
「大学教授に会ってみないか?」と言われて戸惑った。大学教授は自らの研究に関心のすべてがあり、嫌々教壇に立って学生に向かっているとのイメージが強かった。 面白い話が聞けるかどうか半信半疑のまま待ち合わせ場所(早稲田大学理工学部)に行ったら会えない。しばらく待ってもしやと思って携帯電話にかけても出てくれない。違う場所(早稲田大学文学部)に居るかもしれないと教えられて車を飛ばしてようやく会えた。既に1時間近く待たせてしまったが、平木氏はまったく意に介さないようににこやかだった。その笑顔と風貌に大学教授のイメージは吹っ飛んだ。話を始めたら意外と面白い。下調べもせずに行った無礼な我々にやさしく接してくれる。 話は生い立ちから始まって、写真の歴史、写真・映像の将来にまで広がっていった。
― 写真評論とは撮り方が上手とかそんな評論をするものですか?
大体の人はそう思われますが、現実的にはもっと幅広く捉えなくてはいけません。いつも私の仕事は「撮る人と見る人の関係をより良いものにしなければいけない」とと説明しています。撮る人の意思がよりよく理解してもらえるような、見る人がよりいいものを見ることができるような、そういった環境を作っていくことが大事だと思っています。そのためには撮り方といった画一的な考え方ではなく、色んな面から評論を試みていいと思います。
平木収(ひらきおさむ)
1949年京都府生まれ。
早稲田大学美術史科卒業。九州産業大学芸術学部教授。早稲田大学非常勤講師。
1980年頃から写真評論活動をスタートし、各種カメラ雑誌で写真展評、対談などを連載。東京綜合写真専門学校、武蔵野美術大学、京都造形芸術大学、大阪OVC専門学校等で講座を持った。1985年「つくば写真美術館」キュレーター。1987年には「川崎市民ミュージアム」の設立に参画、1988年から94年まで同館の写真担当学芸員。元ニコンサロン運営委員。東川賞審査会委員、長野県豊科町立田淵行男記念館顧問、日本写真協会理事。「ピュリッツァー賞写真展(98年)」「写真の20世紀展(2000年)」などを製作・監修。
単著に「映像文化論」共著に「日本の自画像」「タウトが撮ったニッポン」などがある。