たかが月見そばと笑うなかれ

生卵が無料でトッピングできる「まえだ」では、月見そばが380円のかけそばの値段で食べられると思って喜んだ。お得なまえだが近くにあるのに、小諸そばが満席なのが不思議に思えた。興味が湧いて月見そばの値段を見たら何と290円ではないか。そば自体の質が違うとはいえ、衝撃を受けた。
数日後、日本橋の立ち食い蕎麦屋「よもだ」に行った。生まれて初めて月見そばを頼んだ。かけそばが220円、卵が50円、合計で何と小諸そばより安い270円。なんだか申し訳ない気持ちになった。
よもだ

小諸そばの写真も撮らなくっちゃ。数日後、小諸そばに行った。そばを鍋に投げ込む。ざるでお湯を切ってどんぶりに移す。ここから「よもだ」と作り方が違った。どんぶりに入れたそばの中央に窪みを作って卵を乗せ、その上に熱いそばつゆをかけたのだ。白身が少し固まり、盛り付けも美しい。イヤー、月見そばは奥が深い。天ぷらそばなどはつゆを入れて最後に具を乗せるのに月見そばだけ別格だ。
小諸そば

他の立ち食い蕎麦屋はどうだろう。なんだか月見そばにのめりこんでしまった。日本橋三越前の六文そば、東京駅八重洲地下街の梅もとへ行った。
六文そば、梅もと

そばの質や量が違うので値段の比較はどうでもいい。関心があるのは作り方のみ。固唾を飲んで料理人の手元を見詰める妙な客である。どちらの店も卵を乗せてからつゆをかけるのは同じ。しかし六文そばは黄身がどんぶりの隅っこに流されてしまい、梅もとは最初からどんぶりの縁に卵が割り落とされたのでつゆが卵全体にかからない。
味についての評価は立ち食いそばフリークに任せることにして、美しさでは小諸そばが一番だった。他にも立ち食いそばの店は山ほどあるから、作り方の統計を取りたくなったが、それも立ち食いそばフリークに任せよう。もう、月見そばは飽きた!
投稿者 銀髪 : 固定リンク
| コメント (1)
| トラックバック
日本で唯一の楊枝専門店

新幹線の座席のポケットに入れられている雑誌WEDGEで面白い記事を見つけた。日本で唯一の楊枝専門店が日本橋小網町にあるという。かつて慣れ親しんだ町にそんな店があるとは知らなかった。
江戸時代初期は人形町が文化の中心地で、振袖火事とも言われる明暦の大火(1657年)までは吉原遊郭もこの付近にあったことは意外と知られていない。爪楊枝は江戸時代になって歌舞伎役者や遊女が使い、庶民に普及したというから、楊枝屋が人形町周辺に多数あったことも頷ける。
さるやは宝永元年(1704年)創業と後発ながら、あるいはそれ故に贈答用や縁起物として容器などを工夫して売ったため、今まで存続できたと言われる。今も昔も商売は知恵次第ということだろうか。

さるやの商品は有名デパートなどに置いてあるが、本店に行かなきゃ始まらない。さすがに本店だけに品揃えも豊富で、箱のサイズ、形状、絵柄など様々なものがある。贈答用に人気なのは「大入」「金千両」「隈取」など。

金千両には楊枝のみ、隈取には辻占いなどを書いた紙に巻かれた楊枝が入っている。近くに遊郭があっただけに、色恋に絡む粋な文句が書かれている。100種類程度あるそうだ。
「意地で逢わずにいるだけなのに 鏡に出ているこのやつれ」「四畳半ここを締めきりゃ二人の天下 遠慮はどこかへ逃げている」2本だけ開いてみたけれど、後は楽しみに取っておこう。
「すいませーん、爪楊枝ありますか?」料理屋で店員に声をかけるようになったのはいつ頃からだろう。子供の頃、親や先生たちに歯磨きの習慣を叩き込まれたにもかかわらず、大人になってから歯周菌にアルコールなど高カロリーの餌をせっせと供給し続けた。その報いは大きいが、お陰で粋な文句の楊枝を使えるようになった。ちょっと悲しい強がりである。
さるや
東京都中央区日本橋小網町18-10
03-3666-3906
http://www.saruya.co.jp/
投稿者 銀髪 : 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック