「瓶の写真を撮らせてくれる?」と言うと「樽ですから持って来れない」と返されて「???」。実はマスターがボージョレーの樽に入れて作ったオリジナルのウォッカだったのだ。3年経ってようやく飲めるようになってきたと笑う。

「ジンのダークタイプってあるの?」今度出てきたものは市販品で、ちょっと薬草っぽい。「オランダ製です」とマスター。「オッ!ジンの発祥国だね。もともとはオランダの医者が薬用に作ったんだよね」「ジェネヴァですね」「1600年代だね」「もっと前じゃないですか?」と二人で盛り上がる。横を見ると友人は眠っていた。

雷の音で目が覚めた友人に「次は何を飲む?」と聞いたら、大きく横に手を振った。「何か食べるか?ここの餃子は美味しいぞ!」と言っても乗ってこない。ぼちぼちお開きにした方が良さそうだ。こんな客では店も儲からないだろ。

「宣伝してあげるからね」と言ってもマスターはあまり期待していないようだ。1年前のブログはあまり効果がなかったらしい。
「ウォッカの品揃えはギネス級、他にも多種の酒がある。餃子も美味い。マスターは美男子で格好いい」こんな宣伝でいいかな? ねえ、マスター

BLOODY DOLLブラディドール
東京都中央区銀座7-4-7 小島ビル2F
03-3289-8155

PS 土曜の昼1時から6時までは餃子屋になる。店名は露餃庵(ぺリアン)。東京はおろか日本中探しても珍しいロシア餃子専門店である。繁昌したらショットバーを止めちゃったりして…


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2009年02月06日

[BAR BRANCHE バー ブランシュ] (亀戸)

こんなところに素敵なショットバー


ドアを開けて店主と目が合い、笑顔を交わす。コートを脱ぎ、椅子に座るやいなや「ドライマティーニ!」と告げる。「すみません、もう今日出ちゃいました。30分早ければよかたったんですが…」とショックな言葉。店の奥に座るカップルの前に確かにマティーニらしきグラスが置いてある。「次にできるのは3時頃です」と言われたら今日は諦めるしかない。

BAR BRANCHEには2週間前に連れて来られた。初めてのバーでいつもするように、マティーニを頼んだら断られて驚いた。マティーニに使うジンを冷蔵庫から既に一度出してしまったからだと言う。ジンがマティーニに相応しい温度になるまでは作れないというこだわりであった。他にすぐ思いつくカクテルはギムレットしかない。

今回もマティーニは飲めなかった。代わりに飲んだのはやはりギムレット。しかし、銀髪グルメ紀行を読んでくれたとのことで、今回は銀髪向けの特製ギムレット(上の写真右側)を作ってくれた。

老舗のバーのように見える落ち着いた雰囲気の店を一人で切り盛りする店主は30歳と若い。彼が独立するまでに買い溜めてきた酒の中には彼の年齢を上回るものがたくさんある。

ボロボロの箱に入った年代物のヘイグ。どこをどう流れてきたのだろうか。飲み比べのために出てきた比較的新しいボトルだってPinchのラベルが貼ってあるから最近のものではない。ボトルの中でウイスキーも熟成するようで、確かに味は違う。

今回、出してくれたのはグレンモ-レンジとラフロイグ。グレンモーレンジは瓶詰めした年が書いてあるので年代ものだとすぐに分かる。ラフロイグは10年ものとしか分からないが、裏のラベルで違いを見分けることができる。

まだジョニ黒が1万円以上もして呑兵衛たちの憧れだったとき、我が家には父が海外から買ってきたり貰ったりした洋酒がたくさんあった。我々息子たちは、「早く飲まなければ腐る」と父を急き立てて、ボトルを開けさせたものだ。今も残っていたら、ネットオークションで高く売れたかもしれない。

最初に来たときは土曜で静かだったが、この日はそれなりに混んでいた。電話も何度か鳴り、とうとう断るようになってしまった。電話番号を公開していないので、相手は常連さんに違いない。長居をしては申し訳ないので帰ろうとすると、「ゆっくりしてください。果物を切りますから」と余裕の笑み。気遣いも立派でなかなか格好いい。

それにしても店主は仕事が楽しくて仕方がないように見える。ボトルの酒も、おつまみも、果物たちも嬉しいだろう。もちろん、客だって。

BAR BRANCHE バーブランシェ
東京都江東区亀戸6-15-5 庄司ビル1F

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2009年02月01日

島崎酒造

洞窟見学が楽しい


島崎酒造に到着。みんなが最初に欲したのは酒ではなくトイレだった。バスの中や餃子館で、ビールを飲んだせいだ。
部屋で短い説明を聞いた後、工場内を見学。大吟醸酒の仕込みを邪魔しないように歩く。機械化されている他の酒と異なり、大吟醸酒はストップウォッチ片手に洗米から秒単位の手作業である。

再びバスに乗り込み、ウトウトし始めたところで洞窟に到着した。Kさんが閉所恐怖症だと怯える。

中に入ると杞憂だったことが分かる。第二次世界大戦末期に戦車製造の地下工場として掘られた洞窟は奥行き100m、延べ600mの坑道で、約720坪、一升瓶20万本を貯蔵加能なほどの広さである。
洞窟の天井にコウモリが二匹ぶら下がっていた。

入り口近くにはオーナーズボトルコーナーがある。買った日本酒を長期間預かってもらうシステム。日が差さない平均気温10℃の洞窟では日本酒は劣化しないそうだ。子供が生まれた時に預けて、成人した日に家族で飲むつもりの人が多い。還暦や米寿などの祝い酒にしてもいい。

洞窟見学を終えて工場に戻った。吟醸酒、純米酒、甘口・辛口・超辛口の醸造酒の5種類を利き酒した。何と2人が全問正解。日頃偉そうな銀髪は参加賞の携帯ストラップしか貰えなかった。

利き酒会の後は試飲会。洞窟で長期間熟成された酒も飲むことが出来た。20年物もある。しかし、やっぱり純米大吟醸が美味い。利き酒の時に顔をしかめていたKさんも、吟醸酒以上の酒になると笑顔になる。

利き酒、試飲と飲み続けると財布の紐もゆるくなる。しかし自分で飲む酒は買わないことにした。美味しい酒は危険である。代わりに家族へのお土産に果実酒を買った。


島崎酒造
栃木県那須烏山市中央1-11-18
0287-83-1221
http://www.azumarikishi.co.jp

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2009年01月19日

[ロイヤル アスコット](横浜ロイヤルパークホテル)

カクテルは楽しい


「ここはバーですから、カクテルを頼んでくださいね」東京の数々の有名バーに顔がきくI氏は地元横浜だといつにも増して元気である。ショットバーは大好きな銀髪も、甘いカクテルは苦手なので何を頼んでいいか分からない。いつものようにドライ・マティーニかギムレットにするのもつまらない。甘いのは覚悟してアスコット自慢のカクテルを飲むことにした。

1杯目はグランプリ受賞作品のポーリッシュカフェ。甘味を抑えたコーヒー風味のカクテルで、男女を問わず好まれそうなカクテルである。

2杯目はゆずのコンフィチュールカクテル。思ったほど甘くはない。殆どジュースだけど。

カクテルはレシピを聞くのが楽しいのに、テーブル席で残念と思っていたらI氏がたくさんのうんちくを提げて席を移動してきた。

「世界に誇れる日本発のカクテルは横浜のグランドホテルで生まれたんですよ!」と誇らしげだ。1890年に日本で初めて創作されたカクテルが「バンブー」、世界に広まった名カクテル「ミリオンダラー」は1894年作でいずれもグランドホテルの支配人ルイス・エッピンガーによるものである。

「映画から生まれた男女のカクテルは何でしょう?」I氏がクイズを出す。みんなが降参すると解説が始まる。答えはスカーレットとレッドバトラー。以前、銀髪グルメ紀行でも紹介したカクテルだ。(→「カクテル・風と共に去りぬ」

I氏の話の途中で店員が銀髪の空のグラスを見咎める。「それじゃ、ギムレットを」と言ったところで「やっぱりヨコハマを飲んでもらわなくっちゃ」とI氏が遮った。

ジンとウォッカの2つのスピリッツをベースにしたカクテルで悪くない。今年は横浜開港150周年で数々の記念行事が企画されている。これから1年間、もっとも多く飲まれるカクテルかもしれない。飲む場所はタワー最上階にあるシリウスではなく、重厚な雰囲気のアスコットの方が相応しいようだ。メインバーの呼称はダテではない。

「シャンパンベースの男に合うカクテルは何でしょう?」I氏の質問は宿題となりお開きとなった。ミモザは女性が好む。キールロワイヤルでも銀髪には甘い。さて何だろう?レシピが覚えられない銀髪はI氏のようなカクテル通にはなれそうもない。

メインバー ロイヤル アスコット
横浜ロイヤルパークホテル 2階
045-221-1155
http://www.yrph.com/rest/ascot/index.html

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2008年12月10日

[Violet ヴィオレット](新宿3丁目)

炭火焼きも食べられるバー


エレベーターを降りたところは寿司屋だった。事前に調べたところではバーの奥が寿司屋のはずだ。「すいませーん」と声をかけると、板さんと、客の3人が怪訝そうに振り向いた。

バーの入り口は右手にあった。カウンターに落ち着くなり「イヤー、びっくりしましたよ」とバーテンダーに声をかけた。予想と違う展開も、話のきっかけになって良かった。ショットバー風の店だが、料理のメニューはしっかりしていてカウンターの左側にある炭火での料理がお奨めだ。さっきの寿司屋から取り寄せることも出来る。

さんまとじゃがいものサラダ、えぞ鹿の炭火焼

バーには似合わない量のサラダに少し驚いた。秋刀魚は酢で軽くしめてあり、ちゃんと洋風の料理に見える。
えぞ鹿のカルパッチョを一度は頼んだものの、直ぐに撤回した。せっかく炭火があるのだから、試してみない手はない。久々のジビエ料理を楽しんだ。もも肉ということもあって固かったが、これが健康な野生の味である。

ジビエに合うワインは赤。リーズナブルなグラスの赤ワインは3種類が用意されていた。値段の高いワインが大きなグラスとの先入観は誤りで、軽めのワインは左側、フルボディが右側だった。香りが強いフルボディは背が高い大きなグラスになる。勉強になった。

スパゲッティはメニューにない辛さとオリーブオイルを多めにしたぺペロンチーノを作ってもらった。銀髪好みだけに、とても満足した。でも、赤ワインをもう少し飲みたい。定番のチーズではなく生チョコを選んだのは正解だった。

勘定を終え、寿司屋の方に歩き出そうとしたらカウンター右のドアを指し示された。本来の出入り口は階段を下りたところにあると知った。なるほど、そちらから入れば寿司屋は店の奥になる。情報は間違いではなかった。

バーでの食事はいつもよりゆったりと時が流れたように感じた。食後に来る客でにぎやかになる前の時間帯は、案外狙い目かもしれない。たまにはこんな食事もいいものだ。


Bar Violet バーヴィオレット
東京都新宿区新宿3-11-11 ダイアンビルB1
03-3354-6639

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2008年06月17日

[ヴィオニス](銀座)

日本で唯一(?)のシャンパン専門バー


ちょっとしたお祝いごとがあった。シャンパンに目がない部下の慰労会を兼ねてヴィオニスに行くことにした。もともとシャンパンはあまり好きではなく、女性の飲み物のイメージが強い。男二人で行くには違和感があるのでM氏も誘った。

予約の電話をすると「カウンターは満席なので、6人掛けのテーブルでよろしいですか? 相席をお願いするかもしれませんが…」と言う。6時の開店時間なら相席もなかろうと思って承諾した。エレベーターで銀座の高級クラブのにおいがする美女2人と一緒になった。同伴の待ち合わせだな、と思ったら何と我々と同じテーブルに座った。

人参のスープ、パテ、 シャンパーニュ地方のチーズ2種

もしかしたらどこかのお金持ちのお嬢様たちかもしれないと考え直した。30歳前後だが奥様には見えない。下手に話しかけては失礼かもしれないと思い、彼女たちを視界から消した。本日のグラスシャンパンは5種類。彼女たちに遅れて我々も順番に飲み始めた。料理は銀髪が勝手に選ぶ。

スモークサーモン、ベジョータ

乾杯をしたのが多分一番安いシャンパン。連れの二人はビールを飲むように2杯目、3杯目と続ける。

デュモアゼル、ルイ・ロデレール

4杯目に一杯3,200円のルイ・ロデレールを飲んだ。ソムリエの武井さんは客の懐具合を読む技術も持っているようだ。次に本日の目玉となる「サロン」を奨めて銀髪を笑顔で見詰める。連れの2人が無言で後押ししている。かくして一杯4,200円のサロン1996年をいただくことになってしまった。後でネットで調べたら1本3万円以上もする限定ワインだった。

前に座る女性たちとは折にふれてことばを交わした。デュモアゼルをお代わりしている彼女たちにサロンをご馳走しようかどうか迷うと仲間の話に乗れない。決断をしようとしたまさにその時、姉貴分が勘定を頼んだ。時計を見たら7時半過ぎ。慌ててお開きにする時間ではない。

高級クラブのミーティング時間に間に合うように切り上げたのかもしれない。或いは待ち合わせ場所に向かい、小食と酒に弱い振りをして同伴相手に優しく微笑むのだろうか。やはり最初の見立てで間違いなかったようだ。いずれにしても奢る機会を逸してホッとした。

ヴィオニスの阿部オーナーは2003年全日本最優秀ソムリエとのこと。その名声のお陰で、品質のいいシャンパンを約250種類揃えている。フランス・シャンパーニュ地方には約5500の酒造所があるというから驚いた。シャンパンの種類は1万種を超えるという。
シャンパンは甘く感じるので好きではなかったが、1万種もあれば自分好みのシャンパンもありそうだ。

楽しい飲み会だったが、やはりヴィオニスは女性と行くべきだろう。座るのはもちろんカウンター。相席の連中がいいシャンパンを飲んでいたらムカつくし、この日のように美女が目の前に座ると心が乱れ、疲れる。

武井さんに次を奨められる前に勘定を頼んだ。腹はシャンパンで満たされているが、〆にラーメンを切望している。やはり銀髪にはシャンパンは似合わない。


サロンドシャンパーニュ ヴィオニス
東京都中央区銀座8-8-18 銀座8818ビル3F
03-5537-0700
http://www.vionys.com

※ 冒頭のサロンの写真はヴィオニスのHPから拝借しました。

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2008年04月26日

[風長閑]②(日本橋)

我がホームバー

銀髪グルメ紀行を始めて今回が933回目、毎日更新しているから6月末には1,000回に到達する。約2年半の間に行った店の数は600~700軒。使ったお金は… 考えたくない。
登場回数がもっとも多いのが我が社の近くにある風長閑。銀髪は我がホームバーと呼んでいる。

渋谷の「シノワ」は料理もワインも美味しく、フロアスタッフもなかなか格好いい。しかし、一番感激したのは男性トイレに歯間ブラシやうがい薬が置いてあったことだ。
それ以来トイレに入ってシノワと比べる習慣がついてしまったが、なかなか肩を並べる店は見つからなかった。
「灯台下暗し」、「青い鳥は我が家に居た」、ではないが、我がホームバー風長閑にも同じような備えがあるのに気付いたのはほんの数ヶ月前だった。

飲み屋のトイレにはボトルなどの宣伝や、名言集、「一歩前へ」などの無粋な言葉がかけられているところが多くて白けるが、風長閑はちょっと違う。

3月と4月

気付かないで用を足して出て行く人が多いのは仕方がない。気付いたのはいいが、飾っていた雛人形の1体を持って帰った不届き者がいたらしい。仲良く並ぶ人形に嫉妬したのかもしれないけれど、酒飲みの風上にも置けない人だ。
酒の場は無礼講とはしゃいでもいいけれど、酔った時こそ本性が出て品格が問われるものである。

ショットバーで銀座一有名な「MORI BAR」のトイレもちゃんとエチケットグッズの備えがある。今まで行ったレストランやバーの中で、トイレがきれいなところはみんないい店だった。飛行機の中のトイレをCAが飛行中に何度もチェックしているのを見ると感心してしまう。

風長閑のママは明け方まで働いても、日中は睡眠時間を削って習いごとで忙しい。趣味とは言え、店造りに役立っていることも多いはずだ。ママの気配りに気付いたら声をかけてみよう。
何かいいことがあるかも… トイレの話の二番煎じは反則ですよ!


風長閑
東京都中央区日本橋2-2-8 風月堂ビルB1
03-3231-0140
http://www013.upp.so-net.ne.jp/kazenodoka/

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2008年04月05日

[BLOODY DOLL ブラディドール](銀座)

ハードボイルドは何故かロシア、ショットバーなのに何故か餃子


「店名は北方謙三からですか?」の質問にマスターは笑顔で頷いた。大学に入った年に、100本近くの映画を見たが、名画座で見るハメット、チャンドラーを原作とする古い洋画もお気に入りの分野だった。ハードボイルド映画を見て翻訳本を読み、やがて北方謙三に辿り着いた。

いくつかのシリーズがあるが、記憶に残るのはクールで影のある主人公、ワイルドターキー、ゴロワーズなどなど。もちろん美女も登場する。話の内容は殆ど覚えていない。
銀座のショットバー、BLOODY DOLLの店主はもちろん北方謙三ファンだが、なぜかウリはバーボンではなくウォッカだった。

お奨めのカクテルを作ってもらった。ロシアならともかく、日本ではウォッカはカクテルのベースとして使われることが多い。一杯目は自慢のカクテルを作ってもらった。でもやっぱり美味しいのはストレート。
この店はウォッカを約400本揃えるというからギネス級であろう。

この店に連れてきてくれたのはMさん。銀髪グルメ紀行の愛読者で、数日前に銀髪のホームグラウンドである日本橋風長閑で網を張っていたところに出くわした。意気投合してその場で飲みに行く約束をした。この日BLOODY DOLLが3軒目で、既に二人ともかなり酒が入っていた。

M氏はBLOODY DOLLへの道すがら、マスターの奥さんがロシア人で、とても美人だと力説した。最近美人妻を店で見る機会が少なくなったので不仲に違いない、と心配なのか嬉しいのか判別不能な顔で教えてくれる。
店に到着するなり疑問をぶつけたら、マスターに一笑された。妊娠休暇ですと言う幸せそうなマスターの顔を見ると、Mさんの気持ちが良く分かり素直に喜べない。

ロシア風餃子

ブラッディドールを愛するマスターが、奥さんのお陰でロシア通に転じたことが分かった。ウォッカだけでなく、ロシア料理も自慢というユニークなショットバーである。

よせばいいのに、最後にMさんと出会いの場所である風長閑に行くことになった。1軒目のビールとワイン、2軒目のドライマティーニとハバナマティーニ、3軒目のウォッカ、4軒目のスコッチストレート。

前日の記憶は薄れてしまったが、品格だけは維持できたと思う。できたに違いない。いや、もしかしたら…  考えれば考えるほど不安は大きくなっていく。反省、反省また反省。
夕方には忘れてしまう反省ではあるけれど…。


BLOODY DOLL
東京都中央区銀座7-4-7 小島ビル2F
03-3289-8155

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2008年02月02日

大洋盛

新潟県村上市「大洋酒造」に行った。


大洋酒造は新潟県では中位に位置する酒造メーカーだ。戦時下での米不足のため政府の指導により14の酒造業者が1945年に合併、新会社を設立した。その一つは1635年創業で井原西鶴の好色一代女にも記述があるという。〆張り鶴で知られる宮尾酒造も含まれていたが、その後独立して母体より今は大きくなってしまった。

規模が小さいからといって酒の品質が落ちるわけではない。吟醸酒市販の草分け的存在として知られ、関東信越国税局酒類鑑評会において18年連続入賞等、数多くの受賞回数を誇る。最高品質を維持することが最高の宣伝ということだろう。

中堅メーカーなので釜は中を覗き見れる程度の大きさなのが嬉しい。ブクブクと泡立ち発酵する様を見ることができた。

踊り場のところには少し大きめの幼児用ビニールプールのようなものが置かれていた。大洋酒造でも機械化が進んでいるが、鑑評会用の酒の仕込みはストップウォッチ片手に手作業で行われるとのこと。プールはその仕込みに使われる。

試飲会

お目当ての試飲会。ラッキーなことに出来たばかりの今年の鑑評会用酒の絞りたて大吟醸酒第1号が右端に2本用意されていた。鑑評会用なのでラベルはない。工場見学でなければ飲めない酒だ。山田錦を母に、五百万石を父に持つ新潟県開発新米「越淡麗」100%で作られた大吟醸酒。
香りが高く甘い。甘いといっても砂糖の甘さと違いあっさりとしている。お菓子は食べた後、口がべとつく感じが残るので嫌いだが、大吟醸の甘さは心地よい。

限定大吟醸

帰りに寄った酒屋で見つけた大洋盛大吟醸。鑑評会用の酒がこの酒の元になる。2月発売の予約を取っていたが、我々は一歩先んじて、しかも原酒を飲んだわけだ。

当分の間、銀髪と飲みに行く人は、この自慢話を聞かされることになる。覚悟しておいて欲しい。

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2007年11月24日

[CHRONOS(クロノス)](銀座)

開店おめでとう!独立おめでとう!


「MORI BAR」の毛利さんの下で5年間修行した時任さんが独立して銀座に店を開いた。
開店の挨拶状には毛利さんも言葉を添えている。どんな店か早速行ってみた。

場所はブランドショップが軒を連ねる並木通り、ルイヴィトン並びのソワレ・ド・銀座弥生ビルの地下1階。カウンター7席、ボックス席が1つの小さな店である。
11月15・16日のレセプションパーティーの時には毛利さんも含めて3人が手伝いに来ていたが、17日のグランドオープンからは時任さん1人っきりの店になった。

A song to the Sun“ティーダ”

時任さんが2006年総務大臣杯第3回全国泡盛カクテルコンテスト最優秀賞を獲得したカクテルから飲むことにした。沖縄で太陽を意味するティーダの名をつけた美しいカクテルだ。

コンソメスープ、お通し

MORI Bar 譲りのコンソメと鴨などのおつまみのチャージは1,500円。

ギムレット、ジャックローズ、マティーニ、フレンチ125

銀髪はギムレットとマティーニを飲んだ。MORI Barと同じカクテルをクロノスでも飲むことが出来る。時任さん流のカクテルは次の機会にお願いしよう。
相方はカルバトスベースのジャックローズとシャンパンとブランデーのフレンチ125を飲んだ。

店に入ったとき先客は1人だけですぐに帰った。次の客が来るまでと粘っていたら強い酒を3杯も飲んでしまった。我々が帰ると誰もいなくなると心配したが杞憂に終わった。ギムレットのときにカウンターは全て埋まり、マティーニのときにボックス席にも人が入った。「人気ですね」と言ったら「MORI Barのおかげです」と時任さんらしい謙虚さだ。

自分の苗字にある時にかけて、ギリシャ神話で時間(とき)をつかさどる神・クロノスの名を冠した店。銀髪は遠い昔バッカス(酒の神)と呼ばれたことがある。クロノスとバッカス。いい響きと勝手に悦に行った夜だった。

思えば自分が独立したのが10年前、42歳。時任さん40歳でのチャレンジにエールを送りたい。


CHRONOS(クロノス)
東京都中央区銀座7-6-19 ソワレ・ド・銀座 弥生ビルB1F
03-3289-0027

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2007年10月27日

カクテル「マイ東京」

「三丁目の夕日」の頃のカクテルを


日本橋界隈で食事をしたら、足を伸ばして銀座に行くか近場で済ますか悩む。近場といえば風長閑になる。ちょっとひっかけて帰ることにしよう。

カウンターに陣取って先ずはギネスビール。飲み干してから次を迷うのが楽しみな時間だ。目の前の果物から正面の数々のボトルを経て、左手の壁に掛けられた黒板まで目がさまよう。

三丁目の夕日はいい映画だった。テレビ、冷蔵庫、洗濯機が家庭に普及し始めた昭和33年頃の話。昭和30年生まれの銀髪世代にとって記憶は曖昧だが、雰囲気はよく理解できた。

バーテンダーの石井さんもママも「甘いから止めた方がいいですよ」と止めようとする。そうなるとますます飲まなければいけない気分になってくる。まして3丁目の夕日と来れば、飲みたい気持ちは抑え切れない。二人とも客を上手に乗せたくせに、今度はひきずりおろそうと必死だ。

甘い、甘いと驚かされたせいか、思ったより甘くない。スノースタイルのカクテルでグラスの縁につけられた砂糖が銀髪にはいただけないが、それを舐めた箇所から続けて飲めば問題ない。
石井さんがあみだしたカクテルかと思ったら、上田芳明氏が1964年(昭和39年)東京オリンピック開催を記念してに作ったカクテルで、サントリー・カクテルコンクール特選賞受賞作とのこと。
ウイスキー、ヘルメスオレンジキュラソー、ライムジュースなどで作られる。

ウイスキーベースのカクテルとしてはかなり有名らしく、ネットで検索するとたくさん出てくるが、なぜこのレシピで東京をイメージさせるのか教えてはくれない。グラスに沈められたチェリーは夕日だろうか朝日だろうか、或いはまったく違う何かだろうか。
東京オリンピックであれば、日本の明るい将来をイメージして、朝もやに浮かび上がる朝日が相応しい気がする。

三丁目の夕日はマイ東京より5~6年前の話。東京オリンピック開催決定に沸き、急成長に躍る東京の息吹きを、石井さんオリジナルのカクテルで感じたいものだ。若い石井さんには難しい注文かもしれないが、三丁目の夕日を見てイメージできるかもしれない。

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2007年09月15日

かぼすギムレット

またまた我がままカクテル


今週も日本橋風長閑に顔を出した。すんなり帰れば翌日が楽なのにと思っても止められない。いつもなら黒ビールで喉を潤すのだが、それを渇望するほどの気候ではなくなってきた。それなら何かカクテルをと思ったところで、カウンターに置かれた柑橘類が目に入った。

馬鹿にされそうだがレモンしか分からない。緑のものはライムと教えてもらった。ライムを使うカクテルの代表格はギムレットだが、ライムではありきたりと思ったことを見透かされ、小さめの柑橘類が出てきた。これがまたまた何か分からない。

ママが高島屋の物産展で買ってきた宮崎産のかぼすだった。役者は揃った。かぼすのギムレットとライムのギムレットの味比べをしようと提案した。先週は梨のカクテルに挑戦して石井さんの頭を悩ませたが、今回は簡単。レシピは同じでライムとかぼすを入れ替えるだけで済む。

かぼす(左)、ライム(右)のギムレット

ひと口ずつ飲んで首を傾げた。すぐには違いが分からない。もう一口飲んで少し分かった。かぼすの方が鮮烈な感じがする。味の違いというよりは、新鮮さの違いのようだ。遥かな海の向こうからやってきたライムは国内産のかぼすより条件が悪い。

いつもカボスを使った方がいいと思うのだが、かぼすはライムより小さいので果汁が少ない。切った断面を見たら種がたくさん入っていて、果汁の比率も少ないのが分かった。これでは採算が合わないし、客に価格を転嫁するのも難しいだろう。

すだちを使ったらどうかと思ったが、部下からもらって家にあるすだちを思い出した。かぼすよりもっと小さい。

それにしても柑橘類の種類は多くてよく覚えられない。かぼす、すだち、だいだい、ゆずなどなど。目隠しして味比べをして当てることが出来る人はいるだろうか。銀髪は目隠しされなくてもわからない。

かぼすギムレットとライムギムレットをみんなに飲んでもらったが、全員がかぼすの方を支持した。さて、これはメニューに入れてもらえるだろうか、石井さん?

日本橋「風長閑」にて
東京都中央区日本橋2-2-8 風月堂ビルB1 
03-3231-0140

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2007年04月15日

[クロンダイク・ハイボール](新橋)

ちょっと気取ってシェリー酒でもどうですか?


食前酒は日本ではビールに決まっている、と書くと怒られそうだが厳然たる事実だと思う。フレンチやイタリアンの店でも男はビールを飲む。シャンパンを飲む女性も多いが、外国ではシェリー酒もよく飲まれている。シェリー酒は食前に飲む酒で、ちょっと甘めの女性用の酒だと思っていた。

シェリー酒に対する誤解は「Bar 武蔵」で消えた。スペイン産の生ハムにはスペインのシェリー酒が合う。当たり前の話だ。

シェリーを飲ませる店と聞いて、新橋のクロンダイク・ハイボールに行った。ところが店名はベルモットやジンジャーエール等で作るカクテルの名前。棚はスコッチウイスキーをはじめ各種ウイスキーで埋め尽くされている。ちょっと拍子抜けしたが、めげずにシェリーを頼んだ。

店長の佐川さんは喜んで応じてくれた。彼は銀座のシェリークラブに居たとのことで、ショットバーとしては珍しく30種類ものシェリーを提供してくれる。
シェリーの原料はブドウだが、アルコールを添加した所謂「酒精強化ワイン」である。スペインのへレスという町とその周辺のみで作られるそうだ。

味はスッキリしたものもあれば、コクがあって濃厚なものもある。辛口もあれば甘口もある。色が透明なものもあれば琥珀色のものもある。
好みを言えば佐川さんが推奨してくれる。

もちろんスペイン産の生ハムは必須だ。

小さなショットバーを愛する常連さんが多いようだ。左隅でスペイン料理を夕飯にして1人で飲んでいるお父さんは単身赴任者だろうか。右側に座った女性は恋人と待ち合わせだろうか。
佐川さんが忙しくなってきたので我々はお開きにすることにした。

色んなショットバーがあるもんだ。


クロンダイク・ハイボール
東京都港区新橋3-16-22 池野6号ビル2F
03-3438-3825

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2007年04月07日

[MORI BAR]② 

毎日通えば顔になる


「MORI BAR」は来るたびに新しい発見があって面白い。我がホームグラウンドである「風長閑」は別にして、ショットバーで複数の記事を書くのは初めてである。

超人気の店でも、店内がいつの間にか半分ぐらいになる瞬間がときどき訪れる。2杯目に何を飲むか迷っていると、目の前に毛利さんが立った。「ハバナクラブ15年を飲めるとは嬉しいですね」と声をかけると、楽しいやり取りがスタートした。日本で一番ハバナクラブを使うショットバーなので、特別に15年物が手に入るとのこと。すかさず7年物のハバナクラブにシェリー酒を数滴加えてラム・マティーニを作ってくれた。

ひとしきりキューバに行った話やハバナクラブの逸話を聞いたところで看板のドライ・マティーニの話。MORI BARで使うジンはブードルズだが、必ず味見をするそうだ。以前、1ダースを仕入れたらドライ・マティーニに使えるのは1本だけ、ちょっと我慢しても数本しかなかったとのこと。輸入スコッチでも同様な話があり、海を渡る時に劣化するのかもしれない。逆に日本のウイスキーの質が向上してスコッチに負けないと言う。

店名をラベルに書いたニッカのウイスキー

気に入って全量買ってしまったというシングルカスクを注ぐときの毛利さんは本当に嬉しそうだった。

翌日にまた行った。毛利さんに代わっていつもお相手をしてくれるのは時任さんだ。壁には彼が2006年総務大臣杯第3回全国泡盛カクテルコンテスト最優秀賞の賞状が飾ってあるが、これまで飲んだことがなかった。「夜の明けてティーダの上がるまで… A Song to the Sun “ティーダ”」という名のカクテル。ティーダは沖縄で太陽を意味する。泡盛にマンゴージュースなどを加えた美しいカクテルである。

時任さんは数々のカクテル大会で賞を得ており、たくさんのカクテルを考案している。今日はショットで飲むのは封印して、カクテルを色々作ってもらうことにした。ちょと甘めのカクテルは好きではないが、たまにはこんな遊びをしてみるのも悪くはない。

カクテルは名前の由来が面白い。カウンターに座ってバーテンダーに教わるのも楽しい。得た知識を女性を誘って披瀝したいと思うのだが、アルツハイマーが始まったような我が頭脳では恥をかく方が怖い。友人はアル中ハイマーと言っていたが…


MORI BAR
東京都中央区銀座6-5-12 アートマスターズ銀座ビル10F
03-3573-0610
 

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2007年03月17日

ロンリコ

二日酔いの思い出


毎日深酒をしているので毎日が二日酔いのようなものであるが、記憶にある限り酷い二日酔いが3回ある。豊橋の焼き鳥屋でおじさんと冷酒を飲んだとき、メルボルンで三和銀行(現三菱UFJ銀行)のシドニー店長とマティーニの飲み合戦をしたとき、そして大学時代の友人とロンリコを初体験したときだ。いずれも朝起きたとき立てないぐらいにこたえた。

冷酒とマティーニのときは完全に飲み比べにはまったものだ。たくさん飲めたって偉くも何ともないのだが、ついつい対抗してしまうのが間違いの元。ロンリコのときはアルコールの高さを見誤った。友達の行きつけのショットバーでのプレゼンテーションは衝撃的だった。ロンリコの液体をカウンターにスーッと流してマッチの火を近づけると、炎が一瞬立ち上がりすぐに消えた。

ロンリコはプエルトリコ産のホワイトラム。樽で熟成されて琥珀色になったダークラムと異なり、主にカクテルなどに使われる。アルコール度は75.5度。ウイスキーなどが40度前後のことを考えれば異常にアルコール度が高い。液体に火がつくはずである。

これを口に含むと焼けるような、痛いような強烈な刺激が襲ってきた。ところがすぐに慣れてしまうから酒飲みの順応性には驚かされる。これをガバガバ飲んでしまう怖いもの知らずが翌日の悲惨な二日酔いへと導いていった。

悲惨ではあるが、あまりに楽しい経験だったので後日ロンリコを置いている店を探し出し、お土産として赴任地の顧客に持って帰った。大金持ちだが家庭不和に悩んでいる孤独な医者で、銀髪は度々自宅に呼びつけられた。渋ると銀髪の会社の商品を買ってやるからと口説かれる。訪問したら商品の説明も聞かず酒盛りとなり、本人が眠くなるまで愚痴を聞かされたものだ。

アル中と言ってもおかしくないその顧客はロンリコを大いに気に入ってくれた。しばらくして、電話がかかってきた。ロンリコがなくなったので新しいものを買ってきて欲しいと言う。てっきりその客が飲んでしまったのかと思ったら、飲み干したのは客の老母。寝酒にもってこいとのことで、さすがにカエルの親もカエル。

原料のサトウキビの甘さが加わっているのか、アルコール度数が高いせいか、ロンリコは甘く芳しく感じてもらったのかもしれない。量を飲まなければ、寝酒にぴったりかもしれない。

早速新たに購入して贈った。お金持ちのお客様に我が社の商品をさらに買ってもらったことは言うまでもない。二日酔いで死ぬ思いをしても、銀髪はただでは転ばないのだ。

日本橋・風長閑で久しぶりにロンリコを飲んだ。毎日ストレートでウイスキー、ブランデー、スピリッツを飲んでいるせいか、記憶とはかなり違って飲みやすかった。それがいいことか、悪いことか良く分からないけれど…

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2007年03月10日

[元禄](京都)

80年以上続いている一見さんお断りのショットバー


京都の通人に伴われて京料理の「たんたか」を出て、ラウンジに向かった。高瀬川沿いの道を歩くと観光客が群がっている感じ。桜の咲く頃はさらに賑わうという。観光客向けの店が誘う華々しい灯りを横目に、格子窓の町家の目立たない灯りに浮かぶ扉を開ける。店の名は「佐藤」。

中に入ると外の古い京景色からは想像がつかないような今風のラウンジがあった。働いているのは京都の女性だけかと思ったら、他県出身のアルバイト嬢もいる。1時間半ほど飲んでお開きにした。今日はこのぐらいでホテルに帰ろうと思っていたが、通人はまだ満足していない。

次に向かった先はショットバーで、昔、時の大臣でも一見さんお断りの憂き目にあったという由緒正しきお店「元禄」である。通人がドアを開けると飛びっきりの笑顔が迎えてくれた。数十年前なら心が躍ったかもしれない笑顔の主と通人は丁々発止の掛け合いをする。

頼んだお酒は通人がいつもオーダーするロイヤル・ハウスホールド。銀髪は飲んだことがなかったが、生意気に部下が最上級の賛辞で再会を喜んでいる。それを見た通人が満足気に部下と何度も握手をした。

ロイヤルハウスホールドは英国王室向けに作られたスコッチウイスキーで、市販されているのは日本だけという高級ウイスキーである。

いつものようにコースターにメモしようとして思い止まった。古ぼけたコースターはどう見ても終戦直後から使っているもののようだ。壁に目を移すと年代物のお盆やポスターなどがかけられている。
カウンターの向こうの壁の上には、年代物の酒がサランラップに巻かれて飾られている。「ほとんどが私のおじいさんが集めたもの」と自慢するのは先ほどの笑顔のお婆さんだ。いや失礼。妙齢の女性だ。
戦後はGHQに取り上げられ、外人専用のバーとして京都の街に君臨したそうだ。2階はレストランだったらしいが、今は使われていない。

ロイヤルハウスホールドを一杯だけ飲んで席を立ったが、他の常連客と軽口を叩いているさすがの通人であった。

いい加減これでお開きだろうと思ったが、ほの暗い雰囲気のある京の街を抜けて、タクシー乗り場に着いても通人は歩を止めない。入ったのはお茶屋さんも兼ねた京特有のスナック「叶家」。
コニャックのストレートを飲みながらしばらく待つと、舞妓さんがわざわざ挨拶に来てくれた。完璧な夜の京都ツアーの締めくくりに、「参りました」と思わせてご満悦の通人だった。

ホテルに着いたときは、とっくに日が替わっていた。


元禄
京都府京都市祇園町北側242
075-561-2288

佐藤
京都府京都市東山区新橋通縄手東入元吉町49-2
075-531-0051

お茶屋 叶家
京都府京都市東山区祇園町北側東富永町
075-541-6565

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2007年02月25日

[カビネ](目黒)

都心以外にもいいショットバーはある。


部下に連れられて彼の自宅近くの行きつけの店に行った。Cabinetと書いてカビネと呼ばせる。カウンター内の壁をびっしりと埋め尽くす酒瓶は文字通りCabinet(キャビネット、飾り棚)のイメージにぴったりである。

カウンターに座ってまずビール。これまでしたたかに飲んでいるにもかかわらず、店を変えたらまずビールは日本人の典型である。
次に「お奨めの酒は何ですか?」と問うと、「全部です」と来た。「全部ということは何もないに等しい」と混ぜ返したがバーテンダー増田さんはまったく動じない。「お客様の好みを言っていただかないと、奨めようがない」と返された。もっともな意見だ。

「ローランドはあるかい?」「すっきりしたものと、濃い感じのものとどちらがよろしいですか?」「それではコクのあるものを頼む」と言ったところで問答は結着した。

スコッチ・ウイスキーの故郷スコットランド地方はハイランド、スペイサイド、アイラ、アイランド、ローランド、キャンベルタウンに分けられる。出てきた酒はローズバンクでローランドを代表する酒である。この店の酒の殆どはシングルカスク(単一の樽酒)なのでアルコール度は高い。「いいねー」の銀髪の一言にようやく増田さんは笑った。

部下はやっぱりアイラが飲みたいと言う。「軽めのものを」と増田さんに頼んだらブナハーブンが出てきた。アイラの中ではかなり飲みやすい酒だ。ブレンドウイスキーの代表格であるカティーサークの原酒としても有名だ。

「2杯目は爽やかな奴にしようか」との銀髪の要望で出てきたのがストラスアイラ。アイラ特有のヨード臭がないのに驚いたが、それもそのはずストラスアイラはスペイサイド地方のアイラ川流域の醸造所で造られた酒でアイラ島の酒ではない。アイラ島にはアードベッグ、カリラ、ブナハーブン、ブルイックラディ、ボウモア、ポートエレン、ラガブーリン、ラフロイグの8醸造所がある。
ストラスアイラはブレンドウイスキーの銘酒シーバスリーガルの主要な原酒として知られる。

日付はとっくに替わっている。飲んで飲まれて、飲まれて飲んで、せっかく仕入れた知識は翌朝には雲散霧消している。かくして、懲りずに「お奨めは?」と聞きそうで、ちょっと心配である。もっと心配なのは断片的な記憶を繋いで書いたこの記事の正確性。酔っ払いの戯言と許して欲しい。

カビネ
東京都目黒区東山3-12-4 ナカミ東山ビル1F
03-3716-5086

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2007年02月18日

MORI BAR

超有名な銀座のショットバー


名前は聞いたことがあったが、敷居が高そうで行ったことはなかった。お客様と食事をしているときに彼がショットバーの通であることが分かった。日本バーテンダー協会の元会長が親戚だと言う。それなら連れて行ってもらわなければならない。

銀座6丁目、数寄屋橋交差点から大通りを新橋方面に少し歩いたビルの10階にMORI BARはある。ビルの看板にMORI BARの文字はないため、偶然見つけて入る人はいない。初めて行くのに迷ったら並びにある花屋さんに聞けばいい。

MORI BARに行くなら目的は当然ドライ・マティーニ。

マティーニ好きは超ドライの競争をする。ジンを多く、ベルモットをいかに少なくするか争うわけだが、この争いは「チャーチルのマティーニ」でほぼ決定。しかしこれはちょっと反則気味。遊びの世界だ。MORI BARでは独自の製法でこの論争に決着をつける。

マティーニに限らずカクテルは氷を入れてシェイクかステアをして混ぜ、冷やす。ところがMORI BARではジンをマイナス20度まで冷やして、これを100回以上ステアして飲める温度まで高める。氷を使わないので薄まらない。逆転の発想だ。

マティーニは強すぎると思う人は希望のカクテルを造ってもらえばいい。それほど広くないスペースに何人ものバーテンダーを抱える。もちろん毛利隆雄氏も腕を振るってくれる。決して敷居は高くなく、スタッフの所作は高級クラブに匹敵する。

驚かされたのはカウンターで光り輝くハバナクラブ。キューバの至宝は、7年物までしか輸出されていないという。もちろん日本では買えないし、飲める店も皆無に等しい。
これが目の前にある。まさに垂涎である。

15年物と、それより高価なボトルを飲み比べした。15年物は銀髪が口開けという幸運に浴した。そのせいか香りは高く、深い。もう1本は軽い味わいで品がよく、ラムと感じさせない。今度兄貴を連れてきてやろう。

勘定を払って店を出ると、スタッフがエレベーターのところでお見送り。
気取らず、偉ぶらず、一流の飲み物とサービス。何とも気分が良くなる店だった。また行こう!


MORI BAR
東京都中央区銀座6-5-12 アートマスターズ銀座ビル10F
03-3573-0610

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2007年02月14日

ペニーレインでバーボンを

ハードボイルドにチョコレートは似合わない


昨年、吉田拓郎がかぐや姫と共に嬬恋で31年ぶりのコンサートを開き話題になった。決して歌がうまいわけでも、声がいいわけでもないのに、拓郎の旋律は覚えやすく、歌詞は胸を突く。銀髪よりちょっと上の世代なので、歌詞の内容に多少の憧れを感じながら聞いていたものだ。

♪ペニーレインでバーボンを♪ と歌われた原宿の飲み屋を訪れる機会はなかったが、大人になってすかさずバーボンに飛びついた。ペニーレインがビートルズの曲名で、その名をつけた店がビートルズの曲を流す店だということはその頃になって知った。

毎日スコッチやコニャックを飲んでいると、たまには粗野な酒を飲みたくなる。そんなときもやっぱり日本橋・風長閑に行く。写真を撮るためにお店にあるバーボンを並べてもらった。我侭を聞いてくれるのが嬉しい。

今では千円台で買えるジャック・ダニエルが昔は1万円前後したのだから酷い時代だった。学生の頃、酒場でキープできるのはハーパーやアーリータイムズまでだった。
バーボンはケンタッキー州バーボン郡が発祥の地とされるため、テネシー州で造られ、製法も若干異なるジャック・ダニエルは厳密にはバーボンではなくテネシー・ウイスキーだという。しかし原料の半分以上がとうもろこしだから、申し訳ないがバーボンの思い出に参加してもらおう。

ジャック・ダニエルの圧倒的地位を打ち砕いたのがワイルド・ターキーだった。北方謙三のハードボイルド小説で度々登場したせいだろうか、バーボン好き以外の男たちもこれに飛びついた。
ワイルド・ターキーを飲み、フランス煙草ゴロワーズにロンソンのオイルライターで火をつける連中が居たに違いない。煙草を吸わないと決めていた銀髪も心が揺らいだ。

ところが、どんなに格好をつけても飲み方が水割りでは様にならない。西部劇のカウンターでバーボンを煽る男たちを、米国人でさえ憧れを持って見るだろう。昔、男はあくまでも男らしく、女は愛しく守ってあげる対象だった。女性の地位が上がるにつれて、弱い男は女を殴りだした。

風長閑には慣れ親しんだバーボンを従えて、あまり見かけない長期間熟成のものも輝いている。たまにはバーボンもいいもんだ。ちょっと男らしくなったような気がする。

原宿「ペ二ーレイン」は、今はもうない。吉田拓郎のメロディーを頭の中で繰り返しながら、今宵は日本橋「風長閑」でバーボンを。

♪今夜も飲んだくれてる♪ のは変わらない。好きだと言えなかった意気地なしを責めながら…


風長閑
http://www013.upp.so-net.ne.jp/kazenodoka/

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2007年01月28日

和食の店の選び方

うまい和食は日本酒で楽しみたいものだが…

食べ物屋だから味にこだわるのは仕方がない。もっとうるさい人は素材に注目する。国産か輸入物か、天然物か養殖か、無農薬か、などなどきりがない。
清潔感や雰囲気なども重要な要素だろう。接客・サービスについてはこれまで何度も書いてきた。

最近になって気がついたのは日本酒での判断である。日本酒は等級制度が廃止されて純米酒や吟醸酒が出回るようになって格段に品質が良くなった。日本酒の見分け方は以前に書いた記事を参考にしてもらいたい(→「日本酒」 )

次兄がくれた大吟醸酒

品質が良くなった分、店にとっては厄介なものになったようだ。日本酒はワインのように防腐剤が入っているわけではないので、一部の特殊な酒以外は保存が効かない。フレッシュなうちに飲まなければ品質が落ちるので、売れ残りは厳禁である。もちろん保管場所は冷蔵庫でなければならない。

日本酒の取り扱いが煩わしいと思う店にとって強い味方となっているのが焼酎ブームだ。本来なら日本酒同様の気遣いが必要なのかもしれないが、日本酒ほど味の劣化が目立つことはない。水割りやお湯割りにして、梅干やレモンまで入れるのだから、酒を味わうレベルを逸脱している。健康ブームに便乗している気がしないでもない。

以前、焼酎の品揃えに感心していた自分が情けない。今では数十種類の焼酎を揃えている店はごまんとある。しかし、純米吟醸以上の日本酒を10種以上揃えている店は稀である。1升瓶の入る大型冷蔵庫で保管し、栓を開けたらできるだけ早く客に消費してもらう以外に品質保持は出来ないからだ。

ワイン、日本酒、紹興酒など食事に合う酒は15度前後の醸造酒であるのは間違いない。こだわりの店主であれば、自分が作った料理をいい酒とともに味わってもらいたいはずだ。
今、思い出すと10種以上のいい酒を専用冷蔵庫に保管している店はすべて料理も美味かった。

もちろん酒の品揃えが悪いからといって、料理も不味いということにはならない。それでも、酒のメニューが充実していて、店内に日本酒専用の冷蔵庫を見つけたら、ちょっとうれしくなる銀髪である。

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2007年01月21日

酒のアルコール度数

アルコールの度数は味と関係があるのだろうか

「14度以下がいいワイン」とある人に言われた。アルコール度数とワインの品質・価格との相関関係についての記述は殆ど見たことがないので京橋にある明治屋に行った。
中央通りから店に入ると左手に安いワインが並んでいる。そこのボトルを数本ひっくり返した後で、さらに奥に進んでワインセラーに入った。そこには数万円のワインが金網の中で眠っている。手に取ることは出来ないので、指を突っ込んでラベル面をこちらに向けた。

なるほど14度以上のワインを探すのは殆ど不可能だ。ところが、14度でワインの品質を線引き出来ないこともまた明白だった。1,000円前後のワインでも殆どが14度以下だった。
14度を超えるワインはオーストラリア産や南アフリカ産で見られた。糖度が高いほどアルコールは高くなる。糖度の高い葡萄は気候が温暖な地域に育つので、ドイツなど寒い地域のワインのアルコール度数は必然的に低くなる。

14度以下のワインが圧倒的に多いのは品質ではなく酒税のせいだと思われる。アメリカでは14度、イギリス、ドイツでは15度を境に税金が加算される。大消費地アメリカで売りたければ14度以下にしなければ価格競争に負けてしまうのだ。水などで薄めないでアルコール度を制限以内に抑えるのは大変な技術がいるようだ。

昨年5月に日本の酒税法が大幅に改正されたのを覚えているだろうか。改正前はワインは12度、清酒は15度、ビールは5度以上から税金が加算された。改正後は加算税が撤廃されたが、ワインは大幅に税率が上がった。ワイン業界にとっては改正ではなく改悪である。

アルコール46度の酒を飲ませてもらった。改正前なら高額の酒税がかけられたに違いない。

銀髪の勘違いかもしれないが最近発売されたビールは以前よりアルコール度が高くなった気がする。殆どが5%以上で、中には6%を超えるものもある。アルコール分が高いとコクが増すように感じるので、酒税法の改正で加算税がないのは追い風になったに違いない。

因みに焼酎とウイスキーには加算税のルールが温存され、焼酎は25度から20度、ウイスキーは40度から37度に基準アルコール度数が引き下げられた。度数が高いほど納税額が増えるという仕組みで、味との相関関係より違いは顕著である。

オーストラリアではビールの税金は極端に安かった。フランスなどワイン生産量の多い国ではワインの税金は安い。ビールは労働者の酒である。ワインは庶民にとって食事の必需品だ。決して金持ちだけの嗜好品ではない。

酒税のことを考えることはこのへんでやめにしよう。今宵の酒が不味くなる。


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2007年01月07日

へネシー

ブランデーの代表


昨年末、連れて行かれた店で飲み放題の酒として出てきたのがヘネシーだった。初めて見るラベルだったので店員に尋ねたら新製品の壜と言われた。ヘネシーを飲み放題にするなんて随分太っ腹だと感心したが、ラベル上部にある文字を見て納得した。新製品であるわけがない。

大学時代、銀髪のアパートには色んな酒が置いてあった。ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ジンなどにブランデーも混じっていた。発泡酒などない時代だったのでまともなのはビールだけ。日本酒は2級、焼酎は薩摩白波、ウイスキーはサントリーホワイト、そしてブランデーはサントリーのVOだった。

サントリーではVOを最下層にしてVSO、VSOP、XOと上がっていく。目の前のラベル上部にあるVSの文字は、大学時代の安アパートを思い出させてくれた。

ヘネシーのホームページを開くとVSがないので、偽物かもしれないと疑った。ところが英語版を見るとちゃんとある。日本語と英語のページで内容が違うのはいかがなものでしょうかヘネシーさん。

ヘネシーやカミュをブランデーではなく、コニャックと言うのを初めて知ったのは国際線の機内サービスのときだった。外国人の乗務員にブランデーとオーダーしたら、コニャックのことかと聞き返された。ブランデーは蒸留した果実酒の総称である。因みに本家のウイスキーはスコッチと呼ぶ。

ところがコニャックとスコッチでは品質判断の基準が異なるのでややこしい。スコッチは以前にも書いたが非常に分かりやすい。(→「モルトウイスキー」
ブレンドウイスキーの30年物とは、30年以上の原酒をブレンドしたものである。コニャックはどのようにして等級を決めているのだろうか。

値段が高いものほど熟成年数の長いものが入っているのは当然だが、スコッチほど厳格ではないようだ。ヘネシーのホームページを見ても、熟成年数の長いものを多く入れるために上になればなるほどたくさんの原酒を使っている、ということが分かっただけだった。
使う原酒はVSが40種以上、VSOPが60種以上、XOが100種以上である。最高級品は熟成年数200年以上のものも入っているそうだ。
スコッチに比べると曖昧な決め方と言えなくもない。それが英仏国民性の違いなのかもしれない。

日本は? 几帳面で馬鹿正直とも言われる日本人だが、酒に関しては不明瞭なところが多い。熟成酒が一般的でないからかもしれない。本当にそれだけならいいのだけれど‥


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2007年01月03日

バレンタイン30年

正月に飲む酒も変わった。今年は最高級スコッチウイスキーだった。


正月の酒は日本酒が定番だったが、兄弟が集まって飲む酒が日本酒とは限らなくなってきた。酒をもらうことが多い次兄が一昨年は越の寒梅を、昨年は森伊蔵を持ってきた。今年は銀髪がバレンタイン30年ものを持ち込んだ。

もちろん貰い物だ。バレンタイン30年は酒飲み垂涎のスコッチウイスキーである。送り主は香港の免税店にて3万円台で買ってきたそうだ。ところが帰国して酒類ディスカウントショップに行ったら、20,800円で売られていて彼は驚いた。憤ってチェックするとパッケージ(箱)が違うことに気がついた。彼が香港で買ったものと同じバレンタインは同店で6万円台で売られていたので溜飲が下がったという。

左が香港で買った品、右が並行輸入品

貰った日、ショットバーに持ち込んで店のバレンタインと比較させてもらった。
送り主が言ったとおり、ボトルは少なくとも2種類あることが分かった。ラベル下にバレンタインのサインがあるのが正規品で、もう一方が並行輸入品であるとのこと。日本で代理店になっているサントリーのホームページを見ると、30年物の定価は77,000円と高額である。

左が持ち込んだ品、右がショットバーのもの

因みに我々でも手が届く17年物はサントリー定価が11,800円、ディスカウントショップでは正規品が7,380円、並行輸入品が4,980円になっていた。ネット上の写真では双方に同様のサインが印字してある。箱やラベルの違いは瓶詰めした年月日の違いに過ぎないようだ。高額のため売れ残っている30年ものは古い箱やラベルのものが並行輸入品として出回っていると思われる。

送り主はさらに、並行輸入品をディスカウントショップで買って味比べをしたという。もちろん彼の答えは正規輸入品の方が遥かに美味いというもの。
バレンタイン社のホームページによると、現在バレンタインの味はブレンダーのロバート・ヒックス氏ただ1人が決めているとのこと。そうであれば味が違うはずがない。
それでも並行輸入品が転々流通し、味が劣化した可能性はある。

バレンタインに限らずブランド品の小売値は輸出先の経済事情により異なる。安価に販売されている地域から仕入れると利益率が高くなるため、並行輸入を規制することは難しい。並行輸入品も本物だが、問題は中に偽物が混じる惧れがあることである。

味を見分ける自信のある人は並行輸入品を買ってもいいだろうが、そうでない人は正規品を買う方が安心だろう。もっとも30年物の味比べを出来る人は余程の金持ちかつ酒飲みでなければならない。ちょっと口に含んで真贋を当てるのは有能なバーテンダーには可能かもしれないが、銀髪には無理だ。

値段の違いは正規品と並行輸入品の違いだと教えてくれたショットバーのバーテンダーさん、この店のバレンタイン30年はどちらなのでしょう?

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2006年12月16日

ワインの見分け方

分かったらつまらないかもしれないけれど

先日、クラブで友人が馴染みの女性にせがまれてワインを頼んだ。クラブでワインを頼む馬鹿はいないと常々言っていた友人だが、断りきれないこともある。小さなそのクラブにはワインの買い置きがないらしく、店の人が酒屋に走った。このクラブにはワインを扱い慣れた人がいなかったので、栓を抜く役目が銀髪に回ってきた。

一本目を開けたときの感触は良かった。同じワイナリーの物だが種類の違うもう一本を開けようとしたらコルクがきしんで、引き抜いたら割れ目が出来た。保存状態が悪かったのか、コルク自体が粗悪なのか分からないが、味は一本目の方が明らかに上だった。

状態の良いコルク(左)、悪いコルク(中)、圧縮コルク

味と比例するわけではないが、栓とワインの価格はほぼ比例する。栓には天然コルク、くずコルクを固め合わせた圧縮コルク、プラスチック素材の代用コルク、金属栓の4種類がある。プラスチックの代用コルクはワインよりもスパークリングワインで多く使われる。
何かのパーティーで粗品代わりでもらったワインを開けてみたら圧縮コルクが使われていた。もちろん、ありがたく、感謝しながら美味しくいただいた。

天然コルクを使っていても、値段はピンキリで素人には容易に判別できない。ところが、意地悪なのか親切なのか分からないが、値段に合わせてワイングラスを変えてくれる店がある。ワインリストを独占していかにも高いワインを頼んだように見せても、出されたグラスを他のテーブルと比較してみると、いくらぐらいのワインを頼んだのか一目瞭然である。

紅花にて

「ゴールデン・ドロップ」で書いたように、半額セールのはずが大きな丸みがあるワイングラスのものは安くしてはくれなかった。

紅花別館でワインを2本頼んだが、グラスは露骨に差をつけられた。別のテーブルでも赤ワインが飲まれていたが、写真右のグラスと同じものだった。もちろん左のワインの方が遥かに高い。

値段が安くたって美味いワインはたくさんある。高くたって口に合わないワインもあるので気にする必要はない。高いのじゃなければ嫌だと言う相手はふってしまえばいい。

イヤイヤ、ふる前にふられるかな?

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2006年11月14日

[ゴールデン・ドロップ](神田)

男二人でワインを飲みに行くなんてことがあっていいのかな?

どっか安い店に行こう。今日は絶対安い店に行くぞ。何故なら相手はもっとも気の置けない奴だ。居酒屋に行くつもりで誘ったら何とほんの数日前が誕生日だったと言うではないか。天は我を見放した。

「があどした」では可哀想なので、ネットでワイン好きの彼が喜ぶような安い店を探した。そこで見つけたのがゴールデン・ドロップだった。グラスワインが月曜日半額というのが気に入った。誕生日直後に誘ったのを悔やんだのも束の間、いい日に誘ったとほくそえんだ。馬鹿な銀髪だ。

店は思ったよりうんと洒落ていた。明らかにカップルで来るべき店に思えたが、中年男4人組が奥のテーブルを占拠していた。我々はカウンターに座ると、目の前の冷蔵庫の中にあるワインボトルや、吊るされているたくさんのワイングラスを眺めた。

まずビール。そしてワインに移った。料理のメニューを見たがそれほど興味をそそられるものはない。通常レストランに行けば主役は料理、ワインがその料理の引き立て役になる。この店では主客が逆転する。料理もワインに合いそうなものを頼むのが常道だ。

パルマ産プロシュートと秋ナスのコンポート添え、セミドライトマトとフレッシュチーズ

田舎風のパテ、地鶏の薄切り スパイシーな胡椒の香りを頼んだ。

ドライトマトや田舎風のパテはなかなか良かったが、料理を目当てに来る店でないとの思いは変わらない。とにかくワインの店である。イタリアンフェアをやっていたので銀髪はイタリアワインを2種類飲んだ。本日の主役の彼はフランスワインにこだわる。
半額のワインを飲んで安く済ませるつもりが、彼は段々いいワインに移っていく。金を払う自分だっていいワインを飲みたい。ワインメニューは産地でなく葡萄の品種で分けられているので選びやすい。最初は粗品でもらうような背が低く厚いワイングラスで飲んでいたのが、大きく薄いワイングラスに注がれる。

重い赤ワインにはチーズの盛り合わせが一番だが、これが一番高い料理だった。半額ならいいワインを飲もうという魂胆だったのだが敵もさるもの、高いワインは半額セールの対象外だったのに気付いたのは勘定書きを見てから。グラスが替わったところで気付くべきだった。

ワインを5杯ずつ飲んで、当初予算の倍以上の料金を払った。思惑に反して痩せてしまった財布を寂しげに眺めていると、今日の主役がにこやかに声をかけてきた。「銀髪さん、もう一軒行きましょう」

「一杯だけだぞ!」と言ったものの、決して一杯では終わらない次の店を目指して、ヨタヨタとゴールデン・ドロップを後にした。

ゴールデン・ドロップ
東京都中央区日本橋本石町4-5-5 蔵ビル1F
03-3231-1036
http://www.g-drop.com

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2006年11月08日

[があどした](神田)

ワインは気取って飲むものとは限らない

「銀髪さんはお酒は何が好きですか?」と質問されると困ってしまう。酒なら何でもいいと言うのが本音だが、それではただのアル中に思われる。
日本ではアル中のイメージは一升瓶を抱えたオヤジの姿だろう。アメリカならウイスキーの瓶になる。日本酒とウイスキーではアルコール度数が随分違うので、外国人アル中の内臓たるや只者ではないと思ってしまう。

フランスのアル中はワインの瓶を抱えているのだろうか。どうもワインではアル中のイメージが湧かない。ワインがなんだか気取った飲み物に思えるのもアル中のイメージに合わない一因だろ。

食事に合う三大酒はワイン、日本酒、紹興酒だと思うが、どれも醸造酒でアルコール度数が15度前後と似通っている。ところがワインだけがきらめくワイングラスで飲むなど洒落ている。これじゃあ中年オヤジがワインに近寄りがたいイメージを抱くのは仕方がない。

そんなワインのイメージを覆してくれる飲み屋がある。神田のガード下に店を構える「があどした」だ。オーナーの石井寛一氏の名刺には自らを「おやじ」と記してある。店名同様洒落っ気があるが、お洒落な店とは言い難い。
カウンターに座ってボトルを頼もうとする連れを制して、目の前にある栓が抜かれたワインを飲むことにした。

肴は紅茶ポーク

特にウンチクをたれるような料理でもないだろう。赤ワインを頼むとドボドボと注いでくれる。テーブル席の客が「頼んだ料理はまだー?」とおやじに声をかけると「うるせーなー、オレは忙しいんだ。テメエらの料理を作っているから忙しいんだぞ!」と怒鳴って笑顔を見せる。自らおやじと言うのにピッタリの所作・言動である。常連さんにはお馴染みのやり取りかもしれない。
ところがこのおやじが元商社マンの国際派だというから面白い。そうじゃなきゃワイン屋なんかやらないか。

一杯目を飲み終えて次の銘柄を頼むと、おやじは一杯目と同じグラスにドボドボと注ぐのである。今度は最初のワインとは違った風味のワインで、ボトルを頼まなくて良かったと我が選択に胸を張る。日本酒に比べると、ワインは銘柄ごとに個性があり面白い。

3杯目を頼むと、また同じグラスにドボドボと注ぐ。中途半端にボトルにワインが残ってしまったので、さらにドボドボと注ぎ足した。まことに気前がいい注ぎ方だ。こんなおやじを前にすると、いつもと異なりチビチビ飲む気がしなくなってくる。たくさん注がれたグラスも直ぐに空になっていく。

お開きにしようかと思って隣を見ると、連れが人差し指を一本立てている。実はこの店は2軒目。「まだ飲むつもりか?」と呆れて連れをよく見たら、大戦直後に撮られたイタリアの名作「鉄道員」を思い出した。ワインを何杯も何杯もあおるように、水のように飲む労働者たち。スト破りをした挙句に阻害され、失意の中で主人公(ピエトロ・ジェルミ)も酒びたりになる。

ワインだってアル中になれるのだ。気取ってワインを飲むアル中はいない。


ワイン居酒屋 があどした
東京都千代田区鍛冶町1-2-13
03-3254-5067

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2006年10月22日

「風と共に去りぬ」のカクテル

映画に因んだカクテルをショットバー「風長閑」で飲み続けた。

銀髪がもっとも好きな映画が「GONE WITH THE WIND(風と共に去りぬ)」だ。今でも繰り返し上映されているので若い世代でも見た人は多いだろう。主演のクラーク・ゲーブルは原作者のマーガレット・ミッチェルが主人公レッドバトラーのモデルにしたと言われるだけに、ダンディで男臭いはまり役だ。アトランタの炎上シーンを見に来て偶然にも大役を射止めたイギリス女優ヴィヴィアン・リーは、美しく情熱的なスカーレット・オハラを見事に演じきった。

我儘で自己中心的ながらも、愛らしく魅惑的なスカーレットはバーテンダーにとっては格好の新カクテル開発の対象だったはずだ。サザンカンフォート(アメリカン・ピーチ・リキュール)、クランベリージュース、ライムジュースをシェイクして作るカクテル「スカーレット・オハラ」 は以前紹介した。これは確立されたレシピのようだが、主演者の名を冠したカクテルもある。

ヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブル

勝木さんのレシピ帳によるとカクテル「ヴィヴィアン・リー」はクレームドぺシェ(桃のリキュール)、ミント、りんごジュースをシェイクしてクラッシュアイスに注ぐ。風と共に去りぬの舞台となったジョージア州がピーチ・ステートと呼ばれるほど桃はシンボル視されていることから、桃のリキュールが使われているようだ。

カクテル「クラーク・ゲーブル」はバーボン、サザンカンフォート、アプリコットジュースをシェイクしてクラッシュアイスに注ぐ。バーボンはクラーク・ゲーブルのイメージから外れていないが、サザンカンフォートは甘過ぎる。

「ヴィヴィアン・リー」「クラーク・ゲーブル」両方ともクラッシュアイスに注ぐのは、南北戦争の破壊のイメージを表しているのではないかと石井さんが推測する。甘いカクテルなのでうんと冷やして飲みやすくしたのかもしれないと銀髪が重ねる。

映画の中で記憶に残っている酒を飲む場面は、未亡人になった喪服姿のスカーレットがブランデーをあおっている場面だ。レッド・バトラーが突然訪ねて来たので、スカーレットが酒臭い息をごまかすため慌てて香水でうがいをする。しかし、スカーレットは、レッドにキスをされて飲酒を簡単に見破られる。

この場面をイメージして、石井さんにブランデーベースのカクテルを発明してはどうかとけしかけた。男が飲めるような甘味を抑えたカクテルを作って欲しいと頼んだ。

風長閑のヴィヴィアン・リー

風長閑版のカクテル「スカーレット/ヴィヴィアン・リー」は、ブランデー、ダークラム、クランベリージュース、グリナデンをシェイクしたもの。クランベリーの赤色が、南部の赤い土地、スカーレットが拳を振り上げる夕焼けのシーン、スカーレットの情熱を表す。ヴィヴィアン・リーがイギリス人であることからスコッチを混ぜるべきかもしれないが、ブランデーとスコッチでは喧嘩しそうなのでダークラムを加えたそうだ。ラムはイギリスの植民地から広まった酒だ。

石井さんはこれが完成品と思ってないかもしれないが、男でも飲めるしっかりしたカクテルになった。

スカーレット/ヴィヴィアン・リーはカクテルになっても、男に愛された方が嬉しいに違いない。


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2006年10月21日

カクテル「アンタッチャブル」

映画に因んだカクテルを飲もう!

一軒目でしっかり飲んで、いつものように日本橋「風長閑」になだれ込んだ。どれだけ飲んできてもここに来たらギネスビールを飲むところから始めるのだが、今日は気分が高揚しているのでちょっと遊ぶことにした。バーテンダーの石井さんが「アイラにしますか?」と言いながら瓶に手を伸ばすのを制して、「今日はカクテルにしよう」と言った。

何にするか悩んでいたら風長閑の女性スタッフ・勝木さんが手帳を持ってきた。それにはたくさんの映画や俳優の名のカクテル・レシピが載っていた。一番に目に入ったのがアンタッチャブルだった。

アンタッチャブルと聞いて思い描くものは世代によって異なるだろう。若い人なら「エンタの神様」で人気が出たお笑いコンビだろうか。彼らはその芸名を映画からヒントを得たそうだが、アンタッチャブルと聞いてケビンコスナー、ショーンコネリーなどが出演した映画を思い出すのはまだまだ若い世代だ。

銀髪より上の世代であれば、テレビシリーズこそが「アンタッチャブル」である。禁酒法時代のアメリカで、エリオットネス(ロバート・スタック)率いる財務局捜査官たちとアルカポネとの対決を、毎週ワクワクして見たものだった。ギャングたちは捜査官たちをアンタッチャブル(触れざる者、買収されざる者)と呼んで恐れた。

♪ターララッターラッター タラララ ラッター ラッター タッター♪ に節をつけられる人も多いだろう。銀髪が歌ったら、風長閑のママに下手糞だと笑われた。

カクテル「アンタッチャブル」はラム、カンパリ、レモンジュース、ソーダで作る軽いカクテルだった。カンパリの赤は血の色を表現しているのだろうか。

血の色であればジンとトマトジュースが主体のブラッディ・マリーがある。ジンを多めに入れて、塩コショウ、タバスコを加えた辛口のブラッディマリーが好きだ。JALのラウンジで出発を待つ間に自分で作ってよく飲むが、同行者にトマトジュースと偽って一口含ませると誰もが嫌な顔をする。それを見るのが堪らなく愉快だ。

カクテル「アンタッチャブル」は銀髪には軽すぎて顔をしかめてしまう代物だった。映画であれ、テレビシリーズであれ、アンタッチャブルはもっとハードボイルドのイメージが強い。テレビシリーズを興奮して見ていたおじさんたちにオーダーさせるには、ちょっと違うレシピが必要だと思う。

もっとも、このレシピの考案者はこんなシーンを思い描いて、女性のためのカクテルとして作ったのかもしれない。

カウンターで男が一人で飲んでいるところに美女が現れる。待ち合わせの様子ではない。
少し離れた席から男が声をかける。
男「一杯ご馳走しましょう。何にしますか?」
女「アンタッチャブルをいただくわ」
カクテルが出て、近寄ろうとする男を一瞥して女が言った。
「こんなカクテルの一杯では私はアンタッチャブルよ」


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2006年07月09日

[ルイ13世]  最高級レミーマルタン

フランスの王様ではありません。最高級ブランデーのことです。

レミーマルタンの「ルイ13世」は40年~100年熟成されたグランドシャンパーニュ地区産葡萄原酒を100%使用、バカラ社製のクリスタルデキャンタで飾られた優雅な最高級コニャックだ。メーカーの希望小売価格は16万円。クラブで飲んだら50万円は下るまい。
宝石をちりばめたバカラのデキャンタ入り「レミーマルタン ルイ13世ダイヤモンドスペクタキュラー」は525万円で売られた。500万円以上ともなると、酒ではなく宝飾品。「勝手にやってろ!」の世界だ。

この最高級ブランデーがなぜ「ルイ13世」と名付けられたのかよく分からない。
ルイ13世は17世紀フランス・ブルボン朝創生期の王でリシュリュー枢機卿に支えられて立憲君主制の基礎を築いた。これだけでは「昔、世界史で見たことがあるなー」と思うだけだが、この時代を舞台にしたのがダルタニヤンが活躍する「三銃士」。年配者なら小説や映画で胸躍らせたことがあるだろう。

三銃士と聞いて、ルイ13世とその時代がイメージできた。三銃士はフランス人にとっては日本人にとっての宮本武蔵などの剣豪小説に匹敵する、もっとも親しみのある物語かもしれない。ルイ13世は偉大な王として評価されているのだろうか。
それにしても、「神武天皇」とか「明治天皇」という日本酒は見たことがない。もしかしたら「織田信長」「徳川家康」という酒があるかもしれない。

ルイ13世をご馳走になった。「戴きものだから皆で飲みましょうと」ということだったが、サイドボードに大事に飾ってもいい数少ない酒。

もらい物でもなかなか太っ腹だ。大勢で飲むとアッと言う間になくなっていく。味がわかる連中ではない。「いい経験をした」と言うために飲んでいる感じだ。ロックや水割りで飲むのを禁止して、ストレートで飲むことを強要したらお代わりする奴はいなくなった。

16万円もするのだから旨いに決まっている。しかし、値段は希望小売価格約15,000円のXOの10倍以上だが、お味も10倍というわけではない。XOはグランドシャンパーニュ地区産葡萄原酒を85%以上使用、平均熟成年数10年~37年の原種をブレンドしている。
100%、50年~100年のルイ13世には及ばないが、XOだって最高級のコニャック。充分満足できる。

ルイ13世の16万円は希少性とバカラのボトルのお陰でついたお値段かもしれない。虚栄心をくすぐるには適当な価格かも。

「こんな酒を飲むのはばかばかしい」と言ったら負け惜しみに聞こえるだろうか。それにしても、飲ませてくれた人には感謝、感謝。いい経験でした。銀髪にとっても‥


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2006年06月29日

[Bar武蔵](銀座)   シェリー

食事も出来るバーということで武蔵に行った。

相方は店のオリジナルカクテルを頼んだ。銀髪が頼んだのはラム酒。先日キュラソーに行ったとき、ハバナクラブの10年以上のものを買おうと意気込んだが、結局7年物しかなかった。生産地のキューバ以外では手に入らない代物になってしまった。買えなかった悔しさを思い出してラムを注文した。

ラムはカクテルや料理に使われる無色のものが定番だが、琥珀色をしたものはコクがあっていい。テキーラも同様に、琥珀色したものがある。高級スコッチに比べると、いや比べるべき代物ではないが、これはこれで嫌いではない。

バーテンダーの黒田さん、山内さんとしばしラム談義をしていると、相方は親子丼で腹ごしらえを終えて、銀髪一人を武蔵に残してさっさと帰ってしまった。時間が早かったせいか、自分が帰ると店に客は誰もいなくなる。もう一杯飲むことにしたが、何を飲むか決まらない。
頭の中を回転させながら、目は多種多様な酒瓶の間を泳いだ後カウンター上のハムに止まった。

ハモンセラーノ、白豚の後ろ足を使ったスペイン産生ハムだ。これを食べることにして、それに合う酒と頼んだら、シェリー酒がいいと言う。
シェリー酒は食前酒とのイメージが強いので、それを奨められるとは思わなかったが、考えてみれば生ハム同様にスペイン産だから合うはずだ。

それでも抵抗感が残る。シェリー酒は甘い酒と勘違いしていた。食前酒の定番はシャンパン、シェリー酒などだが、カンパリと並んでどれも女が飲む酒と思っていたためだ。銀髪の勘違いを見越してか黒田さんも、山内さんも簡単には引き下がらない。根負けして辛口であることを何度も念を押して、シェリー酒を頼んだ。

ラム(左)とシェリー

食わず嫌いならず、飲まず嫌いだった。原料が同じぶどうでも、ワインというよりグラッパに近い。アルコール度数はワイン並みなので、グラッパよりは飲みやすい。
ウイスキーは蒸留後にシェリー酒の樽で熟成されるが、そう考えるとウイスキー独特の風味に近い味わいがあるのも当たり前か。

辛口のシェリー酒はシャンパンやワインより甘味が少ない。なぜシェリー酒を甘口と思っていたのだろう。大昔にヒットした「シェリーに口づけ」というラブソングのせいだったのだろうか。

酒の世界は奥が深い。シェリー酒が素晴らしく美味な酒かと問われれば、即答し難いが、ラムやテキーラ同様にちょっと品格が落ちてもいいところはある。
松坂牛のステーキや高級寿司ネタばかりを食べていたら飽きる。たまにはレバニラ炒めや目ざしも悪くはない。

シェリー酒をお代わりしていたら、客が続々入り始めた。銀髪のお役目はここまで。料金を払って次の店に向かった。


Bar武蔵
東京都中央区銀座8-10-7 東成ビルB1
03-5537-6634

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2006年05月10日

[Bar オーパ](銀座)  あのギムレット

ついに見つけた。レイモンド・チャンドラーの傑作「長いお別れ」で有名なあのギムレットを見つけた。

あのギムレットを探して果たせなかったことは前に書いた→「ギムレット」  。肝心のローズ社のライムジュースが日本にないためだ。分かったことはローズのライムは甘いリキュールで、これを使うギムレットはハードボイルドには似合わないカクテルだということだった。

いつものように飲んだ。酔っ払ったら帰ればいいものを、時計を見てまた酒場を探す。まだ帰るには早すぎる。のん兵衛の連れは既に行き先を決めたらしい。有名なオーナー兼バーテンダーの大槻さんの「Bar オーパ」が行き先だ。彼が作るカクテルは同じレシピでも味が違うそうだ。

階段を下りると左側のカウンター席は一杯なので、右側のテーブル席に通された。散々飲んできた癖に頼むのはまずビール。ビールを飲みながらカウンター席が空くのを待つ。カウンターの客が帰ると恋人同士だろうか、若いカップルがカウンターに移る。テーブル席で向かい合って見詰め合うより、カウンターでカクテルを飲むほうがいいのだろうか。

ちょうどビールを飲み終わったところで、我々もカウンター席に移ることができた。連れは大槻さんがいるかどうか心配していたが、幸いニコニコしながらこちらに歩み寄ってきた。カクテルの名人ということなので、ギムレットを頼むことにした。無理を承知で「長いお別れ」のギムレットをオーダーすると何とできると言う。

日本にはないと思っていた「ローズ社のライムジュース」があった。大槻さんはアメリカに行ってわざわざ買ってくるそうだ。そこであのギムレットを作ってもらうことにした。連れの言葉どおり、あざやかで格好よくシェイクした後、グラスにライム色の液体が注がれた。

不味いはずの「長いお別れ」のギムレットは意外なことに美味い。もちろん甘い。しかし「甘すぎる」との先入観に凝り固まっていたせいか、思ったほど甘くない。生ライムでシロップを入れないドライなギムレットを銀髪が好きなことに変わりはないが、これなら飲める。おかげでチャンドラーがこのギムレットをキーワードにした意味を考え直さなければならなくなった。

それにしても、ローズのライムジュースをわざわざ買ってくるなんて、大槻さんもなかなかやるもんだ。連れが「カリスマ・バーテンダー」と誉めそやすのもあながち大袈裟ではないかもしれない。

最後に大槻さんオリジナルのカクテルを作ってもらったが、名前もレシピも忘れてしまった。また飲みに行かないと申し訳ない。

「飲みに行く言い訳だろう」って? 何とでも言ってくれ。銀髪は気にしない。


Bar オーパ/銀座

東京都中央区銀座1-4-8
銀座ビッグウエストビル5号館B1
03-3535-0208

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2006年05月03日

アルコールの効用

「酒は百薬の長」と大酒飲みの言い訳をするわけではない。兄が先日書いた「アブサン」に対するコメントを見てピンと来たことがある。

確かに最近、酒のアルコール度数が上がってきている。初めてこれに気付いたのはアサヒの「スーパードライ」が大流行した頃だった。 オーストラリアに居たとき、ランチ(もちろん平日も含む)にはアルコール度2%強のものを好んで飲んだ。飲む量は減らし難いので、無駄な努力と言われるだろうが健康のためにアルコール度数を抑えたわけだ。

帰国した頃にはアサヒがキリンを抜いていた。その後、発泡酒が発明され、本来のビールも含めて新製品が次々に発売されたが、どれもがアルコール度5%以上。外国ビールの主流は5%以下なのに、日本人の方が強い酒を好むとは信じられない思いだった。昔からそうだったのかな?との疑問が残った。

酒が好きな人ほど辛口の酒を好む。日本酒には醸造用アルコールが混ざっている酒がある。醸造用アルコールの原料はサトウキビ、甘藷、とうもろこしなどで、不純物を除いた限りなく純粋に近いアルコールとメーカー側は説明している。コスト削減だけが混ぜる理由ではないとも。
「日本酒」 

アルコールの効用として芳香成分の維持や雑菌繁殖防止なども上げられるが、最大の効用は辛口で切れ味が良くなることだ。スーパードライの謳い文句に通じるものがある。
醸造用アルコールを混ぜることにより酒飲みが好きな辛口の日本酒が出来上がる。

さて、ここで問題である。本醸造には醸造用アルコールが添加されている。無添加の純米酒で最高級の純米大吟醸と比較して、どちらのアルコール度数が高いかわかりますか? 

我が家にある酒を調べてみたら本醸造や純米は15~17%、純米大吟醸は17~18%だった。念のために酒屋に行って調べてみたら、純米大吟醸は15%台のものもあったが度数が高いものが多い。しかし、本醸造には17%を超えるものは見つからなかった。辛口と評判の酒でも16%程度だった。14%台のものすらある。すっきり辛口とアルコール度数との因果関係がよくわからない。

純米にこだわりたい気持ちが強いのだが、そう単純に割り切れないから困ってしまう。菊姫の「黒吟」という酒がある。大吟醸だが純米酒ではない。一升瓶で定価が3万円。3年熟成だから、ワインの酸化防止剤ではないが、醸造用アルコールを添加しないと純米ではもたないのかもしれない。飲んでみればこれを駄目と決め付けるには勇気がいる。

右上に「黒吟」が見える

酒屋に行けば「米だけで作った酒」と書かれたものがある。精米歩合が規定に満たず、「純米酒」とは書けない。醸造用アルコールでも米だけのものもあるようだ。メーカーの言い分も分かるが、せめて醸造用アルコールも米で造ってもらえないだろうか。

サトウキビやとうもろこしでは、やっぱり何か違うような気がしてモヤモヤしたものが残る。味同様、気持ちもすっきりさせて欲しい。

ビールは明快だ。先日飲んだベルギービールのラベルには原料として、「麦芽、小麦、ホップ、酵母、オレンジピール、コリアンダー」と明記してあった。

日本酒だって、「米、米麹、サトウキビ、とうもろこし」と明記したらすっきりすると思う。「醸造用アルコール」では日本酒の真贋論争を決着させるのは難しい。

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2006年04月30日

アブサン

銀髪のホームバーである日本橋の「風長閑」に行った。ホームバーと言えるほどの常連ではないけれど、ご近所なので許して欲しい。

カウンターに座ってギネスの黒ビールを頼んだ。これ一杯で帰るつもりなのだが、カウンターには一人で来ている客が銀髪を入れて3人。お相手するのはチーフ・バーテンダーの石井さんただ一人。ママはテーブル席の客に挨拶に行っている。

こんな時の解決策はただ一つ。隣の客と親しくなることだ。石井さんも一度に二人を相手に出来る。右隣の客は遠いのですぐ左の客をターゲットにする。さて話のきっかけを捜すことにして、しばし様子を伺った。

左の客の前にあるボトルを見た。「PERNOD」の文字が見えたが何のことか分からない。その下を見ると「ABSINTHE」と書いてある。ピンと来た。アブサンだ!

アブサンはアルコール度数が高いので有名な酒だが、その名前を知ったのは水島新司の野球漫画「あぶさん」を読んでからだ。主人公の影浦安武は代打専門の酒豪で、酒しぶきをバットのグリップに吹き付けてホームランをかっ飛ばす。ビッグコミックオリジナルに1973年から30年以上も連載されているから恐れ入る。

ちょうど銀髪が酒を飲み始める頃の連載開始だから、アブサンという酒の印象は強かった。当然、飲んで面白がったに違いないのだが、飲んだ記憶が明確ではない。「これがあのアブサンだ!」と言われて飲んだ記憶があるが、本物のアブサンだったか定かではない。

「アブサンですか?」と左の客に自然と声をかけることができた。ついでに銀髪グルメ紀行の名詞を渡したら、「ママに聞いて見てますよ」と嬉しい言葉。名刺交換したMさんの飲んでいるアブサンを石井さんにちょっと注いでもらった。

アブサンはニガヨモギ、アニス、ウイキョウなどが主成分で、もともとは医薬品として生み出されたものだけに独特な香りと味を持っている。幻覚などの向精神作用があるとして発売禁止されたこともあるが、成分の規制などで解禁されて一般に流通している。
カウンターに置いてある「ぺルノー」がアブサンの代表格。アルコール度数68%なので、ストレートで飲むとほんのり甘い。水を加えると白濁する。

Mさんがお代わりをすると言うので、石井さんはグラスにアブサンを注ぎ、砂糖を加えて穴あきスプーンに角砂糖を乗せてアブサンを垂らして火を点けた。

アブサンは漫画の「あぶさん」だけでなく、詩人ヴェルヌールや画家のロートレック、ゴッホ、作家のヘミングウェイなどアル中連中に愛された酒らしい。アブサンはちょっとだけにして今日は帰ることにした。
Mさんとの橋渡し役をやってくれたので、「アブサンご苦労さん」である。

近いうちにMさんと一杯やることを約して、握手をして店を出た。

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2006年04月26日

タンカレー

昨日に続いてカレー、牛タンのカレーの話と勘違いしてもらっては困る。銀髪の大好きなジンの話です。

銀座○丁目のバーに連れて行ってもらった。残念ながら、常連が入れなくなると困るので取材は拒否されてしまった。従って店名は出せない。

目の前にボトルが雑然と並んでいる。見たことのない瓶があちらにもこちらにもある。カウンターの上にはカクテル用の果物が数種類並んでいる。右端に烏骨鶏の卵がある。甘いもの・果物嫌いの銀髪には選択肢が限られる。しかも珍しいものが好きとなると、当然のことながら烏骨鶏の卵に飛びついてしまう。

たまご酒のイメージを思い浮かべたが、ジンフィズに卵を加えたカクテルをロイヤル・フィズと呼びたまご酒とは別物。
普通の卵ではなく、烏骨鶏の卵を使うのでスペシャル・ロイヤル・ジンフィズとこの店では呼んでいる。
あまりにも飲みやすいためアルコール不足と思い、ジンを足してくれるように頼んだが、充分に入っていると断られた。ジンが好きだと訴えたが「まあ、待っていなさい」と制された。

ドライマティーニ、ギムレットなど銀髪が好きなカクテルはジンベース。究極のドライ・マティーニ(→「究極のドライマティーニ」)なんかジンストレートに等しい。ストレートで飲むのなら独特の香りと甘味があるタンカレーがいい。我が家にも常時置いてある。

ジンのことは忘れて、カクテルの後に日本では珍しい37年物のハイランドウイスキーに飛びついた。ウイスキーの講釈をたれながら、聞きながらそれを飲んでいると、中年二人連れが入ってきて隣に座った。
常連さんらしくすぐに前回来たときの感動を話し始めた。バーテンダーはすかさずその感動の酒を持ってきた。これがタンカレーのNo.10だった。そこでまたジンのことを思い出した。

「待ってなさい」と制されて、焦らされて、忘れていたところに、タンカレー好きの客が来るなんて出来すぎた話のようだ。ドラマだったら陳腐過ぎて笑ってしまうところだ。
「こっちにも出してよ」と言ったら、バーテンダーは銀髪のウイスキーグラスが空になったのを確かめてから、一般的なタンカレー(下の写真左)を2本持ってきた。

1本が我が家のものと同じ日本で市販されているもの。もう1本はロンドンで市販されているもの。裏のラベルが英語と日本語の違いはあるが、見た目はまったく同じものだ。

まず日本のものを飲んだ。それからロンドンのもの。ロンドンのものの方がまろやかで明らかに美味い。
これはタンカレーに限らず殆どの洋酒に共通のことらしく、免税店や日本向けに造られている酒は品質が落ちると言う。そう言われればオーストラリアで売られている洋酒は全てアルコール度数38度とオーストラリア仕様になっていた。日本仕様もあるということか。

味の違いが分かったところでタンカレーNo.10(下の写真右)が出された。これもロンドンで市販されているものだった。No.10も2000年頃から日本で市販されるようになったが、やはりロンドンで売られているものとは味が違うと言う。

どのようなルートで仕入れているのか分からないが、昔は現地で買うしかなかっただろう。

お客様に満足してもらうためにいい酒を求めて走り回る。自らの舌で本物の味を探求する。

まったく脱帽のショットバーだった。

でも名前は教えられない。

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2006年04月22日

カルヴァドス

ブランデーにもいろいろある。コニャックだけがブランデーではない。

ブランデーとは「果実を原料として発酵(醸造)した後に蒸留したお酒のこと」だそうだ。一般的なのはブドウを原料としたものだが、リンゴやミカン、ナシなどを原料としたものもブランデーである。

ブドウを原料としたもので有名なのがヘネシーやカミュなどのコニャック、シャボーなどのアルマニャックなど。生産したフランスの地名で分類される。
昔は関税が高かったせいか、命名の妙かナポレオンが最高級のブランデーと思っていたものだ。大学生のときに銀髪の安アパートには何種類もの酒が置いてあり、ブランデーもあったがVOと最低クラスのものだった。それからVSO、VSOP、ナポレオン、XOと上がっていく。

ナポレオンは等級とは別ものの気がするが、サイドボードの中で大事に飾られていた家も多かった。最近あまり目にしなくなったように思う。熟成年数が長いほど高級になるが、各社共通の基準はないようでコニャックのVSOPがアルマニャックのXOより高いものもあるのでややこしい。XOの上に勝手にクラスを作っている銘柄もありますます混乱するが、まあVSOP以上はいい酒に違いない。

これに対してフランス北部ノルマンディー地方のカルヴァドスのリンゴ・ブランデー「カルヴァドス」はコニャックには遠く及ばない。熟成年数が短いものは強い刺激臭がして辛いが、熟成年数が長くなれば意外といいもんだ。値段もコニャックに比べるとはるかに安い。

用賀でたまたま入った店「Bar Masters」で連れがカルヴァドスを頼んだ。銀髪も嫌いではないが彼の頼んだものは刺激臭が強すぎた。もっといいのはないかとバーテンダーに聞いたら何と100年ものがあると言う。値段は1杯3,000円で100年もする割には安く感じて頼んでしまった。

左から2番目が100年もの

こんな郊外店でカルヴァドスをこんなに置いているなんて不思議だ。高級住宅地が周辺にあるので、外国で生活をしたことがある人たちが来るのだろうか。

カルヴァドスがあるならグラッパ(ブドウから作るイタリア産ブランデー)もあるだろうと思ったが、頼むのはやめにした。今日はもう随分飲み過ぎている。


Bar Masters
東京都世田谷区用賀4-1-8
生田ビル2F
03-3707-1711
http://www.sunset-group.net

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2006年04月12日

だるま、サントリー・オールド

スーパーでサントリー・オールドを見つけた。1,120円の値札を見て驚いた。

30年前、通称「だるま」と呼ばれたオールドは高級ウイスキーの代表格で、なかなか口に出来るウイスキーではなかった。大学生にとっては高嶺(高値?)の花で憧れの酒だった。大学に入って最初の飲み会は新宿の「ジェスパ」で、入れたボトルは多分ホワイトだったと思う。見栄を張って角瓶だったかもしれないが、確かなことはオールドではなかったことだ。

ホワイトの瓶を指輪で叩きながらアドリブで歌うサミー・デイビス・ジュニアのCMは秀逸だった。この大スターを起用して宣伝したのだから、もっとも大衆に売れた酒がホワイトだったのだろう。オールドの宣伝は「♪ロンロン リロン シュビダバ アレーヨー オレーヨー♪」と聞こえるスキャットで、何ともムードがある高級感漂うものだった。

サミー・デイビス・ジュニアのCMの印象が強くてホワイトは比較的遅く発売されたと思っていたが、実は日本初の本格ウイスキーとして「サントリーウイスキー白札」の名前で1929年に発売されている。1937年に角瓶、1940年にオールドが登場している。トリスは1946年、レッドは更に新しく1964年発売で、白札がホワイトと名称変更になったのもこの年。

大学生の頃、オールドは2,200円で、リザーブが3,000円だった。30年前にオールドを飲むとすごくリッチな気持ちがしたものだ。まして、1万円もするジョニ黒なんか、飲むことができる日がいつ来るか想像できなかった。

約15年前オーストラリアにいたときのことだが、女房が果実酒を作りたいので一番安い酒を買って来てくれと言う。日本のように梅酒を作るためのホワイトリカーなどないので、焼酎を買おうと思ったが何と宝焼酎がスコッチ・ウイスキーより高い。
オーストラリアはアルコール度が40度で税率が変わるため、スコッチを含めどこのウイスキーも38度に薄めていた。宝焼酎は40度を超えたまま輸入されていたので、スコッチより税金が高く、販売価格は日本の数倍になっていた。

日本に居たときウイスキーで作った梅酒を飲ませてもらって旨かったのを思い出して、一番安いウイスキーを買って帰った。それがサントリー・オールドだった。日本で2,000円以上していたのに、オーストラリアでは1,500円程度だった。いかに日本での酒税が高かったかわかる。

結局、買ってきたオールドは銀髪がそのまま飲んでしまい、女房が果実酒を作ることはなかった。学生時代のトラウマか、高級ウイスキーのイメージが頭から離れず、果実酒にしてしまうことが許せなかったのだ。

その酒が今や日本のスーパーでも1,120円で売られている(定価は1,510円)。かつてのオールドの地位は「山崎」や「響」に奪われた。
いい時代になったと喜ぶべきなのか、2,200円も出さなければ飲めなかったあの頃を呪うべきなのだろうか。

スーパーで買おうか、買うまいか、ハムレットをしてみたが、結局買わずに店を出た。


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2006年04月01日

[TANTE](赤坂)   アイラ・ウイスキー

最近ウイスキーを飲む人が増えてきた。高級クラブでもブランデーよりウイスキーの方が粋に見えるそうだが…

約20年前、オーストラリア・カンタス航空のビジネスクラスに初めて乗ったときのこと。もちろん会社の経費で。 「ウイスキー・オン・ザ・ロック(Whisky on the rock)、プリーズ」と頼んだ。スチュワードは「スコッチ、ウィズ、アイス?(Scotch with Ice ?)」と聞き返した。なるほどそういう風に言うのかと感心すると同時に、スコッチなら高級輸入ウイスキーだと喜んだ。

スチュワードが持ってきたグラスを見て驚いた。氷は2~3個しか入っておらず、大きなグラス一杯にスコッチ・ウイスキーが入っていた。こんな濃い酒は飲めないと思っていたのに、すぐにお代わりをしていた。

メインの食事が終わったらチーズが乗ったワゴンがやって来た。「ブランデー、プリーズ」と言おうか、飲み過ぎだからやり過ごそうかと悩んでいたら、スチュワードと目が合った。「コニャック?」と聞かれ、思わず「イエース!」と言っていた。なるほどいいブランデーはコニャックと言うんだと感心しながら飲んで、またまたお代わりした。飛行機がシドニーに着いた時には飲みすぎで頭がガンガンしていた。

言うまでもなく、ウイスキーやブランデーは酒の種類の名前。その中でスコットランドウイスキーがスコッチ、フランスのコニャック地方のブランデーがコニャックと言う。最近ではスコッチも更に分類されるようになってきた。

スコッチの代表的なものはジョニ黒などのイランド・ウイスキーである。ハイランドがあるならロウランドもあるが、ロウランド・ウイスキーを置いているバーはスコッチ・ウイスキーにこだわりがある店と言える。グレンフィディックに代表されるスペーサイドもあるが、これを言うとかなりスコッチ通のように見える。
そして最近酒飲みたちに人気なのがアイラである。スコットランドの西に位置する島がアイラで、ここで造られたものがアイラ・ウイスキーである。

アイラを教えてくれたのは、新宿パークハイアットのバーテンダーだった。ピークバーの酒は端から端まで殆ど飲んだが、ある日「いいのが入ってきました。口に含むとわずかに塩の味がしますよ」と勧められた。暗示にかかったのか確かに塩の味がするような気がする。ヨード臭のある極めて個性的な味のインパクトは強烈だった。それから、銀髪はアイラの伝道者と化した。

赤坂見附のバーに行った。黒ビールを飲んで、アイリッシュ・ウイスキーを飲んだところで帰ろうとしたが、運悪くアイラの話になった。バーテンダーの斉藤さんの目が光った。アイラの品揃えには自信がありますと言う。カリーラ(Caolila)が出てきた。ボウモア、ラフロイグ、ラガブーリン、アードベッグと飲んできたが、アイラは他にカリーラ、ブルイックラディ、ブナハーベンがある。年代ものはハイランド・スコッチより高い。

斉藤さん自慢のレア物アイラをいくつも勧められて飲んだ。キリがないので何とか振り切って勘定にしてもらった。哀れ我が財布。支払いが済んで財布の中には、寒々とした空間が広がっていた。


TANTE
東京都港区赤坂3-20-2  藍花ビル2F
03-5570-2244

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2006年03月19日

日本酒

「日本酒の復権を目指して」などと大上段に構えるつもりは毛頭ないが、いい和食にはいい日本酒を合わせたい。

大学を出て入社してすぐに大酒飲みであることがバレた。そんな銀髪を先輩が夕食に呼んでくれた。
一升瓶を抱えた先輩はラベルのところを隠して酒を注ぎ、銀髪に銘柄を当てろと言う。銘柄なんか分かるわけはないが、先輩の得意気な顔を見て閃いた。銀髪は一口飲んで勿体ぶって答えた。「剣菱ですね」と。先輩はちょっと驚いた後、「そうか、やっぱりわかるか。何たって剣菱だからな」と喜んだ。あまりにも嬉しそうなので、銀髪は種明かしをしなかった。

等級制度があった時代、剣菱は名酒として知られ容易に手に入らない時期もあったが、人気が出てから他の酒蔵を買収するなど大量生産に走り、名を落とした。

オーストラリアに赴任してから日本酒は滅多に飲まなくなった。日本からの輸入では値段が高く、しかも防腐剤が入っていたからだ。それに反して豪州ワインは高品質で安い。いつしか、日本酒を馬鹿にするようになっていた。

帰国して「あさ開」の純米酒をご馳走になって驚いた。オーストラリアにいる間に等級制度は廃止され、酒は格段に旨くなったことを知った。純米大吟醸なんて今まで飲んだこともない酒だった。たまにワインを飲みたくなって酒屋に行くとオーストラリアの3倍も高いワインを買う気がしなくて、いつも純米酒を買って帰った。

格段に旨くなった日本酒だが、等級制度がなくなってからは品質表示が変わった。
醸造、純米、吟醸、大吟醸など。その意味を正確に話せる人は少ない。

米、米麹、水だけで作られている酒のみ純米酒と表示できる。純米と書いてなければ吟醸や大吟醸でも醸造用アルコールを加えたものである。

醸造用アルコールの白米に対する含有比率、および精米歩合で表示が分けられる。精米歩合70%とは米を30%削ったことを意味する。精米歩合が低いほど精米の手間がかかる上に、原料米から出来る酒の量は少なくなり、値段が高い酒になる。

純米大吟醸(白米100%、精米歩合50%以下)、純米吟醸(白米100%、精米歩合60%以下)、純米(白米100%、精米歩合70%以下)、本醸造(白米90%以上+醸造用アルコール10%以下、精米歩合70%以下)。これを基本として覚えておけばいい。吟醸や大吟醸でも醸造用アルコールは10%以下に制限されている。

醸造用アルコールは、含糖物質やデンプン質を原料に醸造し蒸留されたアルコール。アルコール度数は60~70度と高い。これを入れると香りが高く、すっきりした味わいになると言われる。昔は米不足のため大量の醸造用アルコールを添加する三倍増醸法がさかんに行われた。今もコスト削減のために用いられているが、味を整える効果もあるそうで、醸造酒が旨いと言う人を味がわからないと責めることはできない。プロがブレンドしたものを素人が易々と見破ることはできない。
それでも、なんと言われても純米がいいに決まっている。

純米大吟醸は悪酔いしないと言う人は多いけれど、案外正しいのかもしれない。不純物が少ないのだから。
ただし、大酒飲みにとっては飲みやすければより大量に飲んでしまい、勘定書を見せられた瞬間、一気に悪酔いする。味も値段も純米酒が無難である。

富山空港に陳列されている名酒

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2006年03月11日

[Isle of skye](銀座)  オールドパー

酒を飲むならショットバーがいい。ホテルや大きな店の場合は当たり外れがあるが、小さな店のバーテンダーに裏切られることはあまりない。

何軒かはしご酒をして一人で帰るときに気になるバーがあった。意を決して行ってみたら他に客は誰も居ない。うれしいシチュエーションだ。こんな時はバーテンダーと話をすることができる。

ショットバーに来ると最近はカクテルを頼むことが多い。性懲りもなくヘミングウェイのダイキリとオーダーしたらレシピを探してくると言う。
こんな時は無理強いしてはいけない。どのバー、バーテンダーにも得て不得てがある。
どうやらこの店はウイスキーなどストレート系のものが良さそうだ。

かつてスコッチ・ウイスキーを飲むのがのん兵衛の憧れだった。ジョニ黒、シーバース、そしてオールドパーが御三家だったろう。海外に行ったら誰もが必ずウイスキー3本と煙草を免税店で買って帰った。酒も煙草もたしなまなくても、最高のお土産になる。

新婚旅行に行くとボトルを6本持ち帰ることになる。新婚旅行の憂鬱はお土産を買うことだが、たくさんの荷物に加えて最後に免税店でウイスキーを買わなければならない。宅急便などない時代にはこの荷物が厄介極まりない。それでも自らが支払った金額に比べて、相手の満足度が高いのなら誰でもその苦労は厭わなかった。

その高級ウイスキーが税制が変わった途端に国産ウイスキーの値段と変わらなくなってしまった。国内の酒量販店で買う方が免税店で買うより安いケースだってある。

部下のTがオールド・パーを頼んだ。銀髪にとっては忘却の彼方に消えてしまった酒に思えた。最近は17年物、21年物、時には30年物やアイラ、アイリッシュなどのシングルモルトばかり飲んでいるので、オールド・パーとはやけに懐かしい響きがある。
12年物のオールド・パーは20年以上飲んだことはない。その間にボトルのデザインも変わったとのこと。ブレンド・ウイスキーは変わらない味が魅力だが、姿・形は微妙に変化している。

新旧デザインの表・裏、左が新、右が旧

あれやこれや熱心に説明してくれる。聞いているとサントリー・ホワイトやちょっと見栄を張って角瓶を飲んでいたときのことを思い出す。その上の通称だるま(サントリー・オールド)やリザーブ、スーパー・ニッカは高嶺の花で、スコッチ御三家を外で飲むなど考えられなかった。

オールド・パーの名前の由来となった、パーおじさんの話。1483年生まれで、80歳で初婚、子供ができたが早世した。105歳で不倫騒動を起こし、不義の子までもうけた。112歳の時に妻と死別。122歳の時に再婚を果たす。152歳まで生きてその長寿が知れ渡り、あのルーベンスが肖像画を書いた。「嘘だろう!」と言いたいところが本当の話らしい。
50歳の銀髪はまだ若造に過ぎず、前途洋々だ。

そんな逸話を知ると、また飲みたくなってしまった。まぁ、結局のところ酒を飲む言い訳を探しているだけかもしれないが‥
  

Isle of skye
東京都中央区銀座8-4-24
銀座藤井ビル 4F
03-5537-0345

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2006年02月25日

へミングウェイのダイキリ

人名をつけたカクテルは当然のことながらその人がもっとも愛したものだろう。しかもその人好みのレシピに変えられたカクテルに違いない。

多くの人が学生時代にヘミングウェイの「老人と海」を原文で読んだことがあるだろう。ノーベル賞受賞作ながら、英文が平易だという理由で。銀髪も買ってはみたが、対訳で安心してしまって最後まで原文を読むことはなかった。ヘミングウェイが酒飲みの愛すべき奴だから読めと言ってくれれば、もっと親しみも湧いただろうに。

いつか飲もうと思っていたダイキリを池袋のショットバーで頼んだらできませんと言われた。その店は生ビールを一杯だけ飲んで出た。おしぼりで顔を拭いて何も飲まないで出るのは気が引けたから。次に先日スカーレット・オハラを飲んだTISTOSに行った。さすがにここにはあったが、「ヘミングウェイの」をつけるのを忘れてしまった。これではただのダイキリだ。

風長閑に行った。今度ははっきりとヘミングウェイのダイキリと言った。この店のレシピはバカルディラム45ml、ライム・ジュース20ml、砂糖10mlでクラッシュアイスの入ったグラスに注ぐ。別名フローズン・ダイキリだが、これは甘い。ヘミングウェイが愛したカクテルとは思えない。

新宿パーク・ハイアット・ホテルのピークラウンジに行った。女性バーテンダーにヘミングウェイのダイキリと言うと、怪訝そうな顔をして「チーフに聞いてきます」と言う。フローズン・ダイキリだと言い直したらわかったようだ。「砂糖を4分の1位にしてね」とちょっと格好をつける。一緒に来たのがおじさんばかりだから意味ないけれど。

これはいい。ちょっとヘミングウェイに近づいた。これならカジキマグロとの死闘を演じる老人=映画のスペンサー・トレイシーのイメージにも合っている。一人で勝手に悦に入っていると、テーブル席の間を早足に歩く小柄な女性を発見した。「おっ!石川さんだ!」フロア係の彼女を見るのは4年振り位。いつも明るく、てきぱきとしていて若々しい。彼女の年齢は4年の間も止まっていたかのように見える。目が合ったら気付いてくれたようだ。微笑みながら、挨拶に来てくれた。昔話に付き合ってくれるのかと期待したが、ちょっとだけ話をしたら、すぐに立ち去ってしまった。酔っ払いの相手は明るく、てきぱきと老獪だ。

ようやくヘミングウェイのダイキリを飲んだつもりになっていたら、ネット上で本物のレシピで作ったものを紹介していた。

・ホワイト・ラム(ハバナ・クラブ) 110ml ・ライム・ジュース 2個分 ・グレープフルーツ・ジュース 1/2個分 ・マラスキーノ 6滴
マラスキーノはマラスカ種のスイート・チェリーが原料のリキュールで、甘味はこれだけのようだ。パーク・ハイアットで飲んだものよりさらにハードみたい。やっぱりそうか、ハードボイルドのヘミングウェイならこの酒じゃないと似合わない。

これを飲みながら、老人と海を今度こそ原文で読んでみようか。いや日本語訳でもいいかな。んー、やっぱりTSUTAYAに行ってビデオを借りてこようかな。酔っ払ってしまったら、最後まで起きている自信はないけれど‥


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2006年01月26日

[風長閑](日本橋)  ゴッドファーザーとフレンチコネクション

会社の近くの「風長閑(かぜのどか)」に行った。今日はカクテル三昧である。石井バーテンダーのご教授を受けながら初めての味を試した。

風長閑は日本橋高島屋斜め右向かいの風月堂地下にある。入ると左にカウンター、右と奥にテーブル席がある。この店に来るときはテーマを決めてやってくる。ある時はラム酒、次はスコッチのアイラウイスキー、ローランドウイスキー、そしてテキーラなどなど。最近はカクテルが多い。

以前「風と共に去りぬ」に因んだカクテル「スカーレット・オハラ」について書いた。小説というより映画の大ヒットで誰もが知っている「ゴッドファーザー」もカクテルがある。

ゴッドファーザーは1972年に公開された。小学校6年の時に、クリント・イーストウッドの「続夕日のガンマン」を兄に連れて行ってもらってからすっかり映画少年になってしまった銀髪が、高校に入って両親を引っ張っていったのがこの映画だった。
せっかく連れて行ったのに母は殺戮の場面で目を伏せていた。

マフィアの世界の物語だが、全3作を通じてテーマの中心は家族愛になっており、殺人以上に悲劇的で悲しい家族を描いたシリーズになっていた。
マーロン・ブランド、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ダイアン・キートンなどの名演技、フランシス・フォード・コッポラ監督の演出、ニノ・ロータの哀愁のある音楽。名前を書いているだけで、映画のシーンが蘇ってくる。

カクテル「ゴッドファーザー」

シチリア島出身のマフィアの家族ということで、カクテルに使われるのはアマレット。
風長閑のバーテンダー石井氏に説明を受ける。
アマレットはシチリア島産のあんずから作られるリキュール。アマレット15ml、ウイスキー45mlがカクテル「ゴッドファーザー」のレシピということだった。ウイスキーは英国のスコッチではなく、米国のバーボンやライウイスキーの方がいいと思うが、味を重視したのだろうか。

ウイスキーをブランディーにすると「フレンチ・コネクション」となるそうだ。これはジーン・ハックマン主演の名作。
説明を聞いて、「よしっ!ゴッドファーザーのあとはフレンチ・コネクションにしよう!」と言ったものの、石井氏が作ってくれたゴッドファーザーを一口飲んで止めにした。

これは梅酒のウイスキー割りだ。甘過ぎる。

口直しとばかり、その後もパルマ産プロシュートを削ってもらい、いくつものカクテルを飲んでいるうちに日が変わってしまった。ちょっと一杯のつもりが石井氏の説明を聞いていると次から次に飲んでします。
まったく勧め上手だ。


日本橋「風長閑(風長閑)」
http://www013.upp.so-net.ne.jp/kazenodoka/

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2006年01月15日

赤玉ポートワイン

最初に飲んだ酒は何だったろうか? それは赤玉ポートワインのような気がする。

子供は親の真似をしたがるもので、大酒飲みの父を見ていたら当然酒を飲みたくなる。
父が家で飲むときもやはり最初はビール。父は毎回注いだばかりで泡たくさんのグラスを銀髪に渡した。泡をすすり液体に到達する寸前にグラスを取り上げられる。父が高笑いをする。毎回悔しい思いをさせられた。

正月は酒(お屠蘇)を飲ませてもらえた。大中小3個の赤い盃があったが、もちろん末っ子の銀髪は小の盃。みりんで味付けした甘いお屠蘇でも、飲めば大人に近づいた気持ちになったが、正月が過ぎればまたビールの泡だけの世界に戻された。

他に子供の頃飲んだ記憶があるのは赤玉ポートワインだ。なぜこんな甘い酒が家にあったのかはまた兄の記憶に頼らなければならないが、瓶のキャップ程度の量を飲ませてもらっていた気がする。三ツ矢サイダー、バヤリースオレンジなどと並んでジュースのような飲み物として、結構好きだった。

いつの間にか赤玉ポートワインのことはすっかり忘れていた。週末酒屋へ行って見覚えのある瓶を見つけたが、赤玉スイートワインとなっていた。帰ってインターネットで調べたら、ポルトガルから抗議を受けて名前を変えたという話だった。

我が家には2本のポートワインがある。2本とも豪州産で15~20年前に生産されたものだ。豪州産でも「PORT」と書かれているので、ポルトガル以外で生産したものでもポートの名称は使えるようだ。シャブリコニャックとは違う。ポルトガルから抗議を受けたという話が本当なら、赤玉ポートワインは製造法からしてまったく別物なのだろう。

赤玉ポートワインは昭和30年代の人気商品だと思っていたら、明治40年に発売されたとボトルの裏ラベルに書かれていた。確かに肩をはだけた日本髪女性のポスターを見たことがある。赤玉ポートワインを懐かしく思うのは銀髪より遥か昔の世代も同様のようだ。
今の若者は最初からワインに入るだろうから、赤玉ポートワイン(スイートワイン)を子供の頃の思い出にはしてないだろう。

ポートはワインほどポピュラーでないせいか比較的安い。若い女性が相手なら年齢と同じ年代物のポートを贈っても懐はそれほど痛まないだろう。40台の女性にでもちょっと奮発すれば可能だ。

20年物になると、ポートも単なる甘いだけの飲み物ではなくなる。
30年物になると、少し落ち着きが出てきて、艶やかないい味を出してくる。
40年物になると、更にふくよかで、やさしく、熟成された逸品となる。

ポートはまるで女性ようだ‥!!???

50年物になると、どっしりと重厚なものになり、良い物は稀少になる。
60年物になると‥、イヤイヤこの辺でやめておこう。

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2005年12月29日

スカーレット・オハラ

カクテルのメニューは見るだけでも楽しい。映画の題名や主人公の名前がついていると、どんなカクテルか興味が湧く。

スカーレットはマーガレット・ミッチェル作「風と共に去りぬ」の主人公である。ピューリッツアー賞に輝くこのベストセラー小説は映画化され、映画史上空前の大ヒット作となった。賞の数が少なかったこの時期にもかかわらずアカデミー賞9部門で受賞した。

公開された1939年はジョン・ウェインの「駅馬車」、ジュディー・ガーランドの「オズの魔法使い」など名作の当たり年だった。日本で上映されたのは戦後で、こんな映画を作っていた国と日本はよくも戦争をしたものだとみんなを嘆かせたそうだ。

今も世界のどこかで上映されていると言われるこの映画を、中学生の時に見た。満員の映画館で4時間も立って観たが、映画に惹きつけられて疲れることはなかった。ヴィヴィアン・リーが演ずるスカーレットは何とも魅力的で、クラーク・ゲーブルが演ずるレッド・バトラーはとんでもなく格好良かった。

スカーレットは大富豪の令嬢だが、南北戦争でどん底に放り出されても逞しく生き抜いていく。夕日の中で父祖の地タラの大地を踏みしめ、「たとえ人を騙し、傷つけても、二度と私は飢えない!」と拳を振り上げる前半のラストシーンは強烈だった。

その言葉どおり妹の許婚を奪い、友人の夫に熱を上げるなど情熱的である。
本当に愛していたのはレッド・バトラーだと気付いたスカーレットが、彼を取り戻すと誓った後のエンディング・シーンも夕日のタラだ。

アメリカ南部タラの大地、夕日、情熱。これらを表現したのがカクテル「スカーレット・オハラ」だ。
カクテル「スカーレット・オハラ」はサザンカンフォート3/4、クランベリージュース1/4、ライムジュースを少々をシェイクして作る。美しい!

サザンカンフォートって何だろう。サントリーのHPを見ると「1874年にアメリカ南部ニューオリンズで生まれたアメリカン・ピーチ・リキュール。ピーチ、レモン、チェリー等のフルーツと、数種のハーブが醸す爽やかな味わいが特徴です。」と書いてある。

クランベリーはイチゴの一種だろうか、女性なら誰もが知っている。クランベリー・ジュースは赤紫の爽やかな甘味のジュース。

女性向きのカクテルだが、今日飲んだ池袋のショットバー「TISTOS]のスカーレットは甘味を抑えてあり銀髪でも美味しく飲める。

スカーレット・オハラを飲みながらスカーレット・オハラを想う。ちょっとイメージと違うような気がするが、これでもいいような気もする。

飲んでる男はレッド・バトラーとはまったく違う。似ても似つかない。悔しいけれど‥


「TISTOS」
東京都豊島区池袋2-53-10
フラッグメントミップB1
03-3590-5017

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2005年12月26日

シャンパン

お祝いにはシャンパンが定番だ。クリスマスには何本のシャンパンが世界中で消費されたのだろうか。

シャンパンはスパーリングワイン(発泡ワイン)の一品種で、フランスのシャンパーニュ地方で作られたもののみがシャンパンと名乗ることが出来る。シャンパンの代表格はモエシャンドン社のものだろうが、その中でもドンペリニオン(通称ドンペリ)は憧れの的か。そしてそのピンクドンペリとなると女性たちの羨望の的。

正直言ってシャンパンはあまり好きな酒ではない。ちょっと甘めなのが気になる。発泡しているものであればビールが一番だし、ぶどう酒であればワインが一番。2番はブランデーだ。それでも華やかな気分になるのはシャンパンだ。これに勝るものはない。

シャンパンは高級で高いとのイメージが強いが、最近は手頃な値段で飲めるものも多い。ドンペリにこだわらなければモエシャンドン社のアンペリアルなどはワインの値段と変わらない。
オーストラリアやカルフォルニアのスパーリングワインだってひけを取らない。葡萄はシャルドネ種で辛口のいいものが多い。見栄を張らなければシャンパンにこだわることもあるまい。

新宿パークハイアットホテルのピークバーでのこと。珍しく銀髪はグラスシャンパンを頼んだ。既に開いていたボトルから注いだシャンパンは立ち上る泡がきれいではないように思えた。

「ボトルを開けてから時間が経っているみたいだね」とさりげなくバーテンダーに言った。すると彼はグラスを一瞥するなりいきなり銀髪のグラスを持っていこうとする。非難するつもりも文句を言ったつもりもなかったので、何とか制止しようとしたがアッと言う間に中身を捨ててしまった。

安いシャンパンではない。彼はアイスペールに差してあったボトルも処分してしまった。そして新しいボトルを開けて、銀髪のグラスにシャンパンを注いだ。さすがにパークハイアットだ。今度は文句のつけようがない。細かな泡の柱が出来上がる。見ていて飽きない美しさだ。

グラスは酒の特徴を最大限に活かす形状をしている。香りを楽しむ赤ワインは大き目の丸く膨らんだグラスに香りを溜める。ブランデーも同じ発想だがアルコール度数が高く、時間をかけて飲むため背が低い。冷やして飲む白ワインは膨らみがないストレートな形状だ。

ところがシャンパンには全く形状が異なる2種類のグラスがある。一つは丈が高いもので、立ち上る泡を楽しむにはこれに限る。もう一つは広がりのある底の浅いグラスだ。
名古屋国際ホテル「天守閣」の細川さんに聞いた。底の浅く丈の低いグラスはパーティーでたくさん運ぶためのものとか。確かに丈の高いグラスは不安定でウエイターが持ち運ぶには危なすぎる。

お祝いの時、パーティーで乾杯をするシャンパンは底の浅いものが多い。このグラスはパンチなどにも使われる。これもパーティー向けの飲み物だ。

丈の高いグラスはいつ使う? それはもちろん恋人同士が愛を語らうとき。
そうだ、そうだったんだ! 
グルメ紀行の取材と称してこんなもの飲んでる場合じゃないね。


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2005年12月04日

まずビール!

スポーツの後、湯上り、食事の前、冷蔵庫を開けたときビールが入ってないと、かなりショックを受ける。代用できる酒はない。シャンパン?そんなもの家の冷蔵庫に入っている訳ないでしょう。

フォーマルなディナーでは食前酒にビールを飲んではいけないとされているらしい。普通シャンパンとかカンパリなどを飲む。オーストラリアに居た時は食前のビールを我慢して、炭酸入りのミネラルウォーターを頼むこともあった。

日本では高級レストランでもビールを頼む。歳を取って図々しくなった。気取ったウエイターに蔑まれても気にしない。ビールを飲むのが気に入らないならメニューに載せなければいい。

以前マカオに行ったとき、有名なポルトガル料理のピノチオで食事をした。有名でも気楽な店。当然「まずビール!」となった。ウエイターは怪訝そうな顔で「お前は日本人か?」と言った。

35年前、中学の社会科の先生が授業中みんなの前で銀髪のルーツを南方系(揚子江以南)と指摘した。日本人はアイヌなどの原日本人、朝鮮半島からは入ってきた北方系、南から入ってきた南方系に分かれるそうだ。以来、銀髪は南方系とあだ名をつけられた。不満だった。反発した。

大人になって香港や上海に行くと中国語で話しかけられる。オーストラリアでのこと。日焼けして顔が黒くなった夏、ベトナム人にベトナム語で道を訊かれた。怪訝そうな顔をしたらすぐに英語に切り替わったが、最後に一言。「お前はベトナム人だと思った!」。
そう言えば日焼けして海外出張から戻った父親をベトナム人みたいだとからかった事があった。ベトナム人の子はベトナム人に違いない。中学の先生は正しかったのだ。今はみんなに自分から「銀髪は南方系」と告げて笑う。

ピノチオのウエイターが人種を判別した材料はビールだった。まずビール、次にワインなどと頼む客は日本人だけだと言われた。

日本には独自のビール文化が根付いている。キンキンに冷やして飲む。本場の英国では常温に近いビールが出てくる。ビールを飲んだ気がしない。ドイツではどうだろう。

日本では風味を飛ばさないように細かい泡の層を作るべきだと言うが、外国人は1センチ以上泡があるとビールの量が少ないと文句を言う。オーストラリアでは5mm以下が適正。
海外では泡を捨てながらビールを注ぐのが当たり前。

楽しく食事をするなら暗黙の了解の下、他のテーブルの人たちと一緒にレストランの雰囲気を作っていかなければならない。服装を含めてマナーは大事だが、みんなに嫌がられなければウエイターにちょっと軽蔑されても「まずビール!」と言いたい。

目の前の男に蔑まれたら? 関係ない! 相手が女性だったら? そんな幸運が訪れたときに考えよう!

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2005年10月26日

ギムレット

レイモンド・チャンドラーが生み出した私立探偵フィリップ・マーロウは粋な男の代表。中年の貧乏探偵だが、「男」を貫き通す。女にはモテモテだが、自分を見失うことはない。
このマーロウのシリーズ最高傑作と言われるのが「長いお別れ(Long Goodby)」。
この小説で有名になったのがギムレット。このカクテルを追った。

長いお別れに出てくるギムレットのレシピはジンと「ローズ」のライム・ジュースの割合が半々である。標準的なレシピはドライジン45ml、ライムジュース 15ml。つまり3:1。小説のギムレットとは随分異なる。
日本橋高島屋向かい「風月堂」地下の「風長閑(かぜのどか)」に行った。馴染みのバーテンダーにこのカクテルを作って欲しいと頼んだが「ローズ」のライムジュースがなく断念。

チャーチルのドライマティーニ(10月4日掲載)を出してくれたあの新宿パークハイアットに行ったがやはりできない。

かなりドライなパークハイアットのギムレット

名古屋の最高級ホテル、大阪のショットバーなどなど、行く先々でギムレットを頼んだが、やはり「ローズ」のライムジュースがないため小説のカクテルは再現不能。結局、マーロウが飲んだギムレットには出会えなかった。

多くの店は「うちはフレッシュな生ライム・ジュースしか使わない!」と胸を張るが、長いお別れのギムレットのレシピを知るバーテンダーすら見つからない。
博多で入ったショットバーの若いバーテンダーが意外にも知っていた。「ローズ」とはこのライムジュースを作っていた会社であること、そのジュースがかなり甘い人工ジュースであることなどが判った。
「ローズ社のライム・ジュースは甘くて、まずいですよ」と断言する。
ギムレットとは、ねじ錐、木工錐のことで鋭いものを意味する。やはり男のカクテル。
かつては今より甘めのカクテルだったようだが、それでも小説のギムレットのレシピでは甘すぎる。 
登場人物の性格模写をこの普通と違うギムレットで表現しようとした作者チャンドラーの意図がようやく分かってきた。このギムレットを追いかけたことで物語が一段と味わい深いものになった。

銀座TAKAでギムレットを作ってもらった。ボンベイジンを3分の2、コーディアルライムジュースを3分の1。コーディアル・ライムジュースは甘みを加えたカクテル用ライムジュースでサントリーが出しているもの。ローズ社のジュースの代用だ。これに生ライムのスライスを半分入れてシェイクしたものがTAKAのギムレット。これを作った高崎オーナーは78歳のベテランバーテンダー。オリジナルに、そして小説の味に近いギムレットだろう。

甘いTAKAのギムレット

一口飲んだ。やはり甘い。銀髪にはちょっとつらい。これより甘い小説のギムレット。
ハードボイルド探偵のマーロウがどんな気持ちでこのカクテルを飲んだか分かるような気がした。

チャンドラーのファンにご参考:TANPOPO FREEWAY 「ギムレットは早すぎる」
http://www.asahi-net.or.jp/~jh9h-sgur/zansu/column/gimlet.htm

Salon de TAKA
中央区銀座6-5-15 銀座能楽堂ビル4F
03-3572-0023
(ショットバーではありません。念のため。)

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2005年10月24日

ワインがわからない!

洋食なら必ずワインを頼む。これまで少なくとも3,000本以上は飲んだのではないだろうか。
特に海外勤務時代は安くて美味しいワインが手に入ったので毎日1本ペースで飲んでいた。
ところが未だにワインがわからない。これじゃグルメ失格かな?

ワインとの出会いは大学生のときワイン同好会なるものに入会した頃。入会の動機は2つ。
1つはマンズワインがスポンサーについていたので、タダ酒が飲めると思ったこと。
もう1つは学園祭のとき「ワインの女王コンテスト」を催していたため、美女と遭遇できると期待したことだった。
しかし、入会して考えが甘かったことに気がついた。マンズワインは「ワインの女王コンテスト」のスポンサーであり、ワイン同好会のスポンサーではなかった。従って、いつもタダ酒が飲めるというわけではないのだ。
試飲会なるものに初めて参加したが、会費制でグラスに半分位しか飲めない。部長がなんだか偉そうなことを言うのだが自分たちには意味不明。タバコを吸っていた友人は怒鳴られた。
我々仲間3人はそっと試飲会場を抜け出して居酒屋へ入り、大酒を喰らってワイン同好会の悪口を言っては大いに盛り上がった。それからすぐに同好会を退会した。ワインの女王コンテストまで我慢できない。

あれから約30年。週末に勝沼へ行った。ワイナリー巡りをやろうと思ったのだが、お目当ての小さい酒蔵は予約一杯でとても入れない。いくつか回って大手でないと入れないと観念していたところに迷い込んだのがマンズワイナリー。因縁を感じたがマンズワインに恨みはない。

予約なしでも工場見学が出来るという。10分ほど待って工場見学ツアーに参加した。
驚いたのが巨大なタンク。すべて樽で熟成されるものと思っていたが、多くはこの巨大なタンクで熟成される。タンク熟成のワインは比較的若いワインで、値段も安い。蓋もコルクは使わない。酒屋で千円以下で売られるワインだろう。

樽熟成は手間も時間もかかる。樽の匂いがついたり、まろやかさが増したりして、当然値段は高くなる。
しかしタンク熟成のワインは粗悪なワインなのだろうか?

ワイン造りの最終過程に登場するのがブレンダー。彼らがいくつかのワインを調合して、ワインを完成させていく。大量生産であっても、品質を維持するための大変な努力があるようだ。プロの技だ。
粗悪な輸入ワインと値段が一緒だからといって、品質も同様と思ってはいけないと感じた。
家庭料理に合わせてこんなワインを気軽に飲んではいかがだろうか。

工場限定、お手頃ワイン

銀髪はレストランでワインのウンチクは言わないようにしている。
シャトー○○ なんてワインだけを重宝がっても仕方がない。
自分のお財布に合わせて、料理に一番あったものを店の人に選んでもらえばいい。
見栄を張って、奮発してこの1本より、楽しく多種のワインを飲みたいものだ。
お財布を気にして飲み食いしても楽しくはない。

工場見学が終わって最後は試飲場へ。ここでは飲み放題。ただし、銀髪は運転手なので酒は飲めない。やっぱりマンズワインのタダ酒には30年経っても縁がなかった。トホホ

「ワインがわからない!」なんて恥ずかしくて言えないと思っていたら、SAKE TO RYORI というブログを見つけてちょっと安心。
http://kamekichi.cocolog-nifty.com/sake_to_ryouri/2004/07/post_30.html

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2005年10月04日

究極のドライ・マティーニ  西新宿[パークハイアット]

久し振りに新宿パーク・ハイアットに行った。今日も最初はドライ・マティーニだ。
男が飲むカクテルの代表格はドライ・マティーニであろう。若いとき、バーに行くと必ずドライ・マティーニを飲んで気取っていた。数年前遊びが過ぎて、ちょっと気恥ずかしいことをやってしまった。究極のドライ・マティーニで‥‥

日本経済新聞土曜夕刊の「グラスの縁から」(東理夫著)は秀逸なエッセイで大好きだ。毎回愛すべき酒好きの馬鹿者が紹介される。随分前に掲載された「究極のドライ・マティーニ」は、遊び心を頗るくすぐらせてくれる話だった。

マティーニはドライジンにベルモットを加えて作る。ベルモットが少ないほどドライになる。一滴だけ垂らすとか、グラスにちょっと塗るとかのドライ競争が展開されることになるのだが、イギリスの宰相チャーチルが作らせたものが究極のドライ・マティーニと言われるそうだ。このカクテルを「チャーチルのマティーニ」と言う。

5年程前だっただろうか。新宿のパークハイアット・ホテル52階のニューヨーク・バーに彼女(?)と行った。
「グラスの縁から」の話を思い出した馬鹿な銀髪(もうその頃も立派な銀髪)は、よせば良いのにウエイターに「チャーチルのマティーニ」を注文した。ウエイターは即座に「申し訳ありませんが、そのようなカクテルは置いてありません」と言う。銀髪は鷹揚に「それなら、普通のドライ・マティーニでいいよ。出来たらエキストラ・ドライにしてね」と言ったのだ。
そして彼女に向かって得意気に「チャーチルのマティーニ」とはどんなものかの説明を始めた。彼女が頼んだものは覚えていない。彼女はいつもシャンパンを飲んでいたが‥‥

ほぼ説明が終わった頃ウエイターがカクテルグラスに入った透明の飲み物を持ってきた。一緒にトレイに乗っていたのはベルモットの瓶。テーブルにオリーブとストレートのジンが入ったカクテルグラスをまず置いて、その横にベルモットの瓶を並べてからウエイターは一言。
「ご注文のチャーチルのマティーニです」芝居がかった所作もほぼ完璧。

チャーチルのマティーニ

流石はパークハイアット・ホテルと感動した瞬間だった。一流の証である。
「よくわかったね」と言うと、「ハイッ。チーフ・バーテンダーが知っていました」とのことだった。
銀髪はベルモットの瓶を横目で見ながらストレートのジン=チャーチルのマティーニを飲んだのでした。

これには後日談がある。2年程前だろうか、やはりパークハイアット・ホテル41階の大好きなピーク・バーに行った。

例によって、しかし今回は馬鹿な注文ではなくドライ・マティーニを普通に注文した。連れ(前の彼女とは違う)の女性にかつてのチャーチルのマティーニの話をしていたら、それを聞いていたバーテンが口を挟んできた。
「あっ!それ覚えていますよ。僕がそのチーフ・バーテンダーです」
3年以上もの間、チャーチルのマティーニを注文した馬鹿は銀髪一人だけだったようだ。
一杯のマティーニが二人の男の思い出として生き続けてくれたのだ。

「君だったのか!」「あなただったのですか!」と連れの女性のことなどお構いなしに二人で話し込んでしまった。

今日は残念ながら銀髪より年長のおじさん=前の会社の先輩と二人。ピーク・バーは恋人同士で来るところなのに…

「そうだ!富澤さんと一緒に来たことにしよう!」と、女性バーテンダーの胸の名札を見ながら先輩を完全に無視してご満悦の表情の銀髪でした。(コラッ! 酔っ払い!)


マティーニのレシピは今日のカクテルをご覧ください。
http://xn--elq6cx48l8qm.jp/article/2168697.html

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