2006年12月11日
[栄一](京橋)
久し振りに行ったのは東京・京橋の栄一だった。
晩飯どき、あてもなく昔の職場の近くに向かった。ふと横を見ると栄一の看板が見えた。栄一はランチに焼き鳥丼を食べによく行った店だが、夜は一度のみで店の記憶も薄れてしまった。「写真を撮らせてくれるかな?」気弱な銀髪に夜に何度も行ったことがあると言う連れは、「大丈夫ですよ」と心強い。
6時を少し回っていたが、1階席には誰もいない。カウンターに案内されてすぐに、「料理の写真を撮っていいですか?」と言ったら、手前の若い方の職人が奥の主人に聞いてくれた。「いいよ!」の声にホッと一安心。串6本の軽めのコースを頼んだ。
付け出し、ささみ、焼き鳥

カウンターは煙よけのためか、かなりの部分が焼き場とガラスで仕切られている。1階は我々2人だけだが、地下と2階の個室に客が入っているらしく、忙しそうな焼き場の二人に話かける雰囲気ではない。わさびを乗せたレアのささみに舌鼓を打ち、次の焼き鳥をパチリと撮ったところで、奥の主人からガラスの仕切り越しにクレームがついた。フラッシュが邪魔のようだ。
胡瓜の漬物、鴨焼き

調理場の二人に謝って、フラッシュがたかれないようにセットした。店内は明るいので、フラッシュなしでも撮れそうだ。胡瓜を撮り、食べて、次に鴨を撮ったところで主人から怒りの声が飛んできた。「撮るなと言っているのだから止めなさいよ!」と苛立っている。さっき以上に平謝りして、カメラをしまった。写真自体が気に入らないらしい。
従って、コースの続きであるぎんなん、うずらの卵、つくね、スープ、デザートのメロンの写真はない。
つくねが出て、2度目の淀んだ空気がようやく収まってきた頃、1階席の予約客が入ってきた。3組目の客は常連らしく、職人たちがにこやかに話し出した。居丈高な主人の物言いにムッとしなかったわけではないが、彼らの笑顔をみていると満更嫌な奴でもないようだ。険悪なやり取りが、他の客が居ない時で良かったと思った。
スープが出てくる前にすずめ焼きを追加した。骨ごとバリバリと食べた。豊橋に居たときに駅構内の焼き鳥屋でよく食べたのが懐かしい。「すずめは東北で捕獲された野生のもので‥」と若い職人が話し出した。連れとしていた銀髪の豊橋時代の話を素知らぬ振りして聞いていたようだ。席を蹴って店を出ていたら、嫌な気分が双方に残っただろうが、ちょっと安心した。怒った方も気分がいいわけではない。
メロンが出た後でもう一品、レバー焼きを食べた。この店を知るためにどうしても食べたかったのだ。わずかにレアで出てきたレバーは思ったとおり美味かった。上手に焼くには柔らかすぎるためか、間に心臓が刺さっているのが面白い。
満席になった。予約なしで来た客が、入店を断られている。ボチボチ我々も潮時だ。勘定を済ませて、店を出るときに女将さんが「申し訳ありませんでした職人なので‥」と頭を下げる。それを「いえいえ、こちらこそ気分を害させて申し訳ない、主人によろしく伝えてください」と制した。
二人の職人は兄弟だそうだ。女性たちも身内の家族的な店のようだが、1・2階と地下に入った大勢の客を少人数で仕切るのは大変だろう。
それにしても、ジューシーなレバーの写真を紹介できないのが残念である。
栄一
東京都中央区京橋1-5-1
03-3281-6578
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2006年12月10日
[ウノ]③(日本橋)
久し振りに夜のウノに行った。
今年めぐり合った店で、トップ3に入るのがウノ。高くて美味い店は当たり前なので、誰でも行ける店であることが選考基準の一つだ。今日は結婚式を間近に控えたNと、そのフィアンセを招待した。
彼女の名前を聞く前に、既に入籍したことを知らされた。新婚旅行のパスポートを取得するには結婚式より入籍を先にした方がいいとの判断らしいが、形式より実を求めるのは今風である。そうであれば、こちらも楽。名前を聞かず、「奥さん」で通した。
ゴルゴンゾーラチーズ、自家製ベーコン

ゴルゴンゾーラを食べて、N夫妻は驚きの表情をした。青カビのチーズというと、見ただけで敬遠する人が多いが、ウノのものは塩分も臭みも少ない。奥さんはいつも抵抗感なく食べているようだが、毛嫌いしているはずのNが何個も食べるのを見て実に嬉しそうな顔をする。
メニューにない自家製ベーコンを頼んで、「銀髪と来て良かったでしょう?」と誉め言葉を強要する銀髪。
にしんの燻製、タコのカルパッチョ

新メニューの中から2品。ピザに行く前の箸休め、ワインの肴としては適当だ。
ポルチーニ茸のピザ

ゴルゴンゾーラのピザ

何度も書いているので多くを語る必要はないだろう。銀髪が一番好きなゴルゴンゾーラのピザは今日も美味かった。
7時過ぎに福山オーナーが現れ、若いカップルのために生ハムをサービスしてくれた。これもゴルゴンゾーラと同様に塩分が薄くて食べやすい。

銀髪だけならここまでの料理で充分だが、甘い二人に甘いデザートを食べてもらうことにした。それぞれ、少しずつ味見したが、どれも福山さんが自慢するだけあって、他店のものとは違う。ティラミス(右端)は高価なエスプレッソの機械があってこそ出せる味らしい。

福山さんが誇らしげに説明してテーブルを離れると、銀髪が「どう、いい店でしょう?」と自慢する。歳を取ると本当にしつこい。
それにしても蜜月の二人の幸せそうなこと。いい娘とめぐり合って良かったなとNを心から祝福した。中年の銀髪にはいい店にめぐり合うことぐらいしか楽しみがない。
あーあ、ちょっとため息。
UNO ウノ
東京都中央区日本橋本町1-1-8 共同ビル1F
03-3548-9161
http://www.bricklayer.jp/uno
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2006年11月23日
[いもや](神保町)
思い出の「いもや」は何処に
今、当社ではちょっとしたウォーキング・ブームである。肥満・高血圧で悩む数人が選んだ運動がウォーキングだった。財布にも肉体にも負担がかからないのがウォーキング。短距離のタクシーや電車を我慢すれば、ジムに行く必要もないのだからこんなにいいことはない。
今の季節ならほんのり汗をかく程度で、シャツやスラックスを汗で濡らすこともない。週末に数十キロを自転車で走る銀髪と言えども平日は運動とは無縁だから、ウォーキングをやる気になった。ただ目的もなく歩くのは辛いので、遠くの店でランチを取ることにした。
御茶ノ水・駿河台下のいもやは格好のターゲットだ。食べた後は電車かタクシーで帰ることにして、日本橋から早足で歩く、歩く。12時前に到着しなければ並ばなければならないと思ったら、歩幅は広く、足の回転も速い。約25分で「とんかついもや」に着いた。店は一杯ですぐには座れないが、カウンター席後方の長椅子で待つ権利は確保できた。自分の番が来る頃には汗も引くはずだ。
待つ間に店内を観察した。料理人は豚肉に小麦粉をつけて、溶き卵のパットに放り込む。これを竹串で刺して取り出し、両手でパン粉をつける。手を汚すことなく下ごしらえをした肉を、油の中に落とす。昼のとんかつメニューは700円の一品のみだから、流れ作業でどんどん揚げていく。客の注文を聞く必要もないので、並んでいる人数だけ確認すれば足りる。
その間におばさんはご飯をよそい、しじみの味噌汁を注ぐ。ご飯は大き目の茶碗に大盛りなので、自分の番が来たら「ご飯は軽めに」と言おうと決めたが、結局それは叶わなかった。待つこと10分程でカウンター席に座ったら、間髪入れずにとんかつ、ごはん、味噌汁、お茶が目の前に出てきた。

仕方なくご飯は残そうと思ったが、貧乏性で気弱な銀髪は残せず全部たいらげた。予定外に摂取したカロリーを消費するために、復路も歩くことにした。そのついでに思い出の「いもや」を探した。いもやはとんかつ屋の他に、天ぷら、天丼など専門店が複数ある。銀髪の思い出の店は、淡路町寄りにあった肉詰めピーマンなどの揚げ物屋である。
しかし、記憶の場所は昔と大きく変わっていた。もちろんいもやは遥か昔に消えたそうだ。
無念さを押し殺して歩いていたら、見覚えのある顔がこちらに向かってくる。昔の職場の後輩で、もう何年も会ったことがない奴だ。こちらに全く気付かない彼の前に立ちはだかると、期待通り驚いてくれる。まったく愉快である。今度、飲みに行く約束をして別れた。
ドラマだったら出来過ぎと笑ってしまう偶然だが、「事実は小説より奇なり」である。「歩いていもやに行かなかったら」「ご飯が大盛りでなかったら」などなど、たった一つの要因でも欠けていたら彼に会うことはなかっただろう。
もしかしたら神様が本当にいるのかもしれないと感謝しつつも、どうせなら美女に会う偶然にしてくれたら良かったのにと、ちょっと怨めしく思った。
いもや
東京都千代田区神田神保町1-4
03-3293-0509
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2006年08月28日
[赤いクレヨン](下北沢)
なおも餃子の旅は続く。
ムロ、酒洛を出て3人組の一人Nと別れた。3人とも中学の同級生だが、Nは転居したので帰る方向が違う。Sと二人で小田急線に乗ったがまだ帰る気分ではない。下北沢で降りて本日3軒目に向かうことになった。行き先は「赤いクレヨン」。
先日、テレビで和田アキ子とマチャミが訪れたおでん屋で、歌手の香西かおりがオーナーの店だ。下北沢通のSはこの店の場所を知ってはいたが、行ったことはないと言う。芸能人の店なので値段が高いとの先入観があったようだ。
テレビ放映直後だったので混んでいるかと思ったら意外と空いていた。カウンターに座りお奨めを聞く。テレビで紹介された3品の中からタコとフルーツトマトサラダ、牛スジ24時間煮込みを頼んだ。

他に何かないかと探していると、今日のテーマである餃子を見つけた。浪速点天と書いてあるので有名な点天餃子を使っているのかと店の女性に聞いたら、自家製とのこと。関西弁の可愛いその女性に名前を聞いたが、「だんごちゃん」の愛称だけでかわされた。

出てきた餃子は成る程、点天とは違う。「自家製だってね」と男性店員に聞くと、「違います」との答。よそに特注しているとのことで、だんごちゃんは間違い。苦笑いしながらすまなそうにするだんごちゃんだが、愛嬌があってかわいいから許せる。味も悪くない。
他の2品の中では牛スジが良かった。Sも美味いを連発している。Sの予想に反していたって気軽な店で、彼も気に入ったようだ。赤いクレヨンは週末朝7時までやっている。芸能人も来るのだろうか。しっかりと下北沢の雰囲気に溶け込んでいる。おでん屋と思って行くとちょっと戸惑うが、なかなかいい店だと思った。
「これなら同級生の集まりをここでやってもいいな」などと二人で話し込んでいると、唐突にだんごちゃんが「男前ですね」と言う。最初は何のことかわからなかったが、「エッ!それって俺のこと?」と聞くと、「そうです」と言うではないか。そんなこと、滅多に言われたことがないので、一気にこの店の評価がアップしてしまった。100点満点で150点だ!
小遣いをやろうかと言いそうになって、森の石松を思い出した。
広沢虎造の講談「三十石船」での話。船に同乗した男は、目の前の相手が森の石松と知らずに石松を清水次郎長一家で一番強い男と褒め上げる。喜んだ石松は「飲みねえ、飲みねえ、寿司くいねえ」とご馳走したあげく小遣いまでやろうとする。いい気になっているところで男が言う。
「でも、石松は馬鹿だからねー」
赤いクレヨン
東京都世田谷区5丁目32-3
03-5712-2388
http://akakure.com
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2005年12月29日
スカーレット・オハラ
カクテルのメニューは見るだけでも楽しい。映画の題名や主人公の名前がついていると、どんなカクテルか興味が湧く。
スカーレットはマーガレット・ミッチェル作「風と共に去りぬ」の主人公である。ピューリッツアー賞に輝くこのベストセラー小説は映画化され、映画史上空前の大ヒット作となった。賞の数が少なかったこの時期にもかかわらずアカデミー賞9部門で受賞した。
公開された1939年はジョン・ウェインの「駅馬車」、ジュディー・ガーランドの「オズの魔法使い」など名作の当たり年だった。日本で上映されたのは戦後で、こんな映画を作っていた国と日本はよくも戦争をしたものだとみんなを嘆かせたそうだ。
今も世界のどこかで上映されていると言われるこの映画を、中学生の時に見た。満員の映画館で4時間も立って観たが、映画に惹きつけられて疲れることはなかった。ヴィヴィアン・リーが演ずるスカーレットは何とも魅力的で、クラーク・ゲーブルが演ずるレッド・バトラーはとんでもなく格好良かった。
スカーレットは大富豪の令嬢だが、南北戦争でどん底に放り出されても逞しく生き抜いていく。夕日の中で父祖の地タラの大地を踏みしめ、「たとえ人を騙し、傷つけても、二度と私は飢えない!」と拳を振り上げる前半のラストシーンは強烈だった。
その言葉どおり妹の許婚を奪い、友人の夫に熱を上げるなど情熱的である。
本当に愛していたのはレッド・バトラーだと気付いたスカーレットが、彼を取り戻すと誓った後のエンディング・シーンも夕日のタラだ。
アメリカ南部タラの大地、夕日、情熱。これらを表現したのがカクテル「スカーレット・オハラ」だ。
カクテル「スカーレット・オハラ」はサザンカンフォート3/4、クランベリージュース1/4、ライムジュースを少々をシェイクして作る。美しい!

サザンカンフォートって何だろう。サントリーのHPを見ると「1874年にアメリカ南部ニューオリンズで生まれたアメリカン・ピーチ・リキュール。ピーチ、レモン、チェリー等のフルーツと、数種のハーブが醸す爽やかな味わいが特徴です。」と書いてある。
クランベリーはイチゴの一種だろうか、女性なら誰もが知っている。クランベリー・ジュースは赤紫の爽やかな甘味のジュース。
女性向きのカクテルだが、今日飲んだ池袋のショットバー「TISTOS]のスカーレットは甘味を抑えてあり銀髪でも美味しく飲める。
スカーレット・オハラを飲みながらスカーレット・オハラを想う。ちょっとイメージと違うような気がするが、これでもいいような気もする。
飲んでる男はレッド・バトラーとはまったく違う。似ても似つかない。悔しいけれど‥
「TISTOS」
東京都豊島区池袋2-53-10
フラッグメントミップB1
03-3590-5017
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